特許第6334779号(P6334779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334779
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】腸穿孔検出装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20180521BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20180521BHJP
   G01N 21/3504 20140101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61B10/00 M
   G01N27/12 B
   G01N21/3504
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-97630(P2017-97630)
(22)【出願日】2017年5月16日
(62)【分割の表示】特願2014-504064(P2014-504064)の分割
【原出願日】2012年4月9日
(65)【公開番号】特開2017-164529(P2017-164529A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2017年6月13日
(31)【優先権主張番号】61/473,592
(32)【優先日】2011年4月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513250651
【氏名又は名称】センティーレ メディカル システムズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】SENTIRE MEDICAL SYSTEMS LLC
(73)【特許権者】
【識別番号】314012250
【氏名又は名称】トニー スカリーチ
(73)【特許権者】
【識別番号】314012261
【氏名又は名称】デイビッド レオナルド
(73)【特許権者】
【識別番号】314012272
【氏名又は名称】デイビッド クラスン
(73)【特許権者】
【識別番号】314012283
【氏名又は名称】バラクリシャーナ ハリダス
(73)【特許権者】
【識別番号】314012294
【氏名又は名称】ロバート エム ガーフィールド サード
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】トニー スカリーチ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド クラスン
(72)【発明者】
【氏名】バラクリシャーナ ハリダス
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エム ガーフィールド サード
【審査官】 後藤 孝平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0000300(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/042204(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0043493(US,A1)
【文献】 特開2006−126132(JP,A)
【文献】 特開平5−52787(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0265191(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0289449(US,A1)
【文献】 米国特許第5722962(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 1/00
A61B 17/00
G01N 21/3504
G01N 27/12
B01D 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ンプル送給ユニットと、
メタンガスセンサ、水素ガスセンサ、ポンプ、プロセッサ及びディスプレイを有する感知ユニットと、
前記サンプル送給ユニット及び前記感知ユニットを接続するように構成されたコネクタとを備え
前記サンプル送給ユニットは、
外側ハウジングと、
ガス成分、液体成分及び細菌成分を有する吸引サンプルを搬送する、一部に孔を設けた内側の有孔管部と、
前記有孔管部の有孔部と外側ハウジングとの間に配置した浸潤材料を有するとともに、前記吸引サンプルの前記液体成分が前記有孔部を通って前記浸潤材料に入るように構成されたスリーブと、
孔サイズが100ミクロン〜500ミクロンの範囲にあるとともに、前記吸引サンプルから残余の前記液体成分を濾過によって除去する疎水性液体用フィルタと、
前記吸引サンプルから前記細菌成分を濾過によって除去して、前記吸引サンプルの前記ガス成分を分析のために分離するガス及び細菌用フィルタとを有する、
腸穿孔検出装置。
【請求項2】
請求項記載の腸穿孔検出装置において、前記細菌成分を濾過によって除去する前記ガス及び細菌用フィルタは、最小孔サイズが0.2ミクロンの疎水性フィルタ、又は最小孔サイズが0.01ミクロンの親水性フィルタを有する、腸穿孔検出装置。
【請求項3】
請求項記載の腸穿孔検出装置において、前記サンプル送給ユニットの前記有孔管部は、一方向バルブを有する腸穿孔検出装置。
【請求項4】
請求項記載の腸穿孔検出装置において、前記メタンガスセンサ及び前記水素ガスセンサは、接触ガスセンサ、非接触ガスセンサ及びこれらの組合せよりなるグループから選択した、腸穿孔検出装置。
【請求項5】
請求項記載の腸穿孔検出装置において、前記感知ユニットは、炭酸ガスセンサ硫化物ガスセンサ、窒素ガスセンサ、及びこれらの組合せからなるグループから選択したセンサをさらに有する、腸穿孔検出装置。
【請求項6】
請求項記載の腸穿孔検出装置において、前記メタンガスセンサは赤外線センサとし、前記水素ガスセンサは半導体センサとした、腸穿孔検出装置。
【請求項7】
請求項記載の腸穿孔検出装置において、前記メタンガスセンサ及び前記水素ガスセンサは、ガス濃度をリアルタイムで検出する、腸穿孔検出装置。
【請求項8】
請求項記載の腸穿孔検出装置において、前記コネクタは、電気的コネクタ組立体とした、腸穿孔検出装置。
【請求項9】
請求項記載の腸穿孔検出装置において、前記電気的コネクタ組立体は、
電素子を有する第1部分と、
対にしたピン導体のセットを有する第2部分と
を有
前記第1部分を前記サンプル送給ユニットに配置し、前記第2部分を前記感知ユニットに配置した、腸穿孔検出装置。
【請求項10】
請求項1記載の腸穿孔検出装置において、前記ディスプレイは、前記感知ユニットに無線通信システムによって接続されている、腸穿孔検出装置。
【請求項11】
請求項1記載の腸穿孔検出装置において、前記浸潤材料は、親水性発泡ポリウレタンを有する、腸穿孔検出装置。
【請求項12】
請求項1記載の腸穿孔検出装置において、前記浸潤材料は、セルロースファイバ材料を有する、腸穿孔検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2011年4月8日付けで出願された米国特許仮出願第61/473,5
92号の優先権を主張するものであり、その内容全体は参照によって本明細書に組込まれ
るものとする。
【0002】
本発明は、例えば、腹腔鏡手術のような外科的処置、結腸内視術のような診断処置、憩
室炎のような内科的疾患、及び外傷から生ずる腸穿孔を検出する方法及び装置に関する。
本発明は、さらに、本発明方法及び装置に使用する濾過システム及び電気的コネクタ組立
体にも関する。
【背景技術】
【0003】
腸穿孔傷害は、外科的処置、診断処置、内科的疾患、及び外傷から生ずるおそれがある
。腹腔鏡手術中に被った腸穿孔を修復するコストは、その穿孔がその手術中のものである
と同定され、また処置される場合には最小となる。腸穿孔が手術時に検出されない場合に
は、修復コスト、並びに患者の罹患率及び死亡率は、はるかに大きくなる。コスト及び罹
患率は、診断/治療介入する時間が長引くほど増大する。腹腔鏡手術中に検出されなかっ
た腸穿孔を被った患者は、その穿孔を治療するための追加的な手術を必要とする。追加的
な診断処置、入院及び外科的介入、例えば、CTスキャン、診査的な開腹又は腹腔鏡検査
術、人工肛門形成術、回腸造瘻、再吻合、抗生物質治療、入院/ICU治療、及び感染症
臨床検査も必要となる。腸穿孔治療の遅れによる弊害は、軽度の腹膜炎から敗血性ショッ
クまでの範囲にわたる。敗血症及び敗血性ショックは、低酸素症、腎不全、主要組織機能
障害、及び死を招くおそれがある。
【0004】
腹腔鏡手術は、腹部及び骨盤(下腹部)領域における種々の症状を処置するのに行われ
、以下に限定しないが、例えば、診査的生検、胆嚢切除、子宮摘出、ヘルニア修復、卵巣
嚢胞摘出、及び前立腺切除がある。さらに、腹腔鏡手術は、以前に開腹術を受けていたか
もしれない患者、例えば、以前に腹部手術を受けて既知の癒着がある患者に対して、また
より複雑な外科手術、例えば、大きな腫瘍摘出、再建外科手術、複雑な部分的腎摘出術、
炎症性病状を治療するための手術、及びすべてのロボット支援処置に対して、より一層日
常的に行われるようになってきている。
【0005】
ロボット支援腹腔鏡処置は、婦人科外科手術、泌尿器科外科手術、及び他の腹腔鏡外科
手術にも頻繁に使用されるようになりつつある。さらに、日常的に行われる腹腔鏡手術の
数及び複雑さも一層増大している。外科医における触感欠如、並びにロボット支援腹腔鏡
手術に関連する減少した可視化は、腸穿孔リスクの一因となり、また迅速検出の可能性も
低下する。
【0006】
腸穿孔傷害は腹腔鏡手術につきもののリスクである。腸穿孔傷害は、ベレシュ(Veress
)針又はトロカールを腹腔内にむやみに導入するような手術初期中、又は手術における切
開及び焼灼中に起こり得る。腸穿孔傷害は、手術用機器の光学的限界に起因して、手術中
に医療関係者によって容易に可視化されない。手術中に腸は移動するため、傷害領域は外
科医の視野から外れる位置にくる可能性がある。傷害発生時に腸穿孔を可視化する困難性
によって、手術中に障害を検出できない機会が増え、上述した健康に対する悪影響及び治
療コストの増大に至る。
【0007】
手術による腸穿孔の他に、患者は、CTスキャン及び臨床検査による診断が困難な腸穿
孔を引き起こす外傷又は憩室破裂を被ることがあり得る。診断は、偽陰性の結果となり得
るCTスキャンに頼っており、また臨床的発見は感染過程発現後24〜48時間経過して
からとなることがよくある。腸穿孔は外科的救急疾患である。診断及び処置までの時間は
罹患率/死亡率及び患者の転帰に直接相関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
腸穿孔を検出することができる技術に対する必要性が依然として存在する。最適には、
このような検出は傷害発生時に近い、例えば、腹腔鏡手術中に行われるべきである。この
必要性及び他の必要性は本発明によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、腸穿孔傷害を検出する方法及び装置に関する。このような方法及び装置は、
通常腸内に存在する少なくとも1つのガスに関する外気濃度、又は予め記録した濃度との
比較で、腹腔又は骨盤腔内の濃度上昇を検出する。上述したように、腸穿孔検出装置は、
腸穿孔検出システムとも称され、吸引濾過手段を有するサンプル送給ユニットと、ガス検
出手段、ポンプ、プロセッサ及びディスプレイを有する感知ユニットと、例えば、電気機
械的コネクタである、サンプル送給ユニット及び感知ユニットをリンクするコネクタとを
備える。
【0010】
吸引濾過手段は、液体を吸引サンプルから分離する第1フィルタと、ガス及び細菌(微生物)を吸引サンプルから分離する第2フィルタを有する構成とする。第1フィルタは、孔サイズが約100ミクロン〜約500ミクロンの範囲にある疎水性多孔質薄膜フィルタとする。第2フィルタは、最小孔サイズが0.2ミクロンの疎水性フィルタ、又は最小孔サイズが0.01ミクロンの親水性フィルタとする。吸引濾過手段は、外側ハウジングと、一部に孔を設けた内側の有孔管部と、有孔管部と外側ハウジングとの間に配置した吸収浸潤材料を有するスリーブと、上述のフィルタとを有する。吸収浸潤材料は、毛細管浸潤特性を有する親水性発泡ポリウレタン又はセルロースファイバ材料とすることができる。
【0011】
ガス検出手段は1個又はそれ以上のガスセンサとすることができる。ユーザー・インタ
ラクティブなソフトウェアを設けてガスセンサを制御する。当業者には既知であり、所望
のガスを検出できる任意のセンサを、本発明の実施する際に使用することができる。例え
ば、ガスセンサは、接触ガスセンサ、非接触ガスセンサ及びこれらの組合せとすることが
できる。検出できるガスは、限定しないが、例えば、水素、メタン、二酸化炭素、硫化物
、及び窒素である。このようにして、本発明装置は、炭酸ガスセンサ、メタンガスセンサ
、水素ガスセンサ、硫化物ガスセンサ、及び/又は窒素ガスセンサを有することができる
。炭酸ガスセンサ及びメタンガスセンサは赤外線センサとし、水素ガスセンサは半導体セ
ンサとすることができる。ガス検出手段は、ガス濃度をリアルタイムで検出するよう構成
する。
【0012】
上述したように、腸穿孔傷害を検出する方法は、患者の腹腔又は骨盤腔から吸引サンプ
ルを採取するステップと、吸引サンプルを濾過して吸引サンプルのガス成分を液体成分(
もし存在するとして)及び細菌成分(もし存在するとして)から分離するステップと、ガ
ス検出手段を使用して前記ガス成分を分析して、腹腔又は骨盤腔内に含まれるガス組成を
決定するステップと、を有し、通常は腸内に存在し、腹腔内又は骨盤腔内には通常存在し
ないガスの上昇したレベルが腸穿孔傷害の存在を示すものとする。腸穿孔傷害を検出する
方法は、本明細書に記載の装置を使用して実施することができる。
【0013】
さらに、本明細書は電気的コネクタ組立体を記載する。このコネクタはサンプル送給ユ
ニットと、腸穿孔検出装置の感知ユニットとを接続する。コネクタは、インサート成形し
た、又は打抜き及び接合した片持ち導電素子を有する第1部分と、対にしたピン導体のセ
ットを有する第2部分とを備える。コネクタは、射出成形したねじ付きカプラーとし、簡
単な標準的ルエル接続部に結合できるようにし、主コネクタにインサート成形した金属製
導電細条を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本明細書に記載した腸穿孔検出システムの構成を示す。
図1B】腸穿孔検出システムの他の構成を示す。
図2】本明細書に記載した方法及び装置に使用する例示的な手術室レイアウトである。
図3】本明細書に記載した腸穿孔検出方法の手順を示す線図的説明図である。
図4】ガスサンプルにおける腸ガス濃度を決定する計算表である。
図5】本明細書に記載した腸穿孔検出システムにおける1段式形態の構成を示す。
図6】本明細書に記載した腸穿孔検出システムにおける他の1段式形態の構成を示す。
図7】本明細書に記載した腸穿孔検出システムにおける2段式形態の構成を示す。
図8】本明細書に記載した腸穿孔検出システムにおける他の2段式形態の構成を示す。
図9】本明細書に記載したフィルタ−管構成部(チューブ)システムの分解斜視図である。
図10A】本明細書に記載したフィルタ組立体/フィルタユニットの斜視図である。
図10B】本明細書に記載したフィルタ組立体/フィルタユニットの分解斜視図である。
図10C】本明細書に記載したフィルタ組立体/フィルタユニットの側面図である。
図10D】本明細書に記載したフィルタ組立体/フィルタユニットの断面図である。
図11A】本明細書に記載した他のフィルタ組立体/フィルタユニットの斜視図である。
図11B】本明細書に記載した他のフィルタ組立体/フィルタユニットの分解斜視図である。
図11C】本明細書に記載した他のフィルタ組立体/フィルタユニットの側面図である。
図11D】本明細書に記載した他のフィルタ組立体/フィルタユニットの断面図である。
図12A】本明細書に記載した他のフィルタ組立体/フィルタユニットの斜視図である。
図12B】本明細書に記載した他のフィルタ組立体/フィルタユニットの分解斜視図である。
図12C】本明細書に記載した他のフィルタ組立体/フィルタユニットの側面図である。
図12D】本明細書に記載した他のフィルタ組立体/フィルタユニットの断面図である。
図13A】本明細書に記載した他のフィルタ組立体/フィルタユニットの斜視図である。
図13B】本明細書に記載した他のフィルタ組立体/フィルタユニットの分解斜視図である。
図13C】本明細書に記載した他のフィルタ組立体/フィルタユニットの側面図である。
図13D】本明細書に記載した他のフィルタ組立体/フィルタユニットの断面図である。
図14】本明細書に記載した電気的コネクタの分解図である。
図15】本明細書に記載した電気的コネクタの線図的説明図である。
図16A】本明細書に記載した感知モジュールの斜視図である。
図16B】本明細書に記載した感知モジュールの斜視図である。
図17】本明細書に記載した感知モジュールを示す。
図18】18Aは、本明細書に記載したセンサ構成の斜視図である。18Bは、本明細書に記載したセンサ構成の分解図である。
図19A】本明細書に記載した感知チャンバ組立体の斜視図である。
図19B】本明細書に記載した感知チャンバ組立体の分解斜視図である。
図19C】本明細書に記載した感知チャンバ組立体の平面図である。
図19D】本明細書に記載した感知チャンバ組立体の断面図である。
図19E】本明細書に記載した感知チャンバ組立体の断面図である。
図20】20Aは、本明細書に記載した他の感知モジュールの斜視図である。20Bは、本明細書に記載した他の感知モジュールの斜視図である。
図21】本明細書に記載した他の感知モジュールを示す。
図22】22Aは、本明細書に記載した他のセンサ構成の斜視図である。22Bは、本明細書に記載した他のセンサ構成の分解図である。
図23A】本明細書に記載した他の感知チャンバ組立体の斜視図である。
図23B】本明細書に記載した他の感知チャンバ組立体の分解斜視図である。
図23C】本明細書に記載した他の感知チャンバ組立体の平面図である。
図23D】本明細書に記載した他の感知チャンバ組立体の断面図である。
図23E】本明細書に記載した他の感知チャンバ組立体の断面図である。
図24】センサ選択結果の表である。
図25】本明細書に記載した装置のユーザー・インタラクション(相互作用)の説明図である。
図26】本明細書に記載した装置のユーザー・インタラクション(相互作用)の論理フロー図である。
図27】本明細書に記載した装置のユーザー・インタラクション(相互作用)の他の論理フロー図である。
図28A】本明細書に記載した装置のアルゴリズムフロー図である。
図28B】本明細書に記載した装置のアルゴリズムフロー図である。
図29】本明細書に記載したバイパスフィルタの写真である。
図30】本明細書に記載したバイパスフィルタの写真である。
図31】本明細書に記載したバイパスフィルタのウィッキング(浸潤)機能を示す写真である。
図32】人の腸管の長さにわたる種々のガス濃度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に記載した発明の方法及び装置は、腸内に存在するが、腹腔又は骨盤腔内には
通常存在しない濃度のガスの存在を検出及び/又は測定することができる。これらガスを
検出しまた測定することによって、本発明方法及び装置を使用して腸穿孔の存在及び位置
を診断する。
【0016】
本発明装置は腹腔又は骨盤腔にアクセスすることができ、このアクセスは、例えば、腔
内に配置した状態で本発明装置に接続する医療デバイス、例えば、ルエルロックによって
本発明装置に接続したベレシュ針又はトロカールによって行う。ガス検出装置は腹部から
空気の少量サンプルを徐々に吸引することができる。本発明装置は、メタン、水素、二酸
化炭素、硫化物、及び細菌(バクテリア)代謝によって放出される他の発酵可能なガス、
例えば窒素及び硫化物アセテートのうち1つ又はそれ以上を測定する。これらガスは図3
2に示すように小腸及び大腸の各区域に異なった濃度で存在する。これら腸内ガスは腹腔
内で発見されるとき、本発明装置は医師に腸漏れ又は穿孔があり得ると警告する。本発明
装置は、比較の目的で外部環境ガス濃度に基づいて較正し、例えば、腹腔内の上昇したガ
ス濃度が手術室における外気中微量ガスの結果であるか否かを同定することができるよう
にする。本発明装置は、さらに、例えば、腹腔鏡手術の処置全体にわたり経時的な腹腔内
ガス濃度変化を検出するのにも使用することができる。
【0017】
本発明装置は、腹腔内に存在する異なったタイプのガスの濃度も分析し、異常に高いガ
ス濃度の存在及びそのガス濃度が通常存在し、また腹腔に漏れ逃げる可能性が最もありそ
うな腸部位を同定できるようにする。本発明装置は、腸内ガスの相対濃度に基づいて穿孔
された最も可能性がありそうな腸部位を同定するプロセッサを設ける、又は医師が最も可
能性がありそうな傷害領域に直接注意を向けることができる参照チャートを設けることが
できる。
【0018】
本発明装置による腸穿孔検出装置は、サンプル送給ユニット及び感知ユニットを有する
ことができる。サンプル送給ユニット及び感知ユニットは、コネクタ、例えば電気機械的
コネクタを介してリンクすることができる。
【0019】
サンプル送給ユニットは、濾過手段、例えば、腹腔及び骨盤腔内に含まれる吸引物を濾
過する手段を設けることができる。腹腔は乾燥した空間であり、サンプル採取した吸引物
は一般的には主にガスで構成される。しかし、吸引物は、液体の残量を含み、また細菌(
微生物)も含むおそれがある。濾過手段は、ガス感知手段による分析を行う前に、吸引物
のガス成分から吸引物のあらゆる液体及び細菌成分を分離するために設ける。吸引物の液
体成分の分離は、ガス検出手段に対するタメージ又は阻害を防止するために必要であり、
とくに、ガス検出手段がガスセンサであるときには必要である。吸引物の細菌成分の分離
は、サンプル送給ユニットに含まれる細菌が感知ユニット及びガス検出手段を汚染するの
を防止する上で必要である。感知ユニット及びガス検出手段の汚染を防止することによっ
て、本発明装置のこれら部分は、他の患者及び他の処置に再使用することができる。
【0020】
濾過手段は、少なくとも1個のフィルタ、例えば、1個、2個、3個又はそれ以上のフ
ィルタを備えた濾過システムとすることができる。濾過システムのフィルタは、流体分離
用の、すなわち吸引物内に存在するいかなる液体成分をも濾過する粗目の疎水性フィルタ
と、粒子及び、他の汚染物、例えば細菌を吸引物から除去するための微細フィルタ、例え
ばガスフィルタとすることができる。サンプル送給ユニットは予め殺菌し、外科的処置中
無菌領域に配置することができる。サンプル送給ユニットは使い捨てとすることができる
【0021】
感知ユニットはガス検出手段を有することができる。感知手段は手術室における非無菌
領域に配置し、また再使用できる。
【0022】
ガス検出手段は、例えば、少なくとも1個のガスセンサとすることができる。検出すべ
きガスのタイプに応じて、ガス検出手段は、1個より多い数のセンサを有する構成とし、
例えば、二酸化炭素、メタン、水素、硫化物、及び/又は窒素のそれぞれを検出する個別
ガスセンサを有する構成とすることができる。センサは、これらガスを順次に又は同時に
検出する構成とする。センサは、チャンバ内に収容できるセンサ回路板上に配置すること
ができる。ガス検出手段は、サンプル送給ユニットに配置し、ガス検出結果を、有線又は
無線の通信インタフェースを介して個別のディスプレイユニットに送信することができる
。ユニットには、さらに、音声アラームを設け、特定ガスの濃度が閾値濃度を超えるとき
を示すようプログラムすることができる。
【0023】
感知ユニットは、さらに、ガスサンプルを感知ユニットから送給することに関連する素子、例えば、ガスサンプルをコネクタからガス検出手段に送給し、また被検サンプルを一掃する管構成部(チューブ)と、ガスサンプルを廃棄する排気又はベントシステムと、サンプル送給ユニット及び感知ユニットに吸引サンプルを引込むポンプとを有することができる。感知ユニットは、さらに、ガス検出結果を出力するプロセッサ及びディスプレイユニットを有することができる。
【0024】
サンプル送給ユニットと感知ユニットとの間のコネクタは電気機械的コネクタとするこ
とができる。この電気機械的コネクタは、サンプル送給ユニットと感知ユニットとの間の
接続を示す電気的スイッチを有することができる。若干の実施形態において、コネクタは
、コネクタの第1部分、例えば、雄型部分をサンプル送給ユニットの部分として配置し、
コネクタの第2部分、例えば、雌型部分を感知ユニットの部分として配置することができ
る。代案として、コネクタはサンプル送給ユニット内に完全に配置することができる。
【0025】
本発明による検出システムは、使い易さを支援するよう設計した数個の特徴を活用する
。例えば、感知ユニット、感知ユニットの接続機構及び手術室内での位置の設計は、手術
者が使用し易いよう構成する。例えば、装置は、手術室の適正位置の壁におけるバッテリ
充電ドックに配置し、使用準備時にドッキングし、無菌域内における引継ぎ部分としての
管構成部(チューブ)コネクタに接続できるようにする。装置の他の位置は、非無菌トレ
イ上に準備した携帯ユニットとし、無菌コネクタ管構成部等をパッケージ内に封入する。
本発明装置は、送気及びモニタリングスタック上に配置することができる。
【0026】
ユーザー・インタフェースの簡潔性は、使用者に対して最少数のステップ、例えば2又
は3個のステップでの利用シーケンスを可能にするシンプルなボタンシステムを提供する
デザインによって得られる。3ボタンシステムは装置を使用する簡単な方法を提供し、例
えば、ボタンA−オン/オフ、ボタンB−較正(外気におけるベースライン較正してベー
スラインに対するサンプルを測定することを意味する)、及びボタンC−開始/停止(測
定のためガスサンプルを引込むようポンプをオン状態にすることを意味する)を設ける。
感知ユニットにおけるポンプを制御するソフトウェアアルゴリズムは、サンプルガスを十
分引込んだ後にポンプを自動的に停止させることができ、また手動停止のオプションを含
むように構成することができる。
【0027】
本発明装置は、さらに、再使用部分、例えば、患者毎及び処置毎に再使用可能な感知ユ
ニット又はディスプレイユニットを有する設計にすることもできる。装置は管構成部によ
るガス状及び液体状の内容物搬送も含むため、再使用は、このシステムが対処する特別に
困難な課題となる。
【0028】
装置内無菌境界(すなわち、流路)管理は重要であり、フィルタシステムとも称される
2段式濾過システムを濾過手段として、シンプルな送給ユニットに組込むことによって達
成することができる。濾過システムは、装置を末端部におけるベレシュ針又はトロカール
に接続する管構成部に組入れることができ、ベレシュ針又はトロカールは患者の腹腔又は
骨盤腔に挿入する。2段式濾過ユニットは、細菌フィルタと、液体バイパス吸収素子に関
連するガスフィルタシステムとを有し、液体バイパス吸収素子は、腹腔内汚染物(例えば
、液体及び細菌)の進入がガス検出手段、例えばガスセンサに接触するのを信頼性高く防
止することができる。この濾過システムによれば、センサ及び感知ユニットを汚染する可
能性を大幅に減少又は排除することができる。3段式ガスフィルタをセンサ内に組込んで
、較正サイクル中、すなわち送気される患者内の外気二酸化炭素を検出する装置のサイク
ル中に使用できるようにする。
【0029】
装置は、例えば、約50cc〜約500ccの吸引物を検出できるに必要な吸引容積を許容するよう設計する。吸引物はガス(例えば、穿孔が起こった場合の腸内ガス及びヒステストでの外気侵入による外気ガス)の他に液体残量も含んでいるため、システムは、2段式液体バイパスフィルタを介して、またポンプがフィルタの液体破過圧力を超えないようポンプを制御するソフトウェアアルゴリズムに関連して、液体進入を排除するよう設計する。このようにして、装置は、液体相と気体相とに分離する吸引物の濾過を行い、またフィルタ自体の液体破過圧力を超えることなく、気体相を感知ユニットに送給する十分な差圧を維持することができる。
【0030】
システムは、上述の閾値レベル(外気濃度)を超えるサンプル内の微量腸内ガスを正確
に検出するよう設計することができる。腸内ガス濃度は、CO に関しては50,00
0〜290,000PPM、H に関しては600〜470,000PPM、及びCH
に関しては0〜260,000PPMである。これらガスの外気値は、それぞれ36
0PPM、0.5PPM及び2PPMである。各ガス種類に対して本発明装置におけるガ
ス検出手段は、H に関して外気濃度よりも約1PPMのガス濃度上昇、CH に関し
て10PPM、CO に関して100PPMのガス濃度上昇を、感知ユニットでそれぞ
れ検出することができる。種々のサンプル量に対するガス濃度を図4に示す。
【0031】
以下に、本発明による腸穿孔検出装置を図面につき説明する。
【0032】
図1A及び1Bはそれぞれ本発明腸穿孔検出装置10の分解斜視図である。概して、本
発明装置は、サンプル送給ユニット20及び感知ユニット30を有する。図1A及び1B
に示すように、サンプル送給ユニット20は、ルエル(ルアー)21と、吸引物を濾過す
る手段、すなわち濾過ユニット22と、管構成部23と、コネクタ40の区分域、例えば
雄型部分41とを有することができる。ルエルは、腹腔又は骨盤腔にアクセスするための
、また吸引サンプルを採取してサンプル送給ユニットから感知ユニット30に通過させる
ための外科的デバイス、例えばベレシュ針又はトロカール(図示せず)に接続する。ルエ
ルには、さらに、一方向バルブ24を設け、サンプル採取した吸引物が腹腔又は骨盤腔に
逆戻りするのを防止することができる。
【0033】
図1A及び1Bに示すように、感知ユニット30は、頂部ハウジングユニット310A及び底部ハウジングユニット310Bとして示すハウジングユニットと、コネクタ40の区分域、例えば雌型部分42と、ガス検出手段と、ポンプ32と、プロセッサ50と、サンプルを感知ユニットに送給するチューブ37A(図1A及び1B参照)及びコネクタ37B(図1B参照)と、サンプル採取したガスを通気するための排気/圧力逃しバルブ38と、バッテリ39と、ディスプレイユニット36とを有する。図1A及び1Bに示すように、ガス検出手段は、感知チャンバ35内に収容した少なくとも1個のガスセンサ34を有するセンサ回路板33とすることができる。感知チャンバは、ガスサンプルをチャンバに対して搬入及び搬出するためのポートを有することができる。チャンバには、さらに、圧力逃しバルブを設けることができる。ポンプ32を設け、腹腔又は骨盤腔からの吸引サンプルをサンプル送給ユニット経由で感知ユニットに引き込ませる。感知ユニットにおけるチューブ37A及びコネクタ37Bの個数、位置、形状及び長さは、とくに限定せず、当業者が理解できるよう調整して、ガスサンプルを感知ユニット30及び感知チャンバ35にサンプルを搬送できるようにする。
【0034】
図1A及び1Bは、それぞれ感知チャンバのための代替的実施形態を示す。図1Aに示すように、感知ユニットは単一感知チャンバを有する。単一感知チャンバ形態は、以下に図16〜19につきより詳細に説明する。図1Bに示すように、感知ユニットは2個の感知チャンバを有し、各感知チャンバは、異なるタイプのガスセンサを収容することができる。2感知チャンバ形態は、下に図20〜23につきより詳細に説明する。図1A及び1Bは、サンプル送給ユニット及び感知ユニットの接続のための、代替的位置を示す。
【0035】
本発明による腸穿孔検出システムは、1段式ユニット、例えばサンプル送給ユニット及び感知ユニットを物理的に接続したシステムとして構成することができる。代案として、システムは、2段式ユニット、例えばサンプル送給ユニット及び感知ユニットを個別のスタンドアローンユニットとする、又はサンプル送給ユニット及び感知ユニットの部分を別個にするシステムとして構成することができる。1段式及び2段式ユニットのシステムアーキテクチャを、図5〜8につき説明する。
【0036】
図5は、本発明による1段式ユニット式腸穿孔検出システムのシステムアーキテクチャを示す。使い捨てサンプル送給ユニットは、針接続部/針ルエルに一方向バルブを有する管構成部と、流体分離のための粗目疎水性フィルタと、粒子、細菌、及び他汚染物を除去する微細ガスフィルタとを有する。サンプル送給ユニットは、さらに、感知ユニットに接続するための接続部も有し、この接続部にはコネクタが適正に感知ユニットに組付けられた(例えば、挿通された)場合にトリガされるスイッチとして作用する導電インサートを組込む。図5に示す再使用感知ユニットは、直列にした3個のガスセンサ(例えば、各個はCO用、CH用及びH用とする)、ポンプ、バルブ、マザーボード、組込みソフトウェア、画面ディスプレイ、スイッチ/ユーザー制御ボタンを有し、これらは必要に応じて使用のために単一ハウジングに組入れる。感知ユニットに含めるセンサの個数は、検出に要するガス種類数に基づいて調整することができる。この用途に特定されるセンサは、濃度測定ができるには直接相互作用が必要であることに基づいて、ガス状種に接触させることができる。接触をベースとするセンサは、各センサ(それぞれ異ならせることができる)を駆動し、感知し、また信号調整するために、より洗練されたソフトウェアアルゴリズムが必要となる。このシステムアーキテクチャによれば、ガスセンサによるリアルタイムの間欠的又は連続的なサンプル分析及び同時検出をもたらす。
【0037】
図6は、本発明による1段式ユニット式腸穿孔検出システムの代替的システムアーキテクチャを示す。図6に示すシステムアーキテクチャは図5に示すのと類似する。図6に示すアーキテクチャは、非接触技術、例えば赤外線(光学的)手法を利用してガス濃度を感知するよう設計する。このシステムアーキテクチャは、バルブを含むサンプル送給ユニット、管構成部、及び電気機械的コネクタよりなる類似のモジュール式階層、並びにガス感知するすべてのハードウェア及びソフトウェアを含む感知ユニットを組込む。非接触センサは、感知及び信号調整のためのソフトウェアアルゴリズムに関してそれほどの洗練さは不要である。このシステムアーキテクチャによれば、ガスサンプルのリアルタイム感知及び逐次的作動を可能にする。
【0038】
図7は、2段式腸穿孔検出システム用のシステムアーキテクチャを示す。2段式システムは、厳密なセッティングにおいて望まれ、この場合、腸内ガス漏れリスクのリアルタイム追跡は不能又は不要である。これらセッティングでは、図7に示すシステムアーキテクチャを使用し、図5及び6のシステムアーキテクチャに示すのと同一の一般原理及び設計仕様を使用する。図7に示すシステムアーキテクチャにおいて、第1段は、貯蔵用の収集バッグにガスを収集する携帯型ポンプとともにサンプル送給ユニットを含む。フィルタ処理したサンプルガスは、感知及び結果表示のためにオフライン処理される。例えば、サンプルはサンプル送給ユニットから収集バッグに送給され、つぎにこの収集バッグをサンプル送給ユニットから切離し、サンプルを感知ユニットに搬送するために感知ユニットに取付ける。このシステムがサンプルを取得して検査するに要する時間は1段式ユニットよりも長くなる。このアーキテクチャは、例えば、リアルタイムの結果は不要又は望まれない場合のセッティングに有用である。このことはサンプル送給ユニット及び感知ユニットにおけるガス検出手段双方に関してシステムコストを減少させることができる。
【0039】
図8は2段式ユニットの他のシステムアーキテクチャを示す。このシステムアーキテクチャは、管構成部が無菌バリヤを越えることの問題に対処するものであり、この対処はサンプル送給ユニットから感知ユニットに対する管接続部を排除することによって行う。この設計においては、サンプル送給ユニットはガス検出手段及び関連のコンポーネント(例えば、ポンプ、管構成部、排気部)を有し、サンプル感知ユニット(使い捨て)とディスプレイとの間の通信は、個別のユニットとして設け、この個別ユニットを複合サンプル送給−感知ユニットに対して無線通信インタフェースを介して接続する。検査結果は無線通信インタフェースを介して送信し、個別のディスプレイユニットで処理及び表示する。
【0040】
上述したこれらシステムアーキテクチャは種々の要件を考慮し、考慮すべき要件として
は、以下に限定しないが、例えば無菌バリヤ、優先的なガス搬送、感知素子を体液及び他
の汚染物から遮蔽すること、ポンプ作動要件、使用、取扱いを容易にし、偽陽性及び偽陰
性を回避する信頼性及び精度向上に対処するためのソフトウェア制御アルゴリズム、並び
に汚染してしまった適切なモジュールの使い捨て可能性がある。当業者であれば、これら
要因に基づいてこれら種々のシステムアーキテクチャを認識するであろう。
【0041】
流体が感知ユニット内に進入しないことを確実にする特徴の他に、フィルタ管構造部に
は電気機械的コネクタも組込む。コネクタは、感知ユニットに対する機械的連結部を有し
、この機械的連結部は適正に接続したときセンサ制御回路を閉成する電気的スイッチとし
ても機能するものとする。これは、感知ユニットはフィルタが所定状態にない場合には動
作しない、すなわち、感知ユニットはフィルタを接続しない限り機能しないことを確実に
するよう設計する。
【0042】
サンプル移送ユニットは、濾過手段、サンプルをユニットに通過搬送する管構成部、及
び吸引サンプルを採取するデバイスに接続し得るルエル、例えばトロカール又はベレシュ
針を有する。濾過手段は、少なくとも1個のフィルタを有する濾過システムとすることが
できる。濾過手段の目的は、液体と、微生物と、腹腔及び骨盤腔内における吸引物のガス
成分とを分離することである。管構成部は、外科手術での使用に適合可能で、材料及びサ
イズには特別に限定しないものとすることができる。
【0043】
本発明システムの濾過手段の主な機能は、吸引物のいかなる液相成分もできる限りルエ
ル−ベレシュ針/トロカール接続部に近接するのを排除することである。このことは、少
なくとも1個のフィルタを濾過手段として使用することによって達成することができる。
フィルタを濾過手段として使用するとき、フィルタの末端側でガスを溜まらせることにな
り得るフィルタでの液体の詰まりを回避し、また汚染物が感知ユニットに侵入するのを防
止するのも必要である。
【0044】
腸内ガスを管構成部の長さの大部分にわたり搬送する濾過要件は幾つかの難問をかかえ
ている。これら難問としては、液体がガス感知ユニットに進入するのを完全に排除するこ
と、ガスフィルタが液体で詰まり、ガスが針近傍に溜まるのを回避すること、及び細菌性
汚染物が感知ユニットに進入しないのを確実にすることである。細菌性汚染物の感知ユニ
ットへの進入を防止することは、感知ユニットの再使用可能性を確保するのに必要である
【0045】
フィルタ性能の特性は種々のタイプのパラメータによって測定する。水破過圧力(Wate
r Breakthrough Pressure)又は浸水圧力(WEP:Water Entry Pressure)は、水を疎
水性フィルタに押し通すのに必要な圧力測定値であり、フィルタ無欠度の測定値である。
フィルタ泡立ちポイントは、フィルタの最大孔から液体を排出するのに必要な圧力を測定
するポイントである。流動率は、所定圧力でのフィルタを通過する液体又は空気の流れを
測定する。ハウジング無欠度は、ハウジングが破裂する前に耐える圧力である。濾過効率
は、「投入物(challenge)」を「濾液」と比較することによるフィルタ性能の測定値で
ある。用途に合わせて適正なフィルタを選択することは、濾過すべき媒体の組成物、所望
濾液、圧力低下、及び流動率要件によって決定する。
【0046】
さらに、無菌領域内で使用するよう設計しなければならない本発明システムに対して滅
菌方法も考慮する。フィルタユニットの材料は、ガンマ線滅菌及びエチレンオキシド滅菌
双方に使用できるものとする。
【0047】
上述の目標に基づいて、2段濾過手法を選択することができる。第1段は、液体濾過用
の第1フィルタ、すなわち、吸引物から液相を分離することを含む。第1フィルタは疎水
性多孔質薄膜フィルタとし、100〜500ミクロンの範囲にわたる孔サイズとすること
ができる。このようなフィルタは、パルメディカル(Pall Medical:登録商標)、GVS
(登録商標)、PSI(登録商標)、ミリポア(Millipore:登録商標)として製造業者か
ら市販されて入手可能である。第2段は、ガス及び細菌濾過用の第2フィルタを含み、こ
の第2フィルタは、汚染物のサイズに基づいて疎水性又は親水性のフィルタとすることが
できる。親水性フィルタに関しては、最小孔サイズは0.01ミクロンとすることができ
る。疎水性フィルタに関しては最小孔サイズは0.2ミクロンとすることができる。
【0048】
これら2つのタイプが存在することは、すべての潜在的詰まりのリスクを排除しない。
管径は極めて小さいので、第1フィルタでの液体吸引物の詰まり及び溜まりを生ずる潜在
的リスクはあり、この結果、フィルタの上流側にガスが溜まることとなる。この状況にお
いて、管ルーメンにガスを搬送し続ける唯一の方法は、ポンプ圧力を上昇させ、液体用薄
膜フィルタの液体破過圧力を越えるようにすることであり、この場合、液体が感知ユニッ
トに達するリスクを引き起こす。代替的手法は、洗練されたポンプ制御(例えば、自動車
におけるアンチロック・ブレーキング・システムに類似の周期的オン/オフ技術)を採用
することであり、アルゴリズムはLBP圧力カットオフに基づいて開発し、液体バリヤの
破壊を生じ、又はガス搬送に十分な溜まった液体の撹拌を生ずるようにすることができる
【0049】
上述の問題を回避するため、サンプル送給ユニットには、直列接続した一方向バルブを
含むフィルタ−管構成部システム(管の内径は、2mmから最大で12mmの範囲内とす
る)を設ける。図9はサンプル送給ユニットの分解斜視図であり、このサンプル送給ユニ
ットは、外科用デバイス(例えば、ベレシュ針又はトロカール)に接続するためのルエル
21、一方向バルブ24、一方の端部で一方向バルブに接続し、他方の端部で管構成部2
3に接続し得る濾過ユニット22、及び感知ユニットに接続するためのコネクタの雄型部
分41を含む。
【0050】
図10に示す濾過ユニット22は、剛性のある外側ケース/ハウジング220、吸引物
を搬送する有孔管部分223、内側の有孔管部分と外側ケーシングとの間における吸収浸
潤性材料スリーブ224、第1フィルタ221であって、例えば大きい孔(100〜50
0ミクロン)を有する疎水性の液体用フィルタ、及び第1フィルタの下流側における第2
フィルタ222であって、例えば0.2ミクロンの疎水性又は親水性のガス/微生物用フ
ィルタを有することができる。濾過ユニットは、吸引サンプルが通過するルーメンを有す
る。濾過ユニットは、さらに、液体用フィルタ221とガスフィルタ222との間に配置
したスペーサ226も有する。スペーサ226にはフィルタを位置決めするための窪み部
分を設ける。濾過ユニットはハウジングキャップ227を有し、このハウジングキャップ
227は、フィルタを位置決めするための窪みと、管構成部に接続し得る端部とを有する
図10に示すように有孔管部分223の一部はハウジング220から突出させ、一方向
バルブに接続できるようにする。
【0051】
有孔管部分223は肩部228を有するものとすることができる。肩部は有孔管部分に
一体に形成し、また同一材料で形成する。代案として、肩部は有孔管部分の端部に配置す
る別個のコンポーネントとすることができる。肩部にはフィルタを位置決めするための窪
み領域を設けることができる。
【0052】
図10A及び10Bは、それぞれ濾過ユニットの斜視図及び分解斜視図を示す。図10
Cは他の側面図であり、図10D図10CのA−A線上の断面図を示す。図10Dは中
心有孔管部分の組立体を描写している(周縁に沿って、また軸線方向に設けた多くの孔、
吸収スリーブ、加わる真空圧力に耐えて座屈しないようにする剛性外側ハウジング、液体
用及びガス用それぞれの2段フィルタディスクとともに示す)。図10Dに示すように、
濾過ユニットの外側部分は、ハウジング220、肩部228、スペーサ226及びハウジ
ングキャップ227によって形成し、これらを気密に封止することができる。
【0053】
この組立体全体は、液体が溜まることによる詰まりを防止する液体バイパス吸収機構を
備え、この機構は内側の有効管部分により液体が吸収スリーブに浸潤することに特徴があ
る。種々の吸収材料、例えば、セルロースファイバマット、親水性発泡ウレタンを使用し
て浸潤機能を得ることができる。この浸潤機能によれば、液体はガス流路から逸脱移動し
、ガス種搬送用にルーメンを開けた状態に維持する。感知ユニットに接続する管構成部の
端部には、感知回路を閉成するハウジングにおける雌型整合コネクタに係合する導電素子
を含む機械的コネクタを設ける。
【0054】
代替的フィルタハウジング設計は、濾過組立体(図11参照)内に液体用フィルタ22
1のみを有し、ガス用フィルタは感知デバイス(図示せず)の接続箇所に配置する。この
形態によれば、ガス種を搬送するのに使用する管構成部の長さ(約2〜3m)から生ずる
差圧を排除又は減少することによって、ポンプにおける駆動圧力をより低くすることがで
きる。この特徴によれば、感知ユニットに対してより小さいまた圧力許容量のより低いポ
ンプを選択することができる。図11A及び11Bは、それぞれ濾過システムにおける斜
視図及び分解斜視図を示す。図11Cは他の側面図、図11D図11CのA−A線上の
断面図を示す。
【0055】
図11に示す濾過ユニット22は、剛性のある外側ケース/ハウジング220、吸引物
を搬送する有孔管部分223、内側の有孔管部分と外側ケーシングとの間における吸収浸
潤性材料スリーブ224、フィルタ221であって、例えば大きい孔(100〜500ミ
クロン)を有する疎水性の液体用フィルタを有することができる。濾過ユニットは、吸引
サンプルが通過するルーメンを有する。濾過ユニットはハウジングキャップ227を有し
、このハウジングキャップ227は、フィルタを位置決めするための窪みと、管構成部に
接続し得る端部とを有する。有孔管部分223の一部はハウジング220から突出させ、
一方向バルブに接続できるようにする。
【0056】
有孔管部分223は肩部228を有するものとすることができる。肩部は有孔管部分に
一体に形成し、また同一材料で形成する。代案として、肩部は有孔管部分の端部に配置す
る別個のコンポーネントとすることができる。肩部にはフィルタを位置決めするための窪
み領域を設けることができる。
【0057】
図11Dに示すように、濾過ユニットの外側部分は、ハウジング220、肩部228、
及びハウジングキャップ227によって形成し、これらを気密に封止することができる。
【0058】
使い捨てフィルタ−管構成部システム22の他の形態は、図12に示すように、検査目
的により多量の吸引物が望まれるシナリオに対処するのに提供することができる。この実
施形態において、薄い壁を有する吸収スリーブ224及びハウジング220を管部分22
3及び搬送管の長さ全体にわたり延在させ、所望の大量の吸引物を濾過する所望多孔容量
にすることができる。図12に示す濾過ユニットは1個のフィルタ221を有する。しか
し、このフィルタ組立体設計は、多重フィルタ、例えば液体用及びガス用の薄膜フィルタ
を感知デバイスに近接する端部に組込むこともできる。濾過ユニットは、ハウジングユニ
ット220、ハウジングキャップ227及びスペーサを設けることができる。有孔管部分
223の一部はハウジング220から突出させ、一方向バルブに接続できるようにする。
【0059】
図12A及び12Bは、それぞれ濾過ユニットの斜視図及び分解斜視図を示す。図12
Cは他の側面図であり、図12D図12CのA−A線上の断面図を示す。
【0060】
フィルタ組立体22の他の形態を図13につき説明する。このフィルタ組立体は、射出
成形した剛性ハウジング220を有し、第1フィルタ221、例えば液体用薄膜フィルタ
(100〜500ミクロン/疎水性)を収容する。この形態は液体バイパスの特徴は持た
ず、その代わりに、ハウジング220内のより大きい容積のチャンバ229に末広がりの
フィルタ表面積部を設け、流れを増大し、液体が溜まって詰まりを生ずるのを防止する。
管構成部に接続し得るハウジングキャップ227もフィルタ組立体に設けることができる
図13A及び13Bは、それぞれ濾過ユニットの斜視図及び分解斜視図を示す。図13
Cは他の側面図であり、図13D図13CのA−A線上の断面図を示す。
【0061】
フィルタ−管構成部組立体のすべての実施形態は、管構成部に一体に組付けた電気的接
続コネクタを有することができる。電気的接続コネクタ(電気機械的コネクタとも称され
る)を図14及び15に示す。機械的連結は、回転、例えば90゜又は45゜の回転を要
するバヨネット装着とし、サンプル送給ユニットの管構成部コネクタと感知ユニットハウ
ジングにおける整合対応部分との間に導電素子が接触して感知回路を閉成する。電気的接
続自体は、例えば管構成部の端部におけるプラスチック製コネクタ内にインサート成形し
た片持ち式の銅又はスチール製の電極を設けることによって容易になる。片持ち式電極は
、板金から打抜き加工し、接着、熱接合及び超音波溶接などの他の方法を使用してプラス
チックコネクタ表面に接合することもできる。整合ピン電極は、感知ユニット内に配置し
たコネクタの雌型側に配置することができる。ピン電極は、センサ、ポンプ、マザーボー
ド及び画面ディスプレイを含む回路内部に接続することができる。この回路は、管構成部
側コネクタが感知側のコネクタ接続部に組付けられないとき、開いたままとすることがで
きる。管構成部側コネクタを感知側に差込んだとき、回転ロック(例えば、バヨネット又
は標準ねじ込み連結)により、導電ストリップ又はピンが整列し、これにより回路を閉成
する。この回路閉成は、スマートなソフトウェアアルゴリズムによって検出することがで
き、装置の使用準備が整い、管構成部が適正に接続されたことを示す。この接続の有無は
、間欠的又は連続的なガス感知モード中ソフトウェアアルゴリズムによってモニタリング
し、所望のリアルタイムで管構成部の接続が適正に動作していることを確実にする。
【0062】
感知ユニットは、ハウジングユニット、例えば、剛性プラスチックの射出成形ハウジン
グを有する携帯デバイスとすることができ、このハウジングユニットにオンボード電源バ
ッテリパック、ユーザー・インタラクション画面インタフェース、プロセッサ例えば、信
号調整用のプロセッサ、内蔵ソフトウェア、ポンプ、フロー及び圧力センサ、ガスセンサ
を有する閉じた感知チャンバ、通気に適切な圧力逃がしバルブ、及びガス搬送用の管構成
部を収容することができる。感知ユニットを図16〜19につき詳細に説明する。
【0063】
図16A及び16Bは、図5及び6に示した一段式のシステムアーキテクチャに使用す
る感知ユニット30を示す。感知ユニット30は感知モジュールハウジング310を有し
、感知チャンバ35内にガスセンサ34の線形的アレイを収容する。感知ユニットは、さ
らに、ディスプレイ36及びバッテリ39も有する。図5及び6に示したシステムアーキ
テクチャはガス検出における異なったモードを有するが、ハードウェアは双方とも同一で
ある。感知モジュールハウジングのサイズはとくに限定しないが、図16に示すハウジン
グは、約210×115×63mmである。
【0064】
ガスの進入は、プロセッサ(図示せず)がポンプ32を始動させるときに得られ、この
とき一方向バルブ320を開き、内部の二次フィルタ321を経てガス搬送できる。ガス
は、直列接続したフローセンサ322を経て感知チャンバ35に搬送し、感知チャンバ3
5内では、例えば、CO 用、CH 用及びH用のガスセンサ34を、センサの応
答/反応時間に基づいて順次オン状態にし、濃度測定を行うことができるようにする。セ
ンサは単独の電子回路板33に接続し、この電子回路板33は、信号調整(例えば、電源
、増幅及びフィルタ処理)に必要な電子機器及びセンサのために必要な他の制御部を含む
。圧力逃がしバルブ380を設け、収集チャンバ内の圧力が臨界値を越えた場合に圧力を
逃がすようにする。測定が完了した後、ガスをポンプ32から放出する。感知ユニットに
は、さらに、圧力センサ323も設け、ポンプ32によって発生した圧力を検出する。感
知ユニットの較正中、例えば、外気ガス濃度検出に使用するために、内部の二次フィルタ
321を設ける。
【0065】
図17は感知チャンバの形態を示し、この感知チャンバは、ガスセンサ34、接続ベー
ス組立体340、図5及び6に示すシステムアーキテクチャのためのセンサ回路板33を
有する。ガス感知を同時に行うため、赤外線(IR)センサをCH 用及びCO 用に
使用し、電気化学的センサをH用に使用する。ガスの加熱を必要とする半導体センサ
(H用)とは異なり、この形態は、すべてのppmレベルを同時測定することができ
、これにより感知ユニット全体の読取り時間を減少することができる。逐次感知のために
は、IRセンサ(CH 用及びCO 用)を、先ず感知の順番でトリガする。H
センサは後でトリガし、このセンサが発生する熱とIR方法を使用するCH 用/CO
用センサと相互作用を回避する。
【0066】
図18は、ガスセンサ34、それらの接続ベース340組立体、及びセンサ回路板33
のレイアウトを描写する。図19A〜19Eは感知チャンバ35の斜視図、分解斜視図、
及び各種断面図を示す。
【0067】
図16〜19は、3個のガスセンサを収容する感知チャンバを示す。しかし、感知チャ
ンバの寸法及び各チャンバに含まれるセンサの個数及びタイプは、センサタイプ及び検出
すべきガスに基づいて変化することは当業者には理解できるであろう。
【0068】
図20〜21に示す感知ユニットの他の形態は、2個の個別の感知チャンバ35を使用
し、例えば、一方のチャンバはIRベースのCO/CH用センサを収容し、他方のチ
ャンバは、主にH用の半導体センサを収容するためのものであり、随意的にCH
の半導体ベースのセンサを収容する(図面には4個のセンサ位置を示す)。この形態にお
いて、感知容積部を2個のチャンバに分離することにより、ガス流を分割することによる
若干のリスクを負っても、完全な断熱を得ることができる。感知ユニットには、さらに、
ディスプレイ36及びバッテリ39を設ける。
【0069】
ガス進入は、プロセッサ(図示せず)がポンプ32を始動させたときに得られ、このと
き一方向バルブ320を開き、内部の二次フィルタ321を経てガス搬送できる。ガスは
、直列接続したフローセンサ322を通過し、コネクタ37Bを通過するとき同時に第1
感知チャンバ及び第2感知チャンバに搬送する。各チャンバ内のセンサは単独の電子回路
板33に接続し、この電子回路板33は、信号調整(例えば、電源、増幅及びフィルタ処
理)に必要な電子機器及びセンサのために必要な他の制御部を含む。圧力逃がしバルブ3
80を設け、収集チャンバ内の圧力が臨界値を越えた場合に圧力を逃がすようにする。測
定が完了した後、ガスをポンプ32から放出する。感知ユニットには、さらに、圧力セン
サ323も設け、ポンプ32によって発生した圧力を検出する。感知ユニットの較正中、
例えば、外気ガス濃度検出に使用するために、内部の二次フィルタ321を設ける。
【0070】
図22A及び22Bは、ガスセンサ34、それらの接続ベース340組立体、及びセン
サ回路板33のレイアウトを描写する。図23A〜23Eは感知チャンバ35の斜視図、
分解斜視図、及び各種断面図を示す。
【0071】
図20〜23は、2個のガスセンサを収容する感知チャンバを示す。しかし、感知チャ
ンバの寸法及び各チャンバに含まれるセンサの個数及びタイプは、センサタイプ及び検出
すべきガスに基づいて変化することは当業者には理解できるであろう。
【0072】
感知ユニット内に収容するポンプは、ガスを搬送するに必要な差圧を送給することがで
きるとともに、管部分に使用される液体用薄膜フィルタの液体破過圧力を超えるのを回避
するよう設計する。流れの計算は、ガス及び液体の適切な流れを生ずるに必要な差圧を決
定するのに行うことができる。以下の流れ計算用のパラメータ、すなわち、ベレシュ針ル
ーメン0.4mm、ベレシュ針からフィルタまでのチューブ内部長さ24mm、チューブ
OD12mm、ID9mm、最悪ケースのフィルタパラメータ(孔径0.2μmの疎水性
フィルタ、0.12mm厚さ、孔径が0.01μmの親水性フィルタで、0.12mmの厚
さ、OD2*チューブ径=24mm)、チューブ全長2.438m(8フィート)及び内部
(感知ユニット内の)孔径0.2μmの疎水性フィルタ、0.12mmの厚さでは、0.9
2mBar(91.89N/m)の差圧がガス流を得るのに必要であり、この距離にわ
たって液体を搬送するには50.99mBar(5099N/m)の差圧が必要である
。したがって、液体バイパスフィルタ設計と組合わせたとき、液体の進入を回避するのに
5mBarのポンプ能力を選択し、ガス種の安全で優先的な搬送を確実にした。多数の商
業的ポンプサプライヤーがこの差圧能力範囲のポンプを提供している(例えば、KNF社
のファイファー等がある。)。
【0073】
ガスセンサを選択するため、各ガスのためにより詳細に重み付けしたピュー(Pugh)・
マトリクス方法を、以下のメトリクス、感知範囲、ウォームアップ時間、作動温度、応答
時間、精度、最小カウント/解像度、センサ寿命、電力消費量、較正インターバル、サイ
ズ、又は他のセンサとの両立性に関する問題に利用した。ピュー・マトリクス方法の結果
は、二次的要因、例えば製造コスト、点検修理コスト、設計時間、及び部品入手可能性に
基づいて調整することもできる。図24は、本発明装置及び方法の容認可能なセンサ技術
を特定する表である。種々の組合せによるこれら技術は、感知ユニット設計用に選択した
種々のシステムアーキテクチャに利用することができる。
【0074】
ユーザー・インタフェースは、専門家でない人が装置/感知ユニットを操作できる極め
て簡単なシーケンスとなるよう設計する。高位及び低位(ソフトウェア階層レベル)のイ
ンタラクション(相互作用体系)を設計し、これを図25〜28に示す。
【0075】
最高位階層、すなわち、ユーザー−画面インタフェースにおいて、インタラクションは
、携帯ユニット前面のタッチスクリーンディスプレイに触れることを含む。この画面上の
論理シーケンスを、図25にグラフィックに描写する(実際のディスプレイ)。
【0076】
装置は、高位のユーザー・インタラクションの下層にある論理フローの2つのオプショ
ン(図26のオプション1及び図27のオプション)を利用する。この階層でのユーザー
・インタラクションは以下のステップを有する。すなわち、
・装置をオン状態にする。
・ようこそ(welcome)画面を表示する。
・バッテリ残量が少ない場合、警告を表示する(ソフトウェアが割り込みをかけて低電力
を要求する)。Low Battery-Recheck/Recharge バッテリパワーが適正である場合、ソフ
トウェアアルゴリズムは内部の「セルフ−テスト(Self-Test)」を実行するよう手順を
進め、すべてのセンサ及びポンプが設計作動パラメータ内で動作するのを確実にする。
・バッテリパワーが適正である場合、画面は「外気較正(Calibrating to Ambient)」の
メッセージを(外部環境におけるガスの基底線レベルを確立するプロセスを示しつつ)表
示する。
・較正を完了する。(このオプション1の場合、較正のフィードバック及び成功をユーザ
ーに明確に伝える。オプション2の場合、較正はバックグラウンドのプロセスであり、伝
える必要はない。)
・ユーザーに管構成部を接続するようメッセージする。
・管構成部を適正に接続した場合、管構成部はアクティブな感知回路を閉成する。ユーザ
ーに「接続完了(Connection Found)」のメッセージを出す。
・ユーザーにシステムは「準備完了(Ready)」であるメッセージを出す。
・ガス収集を開始するため、ユーザーが「スタート(Start)」ボタンを押す。
・ユーザーに「検査中(Testing)」のメッセージを出す。
・流量計のモニタリング及び/又は圧力センサに基づいて適量のガスを採取した場合、結
果を各ガスに関して表示する。もしそうでない場合、管構成部の接続をチェックせよとの
注意書きとともに「フローエラーメッセージ(Flow error message)」を出す。
・ユーザーに検査を再度行うよう「再検査(Retest)」オプションを表示する。
【0077】
低位階層のソフトウェアアルゴリズムは、ユーザー及び装置タッチスクリーンとデジタ
ル−アナログインタフェースにおける必要なコマンドとの間の通信を橋渡し、デジタル−
アナログインタフェースは感知システムにおけるハードウェアの種々の部分と通信する。
図28は、好適なソフトウェアアルゴリズムのフローチャートを示し、このフローチャー
トには感知ユニットの動作で潜在的に起こり得る種々のリスク及び不具合モードに対処す
る適正なチェックを設ける。
【0078】
本発明方法及び装置は、腹腔鏡手術にわたり種々の段階で又は連続して使用することが
できる。これら手術段階としては、前送気、手術中及び後送気、並びに後腹部/骨盤手術
の段階がある。
【0079】
腹腔鏡手術の前送気段階は、ベレシュ針又はトロカールを腹腔又は骨盤腔内に手探り的
に配置するステップを有する。この手術段階中、外科医は、中空針を腹部に、又はトロカ
ールを切開部に挿入し、腸に傷害/穿孔を生じないことを確実にしなければならない。本
発明方法及び装置はこの段階中に使用して、針/トロカールの配置後に吸引及び感知テス
トを行い、腸穿孔傷害を生じたか否かを決定する。
【0080】
手術中及び後送気段階とは、外科医が腹部/骨盤(下腹部)手術を行い、また患者を閉
じる直前までの手術段階を意味する。一般的には炭酸(二酸化炭素)ガスを使用して腹腔
に送気し、このことは気腹状態にするとも称する。本発明検出システムを使用して、水素
、メタン、硫化物、及び窒素を含む他のガス種が腹腔又は骨盤腔内に存在するかを離散的
に又はリアルタイムでの検査により検出することができる。装置は、さらに、基底の又は
予め測定したレベルと比較してこれらガスの上昇した濃度を検出するのにも使用すること
ができる。
【0081】
本発明によるシステムは、腹部/骨盤手術が完了した後にも使用することができる。例
えば、本発明システム及び方法を使用して、既に外科手術を受けており、術後回復期間中
に種々の症状を発症した患者に腸穿孔傷害を同定することができる。これら患者において
、腸穿孔の存在及び腸穿孔の正確な確認は、大きな副次的影響がある場合に極めて重要で
あり、例えば、もしそうであった場合に、診査手術、人工肛門形成、クオリティ・オブ・
ライフに対する緊急な大打撃を与えるので重要である。これに加えて、患者は腸穿孔から
生ずる感染症の消散後に他の手術を受けなければならず、今回は人工肛門を逆向きにしな
ければならない。腸穿孔検出技術の適用は、腸穿孔の存在を信頼性高く診断できる吸引腹
部ガス内容物を使用して、超音波ガイダンスによる穿刺手順によって容易になる。
【0082】
本発明方法及び装置は、さらに、手術中繰り返しサンプル採取し、また検出するのにも
使用することができる。例えば、腹腔鏡手術のために、本発明装置は、送気前に腹腔に挿
入した医療デバイスに接続し、手術中に繰り返しのサンプル採取及びガス検出を行い、ま
た処置が完了した後、医療デバイスを腹腔から取り出す直前に接続を外すことができる。
本発明方法及び装置は、予め決定したインターバルでサンプル採取し、またガスを検出す
ることを、例えば、本発明装置をプログラミングすることによって行う、又はユーザーに
よるオンデマンドでサンプル採取及び検査を行うようにすることができる。採取しまた分
析するサンプル採取タイミング及びサンプル個数は、処置のタイプ、例えば腹腔鏡手術又
は診査処置に適合し得るものとし、このことは当業者には理解できるであろう。
【0083】
本発明システム及び方法を使用して、他の状況、例えば外傷及び非腹腔鏡手術で起こっ
た腸穿孔傷害をも検出することができる。例えば、本発明装置は、穿刺針で行われる診査
吸引処置に関連して使用し、腹部内の腸内ガスを検出することができる。
【0084】
腸穿孔検出システムは、接続から測定するまでの時間窓が約2分以下という極めて短期
間で手術室スタッフによってセットアップすることができる。しかし、このことは、医師
又は処置が必要とするならば、より長い時間窓にわたる外科医の装置使用を制限するもの
ではない。針配置と気腹開始との間に利用可能な時間が極めて短いため、このことは重要
である。接続から測定するまでのこの迅速な全パフォーマンスエンベロープの結果、本発
明システムは、外科医、外科医助手、及び手術室看護師/外回り看護師、極めてシンプル
なユーザー・インタフェース(吸引−感知−結果表示ステップを含む)、ソフトウェアア
ルゴリズム及びデジタルディスプレイ上の読み値をユーザーに送ることに関連して作動す
るガスセンサによって達成できる迅速機械的連結/結合を組込む。
【0085】
腸穿孔検出システムは、腹腔鏡手術中に外科手術室でのセッティングに使用することが
でき、ベレシュ針との接続の独特な要件に対処する特徴を有し、この場合、管カプラーを
使用し、無菌域を横切って処置及び患者に再使用可能な非無菌感知ユニットに接続するこ
とができる。管構成部の無菌端部は、無菌手術域内にいるスタッフ(外科医、外科医助手
、手術室看護師)が取扱うとともに、非無菌端部は外回り看護師又は他の支援スタッフが
取扱う。
【0086】
ベレシュ針に接続した後のシステム使用中、外科医は、システムを針に接続する前のい
わゆるヒステストと称される共通の臨床的操作を行う。このヒステストの目的は外気が腹
部に進入し、針先端が実際に腹腔内にある場合にそうなるのを確実にするためのものであ
る。このヒステストの結果の1つとしては、外気が腹腔内のいかなる腸内ガス(もし存在
するとしたら)と混合し、この腸内ガス濃度を薄めることである。しかし、ヒステストの
恩恵は、腹部又は骨盤における臓器内又は臓器相互間の種々のポケットに溜まったいかな
る腸内ガスも放逐して、吸引での入手が可能となるのを確実にすることである。一般的に
は、数100ccの空気がヒステスト中に腹腔内に導入される。この希釈レベルを許容す
るため、センサ及びソフトウェアプログラミングは、基底値以上のガス濃度における僅か
な上昇/変化を検出するよう構成することができる。
【0087】
以下のリストは、本発明システムの使用可能な例示的ステップを示す。無菌域内のスタ
ッフとしては、外科医(S)、外科医助手(SA)、手術室看護師(SN)がいる。無菌
域外のスタッフとしては、外回り看護師(CN)がいる。図2及び3は、手術室レイアウ
ト及び本発明システムを使用する腹腔鏡手術のフローチャートを示す。例示的ステップは
以下の通りである。すなわち、
・装置及び管構成部を使用のために手術トレイ上に準備する。
・管構成部を無菌パッケージ(例えば、タイベック[登録商標]のパック/パウチ)内に
封入する。
・新しい管状フィルタ/カートリッジをデバイスに接続する(チューブはパックし、また
1回使用でもあるフィルタを設けて配送できる)。
・外科医(S/SA)は標準ベレシュ針の挿入を行う(CO 送気せずに)。
・管構成部を無菌域内に配送する(CNにより)−無菌技術での標準的な落し込みによる

・管構成部をルエルロック接続によりベレシュ針に接続する。無菌域内のだれもがこの接
続を実行することができる。
・管構成部の他方の端部をSN/SA/SがCNに引き渡す。
・CNは管構成部を接続部により装置/フィルタに接続する。
・CNは無菌域内のスタッフにベレシュ針に確実に接続することに関して確認をとらせる
ことができる。
・CNは装置を実行/スタートすることができる。
・CNは、意思決定者(S/SA)に対する装置フィードバックを読取る。
・S/SAは、装置フィードバックを解釈し、つぎのステップを決定する。
・手術を続ける場合、CO 送気及びこれに続くトロカール配置が次のステップである

・管構成部をベレシュ針から切り離す。
・管構成部をシステムから切離し、廃棄する。
・システムフィルタを取外し/きれいなデバイスと交換する。
・システムを清浄化し、再調整してベース/ドッキングステーションに送る。
【0088】
特別なタイプの処置に基づいて他のステップ順序又は付加的ステップを行うことができ
る。さらに、外科医は、個人的な好みに基づいて若干のステップの順序を変更することが
できる。
【0089】
本発明装置によれば、外科医が腸穿孔処置の遅れ、及び腸内容物が腹腔内に滲出するこ
とに関係する合併症を回避することができる。本発明装置を使用して、閉じた腹部内の破
裂した憩室炎又は外傷から腸穿孔を検出することもできる。
【0090】
この同一の装置及び方法は、外傷又は破裂した憩室炎により生ずるこれら穿孔を検出す
る他のモダリティの付属物として使用することができる。本発明による方法及び装置は、
腹部を閉じ、また破裂した憩室炎又は外傷部から穿孔が疑われるときにも使用することが
できる。27ゲージの針を腹壁に挿入し、腹部内ガスサンプルを分析する装置に接続する
ことができる。
【実施例1】
【0091】
フィルタ−管部組立体の検査
【0092】
液体バイパスフィルタ組立体を、有孔管部−吸収スリーブ組立体が側方に流体を吸収し
て有効なガス流ルーメンを確保できる能力に関して検査する。図29は検査に使用する用
具の写真である。これら用具としては、ベレシュ針、可視化用色付き水、有孔部分を有す
る一条のポリウレタン医療用品位の管、吸収性セルロース不織材料のシート、剛性プラス
チックハウジング、シリコーン封止材、及びポンプとして作用するシリンジがある。図3
0に示すように、プロトタイプのバイパスフィルタは、有孔チューブを透明プラスチック
ハウジング内に挿入することによって構成することができる。つぎに、吸収性浸潤材料を
有孔部分とプラスチックハウジングとの間に生じた環状キャビティ内に詰め込む。プラス
チックハウジングの両側端部をシリコーン接着剤で封止し、環状空間からの漏れを防止す
る。
【0093】
検査プロセスを図31に示す。検査は、管部の一方の端部をベレシュ針に、また他方の
端部をシリンジに、標準のルエルロックコネクタ(クォシナ社[登録商標]によって製造
された)を使用して開始する。つぎに、シリンジのプランジャを引き戻すことによって吸
引力を加え、色付き水内に配置したベレシュ針の末端部から流体を引込む。流体フロント
が吸収部分に達すると即座に、図31の円で示した領域におけるセルローススリーブ内に
側方に吸収される。さらに、薄膜フィルタが存在しない場合でも、流体がシリンジ内に引
き込まれるとともに、スリーブの吸収性は、流体をシリンジからフィルタ組立体内に滲出
させるよう逆流することができることでも分かる。この実施例は、液体バイパスフィルタ
の設計による工学的機能性を立証している。
【0094】
上述の記載は明解できるよう若干詳細に説明したが、本明細書を読んだ当業者であれば
、本明細書及び特許請求の範囲における真の範囲から逸脱することなく、形式及び詳細に
関して種々の変更を加え得ることは理解できるであろう。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図20
図21
図22
図23A
図23B
図23C
図23D
図23E
図24
図25
図26
図27
図28A
図28B
図29
図30
図31
図32