(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
ナノ構造化ホイスカーは、開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,812,352号(Debe)、同第5,039,561号(Debe)、同第5,338,430号(Parsonageら)、同第6,136,412号(Spiewakら)、及び同第7,419,741号(Verstromら)で記述されているものを含む、当業界で既知の技術により提供可能である。一般に、例えば,有機又は無機の層を基材(例えば、微細構造化された触媒転写ポリマー)上に真空堆積(例えば、昇華により)し、次いでサーマルアニーリングによりペリレンレッド顔料をナノ構造化ホイスカーに変換することにより、ナノ構造化ホイスカーを提供することができる。典型的には、真空堆積工程は、約10
−3Torr又は0.1Pa以下の全圧で行われる。代表的な微細構造は、有機顔料C.I.Pigment Red 149(すなわち、N,N’−ジ(3,5−キシリル)ペリレン−3,4:9,10−ビス(ジカルボキシイミド))の熱昇華及び真空アニーリングにより作製される。有機ナノ構造化層の作製方法は、例えば,Materials Science and Engineering,A158(1992),pp.1〜6;J.Vac.Sci.Technol.A,5(4),July/August,1987,pp.1914〜16;J.Vac.Sci.Technol.A,6,(3),May/August,1988,pp.1907〜11;Thin Solid Films,186,1990,pp.327〜47;J.Mat.Sci.,25,1990,pp.5257〜68;Rapidly Quenched Metals,Proc.of the Fifth Int.Conf.on Rapidly Quenched Metals,Wurzburg,Germany(Sep.3〜7,1984),S.Steebら,eds.,Elsevier Science Publishers B.V.,New York,(1985),pp.1117〜24;Photo.Sci.及びEng.,24,(4),July/August,1980,pp.211〜16;及び開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,340,276号(Maffittら)及び同第4,568,598号(Bilkadiら)で開示されている。炭素ナノチューブアレイを用いた触媒層の特性は、論文「High Dispersion and Electrocatalytic Properties of Platinum on Well−Aligned Carbon Nanotube Arrays」,Carbon 42(2004年)191〜197頁に開示されている。grassy or bristled siliconを使用した触媒層の性質は、米国特許出願公開第2004/0048466 A1号(Goreら)で開示されている。
【0011】
真空堆積は任意の好適な装置で行われてもよい(例えば、開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,338,430号(Parsonageら)、同第5,879,827号(Debeら)、同第5,879,828号(Debeら)、同第6,040,077号(Debeら)、及び同第6,319,293号(Debeら)、及び米国特許出願公開第2002/0004453 A1号(Haugenら)を参照のこと)。1つの代表的な装置が米国特許第5,338,430号(Parsonageら)の
図4Aに概略的に図示され、添付のテキストで説明されている。そこでは、基材はドラム上に搭載され、次いで昇華又は蒸発源にかざして回転され、有機前駆体(例えば、ペリレンレッド顔料)をナノ構造化ホイスカーに堆積する。
【0012】
典型的には、堆積されたペリレンレッド顔料の名目厚さは、約50nm〜500nmの範囲である。典型的には、このホイスカーは、20nm〜60nmの範囲の平均断面寸法、及び0.3μm〜3μmの範囲の平均長さを有する。
【0013】
一部の実施形態では、ホイスカーは支持体に取り付けられる。代表的な支持体は、ポリイミド、ナイロン、金属箔、又は最大300℃までのサーマルアニール温度に耐えることができる他の材料を含む。一部の実施形態では、この支持体は、25μm〜125μmの範囲の平均厚さを有する。
【0014】
一部の実施形態では、この支持体はその表面の少なくとも1つの上に微細構造を有する。一部の実施形態では、この微細構造は、ナノ構造化ホイスカーの平均寸法の少なくとも3(一部の実施形態では、少なくとも4、5、10以上)倍の実質的に均一に賦型され及び寸法とされた形状から構成される。この微細構造の形状は、例えば、V形状の溝及びピーク(例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれている、米国特許第6,136,412号(Spiewakら)を参照のこと)、又はピラミッド(例えば、開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,901,829号(Debeら)を参照のこと)であることができる。一部の実施形態では、例えば毎31番目のV溝ピークが、そのいずれかの面のピークよりも25%又は50%又は更に100%高いというように、この微細構造の形状の一部の区分は、微細構造化ピークの平均以上に又は大多数の上に周期的に延在する。一部の実施形態では、この微細構造化ピークの大多数上に延在する形状のこの区分は、最大10%(一部の実施形態では、最大3%、2%、又は更に最大1%)であることができる。随時出現する高い微細構造形状を使用することによって、被覆された基材がロール−ツー−ロールコーティング操作においてローラーの表面上を移動するとき、均一に小さい微細構造ピークの保護が容易となる。随時出現する高い形状が、小さい微細構造のピークよりもローラーの表面に接触し、したがってナノ構造化材料又はホイスカーのごく少数が、基材がコーティング工程で移動するとき、擦傷又は別な形での外乱を受ける可能性がある。一部の実施形態では、微細構造形状は、膜電極アセンブリ(MEA)の作製において触媒が転写される膜の厚さの半分よりも実質的に小さい。触媒転写工程時、高い微細構造形状は膜の中に貫入せず、そこで膜の相対する側上で電極と重なり合うこともある。一部の実施形態では、最も高い微細構造化形状は膜厚の1/3又は1/4未満である。最も薄いイオン交換膜(例えば、厚さ約10〜15μm)に対しては、高さが約3〜4.5μm以下の微細構造化形状の基材を有することが望ましいこともある。V形状又は他の微細構造化形状の側面の急峻度又は隣接する形状の間の夾角は、一部の実施形態では、貼り合わせ−転写工程時の触媒転写の容易さから約90°であり、基材支持体の平面の幾何学的な表面に比して微細構造化層の2つの表面積の平方根(1.414)から生じる、電極の表面積のゲインを有することが望ましいこともある。
【0015】
一部の実施形態では、複数の交互層がナノ構造化ホイスカー上に直接に被覆され、他の実施形態では所望の触媒の性質を付与する機能層などの中間(典型的には、形状適応性)層が存在し得、及び電導性及び機械的性質(例えば、ナノ構造化層を含むナノ構造物の強化及び/又は保護)、及び低い蒸気圧性質も付与し得る。中間層は、以降の交互層が堆積し、結晶性形態を進展させる様式に影響する核形成部位を提供してもよい。
【0016】
一部の実施形態では、中間層は、無機材料又はポリマー材料を含む有機材料を含む。代表的な有機材料としては、電導性ポリマー(例えば、ポリアセチレン)、ポリ−p−キシリレンから誘導されるポリマー、及び自己集合層の形成能のある材料が挙げられる。典型的には、中間層の厚さは約0.2〜約50nmの範囲である。中間層は、開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,812,352号(Debe)及び同第5,039,561号(Debe)で開示されているもの含み、従来の技術を用いて、ナノ構造化ホイスカー上に堆積され得る。典型的には、中間層の提供に使用される任意の方法は、機械的な力によるナノ構造化ホイスカーの擾乱を回避するということが望ましい。代表的な方法としては、蒸着(例えば、真空蒸着、スパッタリング(イオンスパッタリングを含む)、カソードアーク蒸着、蒸気凝縮、真空昇華、物理的蒸気輸送、化学的蒸気輸送、金属有機化学蒸着、及びイオンビーム援用堆積)、溶液コーティング又はディスパージョンコーティング(例えば、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、注液コーティング(すなわち、液体を表面の上に注ぎ、及び液体をナノ構造化ホイスカーの上に流し、続いて溶剤除去))、浸漬コーティング(すなわち、層が溶液から分子を吸着、又はディスパージョンからコロイド他の分散粒子を吸着する充分な時間ナノ構造化ホイスカーを溶液に浸漬する)、及び電気めっき及び無電解めっきを含む電着が挙げられる。一部の実施形態では、この中間層は触媒金属、金属合金、これらの酸化物又は窒化物である。追加的な詳細は、例えば、開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,790,304号(Hendricksら)に見出すことができる。
【0017】
一般に、特定の組成及び所望の組成を有する複数の交互層を、開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,879,827号(Debeら)、同第6,040,077号(Debeら)、及び同第7,419,741号(Vernstromら)で詳述されているように、ナノ構造化ホイスカー上にスパッタリングすることができる。
【0018】
複数の交互層を含む材料は、例えば、多数のターゲット(すなわち、Ptは第1のターゲットからスパッタリングされ、Irは第2のターゲットからスパッタリングされ、Ruは第3のターゲット(存在すれば)からスパッタリングされるなど)から、又は1つ以上の金属を含むターゲットからスパッタリングできる。この場合には、多数の組成物の単一の層が好ましいこともある。
【0019】
一部の実施形態では、スパッタリングは、少なくともアルゴン及び酸素の混合物を含み、及びスパッタリングチャンバーの中へのアルゴン:酸素流量の比が少なくとも113sccm/7sccmである雰囲気中で少なくとも一部行われる。
【0020】
典型的には、この複数の交互層は少なくとも1層を含む。層は、単一の金属又は組成物からなるものでもよいが、特にある層から別の層に移るときに、組成勾配をしばしば含む。層は、Pt、Ir、Ru、又は他の金属(例えば、Au、Os、Re、Pd、及びRh)を含む、種々の所望の材料又は必要とされる材料のいずれかを含んでもよい。典型的には、Irを含む層は、少なくとも30原子%(一部の実施形態では、少なくとも40、50、60、70、75、80、90、又は更に100原子%)のIrを含有する。典型的には、Ruを含む層は、少なくとも30原子%(一部の実施形態では、少なくとも40、50、60、70、75、80、90、又は更に100原子%)のRuを含有する。
【0021】
一部の実施形態では、複数の交互層の少なくとも一部は、少なくとも1つの遷移金属(例えば、Cr、Ni、Co、Ti、Ta、Nb、Zr、V、Hf、及びMn)、又はこれらの酸化物を更に含む。
【0022】
複数の交互層は、存在する材料の任意の順序を含んでもよい(例えば、Pt、Ir、及びRuを含む複数の交互層に対しては、Pt、Ir、及びRuを含む層の順序は、例えば、Pt、Ir、及びRu;Pt、Ru、及びIr;Ir、Pt、及びRu;Ir、Ru、及びPt;Ru、Pt、及びIr;又はRu、Ir、Ptの順序であることができる)。
【0023】
複数の交互層の得られる外側の層は、層材料(例えば、Pt、Ir、Ru、これらの合金、及びこれらの酸化物)のいずれかであることができる。
【0024】
典型的には、個別の層の平面等価厚さは0.5nm〜5nmの範囲である。「平面等価厚さ」は、不均一に分布され得る、また表面が不均一面であり得る、表面に分布された層(例えば、地表全体に分布した雪の層、又は真空蒸着のプロセスで分布した原子の層など)に関して、層の全質量が表面の突き出た面積と同じ面積に及ぶ平面上に均一に広がっていると仮定して計算される厚さを意味する(不均一な形状及びコンボリューションを無視した場合、表面によって覆われる突き出た面積は表面の全表面積以下であることに注意する)。一部の実施形態では、平均的な二層(すなわち、2つの交互層(例えば、一方がPtを含み、他方がIrを含む)が存在して、複数の交互層を作る場合の2つの隣接して層)は、50オングストローム未満の平面等価厚さを有する。一部の実施形態では、平均的な三層(すなわち、3つの交互層(例えば、Ptを含む層、Irを含む別の層、及びRuを含む別の層)が複数の交互層を構成しているときの3つの隣接する層)は、75オングストローム未満の平面等価厚さを有する。一部の実施形態では、三層の少なくとも一部は、最大50オングストローム厚である。
【0025】
一部の実施形態では、複数の交互層は、最大0.5mg/cm
2(一部の実施形態では、最大0.25、又は更に最大0.1mg/cm
2)の触媒金属(例えば、VII〜XI族及び5及び6周期)を合計で含む。一部の実施形態では、複数の交互層は0.15mg/cm
2のPtを合計で含む。
【0026】
一部の実施形態では触媒は、微細構造化基材上へのナノ構造化ホイスカー成長工程の直後に真空中でインラインで被覆される。これは、別の時間又は別の場所で触媒コーティングするために、ナノ構造化ホイスカー被覆基材を真空の中に再挿入する必要がないのでより費用効果の高い方法であることもある。触媒合金コーティングを単一のターゲットにより行う場合には、原子を充分に混合し、及び熱力学的に安定な合金ドメインを形成する充分な表面易動度を提供するのに充分なように触媒コーティングの凝縮熱がPt、Ir、Ruなどの原子及び基材表面を加熱するように、コーティング層をナノ構造化ホイスカー上に単一の工程で施すということが望ましいこともある。あるいは、例えば、触媒スパッタリング堆積工程の直後にナノ構造化ホイスカー被覆基材をペリレンレッドのアニールオーブンから出すことにより、基材を高温又は加熱中に提供して、この原子易動度を増進することもできる。
【0027】
一部の実施形態では、複数の交互層は、少なくとも部分的にラジエーションアニーリングされる。一部の実施形態では、ラジエーションアニーリングは、例えば、直前のパスから0.25mmずらした5つの連続パスで表面上を約7.5m/秒で走査する間に30μ秒パルスの形で20kHzの繰り返し速度で送達される30.7Wの平均ビーム出力及び1mmの平均ビーム幅を有する10.6μm波長のCO
2レーザーにより、少なくとも20mJ/mm
2の入射エネルギーフルエンスで行われる。
【0028】
一部の実施形態では、ラジエーションアニーリングは、少なくとも2kPa(一部の実施形態では、少なくとも5kPa、10kPa、又は更に少なくとも20kPa)の酸素の絶対酸素分圧を含む雰囲気中で少なくとも部分的に行われる。ラジエーションアニーリング(例えば、レーザーアニーリング)は、ホイスカー上の触媒コーティングを加熱して、交互堆積された層を更に相互混合して、材料のより全面的な合金化及びより大きな結晶粒径を形成するような充分な原子易動度を与えるように、触媒コーティングを急速に加熱するのに有用である。アニーリングの使用は、例えば、実施例1に示すように、酸素発生反応又は水素発生反応の活性にメリットを与え、及びその安定性を増大することが観察されてきた。この工程がナノ構造化触媒の元来の製造工程速度に釣り合うことができるような充分に速いウエブ速度でラジエーションアニーリングを施すことができることが望ましいことがある。例えば、ラジエーションアニーリングを触媒コーティングの堆積工程とインラインで行うならば、有用であることもある。ラジエーションアニーリングを触媒堆積の直後に真空中でインラインで行うならば更に望ましいこともある。
【0029】
特に3つ以上の元素が組み合されている場合には、1つ又は様々な構造の形式の合金、非晶質域、結晶性域の存在、不在、又は大きさを含む、本明細書で記述されている触媒の結晶構造及び形態的構造は、工程及び製造条件に極めて依存することがあるということが当業者により了解されている。
【0030】
一部の代表的な実施形態では、本明細書で記述されている又は本明細書で記述されているように作製される触媒電極は、電解装置アノード触媒、及び他の代表的な実施形態では電解装置カソード触媒である。電解装置のアノード及びカソード触媒は両方とも、例えば、燃料電池で有用である。
【0031】
更に、本明細書で記述されている触媒は、燃料電池膜電極アセンブリの提供に有用である。「膜電極アセンブリ」は、電解質、典型的には固体ポリマー電解質、及び少なくとも1つであるがより典型的には2つ又はそれ以上の膜に隣接する電極を備えた膜を含む構造を意味する。
【0032】
本明細書で記述される触媒を使用して、開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,879,827号(Debeら)及び同第5,879,828号(Debeら)で記述されているものなどの、燃料電池に組み込まれる触媒被覆膜(CCM)又は膜電極アセンブリ(MEA)を製造することができる。
【0033】
本明細書で記述されるMEAは燃料電池で使用されてもよい。MEAは、プロトン交換膜燃料電池(例えば、水素燃料電池)の中心要素である。燃料電池は、水素などの燃料と酸素などの酸化剤との触媒された混合物によって使用可能な電気を生み出す電気化学電池である。
【0034】
代表的な電解装置セルを
図1に図示する。
図1に示すセル10は、アノード14に隣接する第1の流体輸送層(FTL)12を含む。隣接するアノード14は電解質膜16である。カソード18を電解質膜16に隣接して配置し、第2の流体輸送層19をカソード18に隣接して配置する。FTL 12及び19を拡散体/集電体(DCC)又はガス拡散層(GDL)と呼ぶことができる。運転では、水は、セル10のアノード部分の中に導入されて、第1の流体輸送層12からアノード14を越えて通る。電源17はセル10に電流源を印加する。
【0035】
電解質膜16によって水素イオン又はプロトンのみが電解質膜16からセル10のカソード部分まで通ることができる。電子は、電解質膜16を通過することはできないが、その代わりに電流の形で外部電気回路を通じて流れることができる。
【0036】
水素イオン(H+)はカソード18を越えた電子と結合し、水素ガスはカソード18に隣接する第2の流体輸送層19から捕集される。酸素ガスは、アノード14に隣接する第1の流体輸送層12経由でセル10のアノードで捕集される。
【0037】
ガス拡散層(GDL)が、アノード及びカソード電極材料の間を行き来するガス輸送を促進して、電流を伝導する。GDLは、多孔質及び導電性の両方であり、典型的には炭素繊維から構成される。またGDLは、流体輸送層(FTL)又は拡散体/集電体(DCC)と呼ばれる場合もある。一部の実施形態では、アノード及びカソード電極層をGDLに適用し、結果として生じる触媒コーティングされたGDLでPEMを挟んで、5層MEAを形成する。5層MEAの5層は、アノードGDL、アノード電極層、PEM、カソード電極層、及びカソードGDLの順である。他の実施形態では、アノード及びカソード電極層をPEMのいずれの側にも適用し、結果として生じる触媒コーティングされた膜(CCM)を2つのGDL間に挟んで、5層MEAを形成する。
【0038】
本明細書に記載のCCM又はMEAで使用されるPEMは、任意の好適なポリマー電解質を含んでもよい。代表的な有用なポリマー電解質は、典型的には、共通の主鎖に結合するアニオン性官能基を持ち、これは、典型的には、スルホン酸基であるが、カルボン酸基、イミド基、アミド基、又は他の酸性官能基も含んでもよい。代表的な有用なポリマー電解質は、典型的には、高度にフッ素化され、最も典型的にはペルフルオロ化されている。代表的な有用な電解質としてはテトラフルオロエチレンのコポリマー及び少なくとも1つのフッ素化酸官能性コモノマーが挙げられる。典型的なポリマー電解質としてはDuPont Chemicals(Wilmington,DE)から商品名「NAFION」及びAsahi Glass Co.Ltd.(Tokyo,Japan)から商品名「FLEMION」で入手可能なものが挙げられる。このポリマー電解質は、公開が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,624,328号(Guerra)及び同第7,348,088号(Hamrockら)及び米国特許公告第2004/0116742号(Guerra)で述べられているテトラフルオロエチレン(TFE)及びFSO
2−CF
2CF
2CF
2CF
2−O−CF=CF
2のコポリマーであり得る。このポリマーは、典型的には、最大1200(一部の実施形態では、最大1100、1000、900、又は更に最大800)の等価重量(EW)を有する。
【0039】
ポリマーは、任意の好適な方法により膜に形成することができる。ポリマーは、典型的には、懸濁液からキャストされる。バーコーティング、スプレーコーティング、スリットコーティング、はけ塗りなどを含む任意の適切な成型法を使用することができる。あるいは、膜は、純粋なポリマーから押出成形のような溶融プロセスにより形成してもよい。成形後、膜は、典型的には、少なくとも120℃(一部の実施形態では、少なくとも130℃、150℃以上)の温度でアニーリングされ得る。この膜は、典型的には、最大50μm(一部の実施形態では、最大40μm、30μm、又は更に最大25μm)の厚さを有する。
【0040】
このポリマー膜は、水素発生時のカソード側の高い圧力により膜にかかる時として大きな圧力差に耐えるための追加の機械的強度と共にイオン交換ポリマー(イオノマー)を提供する絡み合った繊維の多孔質網目からなる支持体マトリックスも含むことができる。この支持体マトリックスは、発泡ポリテトラフルオロエチレン(例えば、商品名「TEFLON」でDuPont Chemicals(Wilmington,DE)から入手可能なもの)又はイオノマーの酸性環境中で安定な部分フッ素化繊維マトリックスから作製することができる。
【0041】
一部の実施形態では、膜は、ナノファイバーマットによって補強された第1のプロトン伝導性ポリマーを有する電解質膜を含み、ナノファイバーマットは、ポリマー及びポリマーブレンドから選択される繊維材料を含むナノファイバーから作られ、繊維材料は、第1の繊維材料のプロトン伝導度を有し、第1のプロトン伝導性ポリマーは、第1のプロトン伝導性ポリマー伝導度を有し、繊維材料のプロトン伝導度は、第1のプロトン伝導性ポリマー伝導度より低い。
【0042】
一部の実施形態では、電解質膜の繊維材料としては、高フッ素化ポリマー、過フッ素化ポリマー、炭化水素ポリマー、ブレンド及びそれらの組み合わせが挙げられ得る。一部の実施形態では、電解質膜の繊維材料としては、PVDF、PES、PEI、PBI、PPO、PEEK、PPES、PEK、ブレンド及びそれらの組み合わせからなる群から選択される電界紡糸に好適なポリマーが挙げられ得る。一部の実施形態では、膜中の繊維材料は静電紡糸ナノ繊維であってもよい。一部の実施形態では、電解質膜の繊維材料としてはMn又はCeから選択される元素を含み得る安定化添加剤が挙げられ得る。
【0043】
代表的な膜に対する追加の詳細は、例えば、開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許公告第2008/0113242号及び同第2002/0100725号、及び同第2011/036935号に見出すことができる。
【0044】
所望によって、この膜は、ナノ構造化ホイスカーの堆積に先立ち酸(例えば、任意の金属カチオン不純物を除去するために1モルの硝酸、又は有機不純物を除去するために硝酸プラス過酸化水素、続いて脱イオン水中でのリンス)の中で洗浄して、カチオン不純物を除去する。洗浄浴の加熱(例えば、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、又は更に80℃)はクリーニングを迅速化し得る。膜を酸洗浄するメリットは、具体的な膜に依存することもある。
【0045】
MEAの製造では、GDLをCCMのいずれかの面に適用することができる。GDLを任意の適切な手段で適用してよい。好適なGDLには使用する電極電位で安定なものが挙げられる。例えば、カソードGDLは、水素発生に充分な低電位で運転されるので、遊離のカーボンブラック又は炭素繊維を含有することができるのに対して、アノードGDLは、典型的には、Ti又は酸素発生に特徴的な高電位である他の安定な材料でできている。典型的には、カソードGDLは、織った炭素繊維構造体又は不織の炭素繊維構造体である。代表的な炭素繊維構造体としては、例えば、商品名「TORAY」(カーボンペーパー)でToray(Japan)から;「SPECTRACARB」(カーボンペーパー)でSpectracorb(Lawrence,MA)から;及び「ZOLTEK」(カーボンクロス)でSt.Louis,MOから、並びにMitibushi Rayon Co(Japan);及びFreudenberg,Germanyから入手可能なものが挙げられる。GDLは、炭素粒子コーティング、親水化処理、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によるコーティングなどの疎水化処理を含む、種々の材料により被覆又は含浸され得る。
【0046】
典型的には、電解装置アノードGDLは、1.23Vの水酸化の熱力学的電位より上の使用電位での電解装置運転のために、腐食せず(例えば、Ti−10V−5Zr)かつ(例えば、Ti GDLの場合にはPt又はAu層をこの表面上にスパッタリング堆積又は電気めっきすることにより)適切な電導性を有する、例えばAu、Ti、Ta、V、Zr又は金属合金から構成される金属フォーム又は多孔質金属スクリーン又はメッシュである。
【0047】
使用時には、本明細書に記述されているMEAは、典型的には、分配板として既知の、バイポーラプレート(BPP)又はモノポーラプレートとしても既知の2枚の剛性の板の間に挟まれる。GDLのように、分配板は、電導性であり、かつそれを配置する電極GDLの電位で安定でなければならない。この分配板は、典型的には、カーボン複合体、金属、又はめっきされた金属などの材料でできている。GDLについては、電解装置のカソード板は、燃料電池での使用に汎用の任意の材料であることができ、電解装置のアノード板は、可逆性水素電極(RHE)の電位に対して1.23ボルト、又は最大1.5ボルト、2.5ボルト上の電位以上で腐食しない材料から作製されなければならない。アノード板用の代表的なコーティングはTi−10V−5Zrを含む。分配板は、典型的には、MEAに面する表面内に刻印、フライス削り、成形、又は打ち抜きで作られた少なくとも1つの流体伝導チャネルからMEA電極表面間で反応物質又は生成物質の流体を分配する。これらのチャネルは、流動場と呼ばれることもある。分配板は、スタック中の2つの連続的なMEAと流体を交換することができ、1つの面は水を第1のMEAのアノードに供給し、酸素を第1のMEAのアノードから除去し、もう1つの面は発生した水素及び水を次のMEAのカソードから取り除き(膜上で交差する)、そのため用語「二極板」と呼ばれる。あるいは、分配板は、1つの面上にのみチャネルを有して、その面上でのみ流体をMEAと交換することができ、「単極板」と呼ばれることがある。当該技術分野において使用されるとき、用語二極板は、典型的には、単極板も包含する。典型的な燃料電池スタックは、二極板と交互に積み重ねられた複数のMEAを含む。
【0048】
電解触媒は、例えば、水からのH
2及びO
2の発生において有用である。例えば、水からの水素及び酸素の発生は、:
任意の順序でPt及びIr(又は他のアノード触媒)を含むその上に多数の交互層を有するナノ構造化ホイスカーを含むアノード触媒及びカソードを含む膜電極アセンブリを準備する工程;
このアノード触媒に接触する水を提供する工程;及び
この膜電極アセンブリ(すなわち、アノード対カソード)に充分な電流を与える電位を付与して、このカソード及びアノード上でこの水の少なくとも一部を水素及び酸素に変換する工程を含む方法による。一部の実施形態では、このPt、Ir、及びRuは、0.1:5:5〜10:0.05:0.05の範囲の原子比で存在する。
【0049】
代表的な実施形態
1A.触媒電極を作製する方法であって:
少なくともPt及びIrをナノ構造化ホイスカー上にスパッタリングして、それぞれ任意の順序でPt及びIrを含む複数の交互層を提供する工程;及び
それぞれPt及びIrを含む複数の交互層の少なくとも一部を、少なくとも部分的に、少なくとも2kPa(一部の実施形態では、少なくとも5kPa、10kPa、又は更には少なくとも20kPa)の絶対酸素分圧の酸素を含む雰囲気中で、ラジエーションアニーリング(例えば、レーザーアニーリング)する工程を含む、方法。
2A.上記ラジエーションアニーリングが少なくとも20mJ/mm
2の入射エネルギーフルエンスで少なくとも一部行われる、実施形態1Aに記載の方法。
3A.上記Pt及びIrが、10:1〜1:10の範囲の原子比で存在する、実施形態1A又は2Aに記載の方法。
4A.上記Ptが第1のターゲットからスパッタリングされ、及び上記Irが第2のターゲットからスパッタリングされる、実施形態1A〜3Aのいずれか一項に記載の方法。
5A.上記Pt及びIrの少なくとも一部が共通のターゲットからスパッタリングされる、実施形態1A〜3Aのいずれか一項に記載の方法。
6A.上記複数の交互層が最大1mg/cm
2の触媒金属を合計で含む、実施形態1A〜5Aのいずれか一項に記載の方法。
7A.上記複数の交互層が0.15mg/cm
2のPtを合計で含む、実施形態1A〜6Aのいずれか一項に記載の方法。
8A.上記複数の交互層がIrを含む最外層を有する、実施形態1A〜7Aのいずれか一項に記載の方法。
9A.上記複数の交互層の少なくとも一部が少なくとも1つの遷移金属又はこれらの酸化物を更に含む、実施形態1A〜8Aのいずれか一項に記載の方法。
10A.上記ホイスカーが支持体に取り付けられている、実施形態1A〜9Aのいずれか一項に記載の方法。
11A.上記支持体が膜であり、及び上記方法が、上記ナノ構造化ホイスカーを膜に取り付けるのに先立ちカチオン不純物を除去するために、酸洗浄を更に含む、実施形態10Aに記載の方法。
12A.上記支持体がその表面の少なくとも1つの上に微細構造を有する、実施形態10Aに記載の方法。
1B.触媒電極を作製する方法であって:
少なくともPt及びIrをナノ構造化ホイスカー上にスパッタリングして、それぞれ任意の順序でPt及びIrを含む複数の交互層を提供し、上記複数の交互層の少なくとも一部が最大20(一部の実施形態では、15、10未満、又は更には5未満)オングストローム厚である工程を含む、方法。
2B.上記スパッタリングがアルゴン及び酸素の混合物を少なくとも含む雰囲気中で少なくとも部分的に行われ、及びスパッタリングチャンバー中へのアルゴン:酸素流量の比が少なくとも113sccm/7sccmである、実施形態1Bに記載の方法。
3B.上記Pt及びIrが1:5〜5:1の範囲の原子比で存在する、実施形態1B又は2Bのいずれか一項に記載の方法。
4B.上記Ptが第1のターゲットからスパッタリングされ、及び上記Irが第2のターゲットからスパッタリングされる、実施形態1B〜3Bのいずれか一項に記載の方法。
5B.上記Pt及びIrの少なくとも一部が共通のターゲットからスパッタリングされる、実施形態1B〜3Bのいずれか一項に記載の方法。
6B.上記複数の交互層が最大1mg/cm
2の触媒金属を合計で含む、実施形態1B〜5Bのいずれか一項に記載の方法。
7B.上記複数の交互層が0.15mg/cm
2のPtを合計で含む、実施形態1B〜6Bのいずれか一項に記載の方法。
8B.上記複数の交互層がIrを含む最外層を有する、実施形態1B〜7Bのいずれか一項に記載の方法。
9B.上記複数の交互層の少なくとも一部が少なくとも1つの遷移金属又はこれらの酸化物を更に含む、実施形態1B〜8Bのいずれか一項に記載の方法。
10B.上記ホイスカーが支持体に取り付けられている、実施形態1B〜9Bのいずれか一項に記載の方法。
11B.上記支持体が膜であり、及び上記方法が、上記ナノ構造化ホイスカーを膜に取り付けるのに先立ちカチオン不純物を除去するために、酸洗浄を更に含む、実施形態10Bに記載の方法。
12B.上記支持体がその表面の少なくとも1つの上に微細構造を有する、実施形態10Bに記載の方法。
1C.触媒電極を作製する方法であって:
少なくともPt、Ir及びRuをナノ構造化ホイスカー上にスパッタリングして、それぞれ任意の順序でPt、Ir及びRuを含む複数の交互層を提供する工程を含む、方法。
2C.上記ナノ構造化薄膜触媒を少なくとも一部空気中で照射により少なくとも20mJ/mm
2の入射エネルギーフルエンスでラジエーションアニーリング(例えば、レーザーアニーリング)することを更に含む、実施形態1Cに記載の方法。
3C.上記複数の交互層の三層組が、Pt、Ru、及びIrの順番でそれぞれ含む、実施形態1C又は2Cのいずれかに記載の方法。
4C.上記複数の交互層の三層組が、Ir、Pt、及びRuの順番でそれぞれ含む、実施形態2C又は3Cのいずれかに記載の方法。
5C.上記複数の交互層の三層組が、Ir、Ru、及びPtの順番でそれぞれ含む、実施形態2C又は3Cのいずれかに記載の方法。
6C.上記複数の交互層の三層組が、Ru、Pt、及びIrの順番でそれぞれ含む、実施形態2C又は3Cのいずれか一記載の方法。
7C.上記複数の交互層の三層組が、Ru、Ir、及びPtの順番でそれぞれ含む、実施形態2C又は3Cのいずれかに記載の方法。
8C.上記層の少なくとも一部が最大50オングストロームの厚さである、実施形態1C〜7Cのいずれか一項に記載の方法。
9C.上記Pt、Ir、及びRuが0.1:5:5〜10:0.05:0.05の範囲の原子比で存在する、実施形態1C〜8Cのいずれか一項に記載の方法。
10C.上記Ptが第1のターゲットからスパッタリングされ、上記Irが第2のターゲットからスパッタリングされ、及び上記Ruが第3のターゲットからスパッタリングされる、実施形態1C〜9Cのいずれか一項に記載の方法。
11C.上記Pt、Ir、及びRuの少なくとも2つの少なくとも一部が共通のターゲットからスパッタリングされる、実施形態1C〜9Cのいずれか一項に記載の方法。
12C.上記複数の交互層が最大1mg/cm
2の触媒金属を合計で含む、実施形態1C〜11Cのいずれか一項に記載の方法。
13C.上記複数の交互層が0.15mg/cm
2のPtを合計で含む、実施形態1C〜12Cのいずれか一項に記載の方法。
14C.上記複数の交互層がIr又はその酸化物の少なくとも1つを含む最外層を有する、実施形態1C〜13Cのいずれか一項に記載の方法。
15C.上記複数の交互層の少なくとも一部が少なくとも1つの遷移金属又はこれらの酸化物を更に含む、実施形態1C〜14Cのいずれか一項に記載の方法。
16C.上記ホイスカーが支持体に取り付けられている、実施形態1C〜15Cのいずれか一項に記載の方法。
17C.上記支持体が膜であり、及び上記方法が、上記ナノ構造化ホイスカーを膜に取り付けるのに先立ちカチオン不純物を除去するために、酸洗浄を更に含む、実施形態16Cに記載の方法。
18C.上記支持体がその表面の少なくとも1つの上に微細構造を有する、実施形態16Cに記載の方法。
1D.水から水素及び酸素を発生させる方法であって、上記方法が:
それぞれ任意の順序でPt及びIr(又は他のアノード触媒)を含む複数の交互層をその上に有するナノ構造化ホイスカーを含むアノード触媒、及びカソードを含む膜電極アセンブリを準備する工程;
上記触媒に接触する水を提供する工程;及び
上記膜電極アセンブリ(すなわち、アノード対カソード)に充分な電流を与える電位を付与して、上記カソード及びアノード上で上記水の少なくとも一部を水素及び酸素に変換する工程を含む、方法。
2D.Ruを含む層を更に含む、実施形態1Dに記載の方法。
3D.上記複数の交互層の三層組が、Pt、Ru、及びIrの順番でそれぞれ含む、実施形態1D又は2Dのいずれかに記載の方法。
4D.上記複数の交互層の三層組が、Ir、Pt、及びRuの順番でそれぞれ含む、実施形態1D又は2Dのいずれかに記載の方法。
5D.上記複数の交互層の三層組が、Ir、Ru、及びPtの順番でそれぞれ含む、実施形態1D又は2Dのいずれかに記載の方法。
6D.上記複数の交互層の三層組が、Ru、Pt、及びIrの順番でそれぞれ含む、実施形態1D又は2Dのいずれかに記載の方法。
7D.上記複数の交互層の三層組が、Ru、Ir、及びPtの順番でそれぞれ含む、実施形態1D又は2Dのいずれかに記載の方法。
8D.上記層の少なくとも一部が最大50オングストロームの厚さである、実施形態1D〜7Dのいずれか一項に記載の方法。
9D.上記Pt、Ir、及びRuが0.1:5:5〜10:0.05:0.05の範囲の原子比で存在する、実施形態1D〜8Dのいずれか一項に記載の方法。
10D.上記複数の交互層が最大2mg/cm
2の触媒金属を合計で含む、実施形態1D〜9Dのいずれか一項に記載の方法。
11D.上記複数の交互層が0.15mg/cm
2のPtを合計で含む、実施形態1D〜10Dのいずれか一項に記載の方法。
12D.上記複数の交互層がIr、Ru、又はその酸化物の少なくとも1つを含む最外層を有する、実施形態1D〜11Dのいずれか一項に記載の方法。
13D.上記複数の交互層の少なくとも一部が少なくとも1つの遷移金属又はこれらの酸化物を更に含む、実施形態1D〜12Dのいずれか一項に記載の方法。
【0050】
本発明の利点及び実施形態は、以下の実施例により更に例示されるが、これらの実施例に列挙したその特定の材料及び量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を過度に限定すると解釈されるべきではない。すべての部及びパーセンテージは、特に記載されていない限り、重量に基づく。
【実施例】
【0051】
ナノ構造化ホイスカーを作製するための一般的な方法
参照により全体として本明細書に組み込まれている、米国特許第4,812,352号(Debe)に詳述されているように、名目厚さ200nmの微細構造化転写ポリマー基材(MCTS)の上に昇華真空被覆した、ペリレン赤色顔料(「PR149」としても知られているC.I.Pigment Red 149(Clariant(Charlotte,NC)から入手))の層をサーマルアニーリングすることにより、ナノ構造化ホイスカーを作製した。
【0052】
MCTS(E.I.du Pont de Nemours(Wilmington,DE)から商品名「KAPTON」で入手したポリイミドフィルム上に作製)のロール品のウエブを基材として使用し、その上にPR 149を堆積した。MCTS基材表面は、間隔6μmで約3μmの高さのピークを持つ、V形に賦型された形状を有するものであった。次いで、所望のウエブ速度でターゲットの下でMCTSウエブの単一のパスでCrを堆積するのに充分なDCマグネトロン平面スパッタリングターゲット及び当業者に既知の典型的なAr背圧及びターゲット電力を用いて、名目で100nm厚のCr層をMCTS表面の上にスパッタリング堆積した。次いで、Cr被覆MCTSウエブをPR−149顔料材料を含有する昇華源に通した。PR 149を500℃近くの制御した温度まで加熱して、昇華源の上のウエブの単一のパスで0.022mg/cm
2、又はほぼ220nm厚のPR−149層を堆積するのに充分な蒸気圧フラックスを生じさせた。昇華の重量又は厚さの堆積速度を、膜厚に鋭敏な光学的な方法、又は重量に鋭敏な水晶振動子装置を含む、当業者に既知の任意の好適な方法で測定することができる。次いで、PR−149を被覆したウエブをPR−149の堆積したままの層を、配向した結晶性ホイスカー層に所望のウエブ速度で転換するのに充分な温度分布を有する真空に通して、ホイスカー層にSEM像から測定して1平方μm当たり68ホイスカーの平均ホイスカー(平均長さ0.6μm)の面数密度を与えることにより、PR−149コーティングを、開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,039,561号(Debe)に詳述されているように、サーマルアニーリングすることによりホイスカー相に転換した。
【0053】
ナノ構造化薄膜(NSTF)触媒層を作製するための一般的な方法
ナノ構造化ホイスカー(上述のような作製した)の層の上に触媒膜をスパッタリングコーティングすることにより、ナノ構造化薄膜(NSTF)触媒層を作製した。
【0054】
より具体的には、約5mTorr(0.66Pa)の典型的なArスパッタリングガス圧力、及び2”×10”(5cm×25.4cm)の長方形スパッタリングターゲット(Sophisticated Alloys,Inc.、(Butler,PA)から入手)を用いて、上述のような作製したナノ構造化PR 149ホイスカーを被覆した基材の上にPt又はPt二元及び三元合金をマグネトロンスパッタリング堆積した。実施例2に対しては、酸素をチャンバー中で相対流量7:113sccmでArとブレンドして、合金堆積に対してより酸化性環境を提供した。使用真空チャンバーは、開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,879,827号(Debeら)の
図4Aに概略的に図示されている。PR−149を被覆したMCTS基材をドラム上に搭載し、次いで、ドラムを回転して、基材を各々異なる元素組成を有する連続DCマグネトロンスパッタリングターゲットの上に通す。ドラムの各回転、したがって平面ターゲット上の基材の各パスに対して、所望の厚さの組み合わされた二層を2つのターゲットに対して堆積し、又は所望の厚さの三層を3つのターゲットに対してホイスカー上に堆積した。DCマグネトロンスパッタリングターゲット堆積速度を当業者に既知の標準方法により測定した。次いで、各マグネトロンスパッタリングターゲット電力を制御して、ホイスカーコーティングされた基材にドラムの各回転に対して触媒の所望の二層又は三層の厚さを得るのに充分な運転ドラム速度でその元素の所望の堆積速度を得た。二層及び三層の厚さは、同一の堆積速度及び時間を使用して、コーティングを表面に均等に拡げたということを仮定して、完全に平らな表面上に膜を堆積するならば測定される堆積材料の平面等価厚さを指す。
【0055】
典型的な二層厚さ(第1の層及び次に出てくる第2の層の合計の平面等価厚さ)は約16オングストロームであった。例えば、ホイスカー上に堆積されるPtIr合金膜に対しては、Pt
50Ir
50原子組成物合金は、各々ほぼ8オングストロームのPt及びIrのサブ層を有して、16オングストロームの二層となる。基材ホイスカー上で合金の全ターゲット装填量を得るためには、ドラム回転数を制御した。例えば、21.45mg/cm
3のPt膜密度を仮定すると、0.15mg/cm
2のPtを含有する16オングストロームの二層のPt
50Ir
50膜コーティングを得るためには、ドラムのほぼ87回転が必要となる。
【0056】
実施例1で上述したホイスカー被覆MCTS上への合金触媒の堆積に引き続いて後堆積工程を触媒層に施して、開示が参照により全体として本明細書に組み込まれている2010年4月26日出願の米国特許出願第61/328,064号で記述されているように、触媒層を効果的にアニーリングした。Pt結晶粒が成長する(2010年4月26日出願の米国特許出願シリアル番号第61/328,064号で記述されているように、X線回折の増大により測定される)二層又は三層合金触媒中で充分な加熱を誘導するために、CO
2レーザービームを試料触媒表面の上を制御された雰囲気下で、充分な入射エネルギーフルエンス、ビーム寸法、ラスター速度及びライン−ステップの大きさ又はハッチでラスターすることにより、アニーリング工程を行う。2010年4月26日出願の米国特許出願シリアル番号第61/328,064号で記述されているように、最適であると見出されかつ本実施例1で実施されるレーザーアニーリング環境条件と対照的であるのは、本明細書ではレーザーアニーリングを充分な酸素の存在において意図的に行って、燃料電池のカソード上での酸素還元と逆に電解装置のアノード上での酸素発生に対して触媒合金成分の有効性を向上するために、触媒合金成分の酸化を試行、誘起したということである。
【0057】
触媒被覆膜(CCM)を作製するための一般的な方法
上述の触媒被覆ホイスカーを、米国特許第5,879,827号(Debeら)で詳述した方法を用いて、プロトン交換膜(PEM)の一方の表面(1/2−CCM)又は両方の表面(フルCCM)上に転写することにより、触媒被覆膜(CCM)を作製した。触媒転写を、3M Company(St.Paul,MN)により製造、販売されている、名目等価重量850及び厚さ35μm(作製したまま使用)のペルフルオロスルホン酸膜、又は等価重量1100の7mil(175μm)厚の膜(商品名「NAFION 117」でE.I.du Pont de Nemours(Wilmington,DE)から入手)のいずれかの上に高温ロールラミネーションにより行った。商品名「NAFION 117」で入手した膜を酸で予備洗浄して、カチオン不純物を除去した。CCMを850等価重量PEM(3M Companyから入手可能)により作製し、高温ロール温度を350°F(177℃)とし、及びラミネーターロールがニップで合体するようにフィードするガスライン圧力を、150〜180psi(1.03MPa〜1.24MPa)の範囲とし、他方膜(「NAFION 117」)に対しては、高温ロール温度を350°F(177℃)とし、及びラミネーターロールがニップで合体するようにフィードするガスライン圧力を、120〜150psi(0.83MPa〜1.03MPa)の範囲とした。触媒を被覆したMCTSを13.5cm×13.5cmの正方形の形状に予備切断し、より大きな正方形のPEMの片面又は両面上で挟んだ。の触媒被覆MCTSをPEMの片面又は両面上に付けたPEMを、2mil(50μm)厚のポリイミドフィルムと外面上に被覆した紙との間に配置し、その後重ねたアセンブリを高温ロールラミネーターのニップに1.2ft/分(37cm/分)の速度で通した。アセンブリがなお温かい間にニップに通した直後、ポリイミド及び紙の層を急いで取り除き、PEM表面にくっついた触媒被覆ホイスカーを残しながら、CCM(又は1/2−CCM)からCr被覆MCTS基材を手で剥離した。
【0058】
フルCCMを試験するための一般的な方法
次いで、上述のように作製したフルCCMをH
2/O
2電解装置の単一のセルで試験した。フルCCMを、適切なガス拡散層と共にクアッドサーペンチン流れ場の50cm
2試験セル(Fuel Cell Technologies(Albuquerque,NM)から入手)の中に直接に設置した。アノード側の標準グラファイト流れ場ブロックを、同一の寸法及び電解装置運転時の高いアノードに耐える流れ場設計のPtをメッキしたTi流れ場ブロックで置き換えた。抵抗18MΩの精製した水をアノードに300mL/分で供給した。320A/15W電源(商品名「HP 6950L/T60」の下でHewlett Packard Company(Palo Alto,CA)から入手)をセルに加え、印加したセル電圧又は電流密度の制御に使用した。性能が安定化するまで、セルを90℃及び4A/cm
2で4時間以上運転することにより、セルをコンディショニングした。
【0059】
1/2−CCMを試験するための一般的な方法
上述のように作製したPEM(「NAFION 117」)系1/2−CCMを2mg/cm
2の市販の触媒ブラックを付けた標準電極を対向電極として取り付けたほかは、フルCCMの試験方法に従って試験した。上述で作製した1/2−CCMをカソードとして試験する場合には、アノードとして使用される標準電極はPtIr−ブラックを含むものとした。上述で作製した1/2−CCMをアノードとして試験する場合には、カソードとして使用される標準電極はPt−ブラックを含むものとした。
【0060】
35μm PEM(3M Companyから入手可能)系の1/2−CCM、5mil(125μm)厚の1100等価重量膜(「NAFION 117」)又は4mil(100μm)厚の792等価重量膜のいずれか一項に取り付けられた標準触媒ブラック電極を含む追加の1/2−CCMを作製した。次いで、2つの1/2−CCMを膜面対膜面で350°F(177℃)で接合した。次いで、フルCCM(一体化した1/2−CCMから作製)をフルCCMの一般的な試験方法で上述したように試験した。
【0061】
比較例A
上述したように作製したナノ構造化ホイスカーを、純粋なAr中でナノ構造化薄膜(NSTF)触媒層の一般的な作製方法に従って純粋なPtコーティングでスパッタリングコートした。純粋なPtを装填量0.2mg/cm
2で堆積した。酸洗浄した膜(「NAFION 117」)を用いて得られたNSTF−Pt触媒層付きのフルCCMを上述の高温ロールラミネーション法により作製した。フルCCMを50cm
2電解装置セルに搭載し、フルCCMの一般的な試験方法に従って試験して、
図2に示す分極曲線20を得た。
【0062】
比較例B
PtIr合金コーティングを純粋なAr中でナノ構造化ホイスカー上にスパッタリング堆積したことを除いて、比較例Bを比較例Aと同一の方法で作製した。PtIr合金はPt
50Ir
50であり、16オングストロームの二層厚さに堆積した。触媒コーティングは、Pt:Irの二層を50:50原子比で合計Pt装填量0.15mg/cm
2まで含有した。酸で洗浄した膜(「NAFION 117」)を用い、得られたNSTF−Pt
50Ir
50触媒層を用い、CCMの一般的な作製方法に従って1/2−CCMを作製した。標準カソードが2mg/cm
2 Pt−ブラックである、膜(「NAFION 117」)系1/2−CCMの一般的な試験方法を用いて、得られた1/2−CCMをアノードとして試験した。比較例Bに対して得られた分極曲線21を
図2に示す。
【0063】
比較例C
比較例Cを作製するために、最初に、16オングストロームの二層厚として堆積されたPt
50Ir
50合金を含有するNSTF触媒層を作製した。得られたNSTF触媒層は、比較例Bに対して上述したようにPt:Ir 50:50原子比の二層及び0.15mg/cm
2 Pt装填量を有するものであった。次いで、NSTF触媒層の作製に対して上述した方法を用いて、純粋なAr中でスパッタリングコーティングすることにより、Pt
68Co
29Mn
3合金を含有する第2のNSTF触媒層を作製した。Pt及びCo
10Mn
1の2つの連続ターゲットを使用して、最大0.15mg/cm
2のPt装填量の5nmの厚さの二層を形成した。フルCCMをCCMの作製に対して上述した高温ロールラミネーション法により作製した。第1及び第2のNSTF触媒層を酸で洗浄した膜(「NAFION 117」)のいずれかの面に貼り合わせた。フルCCMを、フルCCMの試験に対して上述した方法を用いて試験した。比較例Cに対して得られた分極曲線22を
図2に示す。
【0064】
比較例D
アノード上に2mg/cm
2のPtIr−ブラック及びカソード上に2mg/cm
2のPt−ブラックを付けた膜(「NAFION 117」)上のフルCCMを作製し、フルCCMの試験に対する方法を用いて試験した(ベースラインとして使用される)。生成分極曲線23を
図2に示す。
【0065】
(実施例1)
実施例1 NSTF触媒を比較例B(NSTF−Pt
50Ir
50合金について述べたようにナノ構造化ホイスカー上16オングストロームの二層厚さ及び0.15mg/cm
2のPt装填量で作製した)。次いで、開示が参照により全体として本明細書に組み込まれている2010年4月26日出願の米国特許出願シリアル番号第61/328,064号で記述されているレーザー走査システム及び配置を用いて、触媒層を空気中外周圧力でレーザーアニーリングした。CO
2レーザー走査速度は4.5m/秒であり、パルス長は30μ秒であり、走査繰り返し速度は20kHzであり、「ハッチ」又は試料にわたっての各走査の間のビームの変位は0.25mmであり、スポットの大きさは250μmであり、及び室力設定は最大出力の52%であった。平均ビーム出力は30.7Wであった。
【0066】
ビーム偏極は触媒膜基材上のMCTS溝に平行であった。
CCMの一般的な作製方法に従ってレーザーアニーリングした触媒を35μm厚の850等価重量のPEM(3M Company)上に貼り合わせ転写することにより、1/2−CCMを作製した。得られた1/2−CCMを、等価重量792、厚さ100μm及び標準カソード2mg/cm
2 Pt−ブラックの膜(「NAFION 117」)により作製した別の1/2−CCMにPEM対PEMで350°F(177℃)で接合した。次いで、完成したCCMをフルCCMの試験方法に従って試験した。生成分極曲線25dを
図2に示す。実施例1に対する曲線を35で表示した、一定電流密度での電圧対時間曲線のプロットを
図3に示す。
【0067】
(実施例2)
NSTF触媒層の作製について上述した方法を用いて、実施例2のNSTF触媒(NSTF−Pt
50(Ir
25Ru
25))を堆積した。3つの別のターゲットからPt、Ir、及びRuを相対流量113sccm及び7sccmのO
2入りのAr中でスパッタリングすることにより、実施例2のNSTF触媒層を作製した。得られたNSTF触媒層は0.15mg
Pt/cm
2の触媒装填量を有し、及び各三層は10オングストロームの厚さであった。
【0068】
実施例2のNSTF−触媒層を800等価重量35μm厚の膜(3M Companyから入手可能)の一方の面に貼り合わせることにより、1/2−CCMを作製した。得られた1/2−CCMをフルCCMとし、実施例1と同一の方法で試験した。生成分極曲線26を
図2に示す。実施例2に対する曲線を36で表示した、一定電流密度での電圧対時間曲線のプロットを
図3に示す。
【0069】
(実施例3)
スパッタリングをチャンバーの中へのO
2の追加流れを添加せずに純粋なAr中で行ったことを除いて、実施例3を実施例2と同一の方法(実施例2と同一の触媒組成物及び装填量)で作製した。加えて、レーザーアニーリングを4% H
2入りのN
2の大気圧以下の圧力(200Torr(26.7KPa))の実質的に酸素を含まない環境で行ったこと、及びレーザー出力を最大の48%としたことの顕著な差異を除いて、実施例3のNSTF触媒層を実施例1におけるようにレーザーアニーリングした。実施例3のNSTF触媒層を1/2−CCMとし、実施例1と同一の方法で試験した。生成分極曲線27を
図2に示す。実施例3に対する曲線を37で表示した、一定電流密度での電圧対時間曲線のプロットを
図3に示す。
【0070】
本開示の範囲及び趣旨から外れることなく、本発明の予測可能な修正及び変更が当業者には自明であろう。本発明は、説明を目的として本出願に記載される各実施形態に限定されるべきものではない。