(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6334798
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】アシストスーツ
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20180521BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
A61H1/02 G
A41D13/00 102
A41D13/00 105
A41D13/00 112
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-187067(P2017-187067)
(22)【出願日】2017年9月27日
【審査請求日】2018年3月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512129848
【氏名又は名称】株式会社富樫縫製
(74)【代理人】
【識別番号】100067091
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100198797
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 裕
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 三由
【審査官】
立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−011693(JP,A)
【文献】
特開2013−144858(JP,A)
【文献】
特開2003−153928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A41D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着者の背中を覆うように形成されたベスト背面部と、
前記被着者の腰に後方から巻きつけて固定自在の腰ベルトと、
前記ベスト背面部の左右肩部から被着者の胸の前面に沿って下降し、下端が前記腰ベルトにそれぞれ止着された肩ベルトと、
前記ベスト背面部の背面の上部左右に形成されていると共に下方から上方に抜ける開通穴が形成されて前記肩ベルトへ連続するように形成された弾性体ポケットと、
前記腰ベルトに形成されたバックプレートポケットと前記バックプレートポケットに内蔵されたバックプレートに対して下端が回転自在にカシメ止めされていると共に前記弾性体ポケットの開通穴内に先端側が挿通され、かつ側面視S字状に形成された帯状弾性部材と、
前記被着者の臀部を覆い、かつ前記腰ベルトに上端が連結されて成る伸縮性の臀部シートと、
前記臀部シートの下縁に止着されていると共に被着者の左右の大腿部に固定自在の大腿部ベルトと、
で構成された被着者の前屈及び座位から立ち姿勢に回復する力を助勢するアシストスーツ。
【請求項2】
被着者の胸の正面で前記左右の肩ベルトを寄せるようにして連結するためのストラップを設けてなる請求項1に記載のアシストスーツ。
【請求項3】
前記肩ベルトの一部を伸縮性素材で形成してなる請求項1に記載のアシストスーツ。
【請求項4】
前記帯状弾性部材を2枚以上で形成すると共に前記ポケットの数をこの帯状弾性部材の枚数に合わせて形成してなる請求項1に記載のアシストスーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前屈姿勢及び座位姿勢を伴う被着者が身体に装着して使用することにより、前屈姿勢及び座位姿勢から立位姿勢に回復する際に被着者が受ける身体的な負荷を軽減するアシストスーツに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等において前屈姿勢及び座位姿勢をとることの多い作業従事者や介護施設の従事者、或いは農作業従事者等であって、前屈姿勢及び座位姿勢を伴う被着者が立位姿勢に回復するときの身体的負荷を軽減するために身体に装着して使用する補助装置の例として次のような内容のものが公知である。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の補助装置は、曲げ方向に弾性を有する弾性部材10を背部から大腿部に至るよう身体背面に左右独立して配置し、弾性部材の上端はベスト状衣服20に設けられた保持部21において長手方向に摺動自在となるよう身体に装着し、弾性部材の下端は大腿部に装着する大腿部ベルト30と連結し、大腿部ベルト3と連結する臀部パッド40を体幹側部に位置する連結ベルト50によってベスト状衣服から吊り下げ、前屈すると弾性部材の復元力により腰部の負担が軽減すると共に、弾性部材上端の摺動により身体背面の体表距離変化が吸収され、拘束感なく動作することが出来、また、連結ベルトにより弾性部材の装着位置が保持されるため、装着位置保持のために身体を周方向に締め付ける必要が無い構成である。
【0004】
しかし、この補助装置において、弾性部材10は大腿部ベルト30の下端部に止着されているため、前屈動作時の弾性部材10は大腿部から臀部の外を通って背面まで一連に繋がれて湾曲するため、前屈時の復元力には有効であるが、座位姿勢そのものがとれないため、使用上不便である。
【0005】
また、特許文献2には、簡易な操作で腰背部の筋を補助する機能を解除又は復帰できる腰部負担軽減具をとして、
左肩、背中、右腰部、右臀部、及び右大腿背面部を通って右膝部にかけて配置される一方の主部材11と、右肩、背中、左腰部、左臀部、及び左大腿背面部を通って左膝部にかけて配置される他方の主部材12とを備え、一方の主部材11と他方の主部材12とは背中で交差し、一方の主部材11と他方の主部材12とは交差箇所13より下方で離間し、一方の主部材11は交差箇所13より下方で右体側部に変位し、他方の主部材12は交差箇所13より下方で左体側部に変位した圧迫回避機能付き腰部負担軽減具が開示されている。
【0006】
この負担軽減具は、腰背部の筋を補助する機能に特化されていて、前屈や座位から立位に復元する際の補助力には殆ど寄与しない。
【0007】
また、特許文献3には、胸を張りながら骨盤の前傾姿勢を保つことを効果的に補佐できる衣服であって、アンダーウェア1の背面部には、大殿筋の仙骨側を、当該仙骨に対応する領域を内側に位置させるようにカバーするパターンPA1が形成され、アンダーウェア1の正面部において、パターンPA1が形成された領域に対応する正面部の領域内の下部領域で下腹部周辺をカバーするようにパターンPA2が形成され、背面部には、着用時に胸部を広げる向きの張力を両肩部に発生させるパターンPB1が形成された衣服が開示されている。
【0008】
この衣服の場合は、アンダーウェアの各部位にパターン化された弾性素材を継ぎ合わせているだけのため、動きの自由度は保たれるが、前屈時及び座位時から立位までの復元力への寄与は少なく、またこれを大きく設定すると動作そのものがしにくくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5887671号公報
【特許文献2】特開2016−083254号公報
【特許文献3】特開2011−157674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、前屈及び座位姿勢を自由にとることができると共にこれらの姿勢から立位に移る時の復元力を付加したアシストスーツを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、被着者の前屈及び座位から立ち姿勢に回復する力を助勢するアシストスーツにおいて、被着者の背中を覆うように形成されたベスト背面部と、前記被着者の腰に後方から巻きつけて固定自在の腰ベルトと、前記ベスト背面部の左右肩部から被着者の胸の前面に沿って下降し、下端が前記腰ベルトにそれぞれ止着された肩ベルトと、前記ベスト背面部の背面の上部左右に形成されていると共に下方から上方に抜ける開通穴が形成されて前記肩ベルトへ連続するように形成された弾性体ポケットと、前記腰ベルトに形成されたバックプレートポケットと前記バックプレートポケットに内蔵されたバックプレートに対して下端が回転自在にカシメ止めされていると共に前記弾性体ポケットの開通穴内に先端側が挿通され、かつ側面視S字状に形成された帯状弾性部材と、前記被着者の臀部を覆い、かつ前記腰ベルトに上端が連結されて成る伸縮性臀部シートと、前記臀部シートの下縁に止着されていると共に被着者の左右の大腿部に固定自在の大腿部ベルトと、で構成されたことを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアシストスーツにおいて、被着者の胸の正面で前記左右の肩ベルトを寄せるようにして連結するためのストラップを設けてなること、を特徴とするものである。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のアシストスーツにおいて、前記肩ベルトの一部を伸縮性素材で形成してなること、を特徴とするものである。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のアシストスーツにおいて、前記帯状弾性部材を2枚以上で形成すると共に前記ポケットの数をこの帯状弾性部材の枚数に合わせて形成してなること、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、直立姿勢から前屈姿勢に移る時は帯状弾性帯は身体の前屈に併せてS字変形部が円曲変形する。
【0016】
そして、この前屈姿勢から、例えば重い荷物を持ち上げようとすると、作業者固有の力に併せて蓄勢された帯状弾性帯の復元力がベスト背面部のポケットを介して上半身が起き上がる方向に作用する。
【0017】
この結果、前屈時に帯状弾性帯の変形作用により蓄勢された復元力が作業者の上半身に作用して負荷が軽減されるため、荷物等を楽に持ち運ぶことができると共に作業者の力以上の重さの荷物を持ち運ぶこともできる。
【0018】
この原理により、荷物の積み降ろし、或いは移動等に伴う作業者への負担を軽減できる。
【0019】
また、着座時には、腰ベルトと大腿部間は伸縮性の臀部シートで締ばれているため、上半身は直立したままで腰周りは自由に屈曲できることから、坐位姿勢がとり易く、また立ち上がることも容易である。
【0020】
さらに、直立時及び着座時において側面視S字状に形成された帯状弾性部材が脊椎(背骨)のS字カーブに沿って背中を保持するため、アシストスーツ装着による違和感が少なく、同時に、腰部(腰椎部)を腰ベルトと帯状弾性部材が適度な圧力で保持する作用が加わり、姿勢の安定化と疲労軽減効果がある。
【0021】
本発明の帯状弾性帯の上端は止着されていないため、前屈姿勢時に帯状弾性帯上端と弾性体ポケット間に上下のスライド作用が加わることによって肩の前後方法の動きの自由度が増し、前屈または着座姿勢への移行及び前屈または着座姿勢からの回復動作を簡単かつスムーズに行うことができる。
【0022】
また、帯状弾性帯の下端はカシメによりバックプレートに回転自在に止着されているため、上半身の左右への屈曲、及びひねり動作の自由度を阻害することが無く、自然に作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】(A)はアシストスーツを装着した被着者の正面図である。(B)はアシストスーツを装着した被着者の背面図である。
【
図3】(A)は帯状弾性帯とバックプレートの側面視断面図である。(B)は帯状弾性帯とバックプレートの斜視図である。
【
図7】被着者が座位姿勢をとった時の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0024】
以下、添付した図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1はアシストスーツを正面側から見た図、
図2の(A)は被着者がアシストスーツを装着した状態の正面図、
図2の(B)は被着者がアシストスーツを装着した状態の背面図である。
【0026】
本発明のアシストスーツにおいて、符号の1は被着者の背中に密着するベスト背面部であって、このベスト背面部1には左右にナイロンベルト製のポケット3、3aが形成され、このポケット3、3a内には下方から上方へ抜ける開通穴4、4aがそれぞれ形成されている。
【0027】
なお、本実施例では、ナイロンベルトでポケット3、3aを形成しているが、材質はナイロンに限らず伸縮素材ベルト、ストレッチ素材、パワーネット、ゴムベルトなどを使用することも可能である。また、ベスト背面部1に対してポケット3、3aを直接に形成しても良い。
【0028】
5は前記ベスト背面部1の下端に連着した腰ベルトであって、この腰ベルト5は、被着者の腰に後方から巻き付けると共に前面で止めベルト6、6aにより面ファスナー7、7aを合わせることにより固定自在である。
【0029】
なお、前記止めベルト6、6aの素材には弾性材を使用することにより締め付け力に自由度を持たせるようにしても良い。
【0030】
符号の8は腰ベルト5の下に止着された臀部シート8であって、この臀部シート8は伸縮性を有し、その両側から前方に向けて大腿部ベルト9、9aが形成されていると共にこの大腿部ベルト9、9aの左右の先端にはそれぞれ面ファスナーを有する固定ベルト10、10aが取り付けられている。
【0031】
この臀部シート8の形成素材としては通気性のあるポリエステル製伸縮メッシュ素材が実用的には考えられるが、伸縮性及び耐久性を有する限りその他の素材、例えばニットやジャージー、パワーネット、ゴムやクロロプレンなどを使用しても良い。
【0032】
11、11aは、前記ベスト背面部1のポケット3、3a上端から連続して被着者の両肩を通り胸の前面に沿って下向きに形成された肩ベルトであって、この肩ベルト11、11aの下端には止めベルト12、12aを介して腰ベルト5に止着されると共に、止めベルト12、12aはバックル13、13aにより被着者の肩の高さに合わせて長さを自在に調整することができる。
【0033】
肩ベルト11,11a及び止めベルト12、12aにはナイロンベルトを使用したが、体へ密着性を上げて弾性体の作用を有効にしながら窮屈感を少なくするため、弾性を有する伸縮素材ベルト、ゴムベルトを使用することも有効である。
【0034】
14は肩ベルト11、11aを胸の正面で引き寄せて止める胸ベルト固定ストラップであって、肩ベルト11、11aが左右に開くのを防ぐことができる。
【0035】
この胸ベルト固定ストラップ14は、本実施例では樹脂製バックルで止める構成であるが、その他の止め具、例えば面ファスナーやスナップ等を用いるようにしても良い。
【0036】
15、15aは、腰ベルト5に形成されたバックプレートポケット3bに内蔵されたバックプレート2にリベット止め17、17aされた帯状弾性帯であって、この帯状弾性帯15、15aの上端16、16a側は、
図1図2(B)に示すように弾性体ポケット3、3a下端のポケット開通穴4,4aに連続するバックプレートポケット3bの開口部3cからスライド自在に挿入されていて、側面視は被着者の背中の形状に合わせてS字状を呈している。
【0037】
帯状弾性帯15、15aは適度な弾性を有しながら側面視S型に加工しやすく軽量であることが望ましい。本実施例ではCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を使用したがこれに限定されることは無く、FRP,CFRTPなどカーボンやガラス繊維を添加した繊維強化プラスチック、またはアルミニウム、ステンレス、バネ鋼などの金属を使用することも可能である。
【0038】
バックプレート2は前記リベット止め用の穴が設けられ、腰部に沿った湾曲に形成されている。材質はPP材(ポリプロピレン)を使用したがこれに限定されず、ナイロン、ポリエチレン、繊維強化プラスチックなどの樹脂、または金属板なども使用可能である。
【0039】
また、前記帯状弾性体15、15aとバックプレート2は、前述のようにバックプレートポケット3bの開口部3cから出し入れ自在の構造である。このため、作業による汗や汚れが発生した場合は帯状弾性体15、15aとバックプレート2を簡単に取り外してアシストスーツ本体の洗濯が容易に可能である。
【0040】
なお、上記実施例において、帯状弾性帯15、15aは2枚であるが、被着者の体力及び作業の質に応じて2枚以上の4枚(4列)に増加することもできるが、枚数を変えずに素材の厚みを変化させたり弾性力の違うものを用意して交換して使用できるようにしても良い。
【0041】
図5および
図6は、アシストスーツを装着した被着者が前屈している状態を示し、臀部シート8及び腰ベルト5は身体に密着したまま前屈動作時に帯状弾性帯15、15aは身体の曲がりに沿ってS字状に湾曲し、このとき弾性体には蓄勢が行われる。
【0042】
この結果、荷物を持ち上げるとき、前屈から元の姿勢に戻ろうとする所謂復元力が作用し、この復元力分身体の回復力が助勢される。
【0043】
図7は、アシストスーツを装着した被着者が座位姿勢をとっている状態を示し、この時臀部シート8のところで腰は約90度屈曲しており、この屈曲は臀部シート8の伸縮性により自由度が確保され、立ち姿勢に復元するときは臀部シート8の復元力が作用する。
【0044】
本発明のアシストスーツは、
図5、
図6、
図7で示した形態での使用が可能であることから、荷物の運搬作業従事者、介護施設の従事者、農作業の従事者等、前屈及び座位姿勢を伴う全ての作業従事者が利用可能であり、また、長年の作業によってついた動作時の身体の癖の解消・矯正にも有効であると共に比較的安価に製作することが可能なため、広く普及する可能性を有している。
【0045】
また、臀部シート以下の部分をファスナーなどで分離可能な構造とすれば、腰部ベルトより上の部分のみを使用し、運転やデスクワークなどの座位姿勢専用としての使途も可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 ベスト背面部
2 バックプレート
3,3a 弾性体ポケット
3b バックプレートポケット
3c 開口部
4,4a ポケット開通穴
5 腰ベルト
6,6a 止めベルト
7,7a 面ファスナー
8 臀部シート
9,9a 大腿部ベルト
10,10a 固定ベルト
11,11a 肩ベルト
12,12a 止めベルト
13,13a バックル
14 肩ベルト固定ストラップ
15,15a 帯状弾性帯
16,16a 帯状弾性帯の上端
17,17a リベット止め
【要約】 (修正有)
【課題】前屈及び座位姿勢を自由にとることができると共にこれらの姿勢から容易に回復するための復元力を助勢するアシストスーツを提供する。
【解決手段】背中を覆うベスト背面部1と腰に後方から巻きつけて固定自在の腰ベルト5と、前記ベスト背面部の左右頂部から両肩及び胸の前面に沿って下降し、下端が前記腰ベルトに止着された肩ベルト11,11aと、前記ベスト背面部の上部左右に形成されている開通穴が形成されたポケット3bと、前記腰ベルトに形成されたバックプレートポケットと前記バックプレートポケットに内蔵され下端が回転自在にカシメ止めされ、前記ポケットの開通穴内に先端側が挿通され、かつ側面視S字状に形成された帯状弾性部材と臀部を覆い、前記腰ベルトに上端が連結される臀部シート8と、前記臀部シートの下縁に止着され大腿部に固定自在の大腿部ベルト9,9aで構成される助勢するアシストスーツ。
【選択図】
図1