特許第6334744号(P6334744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6334744PHOLEDのためのアザ−ジベンゾチオフェン又はアザ−ジベンゾフラン核をもつ新物質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334744
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】PHOLEDのためのアザ−ジベンゾチオフェン又はアザ−ジベンゾフラン核をもつ新物質
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20180521BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20180521BHJP
   C07D 491/048 20060101ALN20180521BHJP
   C07D 495/04 20060101ALN20180521BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   H05B33/22 B
   C09K11/06 690
   C09K11/06 660
   !C07D491/048
   !C07D495/04 105A
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】117
(21)【出願番号】特願2017-955(P2017-955)
(22)【出願日】2017年1月6日
(62)【分割の表示】特願2014-188613(P2014-188613)の分割
【原出願日】2010年1月15日
(65)【公開番号】特開2017-71642(P2017-71642A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2017年2月2日
(31)【優先権主張番号】61/145,370
(32)【優先日】2009年1月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/647,927
(32)【優先日】2009年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503055897
【氏名又は名称】ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チュン・リン
(72)【発明者】
【氏名】ビン・マー
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド・クウォン
(72)【発明者】
【氏名】ボリソヴィッチ・ディヤトキン
(72)【発明者】
【氏名】ウー・ヨンガン
(72)【発明者】
【氏名】ゼイナブ・エム・エルシナウィー
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5860702(JP,B2)
【文献】 特開2008−074939(JP,A)
【文献】 特表2008−545729(JP,A)
【文献】 特開2008−021687(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/114966(WO,A1)
【文献】 特表2008−543086(JP,A)
【文献】 PI, CHENGFU,MULTIPLE N-H BOND ACTIVATION: SYNTHESIS AND REACTIVITY 以下備考,ORGANOMETALLICS,2007年,V26,P1934-1946,OF FUNCTIONALIZED PRIMARY AMIDO YTTERBIUM COMPLEXES
【文献】 高橋酉蔵,薬学雑誌,Vol.78, No.8,p.943-6
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iを有する化合物からなる、有機発光デバイスの有機層に用いるための材料:
【化1】
式中、m及びnは0、1、2、3、又は4であり;
、X、X、X、X、X、X、及びXは、独立に、炭素原子及び窒素原子からなる群から選択され;
、X、X、X、X、X、X、及びXのうち少なくとも1つは窒素原子であり;
YはS又はOであり;
及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ;
及びRは、独立に、水素、アルキル、アリール、及びハライドからなる群から選択され;
及びRのうち少なくとも1つは以下のものからなる群から選択される。
【化2】
式中、R’、R’、R’、及びR’は、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができ;且つ
R’、R’、R’、及びR’は、独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールからなる群から選択される。
【請求項2】
式Iの及びRのうち少なくとも1つが、
【化3】
である、請求項1に記載の材料
【請求項3】
式Iのm+nは2以上であり、且つm+nは6以下である、請求項2に記載の材料
【請求項4】
式Iの化合物が以下のものからなる群から選択される、請求項1に記載の材料
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【請求項5】
前記有機層が発光層である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
発光層中のホスト材料である、請求項5に記載の材料。
【請求項7】
ノード;
カソード;
前記アノードとカソードとの間に配置された有機層
を含み、さらに前記有機層が下記式を有する化合物を含む、有機発光デバイス。
【化10】
式中、m及びnは0、1、2、3、又は4であり;
、X、X、X、X、X、X、及びXは、独立に、炭素原子及び窒素原子からなる群から選択され;
、X、X、X、X、X、X、及びXの少なくとも1つは窒素原子であり;
YはS又はOであり;
及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ;
及びRは、独立に、水素、アルキル、アリール、及びハライドからなる群から選択され;且つ
及びRのうち少なくとも1つは以下のものからなる群から選択される。
【化11】
式中、R’、R’、R’、及びR’は、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができ;且つ
R’、R’、R’、及びR’は、独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。
【請求項8】
及びRのうち少なくとも1つが、
【化12】
である、請求項に記載の有機発光デバイス。
【請求項9】
m+nは2以上であり、且つm+nは6以下である、請求項に記載の有機発光デバイス。
【請求項10】
前記有機層が発光層であり、且つ下記式:
【化13】
を有する前記化合物がホストである、請求項に記載の有機発光デバイス。
【請求項11】
前記有機層が発光ドーパントをさらに含み、
前記発光ドーパントが下記式:
【化14】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択される。)
を有する、請求項に記載の有機発光デバイス。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか一項に記載の有機発光デバイスを含む消費者製品であって、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明なディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面、映画館またはスタジアムのスクリーン、及び標識からなる群から選択される消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年1月16日に出願した米国仮出願番号No.61/145,370号に対する優先権を主張し、その出願の開示はその全体を参照により本明細書に明示して援用する。本出願は、2008年9月12日に出願した米国特許出願No.12/209,928号、及び2006年5月31日に出願した米国特許出願No.11/443,586号に関連する。
【0002】
この特許請求の範囲に記載した発明は、共同の大学・企業研究契約に関わる1つ以上の以下の団体:ミシガン大学評議員会、プリンストン大学、サザン・カリフォルニア大学、及びユニバーサルディスプレイコーポレーションにより、1つ以上の団体によって、1つ以上の団体のために、及び/又は1つ以上の団体と関係して行われた。上記契約は、特許請求の範囲に記載された発明がなされた日及びそれ以前に発効しており、特許請求の範囲に記載された発明は、前記契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。
【0003】
本発明は、アザ-ジベンゾチオフェン又はアザ-ジベンゾフランを含む新規な有機合成物に関する。これらの物質は有機発光デバイス(OLED)に有用でありうる。
【背景技術】
【0004】
有機物質を用いるオプトエレクトロニクスデバイスは、多くの理由によりますます望ましいものとなってきている。そのようなデバイスを作るために用いられる多くの物質はかなり安価であり、そのため有機オプトエレクトロニクスデバイスは、無機デバイスに対してコスト上の優位性について潜在力をもっている。加えて、有機物質固有の特性、例えばそれらの柔軟性は、それらを柔軟な基材上への製作などの特定用途に非常に適したものにしうる。有機オプトエレクトロニクスデバイスの例には、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池、及び有機光検出器が含まれる。OLEDについては、有機物質は、従来の物質に対して性能上優位性をもちうる。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調節することができる。
【0005】
OLEDは、そのデバイスを横切って電圧を印加した場合に光を発する薄い有機膜(有機フィルム)を用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、及びバックライトなどの用途で用いるためのますます興味ある技術となってきている。いくつかのOLEDの物質と構成が、米国特許第5,844,363号明細書、同6,303,238号明細書、及び同5,707,745号明細書に記載されており、これらの明細書はその全体を参照により本明細書に援用する。
【0006】
燐光発光分子の一つの用途はフルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイのための工業規格は、「飽和」色といわれる特定の色を発光するように適合された画素(ピクセル)を要求している。特に、これらの規格は、飽和の赤、緑、及び青の画素を必要としている。色はCIE座標を用いて測定でき、CIE座標は当分野で周知である。
【0007】
緑色発光分子の一例は、Ir(ppy)で表されるトリス(2-フェニルピリジン)イリジウムであり、これは下記の構造を有する。
【化1】
【0008】
この式及び本明細書の後の図で、窒素から金属(ここではIr)への供与結合は直線で表す。
【0009】
本明細書で用いるように、「有機」の用語は、有機オプトエレクトロニクスデバイスを製作するために用いることができるポリマー物質並びに小分子有機物質を包含する。「小分子(small molecule)」とは、ポリマーではない任意の有機物質をいい、「小分子」は、実際は非常に大きくてもよい。小分子はいくつかの状況では繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、分子を「小分子」の群から排除しない。小分子は、例えばポリマー主鎖上のペンダント基として、あるいは主鎖の一部として、ポリマー中に組み込まれてもよい。小分子は、コア残基上に作り上げられた一連の化学的殻からなるデンドリマーのコア残基として働くこともできる。デンドリマーのコア残基は、蛍光性又は燐光性小分子発光体であることができる。デンドリマーは「小分子」であることができ、OLEDの分野で現在用いられている全てのデンドリマーは小分子であると考えられる。
【0010】
本明細書で用いるように「トップ」は、基材から最も遠くを意味する一方で、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。第一の層が第二の層の「上に配置される」と記載した場合は、第一の層は基材から、より遠くに配置される。第一の層が第二の層と「接触している」と特定されていない限り、第一の層と第二の層との間に別な層があってよい。例えば、カソードとアノードとの間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載できる。
【0011】
本明細書で用いるように、「溶液処理(加工)可能」とは、溶液もしくは懸濁液の形態で、液体媒体中に溶解され、分散され、又は液体媒体中で輸送され、及び/又は液体媒体から堆積されうることを意味する。
【0012】
配位子が発光物質の光活性特性に直接寄与していると考えられる場合は、その配位子は「光活性」ということができる。配位子が発光物質の光活性特性に寄与していないと考えられる場合は、配位子は「補助」ということができるが、補助配位子は光活性配位子の特性を変えうる。
【0013】
本明細書で用いるように、かつ当業者によって一般に理解されているように、第一の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)のエネルギー準位は、その第一のエネルギー準位が真空のエネルギー準位により近い場合には、第二のHOMO又はLUMOよりも「大きい」あるいは「高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は真空準位に対して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつIPに対応する(より小さな負のIP)。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつ電子親和力(EA)に対応する(より小さな負のEA)。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、物質のLUMOエネルギー準位はその同じ物質のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりも、そのような図のトップの近くに現れる。
【0014】
本明細書で用いるように、また当業者によって一般に理解されるように、第一の仕事関数は、その第一の仕事関数がより高い絶対値を有する場合には、第二の仕事関数よりも「大きい」あるいは「高い」。仕事関数は通常、真空準位に対して負の値として測定されるので、このことは「より高い」仕事関数は、より負であることを意味する。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、「より高い」仕事関数は真空準位から下向きの方向へさらに離れて図示される。したがって、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に従う。
【0015】
OLEDについてのさらなる詳細及び上述した定義は、米国特許第7,279,704号明細書に見ることができ、その全体を参照により本明細書に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第7,279,704号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998
【非特許文献2】Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
[本発明のまとめ]
アザ-ジベンゾチオフェン化合物又はアザ-ジベンゾフラン化合物を製造するための方法を提供する。この方法は、下記式:
【化2】
(式中、X及びXのうち1つは窒素であり、X及びXの他方は炭素であり、YはS又はOである。)
を有するアミノ-アリールチオピリジン中間体の酢酸溶液を、BuONOで処理して、下記式:
【化3】
を有するアザ合成物を製造する工程を含む。R及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。Rは、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、及びハライドからなる群から選択される。好ましくは、Rはハライドである。Rは、水素、アルキル、アリール、及びハライドからなる群から選択される。好ましくは、X及びXのうち1つは炭素であり、他方は窒素でありうる。より好ましくは、Xは窒素であり、Xが炭素であるか、あるいはXは炭素であり、Xが窒素である。好ましくは、YはSである。あるいは、好ましくは、YはOであることができる。Rは少なくとも1つのハライドを含んでいてもよく、Rはハライド置換基のみを含んでいてもよい。本方法は、Rがハライドではない化合物を作るために用いてもよく、アミノ-アリールチオピリジン中間体は、BuONOで処理する前にHSOで処理される。
【化4】
の収率は50%より高くなりうる。
【0019】
アザ-ジベンゾチオフェン及びアザ-ジベンゾフラン化合物の新規な群を提供する。この化合物は下記式:
【化5】
を有する。X、X、X、X、X、X、X、及びXは、独立に、炭素原子及び窒素原子からなる群から選択され、且つX、X、X、X、X、X、X、及びXのうち少なくとも1つは窒素原子である。YはS又はOである。R及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R及びRは、独立に、水素、アルキル、アリール、及びハライドからなる群から選択され、R及びRのうち少なくとも1つは以下のものからなる群から選択される。
【化6】
R’、R’、R’、及びR’は、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができ、且つR’、R’、R’、及びR’は、独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールからなる群から選択される。好ましくは、m及びnは0、1、2、3、又は4であり;m+nは2以上であり、且つm+nは6以下である。好ましくは、R’、R’、R’、及びR’は、それぞれ独立に、水素又はメチルである。
【0020】
さらに、アザ-ジベンゾチオフェン及びアザ-ジベンゾフラン化合物の新規な群を提供する。これらの化合物は以下の式を有する。
【化7】
、X、X、X、X、X、X、及びXは独立に炭素原子及び窒素原子からなる群から選択され、且つX、X、X、X、X、X、X、及びXのうち少なくとも1つは窒素原子である。YはS又はOである。R及びRはモノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R及びRは独立に、水素、アルキル、アリール、及びハライドからなる群から選択され、且つR及びRのうち少なくとも1つは以下のものからなる群から選択される。
【化8】
R’、R’、R’、及びR’は、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができ、且つR’、R’、R’、及びR’は、独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。好ましくは、m及びnは0、1、2、3、又は4であり;m+nは2以上であり、且つm+nは6以下である。好ましくは、R’、R’、R’、及びR’は、それぞれ独立に、水素又はメチルである。
【0021】
及びRのうちの1つが水素であり、且つR及びRの他方が以下のものからなる群から選択される化合物も提供する。
【化9】
【化10】
さらに、R及びRの両方がここに示した基から選択される化合物を提供する。その上、Rがここに示した基から選択される化合物も提供する。
【0022】
化合物1〜93を含むアザ-ジベンゾチオフェン化合物及びアザ-ジベンゾフラン化合物の具体例を提供する。
【0023】
化合物1〜79を含むアザ-ジベンゾチオフェン化合物及びアザ-ジベンゾフラン化合物の具体例を提供する。
【0024】
有機発光デバイスを含む第一のデバイスを提供する。さらに、このデバイスは、アノード、カソード、そのアノードとカソードとの間に配置された有機層とを含む。この有機層は式Iを有する化合物を含む。特に、このデバイスの有機層は、化合物1〜93から選択される化合物を含むことができる。
【0025】
一つの側面では、第一のデバイスは消費者製品である。
【0026】
有機発光デバイスも提供する。このデバイスは、アノード、カソード、そのアノードとカソードとの間に配置された有機層とを含む。この有機層は式Iを有する化合物を含む。特に、このデバイスの有機層は、化合物1〜79から選択される化合物を含むことができる。好ましくは、この有機層は発光層であり、式Iを有する化合物はホストである。発光層はさらに発光ドーパントを含むことができる。好ましくは、発光ドーパントは下記式を有する。
【化11】
式中、R及びRは互いに独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択される。
【0027】
さらに、消費者製品も提供する。この製品は、アノード、カソード、そのアノードとカソードとの間に配置された有機層とを含み、この有機層は式Iを有する化合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は有機発光デバイスを示す。
図2図2は別個の電子輸送層を持たない倒置型有機発光デバイスを示す。
図3図3はアザ-ジベンゾチオフェン化合物及びアザ-ジベンゾフラン化合物を示す。
図4図4は合成経路における反応を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[詳細な説明]
一般に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置され且つそれらに電気的に結合された少なくとも1つの有機層を含む。電流を流した場合、その有機層(1又は複数)に、アノードは正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔及び電子はそれぞれ反対に帯電した電極に向かって移動する。同じ分子上に電子と正孔とが局在した場合、「励起子」(これは励起エネルギー状態を有する局在化した電子-正孔対である)が形成される。励起子が発光機構によって緩和する時に、光が発せられる。いくらかの場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在化されうる。非発光機構、例えば熱緩和も起こりうるが、一般的には望ましくないと考えられる。
【0030】
初期のOLEDは、一重項状態から光を発する(「蛍光」)発光分子を用いており、例えば、米国特許第4,769,292号明細書(この全体を参照により援用する)に記載されているとおりである。蛍光発光は、一般に、10ナノ秒よりも短いタイムフレームで起こる。
【0031】
より最近、三重項状態から光を発する(「燐光」)発光物質を有するOLEDが実証されている。Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998 (“Baldo-I”);
及び、Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999)(“Baldo-II”)、これらを参照により全体を援用する。燐光は、米国特許第7,279, 704号明細書の第5〜6欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0032】
図1は有機発光デバイス100を示している。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含み得る。カソード160は、第一導電層162および第二導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記載した層を順次、堆積させることによって作製できる。これらの様々な層の特性及び機能、並びに例示物質は、米国特許第7,279,704号明細書の第6〜10欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0033】
これらの層のそれぞれについてのより多くの例が得られる。例えば、可撓性且つ透明な基材とアノードの組み合わせが米国特許第5,844,363号明細書に開示されており、参照により全体を援用する。p型ドープ正孔輸送層の例は、50:1のモル比で、F4-TCNQでドープしたm-MTDATAであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。発光物質及びホスト物質の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号明細書に開示されており、その全体を参照により援用する。n型ドープ電子輸送層の例は、1:1のモル比でLiでドープされたBPhenであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。米国特許第5,703,436号明細書及び同5,707,745号明細書(これらはその全体を参照により援用する)は、上に重ねられた透明な電気導電性のスパッタリングによって堆積されたITO層を有するMg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含めたカソードの例を開示している。阻止層の理論と使用は、米国特許第6,097,147号明細書及び米国特許出願公開第2003/0230980号公報により詳細に記載されており、その全体を参照により援用する。注入層の例は、米国特許出願公開第2004/0174116号公報に提供されており、その全体を参照により援用する。保護層の記載は米国特許出願公開第2004/0174116号公報にみられ、その全体を参照により援用する。
【0034】
図2は倒置型(inverted)OLED200を示している。このデバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は記載した層を順に堆積させることによって製造できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、デバイス200を「倒置型」OLEDとよぶことができる。デバイス100に関して記載したものと同様の物質を、デバイス200の対応する層に使用できる。図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層を省けるかの1つの例を提供している。
【0035】
図1および2に例示されている簡単な層状構造は非限定的な例として与えられており、本発明の実施形態は多様なその他の構造と関連して使用できることが理解される。記載されている具体的な物質および構造は事実上例示であり、その他の物質および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、実用的なOLEDは様々なやり方で上記の記載された様々な層を組み合わせることによって実現でき、あるいは、いくつかの層は完全に省かれうる。具体的に記載されていない他の層を含むこともできる。具体的に記載したもの以外の物質を用いてもよい。本明細書に記載されている例の多くは単一の物質を含むものとして様々な層を記載しているが、物質の組合せ(例えばホストおよびドーパントの混合物、またはより一般的には混合物)を用いてもよいことが理解される。また、層は様々な副層(sublayer)を有してもよい。本明細書において様々な層に与えられている名称は、厳格に限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し且つ発光層220に正孔を注入するので、正孔輸送層として、あるいは正孔注入層として説明されうる。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明できる。この有機層は単一の層を含むか、または、例えば図1および2に関連して記載したように様々な有機物質の複数の層をさらに含むことができる。
【0036】
具体的に記載されていない構造および物質、例えばFriendらの米国特許第5,247,190号(これはその全体を参照により援用する)に開示されているようなポリマー物質で構成されるOLED(PLED)、も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用できる。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているように、積み重ねられてもよい。OLEDの構造は、図1および2に示されている簡単な層状構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取出し(out-coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射表面を含みうる。
【0037】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積されうる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号および米国特許第6,087,196号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、有機気相成長(organic vapor phase deposition、OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号(その全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびに有機気相ジェットプリンティング(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許出願第10/233,470号(これはその全体を参照により援用する)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての堆積、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号および米国特許第6,468,819号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される物質は、それらを特定の堆積方法に適合させるために改変されてもよい。例えば、分枝した又は分枝していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基が、溶液加工性を高めるために、小分子に用いることができる。20個又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有しうるが、これは、非対称物質はより小さな再結晶化傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0038】
本発明の実施形態により製造されたデバイスは多様な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明な(fully transparent)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面(large area wall)、映画館またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含めて、様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御できる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0039】
本明細書に記載した物質及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、その他のオプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機太陽電池及び有機光検出器は、これらの物質及び構造を用いることができる。より一般には、有機デバイス、例えば、有機トランジスタは、これらの物質及び構造を用いることができる。
【0040】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロ環基、アリール、芳香族基、及びヘテロアリールの用語は、当分野で公知であり、米国特許第7,279,704号明細書の第31〜32欄で定義されており、これを参照により援用する。
【0041】
アザ-ジベンゾチオフェン又はアザ-ジベンゾフラン核を含む新しい群の化合物を提供する(図3に示す)。特に、トリフェニレン及び/又は窒素を含有する置換基でさらに置換されているアザ-ジベンゾチオフェン化合物又はアザ-ジベンゾフラン化合物を提供する。これらの化合物は、燐光有機発光デバイスに有利に用いることができる。好ましくは、これらの化合物は発光層中のホスト物質として、又は増強層(enhancement layer)中の材料として用いることができる。
【0042】
アザ-ジベンゾチオフェン化合物及びアザ-ジベンゾフラン化合物のための既に知られている合成が存在するが、これらの合成経路は実用的には限定されているかもしれない。例えば、アザ-ジベンゾチオフェン及びアザ-ジベンゾフランの素材は、周知のPschorr環化法によって最初に合成され、この方法はジアゾニウム塩の形成と、それに続く、触媒、例えば、Cu、CuClなどを用いるか又は用いずに、水性媒体中での環化とを含む。しかし、Pschorr環化法の一般的な収率は一貫したものではなく、10%未満になりうる。したがって、改善された収率でアザ-ジベンゾチオフェン及びアザ-ジベンゾフラン化合物を作る方法を提供することが非常に望ましい。アザ-ジベンゾチオフェン化合物を作るための新しい方法をここに提供する(図4に示す)。本発明によって記述した方法は、従来の合成と、少なくとも、水性媒体ではなく酢酸を用いることで異なり、且ついかなる金属触媒も用いない。好ましくは、この酢酸は純粋な酢酸(すなわち氷酢酸)である。本明細書で提供した方法は、50%より高い収率あるいは70%より高い収率をもたらしうる。
【0043】
ジベンゾチオフェンを含む物質及びジベンゾフランを含む物質は、典型的には、比較的高い三重項エネルギーを有する正孔輸送物質である。ジベンゾチオフェン及びジベンゾフランの有利な特性を前提として、これらの化合物はOLED分野で用いられてきており、これらの化合物のうちのいくつかは良好なデバイス性能を達成している。Linら, Dibenzothiophene-containing Materials in Phosphorescent Light Emitting Diodes (燐光発光ダイオードにおけるジベンゾチオフェン含有物質), 2008, 米国特許出願番号No. 12/208,907、及びMaら, Benzo-fused Thiophene/Triphenylene Hybrid Materials(ベンゾ縮合チオフェン/トリフェニレン複合物質), 2008, PCT/US2008/072499を参照されたい。理論に縛られないが、アニオン注入及びアニオン安定性がデバイス安定性において重要な役割を演じている可能性があると考えられる。高いアニオン安定性、及び発光層へのアニオン注入に対する低いエネルギー障壁を有するためには、低いLUMO準位をもつ化合物が望ましい。特に、低いLUMO値を有するジベンゾチオフェン含有化合物及びジベンゾフラン含有化合物(すなわち、より容易に還元される化合物)が有利でありうる。
【0044】
本明細書で提供する化合物は、所望の特性を有する特定の化学基でさらに置換されたアザ-ジベンゾチオフェン又はアザ-ジベンゾフラン核を含む。特に、これらのアザ-タイプの化合物は、高い三重項エネルギーを維持し且つ向上された電荷輸送特性をもたらすために、トリフェニレン基及び/又は窒素含有基(例えば、カルバゾール)で置換されている。したがって、これらの置換されたアザ-ジベンゾチオフェン化合物及びアザ-ジベンゾフラン化合物は、向上した安定性、向上した効率、及びより長い寿命を有するデバイスをもたらしうる。さらに、これらのアザ-タイプの化合物は、それらの対応するジベンゾチオフェン又はジベンゾフラン対照化合物よりもさらに容易に還元され、それによって低い作動電圧を有するデバイスをもたらしうることが実証されている。
【0045】
トリフェニレンは、高い三重項エネルギーをもち、それでもなお高いπ共役と、最初の一重項と最初の三重項準位との間の比較的小さなエネルギー差とをもつ多核芳香族(ポリアロマティック)炭化水素である。このことは、トリフェニレンが、類似する三重項エネルギーをもつその他の芳香族化合物(例えば、ビフェニル)と比べて、比較的容易に利用可能なHOMOとLUMO準位を有することを示しているであろう。トリフェニレンのこれらの特性は、トリフェニレンを、電荷(正孔又は電子)を安定化させるためのOLEDホストにおける良好な分子ビルディングブロックにする。トリフェニレン及びその誘導体をホストとして用いることの一つの利点は、それが、赤、緑、そしてさらに青の燐光ドーパントに適応し、エネルギー失活(クエンチ)なしに高効率をもたらすことができることである。トリフェニレンホストは、PHOLED(燐光有機発光デバイス)に高い効率と安定性をもたらすために用いることができる。Kwong及びAlleyene, Triphenylene Hosts in Phosphorescent Light Emitting Diodes(燐光発光ダイオードにおけるトリフェニレンホスト), 2006, 60 pp, 米国特許出願公開第2006/0280965号を参照されたい。アザ-ジベンゾチオフェン又はアザ-ジベンゾフラン核とトリフェニレン部分とを含む化合物は、PHOLEDにおけるホストとして有利でありうる。さらに特に、この化合物の両方の部分の三重項エネルギーは比較的高く、それによって全体として高い三重項エネルギーを保つ。さらに、一つの化合物中でのこれらの2つの基の組み合わせは、改善された電荷バランスをも提供し、それによってデバイス効率とデバイス寿命を向上させうる。そのような化合物のトリフェニレン部分(トリフェニレン残基)でありうるトリフェニレン基の非限定的な例には以下のものが含まれうる。
【化12】
【0046】
窒素含有基を、アザ-ジベンゾチオフェン化合物及びアザ-ジベンゾフラン化合物の置換基として用いることもできる。そのような窒素含有基には、カルバゾール、オリゴカルバゾール、インドロカルバゾール、及びジフェニルアミンが含まれうる。カルバゾールは、高い三重項エネルギーを有し、且つ正孔輸送及び電子輸送特性を有する窒素含有ヘテロ芳香族である。カルバゾール含有化合物(すなわち、カルバゾール、オリゴカルバゾール、及びインドロカルバゾール)をホスト物質として用いることの一つの利点は、それらが充分に大きな三重項エネルギーと、電荷輸送特性とを同時にもっていることである。例えば、インドロカルバゾール及び3-(9-カルバゾリル)カルバゾールは、比較的低い電気化学的酸化電位を有する。そのため、これらの化合物は、酸化され且つその酸化を逆転させることが容易であり、このことが全体のホスト安定性を向上させる。別の利点は、これらのカルバゾールビルディングブロックはドナーとして働くことができ、一方、ここでの受容体であるアザ-ジベンゾチオフェン又はアザ-ジベンゾフランとのカップリングで、ドナー-アクセプター型の分子を形成することである。ドナー-アクセプター分子配列をもつこれらの分子は、少なくとも部分的には、デバイスにおける低い電圧特性に寄与すると考えられる。
【0047】
本明細書で提供する化合物は、青、緑、及び赤色のPHOLEDにおいてホスト物質として用いることができる。特に、トリフェニレンで置換されたアザ-ジベンゾチオフェン又はアザ-ジベンゾフラン化合物は、青、緑、及び赤色のデバイスにおいて用いることができ、なぜならこれらの化合物は青、緑、及び赤色の発光ドーパントに適応できるからである。好ましくは、これらの化合物は、青色デバイスで用いることができる。本明細書で提供するアザ-タイプの化合物は、トリフェニレン及び窒素含有置換基の両方で置換されていることもできる。トリフェニレン及び窒素含有基の両方で置換されているこれらの化合物は、緑及び赤色デバイスにおいて用いることができ、なぜならこれらの化合物は緑及び赤色発光ドーパントに適応できるからである。好ましくは、これらの化合物は緑色デバイスにおいて用いることができる。
【0048】
本明細書に記載したヘテロ芳香族化合物(すなわち、アザ-ジベンゾチオフェン及びアザ-ジベンゾフラン)は、それらに対応するジベンゾチオフェン又はジベンゾフラン対照化合物よりも容易に、特に0.2 V〜0.5 V容易に還元されうる。その結果、これらのアザ-タイプの化合物は、低い作動電圧と長い寿命をもつデバイスをもたらすことができる。理論に縛られないが、より容易に還元される化合物は、デバイス中で、より良いアニオン安定性と、電子輸送層(ETL)から発光層(EML)への容易なアニオンの注入をもたしうると考えられる。
【0049】
本明細書に記載した化合物は下記式を有する。
【化13】
【0050】
、X、X、X、X、X、X、及びXは独立に炭素原子及び窒素原子からなる群から選択され、且つX、X、X、X、X、X、X、及びXのうち少なくとも1つは窒素原子である。YはS又はOである。R及びRはモノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R及びRは独立に、水素、アルキル、アリール、及びハライドからなる群から選択される。R及びRのうち少なくとも1つは以下のものからなる群から選択される。
【化14】
R’、R’、R’、及びR’は、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができ、且つR’、R’、R’、及びR’は、独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。好ましくは、R’、R’、R’、及びR’は、それぞれ独立に、水素又はメチルである。
【0051】
本明細書に記載した化合物は下記式を有する。
【化15】
【0052】
式中、X、X、X、X、X、X、X、及びXは独立に炭素原子及び窒素原子からなる群から選択され、且つX、X、X、X、X、X、X、及びXのうち少なくとも1つは窒素原子である。YはS又はOである。R及びRはモノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R及びRは独立に、水素、アルキル、アリール、及びハライドからなる群から選択され、且つR及びRのうち少なくとも1つは以下のものからなる群から選択される。
【化16】
R’、R’、R’、及びR’は、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができ、且つR’、R’、R’、及びR’は、それぞれ独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。好ましくは、R’、R’、R’、及びR’は、それぞれ独立に、水素又はメチルである。
【0053】
好ましくは、m及びnは0、1、2、3、又は4であり、且つm+nは2以上であり、且つm+nは6以下である。理論に縛られるものではないが、少なくとも2が、好ましい量の電子輸送基をもたらすことによって、より良い電子輸送特性をもたらすと考えられる。さらに、6より大きいと、昇華温度の上昇をもたらし、そのような化合物を用いたデバイスの製作が実用的ではなくなるおそれがあると考えられる。
【0054】
一つの側面では、R及びRのうち少なくとも1つは、以下のものからなる群から選択される。
【化17】
R’、R’、R’、及びR’は、独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。好ましくは、R’、R’、R’、及びR’は、それぞれ独立に、水素又はメチルである。
【0055】
上記化合物の具体例を提供し、それには以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0056】
【化18】
【0057】
【化19】
【0058】
【化20】
【0059】
【化21】
【0060】
【化22】
【0061】
【化23】
【0062】
【化24】
【0063】
【化25】
【0064】
【化26】
【0065】
【化27】
【0066】
そのような化合物の特定の例も提供し、それには以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0067】
【化28】
【0068】
【化29】
【0069】
【化30】
【0070】
【化31】
【0071】
【化32】
【0072】
【化33】
【0073】
【化34】
【0074】
別の側面では、R及びRのうち少なくとも1つは以下のものからなる群から選択される。
【化35】
R’、R’、R’、及びR’は、独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールからなる群から選択される。好ましくは、R’、R’、R’、及びR’は、それぞれ独立に、水素又はメチルである。
【0075】
そのような化合物の特定の例には以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0076】
【化36】
【0077】
【化37】
【0078】
【化38】
【0079】
【化39】
【0080】
【化40】
【0081】
別の側面では、R及びRはそれぞれ独立に、水素及び以下のものからなる群から選択される。
【化41】
R’、R’、R’、及びR’は、独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールからなる群から選択される。好ましくは、R’、R’、R’、及びR’は、それぞれ独立に、水素又はメチルである。
【0082】
そのような化合物の特定の例には以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【化42】
【0083】
一つの側面では、R及びRのうちの少なくとも1つが以下の群からなる基から選択される。
【化43】
R’、R’、R’、及びR’は、独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールからなる群から選択される。好ましくは、R’、R’、R’、及びR’は、それぞれ独立に、水素又はメチルである。
【0084】
そのような化合物の特定の例には以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【化44】
【0085】
【化45】
【0086】
【化46】
【0087】
【化47】
【0088】
【化48】
【0089】
【化49】
【0090】
【化50】
【0091】
別の側面では、R及びRはそれぞれ独立に、水素及び以下の基からなる群から選択される。
【化51】
R’、R’、R’、及びR’は、独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールからなる群から選択される。好ましくは、R’、R’、R’、及びR’は、それぞれ独立に、水素又はメチルである。
【0092】
そのような化合物の特定の例には以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【化52】
【0093】
【化53】
【0094】
【化54】
【0095】
【化55】
【0096】
一つの側面では、R及びRは、それぞれ独立に、水素及び以下のものからなる群から選択される。
【化56】
R’、R’、R’、及びR’は、独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールからなる群から選択される。好ましくは、R’、R’、R’、及びR’は、それぞれ独立に、水素又はメチルである。
【0097】
そのような化合物の具体例には、以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【化57】
【0098】
【化58】
【0099】
【化59】
【0100】
【化60】
【0101】
【化61】
【0102】
【化62】
【0103】
別の側面では、Rは以下のものからなる群から選択される。
【化63】
R’、R’、R’、及びR’は、独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールからなる群から選択される。好ましくは、R’、R’、R’、及びR’は、それぞれ独立に、水素又はメチルである。
【0104】
そのような化合物の具体例には、以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【化64】
【0105】
【化65】
【0106】
【化66】
【0107】
【化67】
【0108】
【化68】
【0109】
【化69】
【0110】
【化70】
【0111】
【化71】
【0112】
【化72】
【0113】
有機発光デバイスを含む第一のデバイスも提供する。さらに、このデバイスは、アノード、カソード、そのアノードとカソードとの間に配置された有機層を含む。さらに、この有機層は、下記式を有する化合物を含む。
【化73】
、X、X、X、X、X、X、及びXは、独立に、炭素原子及び窒素原子からなる群から選択される。X、X、X、X、X、X、X、及びXの少なくとも1つは窒素原子である。YはS又はOである。R及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。R及びRは、独立に、水素、アルキル、アリール、及びハライドからなる群から選択される。R及びRのうち少なくとも1つは以下のものからなる群から選択される。
【化74】
R’、R’、R’、及びR’は、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ置換を表すことができる。R’、R’、R’、及びR’は、独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。
【0114】
一つの側面では、上記第一のデバイスは消費者製品である。
【0115】
加えて、有機発光デバイスも提供する。このデバイスは、アノード、カソード、そのアノードとカソードとの間に配置された有機発光層を含み、さらにその有機層は式Iを有する化合物を含んでいる。好ましくは、m及びnは0、1、2、3、又は4であり、且つ、m+nは2以上であり、且つm+nは6以下である。
【0116】
一つの側面では、R及びRのうち少なくとも1つは以下のものからなる群から選択される。
【化75】
R’、R’、R’、及びR’は、独立に、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。
【0117】
一つの側面では、R及びRはそれぞれ独立に、水素及び以下のものからなる群から選択される。
【化76】
【0118】
一つの側面では、化合物1〜93からなる群から選択される化合物を含むデバイスを提供する。
【0119】
特に、その化合物が、化合物1〜79からなる群から選択されるデバイスを提供する。
【0120】
一つの側面では、上記有機層は発光層であり、式Iを有するアザ-ジベンゾチオフェン及びアザ-ジベンゾフランがその有機層中のホストである。この有機層はさらに発光ドーパントを含みうる。好ましくは、発光ドーパントは下記式を有する。
【化77】
式中、R及びRはそれぞれ独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択される。
【0121】
上で議論したように、式Iを有するアザ-ジベンゾチオフェン及びアザ-ジベンゾフラン化合物は、発光層のホスト物質として用いることが有利でありうる。しかし、これらの化合物は、増強層(enhancement layer)の材料として用いることもできる。特に、本明細書に記載した化合物は、阻止層(blocking layer)の物質として用いることができる。
【0122】
消費者用デバイスも提供し、この場合には、さらにこのデバイスは、アノード、カソード、及び有機層を含む。さらにこの有機層は式Iを有するアザ-ジベンゾチオフェン又はアザ-ジベンゾフラン化合物を含む。
【0123】
加えて、アザ-ジベンゾチオフェン化合物又はアザ-ジベンゾフラン化合物を製造する方法を提供する(図4の上部に図示される)。この方法は、下記式:
【化78】
を有するアミノ-アリールチオピリジン中間体の酢酸溶液をBuONOで処理して下記式:
【化79】
を有するアザ化合物を製造する工程を含む。
YはS又はOである。X又はXは窒素である。R及びRはモノ、ジ、トリ、又はテトラ置換であることができる。Rは、水素、アルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。Rは、水素、アルキル、アリール、及びハライドからなる群から選択される。例えば、ピリジン環上にハライド置換基をもつ中間体3-アミノ-4-アリールチオピリジンの酢酸溶液、又はピリジン環上にハライド置換基をもつ中間体3-アリールチオ-4-アミノピリジンの酢酸溶液を、気体が発生しなくなるまで、通常約1〜3時間
、室温で1〜2当量のBuONOで処理することができる。
【0124】
この方法の具体例には、YがSである中間体及びアザ-合成物(すなわち、ジベンゾチオフェン中間体及びアザ-ジベンゾチオフェン合成物)が含まれる。あるいは、好ましくは、この方法には、YがOである中間体及びアザ-合成物(すなわち、ジベンゾフラン中間体及びアザ-ジベンゾフラン合成物)が含まれうる。本明細書で提供する方法は、50%より高いあるいは70%より高い収率でアザ合成物を得ることができる。特に、下記式:
【化80】
のものの収率は、50%より高くなりうる。
【0125】
アザ-ジベンゾチオフェン又はアザ-ジベンゾフラン化合物を作るための方法の例には、X及びXのうち1つが炭素で他方が窒素である中間体が含まれる。この方法の具体例では、Xが窒素であり、且つXが炭素である。別の具体例では、Xが炭素であり、且つXが窒素である。
【0126】
アザ-ジベンゾチオフェン又はアザ-ジベンゾフラン化合物を作るための方法の例には、Rが少なくとも1つのハライドを含む化合物が含まれる。この方法の具体例では、Rはハライド置換基のみを含む。さらに、Rはハライドであることが好ましい。ハライド置換基には、ブロマイド、クロライド、フルオライド、及びアイオダイドが含まれうるがこれらに限定されない。
【0127】
この方法は、Rがハライドではない(すなわち、ピリジン環上にさらなる置換基がない)アザ-ジベンゾチオフェン又はアザ-ジベンゾフラン化合物を作るために用いることもできる。ピリジン環上にハライド置換基をもたないこれらのアザ化合物のためには、アミノアリールチオピリジン中間体を、BuONOでの処理の前にHSOで処理する(図4の下部に示されている)。例えば、中間体3-アミノ-4-アリールチオピリジンの酢酸溶液又は中間体3-アリールチオ-4-アミノピリジンの酢酸溶液を、1〜5当量のHSO、それに続いて1〜2当量のBuONOで、ガスが発生しなくなるまで、通常約1〜5時間処理することができる。
【0128】
有機発光デバイスの特定の層に有用であるとして本明細書に記載した材料は、そのデバイスに存在する広範囲のその他の材料と組み合わせて用いることができる。例えば、本明細書で開示した発光ドーパントは、存在してもよい幅広い種類のホスト、輸送層、阻止層、注入層、電極、及びその他の層と組み合わせて用いてもよい。記載した又は以下で参照する物質は、本明細書に開示した化合物と組み合わせて有用でありうる材料の非限定的な例であり、当業者は組み合わせて有用でありうるその他の材料を特定するために文献を容易に閲覧することができる。
【0129】
本明細書に開示した物質に加えて及び/又はそれらと組み合わせて、多くの正孔注入物質、正孔輸送物質、ホスト物質、ドーパント物質、励起子/正孔阻止層物質、電子輸送及び電子注入物質をOLEDに用いることができる。本明細書に開示した物質と組み合わせてOLEDに用いることができる物質の非限定的な例を下の表1に列挙する。表1は物質の非限定的な群、各群に対する化合物の非限定的な例、及びその物質を開示している参考文献を挙げている。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
【表4】
【0134】
【表5】
【0135】
【表6】
【0136】
【表7】
【0137】
【表8】
【0138】
【表9】
【0139】
【表10】
【0140】
【表11】
【0141】
【表12】
【0142】
【表13】
【0143】
【表14】
【0144】
【表15】
【0145】
【表16】
【0146】
【表17】
【0147】
【表18】
【0148】
【表19】
【0149】
【表20】
【0150】
【表21】
【0151】
【表22】
【0152】
【表23】
【実施例】
【0153】
[化合物例]
【0154】
[例1.化合物1の合成]
【0155】
【化81】
【0156】
ステップ1
500 mLの丸底フラスコに、2-クロロ-3-ヨード-4-アミノピリジン(10 g、39 mmol)、4-ブロモチオフェノール(7.0 g, 34 mmol)、CuI(0.4 g, 2.0 mmol)、エチレングリコール(4.9 g, 78 mmol)、炭酸カリウム(10.8 g, 74 mmol)、及び200 mLのイソプロパノールを添加した。反応物を加熱還流させ、窒素雰囲気下で24時間撹拌した。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。2-クロロ-3-(4-ブロモフェニルチオ)-4-アミノピリジンの収量は7.4 gだった。
【0157】
ステップ2
500 mLの丸底フラスコに、2-クロロ-3-(4-ブロモフェニルチオ)-4-アミノピリジン(7.0 g、22 mmol)及び400 mLの酢酸を添加した。この透明な溶液に、ButONO(2.3 g, 22 mmol)を一滴ずつ添加した。室温で1時間撹拌後、さらに10 mmolのButONOを添加した。混合物をさらに2時間撹拌を続けた。反応物を水で失活させ、生成物をシリカゲルカラムで精製した。1-クロロ-6-ブロモ-[1]ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジンの収量は6.5 gだった。
【0158】
ステップ3
500 mLの丸底フラスコに、1-クロロ-6-ブロモ-[1]ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジン(3.6 g, 12 mmol)、カルバゾール(6.0 g, 36 mmol)、Pd2(dba)3(1.1 g, 1.2 mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(S-Phos, 2.0 g, 4.8 mmol)、ナトリウムt-ブトキシド(6.9 g, 72 mmol)、及び250 mLのキシレンを添加した。反応物を加熱還流させ、窒素雰囲気下で24時間撹拌した。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。収量は4.0 gだった。生成物は真空昇華によってさらに精製した。1H NMRの結果によって、所望の化合物であることを確認した。
【0159】
[例2.化合物2の合成]
【0160】
【化82】
【0161】
ステップ1
500 mLの丸底フラスコに、2-クロロ-4-アミノ-5-ヨード-ピリジン(11.5 g、45 mmol)、4-ブロモチオフェノール(8.1 g, 42.8 mmol)、CuI(0.4 g, 2.3 mmol)、エチレングリコール(5.6 g, 90.4 mmol)、炭酸カリウム(12.4 g, 90.4 mmol)、及び200 mLのイソプロパノールを添加した。反応物を加熱還流させ、窒素雰囲気下で24時間撹拌した。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。2-クロロ-5-(4-ブロモフェニルチオ)-4-アミノピリジンの収量は9.2 gだった。
【0162】
ステップ2
500 mLの丸底フラスコに、2-クロロ-5-(4-ブロモフェニルチオ)-4-アミノピリジン(11 g、35 mmol)及び600 mLの酢酸を添加した。この透明な溶液に、ButONO(3.6 g, 35 mmol)を一滴ずつ添加した。室温で1時間撹拌後、さらに15 mmolのButONOを添加した。混合物をさらに2時間撹拌を続けた。反応物を水で失活させ、生成物をシリカゲルカラムで精製した。3-クロロ-6-ブロモ-[1]ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジンの収量は10 gだった。
【0163】
ステップ3
500 mLの丸底フラスコに、3-クロロ-6-ブロモ-[1]ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジン(3.0 g, 10 mmol)、カルバゾール(4.2 g, 25 mmol)、Pd(OAc)2(0.1 g, 0.5 mmol)、P(But)3(トルエン中1M、1.5 mL、1.5 mmol)、ナトリウムt-ブトキシド(6.3 g, 66 mmol)、及び250 mLのキシレンを添加した。反応物を加熱還流させ、窒素雰囲気下で24時間撹拌した。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。収量は4.2 gだった。生成物は真空昇華によってさらに精製した。1H NMRの結果によって、所望の化合物であることを確認した。
【0164】
[例3.化合物3の合成]
【0165】
【化83】
【0166】
ステップ1
500 mLの丸底フラスコに、2,6-ジクロロ-3-ヨード-4-アミノピリジン(7.0 g、28.8 mmol)、チオフェノール(3.2 g, 34.8 mmol)、CuI(0.2 g, 1.2 mmol)、エチレングリコール(3.0 g, 57.6 mmol)、炭酸カリウム(6.6 g, 57.6 mmol)、及び200 mLのイソプロパノールを添加した。反応物を加熱還流させ、窒素雰囲気下で24時間撹拌した。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。2,6-ジクロロ-3-フェニルチオ-4-アミノピリジンの収量は4.0 gだった。
【0167】
ステップ2
500 mLの丸底フラスコに、2,6-ジクロロ-3-フェニルチオ-4-アミノピリジン(4.0 g、14.7 mmol)及び200 mLの酢酸を添加した。この透明な溶液に、ButONO(1.5 g, 15 mmol)を一滴ずつ添加した。室温で1時間撹拌後、さらに8 mmolのButONOを添加した。混合物をさらに2時間撹拌し続けた。反応物を水で失活させ、生成物をシリカゲルカラムで精製した。1,3-ジクロロ-[1]ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジンの収量は3.2 gだった。
【0168】
ステップ3
500 mLの丸底フラスコに、1,3-ジクロロ-[1]ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジン(2.5 g, 10 mmol)、カルバゾール(4.2 g, 25 mmol)、Pd2(dba)3(0.9 g, 1.0 mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(S-Phos, 1.6 g, 4.0 mmol)、ナトリウムt-ブトキシド(4.8 g, 50 mmol)、及び200 mLのキシレンを添加した。反応物を加熱還流させ、窒素雰囲気下で24時間撹拌した。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。収量は4.2 gだった。生成物は真空昇華によってさらに精製した。1H NMRの結果によって、所望の化合物であることを確認した。
【0169】
[例4.化合物4の合成]
【0170】
【化84】
【0171】
ステップ1
500 mLの丸底フラスコに、1-クロロ-6-ブロモ-[1]ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジン(5.0 g、16.7 mmol)、カルバゾール(2.8 g, 16.7 mmol)、Pd(OAc)2(0.1 g, 0.4 mmol)、PBut3(トルエン中1.0 M溶液、1.2 mL、1.2 mmol)、ナトリウムt-ブトキシド(4.8 g, 50.1 mmol)、及び400 mLのキシレンを添加した。反応物を加熱還流させ、窒素雰囲気下で24時間撹拌した。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。1-クロロ-6-(9-カルバゾール)-[1]ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジンの収量は1.9 gだった。
【0172】
ステップ2
500 mLの丸底フラスコに、1-クロロ-6-(9-カルバゾール)-[1]ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジン(1.3 g、3.4 mmol)、ジフェニルアミン(0.7 g, 4.0 mmol)、Pd2(dba)3(0.09 g, 0.1 mmol)、2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(0.2 g, 0.4 mmol)、ナトリウムt-ブトキシド(0.8 g, 8.0 mmol)、及び100 mLのトルエンを添加した。反応物を加熱還流させ、窒素雰囲気下で24時間撹拌した。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。化合物4の収量は1.1 gだった。
【0173】
[例5.化合物21の合成]
【0174】
【化85】
【0175】
ステップ1
100 mLの酢酸中の2-アミノ-5-クロロピリジン(10.0 g、77.8 mmol)、酢酸カリウム(7.63 g, 77.8 mmol)の溶液を85℃に加熱し、50 mLの酢酸中のClI(12.6 g, 77.8 mmol)を滴下して添加した。反応混合物をこの温度に2時間保ち、1Lの水で希釈し、NaOHの1N溶液でpH7に中和し、酢酸エチル(4×75 mL)で抽出した。有機画分を一緒にし、NaHCO3で洗い、セライトを通してろ過し、溶媒を蒸発させた。残留物をシリカ上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液−ヘキサン/酢酸エチル 1/1)にかけて、黄色固体として5-クロロ-3-ヨードピリジン-2-アミンを得た(11.9 g, 60%)。
【0176】
ステップ2
5-クロロ-2-メトキシフェニルボロン酸(5.0 g, 26.8 mmol)、5-クロロ-3-ヨードピリジン-2-アミン(6.83 g, 26.8 mmol)、炭酸ナトリウム(50 mLの水中に8.53 g, 80.5 mmol)、Pd(PPh3)4(621 mg, 2 mol%)、及び100 mLのトルエンの混合物を、N2下で夜通し還流させた。反応混合物を室温まで冷やし、有機層を分離し、減圧下で濃縮した。残留物を、溶離液としてヘキサン/酢酸エチル傾斜混合物を用いるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにかけて。3.3 g(46%収率)の5-クロロ-3-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)ピリジン-2-アミンを得た。
【0177】
ステップ3
50 mLの氷酢酸及び20 mLのTHF中の5-クロロ-3-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)ピリジン-2-アミン(5.2g, 19.3 mmol)の溶液を-10℃に冷やし、亜硝酸tert-ブチル(4.6 mL)を滴下して添加した。この反応混合物を0℃で夜通し撹拌し、室温に温め、100 mLの水で希釈した。固体物質をろ過し、乾燥して、2.9 gの純粋な3,6-ジクロロベンゾフロ[2,3-b]ピリジンを得た。
【0178】
ステップ4
150 mLの無水キシレン中の、3,6-ジクロロベンゾフロ[2,3-b]ピリジン(2.86 g, 12.01 mmol)、カルバゾール(5.02 g, 30.003 mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(4.62 g, 48.05 mmol)、2-ジシクロヘキシル-ホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(S-Phos, 430 mg)、及びPd2(dba)3(910 mg)の混合物を、N2下で48時間還流させた。この反応混合物を室温まで冷やし、100 mLのH2Oで希釈し、酢酸エチル(4×50 mL)で抽出した。有機画分を一緒にし、無水Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を蒸発させた。残留物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液−ヘキサン/ジクロロメタンの傾斜混合物)によって精製し、次にヘキサン/ジクロロメタン混合物から再結晶して、目的物質を白色小針状晶として得た。昇華によるさらなる精製(288℃、10-5 mmHgにて)によって1.86 gの純粋な目的化合物が得られた。
【0179】
[例6.化合物39の合成]
【0180】
【化86】
【0181】
ステップ1
3-クロロ-6-ブロモ-[1]ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジン(1.7 g, 5.8 mmol)、トリフェニレン-2-イルボロン酸(1.6 g, 5.8 mmol)、リン酸三カリウム(3.7 g, 17 mmol)、200 mLのトルエン、及び10 mLの水の混合物を調製し、20分間、窒素でバブリングした。次に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(53 mg, 0.060 mmol)、及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(96 mg, 0.23 mmol)を添加した。この混合物を窒素でさらに20分間バブリングした。窒素下で夜通し還流させた後、反応混合物を室温に冷却し、シリカ栓を通してろ過し、ジクロロメタンで洗った。最初のいくつかの部分はそれらが不純物しか含んでいなかったために廃棄した。一緒にしたろ液を濃縮して粗生成物を得て、これを熱ジクロロメタン及びヘキサンから再結晶して、1.8 gの3-クロロ-6-(2-トリフェニレニル)-[1]ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジンを黄色固体として得た(4.0 mmol, 70%収率)。
【0182】
ステップ2
3-クロロ-6-(2-トリフェニレニル)-[1]ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジン(1.6 g, 3.6 mmol)、カルバゾール(0.72 g, 4.3 mmol)、Pd(OAc)2(20 mg, 0.090 mmol)、ナトリウムt-ブトキシド(1.0 g, 11 mmol)、及び300 mLのキシレンの混合物を調製し、窒素で15分間バブリングした。次に、PBut3(トルエン中1.0 M溶液, 0.27 mL, 0.27 mmol)を添加し、混合物を窒素で15分間バブリングした。夜通し還流させた後、反応混合物を室温に冷やし、シリカゲル栓を通してろ過し、これを次にジクロロメタンで洗った。キシレン部分は廃棄した。一緒にしたジクロロメタンろ液を濃縮し、粗生成物をヘキサン中20%ジクロロメタンの混合物100mL中で夜通し撹拌した。残留物をろ過によって集めて1.7 gの明るい黄色固体(2.9 mmol, 80%収率)が得られた。
【0183】
[例7.化合物59の合成]
【0184】
【化87】
【0185】
ステップ1
1-クロロ-6-(9-カルバゾール)-[1]ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジン(1.0 g, 1.6 mmol)、トリフェニレン-2-イルボロン酸(0.85 g, 3.1 mmol)、リン酸三カリウム(1.7 g, 7.8 mmol)、100 mLのトルエン、及び5 mLの水の混合物を調製し、窒素で20分間バブリングした。次に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(24 mg, 0.030 mmol)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(43 mg, 0.10 mmol)を添加した。この混合物を窒素でさらに20分間バブリングした。窒素下で夜通し還流させた後、反応物を室温に冷却し、濃縮した。得られた固体を800 mLの還流トルエンに溶かし、薄いセライト栓を通してろ過した。集めたろ液を約100 mLまで濃縮し、次に窒素下で1時間還流させた。室温までゆっくり冷やした後、沈殿物をろ過によって集めた。この残留物を、メタノール中20%ジクロロメタンの熱混合物100 mL中で撹拌し、それが室温まで冷えた後で夜通し撹拌した。残留物をろ過によって集め、真空下で乾燥させ、1.2 gの白色固体が得られた(2.1 mmol, 81%収率)。
【0186】
[例8.化合物66の合成]
【0187】
【化88】
【0188】
ステップ1
250 mLの丸底フラスコに、2-クロロ-3-ヨード-4-アミノピリジン(5.0 g、19.6 mmol)、チオフェノール(2.16 g, 19.6 mmol)、CuI(0.187 g, 0.98 mmol)、エチレングリコール(2.5 g, 39 mmol)、炭酸カリウム(5.4 g, 39 mmol)、及び150 mLのイソプロパノールを添加した。反応物を加熱還流させ、窒素雰囲気下で24時間撹拌した。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。2-クロロ-3-フェニルチオ-4-アミノピリジンの収量は4.2 g (91%)だった。
【0189】
ステップ2
250 mLの丸底フラスコに、2-クロロ-3-フェニルチオ-4-アミノピリジン(2.7 g、11.4 mmol)及び60 mLの氷酢酸を添加した。この透明な溶液に、ButONO(1.36 g, 11.45 mmol)を一滴ずつ添加した。室温で1時間撹拌後、さらにButONO(1.36 g, 11.45 mmol)を添加した。混合物を室温で18時間撹拌し続けた。反応物を水で失活させ、生成物をシリカゲルカラムで精製した。1-クロロ-ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジンの収量は2.2 g(88%)だった。
【0190】
ステップ3
1-クロロ-ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジン(1.5 g, 6.8 mmol)、米国特許仮出願No. 60/963,944にしたがって合成した3-(トリフェニレン-2-イル)フェニルボロン酸(2.5 g, 7.2 mmol)、リン酸三カリウム(4.4 g, 20.4 mmol)、100 mLのトルエン、及び10 mLの水の混合物を調製し、窒素で15分間バブリングした。次に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(63 mg, 0.068 mmol)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(116 mg, 0.28 mmol)を添加した。この混合物を窒素でさらに20分間バブリングした。窒素下で夜通し還流させた後、反応混合物を室温に冷やした。生成物をシリカゲルカラムで精製した。2.7 g(81%)の化合物66が得られた。
【0191】
[例9.化合物70の合成]
【0192】
【化89】
【0193】
ステップ1
1-クロロ-ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジン(1.0 g, 4.5 mmol)、米国特許仮出願No. 60/963,944にしたがって合成した2-トリフェニレンボロン酸(1.25 g, 4.5 mmol)、リン酸三カリウム(3.0 g, 18.0 mmol)、100 mLのトルエン、及び10 mLの水の混合物を調製し、窒素で15分間バブリングした。次に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(42 mg, 0.045 mmol)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(77mg, 0.18 mmol)を添加した。この混合物を窒素でさらに20分間バブリングした。窒素下で夜通し還流させた後、反応混合物を室温に冷やした。生成物をシリカゲルクロマトグラフィーカラムで精製した。約1.5 g(84%)の化合物70が得られた。
【0194】
[例10.化合物71の合成]
【0195】
【化90】
【0196】
ステップ1
100 mLの酢酸中の2-アミノ-5-クロロピリジン(10.0 g、77.8 mmol)、酢酸カリウム(7.63 g, 77.8 mmol)の溶液を85℃に加熱し、50 mLの酢酸中のClI(12.6 g, 77.8 mmol)を滴下して添加した。反応混合物をこの温度に2時間保ち、1Lの水で希釈し、NaOHの1N溶液でpH7に中和し、酢酸エチル(4×75 mL)で抽出した。有機画分を一緒にし、NaHCO3で洗い、セライトを通してろ過し、溶媒を蒸発させた。残留物をシリカ上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液−ヘキサン/酢酸エチル 1/1)にかけて、黄色固体として5-クロロ-3-ヨードピリジン-2-アミンを得た(11.9 g, 60%)。
【0197】
ステップ2
2-(メチルチオ)フェニルボロン酸(5.0 g, 29.8 mmol)、5-クロロ-3-ヨードピリジン-2-アミン(7.65 g, 26.8 mmol)、炭酸ナトリウム(50 mLの水中に9.0 g)、Pd(PPh3)4(621 mg)、及び100 mLのトルエンの混合物を、N2下で夜通し還流させた。反応混合物を室温まで冷やし、有機層を分離し、減圧下で濃縮した。残留物を、溶離液としてヘキサン/酢酸エチル傾斜混合物を用いるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにかけて、3.5 gの5-クロロ-3-(2-(メチルチオ)フェニル)ピリジン-2-アミンを得た。
【0198】
ステップ3
50 mLの氷酢酸及び20 mLのTHF中の5-クロロ-3-(2-(メチルチオ)フェニル)ピリジン-2-アミン(5.2g, 19.3 mmol)の溶液を-10℃に冷やし、亜硝酸tert-ブチル(4.6 mL)を滴下して添加した。この反応混合物を0℃で夜通し撹拌し、室温に温め、100 mLの水で希釈した。固体物質をろ過し、乾燥して、2.5 gの純粋な3-クロロベンゾチエノ[2,3-b]ピリジンを得た。
【0199】
ステップ4
3-クロロ-[1]ベンゾチエノ[2,3-b]ピリジン(1.3 g, 5.9 mmol)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(トリフェニレン-2-イル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(3.1 g, 7.1 mmol)、リン酸三カリウム(3.8 g, 18 mmol)、100 mLのトルエン、及び10 mLの水の混合物を調製し、窒素で15分間バブリングした。次に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(54 mg, 0.060 mmol)、及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(97 mg, 0.24 mmol)を添加した。この混合物を窒素でさらに20分間バブリングした。窒素下で夜通し還流させた後、反応混合物を室温に冷却し、ろ過して沈殿物を集めた。残留物をメタノールで洗い、次に熱トルエン中に再溶解させた。この溶液を硫酸マグネシウム栓を通してろ過し、硫酸マグネシウム栓をジクロロメタンで洗った。一緒にしたろ液を濃縮して700 mgの白色固体を得た(1.4 mmol, 24%収率)。
【0200】
[例11.化合物79の合成]
【0201】
【化91】
【0202】
ステップ1
250 mLの丸底フラスコに、2-クロロ-5-ヨード-4-アミノピリジン(5.0 g、19.6 mmol)、チオフェノール(2.16 g, 19.6 mmol)、CuI(0.187 g, 0.98 mmol)、エチレングリコール(2.5 g, 39 mmol)、炭酸カリウム(5.4 g, 39 mmol)、及び150 mLのイソプロパノールを添加した。反応物を加熱還流させ、窒素雰囲気下で24時間撹拌した。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。2-クロロ-3-フェニルチオ-4-アミノピリジンの収量は4.5 g(97%)だった。
【0203】
ステップ2
250 mLの丸底フラスコに、2-クロロ-3-フェニルチオ-4-アミノピリジン(3.7 g、16.8 mmol)及び60 mLの氷酢酸を添加した。この透明な溶液に、ButONO(1.8 g, 16.8 mmol)を一滴ずつ添加した。室温で1時間撹拌後、さらなるミリモル(1.8 g, 16.8 mmol)のButONOを添加した。混合物を室温で18時間撹拌し続けた。反応物を水で失活させ、生成物をシリカゲルカラムで精製した。3-クロロ-ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジンの収量は1.2 g(33%)だった。
【0204】
ステップ3
3-クロロ-ベンゾチエノ[2,3-c]ピリジン(1.0 g, 4.5 mmol)、米国仮出願No.60/963,944にしたがって合成した3-(トリフェニレン-2-イル)フェニルボロン酸(2.1 g, 4.8 mmol)、リン酸三カリウム(2.9 g, 13.5 mmol)、100 mLのトリエン、及び10 mLの水の混合物を調製し、窒素を15分間バブリングした。次に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(63 mg, 0.068 mmol)及び2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(116 mg, 0.28 mmol)を添加した。この混合物に窒素をさらに20分間バブリングした。窒素下で夜通し還流させた後、反応混合物を室温に冷却した。生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。約1.2 g(55%)の化合物79が得られた。
【0205】
[例12.化合物80の合成]
【0206】
【化92】
【0207】
ステップ1
カルバゾール(7.3 g, 73.7 mmol)、3-ブロモヨードベンゼン(25 g, 87.3 mmol)及びナトリウムt-ブトキシド(8.4 g, 87.3 mmol)を窒素雰囲気下で150 mLの無水キシレンに懸濁させた。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(200 mg)及び1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(400 mg)を一度に添加し、反応物を窒素雰囲気下で24時間加熱還流し、撹拌した。冷却後、キシレンを蒸発させ、残留物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにかけて、3-ブロモフェニルカルバゾール(9.5 g, 黄色の固化したオイル)を得た。
【0208】
ステップ2
3-ブロモフェニルカルバゾール(9.5 g, 29.5 mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(11.2g, 44.2 mmol)、酢酸カリウム(8.7 g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(200 mg)、及び1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(400 mg)を200 mLのジオキサン中に懸濁させ、窒素雰囲気下で夜通し加熱還流させた。冷却し、溶媒を蒸発させた後、残留物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにかけて、9-(3-(4,4,5,5,-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾール b(6.0 g, 無色結晶)が得られた。
【0209】
ステップ3
1,3-ジブロモベンゼン(16 g, 64.9 mmol)、9-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾール b(6.0 g, 11.6 mmol)、酢酸カリウム(水中6.6 gの飽和溶液)、及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(380 mg)を、150 mLのトルエン中、窒素雰囲気下で夜通し加熱還流させた。冷却、溶媒留去、及びカラムクロマトグラフィーの後、9-(3’-ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-9H-カルバゾール(5.8 g)を得た。
【0210】
ステップ4
ステップ2と同じ条件で、塩基としての酢酸カリウムとともにトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム及び1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンで触媒される、ジオキサン中でのビス(ピナコラト)ジボロン及び9-(3’-ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-9H-カルバゾールの反応で、9-(3’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-9H-カルバゾールが得られ、これをシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0211】
ステップ5
1-クロロベンゾ[4,5]チエノ[2,3-c]ピリジン(化合物66のステップ2に記載した)及び9-(3’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-9H-カルバゾールをトルエン(150 mL)に溶かした。触媒〔トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム,400 mg及び2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル, 200 mg)〕及び塩基(リン酸三カリウム)を一度に添加し、反応物を窒素雰囲気下で夜通し加熱還流させた。生成物をシリカゲルカラムで精製し、化合物80を得た。
【0212】
[デバイス例]
【0213】
全てのデバイス例は、高真空(<10-7 Torr)の熱蒸着によって作製した。アノード電極は800Åのインジウム錫オキシド(ITO)である。カソードは10ÅのLiFとそれに続く1000ÅのAl(アルミニウム)からなる。全てのデバイスは作製後直ちに窒素グローブボックス(< 1 ppmのH2O及びO2)中でエポキシ樹脂を用いて封止したガラス蓋で密閉し、吸湿剤をそのパッケージに組み込んだ。
【0214】
P1が発光ドーパントであり、本発明の化合物である化合物1、化合物2、又は化合物3がホストである具体的なデバイスを準備した。デバイス例1〜3の有機積層体は、ITO表面から順に、正孔注入層(HIL)として100ÅのP1、正孔輸送層(HTL)として300Åの4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(α-NPD)、発光層(EML)として15%のIr燐光化合物P1でドープした本発明の化合物、ETL2として100Åの本発明の化合物、及びETL1として400ÅのAlq3(トリス-8-ヒドロキシキノリンアルミニウム)からなる。
【0215】
EML が10%のP1でドープしたホストとしてCBPを含み、P2を阻止層物質として用いたことを除いて、比較例1を上記デバイス例と同様に作製した。
【0216】
本明細書で用いるとおり、以下の化合物は下記の構造を有する。
【0217】
【化93】
【0218】
OLEDに用いるための具体的な物質を提供し、これは特に良好な特性を有するデバイスをもたらしうる。これらの物質は発光層のホストとして、あるいは増強層(enhancement layer)の材料として用いることができる。デバイス例1〜3の発光層の材料及び阻止層の材料を表2に示している。これらのデバイスの試験を行い、測定結果を表3に示している。化合物1〜3を用いた発光層及び阻止層を有するデバイスは、高いデバイス効率、長寿命、及び低下した作動電圧を示している。
【0219】
【表24】
【0220】
【表25】
【0221】
デバイス例1〜3より、緑色燐光OLEDにおけるホストとしての本発明の化合物は、高いデバイス効率(すなわち、1000 cd/m2においてLE > 60 cd/A)をもたらし、このことは発色団としてのアザ-ジベンゾチオフェンが効率的な緑色電界燐光発光のために十分高い三重項エネルギーをもっていることを示唆している。さらに、ホストとして化合物1及び2を組み込んだデバイスの高い安定性も注目に値する。寿命T80%(室温で40 mA/cm2の一定の電流密度において、初期輝度L0がその値の80%に低下するのにかかる時間として定義される)は、化合物1及び2それぞれに対して113時間及び85時間であって、比較例1よりも高いL0を有する。このことは、デバイス安定性の1.5倍の向上と解釈できる。したがって、本発明の化合物は増強層(enhancement layer)としても機能しうる。
【0222】
別の注目すべき特徴は、化合物1及び2の両方とも、1000 cd/m2にて5.8 VをもつCBPと比較して、それぞれ1000 cd/m2にて5 V、1000 cd/m2にて5.2 Vと、より低い作動電圧をもたらすことである。
【0223】
このデータは、アザ-ジベンゾチオフェン類が燐光OLEDのための優れたホスト及び増強層の材料であり、より高い効率、より低い作動電圧、及び従来用いられてきたホストであるCBPよりも何倍か良好なデバイス安定性の向上をもたらすことができることを示唆している。
【0224】
本明細書に記載した様々な態様は例としての目的だけであり、本発明の範囲を制限することを意図していないことが理解される。例えば、本明細書に記載した物質及び構造の多くは、別の物質及び構造と、本発明の精神から離れることなく置き換えることができる。特許請求の範囲に係る本発明は、したがって、本明細書に記載した具体例及び好ましい態様からの変形を含むことができ、このことは当業者には明らかであろう。本発明が何故機能するかについての様々な理論は限定されることを意図していないことが理解される。
図1
図2
図3
図4