(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ロール紙を軸支することなく収容するロール紙収容部と、前記ロール紙から供給される用紙を搬送する用紙搬送部と、前記用紙に印字を行う印字部と、前記ロール紙収容部内に収容されたロール紙を押圧するロール紙押さえ部と、前記ロール紙が所定の径以下になったことを検出するロール紙残量小検出部とを備え、
前記ロール紙押さえ部は、所定の径以下となった前記ロール紙を前記ロール紙収容部の底面に向けて押圧して、前記ロール紙残量小検出部が、前記ロール紙が所定の径以下になったことを検出可能な位置に、所定の径以下となった前記ロール紙を留まらせるロール紙プリンタであって、
前記ロール紙押さえ部は、前記ロール紙を押圧するとともに用紙搬送に伴って回転する押さえローラと、前記押さえローラの回転を摩擦力によって抑制する回転抑制部とを有し、
所定の径以下となった前記ロール紙においては、前記ロール紙から供給される用紙が、ロール部分から剥離した後に前記押さえローラを経由して前記用紙搬送部の搬送路に進入する構造である、ロール紙プリンタ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0013】
[実施形態]
図1A及び
図1Bは、本発明の一実施形態に係るロール紙収容構造を備えるロール紙プリンタ1の斜視図である。
図1Aは、上方フレームを閉じた状態の斜視図であり、
図1Bは、上方フレームを開いた状態、即ち、ロール紙交換を行える状態の斜視図である。
図2は、本発明のロール紙収容構造に用いるロール紙押さえ部11の図である。
【0014】
本実施形態のロール紙プリンタ1は、感熱用紙であるロール紙2を使用する投げ込み式のサーマルプリンタである。ロール紙プリンタ1は、上方フレーム10と下方フレーム20とから成る。上方フレーム10は、係合解除レバー45の操作によって係合部31とプラテンローラ42の軸との係合が解除されることで、回動軸部分30を中心として下方フレーム20に対して回動可能になる。なお、
図1Bに示す上方フレーム10を開いた状態は、両側面に設けられた上方フレーム10の回動を補助するバネ32によって維持される。
【0015】
本実施形態のロール紙プリンタ1には、上方フレーム10にロール紙押さえ部11が設けられ、下方フレーム20にロール紙収容部21(底面構造は
図3A及び
図3Bを参照)が設けられている。また、上方フレーム10には、用紙切断部43の上側構成部やサーマルヘッド41等が設けられ、下方フレーム20には、用紙切断部43の下側構成部やプラテンローラ42、用紙搬送部44の駆動モータ(図示せず)等が設けられている。
【0016】
ロール紙プリンタ1は、ロール紙収容部21とロール紙押さえ部11とによって、ロール紙2を軸支することなくロール紙2を収容し、ロール紙2から供給される用紙に印字(印刷)を行う。ロール紙押さえ部11は、ロール紙2を押圧するとともに用紙搬送に伴って回転する押さえローラ12と、この押さえローラ12の回転を抑制する回転抑制部13とを有する。
【0017】
なお、ロール紙2から供給される用紙は、用紙搬送部44に設けられたサーマルヘッド41とプラテンローラ42とで挟持されながら、プラテンローラ42が回転することによって搬送され、サーマルヘッド41によって印字が行われる。印字終了後は、用紙切断部43によって切断される。プラテンローラ42には、駆動モータから、歯車(図示せず)等の伝達機構を介して回転力が伝達される。用紙搬送部44は、サーマルヘッド41、プラテンローラ42、駆動モータ、歯車等によって構成されている。
【0018】
図2は、ロール紙収容構造に用いるロール紙押さえ部11を示す図である。
図2(a)は、ロール紙押さえ部11単体の斜視図であり、
図2(b)は、ロール紙押さえ部11の中央部近辺の断面図である。
【0019】
図示するようにロール紙押さえ部11では、ロール紙2を押圧する押さえローラ12と、押さえローラ12の回転を摩擦力によって抑制する回転抑制部としてブラシ13がアーム14に固定されている。ロール紙押さえ部11は、基台部15を具備して、回動軸15aを中心としてアーム14が回動する。また、回動軸15aには、アーム14を下方向に付勢する捩りコイルバネ(トーションバースプリング)16が組み込まれている。また、アーム14には、回動軸15aを間にして、押さえローラ12とは逆側に退避用シャフト17が設けられている。
【0020】
アーム14の端部に回転可能に取り付けられた押さえローラ12は、回転軸12aを中心として用紙搬送に伴って回転する。本実施形態の押さえローラ12は、プラスチック製であり、他の部品は金属製である。基台部15には、左側と右側にそれぞれ、2つの位置決め用孔18a、1つの取付ネジ用孔18b、及び上方フレームと下方フレームの回動軸に嵌合する嵌合部18cが設けられている。
【0021】
図2(b)に示すように、アーム14の裏面には、プラスチック製のブラシ13がブラシの接着面部分13aで取り付けられている。ブラシ13は、アーム14の角部14a部分とは当接せず、押さえローラ12と当接して25度程度後退している。ブラシ13は可撓性を有しており、押さえローラ12を押圧して発生する摩擦力で、その回転を抑制(制動)する。このロール紙押さえ部11のブラシ13は、押さえローラ12が、用紙搬送停止後、慣性力によって回転を継続することを抑制する回転抑制部である。ブラシ13によって、慣性力による押さえローラ12の回転の継続を抑制する理由については後述する。なお、
図2(b)では、アーム14の一部、ブラシ13、及び押さえローラ12のみを図示している。
【0022】
図3A及び
図3Bは、ロール紙プリンタ1の断面図である。
図4は、
図1Aの状態のロール紙プリンタ1の上面図である。
図3Aは、ロール紙2が最大径である時の図であり、
図3Bは、ロール紙2が小径である時の図である。
図3A及び
図3Bは、
図4中のA−A線に沿った断面図である。
【0023】
図3A及び
図3Bに示すように、ロール紙2は、ロール紙収容部21に収容される。また、ロール紙2から供給される用紙は、ロール紙押さえ部11の押さえローラ12を経由して用紙搬送路入口22に進入し、用紙搬送路23に沿って搬送され、用紙搬送路出口24から出力される。
【0024】
ロール紙押さえ部11のアーム14は、回動軸15aを中心とする円の円周に沿って下方向に付勢されている。ロール紙収容部21は、底部で鈍角(120度)をなす2つの底面を有している。用紙搬送路入口22側の底面には、回転可能な支持ローラ25a及び25bが設けられており、逆側の底面には回転可能な支持ローラ25cが設けられている。
【0025】
図3Aに示すように、ロール紙2が最大径である時、ロール紙2は支持ローラ25b,25cの2つで支持され、ロール紙押さえ部11によって下側に押しつけられて(押圧されて)いる。ロール紙2が最大径である時も、ロール紙押さえ部11のアーム14の押さえローラ12は、用紙搬送に伴って回転する。また、底面の支持ローラ25b,25cは回転可能である。従って、押さえローラ12や支持ローラ25b,25cが、ロール紙2の回転を摩擦力によって阻害することはない。なお、押さえローラ12は、ブラシ13によって回転を抑制されているが、その摩擦による抑制力は、用紙搬送が停止したとき、慣性力によって押さえローラ12が回転を継続することを抑制(制動)する程度である。従って、ロール紙2を回転させるために必要な引張力への影響は小さく、用紙を引く引張力をわずかに大きくするだけでよい。
【0026】
図3Aに示すように、ロール紙押さえ部11がロール紙2を押圧しているので、ロール紙2の転動は、ロール紙押さえ部11によって抑制される。また、用紙搬送終了後のロール紙2から供給される用紙の弛みの発生も、ロール紙押さえ部11によって抑制される。従って、用紙搬送部44は、ロール紙2から供給される用紙を、安定して搬送することができる。なお、ロール紙2が最大径である場合を含めて大径である場合、その径の大きさと重さの故に、用紙搬送に対して悪影響を及ぼすロール紙2の転動は発生しない。ロール紙押さえ部11がない場合、ロール紙2の径が減少するとともに軽くなってくると、用紙搬送に対して悪影響を及ぼす転動が発生し始める。ロール紙押さえ部11がロール紙2を押さえる力は、用紙搬送の負荷ともなるため、できるだけ小さい方がよい。従って、ロール紙押さえ部12がロール紙2を押さえる力は、ロール紙2の径が減少するとともに軽くなって、用紙搬送に対して悪影響を及ぼす転動が発生し始めることを阻止できる程度とするのが望ましい。
【0027】
ブラシ13によって、慣性力による押さえローラ12の回転の継続を抑制する理由について説明する。ブラシ13を備えるロール紙押さえ部11によって、用紙搬送終了後のロール紙2から供給される用紙の弛みの発生が抑制される。しかしながら、押さえローラ12を経由する前のロール紙2には、ロール紙収容部21内にあるロール紙2の最も外側の紙が、その内側の紙より離反してわずかに膨らむ程度の軽微な弛みが発生する場合がある。その場合でも、押さえローラ12は、ブラシ13との当接の摩擦力で回転を抑制されており、慣性力によって回転を継続することを制動するので、ロール紙2の軽微な弛みは、押さえローラ12とロール紙2との間に留まる。従って、押さえローラ12と用紙搬送路入口22との間に用紙の弛みが発生することが抑制される。なお、上述したような押さえローラ12とロール紙2との間のロール紙2の軽微な弛みであれば、用紙は、ロール紙2を押圧している押さえローラ12を経由して供給されるので、次の用紙搬送の際、印字に影響を与えるような負荷の変動とはならない。以上が、ブラシ13によって、慣性力による押さえローラ12の回転の継続を抑制する理由である。
【0028】
仮に、押さえローラ12がブラシ13を備えないものであるとすると、押さえローラ12が慣性力によって回転を継続することが抑制されず、押さえローラ12を経由する前のロール紙2の軽微な弛みが、押さえローラ12を経由して送られて、押さえローラ12と用紙搬送路入口22との間に用紙の弛みとして現れる。この用紙の弛みによって、印字に影響を与えるような負荷の変動が生じる恐れがある。
【0029】
因みに、押さえローラ12を回転しないように固定することによっても同様の効果を奏することができるが、回転しない押さえローラ12と当接するロール紙の面が印字を行う面であった場合、発色する恐れがあり、また、押さえローラ12に偏摩耗が生じる恐れがある。
【0030】
ロール紙押さえ部11のアーム14は、回動軸15aを中心とする円の円周に沿って下方向に付勢されている。このため、ロール紙押さえ部11の押さえローラ12は、ロール紙2の径の減少に追随して、
図3Bに示すように、ロール紙2が小径となってもロール紙2を底面に押しつけて(押圧して)いる。ロール紙2が一定量使用されると、ロール紙2は、支持ローラ25からは外れて底面で支持される。この際のロール紙2とロール紙収容部21底面との間のロール紙2の回転時の摩擦力は、底面がプラスチック製であり又ロール紙2が軽くなっているため、小さい。用紙搬送部44は、上述した引張力を発揮可能であるため、小径のロール紙2を問題なく搬送できる。また、本ロール紙収容構造は、ロール紙2が小径となった場合も、ロール紙2の転動や押さえローラ12と用紙搬送路入口22との間の用紙の弛み発生を抑制できる。
【0031】
上述したように、本発明によるロール紙収容構造によれば、用紙搬送部44に対する負荷の変動を防止できる。
【0032】
次に、ロール紙押さえ部11の押さえローラ12を含むアーム14を、ロール紙交換時に所定位置に退避させる機構について説明する。アーム14は、押さえローラ12の支持部である。
【0033】
図5及び
図6は、一実施形態のロール紙プリンタ1の断面図である。
図5(a)〜
図5(d)は、
図4のA−A線の断面図であり、
図6(a)〜
図6(d)は、
図4のB−B線の断面図である。
図5(a),
図5(b),
図5(c),
図5(d)は、それぞれ、
図6(a),
図6(b),
図6(c),
図6(d)に対応している。
図6においては、上方フレーム10の回動の中心(回動軸部分30の中心)を一点鎖線の交点で示している。
図5及び
図6において、ロール紙2はロール紙収容部21に収容されていない。また、
図5及び
図6において、ロール紙押さえ部11のブラシ13は図示していない。
図5(a)及び
図6(a)は、上方フレーム10の係合部31と下方フレーム20のプラテンローラ42の軸が係合し、上方フレーム10が閉じられている時の図であり、
図5(b)及び
図6(b)は、上方フレーム10の係合部31の係合が解除され、上方フレーム10が開かれ始めた時の図であり、
図5(c)及び
図6(c)は、
図5(b)及び
図6(b)に続く図であり、
図5(d)及び
図6(d)は、上方フレーム10が完全に開かれた時の図である。この
図5(d)及び
図6(d)に示す押さえローラ12を含むアーム14の位置が、押さえローラ12を含むアーム14の退避位置である。
【0034】
上方フレーム10の係合部31の係合が解除され、上方フレーム10が開かれ始めると、これに伴って、
図5(b)及び
図6(b)に示すように、上方フレーム10に設けられた退避用シャフト押圧部19がアーム14の退避用シャフト17に当接し始める。さらに上方フレーム10を開くと、
図5(c)及び
図6(c)に示すように、退避用シャフト押圧部19が退避用シャフト17を押圧し、退避用シャフト押圧部19の形状に沿って、アーム14の退避用シャフト17が移動する。上方フレーム10が開き切っていないこの状態で、ロール紙押さえ部11の押さえローラ12を含むアーム14が上方フレーム20に近接する位置まで移動する構造となっているので、使用者によるロール紙投入時、上方フレーム10とロール紙押さえ部11の押さえローラ12との間に誤ってロール紙2が投入されることを防止することができる。
【0035】
なお、上述の説明は、図示されている側(印字済み用紙が排出される側から見て左側)のロール紙押さえ部11の退避用シャフト17と退避用シャフト押圧部19に関する説明であるが、右側の構造についても同様である。
【0036】
さらに、本発明のロール紙プリンタ1のロール紙ニアエンド検出機能に関して説明する。ここでロール紙のニアエンドとは、ロール紙2が所定の径以下になった状態、即ち、ロール紙2の残量が、交換を必要とする量となった状態のことである。ロール紙ニアエンド検出機能とは、即ち、ロール紙の残量が少なくなったことを検出するロール紙残量小検出機能である。ロール紙プリンタ1は、ニアエンドを検出すると、上位装置に信号を送出し、上位装置は、ロール紙2の交換が必要である旨のメッセージを出力する等する。
【0037】
図7は、本発明のロール紙収容構造を備えるロール紙プリンタ1の電気的ブロック構成図である。ロール紙プリンタ1は、制御部46、用紙搬送部44、印字部40、用紙切断部43、ニアエンド検出部47、及び通信部49を備えている。制御部46は、ロール紙プリンタ1が備える各部を制御し、各部に処理を実行させる。用紙搬送部44はロール紙2から供給される用紙を搬送する。印字部40は用紙に印字を行う。用紙切断部43は、用紙を切断する。ニアエンド検出部47は、ニアエンドセンサ48からの信号に基づいてロール紙2のニアエンドを検出する。ニアエンド検出部47とは、即ち、ロール紙残量小検出部である。通信部49は、上位装置(例えばPOS(Point OF Sales)端末装置)と通信を行う。ロール紙プリンタ1の制御部46は、ニアエンド検出部47でロール紙2のニアエンドを検出すると、通信部49を介して、上位装置にニアエンド検出の情報を送信する。
【0038】
ニアエンドセンサ48は、光センサ(フォトセンサ)である。ロール紙2のニアエンドを検出するために、
図5や
図6に示すように、ロール紙収容部21の下部に、ニアエンドセンサ48(図示せず)が光を送出し、反射光を受光するための検出窓26が設けられている。検出窓26は、ロール紙収容部21内で、ロール紙2のニアエンドを検出する位置、即ち、ロール紙2が所定の径以下となったことを検出する位置に設けられている。換言すれば、所定の径以下となったロール紙2を押圧する押さえローラ12の位置と、ニアエンドセンサ48の検出窓の位置とが、所定の位置関係(所定の距離と角度)となる構造となっている。本実施形態の光センサは、反射光を検出する反射型フォトセンサ(フォトリフレクタ)であるが、光センサは、透過光の遮光の有無を検出する透過型フォトセンサ(フォトインタラプター)であってもよい。
図3Bに示す状態からロール紙2がさらに消費され、ロール紙2の径が所定の径以下となると、ニアエンドセンサ48が、光センサからの出力に基づいて、ロール紙2のニアエンドを検出する。ロール紙押さえ部11がないと、ロール紙2の径がニアエンドとして検出すべき所定の径以下となっても、ロール紙2が所定の位置に留まっておらず、ニアエンドセンサ48で検出できない位置に留まったままとなったり、ニアエンドセンサ48で検出できない姿勢(傾くなど)や形状(膨らんでいる,弛んでいるなど)となってしまう恐れがある。
【0039】
これに対して本発明のロール紙収容構造の場合、ロール紙プリンタ1は、ロール紙押さえ部11を有しているため、ロール紙の径が所定の径以下となったロール紙2が、ニアエンドセンサ48がロール紙のニアエンドを検出する位置に留まっており、安定してロール紙2のニアエンドを検出することができる。
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、ロール紙の転動や用紙の弛み発生を抑制することが可能なロール紙収容部を備えるロール紙プリンタを提供できる。
【0041】
なお、実施形態を例示して本発明を説明したが、本発明の具体的な構成は上述した実施形態に限定されない。
【0042】
上記実施形態では、押さえローラ12の回転抑制部としてプラスチック製のブラシ13を設けたが、押さえローラ12を押圧することによって所定の摩擦力(抑制力)を得られるものであれば他の材質(例えば金属)であってもよい。また、上記実施形態では、回転抑制部としてのブラシ13を、押さえローラ12のロール紙2と当接する側に設けたが、押さえローラ12のロール紙2と当接しない側に設けてもよい。また、ブラシ13のような形状ではなく、板状の部品をバネ等の弾性部品で、押さえローラ12を押圧する構造のものであってもよい。また、押さえローラ12を外側から押圧して回転を抑制するのではなく、押さえローラ12の回転軸とその軸支部との間に、押さえローラ12の回転に伴って、所定の摩擦力が生じる機構を設け、これを回転抑制部としてもよい。
【0043】
また、上述の実施形態ではサーマルプリンタについて説明したが、ロール紙2を使用する投げ込み式の他のタイプのプリンタ、例えば、ロール紙2を使用する投げ込み式のインクジェットプリンタにも適用可能である。