特許第6334678号(P6334678)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334678
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】医療用ドレッシング
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20060101AFI20180521BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20180521BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20180521BHJP
   A61L 15/20 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 23/02 20060101ALI20180521BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20180521BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61F13/02 310M
   A61F13/02 310J
   A61F13/02 310D
   A61K9/70 401
   A61K31/192
   A61L15/20 110
   A61P29/00
   A61P31/04
   A61P31/12
   A61P23/02
   A61K47/34
   A61K31/405
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-505708(P2016-505708)
(86)(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公表番号】特表2016-518895(P2016-518895A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】DK2014050070
(87)【国際公開番号】WO2014161548
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2017年1月16日
(31)【優先権主張番号】PA201370184
(32)【優先日】2013年4月3日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】500085884
【氏名又は名称】コロプラスト アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング イグウェブイケ
(72)【発明者】
【氏名】グラジナ ハンセン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン マルクセン
(72)【発明者】
【氏名】トマス ヨン イェンセン
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−525219(JP,A)
【文献】 特表2014−511851(JP,A)
【文献】 特表2009−534057(JP,A)
【文献】 特表2003−522596(JP,A)
【文献】 特開平05−192363(JP,A)
【文献】 特表2001−509694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00−13/14
A61L 15/00−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に対向する面と皮膚に対向しない面を有する吸収性粘着剤層を含む医療用ドレッシングであって、前記皮膚に対向しない面は裏打ち層を備え、前記皮膚に対向する面は前記吸収性粘着剤層の凹部パターンによって中断されており、かつ前記吸収性粘着剤層はハイドロコロイドおよび薬学的に活性な薬剤を含み、前記活性な薬剤は前記粘着剤層内に一様に分布しており、前記凹部パターンは網目状の相互接続された凹部である医療用ドレッシング。
【請求項2】
前記薬学的に活性な薬剤は、鎮痛剤、局部麻酔剤、抗微生物薬および抗ウイルス剤から選択される請求項1に記載の医療用ドレッシング。
【請求項3】
前記薬学的に活性な薬剤は、鎮痛剤および局部麻酔剤から選択される請求項1または2に記載の医療用ドレッシング。
【請求項4】
前記薬学的に活性な薬剤は、非ステロイド系消炎剤(NSAID)から選択される請求項1〜3のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング。
【請求項5】
前記薬学的に活性な薬剤が、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブまたはルミラコキシブである請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング。
【請求項6】
前記薬学的に活性な薬剤がイブプロフェンである請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング。
【請求項7】
前記薬学的に活性な薬剤が、前記吸収性粘着剤層中に0.2重量%〜10重量%の濃度で含まれたイブプロフェンである請求項6に記載の医療用ドレッシング。
【請求項8】
前記薬学的に活性な薬剤がイブプロフェンであり、かつ前記吸収性粘着剤層に含まれる量が0.3mg/cm〜10mg/cmの範囲にある請求項7に記載の医療用ドレッシング。
【請求項9】
前記凹部パターンが相互接続された幾何学的パターンの形態である請求項1〜8のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング。
【請求項10】
前記凹部パターンが相互接続された不規則なパターンの形態である請求項1〜9のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング。
【請求項11】
前記吸収性粘着剤層の厚さが少なくとも0.5mmである請求項1〜10のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング。
【請求項12】
吸収性粘着剤層の皮膚に対向する面における前記凹部の面積が、前記吸収性粘着剤層の前記皮膚に対向する面の面積の少なくとも20%を占める請求項1〜11のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング。
【請求項13】
前記凹部の深さが前記吸収性粘着剤層の厚さの少なくとも15%である請求項1〜12のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング。
【請求項14】
中心部と前記中心部を包囲する周辺部に分けられ、前記周辺部の前記吸収性粘着剤層の前記皮膚に対向する表面は連続しており、かつ前記中心部の前記吸収性粘着剤層の前記皮膚に対向する表面は前記凹部パターンにより中断されている請求項1〜13のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング。
【請求項15】
前記裏打ち層がポリウレタンフィルムである請求項1〜14のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚、例えば水泡または創傷に使用する医療用ドレッシングであって、吸収性粘着剤層に組み込まれた、薬学的に活性な薬剤を含む医療用ドレッシングに関する。ドレッシングは、薬学的に活性な薬剤の初期放出を増加させる効果を有する凹部パターンによって中断されている皮膚に対向する面を有する。
【背景技術】
【0002】
裏打ち層およびハイドロコロイド粘着剤層を含む創傷ドレッシングはよく知られているが、そのようなドレッシングはハイドロコロイドドレッシングとして知られているかもしれない。これらのドレッシングは、水泡または徐々に滲出する創傷への貼付には優れているが、出血性創傷または擦過傷などの急速に滲出する創傷に付着させるには困難な場合がある。ハイドロコロイド粘着剤は、大量の水分を吸収ことができるが、初期の吸収は遅いため、瞬時には吸収できない。
【0003】
通常、ハイドロコロイドドレッシングの皮膚または創傷に当接する連続面は、液体を瞬時には吸収しない。これは、創傷にこのドレッシングを貼付している間、流体の微小液滴がドレッシングの表面に沿って押し出されるという問題を招き、この流体は押し出されてドレッシングの端部にまで達するので、接着不良や早期の剥離に繋がるおそれがある。初期の吸収に伴う問題を解決するために様々な試みが行われてきた。
【0004】
1つの方法は、例えばハイドロコロイドの量を増加させることにより、初期の吸収が速くなるように粘着剤を最適化することである。しかしながら、ハイドロコロイドを増加させると、粘着性タックが低下し、それにより創傷ドレッシングの装着時間が短縮されるおそれがある。したがって、体液生成速度に対処するのに必要な吸収速度の増加は、良好な粘着性を有するハイドロコロイドドレッシングとは両立しない。
【0005】
別の方法は、創傷ドレッシングに、例えば、ガーゼ、フォームまたはセルロース材料などの吸収性材料からなるパッドなどの、吸収性中央ゾーンを設けることである。これにより、製造に余分な工程を加えられることになり、得られる製品はより目立つようになり、柔軟性が低下するおそれがある。さらに、吸収性パッドを追加すると、創床上にハイドロコロイド粘着剤を有する利点がもはやなくなるため、ハイドロコロイドドレッシングの性質が根本的に変わる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、薬学的に活性な薬剤を初期に大量に、例えば水泡または開放創へ直接放出させることができる吸収性ドレッシングを提供することである。創傷や、例えば破裂している水泡に、前記初期の放出を直接施しながら、それらからの滲出液を処理することができる吸収性ドレッシングを提供することが、本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様では、本発明は、皮膚に対向する面と皮膚に対向しない面を有する吸収性粘着剤層を含む医療用ドレッシングであって、皮膚に対向しない面は裏打ち層を備え、皮膚に対向する面は凹部パターンによって中断されており、かつ吸収性粘着剤層は薬学的に活性な薬剤を含む医療用ドレッシングに関する。医療用ドレッシングは、例えば、創傷、擦過傷または水泡に対し活性な薬剤を放出させながら、滲出液を処理するのに使用し得る。そのような創傷、擦過傷または水泡が患者に痛みを引き起こしている場合、活性な薬剤は、例えば、鎮痛剤、消炎剤または局所麻酔剤であり得る。
【0008】
第2の態様では、本発明は、創傷、擦過傷または水泡の痛みを治療する方法であって、前記創傷、擦過傷または水泡に、皮膚に対向する面と皮膚に対向しない面を有し、皮膚に対向しない面は裏打ち層を備え、皮膚に対向する面は凹部パターンによって中断されており、かつ吸収性粘着剤層が鎮痛剤および局所麻酔剤から選択される薬学的に活性な薬剤を含む医療用ドレッシングを貼付する工程を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の好ましい実施形態を示す斜視図である:周辺部(3)に包囲された中心部(2)を含む医療用ドレッシング(1)。中心部は、薬学的に活性な薬剤を含む吸収性粘着剤からなる、ドット(5)間に、網目状の相互に接続された凹部(4)を含む。中心部(2)と周辺部(3)間の移行ゾーンに沿って、凹部(4)に接続された溝(6)がある。
図2図1のA−Aの線に沿うドレッシングの断面を示す図であり、皮膚面(9)とは反対側を向き、皮膚に対向する面に薬学的に活性な薬剤(8)を含む吸収性粘着剤層を被覆した裏打ち層(7)を開示している。皮膚に対向する面には、エンボス加工された凹部(4)と不連続な吸収性粘着剤ゾーン(5)がある。
図3】4種の異なる吸収性粘着剤を含むドレッシングについて、μg/cmで表したイブプロフェンの経時的な放出を示す。本発明の試料C(三角)およびD(×)は皮膚に対向する面に凹部パターンを有し、それぞれ1重量%および5重量%の濃度のイブプロフェンを含む。試料E(四角形)およびF(点線)は、類似の吸収性粘着剤を含む、連続する皮膚に対向する面を有するドレッシングであり、それぞれ1重量%および5重量%の濃度のイブプロフェンを含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の医療用ドレッシングは、皮膚に対向する面と皮膚に対向しない面を有する吸収性粘着剤層を含み、皮膚に対向しない面は裏打ち層を備え、吸収性粘着剤層の皮膚に対向する面は凹部パターンによって中断されており、かつ吸収性粘着剤層は薬学的に活性な薬剤を含む。
【0011】
本発明の医療用ドレッシングは、第1に、液体が吸収されるまで液体をドレッシング中に貯蔵する凹部パターンのリザーバを設けることによって液体処理容量の増加を促進する。このようにして、凹部を包囲する皮膚に対向する吸収性粘着剤は、液体が比較的少ない状態を維持することができ、吸収を開始する間、皮膚に粘着する。吸収性粘着剤の初期の吸収容量は表面積の関数であり、したがって、液体が接触する表面の面積が大きくなるほど、吸収速度はより速くなる。したがって、第2に、凹部が、表面積を増加させることによって、より速い吸収を提供する。
【0012】
これまでの創傷ドレッシング解決策は、通常、創傷から垂直方向に、裏打ち層に向けて液体を排除することに重点が置かれており、ドレッシングの厚さが厚いほど液体を排除する容量が大きくなる。薬学的に活性な薬剤の放出は、少なくとも部分的には、それを含む層を通る移動に依存し得るので、層が厚いほど放出は緩慢になる。本発明者らは、本医療用ドレッシングによって、例えば化学促進剤のような放出助剤に頼らない、この問題に対する解決策を見出した。
【0013】
本発明者らは、驚いたことに、液体の吸収速度がより速くなる−創傷面からドレッシングへの移動−にも拘わらず、同時に、吸収層中の活性薬剤の初期の放出が、そのような凹部パターンを有さないドレッシングに比べて、より速くなることを見出した。吸収性粘着剤層が凹部パターンを有することによって、貼付後最初の30分間の放出が増加することがわかった。これは、例えば水泡が患者に痛みを引き起こし、その痛みを迅速に軽減することが望まれるときなど、活性薬剤の治療効果の迅速な発現が望まれるときに有利になる。
【0014】
本発明の一実施形態では、30分後に放出される薬学的に活性な薬剤の量が、前記凹部パターンがない医療用ドレッシングの放出量と比べて、少なくとも20%増加する。初期の放出が増加するため、医療用ドレッシング中の活性薬剤の濃度を増加させなくとも、短期の効果を増大させることができる。本明細書中の実施例3の放出試験は、凹部パターンが、前記凹部パターンがない類似のドレッシングと比べて、如何にして活性薬剤の放出量を増加させるかを示す良い例である。本発明の好ましい実施形態では、放出量が、前記凹部パターンがない医療用ドレッシングと比べて、少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%増加する。実施例3では、30分後に放出された活性な薬剤の量を測定し得る方法を比較試験で示し、また計算例も示す。
【0015】
本発明の医療用ドレッシングは、薬学的に活性な薬剤を含むが、1種以上の他の活性薬剤をさらに含んでもよい。1種より多くの薬剤を含む場合、これらは、例えば、鎮痛と抗菌など、同じ治療群のものであっても、異なる治療群のものであってもよい。「薬学的に活性な薬剤」という用語は、広く解釈されるべきであり、ヒトに生理学的または薬理学的効果(治療および予防の両効果を含む)を示す、医療用ドレッシングから送達され得る任意の薬剤を含む。この用語はさらに、局部的および/または全身的効果を生じる薬剤を含む。本発明の好ましい実施形態では、薬学的に活性な薬剤は、局部的な効果を生じる薬剤である。薬学的に活性な薬剤という用語はさらに、そのような薬剤の活性成分の各種形態、例えば、分子錯体、結晶形態、アモルファス形態、水和物などの溶媒和物、または薬学的に許容される、任意の塩生成薬剤による塩を含むが、これらに限定されない。
【0016】
本発明に適した薬学的に活性な薬剤は、例えば、非ステロイド系消炎剤(NSAID)などの鎮痛剤、麻酔剤、局部麻酔剤、抗菌剤および抗真菌剤などの抗微生物薬、抗ウイルス剤、もしくはホルモン剤、または2種以上の薬学的に活性な薬剤が組み込まれるならば、これらの組み合わせであり得る。本発明の好ましい実施形態では、薬学的に活性な薬剤は、鎮痛剤、局部麻酔剤、抗微生物薬および抗ウイルス剤から選択される。本発明のより好ましい実施形態では、薬学的に活性な薬剤は、鎮痛剤および局部麻酔剤から選択される。上記実施形態では、さらに他の薬学的に活性な薬剤が含まれてもよく、この場合、それは、本明細書で先に言及したものなどの、同じ系の治療群から選択されても、異なる系の治療群から選択されてもよい。このようにして、例えば、痛みの軽減、および水泡における感染の治療または予防を行う組み合わせ治療を行い得る。
【0017】
鎮痛剤は伝統的に、例えば、パラセタモールなどの非オピイオド(non−opiod)鎮痛剤、および非ステロイド系消炎剤(NSAID);例えば、コデイン、デキストロプロポキシフェンまたはジヒドロコデインなどの弱オピオイド鎮痛剤;ならびに、例えば、モルヒネ、ブプレノルフフィン、オキシコドン、ジアモルフィン、メタドン、フェンタニール、ペンタゾシンまたはペチジンなどの強オピイオド(opiod)鎮痛剤に分類できる。本発明の好ましい実施形態では、鎮痛剤は局所的に活性な鎮痛剤である。これらは、NSAID、および局所的に活性なオピオイド、例えば、モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドン、メタドンまたはフェンタニールなどから選択することが好ましく、NSAIDから選択することがより好ましい。
【0018】
NSAIDは、シクロ−オキシゲナーゼ−1および−2(COX−1およびCOX−2)を阻害することにより、またはCOX−2を選択的に阻害し、痛みを発生させるプロスタグランジンの生成を防止することにより、鎮痛および消炎作用を示す。アセチルサリチル酸はCOX−1のみを阻害することが知られている。よく知られた胃腸への副作用(全身的に投与するとCOX−1の阻害により生じる)を軽減するには、選択的COX−2阻害剤が好ましいであろうが、他方で心血管事故の危険性が増大することに繋がる。しかしながら、本発明の医療用ドレッシングは、低用量でNSAIDを局所的に投与して作用を速やかに発現させ、それにより、全身的有効量を用いる従来の経口投与で見られる全身効果を避けることができる。本発明で好適に使用し得るNSAIDの例としては、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブまたはルミラコキシブが挙げられる。本発明の好ましい実施形態では、薬学的に活性な薬剤は、COX−1およびCOX−2を阻害するNSAID、ならびに/またはCOX−2を選択的に阻害するNSAIDから選択される。
【0019】
本発明の一実施形態では、NSAIDは、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸から選択される。本発明の好ましい実施形態では、NSAIDは、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカムおよびイソキシカムから選択される。本発明のより好ましい実施形態では、NSAIDは、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラクおよびジクロフェナクから選択される。本発明の他の好ましい実施形態では、NSAIDはイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジンおよびロキソプロフェンから選択される。本発明の特定の実施形態では、NSAIDはイブプロフェン、ジクロフェナクおおびピロキシカムから選択される。本発明の最も好ましい実施形態では、薬学的に活性な薬剤はイブプロフェンである。
【0020】
局所麻酔剤は、皮膚または粘膜の知覚神経終末を遮断することにより機能する。本発明で使用することができ、かつ局所の表面使用用として知られている局所麻酔剤の例としては、アメソカイン、アミロカイン、ベンゾカイン、ブタカイン、ブトキシカイン、ブチルアミノベンゾエート、シンコカイン、クリブカイン、クロルメカイン、コカイン、シクロメチカイン、ジメチソキン、ジペロドン、ジクロカイン、ヘキシルカイン、イソブタムベン、ケトカイン、リグノカイン、ミルテカイン、オクタカイン、オキセサゼイン、オキシブプロカイン、パレトキシカイン、プラモキシン、プリロカイン、プロパノカインもしくはプロピポカイン、または、例えば、リグノカインと組み合わせたプリロカインのような、これらの組み合わせが挙げられる。
【0021】
抗微生物薬は伝統的に抗菌剤と抗真菌剤とに分類し得る。本発明で使用することができ、かつ局所使用用として知られている抗菌剤の例としては、フシジン酸、フシジン酸ナトリウム、レタパムリン、ムピロシン、オキシテトラサイクリン、ポリミキシンB、カナマイシン、バシトラシン、バシラシン亜鉛、またはネオマイシンが挙げられる。本発明で使用することができ、かつ局所使用用として知られている抗真菌剤の例としては、アモロルフィン、クロトリマゾール、ミコナゾール、ケトコナゾール、シクロピロックスまたはテルビナフィンが挙げられる。抗微生物薬は、本発明の医療用ドレッシングに、単一の薬学的に活性な薬剤として使用してもよく、また鎮痛剤または局所麻酔剤にさらに追加する他の薬学的に活性な薬剤として使用してもよい。
【0022】
本発明で好適に使用し得る抗ウイルス剤としては、単純ヘルペス治療用薬剤が挙げられ、これらは、好ましくは、アシクロビルおよびペンシクロビルであり得る。抗ウイルス剤は、本発明の医療用ドレッシングに、単一の薬学的に活性な薬剤として使用してもよく、また鎮痛剤または局所麻酔剤にさらに追加する他の薬学的に活性な薬剤として使用してもよい。
【0023】
薬学的に活性な成分は、粘着剤層に一様に分布させることができる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、薬学的に活性な薬剤は、吸収性粘着剤層中に0.2重量%〜10重量%の濃度で、より好ましくは0.5重量%〜8重量%の濃度で、より一層好ましくは0.5重量%〜7重量%の濃度で含有させたイブプロフェンである。濃度は、通常、約5重量%とし得る。
【0025】
薬学的に活性な薬剤の濃度を表す他の方法は、ドレッシング面のmg/cmによる。この場合、医療用ドレッシングの厚さが望ましい濃度に影響し得る。例えば、厚さ1mmの典型的なドレッシングの適切な濃度がymg/cmであれば、厚さ2mmの同様のドレッシングでは、mg/cmで表す濃度は適切にはその2倍であり得る(y×2mg/cm)。なお、ここでいうドレッシング面は、ドレッシングの皮膚に対向する面であって、凹部パターンによってドレッシングに追加される表面積には関係しない。例えば、凹部パターンを有する10×10cmのドレッシングは、この目的のためには、100cmの表面を有する。重量%とmg/cmとの関係に関する計算例:4.8重量%の活性薬剤を含み、密度が1.2g/cmである吸収性粘着剤層は、活性薬剤を40mg/cm含有し、1mmの層では、これは4mg/cmに相当する。本発明の場合のように、凹部パターンはこの数値に影響するので、40mg/cmは、凹部パターンに応じて調節され、例えば、ドレッシングの厚さの25%の深さで、33%の表面積を有する凹部パターンでは、33%×0.25=8.25%の体積が除去され、38mg/cmとなり、これは3.8mg/cmに相当する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、薬学的に活性な薬剤は、イブプロフェンであり、吸収性粘着剤層中の量は、0.3mg/cm〜10mg/cmの範囲、好ましくは0.8mg/cm〜10mg/cmの範囲、より好ましくは0.8mg/cm〜8mg/cmの範囲である。典型的には、この量は3〜6mg/cmの範囲とし得る。後の値は、例えば、医療用ドレッシング−より具体的にはドレッシングの吸収性粘着剤層−が約1mmの厚さを有する、本発明の実施形態において好ましい。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、凹部パターンは網目状の相互接続された凹部である。これは、相互接続された幾何学的パターンであってもよく、また相互接続された不規則パターンであってもよい。本発明のこれらの実施形態では、液体は凹部パターン内を水平に広がり、より大きい表面積の吸収性粘着剤に暴露されることにより、吸収の増加と迅速化が促進される。このことにより、液体処理容量は一層増大する。
【0028】
凹部パターンが網目状の相互接続された凹部であれば、液体の分配効果が得られ、1か所の液体をドレッシングの他の領域に拡げることができる。凹部パターン中に液体を拡げるのは、単なる液体の流れ、毛細管効果により、または適用中に使用者がドレッシングを指で擦るなどの外部圧力を加えることにより、あるいはこれらを組み合わせることによって行うことができる。これにより、浸出液は粘着剤表面のより広い領域に拡がり、浸出液と粘着剤の接触域は増大する。
【0029】
理論的には、浸出液の拡がりはその下の皮膚の浸軟の危険性を高めるおそれがあるが、驚いたことに、吸収の強化が、皮膚に接触していない領域の凹部とともに、浸軟の危険性を最小限に抑えることがわかった。したがって、浸出液は、周りの皮膚の浸軟が生じる前に吸収され得る。さらに、この効果の組み合わせは、湿潤な創傷治癒条件をもたらすであろう。
【0030】
本発明の医療用ドレッシングは、創傷、擦過傷および水泡に特に適している。水泡が破れた後、特に連続的に圧力が加えられていると、例えば、液体が生成され続けることがある。血液、損傷滲出液または敗れた水泡からの液体などの、創傷または皮膚からの液体が、ドレッシングに吸収される滲出液となり得る。
【0031】
「吸収性粘着剤層」という用語は、粘着剤層が吸収性成分を含んでいることを意味する。吸収性成分は、1種またはそれ以上のハイドロコロイド粒子、超吸収性粒子または繊維であり得る。粘着剤層中のハイドロコロイドの存在は、湿潤創傷治療および他の皮膚状態に良好な環境を提供する。一定量のハイドロコロイド粒子を粘着剤層に含有させることにより、創傷ドレッシングは殆どの状態で水分を調節することができる。本発明の好ましい実施形態では、吸収性粘着剤層はハイドロコロイドを含む。
【0032】
本発明のドレッシングに適したハイドロコロイドとしては、単一または多数のモノマーから調製された合成ポリマー、天然の親水性ポリマー、または化学的に改質した天然の親水性ポリマーが挙げられる。ハイドロコロイドポリマーは、直鎖でもまたは架橋していてもよい。天然ポリマー、または化学的に改質した天然ポリマーとしては、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース誘導体、キトサン、ペクチン、グアーガム、デンプン、デキストリン、コラーゲンまたはゼラチンが挙げられるが、これらに限定されない。合成ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリビニレアルコール(polyvinylealcohol)/アセテート、ポリヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホネート、ポリビニルピリリドン(polyvinyl pyrilidone)、ポリグリコール、またはこれらのコポリマー、グラフト物、もしくは混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明の一実施形態では、吸収性粘着剤層は、セルロース誘導体、キトサン、ペクチン、グアーガム、デンプン、デキストリン、コラーゲン、ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリビニレアルコール(polyvinylealcohol)/アセテート、ポリヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレート、ポリスチレンスルホネート、ポリビニルピリリドン(polyvinyl pyrilidone)、ポリグリコール、およびこれらのコポリマー、グラフト物または混合物から選択される、ハイドロコロイド粒子を含む。本発明のより好ましい実施形態では、吸収性粘着剤層はセルロース誘導体から選択されるハイドロコロイド粒子を含む。
【0034】
ドレッシングの吸収性粘着剤層の粘着剤は、適切で皮膚に優しい粘着剤であればいかなるものであってもよい。
【0035】
皮膚に優しい粘着剤は、それ自体、ヒトの皮膚に粘着させる医療用製品の製造用として知られている皮膚に優しい粘着剤であればよく、使用時間を長くするため、ハイドロコロイドまたは他の水分吸収成分を含む粘着剤が好ましい。米国特許第4,231,369号明細書、同第4,367,732号明細書、同第4,867,748号明細書および同第5,714,225号明細書に開示されている種類のものが好適であり得る。特に、米国特許第4,367,732号明細書および同第5,714,225号明細書に開示されている粘着剤が好ましい。
【0036】
本発明のドレッシングは、本発明の一実施形態においては、単一相の粘着剤からなる、すなわち1種の粘着成分から形成された形態であってもよく、あるいは本発明の他の実施形態によれば、2領域の粘着剤の形態、例えば、米国特許第5,714,225号明細書に開示されている一般的な形態、すなわち最大厚さを有する、ドレッシングの粘着剤領域の1部または全部が1種を超える粘着剤で構成されている形態であってもよい。
【0037】
凹部パターンは、皮膚に対向する粘着面(エンボス加工された凹部で分離された皮膚に当接される粘着領域のパターン、例えばドットのパターンを形成している)内の窪みまたはエンボスの形態である。皮膚に当接される粘着領域は、凹部で包囲された、不連続の領域であってもよい。粘着領域は、円、三角形、多角形などの幾何学的形状であってもよく、また、より不規則な形状であってもよい。したがって、中心部の皮膚に対向する面は、皮膚に接触しない凹部により分離された、不連続の、皮膚に接触する粘着領域を含む。皮膚に接触する粘着領域は、創傷滲出液を吸収するための吸収容量を提供するとともに、凹部の潰れを防止するスペーサーとしても機能する。
【0038】
本明細書では、凹部は、粘着剤層内に1つ以上の領域からなる形態で存在する、窪みまたはエンボスの領域であって、粘着剤層が粘着剤層より薄いか、あるいは粘着剤層が存在せず、したがって3次元体積の空洞体積を提供する領域を意味する。創傷ドレッシングの皮膚に対向する粘着面は、凹部で中断されており、したがって、これらの凹部では粘着剤と皮膚/創傷は直接接触することはない。凹部は、創傷ドレッシングの皮膚に対向する粘着面内にエンボス加工し得る。これらの凹部は、血液または創傷滲出液のリザーバ室として働き、凹部が相互接続されているときは、それらをより広い範囲に拡げる。このように、凹部は、リザーバまたは相互接続された溝の形態であってもよい。
【0039】
本発明の一実施形態では、医療用ドレッシングは中心部と中心部を包囲する周辺部に分けられ、周辺部の粘着剤層は連続しており、中心部の吸収性粘着剤層は凹部パターンにより中断されている。
【0040】
周辺部の粘着剤層は、適切な皮膚に優しい粘着剤であればよい。粘着剤は非吸収性であっても、吸収成分を含んでもよい。一実施形態では、周辺部の粘着剤層は中心部の粘着剤と同じ粘着剤からなる。すなわち中心部の粘着剤と周辺部の粘着剤は、一体化したユニットである。周辺部の吸収成分または粘着剤は、独立して、吸収性粘着剤層について先に本明細書に記載した任意のものであってよい。
【0041】
周辺部と中心部が同じ吸収性粘着剤層からなる本発明の実施形態では、薬学的に活性な薬剤は、周辺部と中心部の両方に適切に含まれ得る。周辺部の粘着剤と中心部の吸収性粘着剤が異なる本発明の実施形態では、周辺部は任意選択により薬学的に活性な薬剤を含み得る。
【0042】
本発明のドレッシングは、裏打ち層と薬学的に活性な薬剤を含む吸収性粘着剤層から構成され得る。そのようなドレッシングは裏打ち層と吸収性粘着剤層のみからなり、発泡パッド、ガーゼなどの非粘着性の吸収層は含まない。ドレッシングの吸収特性は、ドレッシング中の吸収性粘着剤の有無に関係する。粘着剤層は1種の粘着剤を含んでもよく、2種以上の粘着剤からなる形態であってもよい。例えば、ドレッシングが周辺部と中心部を含む場合、周辺部に1種の粘着剤が含まれ、中心部に他の粘着剤が含まれてもよい。
【0043】
本発明のドレッシングを、例えば、出血性の創傷に貼付すると、創傷上の血液の小滴が凹部に拡がるであろう。凹部の間に位置する粘着部である、ドレッシングの創傷に接触する面は、吸収を開始している間に、凹部周りの皮膚に接触し粘着するであろう。本発明のドレッシングがさらに周辺部を含むなら、この部分は完全に皮膚に接触して粘着するであろうし、さらに、滲出液が非常に大量のある場合に、ドレッシングを押圧し続けることにより、液体が周辺部を越えて漏れることがないようにするであろう。
【0044】
このように、凹部は、過剰の液体を、粘着剤がそれを吸収し得るまで、貯留しておくことができ、過剰の液体で皮膚に接触している全粘着面が濡れることにより、創傷ドレッシングの粘着が損なわれることがない。
【0045】
周辺部および中心部を有する本発明の実施形態では、中心部は凹部のない周辺部に囲まれており、したがって、周辺部は連続した皮膚に接触する層である。凹部または他の障害物のない連続した周辺部は、中心部からの漏れを防ぐシール線として機能し、したがって停止層として機能するとともに、皮膚との良好な粘着性タックを保証する。そのような連続層には、創傷ドレッシングの中心部から液体を逃がす溝が設けられていない。周辺部は、ドレッシング面積の10〜50%、例えば15〜45%、17〜40%または20〜40%を占め得る。周辺部は、2.5〜25mm、より好ましくは3〜20mmの幅をとり得る。
【0046】
連続する周辺部は、ドレッシングの外周の厚さを減少させることによって傾斜面としてもよい。傾斜部によって、ドレッシングと皮膚との間の移行部分がより滑らかになり、ドレッシング端部の「めくれ」のリスクを減じ、それにより装着時間を短縮することができる。好ましくは、ドレッシングの外周は、米国特許第4,867,748号明細書、または米国特許第5,133,821号明細書に開示されたものと同様の傾斜面にすることができる。端部は、それに隣接する厚さがドレッシングの最大厚さの約30%を超えないよう、より好ましくは最大厚さの25%を超えないような傾斜をつけることが好ましい。
【0047】
裏打ち層は、水は通さないが蒸気を透過させる層またはフィルムとし得る。裏打ち層は、それ自体創傷ドレッシングの調製に使用することが知られている任意の適切な材料、例えば、フォーム、不織布層、またはポリウレタン、ポリエチレン、ポリエステルもしくはポリアミドフィルムで構成し得る。
【0048】
裏打ち層として使用するのに特に適した材料は、ポリウレタンフィルムである。米国特許第5,643,187号明細書に、好ましい低摩擦フィルム材料が開示されている。
【0049】
吸収性粘着剤層の厚さは、好ましくは少なくとも0.5mm、より好ましくは0.5〜2mm、より一層好ましくは0.6〜1.6mmであり得る。粘着剤層の厚さは、粘着剤層が最も厚く、凹部がない位置で測定され、したがって、厚さは、裏打ち層に垂直に測定した、皮膚に接触させる面から裏打ち層までの距離である。粘着剤層は、窪み/凹部は別として、好ましくは、中心部全体にわたって同じ厚さを有し得る。
【0050】
周辺部および中心部を有する本発明の実施形態では、周辺部の粘着剤の厚さは中心部の厚さと同じであってもよく、より薄くてもよい。中心部と周辺部の境界は、滑らかな移行を促進するために傾斜を付してもよい。一実施形態では、周辺部の厚さは0.05mm〜0.4mm、より好ましくは0.05〜0.2mm、より一層好ましくは0.05〜0.1mmである。
【0051】
中心部と周辺部の間の移行線は、凹部と相互接続された、エンボス加工による溝の形態とし得る。この溝は、漏れに対する追加の防御部として機能し得る。この溝は中心部を囲繞してもよい。
【0052】
一実施形態では、皮膚に対向する面の凹部の面積は、吸収性粘着剤層の皮膚に対向する面の面積の、少なくとも20%を占める。一実施形態では、凹部は、中心部の皮膚に対向する面の少なくとも25%、例えば少なくとも30%を占める。
【0053】
凹部は、皮膚を底壁、裏打ち層または任意の吸収性粘着剤層を頂部壁、そして粘着剤の端部を側壁として定義される3次元構造体と定義し得る。各凹部の出現は、単独で存在する窪みか、または溝として、その幅と深さにより定義し得る。凹部は、0.1〜4mm、例えば、0.1〜3mm、0.1〜2mm、0.2〜1.2mmまたは0.2〜0.8mmの幅、好ましくは0.2〜2mmの幅、より好ましくは0.2〜1.5mm、より一層好ましくは0.3〜1.2mm、最も好ましくは0.3〜1mmの幅を有し得る。幅は、粘着剤の側壁の端部間の最も狭い位置で測定される。
【0054】
皮膚に対向する面から凹部の底までを測定した凹部の深さは、凹部上の粘着剤を含まないか、またはごく薄い粘着剤層を有する裏打ち層を残した、粘着剤層の厚さと実質的に同じであり得る。一実施形態では、凹部の深さは吸収性粘着剤層の厚さより薄い。したがって、この実施形態では、吸収性粘着剤の少なくとも薄い層が凹部の上の裏打ち層に少なくとも存在する。凹部の深さは、吸収性粘着剤層の厚さの、少なくとも15%、例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも75%などであり得る。本発明の一実施形態では、凹部の深さは、吸収性粘着剤層の厚さの15%〜75%、好ましくは、20%〜75%、例えば20%〜50%などの範囲である。特定の実施形態では、凹部の深さは0.3〜0.5mmである。
【0055】
本発明の好ましい実施形態は、凹部のパターンが皮膚に対向する面の面積の少なくとも20%を占め、各凹部の出現が吸収性粘着剤層の厚さの少なくとも15%の深さと、0.1〜4mmの幅を有する医療用ドレッシングに関する。
【0056】
本発明の他の好ましい実施形態は、凹部のパターンが皮膚に対向する面の面積の少なくとも25%を占め、各凹部の出現が吸収性粘着剤層の厚さの少なくとも20%の深さと、0.2〜2mmの幅、より好ましくは0.3〜1mmの幅を有する医療用ドレッシングに関する。
【0057】
本発明のさらに他の好ましい実施形態は、皮膚に対向する面と皮膚に対向しない面を有する吸収性粘着剤層を含む医療用ドレッシングであって、皮膚に対向しない面が裏打ち層を備え、皮膚に対向する面が中心部と中心部を包囲する連続した周辺部を含み、中心部の皮膚に対向する面が網目状の相互に接続された凹部によって中断されており、凹部は皮膚に対向する面の面積の少なくとも25%を占め、各凹部の出現は吸収性粘着剤層の厚さの少なくとも20%の深さと0.3〜1mmの幅を有し、かつ吸収性粘着剤層が薬学的に活性な薬剤としてイブプロフェンを0.2重量%〜10重量%の濃度で含む医療用ドレッシングに関する。
【0058】
滲出液の処理のほかに、凹部は衝撃吸収特性を付与し、空気が満たされた凹部の「エアーバッグ」効果により圧力を軽減し得る。
【0059】
さらに、従来の連続したハイドロコロイド粘着性ドレッシングは、水分を吸収する部分で、ハイドロコロイドによる垂直吸収により厚さが増大し得るが、本発明のドレッシングはハイドロコロイド粘着剤が水平に膨張することができるので厚さの増加を減少し得る。
【0060】
第2の態様では、本発明は創傷、擦過傷または水泡の痛みの治療方法であって、前記創傷、擦過傷または水泡に、皮膚に対向する面と皮膚に対向しない面を有する吸収性粘着剤層を含む医療用ドレッシングを貼付する工程を含み、皮膚に対向しない面は裏打ち層を備え、皮膚に対向する面は凹部パターンによって中断されており、かつ吸収性粘着剤層は鎮痛剤および局所麻酔剤から選択される薬学的に活性な薬剤を含む方法に関する。
【0061】
本発明の医療用ドレッシングに関して本明細書に記載した詳細はすべて、必要な変更を加えて本発明の第2の態様の方法に適用される。
【実施例】
【0062】
実施例1
試料A:ハイドロコロイド粘着剤の連続層で被覆されたポリウレタン裏打ち層の形態のドレッシング(ハイドロコロイドは最新技術を代表するカルボキシメチルセルロースである)。ドレッシングは9.6×9.6cmで、厚さは1.0mmであった。
【0063】
試料B:単純化するために薬学的に活性な薬剤を省いた以外は、本発明のドレッシング。ハイドロコロイド粘着剤層で被覆したポリウレタン裏打ち層を有し、ハイドロコロイドはカルボキシメチルセルロースであり、ドレッシングは中心部と中心部を包囲する周辺部を含み、粘着剤層の端部の皮膚に対向する面は連続しており、中心部の皮膚に対向する面は、図1に示すように、相互に接続された凹部により中断されている。ドレッシングは9.6×9.6cmで、厚さが1.0mmであり、凹部は深さ0.25mm、幅0.5mmであった。凹部は、中心部の皮膚に対向する面の面積の33%を構成する。周辺部の幅は10mmであった。
【0064】
試料C:吸収性粘着剤中のハイドロコロイドの一部を1重量%のイブプロフェンで置換(0.8mg/cmに相当)した以外は、試料Bと同じ、本発明のドレッシング。
【0065】
試料D:吸収性粘着剤中のハイドロコロイドの一部を5重量%のイブプロフェンで置換(3.8mg/cmに相当)した以外は、試料Bと同じ、本発明のドレッシング。
【0066】
試料E:吸収性粘着剤中のハイドロコロイドの一部を1重量%のイブプロフェンで置換(0.8mg/cmに相当)した以外は、試料Aと同じドレッシング。
【0067】
試料F:吸収性粘着剤中のハイドロコロイドの一部を5重量%のイブプロフェンで置換(4.2mg/cmに相当)した以外は、試料Aと同じドレッシング。
【0068】
実施例2−浸出液の処理
連続する皮膚と接触する粘着性表面を有する最新技術のドレッシングと対比した、本発明のドレッシングの浸出液処理特性を示すために試験を行った。
【0069】
皮膚表面を模擬したシリコーン処理ガラスプレートに試料AとBを貼付し、出血性または滲出性創傷を模擬するために、ドレッシング下のガラスプレートの穴から0.9mlの人口創傷滲出液(着色水)を注入した。その後、試料をローラーに通し、ドレッシングに圧力を加えた。
【0070】
結果:
試料A:注入した浸出液は、ドレッシング中心部の下で液体の泡を形成し、ローラーでドレッシングに圧力を加えた際、ドレッシングの皮膚と接触する表面全体に液体が飛び散り、ドレッシングの周辺部の下から漏れ出した。
【0071】
試料B:注入した浸出液は、ドレッシングの注入箇所の周りの凹部に拡がり、圧力を加えた際、液体はさらに外側の凹部に拡がった。ドレッシングの周辺部の下から液体が漏れ出すことはなく、浸出液の全量が凹部に捕捉された。
【0072】
実施例3−放出速度
目的:1.0mmの吸収性粘着剤層からのイブプロフェンの短時間放出速度と、凹部パターンを設けたことによる効果の調査。放出実験は、重度の滲出性創傷または水泡へのドレッシングの使用を模擬する。
【0073】
方法:2mL緩衝液(pH6.6、10mMのリン酸緩衝食塩水、32℃)を1cmの開口を有する測光キュベット(ポリスチレン)に加え、吸収性粘着剤層の皮膚に対向する面をキュベットに向けて試料を各キュベットの上部に固定する。測定は2回行った。その後、試料を固定したキュベットをひっくり返し(t=0)、32℃に温度コントロールしたオーブンに入れた。各時点(5、10、30、60分)で、それぞれの材料について2つの試料を取り出し、振盪させ、上下を元に戻した。その後、粘着剤を取り除き、緩衝液に侵された1cmからの放出量をHPLCにより定量するために緩衝液をキュベットから取り出した。濃度/時間依存性を下記の表1および図3に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
結果および考察:上記方法により、試料C、D、EおよびFを試験した。放出は、4つ全ての材料でほぼ類似の曲線を描いた。凹部パターンを有する試料CおよびDは、凹部のない対照と比べて、最初の30分以内において44〜48%良好な放出を示した(図3参照)。その後、差は次第に縮まり、60分でほぼ等しい放出となった。
【0076】
さらに、この方法は、緩衝液の量とその連続的な吸収性粘着剤への接近が、実際の使用では観察されない方法で、ある程度これを溶解するので、長時間の放出の試験には適さないことが観察された。したがって、長時間の放出は一部、粘着構造の部分的崩壊によるものであり、本来の放出ではない。したがって、この方法による60分後のデータは慎重に使用されなければならない。
【0077】
表1の30分のデータから、試料CとE、DとFを比較すると、放出量について次の計算ができる。
C対E:42.2−28.6μg/cm=13.6μg/cmが余計に放出される。
D対F:97.4−67.7μg/cm=29.7μg/cmが余計に放出される。
これは、凹部パターンがない医療用ドレッシングからの放出量と比較すると、それぞれ48%および44%の放出量の増加に相当する。
【0078】
したがって、凹部は短時間放出量を増加させ、吸収性粘着剤層に凹部がない医療用ドレッシングと比べると、治療薬の効果をより早期に発現させる。