(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334764
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】静脈と動脈の全体直径を増大させるシステムと方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/12 20060101AFI20180521BHJP
A61M 1/10 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
A61M1/12
A61M1/10 110
【請求項の数】73
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2017-41461(P2017-41461)
(22)【出願日】2017年3月6日
(62)【分割の表示】特願2014-526178(P2014-526178)の分割
【原出願日】2012年8月15日
(65)【公開番号】特開2017-121519(P2017-121519A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2017年3月6日
(31)【優先権主張番号】61/524,759
(32)【優先日】2011年8月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/561,859
(32)【優先日】2011年11月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515222698
【氏名又は名称】フロー フォワード メディカル,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】フラナノ エム.ディ. エフ. ニコラス
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−502560(JP,A)
【文献】
特開2005−058617(JP,A)
【文献】
特表2011−502714(JP,A)
【文献】
特表平5−501968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/12
A61M 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に動静脈フィステル又は動静脈グラフトを生成するより前の使用のためのシステムであって、
一端が供与静脈又は供与位置に流体接続し且つ別の端が受容静脈に流体接続するポンプ−導管アセンブリと、
ポンプと、
前記供与静脈又は供与位置から前記受容静脈内に静脈の血液をポンプ輸送し、前記血液のポンプ輸送により前記受容静脈の平均壁剪断応力を0.76Pa以上とし、
前記血液のポンプ輸送により前記受容静脈内の平均脈圧を40mmHg未満とし、
前記血液のポンプ輸送により、ポンプ輸送が停止した後に持続される前記受容静脈の内腔直径及び全体直径に増大を生じ、
持続的に増大した内腔直径及び全体直径を有する前記受容静脈の少なくとも一部を利用して、患者に動静脈フィステル又は動静脈グラフトを生成する、
ように構成された制御ユニットと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記ポンプ−導管アセンブリは脱酸素化された血液をポンプ輸送する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ポンプ−導管アセンブリは、50ml/minと2500ml/minの間、50ml/minと1000ml/minの間、100ml/minと1000ml/minの間、100ml/minと1500ml/minの間、50ml/minと2500ml/minの間、又は100ml/minと2500ml/minの間の速度で血液をポンプ輸送する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記供与静脈内の壁剪断応力は、前記ポンプ−導管アセンブリの作動時に0.76Pa以上である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記受容静脈内の平均壁剪断応力は、前記ポンプ−導管アセンブリの作動時に0.76Pa〜23Paの間である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記受容静脈内の平均壁剪断応力は、前記ポンプ−導管アセンブリの作動時に1.5Pa〜23Paの間である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記供与静脈内の平均壁剪断応力は、前記ポンプ−導管アセンブリの作動時に2.5Pa〜10Paの間である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記供与静脈内の前記血液の平均速度は、前記ポンプ−導管アセンブリの作動時に15cm/s〜100cm/sの間である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記受容静脈内の前記血液の平均速度は、前記ポンプ−導管アセンブリの作動時に10cm/s〜120cm/sの間である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記受容静脈内の前記血液の平均速度は、前記ポンプ−導管アセンブリの作動時に25cm/s〜120cm/sの間である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
血液は前記ポンプ−導管アセンブリを介して、1日〜84日の間、7日〜84日の間、7日〜42日の間、又は84日超、の期間ポンプ輸送される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記血液をポンプ輸送した後に前記受容静脈の全体直径又は内腔直径と、前記受容静脈を通る血流を判定し、
前記受容静脈内に所望の平均壁剪断応力又は所望の平均血液速度を維持するために前記ポンプ−導管アセンブリのポンプ部分の速度を変更する、
ことを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記受容静脈の前記内腔直径又は全体直径が開始直径から5、10、25、50、100%又は100%超だけ増大するまで、前記ポンプ−導管アセンブリを介して血液をポンプ輸送する、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記供与静脈又は供与位置は、右心房、上大静脈、下大静脈、腕頭静脈、頸静脈、鎖骨下静脈、腋窩静脈、総腸骨静脈、外腸骨静脈又は大腿静脈から成る群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記受容静脈は、橈側皮静脈、橈側正中皮静脈、尺骨静脈、橈骨静脈、正中静脈、前肘静脈、尺側皮静脈、尺側正中皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈又は大腿静脈から成る群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記血液のポンプ輸送により、第2の導管との流体接続部に隣接する受容静脈の部分における平均脈圧が、前記ポンプ−導管アセンブリの作動時に5mmHg未満、10mmHg未満、20mmHg未満、又は30mmHg未満となる、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記ポンプ−導管アセンブリのポンプ部分は前記患者の体内に移植されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記ポンプ−導管アセンブリのポンプ部分は前記患者の体外にとどまる、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記受容静脈の前記持続的に増大された内腔直径又は全体直径は、少なくとも2.5mm又は4.0mmである、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記ポンプは回転血液ポンプである、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記回転血液ポンプは遠心ポンプである、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記ポンプ−導管アセンブリの前記ポンプは、少なくとも1つの接触軸受で構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記ポンプ−導管アセンブリの前記ポンプは、電気モータで駆動される、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記ポンプ−導管アセンブリによる前記血液のポンプ輸送は、前記ポンプを制御するように構成された制御システムによって制御される、請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
前記ポンプ−導管アセンブリのパラメータは前記制御システムで制御され、そのパラメータには前記ポンプの速度、ポンプインペラの速度、又は導管内の圧力が含まれる、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記ポンプ−導管アセンブリのパラメータは前記制御システムを利用して手動調節される、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記ポンプ−導管アセンブリのパラメータは前記制御システムを利用して自動調節される、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
前記ポンプ、導管、又は前記患者の血管系には少なくとも1つのセンサが配置され、
そのようなセンサは、
a)特定の作動条件下での前記ポンプの運転に必要な電力又は電流、
b)血液速度、
c)血流速度、
d)血流が静脈に流入、流出する際の抵抗、
e)流入導管、流出導管、又は前記受容静脈における、血圧、脈圧、又は拍動指数、
の内の少なくとも1つを測定する、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
制御システムは、前記ポンプ−導管アセンブリの前記ポンプに電力を供給するための、再充電可能電池を含む再充電可能な電源ユニットを含んでいる、請求項1に記載のシステム。
【請求項30】
制御システムは壁コンセントから給電される、請求項1に記載のシステム。
【請求項31】
前記ポンプ−導管アセンブリは、前記供与静脈又は供与位置へ流体接続された第1の入口と前記ポンプの前記入口へ流体接続された第1の出口とを有する第1の導管を備え、前記第1の導管は前記供与静脈又は供与位置から静脈血液を取り除くためのものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項32】
前記ポンプ−導管アセンブリは、前記受容静脈へ流体接続される第2の出口と前記ポンプの前記出口へ流体接続された第2の入口とを有する第2の導管を備え、前記第2の導管は前記受容静脈内へ静脈血液を移動させるためのものである、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記第1の導管と前記第2の導管の少なくとも1つは、タケノコ継手から成るコネクタを用いて血液ポンプへ接続される、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記第1の導管と前記第2の導管の少なくとも1つは、半径方向への圧縮性コネクタを用いて血液ポンプへ接続される、請求項32に記載のシステム。
【請求項35】
第1導管又は第2導管の少なくとも一部は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン及び/又はシリコーンから選択される少なくとも1つの部材を備える、請求項32に記載のシステム。
【請求項36】
第1導管と第2導管の少なくとも1つの少なくとも一部は、形状記憶合金、自己拡張性材料、又は半径方向拡張性材料を備える、請求項32に記載のシステム。
【請求項37】
前記形状記憶合金はニチノールである、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記第1導管と前記第2導管の少なくとも1つは編み込まれたニチノールを備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記第1導管と前記第2導管の少なくとも1つはコイル状のニチノールを備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
第1導管又は第2導管の少なくとも一部は、PTFE、ePTFE、ポリエチレンテレフタレート、又はダクロンから選択される少なくとも1つの部材を備える、請求項32に記載のシステム。
【請求項41】
前記PTFE、ePTFE、ポリエチレンテレフタレート、又はダクロンの部分は長さが5cm未満である、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記第2の導管の遠位部又は遠位先端は前記受容静脈の内腔内へ挿入される、請求項32に記載のシステム。
【請求項43】
前記受容静脈の内腔内へ挿入される前記第2の導管の前記遠位部又は遠位先端は、自己拡張性又は半径方向拡張性を有する壁を備える、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記受容静脈の内腔内へ挿入される前記第2の導管の前記遠位部は、ニチノールを備える、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
第1導管又は第2導管の少なくとも一部は、抗菌コーティングの1以上を備える、請求項32に記載のシステム。
【請求項46】
第1導管又は第2導管の内腔の少なくとも一部は、抗血栓コーティングを備える、請求項32に記載のシステム。
【請求項47】
抗血栓コーティングはヘパリンを含む、請求項42に記載のシステム。
【請求項48】
前記ポンプの血液接触面の少なくとも一部は、抗血栓コーティングを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項49】
前記抗血栓コーティングはヘパリンを含む、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
第1導管又は第2導管の内腔の少なくとも一部は、潤滑性コーティングを備える、請求項32に記載のシステム。
【請求項51】
第1導管と第2導管の少なくとも1つは放射線不透過マーカを備える、請求項32に記載のシステム。
【請求項52】
第1導管と第2導管の少なくとも1つは、2mm〜10mmの間の内直径を有する、請求項32に記載のシステム。
【請求項53】
第1導管又は第2導管の少なくとも1つは、4mmの内直径を有する、請求項32に記載のシステム。
【請求項54】
第1導管と第2導管は、2cm〜110cmの間、又は4cm〜220cmの間の合計長さを有する、請求項32に記載のシステム。
【請求項55】
第1導管又は第2導管の少なくとも一部は、皮下トンネリング用に構成されている、請求項32に記載のシステム。
【請求項56】
第1導管又は第2導管の少なくとも一部は、所望の長さに切って前記ポンプに取り付けることができる、請求項32に記載のシステム。
【請求項57】
第1導管又は第2導管の一部は患者に移植され、前記導管の一部は体外にある、請求項32に記載のシステム。
【請求項58】
トンネリングの後でカフが前記第1導管と前記第2導管の少なくとも1つに取り付けられる、請求項57に記載のシステム。
【請求項59】
前記第1の導管の先端は、上大静脈又は右心房内に配置される、請求項32に記載のシステム。
【請求項60】
前記供与静脈又は供与位置から前記受容静脈内への静脈血液のポンプ輸送は、制御システムによって制御される、請求項1に記載のシステム。
【請求項61】
コントローラは、前記受容静脈において所望の持続的に増大した全体直径及び内腔直径が達成される前に、前記受容静脈における持続的に増大した全体直径及び内腔直径のなどの変化を引き起こすために、前記ポンプ−導管アセンブリからの情報を解析し、ポンプ速度、インペラの毎分の回転数、あるいは流出導管圧力などのポンプパラメータを自動的に調節するソフトウェアプログラムを含む、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
ポンプ速度やインペラの毎分の回転数などのポンプパラメータは、定期的に調節される、請求項60に記載のシステム。
【請求項63】
前記患者は、血液透析のために動静脈フィステル又は動静脈グラフトを必要とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項64】
前記患者は、初期の静脈直径が不適切であるために前記受容静脈での動静脈フィステル形成手術に対して不適格である、請求項1に記載のシステム。
【請求項65】
前記血液のポンプ輸送によって前記受容静脈の長さが増大し、ポンプ輸送を停止した後もそれが持続する、請求項1に記載のシステム。
【請求項66】
前記血液のポンプ輸送によって前記受容静脈の長さが増大し、ポンプ輸送を停止した後もそれが持続する、請求項2に記載のシステム。
【請求項67】
前記血液のポンプ輸送によって前記受容静脈の長さが増大し、ポンプ輸送を停止した後もそれが持続する、請求項3に記載のシステム。
【請求項68】
前記血液をポンプ輸送した後に前記受容静脈の全体直径又は内腔直径と、前記受容静脈を通る血流を判定し、
前記受容静脈内に所望の平均壁剪断応力又は所望の平均血液速度を維持するために前記ポンプ−導管アセンブリのポンプ部分の速度を変更する、
ことを更に含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項69】
前記血液をポンプ輸送した後に前記受容静脈の全体直径又は内腔直径と、前記受容静脈を通る血流を判定し、
前記受容静脈内に所望の平均壁剪断応力又は所望の平均血液速度を維持するために前記ポンプ−導管アセンブリのポンプ部分の速度を変更する、
ことを更に含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項70】
前記供与静脈内の壁剪断応力は、前記ポンプ−導管アセンブリの作動時に0.76Pa以上である、請求項2に記載のシステム。
【請求項71】
前記供与静脈内の壁剪断応力は、前記ポンプ−導管アセンブリの作動時に0.76Pa以上である、請求項3に記載のシステム。
【請求項72】
前記供与静脈内の前記血液の平均速度は、前記ポンプ−導管アセンブリの作動時に15cm/s〜100cm/sの間である、請求項2に記載のシステム。
【請求項73】
前記供与静脈内の前記血液の平均速度は、前記ポンプ−導管アセンブリの作動時に15cm/s〜100cm/sの間である、請求項3に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、2011年11月19日に出願された“静脈と動脈の全体直径を増大させるシステムと方法(System and Method to Increase the Overall Diameter of Veins and Arteries)”と題する米国特許出願第61/561,859号の優先権を主張し、かつ2011年8月17日に出願された“静脈と動脈の全体直径を増大させるシステムと方法(System and Method to Increase the Overall Diameter of Veins and Arteries)”と題する米国特許出願第61/524,759号の優先権を主張する。後者は2011年2月17日に出願された“静脈の全体直径を増大させるシステムと方法(System and Method to Increase the Overall Diameter of Veins)”と題する米国特許出願第13/030,054号の一部継続出願であり、これは2010年2月17日に出願された“静脈の全体直径を増大させるシステムと方法(System and Method to Increase the Overall Diameter of Veins)”と題する米国仮特許出願第61/305,508号の優先権を主張し、かつ、同時係属中の、同時出願の2012年8月15日出願の“血液ポンプシステムと方法(Blood Pump Systems and Methods)”と題する代理人整理番号430365PCTのPCT国際特許出願に関係し、かつ、同時係属中の“血液ポンプシステムと方法(Blood Pump Systems and Methods)”と題する米国特許出願第61/524,761号及び同時係属中の“血液ポンプシステムと方法(Blood Pump Systems and Methods)”と題する米国特許出願第61/564,671号に関係する。これらはすべて参照によりその全体が援用される。
【0003】
本発明はヒトの静脈と動脈の全体直径及び内腔直径を持続的に増大させるためのシステムと方法に関する。特に本発明は、血液ポンプを利用して十分な期間に亘り血液速度及び末梢静脈と動脈の内皮にかかる壁剪断応力(WSS)を上昇させ、結果としてこれらの静脈及び動脈の全体直径及び内腔直径を持続的に増大させるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
慢性腎疾患(CKD)を持つ患者の多くは、最終的には末期腎不全(ESRD)に至り、体内から体液や老廃物を除去し、生命を維持するために腎代替療法を必要とする。腎代替療法を必要とするESRD患者の殆どは、血液透析を受け、循環系から取り出された血液が、血液透析器で浄化されて循環系に戻される。血液透析を促進するために外科医は、ESRD患者から迅速に血液を取り出しかつ戻すための“バスキュラーアクセス部位”を個別に形成する。血液透析器そのもの、及び血液透析処置のその他の部品に大きな進歩が得られているが、耐久性及び信頼性のあるバスキュラーアクセス部位の形成は僅かの改良しかなされておらず、腎代替療法のアキレス腱となったままである。好適なバスキュラーアクセス部位を提供できないことで、ESRD患者の発病及び死を招くことが多く、世界的に、健康管理者、支払者、及び公的支援制度への大きな負担となっている。
【0005】
血液透析のためのバスキュラーアクセス部位には一般的に、動静脈フィステル(AVF)、動静脈グラフト(AVG)、カテーテルの3つの形態がある。このアクセス部位の各タイプは、以下で述べるように、機能不全や合併症を起こす割合が高い。
【0006】
AVFは動脈と静脈とを手術によって直接吻合して構築される。手首に形成される橈骨動脈と上腕静脈との間の機能AVFが、最も持続性がありかつ最も望ましい血液透析アクセス形態であり、約3年の平均開存性がある。吻合部から出てゆく静脈は“流出路”静脈と呼ばれる。流出路静脈の全体直径と内腔直径が持続的に増大することが、AVFが“成熟”して使用可能となる重要な要素である。AVFによる流出路静脈内の高速血流と、静脈内皮にかかるWSSとが、流出路静脈の全体直径と内腔直径とを持続的に増大させるための重要な因子であると広く考えられている。残念ながらESRD患者の約80%は、一般的に静脈又は動脈の直径が不適格であるために手首へのAVF設置に適さない。AVF設置が試みられる適格な患者に関しても、その約50〜60%は更なるインターベンション治療なしではその部位を利用することができない。これは“成熟不全“問題として知られている。血管直径の小さいこと、特に静脈直径の小さいことが、AVFの成熟不全の因子として特定されている。“内膜過形成”として知られる強度の静脈壁瘢痕の急速な出現も、AVF成熟不全の重要因子として特定されている。静脈内の相対的に高速で乱流となった血流領域(結果的に局所的に高いWSSとなる)が、静脈壁瘢痕を起こす主因であると考える研究者もいる。一方、他の研究者は、血流が比較的遅くて振動する領域であって、WSSが比較的小さくて振動する領域でこの瘢痕が生じるとしている。これに対応して、AVF不全率を最小化するために、AVF流出路静脈の流れのパターンを変動させる試みが行われてきた。また、拍動性の動脈血が入り込むことにより静脈が周期的に拡張されることも、AVFにおける内膜過形成と流出路静脈の閉塞とを刺激する役割も果たしていると仮定する研究者もいる。現在のところ、静脈壁の瘢痕と閉塞というマイナスの効果を排除しつつ、動脈と静脈の全体直径及び内腔直径を持続的に増大させる高速血流とWSSのプラスの効果を保持する方法は存在しない。驚くことではないが、新たにESRDと診断されて血液透析を必要とする患者が、血液透析を開始してから6か月後に機能AVFを持てる可能性は50%に過ぎない。機能AVFを持たない患者は、より高価なバスキュラーアクセス方式での透析を余儀なくされ、合併症の併発、病状の進行、及び死に関するより大きなリスクを持つ。
【0007】
血液透析のためのバスキュラーアクセス部位の第2のタイプは、動静脈グラフト(AVG)である。AVGは、動脈と静脈の間に合成導管部を配置することで構成される。典型的には、AVGは腕又は脚に構成される。合成導管の一部が皮膚の直下に配置され、針のアクセスに供用される。AVGは、皮膚表面上には見えない静脈を流出路用に利用できるので、AVFよりもより多くの患者に適用可能であり、早期の不全率もAVFに比べてはるかに低い。残念なことは、AVGの平均一次開存性が約4〜6か月しかないことである。その殆どは、合成導管との接続部近辺の流出路静脈壁に強度の内膜過形成及び瘢痕が急速に成長するためであり、それが狭窄及び血栓症をもたらす。AVF不全と同じように、一部の研究者は、AVGによって形成された流出路静脈内での血液の高速乱流が、流出路静脈壁内に内膜過形成と瘢痕を生じるとし、別の研究者は、血流が相対的に遅いか振動し、かつWSSが相対的に低いか振動する領域によってこの瘢痕が生じるとの説を採っている。また、拍動性の動脈血が流出路静脈内に入り込むことにより静脈が周期的に拡張されることも、AVGにおける内膜過形成と流出路静脈の閉塞の形成にある役割を果たしていると仮定する研究者もいる。AVGはAVFよりも好ましくないものであるが、主としてAVFに適さないという理由で、約25%の患者がAVGで透析を行っている。
【0008】
バスキュラーアクセス部位の第3のタイプはカテーテルである。AVFやAVGで血液透析を受けられない患者は、血液透析を受けるために大きなカテーテルを首、胸、又は脚に挿入することができる。これらのカテーテルは感染され易く、患者に敗血症及び死の高いリスクをもたらすことが多い。カテーテル敗血症になった患者は、通常入院してカテーテルを取り去って、仮のカテーテルを挿入し、抗生物質の静脈内投与を行うことが必要である。そうして感染が解消されると、新しいカテーテル又は別のタイプのアクセス部位が設置される。カテーテルはまた、その先端の周りに血栓やフィブリンの蓄積による閉塞を受けやすい。血液透析カテーテルの平均開存性は約6か月であり、一般的には、血液透析のアクセスとしては最も望ましくないものである。AVFやAVGに比べて望ましくないけれども、約20%の患者がカテーテルで透析を行う。それは主として、その患者がまだ機能AVF又はAVGを受けられるようになっていないか、AVF又はAVGを受けるのに適していないからである。
【0009】
血液透析アクセス部位不全の問題は、常套的に血液透析を受けるESRD患者の数が世界的に増加してきたために近年大きな注目を浴びるようになった。2004年に、メディケア&メディケイドサービスセンター(CMS)は、末期腎不全患者に対する血液透析へのアクセス提供においてAVFの利用を増やすための、“フィスチュラファースト(内シャント第一)”の取り組みを発表した。この重要な取り組みは、AVFで血液透析を受ける患者は、AVGあるいはカテーテルによる患者に比べて罹病率と死亡率が減少していることを示すメディケアの公表データに応えるものである。AVF患者に関わる経費は、透析の初年度及び次年度以降においてAVG患者に関わる経費よりも大幅に低い。AVFでの透析の経費節約は、カテーテルでの透析に比べてもはるかに大きい。
【0010】
AVFに適格であるためには一般に、末梢静脈の全体直径が少なくとも2.5mmで、末梢動脈の全体直径が少なくとも2.0mmであることが必要である。ただし血管外科医によって設定閾値水準が異なり得ることは理解されたい。AVGに適格であるためには患者は一般に、末梢静脈の全体直径が少なくとも4mmで、末梢動脈の全体直径が少なくとも3.0mmであることが必要である。ただし血管外科医によっては設定閾値水準が異なり得ることは理解されたい。現在のところ、AVFやAVGを形成する前の初期の静脈又は動脈の寸法が不適格であるESRD患者に、末梢静脈と動脈の全体直径及び内腔直径を持続的に増大させる方法はない。したがって、静脈が小さすぎてAVF又はAVGを試みることのできない患者は、カテーテルなどのあまり望ましくないバスキュラーアクセス形態を取らざるを得ない。同様に、女性や小児などの静脈と動脈の小さい患者に多く起きやすい、AVF成熟不全に対する処置に関しても、現在のところ承認された方法はない。したがって、AVFやAVGを形成する前に静脈や動脈の全体直径及び内腔直径を拡大するためのシステムと方法が望まれている。血液透析において、カテーテル法などの望ましくないバスキュラーアクセス形態を取らざるを得なかったESRD患者は、AVF又はAVGを利用可能であった患者に比べて罹病又は死亡するリスクが大幅に高かったことが最近の研究によって示されている。
【0011】
また、バイパスグラフトを必要とする末梢動脈又は冠状動脈のアテローム性硬化閉塞の患者にも、静脈や動脈の直径を持続的に増大させる必要性がある。脚部動脈に血流障害のある末梢動脈疾患(PAD)の患者は、跛行、皮膚潰瘍及び組織虚血となることが多い。これらの患者の多くは、最終的に罹患している四肢部分の切断を必要とする。PAD患者の中には、バルーン血管形成又は血管ステントの移植により、障害を適度に軽減することができる場合もある。しかし、他の患者においては、このような侵襲性が最小の療法では障害に対処できない。したがって外科医はバイパスグラフトを形成して、閉塞のある動脈の周りに血液を分散させ罹患している末端部分へ適切な血流を回復させるようにすることが多い。しかしながら、末梢バイパスグラフトを必要とする患者の多くは、静脈や動脈の直径が適切でないために、バイパス導管として自分自身の静脈を利用することができず、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE、例えばゴアテックス(商標))やポリエチレンテレフタレート(PET、例えばダクロン(登録商標))などの材料でできた合成導管を利用せざるを得ない。研究結果によれば、バイパス導管として患者自身の静脈を使う方が、PTFEやePTFEやダクロンなどの材料でできた合成バイパス導管を利用する場合に比べて長期間の開存性に優れていることが分かっている。合成バイパス導管の使用は、グラフトの遠位端における動脈狭窄及び導管全体における血栓症のリスクが増大し、その結果バイパスグラフト障害が起きて、症状の再発又は悪化を生じる。したがって、静脈直径が不適当であるために自分自身の静脈をバイパスグラフトの形成に利用することが適さない患者に対して、バイパスグラフト形成の前に静脈の全体直径及び内腔直径を増大させるシステム及び方法が望まれる。
【0012】
心臓への血流の閉塞を持つ冠状動脈疾患(CAD)の患者は、胸痛、心筋虚血及び心筋梗塞となることが多く、結局多くの人がこの疾患が原因で死亡する。これらの患者の中には、バルーン血管形成又は血管ステントの移植により、閉塞を適度に軽減することができる場合もある。しかし、多くの患者においては、このような侵襲性が最小の療法では閉塞に対処できない。したがって外科医はしばしば、好適な導管として内乳動脈と橈骨動脈を用いたバイパスグラフトを形成して、閉塞のある動脈の周りに血液を分散させ心臓の罹患領域へ適切な血流を回復させる。ただし、冠状バイパスグラフトを必要とする患者の一部は、動脈の直径が適当でないために内乳動脈や橈骨動脈を利用することができず、末梢静脈を利用しなければならない。研究結果によると、患者自身の内乳動脈と橈骨動脈をバイパスグラフトとして使用すれば、末梢静脈の一部を使用する場合に比べて、長期間の開存性がより優れていることが示されている。末梢静脈をバイパスグラフトとして使用すると、グラフト内での狭窄と導管全体での血栓症のリスクが高くなり、結果的にグラフト障害と症状の再発又は悪化をもたらす。したがって、動脈直径が不適当であるために自分自身の動脈をバイパスグラフトの形成に利用することが適さない患者に対して、冠状バイパスグラフト形成の前に動脈の全体直径及び内腔直径を増大させるシステム及び方法が望まれる。更に、末梢静脈の直径が小さい患者に対しても、冠状バイパスグラフト形成の前に静脈の全体直径及び内腔直径を増大させるシステム及び方法が望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、末梢の静脈と動脈の全体直径及び内腔直径を増大させるために血液ポンプを利用する方法を含む。末梢静脈又は動脈の全体直径と内腔直径に持続的増大を生じるのに十分な速度と十分な期間に亘って血液を末梢静脈又は動脈にポンプ輸送して、末梢静脈又は動脈の内皮にかかる平均壁剪断応力又はピーク壁剪断応力のいずれかを上昇させるシステムと方法が記述される。好ましくは末梢動脈中にあるときの血液の脈圧よりも低い脈圧となるようにして、ポンプが血液を末梢静脈又は動脈中へ放出する。末梢静脈又は動脈の全体直径と内腔直径に持続的増大を生じるのに十分な速度と十分な期間に亘って、末梢静脈又は動脈から例えば右心房などの血管系の別の位置に血液をポンプ輸送することによって、末梢静脈又は動脈の内皮にかかる壁剪断応力(WSS)を上昇させるシステムと方法も記述される。
【0014】
静脈及び動脈内での基準の血流による力と血流による力の変化が、その静脈及び動脈の全体直径と内腔直径を決めるのに決定的な役割を果たすことが研究により分かっている。例えば、血液速度とWSSを持続的に上昇させると、静脈と動脈の全体直径と内腔直径の持続的な増大をもたらすことが可能である。ここで、全体直径と内腔直径の増大量は、血液速度とWSSを上昇させた時の、上昇させた血液速度とWSSの両方の水準に依存する。血流とWSSの上昇は内皮細胞によって検知され、それが信号機構を触発して、血管平滑筋細胞を刺激し、単球とマクロファージとを吸引させ、コラーゲンやエラスチンなどの細胞外マトリックス成分を劣化させるプロテアーゼを合成して放出させる。このように、本発明はある十分な期間に亘って血液速度とWSSとを上昇させ、それによって血管を改造して、静脈と動脈の全体直径と内腔直径を好ましくは7日より長い期間に亘って持続的に増大させることに関する。本発明はまた、標的とする動脈又は静脈の血液速度とWSSを最適化し、静脈と動脈の全体直径と内腔直径の持続的増大の速度と程度を最適化するために、定期的に手動又は自動でポンプパラメータを調節する方法にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
壁剪断応力が、上昇した血流に対応して静脈と動脈の全体直径と内腔直径の持続的増大を生じさせるための鍵となる因子であることが分かっている。血管内の血流がハーゲンーポアズイユの法則に従う(すなわち、完全な放物線状の速度分布を有する層流である)とすると、WSSは次式で与えられる。
WSS(Pa)=4Qμ/πR
3
ここで、
Q=流速(m
3/s)
μ=血液の粘度(Pa/s)
R=血管半径(m)
である。
【0016】
本明細書で説明するシステムおよび方法は、末梢静脈と動脈のWSSレベルを上昇させる。静脈の正常なWSSは0.076Pa〜0.76Paの間の範囲である。静脈の全体直径と内腔直径を持続的に増大させるために、本明細書で説明するシステムと方法が平均WSSレベルを0.76Pa〜23Paの間の範囲、好ましくは2.5Pa〜10Paの間の範囲へ上昇させる。動脈の正常なWSSは0.3Pa〜1.5Paの間の範囲である。動脈の全体直径と内腔直径を持続的に増大させるために、本明細書で説明するシステムと方法が平均WSSレベルを1.5Pa〜23Paの間の範囲、好ましくは2.5Pa〜10Paの間の範囲へ上昇させる。元々静脈や動脈の直径が小さいために、血液透析のアクセス部位又はバイパスグラフトとしての使用に不適格ないしは準最適であった末梢静脈又は動脈の全体直径と内腔直径を持続的に増大させて、使用可能又はより適した状態とするために、好ましくは平均WSSを1日から84日(あるいはそれ以上)の期間上昇させる。これはまた、処置期間に通常の平均WSSの期間をはさみながら間歇的に平均WSSを上昇させることによって達成することも可能である。
【0017】
本明細書で説明するシステム及び方法は、末梢静脈と動脈内の血液の速さ及び/又は速度も上昇させる。安静時には、ヒトの橈側皮静脈内の血液の平均速度は、一般的に5〜9cm/s(0.05〜0.09m/s)の間の範囲である。本明細書に記載のシステムと方法に関しては、静脈の初期の直径、静脈の処置後の所望直径及び計画された(WSSを上昇させる)処置の期間の長さに依存して、末梢静脈内の血液の平均速度が10cm/s〜120cm/s(0.1m/s〜1.2m/s)の間の範囲に、好ましくは25cm/s〜100cm/s(0.25m/s〜1.0m/s)の間の範囲に上昇させられる。
【0018】
安静時には、上腕動脈内の血液の平均速度は、一般的に10〜15cm/s(0.1〜0.15m/s)の間の範囲である。本明細書に記載のシステムと方法に関しては、動脈の初期の直径、動脈の処置後の所望直径及び計画された(WSSを上昇させる)処置の期間の長さに依存して、末梢動脈内の血液の平均速度が10cm/s〜120cm/s(0.1m/s〜1.2m/s)の間の範囲に、好ましくは25cm/s〜100cm/s(0.25m/s〜1.0m/s)の間の範囲に上昇させられる。
【0019】
好ましくは平均血液速度を、1日〜84日(又はそれ以上)、あるいは好ましくは7日〜42日の間上昇させて、末梢静脈と動脈の全体直径と内腔直径の持続的に増大させて、元々血管の直径が小さいために血液透析のアクセス部位又はバイパスグラフトとしての使用に不適格ないしは準最適であった静脈及び動脈を使用可能又はより適するようにする。これはまた、処置期間内に通常の平均血液速度の期間をはさみながら間歇的に平均血液速度を上昇させることによって達成することも可能である。
【0020】
患者の末梢静脈又は末梢動脈の内腔直径及び全体直径を増大させる方法を本明細書で説明する。この方法は、動脈、静脈又は右心房(供与血管)と、末梢静脈又は動脈(受容血管)にアクセスして、その供与血管を受容血管へポンプシステムを用いて“流体接続する”(すなわち2つの血管の内腔同士を接合して両者の間の流体連通を可能とさせる)、第1の手順の実行を含む。次にポンプシステムを起動して、供与血管から受容血管へ血液を能動的に移動させる。この方法では、ある期間の間、血液のポンプ輸送プロセスのモニタも行う。この方法にはさらに、ポンプ速度と、血液の速さ及び/又は特定の方向すなわち(例えば、順方向又は逆方向の)血流ベクトルが望まれる場合の輸送される血液の速度と、受容血管の内皮に掛かる平均WSS又はピークWSSとを調節すること、及びポンプ輸送プロセスの再度のモニタリングが含まれる。ある期間が経過して受容血管の全体直径と内腔直径に持続的増大を生じた後に、受容血管の直径を測定して、受容血管の全体直径と内腔直径に適格な持続的増大が達成されているかどうかを判定する。血液の速さ及び/又は速度と、WSSを測定し、必要があればポンプ輸送プロセスを再度調節する。受容静脈の全体直径と内腔直径に適格な量の持続的増大が達成されていれば、第2の手術を行ってポンプを取り除く。このポンプを取り出す時又はその後に、この持続的に拡大された受容静脈の少なくとも一部を利用して、血液透析のアクセスサイト(AVF又はAVGなど)又はバイパスグラフトを形成することができる。
【0021】
患者の末梢静脈又は末梢動脈の内腔直径及び全体直径を増大させる方法も本明細書で説明する。この方法は、血液ポンプシステムを用いて末梢動脈又は静脈(供与血管)と静脈系の別の位置(受容位置)とを流体接続することと、その後その血液ポンプシステムを作動させて、任意選択で一つ又は複数の血管を利用して、血液を供与血管から受容位置へ能動的に移動させることを含む。この方法では、ある期間の間、血液のポンプ輸送プロセスのモニタも行う。この方法には更に、ポンプの速度、ポンプ輸送される血液の速度、又は供与血管の内皮にかかる平均WSS又はピークWSSを調節することと、ポンプ輸送プロセスのモニタリングを再度行うことが含まれる。ある期間が経過して供与血管の全体直径と内腔直径に持続的な増大を生じた後に、供与血管の直径が測定されて、供与血管の全体直径と内腔直径に適格な持続的増大が達成されているかどうかが判定され、血液速度とWSSが測定され、そして必要に応じてポンプ輸送プロセスが再度調節される。供与血管の全体直径と内腔直径に適格な量の持続的増大が達成されていれば、第2の手術を行ってポンプを取り除く。このポンプを取り出す時又はその後に、この持続的に拡大された供与血管の少なくとも一部を利用して、血液透析のアクセスサイト(AVF又はAVGなど)又はバイパスグラフトを形成することができる。
【0022】
一実施形態において、外科手術によって2つの静脈部分が露出される。第1の合成導管の一端が、血液が取り出される静脈(供与静脈)に流体接続される。第1の合成導管のもう一方の端がポンプの流入部に流体接続される。第2の合成導管の一端が、血液が送り込まれる静脈(受容静脈)に流体接続される。第2の合成導管のもう一方の端が同一ポンプの流出部に流体接続される。脱酸素化された血液が供与静脈から受容静脈へポンプ輸送され、受容静脈の全体直径と内腔直径が所望の大きさに持続的に増大するまで続けられる。動脈又は静脈の全体直径と内腔直径の拡張又は増大を記述する場合の、“持続的増大”又は“持続的拡張”という用語は、本明細書においては、ポンプを切った後でも血管の全体直径又は内腔直径が、血液のポンプ輸送期間前の血管の全体直径又は内腔直径に比べて、増大したままであり得ることを意味するように使われている。すなわち、血管の全体直径又は内腔直径がポンプの圧力が掛かっていなくても大きくなっていることを示している。受容静脈の全体直径と内腔直径に所望量の持続的増大が生じれば、第2の手術を行ってポンプと合成導管を取り除く。このポンプを取り出す時又はその後に、この持続的に拡大された受容静脈の少なくとも一部を利用して、血液透析のアクセスサイト(AVF又はAVGなど)又はバイパスグラフトを形成することができる。この実施形態において、中間に配置された合成導管を用いずに、ポンプ部を供与静脈又は受容静脈へ直接的に流体接続してもよい。本実施形態の一変形では、受容静脈は腕の橈側皮静脈などのような体のある場所に配置されていてもよいし、供与静脈は脚の大腿静脈などの別の位置にあってもよい。この場合には、ポンプ−導管アセンブリの2つの端は体内に配置され、ポンプ−導管アセンブリのブリッジ部は(体の外部、例えば衣服の下に着用されるなどして)体外にあってもよいし、又は(例えば皮下組織内にトンネルとなって)移植されていてもよい。さらに特定の場合においては、供与血管は、受容静脈よりも体の相対位置でより末梢部にあってもよい。
【0023】
別の実施形態において、この方法には末梢動脈の一部分と末梢静脈の一部分を露出させる外科手術が含まれる。第1の合成導管の一端が末梢動脈と流体接続される。第1の合成導管のもう一方の端がポンプの流入部に流体接続される。第2の合成導管の一端が末梢静脈と流体接続される。第2の合成導管のもう一方の端が同一ポンプの流出部に流体接続される。酸素化された血液が末梢動脈から末梢静脈へポンプ輸送され、静脈又は動脈の全体直径と内腔直径が所望のレベルまで持続的に増大するまで続けられる。静脈又は動脈の全体直径と内腔直径に所望量の持続的増大が生じると、第2の手術を行ってポンプと合成導管を取り除く。このポンプを取り出す時又はその後に、この持続的に拡大された受容静脈又は供与動脈又はその両方の少なくとも一部を利用して、血液透析のアクセスサイト(AVF又はAVGなど)又はバイパスグラフトを形成することができる。この実施形態の一変形においては、中間に合成導管を配置しないでポンプの接続部が動脈又は静脈に直接流体接続されてもよい。
【0024】
別の実施形態において、この方法に末梢動脈の一部分を露出させる外科手術が含まれる。第1の合成導管の一端が末梢静脈(供与血管)に流体接続され、第1の合成導管の他端がポンプの流入部に流体接続される。第2の合成導管の一端が上大静脈(受容位置)に流体接続され、第2の合成導管の他端が同一ポンプの流出部に流体接続される。脱酸素化された血液が供与末梢静脈から上大静脈へポンプ輸送され、供与末梢静脈の全体直径と内腔直径が所望のレベルに持続的に増大するまで続けられる。供与末梢静脈の全体直径と内腔直径に所望量の持続的増大が達成されれば、第2の手術を行ってポンプと合成導管を取り除く。このポンプを取り出す時又はその後に、この持続的に拡大された供与末梢静脈の少なくとも一部を利用して、血液透析のアクセスサイト(AVF又はAVGなど)又はバイパスグラフトを形成することができる。この実施形態の一変形として、1)第1の合成導管と末梢供与静脈との接続部と、2)右心房との間で少なくとも1つの静脈弁が機能しないようにされて、末梢供与静脈内への逆流が可能となるようにする。
【0025】
別の実施形態において、この方法に末梢動脈の一部分を露出させる外科手術が含まれる。第1の合成導管の一端が末梢動脈(供与血管)に流体接続され、第1の合成導管の他端がポンプの流入部に流体接続される。第2の合成導管の一端が上大静脈(受容位置)に流体接続され、第2の合成導管の他端が同一ポンプの流出部に流体接続される。酸素化された血液が末梢動脈から上大静脈へポンプ輸送され、末梢供与動脈の全体直径と内腔直径が所望のレベルに持続的に増大するまで続けられる。末梢供与動脈の全体直径と内腔直径に所望量の持続的増大が達成されれば、第2の手術を行ってポンプと合成導管を取り除く。このポンプを取り出す時又はその後に、この持続的に拡大された末梢供与動脈の少なくとも一部を利用して、血液透析のアクセスサイト(AVF又はAVGなど)又はバイパスグラフトを形成することができる。この実施形態の一変形では、合成導管を用いて供与血管(末梢動脈など)と受容位置(上大静脈又は右心房など)を直接流体接続し、ポンプなしで高圧の供与動脈から低圧の受容位置へ受動的に血液が流れるようにされる。この実施形態においては、高圧の供与動脈からの血液を低圧の受容位置へシャントすることで供与動脈内に血液速度とWSSの上昇が生じ、これを十分な期間保持することで、供与動脈の全体直径と内腔直径に持続的増大が生じる。この実施形態におけるシステムと方法は、供与動脈の全体直径と内腔直径に持続的な増大をもたらすためのものであって、血液透析のために日常的な穿刺すなわち日常的なバスキュラーアクセスをするように構成された既存の末梢動脈から右心房への透析用グラフトとは、明確に異なっている。例えばこの実施形態における合成導管は、PTFE、ePTFE又はダクロンなどの合成材料の短い部分となっており、これは末梢動脈への吻合は可能であるが、血液透析のためのバスキュラーアクセスを得るために日常的に穿刺することには有用ではないし適してもいない。
【0026】
さらに別の実施形態においては、1対の特殊カテーテルが静脈系に挿入される。1つのカテーテル(以後“流入導管”と称す)の第1の端がポンプの流入ポートに取り付けられ、もう一方のカテーテル(以後“流出導管”と称す)の第1の端がポンプの流出ポートに取り付けられる。任意選択により、2つのカテーテルの一部は一緒に結合されて、ダブルルーメンカテーテルを構成していてもよい。一実施形態において、各導管は個別に2cm〜110cmの間の長さがあり、合わせた長さが4cm〜220cmの間であり、ポンプシステムの移植時を含めて、外科医又は他の医師によって所望の長さに切られてもよい。それぞれの導管は2mm〜10mmの間で、好ましくは4mmの内径を持っている。導管は少なくともその一部が、ポリウレタン(Pellethane(登録商標)又はCarbothane(登録商標)など)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、シリコーンエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET、例えばダクロン)及びそれらの組み合わせで形成されていてもよい。カテーテルは静脈系の内腔へ挿入されるように構成されている。挿入後、流入導管の第2の端の先端が、流入導管に十分な量の血液を引き出すことのできる静脈系の任意の場所(例えば、右心房、上大静脈、鎖骨下静脈、又は腕頭静脈などの“供与位置“)に配置される。挿入後、流出導管の第2の端の先端が、流出導管によって血液を送達可能な末梢静脈(“受容静脈”)(手首の近くの橈側皮静脈又は肘の近くの尺側皮静脈など)の部分に配置される。次にポンプは供与位置から流入導管の内腔へ脱酸素化された血液を吸引し、その血液を流出導管から受容静脈の内腔へ放出する。この実施形態において、ポンプと、流入導管と流出導管の一部は患者の体外にあってよい。ポンプは、受容静脈の全体直径と内腔直径に所望量の持続的拡大が生じるまで運転され、その後ポンプ及び導管が取り除かれる。このポンプを取り出す時又はその後に、この持続的に拡大された受容静脈の少なくとも一部を利用して、血液透析のアクセスサイト(AVF又はAVGなど)又はバイパスグラフトを形成することができる。
【0027】
それぞれが2つの端を持つ2つの合成導管と、血液ポンプと、制御ユニットと、電源とを備え、患者の供与静脈又は右心房から受容静脈へ脱酸素化血液を送達することにより静脈内の血液速度と平均WSS及び/又はピークWSSを上昇させるシステムが提供される。このシステムは、1つ又は複数のセンサ―ユニットを含んでもよい。システムの一実施形態において、全体として“ポンプ−導管アセンブリ“として知られる、合成導管とポンプが、供与静脈又は右心房から脱酸素化血液を引き出し、その血液を末梢受容静脈中へポンプ輸送する。ポンプ−導管アセンブリは脱酸素化血液をポンプ輸送するように構成されている。このシステムの別の実施形態においては、ポンプ−導管アセンブリは酸素化された血液を末梢供与動脈から引き出して、その血液を末梢受容静脈中へポンプ輸送するように構成されている。動脈と静脈の両方における血液速度を上昇させ、動脈と静脈の内皮にかかるWSSを、末梢動脈と静脈の全体直径と内腔直径が持続的に増大するのに十分なレベルまで、かつ十分な期間の間上昇させるように、血液がポンプ輸送される。好ましくは、末梢静脈中にポンプ輸送される血液は、例えば末梢動脈中の血液よりも低い拍動を持っている。この実施形態の一変形においては、中間に配置される合成導管なしで、ポンプが動脈又は静脈(あるいはその両方)に直接流体接続される。
【0028】
ポンプには入口と出口がある。ポンプは脱酸素化された血液又は酸素化された血液を末梢静脈に送達し、静脈中の血液速度を上昇させ、かつ静脈内の内皮にかかるWSSを上昇させて、血液ポンプシステムと血管系の接続及び動作の具体的な実施形態とその方法に応じて、末梢受容静脈か末梢供与動脈か末梢供与静脈の全体直径と内腔直径に持続的な増大を起こさせるように構成されている。血液ポンプは、患者の体内に移植されてもよいし、患者の体外にあってもよいし、又は移植された部分と体外部分とがあってもよい。合成導管のすべて又は一部が、患者の体内に移植されてもよいし、皮下移植されてもよいし、静脈系又は動脈系の内腔内に移植されてもよいし、又はそれらの任意の組合せであってもよい。ポンプ−導管アセンブリの移植された部分は、定期的に、例えば毎秒、毎分、毎時間、毎日、又は数日ごとにモニタされて、調節されてもよい。
【0029】
本発明は、血液透析のアクセス部位又はバイパスグラフトを必要とするか、又はより大きな末梢動脈や静脈が有用なその他の血管外科手術や臨床状況を必要とする、ヒトの患者の末梢静脈や末梢動脈の血液速度を上昇させて末梢静脈や末梢動脈の内皮にかかるWSSを上昇させる方法を含む。心不全の処置のために動脈流を増大させるように設計された装置も、本目的に対して有用であろう。さらに、血液速度を上昇させて受容静脈にかかるWSSを上昇させることのできる任意のポンプも使用可能である。ある実施形態においては、低血流用に最適化された心室補助装置(VAD)が、供与動脈又は静脈から末梢静脈へ血液をポンプ輸送して、末梢受容静脈の全体直径と内腔直径に持続的な増大をもたらすようにすることが可能であり、目的を変えて、これらの末梢動脈と静脈の全体直径と内腔直径を持続的に増大させるのに十分なレベルでかつ十分な期間の間、末梢受容静脈内の血液速度とWSSを上昇させるようすることも可能である。別の実施形態においては、弱い血流を生成することができるVADで供与血管(動脈又は静脈)から受容位置へ血液をポンプ輸送することが可能であり、目的を変えて、これらの末梢動脈と静脈の全体直径と内腔直径を持続的に増大させるのに十分なレベルでかつ十分な期間の間、末梢供与動脈及び末末梢供与静脈内の血液速度とWSSを上昇させるようすることも可能である。一実施形態において、PediPump(登録商標)などの小児用VADを使用してもよい。別の実施形態においては、成人の中程度の心不全処置用の小型VAD(Circulite社のSynergy pump(登録商標)など)を利用してもよい。弱い血流を作ることができる、左心補助装置(LVAD)又は右心補助装置(RVAD)を含む他の装置を利用してもよい。他の実施形態において、実時間調節が可能である、調節可能な遠心血液ポンプ又は回転血液ポンプを利用して供与血管から血液を引き出して、その血液を受容血管へポンプ輸送してもよい。
【0030】
この方法は、低流量VADやその派生物又は類似の装置を供与血管に流体的に接続し、その供与血管から血液を引き出し、それを末梢静脈の全体直径と内腔直径に所望量の持続的増大を起こさせるのに十分な流速で十分な時間だけ末梢受容静脈中にポンプ輸送することを含む。この方法はまた、低流量VADやその派生物又は類似の装置を供与血管(動脈又は静脈)に流体的に接続し、その供与血管から血液を引き出し、それを供与血管の全体直径と内腔直径に所望量の持続的増大を起こさせるのに十分な流速で十分な時間だけ受容位置の中へポンプ輸送することも含む。血液ポンプは患者の体内に移植してもよいし、体外に保持してもよい。ポンプが患者の体外にある場合には、連続的なポンプ輸送をするために患者に固定されてもよい。あるいはまた、ポンプは定期的及び/又は間歇的なポンプ輸送期間に対して供与血管又は受容血管から取り外せるようになっていてもよい。
【0031】
末梢受容静脈と末梢供与動脈と末梢供与静脈の内腔直径は、超音波による可視化法や診断用血管造影法や磁気共鳴画像法やその他の方法などの通常の方法を利用して、血液がポンプ輸送されているところをモニタすることが可能である。ポンプ−導管アセンブリ又はポンプ−カテーテルアセンブリには、診断用血管造影法を容易にする放射線不透過マーカなどの特徴が組み込まれてもよい。これはアセンブリに造影剤を注入するための針又はシリンジがアクセス可能なサイトを識別し、その造影剤がその後受容末梢静脈内に流れ込んで、従来型及びデジタルサブトラクション血管造影法の両方を利用した透視検査において可視化を可能とする。同様に、血液ポンプシステムに超音波又はMRIを促進する特徴を組み込んで、MRIに適合する血液ポンプシステムとしてもよい。他の実施形態において、血液ポンプシステムには、血液速度、血流比、末梢血管への血流抵抗、血圧、拍動指数及びそれらの組合せの少なくとも1つを測定するために、血液ポンプや導管と連通する一つ又は複数のセンサを持った制御システムが組み込まれてもよい。本明細書において“拍動性”と“拍動指数”は血管内の血液速度の可変性の指標を指しており、これは、収縮期のピーク速度と弛緩期の最小速度との差を心拍周期中の平均速度で割ったものに等しい。
【0032】
ポンプ−導管アセンブリ又はポンプ−カテーテルアセンブリの一部が体の外にある場合、少なくとも導管、カテーテル、ポンプ、リード、又はそれらの任意の組合せを含む部分、特に移植された部品と外部部品とを接続する部分の外表面上に抗菌コーティングを組み込むことが可能である。例えば、コントローラ及び/又は電源が腕や手首にひもで吊下げられたり、ベルトに固定されたり、袋や容器に入れられていたりする場合には、合成導管やカテーテルやポンプのリード線などのような、患者の体へ入っている材料の表面に抗菌コーティングをすることができる。別の実施形態において、移植された部品と外部部品とを接続する装置の部分にカフを巻き付けてもよい。カフは支援組織を取り込むことで感染のリスクを低減し、かつ接続点を動きにくくすることで傷口が広がることを減らし得る。別の実施形態において、ポンプ−導管アセンブリとポンプ−カテーテルアセンブリの血液に触れる内部表面上に、血栓の蓄積を低減するコーティング(抗血栓コーティングなど)を組み入れることができる。抗血栓コーティングは、導管、カテーテル、ポンプ又はその任意の組合せの中に組み入れることが可能である。別の実施形態において、挿入又は皮下トンネリング時の摩擦を減らし、また挿入プロセス又は皮下トンネリングプロセスを促進するために、導管やリード線に潤滑性を増すコーティングを追加してもよい。
【0033】
様々な実施形態において、本発明は、酸素化された血液を末梢動脈から引き出して、その酸素化された血液を、末梢動脈の全体直径に持続的増大が生じるのに十分な流速でかつ十分な期間に亘って右心房の中にポンプ輸送することによって、患者の末梢動脈の全体直径を増大させるシステムと方法を含んでいる。血液は末梢動脈から右心房へ、ポンプを利用して又はポンプを利用しないで移動させてよい。同様に別の実施形態において、本発明は、脱酸素化された血液を末梢静脈から引き出して、その脱酸素化された血液を、その末梢動脈の全体直径に持続的増大が生じるのに十分な流速でかつ十分な期間に亘って右心房の中にポンプ輸送することによって患者の末梢静脈の全体直径を増大させる、システムと方法を含んでいる。
【0034】
血液速度とWSSの持続的な上昇を経験すると、動脈と静脈はその全体直径と内腔直径を増大させることができ、かつその全長を増大させることもできる。動脈と静脈には少しだけ固定された分枝があり、分枝点の固定領域同士の間での屈曲を増すことで全体の長さの増大に対応する。特定の臨床状況においては、血管の長さの増大は望ましいことであり、それがポンプ−導管アセンブリの一実施形態を移植して構成し、動作させることの主要な動機となる。この実施形態においては、長さを増大させた後、その血管を取り出して(短い血管ではできないところにバイパスグラフトを形成するなど)別の位置で使用することが可能である。あるいは、横に切開して分岐点を結紮することで分岐点固定から解放することが可能である。そうして次にその血管の増大した長さを活かしてその場で(短い血管には適さない、尺側皮静脈転位透析アクセス部位の生成などに)再構成してもよい。
【0035】
本発明のこれら及びその他の目的、特徴、態様及び利点は、添付の図面と共に本発明の好適な実施形態を開示する以下の詳細な説明により、当業者には明らかとなるであろう。
【0036】
次に、この新規な開示を構成する添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1A】本発明の第1の実施形態によるシステム及び方法のポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【
図1B】本発明の第1の実施形態による、患者の循環系に適用された
図1Aのポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【
図2A】本発明の第2の実施形態によるシステム及び方法のポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【
図2B】本発明の第2の実施形態による、患者の循環系に適用された
図2Aのポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態による、患者の循環系に適用されたシステム及び方法のポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【
図4A】本発明の第4の実施形態によるシステム及び方法のポンプ−カテーテルアセンブリの概略図である。
【
図4B】本発明の第4の実施形態による、患者の循環系に適用された
図4Aのポンプ−カテーテルアセンブリの概略図である。
【
図5A】本発明の第5の実施形態によるシステム及び方法のポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【
図5B】本発明の第5の実施形態による、患者の循環系に適用された
図5Aのポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【
図6】本発明の第6の実施形態によるシステム及び方法のポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【
図7】本発明の第7の実施形態によるシステム及び方法のポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【
図8】本発明の第8の実施形態によるシステム及び方法のポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【
図9】上記の任意の実施形態に利用される、制御ユニットと連動して運転されるポンプの模式図である。
【
図10】本発明の第1及び第3の実施形態による方法のフローチャートである。
【
図11】本発明の第2及び第4の実施形態による方法のフローチャートである。
【
図12】本発明の第5の実施形態による方法のフローチャートである。
【
図13】本発明の第6及び第7の実施形態による方法のフローチャートである。
【
図14】本発明の第8の実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明のシステムと部品は、静脈と動脈の全体直径及び内腔直径を持続的に増大させる方法に関する。より具体的には、様々な実施形態において本出願は、選択された静脈又は動脈が持続的に増大するように、(選択された末梢静脈又は末梢動脈から血液を導入又は抜き出すようにして)血液をポンプ輸送する方法に関する。本明細書に開示する方法は、静脈又は動脈の選択部分の全体直径及び内腔直径を持続的に増大させるのに十分な期間に亘り、静脈又は動脈の選択部分における平均血液速度及び/又はピーク血液速度、並びに平均壁剪断応力及び/又はピーク壁剪断応力を上昇させることもできる。従って本方法は、血液透析のバスキュラーアクセス部位の形成、バイパスグラフト、又は静脈や動脈のより大きな直径及び/又は静脈や動脈のより長い長さが望ましいその他の血管手術や処置の実行に有益であり得る。
【0039】
様々な実施形態において、本明細書で説明する方法とシステムは、ポンプを利用して、末梢静脈又は動脈内の血液速度と、末梢静脈又は動脈の内皮にかかる壁剪断応力(WSS)を上昇させるようにする。方法とシステムが、動脈又は静脈である供与血管内の血液速度とWSSを上昇させるように供与血管から血液を取り去る、すなわち“引き抜く”ことも説明される。
【0040】
次に本発明の好適な実施形態を図面を参照して説明する。本発明の実施形態に関する以下の記述は、説明のためにのみ与えられるものであって、添付の特許請求の範囲及びその等価物により規定される本発明を制限するものではないことは、本開示から当業者には明らかであろう。
【0041】
先ず
図1〜4には、末梢静脈の全体直径を増大させるためのシステム10が患者20に対して使用されている状態で示されている。システム10は脱酸素化された静脈血を患者の静脈系22から抜き出して、その血液を受容末梢静脈30内へ放出する。システム10はまた、例えば腕24や脚26にある受容末梢静脈30の直径を持続的に増大させるために、受容末梢静脈30内の血液速度を上昇させ、かつその受容末梢静脈30の内皮にかかるWSSを上昇させる。末梢静脈などの血管の直径は、血管の中心の開空間であってそこを血液が流れる、内腔の直径の測定、又は、血液が流れる血管の中心部と血管の壁との両方を含む血管の全体直径の測定によって決定することができる。
【0042】
動脈又は静脈の全体直径又は内腔直径の変化の記述に使用される、“持続的増大”、“持続的に増大された”、“持続的拡張”という用語は、血液ポンプを切ったとしても、血液をポンプ輸送する期間より前の全体直径又は内径直径に比べて、血管の全体直径又は内径直径の増大が依然として観察され得ることを意味するものとして、本明細書では使用される。すなわち、血管の全体直径又は内腔直径がポンプによって生成される圧力に依存せずに大きくなったことを示している。
【0043】
本出願においては、血液が流れる血管の内腔の直径を、“内腔直径”と呼ぶ。血管の直径は血管壁を含むようにして測定することでも決定され、本出願においてはこの測定値を“全体直径”と呼ぶ。本発明は、血液(好ましくは低拍動の血液)を末梢受容静脈に移動させ、それによって末梢受容静脈中の血液速度を上昇させ、かつ末梢受容静脈の内皮にかかるWSSを上昇させることによって、末梢静脈又は動脈の全体直径および内腔直径を同時かつ持続的に増大させることに関する。末梢受容静脈中の血液速度と末梢受容静脈の内皮にかかるWSSとをポンプを利用して上昇させるシステムと方法について説明する。好ましくはポンプが、末梢動脈内の血液よりも脈圧が低くなっている場合のように、ポンプで送り出された血液の拍動が低くなるようにして、血液を末梢静脈中に能動的に放出する。例えば、ポンプが血管から血液を取り出すか引き抜いて、あるいは血管へ血液を放出するか押し出して、血管にかかる上昇したWSSが全体直径と内腔直径に持続的な増大を起こすようにする。本明細書における“拍動”と“拍動指数”とは、血管内の血液速度の可変性の指標を指しており、これは、収縮期のピーク速度と弛緩期の最小速度との差を心拍周期中の平均速度で割ったものに等しい。
【0044】
本明細書で説明するシステムおよび方法は、末梢静脈中のWSSの平均レベルとピークレベルを上昇させる。静脈の通常のWSSは0.076Pa〜0.76Paの間の範囲である。本明細書に記載のシステムと方法は、受容末梢静脈内のWSSの平均レベルを、約0.76Pa〜23Paの範囲、好ましくは2.5Pa〜10Paの間の範囲に上昇させるように構成されている。特定の環境下では、0.76Pa未満の持続的なWSSでも、静脈の全体直径と内腔直径を増大させ得るが、その量が小さすぎてその速度も小さすぎるので、臨床診療にはあまり受け入れられない。23Paを超える持続的な平均WSSレベル及び/又はピークWSSレベルは、静脈の内皮の剥離(喪失)を生じさせ、これは、血液速度とWSSの上昇に応答した血管の全体直径と内腔直径の持続的増大を妨げることが知られている。本出願の方法は、拡張を起こすのに十分な任意の期間に亘って血液をポンプ輸送することに関する。例えば、所望の範囲にまでWSSを上昇させるようにして、約1日〜84日の間、好ましくは約7日〜42日の間血液をポンプ輸送することによって、受容末梢静脈内の全体直径と内腔直径にある量の持続的増大を生じさせ、元々静脈の直径が小さいために血液透析のアクセス部位又はバイパスグラフトとしての使用に不適格ないしは準最適であった静脈を、使用可能又はより好適であるようにする。一実施形態において、血液のポンプ輸送プロセスは、ある期間静的に行われてもよい。例えば、プロセスが42日の間実行され、その後その受容静脈又は動脈を用いて血液透析アクセス部位が形成される。この例では、血液ポンプは好適な位置に移植されてから作動され、その後何の調節もなしである期間の間、血管への血液の放出及び/又は血管から血液の取り出しを行う。
【0045】
他の様々な実施形態において、ポンプ輸送プロセスがモニタされて、手動又は自動で定期的に調節されてもよい。例えば、ポンプのパラメータ(ポンプ速度又はインペラの毎分の回転数など)が、毎秒、毎分、毎時間、毎日、数日ごと、毎週、又は数週間ごとに(あるいは別の時間間隔で)調節されて、標的とする血管が全体直径と内腔直径で所望の持続的増大を達成する前に、全体直径と内腔直径の増大などの変化が説明できるようにしてもよい。システムにはソフトウェアプログラムが含まれていて、システムで収集された情報を解析し、標的とする血管の全体直径と内腔直径に所望の持続的増大が達成される前に、(標的とする血管の持続的増大をした全体直径と内腔直径などの)変化を調整するために(ポンプ速度やインペラの毎分の回転数や流出導管圧力などの)ポンプパラメータを自動調節するようになっていてもよい。本出願においては、“標的管”、“標的血管”、“標的静脈”又は“標的動脈”とは、動脈又は静脈の特定の部分に全体直径と内腔直径の持続的な増大を生じるようにポンプ−導管アセンブリが移植、構成されて操作された場合に、持続的に増大された全体直径と内腔直径を生じるように意図された特定の動脈又は静脈部分のことを指す。
【0046】
本明細書で説明するシステムおよび方法は、末梢静脈と末梢動脈内の血液の平均速度とピーク速度も上昇させる。安静時にヒトの橈側皮静脈内の血液の平均速度は、一般的に5〜9cm/s(0.05〜0.09m/s)の間の範囲である。本明細書に記載のシステムと方法に関しては、末梢静脈内の血液の平均速度が、処置される静脈の全体直径と内腔直径の所望の増大速度に応じて、10cm/s〜120cm/s(0.1m/s〜1.2m/s)の間の範囲に、好ましくは25cm/s〜100cm/s(0.25m/s〜1.0m/s)の間の範囲に上昇させられる。末梢静脈の初期の直径と末梢静脈の処置後の所望直径とに依存して、平均血液速度が1日〜84日の間、あるいは好ましくは7日〜42日の間上昇させられて末梢静脈の全体直径と内腔直径に持続的増大がもたらされ、元々血管の直径が小さいために、血液透析のアクセス部位又はバイパスグラフトとしての使用に不適格ないしは準最適であった静脈が使用可能又はより適するようになる。これはまた、処置期間内に通常の平均血液速度の期間をはさみながら間歇的に平均血液速度を上昇させることによって達成することも可能である。
【0047】
安静時には、上腕動脈内の血液の平均速度は、一般的に10〜15cm/s(0.1〜0.15m/s)の間の範囲である。本明細書に記載のシステムと方法に関しては、末梢動脈内の血液の平均速度が、処置される動脈の全体直径と内腔直径の所望の増大速度に応じて、10cm/s〜120cm/s(0.1m/s〜1.2m/s)の間の範囲に、好ましくは25cm/s〜100cm/s(0.25m/s〜1.0m/s)の間の範囲に上昇させられる。動脈の初期の直径とその動脈の処置後の所望直径とに依存して、平均血液速度が1日〜84日の間、あるいは好ましくは7日〜42日の間上昇させられて末梢供与動脈の全体直径と内腔直径に持続的増大がもたらされ、元々動脈直径が小さいために、血液透析のアクセス部位又はバイパスグラフトとしての使用に不適格ないしは準最適であった動脈が使用可能又はより適するようになる。これはまた、処置期間内に通常の平均血液速度の期間をはさみながら間歇的に平均血液速度を上昇させることによって達成することも可能である。
【0048】
静脈及び動脈内での基準の血流による力と血流による力の変化が、その静脈及び動脈の全体直径と内腔直径を決めるのに決定的な役割を果たすことが研究により分かっている。例えば、血液速度と壁剪断応力(WSS)の持続的な増大が静脈と動脈の全体直径と内腔直径に持続的な増大をもたらすことができる。血流とWSSの上昇は内皮細胞によって検知され、それが信号機構を触発して、血管平滑筋細胞を刺激し、単球とマクロファージとを吸引させ、コラーゲンやエラスチンなどの細胞外マトリックス成分を劣化させるプロテアーゼを合成し放出させる。このように本発明は、血管の改造と、処置された静脈と動脈の全体直径と内腔直径の持続的増大とをもたらすのに十分な期間、血液速度とWSSとを上昇させることに関する。
【0049】
血管内の血流がハーゲンーポアズイユの法則に従う(すなわち、完全な放物線状の速度分布を有する層流である)とすると、WSSは次式で与えられる。
WSS(Pa)=4Qμ/ππR
3
ここで、
Q=流速(m
3/s)
μ=血液の粘度(Pa/s)
R=血管半径(m)
である。
【0050】
本明細書で説明するシステムおよび方法は、末梢静脈と動脈のWSSレベルを上昇させる。静脈の通常の平均WSSは0.076Pa〜0.76Paの間の範囲である。静脈の全体直径と内腔直径を持続的に増大させるために、本明細書で説明するシステムと方法が平均WSSレベルを0.76Pa〜23Paの間の範囲、好ましくは2.5Pa〜7.5Paの間の範囲へ上昇させる。動脈の通常の平均WSSは0.3Pa〜1.5Paの間の範囲である。動脈の全体直径と内腔直径を持続的に増大させるために、本明細書で説明するシステムと方法が平均WSSレベルを1.5Pa〜23Paの間の範囲、好ましくは2.5Pa〜10Paの間の範囲へ上昇させる。好ましくは平均WSSを1日から84日の間上昇させて、標的血管の全体直径と内腔直径の持続的増大をもたらし、元々静脈や動脈の直径が小さいために、血液透析のアクセス部位又はバイパスグラフトとしての使用に不適格ないしは準最適であった血管を、使用可能又はより適したものとする。これはまた、処置期間に通常の平均WSSの期間をはさみながら間歇的に平均WSSを上昇させることによって達成することも可能である。
【0051】
特定の環境下では、受容又は供与末梢静脈の平均WSSレベルが0.76Paより低い場合でもこれらの血管の全体直径と内腔直径を増大させ得るが、その程度は小さく、かつその速度も小さ過ぎて通常の臨床診療には使用できない。同様に、供与末梢動脈の平均WSSレベルが0.3Paより低い場合でもこれらの血管の全体直径と内腔直径を増大させ得るが、その程度は小さく、かつその速度も小さ過ぎて通常の臨床診療には使用できない。受容又は供与末梢静脈、又は供与動脈のWSSレベルが約23Paよりも高い場合には、静脈と動脈の内皮の剥離(欠損)を起こしやすい。血管内皮の剥離は、血液速度とWSSの上昇にも拘らず、血管の全体直径と内腔直径の持続的増大を妨げることが知られている。上昇したWSSは処置した静脈と動脈の全体直径と内腔直径に十分持続する増大をもたらし、元々静脈や動脈の直径が小さいために、血液透析のアクセス部位又はバイパスグラフトとしての使用に不適格ないしは準最適であった血管を、使用可能又はより適したものとする。受容静脈の直径を例えば1〜14日毎に間歇的に測定して、処置期間中の静脈の全体直径と内腔直径の持続的増大を最適化するために、ポンプ速度を調節することも可能である。
【0052】
本明細書で説明するシステムと方法はまた、末梢静脈中の、そして特定の場合には末梢動脈中の血液速度を上昇させる。安静時には、ヒトの橈側皮静脈内の血液の平均速度は、一般的に5〜9cm/s(0.05〜0.09m/s)の間である。本明細書に記載のシステムと方法に関しては、静脈の初期の直径、静脈の処置後の所望直径及び計画された(平均WSSを上昇させた)処置の期間の長さに依存して、末梢静脈内の血液の平均速度が10cm/s〜120cm/s(0.1m/s〜1.2m/s)の間の範囲に、好ましくは25cm/s〜100cm/s(0.25m/s〜1.0m/s)の間の範囲に上昇させられる。
【0053】
安静時には、上腕動脈内の血液の平均速度は、一般的に10〜15cm/s(0.1〜0.15m/s)の間の範囲である。本明細書に記載のシステムと方法に関しては、動脈の初期の直径、動脈の処置後の所望直径及び計画された(上昇したWSSの)処置の期間の長さに依存して、末梢動脈内の血液の平均速度が10cm/s〜120cm/s(0.1m/s〜1.2m/s)の間の範囲に、好ましくは25cm/s〜100cm/s(0.25m/s〜1.0m/s)の間の範囲に上昇させられる。好ましくは、1日から84日、あるいは好ましくは7日〜42日の間血液速度を上昇させて、末梢の受容又は供与静脈又は動脈の全体直径と内腔直径の持続的増大をもたらして、元々静脈の直径が小さいために、血液透析のアクセス部位又はバイパスグラフトとしての使用に不適格ないしは準最適であった静脈及び動脈を使用可能又はより適するようにする。受容又は供与末梢静脈又は供与動脈の平均血液速度レベルが15cm/s(0.15m/s)より低い場合でも、ある環境下ではこれらの血管の全体直径と内腔直径は増大し得るが、その程度は小さく、かつその速度は遅すぎて通常の臨床診療には使用できない。受容又は供与末梢静脈、又は供与動脈の血液速度レベルが約100cm/s(1m/s)より大きい場合には、静脈と動脈の内皮の剥離(欠損)を起こしやすい。血管内皮の剥離は、血液速度の上昇にも拘らず、血管の全体直径と内腔直径の持続的増大を妨げることが知られている。上昇した血液速度は静脈と動脈の全体直径と内腔直径に十分持続する増大をもたらし、元々直径が小さいために血液透析のアクセス部位又はバイパスグラフトとしての使用に不適格ないしは準最適であった血管を、使用可能又はより適したものとする。
【0054】
血液のポンプ輸送プロセスは定期的にモニタされて調節されてもよい。例えば、ポンプのパラメータ(ポンプ速度、インペラの毎分の回転数又は導管流出圧力など)が、7日ごとに(あるいは別の間隔で)調節されて、全体直径と内腔直径が所望の持続的増大を達成する前に、標的の静脈又は動脈の(全体直径と内腔直径の増大などの)変化が説明できるようにしてもよい。更なる例として、システムにはソフトウェアプログラムが含まれていて、システムで収集された情報を解析し、ポンプパラメータ(ポンプ速度、インペラの毎分の回転数又は流出導管圧力など)を自動調節して、全体直径と内腔直径に所望の持続的増大が達成される前に、末梢静脈や動脈の(増大した全体直径と内腔直径などの)変化を説明できるようになっていてもよい。
【0055】
図1〜3を参照すると、システム10は、患者20の静脈系22の供与静脈29から脱酸素化された静脈血を末梢又は受容静脈30へ移動させるためのポンプ−導管アセンブリ12を含んでいる。様々な実施形態において、末梢又は受容静脈30は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、又は大腿静脈であってよい。血液透析のアクセス部位やバイパスグラフトの形成に有用なそのほかの静脈、又は静脈の利用を必要とするその他の血管手術に有用な他の静脈が利用されてもよい。ポンプ−導管アセンブリ12は脱酸素化された血液を、標的静脈として知られている末梢又は受容静脈30へ送達する。血液34の上昇した速度と末梢静脈30内の上昇したWSSが、時間の経過に伴って末梢受容静脈30を拡大し、それは増大した全体直径、増大した内腔直径又は増加した長さから明らかとなる。こうして本発明のシステム10と方法100(
図10−11を参照)が有利には、末梢受容静脈30の直径を持続的に増大させて、例えば血液透析用のAVF又はAVGアクセス部位の構築に、又はバイパスグラフトとして利用できるようにする。
【0056】
本明細書で用いられている脱酸素化された血液とは、毛細血管系を通過して、その周辺の組織によって酸素を除去されてから静脈系22に入ってくる血液のことである。本明細書で言う末梢静脈30とは、胸部や腹部や骨盤以外の部分にある任意の静脈のことを指している。
図1Bと2Bの実施形態においては、末梢受容静脈30は橈側皮静脈である。ただし他の実施形態においては、末梢受容静脈30は、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、又は大腿静脈であってよい。末梢静脈の他に、胸部、腹部、および骨盤にある静脈を含む、血液透析のアクセス部位やバイパスグラフトの形成に有用なその他の静脈、又は静脈の利用を必要とするそれ以外の血管手術に有用なその他の静脈が利用されてもよい。
【0057】
末梢静脈へ向けられた血液の拍動を下げるために、及び/又は末梢受容静脈へ低拍動血流を提供するために、いくつかの拍動減衰技術を利用することができる。静脈平滑筋増殖を増大させ、静脈の新生内膜過形成及び静脈狭窄の主要因であることが分かっている、受容静脈中の平滑筋細胞の周期的伸長を減らすために、拍動は減衰される。そのような技術の例としては、これに限定するものではないが、血液ポンプの揚程−流量特性の調整、流入導管あるいは流出導管への弾性リザーバすなわちウィンドケッセル(Windkessel)セグメントの追加、流入導管あるいは流出導管へのコンプライアンスの追加、心拡張期にポンプ速度を上昇させ心収縮期にポンプ速度を下降させるようなポンプ速度の変調、又は流入導管あるいは流出導管あるいはポンプへの対抗脈動の追加、などがある。
【0058】
橈側皮静脈を利用して手首に形成されるAVFは、血液透析の好ましいバスキュラーアクセス形態であるが、この静脈はその位置にAVFの形成を促進するにはしばしば不適格であったり、準最適の直径であったりする。したがって、本発明は、ESRD患者の手首にAVFを形成し、バスキュラーアクセス部位として手首AVFを利用して血液透析を受けるESRD患者の割合を増加させることに有利である。
【0059】
ポンプ−導管アセンブリ12は、血液ポンプ14と、合成導管16、18、つまり流入導管16と流出導管18とを含んでいる。血液ポンプは心室補助装置(VAD)の一部品として開発されてきた。そして、中程度の心不全のある成人患者と、小児患者の処置用に小型化されてきた。
【0060】
一実施形態においては、関連して同時出願された“血液ポンプシステムと方法(Blood Pump Systems and Methods)”と題する米国特許出願に記載されているような、末梢動脈と静脈内の血液速度とWSSを上昇させるのに好適なポンプと、導管システムと、制御システムと、電源とを有する血液ポンプシステムを使用してもよい。この実施形態において、ポンプは、遠心ポンプと、心血管系(中央、末梢の動脈、静脈及び右心房含む、ただしこれに限定するものではない)内の1つの血管又は部位に流体接続して心血管系の第1の血管又は部位から血液を取り出し、かつ心血管系(中央、末梢の動脈、静脈及び右心房含む、ただしこれに限定するものではない)内の第2の血管又は部位に流体接続して、心血管系のその第2の血管又は部位へ血液を移動させるようになったポンプシステムであってもよい。導管システムは、心血管系の血管又は部位からポンプへ血液を運ぶ流入導管と、ポンプから心血管系の第2の血管又は部位へ血液を運ぶ流出導管とを含む。血液ポンプシステムはまた、これに限定するものではないが、血液ポンプ速度とインペラ速度と流出導管圧力とを含むポンプ及びシステムのパラメータを変調するための制御システムも含んでいる。ある実施形態では、制御システムは、血液ポンプ、導管又は患者の血管系内にセンサを含み、センサは、特定の動作条件下でのポンプの運転に必要な電力又は電流、血液速度、血流比、末梢血管中への又は末梢血管からの血流の抵抗、(流入導管、流出導管又は隣接血管内の)血圧又は脈圧、拍動指数、及びそれらの組合せの内の少なくとも1つを測定する。血液ポンプシステムはまず第1に十分な量の血液を十分な期間ポンプ輸送して、標的血管内において所望の上昇したWSSと血液速度を達成させ、かつ、それを十分な期間にわたって維持して、標的血管の全体直径、内腔直径又は長さの増大をもたらすようにする。WSSはポンプシステムを流れる平均流速と、標的血管の直径とを用いて決定される。この設定において、ポンプから流出する平均流速は、ポンプを駆動するのに要する電力の測定から推定することができる。この設定において、全ての流れは標的静脈から来る(供与血管の場合)か、あるいは標的静脈へ向かう(末梢受容静脈の場合)と仮定する。
【0061】
このポンプは、移植することも、また患者の体外に保持することも可能であって、通常一つ又は複数の導管とコントローラと電源に接続されている。
図9には、ポンプシステム10の概略図が示されている。ポンプ14は、軸流ポンプ、斜流ポンプ、遠心ポンプなどの回転ポンプであってよい。特定の制約を認識することなし、ポンプ14のベアリングは、磁界又は流体力を利用して、又はダブルピン型ベアリングなどの機械接触式ベアリングを利用して構成することができる。上記の血液ポンプシステムも含めて、小児用VADシステムや他の低流量VADシステムに使われるポンプを利用することができる。あるいは、ポンプ14は米国特許第6,015,272号および第6,244,835号明細書に開示、記載されているような心臓外ポンプであってもよい。参照によりこの両者を本願に援用する。これらのポンプは、本発明の
図10〜14に示すように、システム10での使用及び方法100の実行に好適である。ポンプ14には流入導管16内に引き込まれる脱酸素化血液を受ける入口38と、ポンプ14から出て流出導管18の中へ移動する血流34用の出口40とがある。本発明のポンプ14として使用するのに好適な小児用VADシステム又はそのほかの低流量VADシステムに使用されるポンプに関しては、大きさをほぼ単3電池の大きさ、又は米国の50セント硬貨又は25セント硬貨の直径ぐらいとすることができ、重さは35グラム以下とすることができる。これらのポンプは、たとえば約0.05〜1.0L/min、0.1〜1.5L/min又は1.0〜2.5L/minを送出するように設計されている。高い流速の範囲で作動するように設計された上記のポンプに対して、ポンプへの変更を施して、この範囲を0.05L/min程度にまで下げて、小径の末梢静脈、動脈用としてもよい。ポンプ14の血液に接触する面は、Ti
6Al
4VやTi
6Al
7Nbやその他の市販レベルの純チタン合金や金属、代替チタン合金、アルミナやシリコン炭化物やジルコニアなどの生体適合性セラミックス、又は生体適合性ポリマーなどで構成されていてもよい。ある実施形態において、血液接触面には、血液接触面上への血栓の堆積を低減する抗血栓コーティングを含む一つ又は複数のコーティング及び表面処理がされていてもよい。このように、血管システムに流体接続することが可能で、十分な量の血液を安全にポンプ輸送して、標的血管、とりわけ受容静脈や供与静脈や供与動脈などに所望の血液速度とWSSを達成することができさえすれば、種々のポンプ装置の内の任意のものを使用することが可能である。
【0062】
ポンプ14は
図9に示すように、様々な部品42とモータ44を含んでいる。様々な部品42とモータ44は、VAD又は血液ポンプシステムのポンプに一般的な部品であってよい。たとえば、部品42には1つ又は複数のシャフト、インペラ、インペラブレード、ベアリング、静翼、回転子や固定子を含む。回転子は磁気浮上することが可能であるか、又は回転子の位置を流体力又は二重ピンベアリングなどの機械式接触軸受を利用して制御することが可能である。モータ44は、固定子、回転子、コイルおよび磁石を含んでよい。モータ44は、パルス幅変調電流を介して制御される多相モータなどのような任意の好適な電気モータであってよい。動作時には、ポンプ14が流入カテーテル16の内部に吸引力を生成して、末梢動脈、末梢静脈30、中心静脈又は右心房31などの血管から血液を吸引する。
【0063】
システム10と方法100は以下の刊行物に記載されている1つ又は複数のポンプを利用することが可能である。
P.Wearden外、「小児用心室補助装置PediaFlow(商標)(The PediaFlow(TM) Pediatric Ventricular Assist Device)」、小児心臓外科年報(Pediatric Cardiac Surgery Annual)、pp92−98、2006。
J.Wu外、「心臓に調和する設計(Designing with Heart)」、ANSYS Advantage、第1巻2号、pps12−13、2007。
J.Baldwin外、「米国心臓、肺、血液研究所における小児循環支援プログラム(The National Heart, Lung, and Blood Institute Pediatric Circulatory Support Program)」、Circulation、第113号pp.147−155、2006。
ポンプ14として利用可能なポンプの他の例としては、以下のものがある。
World Heart, Inc.社;Novacor、PediaFlow、Levacor、MiVAD
Micromed, Inc.社;Debakey Heart Assist 1−5。
Thoratec, Inc.社;HeartMate XVE、HeartMate II、HeartMate III、IVAD、PVAD、Centri Mag、PediMag、or UltraMag。
Abiomed, Inc.社;Impella、BVS5000、AB5000、Symphony
CardiacAssist, Inc.社;TandemHeart Ventracor, Inc.社;VentrAssist
独国Berlin Heart社; Incor、Excor
テルモ社;デュラハート
Heart Ware, Inc.社;HVAD、MVAD
Jarvik Heart, Inc.社;Jarvik 2000 Flowmaker、Pediatric Jarvik 2000 Flowmaker
京セラ社;ジャイロC1E3
Cleveland Clinic財団;CorAide、PediPump
MEDOS Medizintechnik AG社;MEDOS HIA VAD
Ension, Inc社;pCAS
Circulite, Inc社;Synergy
Medtronic, Inc.社;BP−50、BP−80
ポンプは、手動又はソフトウェアプログラムやアプリケーションや他の自動システムで監視および調節が可能である。ソフトウェアプログラムはポンプ速度(毎分のインペラ回転数を含む)を調節して、受容静脈、供与動脈又は供与静脈などの標的血管内の所望の血液速度とWSSを維持することが可能である。あるいはまた、標的血管の直径と、血液ポンプシステム又は標的血管内の血流を定期的にチェックして、標的血管内の所望の血液速度とWSSを維持するように手動調節してもよい。
【0064】
一実施形態において、平均血液速度は、個別の測定値を合計し、その合計を測定回数で割ることによって、複数の個別の血液速度の測定の平均を算出することによって求めてもよい。平均血液速度は、数秒間、数分間又は数時間に亘る測定を行って算出することができる。
【0065】
別の実施形態において、平均壁剪断応力(WSS)は、一連の個別の測定を行い、(その測定を利用して)複数の個別のWSSを決定し、決定された個別のWSS値を合計し、その合計を測定回数で割って求められる。平均WSSは、数秒間、数分間又は数時間の期間の測定を行い、個別のWSSの値を決定して算出することができる。
【0066】
ポンプ14が受け取って輸送する血液は、一つ又は複数の合成導管16、18を通って移動する。合成導管16、18は、ポンプに対して漏れのない流体接続を提供するコネクタを用いて、ポンプ14に接続される。一実施形態において、コネクタは半径方向への圧縮性コネクタであって、ポンプ14の入口38及び/又は出口40に組み込まれたタケノコ継手に合成導管16、18を押し付けられる。
【0067】
導管16、18が、柔軟性、無菌性、捩じれ耐性、圧縮耐性などの所望特性を持ち、かつ必要に応じて吻合により血管に接続可能であるか、又は血管の内腔に挿入可能でありさえすれば、合成導管16、18はいかなる材料又は材料の組合せでできていてもよい。合成導管16、18の全て又は一部は、血液透析カテーテルの作製に一般的に利用される、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、及び/又はシリコーンなどの材料でできていてもよい。合成導管16、18の全て又は一部、並びにシステム10の他の部分は、ニチノール又は別の形状記憶合金又は半径方向に広がる金属又は材料で強化されていてもよい。好ましくは、編み込まれたニチノール層が合成導管16、18の周りに巻かれるか、導管の壁の中に組み込まれる。あるいはまた、ニチノールのコイルが、合成導管16、18の全体又は一部の周りに巻きつけられるか、又はその中に組み入れられてもよい。合成導管16、18の全体又は一部が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)及び/又はダクロンでできていて、好ましくはこれらの合成導管16、18の部分がねじれや閉塞を受け難いようになっていてもよい。さらに、合成導管16、18は好ましくは、先進の潤滑コーティングHarmony(商標)などの潤滑性のある外表面コーティングを備えるなどして(所望により)トンネリングに必要な特性を示し、また血栓症への耐性のある内腔表面を持っている。内腔表面は抗血栓剤又は抗血栓材料でコーティングされていてもよい。例えば内腔表面は、Biolnteractions Ltd.社のヘパリンをベースとした抗血栓コーティングであるAstute(登録商標)、又はSurModics, Inc.社のヘパリンコーティングであるApplause(商標)でコーティングされていてもよい。
【0068】
別の実施例として、合成導管16、18の全体又は一部は、内腔層とは異なる材料でできた外層を持ってもよい。合成導管16、18は、体からの取出しを容易にし、かつラテックスアレルギーを回避できるように、シリコンでコーティングされていてもよい。さらに、合成導管16、18の外表面は抗菌コーティングを持っていてもよい。例えば、合成導管16、18の外表面又はポンプやリード部の外表面が、Biolnteractions Ltd.社の表面活性抗菌コーティングであるAvert(登録商標)でコーティングされていてもよい。
【0069】
ある実施形態において、合成導管16又は18と静脈29又は30との間の接続は、縫合糸を連続的又は分割して使用する、従来の外科的吻合術を利用して行われる。これはこの後では“吻合接続”と呼ぶ。吻合接続は外科クリップと別の標準的吻合方法とにより行うことも可能である。ある実施形態においては、導管は血液透析用カテーテルの作製に一般的に利用される、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、及び/又はシリコーンなどの材料でできた部分を備え、これが、吻合接続によって末梢静脈や動脈に接続することができる、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)及び/又はダクロンでできた部分に物理的に結合される。
【0070】
別の実施形態において、流入導管16と流出導管18の、血管系の内腔の中に挿入されるように構成された部分は、(ニチノールを組み込むことで達成され得るような)自己拡張性又は半径方向に拡張する壁を持っており、流入導管16と流出導管18の血管の内部にある部分の直径が、GORE(登録商標)のハイブリッド型血管グラフトの自己拡張性セグメントに見られるように、その位置で血管系の直径に合致するようになっている。
【0071】
図1を参照すると、合成流入導管16には、供与静脈29あるいは心臓の右心房31と流体接続するように構成された第1の端部46と、ポンプ14の入口38に流体接続されるように構成された第2の端部48とがある。供与静脈29としては、肘正中静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、腋窩静脈、鎖骨下静脈、頸静脈、腕頭静脈、上大静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、大腿静脈、総腸骨静脈、外腸骨静脈、上大静脈、下大静脈、及び、ここでは受容末梢静脈30である標的血管の全体直径と内腔直径に持続的増大を生じさせる目的に対して十分な血流をポンプに供給可能なその他の静脈を含むことができる。流出導管18には、末梢受容静脈30と流体接続されるように構成された第1の端部52と、ポンプ14の出口40に流体接続されるように構成された第2の端部54とがある。様々な実施形態において流入導管16の第1の端部46と流出導管18の第1の端部52は、15度〜75度の間の角度、好ましくは45度で面取りされている。
【0072】
ポンプ−導管アセンブリ12は、供与静脈29からの血液を末梢受容静脈30に向かって移動させ、末梢受容静脈の全体直径と内腔直径が持続的に増大するのに十分な期間に亘って標的静脈(ここでは末梢受容静脈30)中の平均血液速度とピーク血液速度とWSSを所望の大きさにまで上昇させるように構成されている。ある実施形態においては、合成導管16、18の一部は患者20の体外にあってよい。
図1と3を参照すると、流入導管16の第1の端部46と、流出導管18の第1の端部52は吻合接続されるようになっている。
図1Bと1Cに示すように、第1の端部46は吻合接続によって内頸静脈(これが供与静脈29となる)に流体接続され、流出導管18の第1の端部52は吻合接続によって橈側皮静脈(これが末梢受容静脈30となる)に流体接続されている。
【0073】
図2A〜2Cを参照すると、合成流入導管16の第1の端部46はカテーテルとして構成されている。合成流入導管16と静脈系との間の流体接続は、合成流入導管のカテーテル部50の先端を上大静脈27の内部へ配置することで行われる。以後これを“カテーテル接続”と呼ぶ。供与静脈29(ここでは上大静脈27)との間でカテーテル接続がなされる場合、合成流入導管46のカテーテル部50は、静脈の内腔直径がカテーテル部50を受け容れるのに適した大きさであれば、任意の位置で静脈系に入ることができる。カテーテル部50の先端は、所望の血流34を受容静脈30に提供するために、カテーテル内に十分な血液を引き出すことのできる任意の位置に配置してよい。カテーテル部50の先端の好適な位置としては、腕頭静脈、上大静脈27、および右心房31がある。ただしこれに限られるわけではない。
図2B〜2Cに示す実施形態において、システム10は患者20の上大静脈27から脱酸素化血液を引き出し、腕24にある橈側皮静脈30に向けて送り出す。
【0074】
図3に示す別の実施形態においては、システム10は脚部26において、供与静脈29(この場合大伏在静脈のより近位部)から脱酸素化された静脈血を引き出し、末梢受容静脈30(この場合は大伏在静脈のより遠位部)に向けて放出し、これによって、受容大伏在静脈30の内腔直径と全体直径が持続的に増大するのに十分な期間に亘って受容末梢静脈中の血液速度とWSSを所望のレベルまで上昇させる。血液ポンプシステム内への逆流する静脈流を増大させるのに望ましい構成においては、流入導管、供与静脈、又は右心房の接続部の間の一つ又は複数の静脈弁を機能しないようにして、その供与静脈部分において逆方向の流れを可能として流入導管に流れ込むようにしてもよい。
図3に示す実施形態において、流入導管16は、吻合接続によって患者20の大伏在静脈29の近位部に流体接続されている。末梢受容静脈30(この場合には大伏在静脈の遠位部)内への血液のポンプ輸送と、平均血液速度とピーク血液速度と平均WSSの上昇が、受容大伏在静脈部分30の全体直径と内腔直径に持続的な増大を起こさせるのに十分な期間継続され、心臓又は末梢バイパスグラフト形成手術、又は患者の静脈の一部を自己移植する必要のあるそのほかの手術の一環としての摘出と自己移植を容易にする。
【0075】
図4Aと4Bはシステム10の別の実施形態を示す。
図4Aでは別の実施形態において、体外にある又は移植されたポンプ114が、流入導管55と流出導管56である導管として作用し、導管−ポンプアセンブリ(カテーテル−ポンプアセンブリと言い換えてもよい)13を形成する2つの特別なカテーテルに取り付けられている。ポンプ114は供与静脈29から脱酸素化された血液を流入導管55の内腔中へ引き込み、その血液を流出導管56から末梢受容静脈30の内腔中へ放出する。これにより、末梢受容静脈30内の血液速度とWSSを上昇させる。
【0076】
図4A、4Bにおいて、ポンプ−導管(あるいはポンプ−カテーテル)アセンブリ13が静脈部分dにおける血液速度とWSSを上昇させるように構成されている。流入導管55と流出導管56は、任意選択でその全部又は一部が結合されていてもよい。そして受容末梢静脈30の内腔へ経皮挿入され、より侵襲性の高い手術を不要とする。ある実施形態において、1つ又は両方の導管の一部が皮膚の下に皮下トンネルとなっていて、トンネル部分が、感染リスクを下げるために血管内部分と体外部分との間に位置するようになっていてもよい。カテーテル119、120の体外部分と体外ポンプ114は体に固定することができる。あるいは、ポンプと導管が移植されて、コントローラへのリード線が皮膚から出るようにすることもできる。ポンプ114は電源に接続され、受容末梢静脈30の部分dの血液速度34とWSSを十分な期間に亘って上昇させ、部分dの全体直径と内腔直径を持続的に増大させるように運転されてもよい。受容末梢静脈30の部分dの全体直径と内腔直径に所望量の持続的に増大が起きると、ポンプ−導管アセンブリ12が外されて、ポンプ−導管アセンブリの取り外しと同時又はその後に、受容末梢静脈30の拡大した(全体直径と内腔直径が増大した又は長さが伸びた)部分dの少なくとも一部分を利用して血液透析のアクセス部位又はバイパスグラフトを形成する手術を行うことができる。あるいはまた、この拡大した静脈を利用して他の手術又は処置を実行することもできる。
【0077】
図5A、5Bには、末梢静脈の全体直径を増大させるためのシステム10が患者20に対して使用されている状態で示されている。システム10は患者の末梢動脈221から酸素化された動脈血を引き出して、受容末梢静脈30の中へその血液を送り出す。そして、受容末梢静脈30の血液速度とWSSとをある十分な期間に亘って上昇させて、例えば腕24又は脚26にあるその受容末梢静脈30の直径を持続的に増大させるように構成されて運転される。ポンプ214が腕24の中に移植されているシステム10の一実施形態が図示されている。ポンプ214は、吻合接続によって腕24の動脈221へ接続された入口240を備えている。ポンプ214は、吻合接続によって末梢静脈30へ接続された出口238も備えている。ポンプ214は制御ユニット58により制御されかつ給電される。運転時には、ポンプ214は動脈221から血液を引き出し、末梢静脈30の中へポンプ輸送する。この実施形態では延長合成導管が必要でなく、末梢静脈30と末梢動脈221の両方における血液速度とWSSを上昇させる。その結果、十分な期間に亘って運転されると、静脈30と動脈221に同時に全体直径と内腔直径の持続的な増大が生じる。具体的にはポンプ214は患者20の前腕24内に移植される。受容末梢静脈30の全体直径と内腔直径に所望の持続的増大が生じれば、ポンプ214は取り外されて、それと同時又はその後の手術の時のいずれかにおいて、その拡大した動脈221又は静脈30の少なくとも一部を利用した血液透析アクセス部位又はバイパスグラフトの形成手術を行うことができる。
【0078】
別の実施形態において、酸素化された血液が供与動脈から受容位置へ移動されてもよい。供与動脈としては、橈骨動脈、尺骨動脈、骨間動脈、上腕動脈、前脛骨動脈、後脛骨動脈、腓骨動脈、膝窩動脈、上腕深動脈、浅大腿動脈、又は大腿動脈が含まれてよい。ただしこれに限るものではない。酸素化された血液は供与動脈から受容位置へ、内在する圧力差によって受動的に、又はシステムにポンプを導入することによって能動的に移動させられてもよい。
【0079】
図6は、システム10を利用して血管の全体直径と内腔直径を増大させる別の実施形態を示している。この実施形態においては、システム10は酸素化された血液を供与動脈312(この場合には上腕動脈)から取り出し、上大静脈と心臓304の右心房302へその血液を移動させる。図に示すように、流入導管306は供与動脈312に流体連通して接続されている。一実施形態において、接続は、流入導管を供与動脈312へ固定するために使用する流入導管306の短いePTFE部分を利用して行われ、流入導管のその他の部分はポリウレタンを用いて作製されている。他の実施形態において、流入導管306の1つ又は両方の部分が更にニチノールを備え、ねじれや圧縮に対する耐性を持つようになっている。図に示すように、流出導管310の一端はポンプ14に接続され、流出導管の他端は上大静脈と右心房302に血管内カテーテル部分によって流体接続されている。
図6の実施形態に関して、ポンプ14は、供与動脈312内の血液速度とWSSを所望のレベルへ上昇させるために、供与動脈から引き出されて心臓304の右心房302に放出される血液の速度を上昇させることに利用される。供与動脈の全体直径と内腔直径が開始時の直径から、例えば5%増大、10%増大、25%増大、50%増大又は100%以上増大というように、所望の持続的増大をするのに十分な速度で十分な期間の間、ポンプは運転される。
【0080】
図7は、システム10を利用して血管の全体直径と内腔直径を増大させる別の実施形態を示している。この実施形態においては、システム10は酸素化された血液を供与動脈312(この場合には上腕動脈)から取り出し、上大静脈と心臓304の右心房302へその血液を移動させる。図に示すようにこの実施形態においては、一端で供与動脈312と流体連通して接続された1つの流入導管306がある。一実施形態において、供与動脈312への接続は、導管を供与動脈312へ固定するために使用する流入導管306の短いePTFE部分を利用して行われ、導管のその他の部分はポリウレタンを使って作製されている。他の実施形態において、導管306の一部又は全部がねじれや圧縮に対する耐性などのためにニチノールを更に備えている。
図7の実施形態に関しては、ポンプはなく、血液はより高圧の供与動脈312からより低圧の上大静脈と右心房302へ受動的に移動し、導管306は供与動脈312内で血液速度とWSSが所望の上昇レベルを達成するような長さと内腔直径に構成されている。供与動脈300の全体直径と内腔直径が開始時の直径から、例えば5%増大、10%増大、25%増大、50%増大又は100%以上増大というように、所望の持続的増大をするのに十分な期間の間、導管306がその場所に保持される。
【0081】
一実施形態において、システム10を利用する方法が
図7に示すように、1本の導管を含み、動脈312へアクセスすることを含む。導管306カテーテルの一端を動脈312に接続し、導管の他端を受容位置(例えば心臓304の右心房302)に接続して、動脈内を流れる血液の少なくとも一部分を動脈から分離して受容位置へ振り向ける。この方法では、血液はより高圧の動脈312からより低圧の右心房302へ、ポンプを必要とせずに受動的に移動する。ある期間の後、この動脈312の全体直径と内腔直径が増大する。その後、導管306が動脈312と右心房302から外されて、その動脈の一部が血液透析アクセス部位又はバイパスグラフトとして、あるいは動脈を使用又は必要とするその他の手術への利用に備えられる。
【0082】
図8は、システム10を利用して標的血管の全体直径と内腔直径を増大させる別の実施形態を示している。この実施形態においては、システム10は脱酸素化された血液を供与静脈300から取り出し、上大静脈と心臓304の右心房302へその血液を移動させる。図に示すように、流入導管306が、この場合は橈側皮静脈である供与静脈300へ流体連通して接続される。一実施形態において、接続は、流入導管308を供与静脈300へ固定するために使用する流入導管306の短いePTFE部分を利用して行われ、流入導管のその他の部分はポリウレタンを用いて作製されている。他の実施形態において、流入導管又は流出導管の少なくとも一部分は、ねじれと圧縮に対する耐性のためにニチノールを含んでいる。図に示すように、流出導管310の一端はポンプ14に接続され、流出導管の他端はその血管内の部分によって心臓304の右心房302に流体接続されている。
図8の実施形態に関して、ポンプ14は、所望の上昇したレベルの血液速度と上昇したレベルのWSSを供与静脈300内に実現するために、供与静脈300内から引き出されて心臓304の右心房302に放出される血液の速度を上昇させるために使用される。供与静脈300の全体直径と内腔直径が開始時の直径から、例えば5%増大、10%増大、25%増大、50%増大又は100%以上増大というように、所望の持続的増大をするのに十分な速度で十分な期間の間、ポンプは運転される。更なる実施形態において、流入導管308と供与静脈300の接合部と、右心房302との間の一つ又は複数の静脈弁を(当業者に利用可能な任意の方法を用いて)機能停止又は機能低下させて、血液が供与静脈300内で逆方向(心臓から離れる方向)に流れて流入導管308内に流れ込むようにさせてもよい。
【0083】
他の実施形態において、末梢動脈が供与血管であり、末梢静脈が受容静脈であるような場合、血液は、末梢動脈内の血液の拍動に比べて拍動を下げて、受容末梢静脈内へポンプ輸送される。たとえば、流出導管との接続部に近い受容末梢静脈内の平均脈圧はポンプが動作している状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、又は好ましくは5mmHg未満である。拍動を下げるために、及び/又は低拍動流を提供するために、いくつかの拍動減衰技術を利用することができる。そのような技術の例としては、これに限定するものではないが、血液ポンプの揚程−流量特性の調整、流入導管あるいは流出導管への弾性リザーバすなわちウィンドケッセル(Windkessel)セグメントの追加、流入導管あるいは流出導管へのコンプライアンスの追加、心拡張期にポンプ速度を上昇させ心収縮期にポンプ速度を低下させるようなポンプ速度の変調、又は流入導管あるいは流出導管あるいはポンプへの対抗脈動の追加、などがある。
【0084】
図9には、一実施形態のポンプシステム10の概略図が示されている。制御ユニット58はポンプ14に接続されていて、ポンプ14の速度を制御し、ポンプシステム10の機能の情報を収集するようになっている。制御ユニット58は、患者20の体内に移植されてもよいし、患者20の体外にあってもよいし、又は体内に移植された部分と体外にある部分とがあってもよい。電源は電源ユニット60の中に組み込まれていて、制御ユニット58とポンプ14に接続されている。電源ユニット60は通常の動作においてポンプ14と制御ユニット58にエネルギを与える。電源ユニット60は、患者20の体内に移植されてもよいし、患者20の体外にあってもよいし、又は体内に移植された部分と体外にある部分とがあってもよい。電源ユニット60は電池61を含んでもよい。電池61は好ましくは再充電可能であり、この実施形態においては電源への電気コネクタ69を介して再充電される。このような再充電可能な電池は、リード線を利用して又は、移植されている場合などには経皮的なエネルギ伝達によって再充電することも可能である。別の実施形態において、消耗した再充電可能電池は壁コンセントに接続された充電ステーション内で再充電し、ポンプシステム10の消耗した電池と交換することもできる。任意選択で、電気コネクタ69が電池61の助けなしに電力ユニット60へ電力を送達してもよい。この開示から、制御ユニット58は代替的な電力制御システムを利用するように構成できることが当業者には明らかであろう。
【0085】
センサ66、67は、血管システム、導管16と18、ポンプ14又は制御ユニット58の中に組み込まれてもよい。センサ66と67はケーブル68で制御ユニット58に接続されている。あるいは、制御ユニット58と無線で通信することもできる。提示する実施例に制限されることなしに、センサ66、67は、特定の動作条件下でのポンプの運転に要する電力又は電流、血液速度、血流比、供与血管からの又は末梢受容静脈への血流への抵抗、血圧又は脈圧、拍動指数、及びそれらの組合せなどを含む、ポンプ、導管、制御ユニット又はシステムの様々なパラメータを測定可能であり、かつ信号をポンプ又は制御ユニット58へ送信できる。制御ユニット58(コントローラとも呼ぶ)はこれらの測定値を利用して、導管と流体連通する隣接の標的血管の内腔直径、流れへの抵抗、又は受容静脈、供与静脈、供与動脈を含む標的血管内のWSS、の任意の1つ以上を決定(あるいは推定)し、ポンプに信号を送って、ポンプ速度、インペラ速度、導管血圧又はその他のポンプシステムのパラメータを変更させてもよい。例えば、ポンプ輸送される血液を受け取る末梢静脈30の全体直径と内腔直径が増大するにつれ、末梢静脈30内の血液速度とWSSとが、流出導管18からの血流34への抵抗とともに減少する。所望の血液速度とWSSを維持するために、時間と共に末梢受容静脈30の全体直径と内腔直径が増大するのに合わせてポンプ速度を調節してもよい。
【0086】
前述したように、制御ユニットは、血流、血液速度、内腔内圧、又は流れへの抵抗を評価する基準として、モータ44への内部測定電流値を含む測定値に依存してもよい。制御ユニット58はまた、ポンプ速度、インペラ速度又はその他のポンプパラメータを調節するための手動制御を含んでいてもよい。
【0087】
制御ユニット58はポンプ−導管アセンブリ12とは動作的に接続されている。具体的には、制御ユニット58はポンプ14と1つ又は複数のケーブル62で動作的に接続されている。電源ユニット60を利用して、制御ユニット58が好ましくはパルス幅変調モータ制御電流などのモータ制御電流を、ケーブル62を介してポンプ14へ供給する。制御ユニット58はポンプ14からデータや情報を受信することもできる。制御ユニット58はさらにデータや情報を収集するように構成された通信ユニット64を含んでおり、例えば遠隔送信によってこれと通信する。さらに、通信ユニット64は制御ユニット58のプログラム更新のための命令又はデータを受信するように構成されている。従って、通信ユニット64は、次にそれを用いてポンプ14の機能を変更するための命令やデータを受信するように構成されている。
【0088】
本発明は、制御ユニット58とセンサ66、67から構成されるモニタシステムを提供し、時間の経過に従って標的血管の全体直径と内腔直径が増大する際に標的血管内の所望の血液速度とWSSを維持するようにポンプの動作を調節する。
【0089】
好ましくはポンプ14が、約50−2500mL/minの範囲で血流34を提供するように構成されている。ポンプ14は、標的静脈内のWSSを0.76Pa〜23Paの間の範囲、好ましくは2.5Pa〜10Paの間の範囲に上昇させるように構成されている。ポンプ14は、標的動脈内の平均WSSを1.5Pa〜23Paの間の範囲、好ましくは2.5Pa〜10Paの間の範囲に上昇させるように構成されている。ポンプ14は、例えば7〜84日の期間、好ましくは例えば7〜42日の期間、標的の静脈又は動脈内の所望レベルの血流と平均血液速度と平均WSSを維持するように構成されている。静脈の全体直径と内腔直径に大幅の持続的増大が望まれる場合、又は静脈の全体直径と内腔直径の持続的増大がゆっくりと起きる場合のような特定の状況においては、ポンプ14は受容末梢静脈30内の所望レベルの血流とWSSを84日を超えて維持するように構成されている。
【0090】
ポンプ−導管アセンブリ12は患者20の右側面に移植することができる。又は必要があれば左側面に移植することも可能である。導管16と18の長さは、所望の配置に応じて調整することができる。具体的に
図1Bと1Cに関しては、流入導管16の第1の端部46は右内頸静脈29に流体連結され、流出導管18の第1の端部52は手首の近くで右前腕内の橈側皮静脈30に流体接続されている。具体的に
図2Bと2Cに関しては、流入導管16の第1の端部46は上大静脈27に流体接続されており、また流出導管18の第1の端部52は手首の近くで右前腕24内の橈側皮静脈30に流体接続されている。接続された後にポンプ輸送が開始される。すなわち、制御ユニット58がモータ44の運転を開始する。ポンプ14は流出導管18を通して末梢静脈30へ血液34を送り出す。制御ユニット58は、時間が経過する間、センサ66と67により提供されるデータを利用してポンプ輸送を調節する。
図1〜4は、システム10が脱酸素化血液をポンプ輸送する例を示している。
図5は、システム10が酸素化された血液をポンプ輸送する例を示している。実施形態のあるものでは、血液は末梢動脈内の血液の拍動よりも低い拍動で受容静脈中へポンプ輸送される。たとえば、受容静脈内の平均脈圧はポンプが動作して血液を末梢静脈中に送達している状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、又は好ましくは5mmHg未満である。別の実施形態では、血液は、末梢動脈内の血液の拍動に等しいかそれよりも高い拍動で受容静脈中へポンプ輸送される。そのような実施形態では、流出導管との接続部に隣接する受容静脈内の平均脈圧はポンプの動作状態で、40mmHg以上である。
【0091】
図1Bと1Cに示した特定の実施形態においては、供与静脈29は頸静脈21、好ましくは内頸静脈21である。内径静脈21は、内径静脈21と右心房31の間に弁がないので、供与静脈29として特に有益であり、これにより、頸静脈の部分で逆流する血液を引き出すことも含めて、合成流入導管16が単位時間あたりに大量の脱酸素化血液を、引き出すことが可能となる。流入導管18は患者20の内頸静脈21に流体接続している。脱酸素化血液は内頸静脈21から取り出されて腕24の末梢受容静脈30に送り込まれ、末梢受容静脈30内の血液速度34とWSSの上昇をもたらす。実施形態のあるものでは、末梢動脈内の血液の拍動よりも低い拍動で血液が受容静脈中へポンプ輸送される。たとえば、流出導管との接続部に近い受容静脈内の平均脈圧はポンプが動作している状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、又は好ましくは5mmHg未満である。
【0092】
前述したように、
図5Bはシステム10が酸素化された血液を引き出し、放出する例を示している。流入導管240は患者20の橈骨動脈221に、流出導管238は橈側皮静脈に、いずれも吻合接続を利用して流体接続されている。こうして、酸素化された血液が橈骨動脈221から取り出されて腕24の橈側皮静脈30にポンプ輸送されて、受容末梢静脈30の全体直径および内腔直径が持続的に増大するのに十分な期間に亘って橈側皮静脈中の血液速度とWSSを上昇させるようにする。実施形態のあるものでは、末梢動脈内の血液の拍動よりも低い拍動で血液が受容静脈30中へポンプ輸送される。たとえば、流出導管との接続部付近の受容静脈内の平均脈圧はポンプが動作して受容末梢静脈中に血液を送達している状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、又は好ましくは5mmHg未満である。
【0093】
図10〜14では、方法100の様々な実施形態が末梢受容静脈、末梢供与動脈、又は末梢供与静脈の全体直径と内腔直径を増大させる。
【0094】
図10に示すように、方法100の一実施形態において、医師又は外科医がステップ101において静脈又は静脈にアクセスする処置を実行し、ポンプを接続して脱酸素化血液が流れている静脈と流体連通を確立する。ステップ102において、ポンプが末梢静脈に接続される。この実施形態では、ポンプ−導管アセンブリ12は患者20の首、胸および腕24内に移植される。末梢静脈30が伏在静脈30である別の実施形態では、ポンプ−導管アセンブリ12は脚26、骨盤又は腹部内に移植される。一実施例においては、医師は、ポンプ−導管アセンブリ12の第1の端部46を供与静脈29(この場合は大伏在静脈近位部)に流体接続し、ポンプ−導管アセンブリ12の第2の端部を受容末梢静脈30(この場合は大伏在静脈遠位部)に流体接続する。この時2つの場所を皮下接続するために、(必要に応じて)トンネル方式を利用する。ステップ103において、脱酸素化血液が末梢受容静脈内にポンプ輸送される。ステップ104において、ある期間の間ポンプ輸送が継続され、医師は末梢受容静脈の全体直径と内腔直径が持続的に増大するのを待つ。一実施形態において、ポンプが始動されて脱酸素化された血液のポンプ輸送が開始された後、必要に応じて、皮膚切開が閉じられる。別の実施形態では、合成導管16と18の一部とポンプ14は体外に配置される。この実施形態においては、次にポンプ14が始動され、制御ユニット58で制御されてポンプ−導管アセンブリ12を通って脱酸素化血液が受容末梢静脈30へポンプ輸送され、末梢静脈30中の血液速度とWSSを上昇させるようにする。ポンプシステムの運転と前述した他のパラメータは定期的にモニタされ、末梢受容静脈30の(増大した全体直径や内腔直径などの)変化に応じて、制御ユニット58を利用してポンプ14の運転パラメータを調節する。必要に応じて定期的な調節をすることで、末梢静脈30の全体直径、内腔直径又は長さに持続的な増大をもたらすのに十分な期間に亘ってポンプを運転し続ける。その次にステップ105で、ポンプ−導管アセンブリ12が患者から分離されて、ポンプシステムが取り外される。ステップ106において、全体直径と内腔直径30が持続的に増大した末梢静脈が、AVF、AVG、バイパスグラフトの生成、又は当業者によって判断される静脈を必要とするその他の手術や処置に利用される。
【0095】
本方法100の別の実施形態においては
図11に示すように、医師又は外科医はポンプ−カテーテルアセンブリの流入カテーテル導管55を静脈システム内に挿入して供与血管位置に配置する。医師又は外科医は次にステップ107で、ポンプ−カテーテルアセンブリの流出カテーテル導管56を静脈システム内に挿入して末梢受容静脈30の位置に配置する。ステップ108においてポンプが作動され、脱酸素化された血液が供与血管位置29から末梢受容静脈位置30へポンプ輸送される。次にステップ109で、医師は末梢静脈の部分dの全体直径と内腔直径が所望量まで増大するのを待つ。次にステップ110でポンプ−カテーテルアセンブリが取り外され、ステップ111において全体直径と内腔直径が持続的に増大した末梢受容静脈が、AVF、AVG又はバイパスグラフトの生成、又は当業者によって判断される静脈を必要とするその他の手術や処置に利用される。
【0096】
本方法100の別の実施形態では
図12に示すように、ステップ112において医師又は外科医は末梢静脈30にアクセスする処置を行い、ポンプを(直接又は流出導管を介して)接続して末梢静脈30と流体連通を確立する。ステップ113でポンプは末梢動脈221と(直接又は流入導管を介して)流体接続される。ステップ114でポンプが作動され、供与末梢動脈221からの酸素化された血液が受容末梢静脈30にポンプ輸送される。ステップ115において、ある期間の間ポンプ輸送が継続され、医師は受容末梢静脈の全体直径と内腔直径が所望の大きさまで持続的に増大するのを待つ。ステップ116において血液ポンプシステムが取り外され、ステップ117において全体直径と内腔直径が持続的に増大した末梢受容静脈が、AVF、AVG又はバイパスグラフトの生成、又は当業者によって判断される静脈を必要とするその他の手術や処置に利用される。
【0097】
本方法100の別の実施形態においては
図13に示すように、ステップ118で、医師又は外科医は末梢供与動脈にアクセスする処置を実行し、一つ又は複数の導管を利用して上大静脈又は右心房などの受容位置との流体連通を確立する。ステップ119において血液は供与動脈から受容位置へ移動する。これはポンプなしで受動的に行うことも又はポンプの助けで能動的に行うこともできる。ステップ120において、ある期間の間血液が供与動脈から受容位置まで移動され、医師は末梢供与動脈の全体直径と内腔直径が所望の大きさまで持続的に増大するのを待つ。ステップ121で導管が取り外される。実施形態によってはポンプもまたステップ121で取り外される。ステップ122において、全体直径と内腔直径が持続的な増大をした末梢供与動脈が、AVF、AVG又はバイパスグラフトの形成、又は当業者によって判断される静脈を必要とするその他の手術や処置に利用される。
【0098】
本方法100の別の実施形態においては
図14に示すように、ステップ123で医師又は外科医は血管系の受容位置(上大静脈又は右心房など)に流体的にアクセスする処置を実行し、ポンプを(直接又は流入導管を介して)受容位置に流体接続する。そうして、ステップ124で医師又は外科医は末梢供与静脈とポンプとの(直接又は流出導管を介した)流体連通を確立する。ステップ125でポンプが作動され、脱酸素化された血液が末梢供与静脈から受容位置へポンプ輸送される。ステップ126において、ある期間の間ポンプ輸送が継続され、医師は末梢供与静脈の全体直径と内腔直径が持続的に増大するのを待つ。ステップ127においてポンプシステムが取り外され、ステップ128において全体直径と内腔直径が持続的に増大した供与静脈が、AVF、AVG又はバイパスグラフトの形成、又は当業者によって判断される静脈を必要とするその他の手術や処置に利用される。
【0099】
様々な実施形態において、方法100及び/又はシステム10は、連続的な処理ではなく、定期的及び/又は間歇的に利用されてもよい。一般的に、3〜5時間かかる血液透析処置が、1週間に最大3回まで透析施設において行われる。システム10及び方法100の様々な実施形態を、4〜6週間の期間、同様のスケジュールで血液のポンプ輸送処理を行なうのに利用することができる。処置は、外来施設を含め、任意の好適な場所で実行することができる。
【0100】
一実施形態において、血液のポンプ輸送処置は、血液透析処置に併せて間歇的に行われる。この実施形態においては、低流量ポンプと、流入カテーテルとして機能する標準的な血液透析留置カテーテルと、流出カテーテルとして機能する末梢静脈中に配置された微小外傷性針又はカテーテルとを利用することができる。ベッドサイドの操作盤で運転されるいくつかの連続流血液ポンプ(たとえば、カテーテル方式のVADと小児用心肺バイパス又は体外膜型人工肺ポンプ)が本方法100での使用に容易に適合できる。
【0101】
血液のポンプ輸送が定期的な間歇方式で行われる様々な実施形態においては、血管へのアクセスも1つ又は複数のポート又は外科的に形成されたアクセスサイトを介して行われてもよい。限定するものではないが一例として、流入のためのアクセスが、静脈針、末梢穿刺中心静脈カテーテル、トンネル型又は非トンネル型中心静脈カテーテル、又はポートあるいは動脈針あるいは動脈カテーテル付きの皮下移植可能な中央静脈カテーテルを介して実行され得る。一例としてこれに限定するものではないが、静脈針又は末梢静脈カテーテルを介した流出のために、アクセスが実行されてもよい。
【0102】
本システム10の別の実施形態においては、血管内の平均WSSと平均血液速度を上昇させるために低流量ポンプが使用される。低流量ポンプは、右心房などの心血管系内の血管又は位置に流体接続される流入導管と、静脈に流体接続される流出導管とを持っており、心血管系の血管又は位置から血液を静脈へ、約7日〜84日の間の期間に亘りポンプ輸送する。この低流量ポンプは、静脈の平均壁剪断応力が約0.076〜約23Paの間の範囲となるように血液を送り出す。低流量ポンプはまた調節装置も含んでいる。調節装置は、ソフトウェアベースの自動調節システムと通信してもよいし、手動制御になっていてもよい。流入導管と流出導管は長さが約0.5cm〜約110cmの範囲であってよく、全体の長さが4cm〜220cmである。
【0103】
本発明はまた、ポンプ−導管システム10の様々な実施形態を含む、血管ポンプシステムの組立および運転方法にも関する。この方法は、ポンプ−導管システム10と流体連通している第1導管を動脈に取り付け、ポンプ−導管システムと流体連通している第2導管を静脈に取り付けることを含む。そうしてポンプ−導管システム10が起動されて、動脈と静脈の間に血液をポンプ輸送する。
【0104】
本発明の範囲を理解する際に、本明細書において使用されている“備える”という用語、およびその派生語は、非限定用語であって、記述された特徴、要素、成分、群、整数、及び/又はステップの存在を特定するが、他の記述されていない特徴、要素、成分、群、整数、及び/又はステップの存在を除外しないことを意図している。このことは、“含む”、“有する”、などの用語およびその派生語などの、同様の意味を有する用語についてもあてはまる。本明細書で使用されている、たとえば“実質的に”、“約”、“ほぼ”、などの程度を表す用語は、最終的な結果が大きくは違わない程度に、修飾された用語の適度な偏倚を意味している。たとえばこれらの用語は、それが修飾する用語の意味を否定しない限りは、修飾される用語の少なくとも±5%の偏差を含むものと解釈される。
【0105】
本発明は選択された実施形態のみを用いて説明したが、当業者であればこの開示から、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を行なえることが明らかであろう。たとえば、さまざまな部品の寸法、形状、位置、又は配向は、必要及び/又は所望により変更することができる。直接接続する、又は相互に接触するとして示された部品は、その間に中間構造物が配置されてもよい。1つの要素の機能は2つの要素で実行されてもよいし、その逆もあってよい。1つの実施形態の構造と機能は別の実施形態に取り入れられてもよい。特定の一実施形態に、すべての利点が同時に存在する必要はない。従来技術とは異なる固有の特徴はすべてそれ単独で、又は他の特徴との組合せで、そのような特徴により具現化される構造及び/又は機能的概念を含めて、出願人による更なる発明の個別の記述であるとみなされるべきである。したがって、本発明による実施形態の上記の記述は、説明のためにのみ与えられたものであり、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって定義される本発明を制限するものではない。