(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電極層は、第1の方向に延びる中心線を挟んで第2の方向に向けて対称形状に形成されており、スリットは、前記幹部を挟んで第2の方向に対称に形成されている請求項1ないし8のいずれかに記載の入力装置。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、指の接近を検知してその操作位置を検知する静電容量型のタッチパネル(入力装置)に関する発明が開示されている。
【0003】
このタッチパネルは、基板の同一面にX方向に延びる電極パターンと、Y方向に延びる電極パターンとが形成されている。Y方向に延びる電極パターンは、Y方向に配列する菱形形状の電極単位と、隣り合う電極単位どうしを接続する接続配線とを有している。X方向に延びる電極パターンは、前記接続配線を挟んで分離されてX方向に配列する菱形形状の電極単位を有している。前記接続配線の上に絶縁層が形成され、X方向に配列する電極単位を導通させるブリッジ配線が、絶縁層の表面に形成されている。
【0004】
このタッチパネルは、X方向に延びる複数の電極パターンと、Y方向に延びる複数の電極パターンに順番に駆動電力が与えられる。導電体で且つ接地電位に近い指がいずれかの電極単位に接近すると、電極単位間の静電容量に加えて指と電極単位間に静電容量が形成されて、電極パターンに流れる電流などが変化する。この変化を検知することで、電極パターンが配列しているX−Y座標面においてどの位置に指が接近しているかが検知される。
【0005】
特許文献1に記載されたタッチパネルは、透明な電極パターンがITO(Indium Tin Oxide)で形成されている。しかし、ITOは面積抵抗が比較的大きいため、タッチパネルの面積を大きくすると、電極パターン引き回しが長くなり、それぞれの電極パターンの電気抵抗が大きくなってS/N比が悪化し、検知感度が悪くなる。また、ITO層は比較的脆い電極層であるため、タッチパネルを湾曲させるとITO層に亀裂などが形成されやすい。
【0006】
最近、ITOに代わる透光性の電極パターンとして、銀ナノワイヤに代表される金属ナノワイヤやカーボンナノチューブなどの導電性の微細線材で形成されたものが考えられている。導電性の微細線材を使用した導電パターンは、ITOよりも面積抵抗が小さく、また柔軟に変形できるため、フィルム基材で形成されたタッチパネルを湾曲させて配置することなどが可能になる。
【0007】
しかし、前記電極パターンは、導電性の微細線材がオーバーコートや樹脂バインダと称される樹脂材料によって基板の表面に固着させられた構造であるため、電極パターンの単位幅あたりの電流容量が小さくなる。特許文献1に記載のように、菱形形状の電極単位とこれと連続する接続配線とが形成されているものでは、電極単位の幅寸法に比べて接続配線の幅寸法が極端に小さく、接続配線の電気抵抗が電極単位に比べて大きくなる。この場合に、電極単位の部分に静電気に起因する放電などにより過大な電流が与えられると、電極単位から接続配線に向けて極端に大きな電圧勾配が形成され、電流が瞬時に幅の細い接続配線に集中し、この部分に発熱が集中する。その結果、接続配線を構成する微細線材が破断する危険性が生じやすくなる。
【0008】
この危険性を回避させるためには、電極パターンを幅寸法が一定の帯状パターンにすればよいが、この構造では、電界を発生させる電極部の面積が小さくなって検知感度を高めるのに限界が生じる。
【0009】
特許文献2には、電極層が複数の部分に分割された位置検出装置が開示されている。しかし、特許文献2に記載の位置検出装置は、パーソナルコンピュータに搭載されるものであって、電極層を透光性にするものではないため、電極層が微細線材で形成されるものではない。特許文献2において電極層を細分化している目的は、電磁誘導式の検出部と併用したときに、電極層が存在することによる渦電流損を低減させるためであり、この発明は、微細線材の電流容量に関する課題とは技術的課題が全く相違している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、導電性の微細線材で透光性の電極層が形成されたものであり、放電などによる過大電流が流れたときの電流の集中による断線などを生じにくくした構造の入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、透光性の基板の表面に透光性の電極層が設けられている入力装置において、
前記電極層は、第1の方向に向く一対の端部を有し、少なくとも一方の端部に配線層が連続し、前記電極層は、両端部の間で、第1の方向と直交する第2の方向の幅寸法が、前記配線層の第2の方向の
幅寸法よりも広く形成され、
前記電極層と前記配線層は、導電性の微細線材によって、互いに一体に連続して形成されており、
前記電極層は、複数のスリットによって分割された複数の分岐部と、前記端部どうしを結んで第1の方向へ連続する幹部とを有し、それぞれの前記スリットは、前記幹部を残して第2の方向へ延びて前記電極層の縁部を切断する位置まで延び
、
前記配線層を第2の方向に二分する中心線と、前記スリットとの間の、第2の方向での距離が、場所によって相違していることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の好ましい例では、複数の前記スリットが直線的に延び、互いに平行に形成されている。ただし、スリットが曲線形状やジグザグ形状に形成されていてもよい。
【0014】
本発明の入力装置は、電極層がこれに連続する配線層の幅寸法よりも幅広に形成されており、幅広の電極層が複数のスリットによって複数の分岐部に分岐されている。複数の分岐部は幹部に連続しているため、いずれかの分岐部に放電などによる過大な電流が与えられると、この電流が幹部を通過して配線層に流れるようになる。この電流経路では導電パターンの幅寸法が極端に変化せず、電圧勾配が電極層と配線層とであまり変化しなくなる。よって、電流が極端に集中する場所がなく発熱が集中する部分が無くなり、配線層の微細線材が
発熱で焼き切れるなどの現象を抑制しやすくなる。
【0015】
また、本発明の入力装置は、前記スリットが、第1の方向に延びる中心線を挟んで第2の方向に向けて対称に形成され、複数の前記スリットと前記中心線との距離が場所によって相違しているため、幹部に幅広い部分を形成でき、抵抗値を下げることが可能になる。
【0016】
本発明は、前記微細線材は金属ナノワイヤあるいはカーボンナノチューブである。
本発明の入力装置は、前記電極層は、第1の方向に延びる中心線を挟んで第2の方向に向けて対称形状に形成されており、スリットは、前記幹部を挟んで第2の方向に対称に形成されているものとして構成できる。例えば、前記電極層は四角形である
。
【0017】
さらに、本発明の入力装置は、例えば、複数の前記電極層が、前記配線層によって互いに連結されているものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の入力装置は、電極層が導電性の微細線材で形成されているため、面積抵抗が小さく、また電極層が柔軟であるため、基板を曲げたようなときに電極層や配線層に亀裂などが生じにくい。電極層は配線層よりも第2の方向の幅寸法が大きいので、感度の良い位置検知が可能である。また、電極層が複数のスリットで複数の分岐部に分離されているため、放電などにより電極層に大きな電流が与えられたときに、この電流が分岐部から幹部を経て配線層に移行できるようになり、電流が極端に集中するのを抑制でき、微細線材が焼き切れるなどの問題が生じにくくなる。
【0019】
また、幹部の第2の方向の幅寸法が、配線層の第2の方向の幅寸法よりも大きいことで、電流経路での配線抵抗を低下させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に携帯用機器1が示されている。携帯用機器1は、筐体2の表示側前方に、シールドフィルム3を介して入力装置5が設置されている。シールドフィルム3はPET(ポリエチレン・テレフタレート)などの透光性の樹脂シートにITOなどの透光性の電極層が形成されたものである。入力装置5の表示方向の前方に光学接着剤を介して透光性のカバーパネル4が接合されており、カバーパネル4の表面が操作面4aとなっている。
【0022】
入力装置5は、1枚の透光性の基板6を有している。基板6の操作面4aに向けられている表面6aに、いずれも透光性の第1の導電パターン10と第2の導電パターン20が形成されている。本明細書での透光性とは、純粋な透明に限られず、例えば全光線透過率が80%以上のものが好ましく含まれる。
【0023】
基板6は、可撓性のフィルム状材料から構成されており、例えばPETフィルムが用いられる。第1の導電パターン10と第2の導電パターン20は、導電性の微細線材を主体とする透光性導電膜で形成されている。
【0024】
微細線材は、金属ナノワイヤであり、Ag、Au、Ni、Cu、Pd、Pt、Rh、Ir、Ru、Os、Fe、Co、Snから選択される1種類以上で構成される。微細線材としては銀ナノワイヤが好ましく使用される。銀ナノワイヤの平均短軸径は、1nmよりも大きく500nm以下であり、平均長軸長は、1μmよりも大きく1000μm以下である。
【0025】
透光性導電膜を形成するナノワイヤインク中での金属ナノワイヤの分散性向上のため、金属ナノワイヤは、PVP、ポリエチレンイミンなどのアミノ基含有化合物で表面処理され、分散剤で分散された状態で、基板6の表面6aに塗工させられ、透明な熱可塑性樹脂またはエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂のオーバーコートによって定着させられる。オーバーコートを構成する樹脂が硬化した後に、エッチングまたはレーザ加工などによって、第1の導電パターン10と第2の導電パターン20を形成する透明導電膜のみが残される。あるいは、フッ化による非導電処理などによって、第1の導電パターン10と第2の導電パターン20以外の領域を非導電化してもよい。
【0026】
または、微細線材としてカーボンナノチューブが使用される。カーボンナノチューブの平均短軸径は5nmよりも大きく20nm以下であり、平均長軸長は50μmよりも大きく150μm以下である。カーボンナノチューブが分散剤に分散されたインクが基板6の表面6aに塗工され、分散剤が洗浄除去されて、カーボンナノチューブによる透光性導電膜が形成される。透光性導電膜が定着した後に、エッチングやレーザ加工などによって、第1の導電パターン10と第2の導電パターン20を形成する透明導電膜のみが残される。
【0027】
図2に示すように、第1の導電パターン10は、Y方向に連続する複数の通電路を形成しており、第2の導電パターン10は、X方向に連続する複数の通電路を形成している。
【0028】
図4には、
参考例として、第1の導電パターン10の一部が示されている。
図4では、第1の導電パターン10が、
図2とは90度相違する向きで示されている。第1の導電パターン10は、Y方向が第1の方向であり、X方向が第2の方向である。
第1の導電パターン10は、複数の電極層11と、それぞれの電極層11を連結させる配線層15とが連続して一体に形成されている。
図4には、それぞれの電極層11ならびに配線層15をY方向に二分する中心線Oyが示されている。それぞれの電極層11はY1側に第1の端部11aを有し、Y2側に第2の端部11bを有している。第1の端部11aと第2の端部11bは、中心線Oy上に位置している。電極層11は、正四角形または菱形形状であり、中心線Oyを挟んでX1側とX2側とで線対称形状である。
【0029】
電極層11は中心線Oyを挟んでX方向へ対称形状であれば、円形や楕円形であってもよいし、
図4に示すような四角形の各辺が凸曲線で形成されていてもよい。
【0030】
それぞれの電極層11の一部で幹部12が形成されている。幹部12は、中心線Oyに沿って途切れることなく連続する部分であり、幹部12は配線層15とも連続している。
図4に示す電極層11では、幹部12のX方向の幅寸法がY方向の全長にわたって均一であり、幹部12は配線層15と同じ幅寸法Wで形成されている。
【0031】
図4に示すように、それぞれの電極層11には、複数のスリット13が形成されている。電極層11による導電領域は複数のスリット13により分割されている。スリット13は、エッチングやレーザ加工により導電性の微細線材を除去することで形成され、または銀ナノワイヤを非導電化させることで形成される。スリット13は、X方向に直線的に形成されて平行に延びている。スリットの本数と配置位置は、中心線Oyを挟んでX1側とX2側とで対称である。
【0032】
それぞれのスリット13は、幹部12に入り込むことなく、幹部12を残して、電極層11のX1側とX2側に向く縁部を切断するまで、X方向へ向けて直線的に連続して形成されている。電極層11は、幹部12以外の領域において、スリット13によって分岐部14a,14b,14cに分割されている。分岐部14a,14b,14cは中心線Oyを挟んでX1側とX2側で線対称に形成されている。
【0033】
電極層11においてY方向の中央に位置する第1の分岐部14aは、X方向の幅寸法が一番長く、その両側に位置する一対の第2の分岐部14b,14bのX方向の幅寸法は第1の分岐部14aよりも短い。そしてY方向の両端部に位置する第3の分岐部14c,14cのX方向の幅寸法が最も短い。第1の分岐部14aと第2の分岐部14bならびに第3の分岐部14cのY方向の長さ寸法mは互いに同じである。
【0034】
電極層11の、幹部12とそれぞれの分岐部14a,14b,14cとの境界部では、前記スリット13と直交してY方向に延びる小スリット13aが形成されている。幹部12とそれぞれの分岐部14a,14b,14cとの境界部において、分岐部14a,14b,14cの基部のY方向の長さ寸法pは前記長さ寸法mよりも短くなっている。基部のY方向の長さ寸法pは、幹部12ならびに配線層15のX方向の幅寸法Wと一致していることが好ましい。
【0035】
図2に示すように、それぞれの第2の導電パターン20は複数の電極層21を有している。それぞれの電極層21は、第1の導電パターン10を挟むようにして、互いに独立して形成されている。第2の導電パターン20の電極層21は、第1の導電パターン10の電極層21を90度回転させたものと同じ形状である。それぞれの電極層21は、Y方向に延びる複数のスリット23によって複数の分岐部に分岐されている。
【0036】
第2の導電パターン20の電極層21は、スリット23で分岐された分岐部を有し、
図4に示す第1の導電パターン10の電極層11を90度回転させたものと一致している。そのため、第1の導電パターン10と第2の導電パターン20の感度の差を無くしまたは少なくすることができる。なお、本発明では第2の導電パターン20の電極層21にスリット23を形成しなくてもよい。
【0037】
図3に、第1の導電パターン10と第2の導電パターン20との交差部の断面構造が示されている。交差部では、第1の導電パターン10の配線層15の上に絶縁層31が形成され、その表面にブリッジ配線層32が形成されている。ブリッジ配線層32によって、配線層15の両側に位置する第2の導電パターン20の電極層21どうしが導通させられている。
【0038】
図2に示すように、第1の配線層10の最もY2側に位置する電極層11の第2の端部11bから引出し配線層16が一体に延び出ている。引出し配線層16は、
図4に示している電極層11どうしを連結している配線層15と同じ幅寸法で、電極層11と一体に形成されている。引出し配線層16は、導電性の微細線材で形成されているが、その表面には、銀などの低抵抗材料で形成された導電層が重ねられて形成されている。
【0039】
第2の導電パターン20の最もX2側に位置する電極層21からも引出し配線層26が延び出ている。引出し配線層26の構造は引出し配線層16と同じである。
図1に示すように、基板6の表面では、Y2側の端部に複数のランド部17,27が形成されている。複数のランド部17のそれぞれは前記引出し配線層16に導通され、複数のランド部27のそれぞれは前記引出し配線層26に導通されている。
【0040】
入力装置5は、第1の導電パターン10と第2の導電パターン20との間に静電容量が形成されている。入力操作によってカバーパネル4の表面の操作面4aに指を接近させまたは接触させると、第1の導電パターン10の電極層11と指との間の静電容量または第2の導電パターン20の電極層21と指との間の静電容量が付加されて、静電容量の合計値が変化する。
【0041】
駆動方法は、例えば、第1の導電パターン10に対して各列ごとに順番に駆動電力を印加し、全ての第2の導電パターン20から検出される電流値を計測することで、複数の第1の導電パターン10のどれに指が最も接近しているかを算出できる。また、第2の導電パターン20に対して各列ごとに順番に駆動電力を印加し、全ての第1の導電パターン10から検出される電流値を計測することで、複数の第2の導電パターン20のどれに指が最も接近しているかを算出できる。この検出動作によって、カバーパネル4の操作面4aにおいて指が接触している操作箇所のX−Y座標上の位置を特定できる。
【0042】
図5(A)に、比較例となる電極層111と、この電極層111を連結する配線層115とが示されている。電極層111と配線層115は、前記実施の形態と同様に、金属ナノワイヤやカーボンナノチューブなどの導電性の微細線材で形成されている。電極層111は、
図4に示す電極層11と同じ四角形状であるがスリット13は形成されていない。
【0043】
この種の入力装置5では、帯電している物が操作面4aに接近したときなどに、電極層に対する放電が発生し、電極層に過大な電流が流れることがある。
図5(A)に示す比較例では、電極層111と配線層115とで面積が極端に相違し、電極層111と配線層115とで電流容量が大きく相違している。そのため、A´点に放電が与えられると広い面積の電極層111に過大な電流が発生する。この過大な電流が配線層115に流れたときに、配線層115で電流の集中が高まり、配線層115が発熱し、配線層115に存在する微細線材が焼き切れることがある。
【0044】
図4に示す
参考例の第1の導電パターン10では、例えば電極層11のA点に放電されると、電流の経路は、破線で示すように、A点を含む第1の分岐部14aから幹部12を通過し、配線層15と幹部12を経てB点に向かうものと予測できる。分岐部14aのY方向の幅寸法mと幹部12のX方向の幅寸法Wの差は、
図5に示す電極層111と配線層115との差に比べると十分に小さい。また、分岐部14aの基部は小スリット13aによって幅寸法pが狭められ、幅寸法pは幹部12の幅寸法mとほぼ一致している。さらに、幹部12と配線層15とで幅寸法Wが一致している。
【0045】
そのため、A点からB点に至る電流経路で、電流容量に極端な差が生じにくくなっている。特に、幹部12と配線層15とが同じ幅寸法でY方向へ連続する電流通路となっているので、配線層15のみに電流が集中することがない。また、電流の集中箇所が、小スリット13aで幅寸法が狭められている部分など、複数箇所に分散される。したがって、配線層15が加熱して微細線材が焼き切れるという現象を抑制しやすくなる。
【0046】
次に、
図4に示す
参考例におけるA点からB点までの抵抗値R0と、
図5に示す比較例におけるA´点からB´点までの電流経路の抵抗値R1とを比較する。この計算では、
図4に示す第1の導電パターン10を形成する透光性導電層の面積抵抗と、
図5(A)に示す比較例の導電パターンを形成する透光性導電層の面積抵抗を共にRsとする。その他の各部の寸法は、
図4と
図5に記載されている通りである。
【0047】
(
図4に示す
参考例)
図4に示すA点からB点に至るまでの電流経路の抵抗値R0は、概算で以下の通りである。
【0048】
R0=Rs×L/2÷m(第1の分岐部14a)+Rs×1.5L÷W(電極層11の1.5個分)+Rs×d÷W(配線層15)
【0049】
ここで、L=7mm、m=0.5mm、W=0.1mm、d=0.2mmと仮定すると、計算値は、R0=114×Rsとなる。A点からB点までの電流経路に沿った長さ(ほぼ2×L)を基準とした単位長さ当たりの抵抗値は、R0a=114×Rs/14=8.14×Rsである。
【0050】
一方、配線層15の単体での抵抗値Rnは、Rs×d÷W=2×Rsである。配線層15の電流経路に沿う単位長さ当たりの抵抗値は、Rna=2×Rs/0.2=10×Rsである。
【0051】
配線層15での単位長さ当たりの抵抗値Rnaと、A点からB点までの電流経路の単位長さ当たりの抵抗値R0aとの比は、Rna/R0a=1.23である。
【0052】
(
図5に示す比較例)
次に、
図5に示す比較例では、点A´から点B´までの電流経路の抵抗値を算出するために、ハッチングで示す領域が抵抗値として寄与すると仮定している。
【0053】
図5(B)は台形の導体の抵抗値Rxの求め方を示している。導電層の厚みをtとし抵抗率をρとすると、抵抗値Rxは次の積分式で求められる。
【0054】
Rx=∫[x=0→L]{ρ/t/(a+(b−a)×(x/L))}dx
これを計算すると、
Rx=Rs×L×ln{(b/a)/(b−a)}
ただし、lnは自然対数。
【0055】
図5に示す左側の配線層111の抵抗値Rx1は、幅がW→L/√2と変化し、長さがL/√2/2となる台形の抵抗体2個分として計算する。
【0056】
Rx1=2×Rs×L/(√2/2)×ln{(L/√2/W)/(L/√2−W)}=Rs×5×ln{(5/0.1)/(5−0.1)}=3.99×Rs
配線層115の抵抗値Rx2は、Rx2=2×Rsである。
【0057】
右側の電極層111の抵抗値Rxは、幅がW→Lと変化し、長さがLとなる台形の抵抗体の2個分として計算する。
【0058】
Rx3=2×Rs×L×ln{(L/W)(L−W)}=Rs×14×ln{(7/0.1)(7−0.1)}=8.62×Rs
全抵抗R1は、R1=Rx1+Rx2+Rx3=14.61×Rs
A´点からB´点までの電流の通過経路長をL+L/√2とすると、電流経路での単位長さ当たりの抵抗値はR1a=1.218×Rs
配線層15での単位長さ当たりの抵抗値Rnaと、A´点からB´点までの電流経路の単位長さ当たりの抵抗値R1aとの比は、Rna/R1a=8.21である。
【0059】
(
参考例と比較例との対比)
上記概算では、
図4に示す
参考例では、配線層15への電流の集中の確率が、
図5に示す比較例に対して(1.23/8.21)×100(%)=15(%)である。
【0060】
なお、
図4に示す第1の導電パターン10と同じパターンを90度回転させてX方向に連続させた導電パターンと、Y方向に連続する第1の導電パターン10とを、基板の表裏両面に別々に形成してもよい。
【0061】
図6に、本発明
の実施の形態の導電パターン210が示されている。この導電パターン210は、四角形の電極層211と配線層215を有している。電極層211には複数のスリット213が形成されて、電極層211に、分岐部214a,214b,214cと幹部212とが形成されている。
【0062】
参考例と異なり、スリット213のX方向の長さが場所によって相違しており、幹部212と配線層215とが連続してY方向に延びる電流通路としては、
幹部212のY方向での中央部で幅寸法W1が最大になり、配線層215の中央部で幅寸法W0が最小になっている。この形状では幹部212と配線層215とが連続する電流経路での配線抵抗を低下させることができる。この場合に、W1/W0は5以下が好ましく、さらには3以下が好ましい。
【0063】
図7に本発明の
実施の形態の他の応用例となる導電パターン310が示されている。個々の導電パターン310は、1個の電極層311と、この1個の電極層311の端部311bから連続する配線層315とを有している。個々の導電パターン310は、個々の電極層311がスリット313を有して複数の分岐部に分岐されている。
【0064】
図7に示す導電パターン310は、電極層311が1個ずつ独立し、それぞれの電極層311に個別に通電されるため、感度が高く、検知出力の分解能も高くなる。この導電パターン310においても、電極層311と配線層315との境界部における過大電流の集中を抑制でき、境界部で微細線材が焼き切れる現象を抑制しやすくなる。