【実施例】
【0043】
本発明を以下の実験例によりさらに詳しく説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実験例の内容のみに限定されない。
【0044】
[実験1]
5mm程度に粉砕した硬質ポリウレタンの廃材100gを500mL三つ口セパラブルフラスコに入れ、さらに、モノアミンであるベンジルアミン50g及びジアミンである1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン10g(硬質ポリウレタン100質量部に対してそれぞれ50質量部と10質量部)を加えた。そのフラスコを180℃のオイルバスに浸し、メカニカルスターラーを用いて1時間加温撹拌した。こうしたアミン分解工程によってアミン分解物を得た。なお、硬質ポリウレタンの廃材は、三洋化成工業株式会社製のサンモジュールとして上市されている合成木材の廃材である。
【0045】
次に、アミン分解物から無機フィラー(主にタルク)を除去した。得られたアミン分解物をDMF溶媒で溶かし、残った残渣(硬質ポリウレタンの約27質量%相当であった。)を濾過して分離した。その後、ロータリーエバポレータでDMF溶媒を除去し、無機フィラー等を含まないアミン分解物を得て、次のアミック酸形成工程に供した。
【0046】
その後、アミック酸形成化合物としての3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物24g(アミン分解工程で使用したジアミンと同物質量である。)を三つ口セパラブルフラスコ内に直接加え、120℃のオイルバスで1時間加温撹拌した。こうしたアミック酸形成工程によってポリ尿素アミック酸を得た。次に、粘着付与剤(ハリマ化成株式会社製のロジン系粘着付与剤、商品名:ハリタック)10g(硬質ポリウレタン廃材100質量部に対して10質量部)を加え、120℃のオイルバスでさらに1時間加温撹拌した。こうして粘着性能を付与したポリ尿素アミック酸を得た。
【0047】
最後に、得られたポリ尿素アミック酸をテフロン(登録商標)シート上に厚さ0.2mm程度に塗布して引きのばし、190℃のホットプレート上で30分間加温した。こうしたイミド化工程によってポリ尿素イミド系ホットメルト接着剤を得た。このとき、ポリ尿素アミック酸は引きのばされて均一に加温されることにより、受熱面積が広くなって激しい発泡現象は起こらなかった。
【0048】
[実験2]
上記実験1ではアミック酸形成化合物と粘着付与剤を別々に投入しているが、ここでは、アミック酸形成化合物と粘着付与剤を同時に投入した。それ以外は、実験1と同様とした。このとき得られたポリ尿素イミド系ホットメルト接着剤は、実験1で得られたポリ尿素イミド系ホットメルト接着剤と同様であった。
【0049】
[実験3]
上記実験1では硬質ポリウレタンの廃材は100gであったが、ここでは300gとし、三つ口セパラブルフラスコは2000mLのものを用いた。硬質ポリウレタン100質量部に対して投入する他の化合物等(アミン、アミック酸形成化合物、粘着付与剤等)はそれぞれ実験1と同じ割合とした。得られたポリ尿素イミド系ホットメルト接着剤は、実験1で得られたポリ尿素イミド系ホットメルト接着剤と同様であった。また、最後のイミド化工程でも、激しい発泡現象はなかった。
【0050】
[比較実験1]
上記実験1において、アミック酸形成工程でのオイルバスの温度を180℃にして1時間加温し、アミック酸形成工程とイミド化工程(脱水反応)を一緒に行った。このとき、激しい発泡現象が生じ、反応の継続は困難であった。3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を添加することでアミノ基と無水環が反応し、前駆体であるポリアミック酸を経由してイミド環を形成するが、ポリアミック酸からのイミド環形成は脱水閉環を伴う反応であることから、水がこの温度(180℃)では水蒸気となって激しく発泡し、調製物と共にあふれ出てしまった。
【0051】
[引張強度測定]
得られたポリ尿素イミド系ホットメルト接着剤の接着強度を測定した。測定は、万能引張試験機(AGS−5kNX、株式会社島津製作所製)を用いて行った。
図1はその測定形態であり、2枚の試験プレート2,2をポリ尿素イミド系ホットメルト接着剤で接着して測定した。比較として、市販のEVA系ホットメルト接着剤(セリア株式会社製、商品名:グルースティック20P)を用いて対比した。試験プレート2としては、金属プレート(長さ70mm・幅20mm・厚さ1mmの銅板、鉄板、アルミニウム板)、木材プレート(長さ100mm・幅30mm・厚さ3mmのアガチス材)、ダンボール(長さ100mm・幅30mm・厚さ3mm)を用い、Y方向への動作速度は300mm/分とした。なお、貼り合わせ面積は約9cm
2とした。
【0052】
図2は、上記試験プレートで行った結果のうち、ダンボール、木材プレート及び金属プレート(銅板)を用い、接着面積1cm
2あたりに換算したきの引張強度の結果を示す。
図2の結果から明らかなように,今回の実験1で得られたポリ尿素イミド系ホットメルト接着剤は、市販のEVA系ホットメルト接着剤と同等又はそれ以上の引張強度を示しており、実用上問題ないレベルであることが確認できた。木材プレートに対しては、約2倍の引張強度を示した。
【0053】
実験1,2で得られたポリ尿素イミド系ホットメルト接着剤は、100%固形の無溶剤型の接着剤であり、加熱すると液体になる熱可塑性であり、使用の際は加熱して液状にして使用でき、塗布された接着剤が固体に戻ることにより接着能力を発揮することができ、様々な対象物の接着にも問題なく使用できるものであった。特にこのポリ尿素イミド系ホットメルト接着剤は、イミド環を有しているので、軟化温度の高いホットメルト接着剤として有効である。以上、本発明では、硬質ポリウレタンの廃材を減容化できると共にホットメルト接着剤にリサイクルすることができるという格別の効果を奏する。
【0054】
なお、ホットメルト接着剤として使用するためには、適度な高温(100〜200℃)で液状化し、室温付近(10〜35℃)ではある程度の硬さを維持することが求められる。本発明で得られたポリ尿素イミド系ホットメルト接着剤は、アミン(好ましくはジアミン)とアミック酸形成化合物(好ましくはテトラカルボン酸二無水物)とを反応させて,イミド環を含む構造形態としたので、軟化温度を底上げでき、室温が30℃を超えても軟化し難いものとすることができた。
【0055】
[IRスペクトル測定]
得られたポリ尿素イミド系ホットメルト接着剤のIRスペクトル測定を行い、化学構造を観察した。得られたIRスペクトルでは、1645cm
−1に尿素結合由来のC=O伸縮振動の吸収が確認された。このことから、ポリウレタンの廃材はアミン分解され,尿素結合を形成したと判断される。また,1773cm
−1にイミド環由来のC=Oの逆対称伸縮振動に帰属できる吸収が確認され,1717cm
−1にイミド環由来の対称伸縮振動に帰属できる吸収が確認され、さらに,1390cm
−1にイミド環のC−N伸縮振動の吸収が確認された。このことから,アミック酸形成化合物(好ましくはテトラカルボン酸二無水物)を加えたことで,アミン分解物内でアミック酸経由のイミド環形成反応が起きたと判断できる。また,ジアミンは,片側のアミノ基が尿素結合を形成し,もう片側のアミノ基がイミド環を形成するという反応も同時に起きていると思われる。
【0056】
[実験4]
実験4では、5mm程度に粉砕した不飽和ポリエステル廃材を用いた。不飽和ポリエステル廃材10gを500mL三つ口セパラブルフラスコに入れ、さらに、モノアミンであるベンジルアミン5g及びジアミンである1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン1g(不飽和ポリエステル廃材100質量部に対してそれぞれ50質量部と10質量部)を加えた。そのフラスコを180℃のオイルバスに浸し、メカニカルスターラーを用いて6時間加温撹拌した。こうしたアミン分解工程によってアミン分解物を得た。なお、不飽和ポリエステル廃材は、フドー株式会社製の不飽和ポリエステル樹脂成形材料で成形した射出成形部品の廃材である。
【0057】
次に、アミン分解物から無機物(ガラス繊維、カーボンブラック等)を除去した。得られたアミン分解物をDMF溶媒で溶かし、残った残渣(不飽和ポリエステル廃材の約25質量%程度であった。)を濾過して分離した。その後、ロータリーエバポレータでDMF溶媒を除去し、無機物等を含まないアミン分解物を得て、次のアミック酸形成工程に供した。
【0058】
その後、アミック酸形成化合物としての3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物2.4g(アミン分解工程で使用したジアミンと同物質量である。)を三つ口セパラブルフラスコ内に直接加え、120℃のオイルバスで1時間加温撹拌した。こうしたアミック酸形成工程によってポリアミドアミック酸を得た。次に、粘着付与剤(ハリマ化成株式会社製のポリアミド系粘着付与剤、商品名:ニューマイド945)5g(不飽和ポリエステル廃材100質量部に対して1050質量部)を加え、120℃のオイルバスでさらに1時間加温撹拌した。こうして粘着性能を付与したポリアミドアミック酸を得た。
【0059】
最後に、得られたポリアミドアミック酸をテフロン(登録商標)シート上に厚さ0.2mm程度に塗布して引きのばし、190℃のホットプレート上で30分間加温した。こうしたイミド化工程によってポリアミドイミド系ホットメルト接着剤を得た。このとき、ポリアミドアミック酸は引きのばされて均一に加温されることにより、受熱面積が広くなって激しい発泡現象は起こらなかった。
【0060】
[引張強度測定]
実験4で得られたポリアミドイミド系ホットメルト接着剤の接着強度を、試験プレートとして鉄プレート(長さ70mm・幅20mm・厚さ1mm)と木材プレート(長さ100mm・幅30mm・厚さ3mmのアガチス材)を用いた以外は、実験1等で行った方法と同様に測定した。その結果を
図3に示した。
図3の結果から明らかなように,実験4で得られたポリアミドイミド系ホットメルト接着剤は、特に鉄プレートに対して著しく大きな引張強度を示していた。
【0061】
実験1,2で得られたポリ尿素イミド系ホットメルト接着剤と同様、実験4で得られたポリアミドイミド系ホットメルト接着剤も、100%固形の無溶剤型の接着剤であり、加熱すると液体になる熱可塑性であり、使用の際は加熱して液状にして使用でき、塗布された接着剤が固体に戻ることにより接着能力を発揮することができ、様々な対象物の接着にも問題なく使用できるものであった。ポリ尿素イミド系ホットメルト接着剤と同様、このポリアミドイミド系ホットメルト接着剤もイミド環を有しているので、軟化温度の高いホットメルト接着剤として有効である。本発明では、不飽和ポリエステル系廃材においても、ポリウレタン廃材と同じ方法によって減容化できると共にホットメルト接着剤にリサイクルすることができるという格別の効果を奏することがわかった。