【文献】
石川 裕貴 他,可変サイクリックプレフィックスを用いる適応OFDMシステムに関する一検討,電子情報通信学会技術研究報告,2009年 6月 4日,第109巻,第78号,pp.67-71,SIS2009-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。複数の図面中同一のものに
は同じ参照符号を付し、説明は繰り返さない。
【0013】
図1に、本実施の形態の固定無線システム1の構成例を示す。固定無線システム1は、地面100の上に、例えば20km程度の距離を空けて第1固定局2と第2固定局3が設置されて構成される。なお、地面100は、第1固定局2と第2固定局3が設置される場所によっては海面となる場合もある。
【0014】
第1固定局2と第2固定局3は同じものである。以降において特に区別する必要が無い場合は、固定局10と称することにする。
【0015】
〔第1実施形態〕
図2に、本発明の固定無線システム1を構成する第1実施形態に係る固定局10の機能構成例を示す。固定局10は、本発明に係る固定無線通信の最適化装置を構成する。他の固定局も同様である。以降の説明において最適化装置は、固定局と称する。また、ガードインターバルはGIと称する場合がある。
【0016】
固定局10は、送受信アンテナ11、S/P変換部12、GI削除部13、FFT部14、デコーダ15、P/S変換部16、S/P変換部17、エンコーダ18、IFFT部19、GI付加部20、P/S変換部21、及びGI生成部22を備える。S/P変換部17〜P/S変換部21までは送信機を構成する。S/P変換部12〜P/S変換部16までは受信機を構成する。
【0017】
なお、
図2は、OFDM信号を処理する主要部のみを表記している。例えば、送受信アンテナ11との間で送信信号と受信信号を切り替える切替スイッチ(サーキュレータ)等の表記は省略している。
【0018】
送信機側から動作を簡単に説明する。送信データは、S/P変換部17でシリアル/パラレル変換され、低速な複数の符号列に分割される。エンコーダ18は、分割された符号列ごとに変調を行う。
【0019】
エンコーダ18で変調された送信データは、IFFT部19で逆フーリエ変換され、サブキャリア毎の送信信号となる。GI付加部20は、送信信号に、符号間干渉を無くすためにGIを組み込む。GIが組み込まれた送信信号は、P/S変換部21でパラレル/シリアル変換され、送受信アンテナ11から送信される。
【0020】
図3に、ガードインターバルを模式的に示す。
図3は、上から順に、直接波、間接波、及び受信信号である。
図3の横方向は時間である。符号(シンボル)間にGIが組み込まれていることが分かる。GIの間のシンボルを無視することで、マルチパス遅延による符号間干渉を防止することができる。
【0021】
GI付加部20が送信信号に組み込むGIは、GI生成部22で生成されたGI値のガードインターバルである。GI生成部22は、外部から入力される情報に基づいて固定局の間(第1固定局2と第2固定局3の間)に生じるマルチパス遅延の最大遅延時間よりも大きなガードインターバル値を生成する。外部から入力される情報とは、マルチパスの最大遅延時間より大きな時間情報であるガードインターバル値そのもので有っても良いし、他の情報で有っても良い。
【0022】
他の情報としては、例えば外部から入力される固定局10の位置を表す座標情報等で有っても良い。固定局10の位置情報から、反射波の経路長を求め、最大遅延時間(GI)を計算しても良い。
【0023】
送受信アンテナ11で受信した受信信号は、S/P変換部12でシリアル/パラレル変換され、低速な複数の符号列に分割される。GI削除部13は、分割された符号列からGIを取り除く。
【0024】
GI削除部13でGIが削除された受信信号は、FFT部14でフーリエ変換され、サブキャリア毎の受信信号となる。FFT部14が出力するサブキャリア毎の受信信号は、デコーダ15で復調され受信データとなる。復調された受信データは、P/S変換部でパラレル/シリアル変換され1つの符号列に合成される。
【0025】
GI削除部で受信信号から削除するGIは、GI生成部22で生成されたガードインターバル値のガードインターバルである。よって、マルチパス遅延によって符号間干渉が生じている恐れのある符号列は無視されるので、受信データはマルチパスの影響を受けない。
【0026】
以上説明した本実施形態に係る固定局10の主要部は、GI生成部22、GI付加部20、及びGI削除部13である。GI生成部22は、外部から入力される情報に基づいて固定局の間に生じるマルチパス遅延の最大遅延時間よりも大きなガードインターバル値を生成する。
【0027】
GI付加部20は、送信信号の符号間に、GI生成部22が生成したガードインターバル値のガードインターバルを付加する。GI削除部13は、受信信号の符号間に付加されたガードインターバルを削除する。
【0028】
このように構成された固定局10は、外部からガードインターバル値を最適化することができる。したがって、大きなマルチパス遅延に対応することができる。また、ガードインターバル値は既知であり、作業者が意図しないガードインターバル値に設定されることがない。よって作業者は、固定局の設置を容易に行うことができる。
【0029】
次に、GI生成部22の具体例を第2実施形態として説明する。
【0030】
〔第2実施形態〕
図4に、第2実施形態に係る固定局30を構成するGI生成部32の機能構成例を示す。固定局30の機能構成例の表記は、
図2のGI生成部22がGI生成部32に置き換わるだけであるので省略する。
【0031】
GI生成部32は、座標情報取得部320、反射経路長計算部321、及びGI値計算部322を備える。
図5に、GI生成部32の動作フローを示す。
【0032】
座標情報取得部320は、自局(例えば第2固定局3)と相手局(例えば第1固定局2)のそれぞれの固定局30の座標情報(緯度、経度)を取得する(ステップS1)。座標情報は、例えばGPS受信機から取得する。最近のモバイル端末は、GPS受信機能を標準装備している。よって、モバイル端末を、固定局30に接続すれば容易に固定局30の座標情報を得ることができる。
【0033】
相手局の座標情報は、固定局30を設置する作業者が手入力しても良い。また、座標情報取得部320を、インターネットに接続可能に構成し、相手局の座標情報をインターネット経由で取得しても良い。
【0034】
反射経路長計算部321は、自局の座標情報と相手局の座標情報から、自局と相手局の間の直接波の経路長r
1と、自局と相手局の間の地面100で反射する反射波の経路長r
2とを計算する(ステップS2)。直接波の経路長r
1と反射波の経路長r
2からガートインターバル値を計算することができる。
【0035】
図6に、直接波と反射波の経路長の計算方法を説明するための模式図を示す。仮に自局を第2固定局3、相手局を第1固定局2とする。なお、第1固定局2と第2固定局3は同じもの(例えば固定局30)である。説明の都合で第2固定局3の送受信アンテナの参照符号を31と称する。
【0036】
第1固定局2と第2固定局3は、固定局間距離dを空けて地面100に設置される。したがって、第1固定局2の送受信アンテナ11と、第2固定局3の送受信アンテナ31の高さは異なる場合がある。なお、緯度と経度から固定局間距離dを計算する方法は、参考文献(http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/surveycalc/algorithm/bl2st/bl2st.htm)に開示されている。
【0037】
図6においては、第2固定局3の送受信アンテナ31の高さをH
r、第1固定局2の送受信アンテナ11の高さをH
tとする。第1固定局2と第2固定局3が設置される地面100によってH
r>H
tの場合も、H
r=H
tとなる場合も有り得る。
【0038】
ここでは、H
r<H
tを例に説明する。この場合の、第1固定局2と第2固定局3の間の直接波の経路長r
1は、送受信アンテナ11と送受信アンテナ31を結ぶ直線である。この経路長r
1は、次式で計算できる。
【0040】
一方、この場合のマルチパス遅延の主要因となる反射波の経路長r
2は、送受信アンテナ31の高さH
rを地面100を中心として地中方向に折り返した高さ(深さ)と送受信アンテナ11の高さH
tの和を底辺とし、固定局間距離dを高さとする三角形の斜面の長さ(距離)として求めることができる(式(2))。
【0042】
GI値計算部322は、直接波の経路長r
1と反射波の経路長r
2から、ガードインターバルを計算する(ステップS3)。ガードインターバル値は次式で計算できる。
【0044】
ここでt
1は直接波の到達時間、t
2は反射波の到達時間、vは光速(30×10
7m/s)である。以上、H
r<H
tの場合を例に説明したが、H
r>H
tの場合もH
r=H
tの場合も同様の考え方でガードインターバル値を計算することができる。
【0045】
このガードインターバル値の計算方法は、第1固定局2と第2固定局3の間にビル等の構造物が無い場合に有効である。特に第1固定局2と第2固定局3の間に、海峡等の海が存在する場合に好適である。
【0046】
以上説明したように本実施形態の最適化方法は、2つの固定局の間で通信する固定無線通信のマルチパス遅延を最適化する最適化方法であって、通信先の固定局(第1固定局2)と自ら(第2固定局3)の座標情報を取得し、2つの座標情報から固定局(第1固定局2と第2固定局3)の間の直接波の経路長と、固定局10の間の地面100で反射する反射波の経路長とを計算し、直接波の経路長と反射波の経路長からガードインターバル値を計算し、送信信号の符号間にガードインターバル値のガードインターバルを付加する。
【0047】
なお、第1固定局2と第2固定局3の間に海が存在する場合、反射波の経路長r
2は、潮汐によって変化する海面の影響を受ける。
図7に、潮汐と受信信号強度との関係を示す。
【0048】
図7の横軸は時間、縦方向は実線が潮汐、破線がRSSI[dBm]である。48時間の潮汐の周期的な変動に対応してRSSIが変動する様子が分かる。潮汐による海面変動によって反射波の経路長r2が変化するのでRSSIが変動する様子が分かる。
【0049】
したがって、潮汐に対応させてガードインターバル値を可変することで、符号間干渉と情報伝送効率のバランスを改善する効果が期待できる。次に、潮汐を考慮する固定局50を第3実施形態として説明する。
【0050】
〔第3実施形態〕
図8に、第3実施形態に係る固定局50の機能構成例を示す。固定局50は、潮汐計算部23を備える点で固定局10と異なる。
【0051】
潮汐計算部23は、第1固定局2と第2固定局3の間に、海が有る場合に当該海の潮汐情報を計算する。潮汐の計算方法は周知である。
【0052】
また、潮汐計算部23は、インターネット接続機能を備え、インターネット上の潮汐情報を取得するようにしても良い。例えば気象庁は、地域ごとの潮汐情報をcmの単位で公表している。
【0053】
なお、第1固定局2と第2固定局3の間に海が存在するか否かについては、外部から入力しても良いし、この場合の座標情報取得部320が第1固定局2と第2固定局3の座標情報から判定し、その判定結果(海峡等の情報)を潮汐計算部23に伝達すれば良い。つまり、潮汐計算部23は、2つの固定局(第1固定局2と第2固定局3)の間に、海が有る場合に当該海の潮汐情報を計算し、又は外部から取得する。
【0054】
以上説明した固定局50によれば、潮汐による反射経路r
2の変動を計算できるので、符号間干渉と情報伝送効率のバランスの取れた最適なガードインターバル値を生成することができる。
【0055】
以上説明したように本実施形態の固定無線システム1によれば、ガードインターバル値を固定局の外部から最適化できるので、大きなマルチパス遅延に対応することが可能である。また、長距離区間にFWAの固定局を設置する場合に、ガードインターバル値が既知のため、固定局の設置を容易にすることができる。
【0056】
なお、反射波の経路長r
2の計算方法は、受信側のアンテナが送信側のアンテナよりも低い例で説明を行ったが、その逆の場合でも同様の考え方で経路長r
2を計算することが可能である。このように本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で変形が可能である。
【0057】
上記装置における処理部をコンピュータによって実現する場合、各処理部が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記装置における処理部がコンピュータ上で実現される。
【0058】
また、このコンピュータプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記録装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としても良い。
【解決手段】2つの固定局の間で通信する固定無線通信のマルチパス遅延を最適化する固定無線通信の最適化装置10(固定局)であって、最適化装置10は、外部から入力される情報に基づいて固定局10の間に生じるマルチパス遅延の最大遅延時間よりも大きなガードインターバル値を生成するガードインターバル生成部22と、送信信号の符号間に、ガードインターバル値のガードインターバルを付加するガードインターバル付加部20と、受信信号の符号間に付加されたガートインターバルを削除するガードインターバル削除部13とを備える。