【実施例】
【0039】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0040】
実施例1 IFNを用いた樹状細胞の調製(その1)
1.樹状細胞の作製
がん患者のインフォームド・コンセントを得て、成分採血(アフェレーシス)より採取した末梢血単核球 (Peripheral Blood Mononuclear Cells: PBMCs)を原料とし、樹状細胞 (dendritic cell: DC)の作製を行った(医倫理審査番号: 2107, 2012年9月4日承認)。顆粒球単球コロニー刺激因子(Granulocyte-macrophage colony stimulating factor (GM-CSF))とインターロイキン4(interleukin-4 (IL-4))存在下で単球を培養して得られるIL-4 DCと、A群溶血性連鎖球菌の自然変異株(Su株)をペニシリンで処理した製剤OK432 (商標登録:ピシバニール)、プロスタグランジンE2(prostaglandin E2 (PGE2))を用いて成熟化したIL-4-OK DCの作製では、古典的な接着培養法を用いた。単球の割合で2〜4×10
6 細胞/mlにAIM-V培地(Invitrogen Life Technologies)でPBMCsを懸濁し、接着性の培養皿BD Primaria(商標) Cell Culture Dish (BD Bioscience)に播種し、30分後に非接着細胞を除去し、翌日にGM-CSF(50 ng/ml; Gentaur)、IL-4(50 ng/ml; R&D Systems)を添加したAIM-V培地に交換し、接着した単球を5日間培養を行って、スクレーパーを用いて未成熟なIL-4 DCを回収した。成熟化のために、10μg/mlのOK432(streptococcal preparation, Chugai Pharmaceutical Co, Ltd, Tokyo, Japan), 50 ng/mlのPGE2 (Daiichi Fine Chemical Co, Ltd, Toyama, Japan)を含む新鮮なAIM-V培地に懸濁し、さらに16〜24時間の培養を行って樹状細胞を作製した。この方法で作製した樹状細胞をIL-4-OK DCと呼ぶ。
【0041】
一方で、IFN(インターフェロン)-α (IFN-α)とGM-CSF存在下で単球を培養して得られるIFN DCと、OK432、PGE2で成熟化したIFN-OK DCの作製では、PBMCsからCD14マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)で純化した単球を使用した。日常的に95%以上の純度で精製した単球を使用し、GM-CSF (1,000U/ml; Miltenyi Biotec)、PEG化インターフェロン α-2b製剤のPEGINTRON(登録商標)(1μg/ml; MSD)を含むAIM-V培地に2〜4×10
6 細胞/mlで懸濁し、非接着性の培養皿HydroCell (CellSeed)に播種し、3日間の培養を行ってIFN DCを作製した。また、培養開始4日目(3日間の培養後)のIFN DCの培養液に成熟培地を補充し、終濃度10μg/mlのOK432、10 ng/mlのPGE2の条件で、さらに16〜24時間の培養を行ってIFN-OK DCを作製した。この方法で作製した樹状細胞をIFN-OK DCと呼ぶ。例外的に、一部の実験ではインターフェロンα-2b 製剤のIntron(登録商標)A(1,000U/ml; MSD)を用いて同様に作製を行った。
【0042】
図1に、IL-4-OK DCの作製方法(
図1A)及びIFN-OK DCの作製方法(
図1B)の概要を示す。
【0043】
本実施例では、IL-4-OK DC、IFN-OK DCの他に、IL-4とOK432の代りにIL-4のみを用いて作製した樹状細胞及びIFNとOK432の代りにIFNのみを用いて作製した樹状細胞についても検討を行った。それぞれ、IL-4 DC及びIFN DCと呼ぶ。
【0044】
用いるIFN-αの種類、INF-αの添加濃度、培養期間及び用いるPGE2濃度については検討を行った。
【0045】
作製した樹状細胞の細胞傷害性の測定は、以下の方法で行った。
【0046】
細胞傷害性試験
慢性骨髄性白血病株K562(ATCC)、又は、ヒト膵臓癌由来細胞株MIA PaCa2 (RIKEN BRC)を、carboxyfluorescein succinimidyl ester, CFSE (5μm; Molecular Probes)を添加したFCS 0.1%含有PBSで懸濁し、37℃で10分反応し、AIM-V培地で洗浄を行った。FCSを10%含むAIM培地を用いて、5×10
5のDC(エフェクター)とCFSEで染色したがん細胞(標的)をE:T(エフェクター細胞/標的細胞) = 50:1の割合で混合し、37℃で18時間の反応を行って、FACS flowで洗浄し、2μg/mlのPI(propidium iodide)で染色して、FACSを用いて死細胞の検出を行った。CFSE陽性かつPI陽性の細胞数をCFSE陽性細胞数で除した値を細胞傷害性(cytotoxicity)の割合として評価した。陰性コントロールとして、未染色のがん細胞をエフェクターとし、CFSE染色したがん細胞をE:T = 50:1で混合し、同様に反応を行った。
【0047】
抗体を用いた阻害試験では、10μg/mlの抗TRAIL抗体又は抗FASリガンド抗体(eBioscience)をDCsとあらかじめ1時間インキュベーションした後に、CFSEで標識したがん細胞を混合して反応を行った。
【0048】
(1)IFN-α製剤の選定
GM-CSFとPEGINTRON(1μg/ml)又はIntronA(1,000 U/ml)の2種類のIFN-α製剤を用いてIFN DCを作製し、OK432添加の有無で細胞傷害性を測定した。CFSEで標識した慢性骨髄性白血病株K562を標的とし、それぞれの比率でDCを混合して18時間後に、死細胞の割合を測定し、細胞傷害性(%)を得た。エラーバーは平均値±標準偏差を示し、独立して実験を3回行った (n = 3の代表データ、Tukey-Kramer testで有意差の検定を行った。* p < 0.01, ** p< 0.001を示す)。
【0049】
結果を
図2に示す。
図2に示すように、OK432は細胞傷害性が上昇し、PEGINTRONを用いたIFN DCは、IntronAより高い細胞傷害性を示す。この結果より、IFN-α製剤としてPEGINTRONを用いた。
【0050】
(2)PEGINTRON濃度の検討
健常人donor
#4と、がん患者のpatient
#12の単球を用いて、細胞傷害性を基準に、PEGINTRONの至適濃度を検証した。各濃度で3日培養し、OK432による成熟化を1日加えて4日後にIFN-OK DCを回収した。
【0051】
図3に結果を示す。
図3Aはdonor
#4の結果を示し、
図3Bはpatient
#12の結果を示す。
図3に示すように健常人、がん患者において、高い細胞傷害性の認められた1,000 ng/ml (1μg/ml)を用いる事にした。これ以上の高い濃度では細胞が死滅し、測定する事は出来なかった。
【0052】
(3)培養期間の検討
PEGINTRONとOK432を用いて、単球の培養を1〜6日間行い、K562細胞を標的とした場合の細胞傷害活性及びMIA PaCa2を標的とした場合の細胞傷害性を測定した。結果を
図4に示す。
図4の上は、標的細胞としてK562細胞を用いた結果であり、donor
#4の結果(A)とpatient
#12の結果(B)を示す。
図4の下は、標的細胞としてMIA PaCa2を用いたpatient
#69の結果である。
【0053】
K562細胞を標的とした場合、健常人、がん患者において4日間の培養(IFN 3日後、OK432 1日)で高い細胞傷害性が認められた。
【0054】
MIA PaCa2に対しては、4日、5日の培養後に高い細胞傷害が見られ、培養期間の短縮から、4日間培養 (IFN 3days + OK432 1day)を採用した。また、K562及びMIA PaCa2に対する細胞傷害性を示す事が確認された。
【0055】
(4)PGE2濃度の検討
生細胞率、回収率、細胞傷害性にPGE2が与える影響を調べた。結果を
図5に示す。それぞれにおいて最も優れた(4)IFN DC培養のDay4において、成熟用培地を補充し、終濃度で10μg/mlのOK432、10 ng/mlのPGE2の条件で培養する工程を採用した。
【0056】
2.DC表現系の解析
作製したDCをFcR Blocking Reagent (Miltenyi Biotec)で10分間処理し、FITC(fluorescein isothiocyanate)又はPE(phycoerythrin)で付加された樹状細胞の指標となる抗体CD11c, CD80, CD86 and HLA-ABC (BD Pharmingen), CD14, CD40, CD83 and HLA-DR (eBioscience), CD197 (R&D Systems)で染色を行った。NK細胞の表現系の指標にはAPC-conjugated CD56 (BD Pharmingen)を用いた。FACS解析の直前に、2μg/ml のPropidium Iodide, PI (Sigma-Aldrich)を用いて死細胞を染色し、FACS CantoII (BD Bioscience)を用いて解析を行った。
【0057】
結果を
図6に示す。
図6AはIL-4-OK DCの結果であり、左からDay1、Day7及びDay8の結果である。
図6BはIFN-OK DCの結果であり、左からDay1、Day4及びDay5の結果である。アジュバント(免疫賦活剤)OK432添加後の、IL-4-OK DCのDay8、IFN-OK DCのDay5において、顕著にクラスター形成(細胞の凝集)が認められた。
図6Aの黒い矢印は細胞の接着を示し、スクレーパーで回収時に物理的にダメージを与える事で、生細胞率、収率低下の原因になると考えられた。一方、非接着培養法のIFN-OK DCは、培養期間を通じて、非接着性のディッシュのHydroCell dishに接着は見られなかった。回収したDCを用いたFACS分析により、細胞表面マーカーの発現を調べたところ、樹状細胞のマーカーとされるCD86, HLA-DRは発現を示し、CD14、CD56、CD83及びCD197の発現に違いが見られた。キラー細胞として知られるNK細胞マーカーのCD56発現は、IFN-OK DCに認められた。黒のスケールバーは50μmを示す。
【0058】
3.作製した樹状細胞の生細胞率と収率
トリパンブルー染色を用いて作製したDCの生細胞率を調べた結果を
図7に示す。IFN-OK DCはIL-4-OK DCに比べて、有意に高い事が明らかとなった(
図7A)。また、播種単球数に対して、培養して得られた生細胞DCの割合から、収率(生細胞DC/播種単球)を計算したところ、IL-4-OK DCに比べて、IFN-OK DCは有意な上昇を示した(
図7B)。本実施例では、がん患者の単球からDCを作成して解析を行った(n = 6)。有意差検定にWilcoxon signed rank testを用いた。* は P < 0.05を示す。
【0059】
4.抗原貪食能と抗原分解能の評価
抗原貪食能を調べるために、FCS:Fetal calf serum (Thermo Scientific)10%含有のAIM-V mediumを用いて、FITCで標識されたdextran (M.W. = 40,000, Molecular Probes)を250μg/mlに調製し、作製した細胞1×10
6 細胞/mlを混合して、37℃で3時間反応を行った。AIM-V培地で2回洗浄を行った後、FACS CantoIIを用いて測定を行った。抗原分解能を明らかにするために、FCS 10%含有のAIM-V培地にDQ オバルブミン(Molecular Probes)を10μg/mlの濃度で添加し、37℃で30分間の反応を行って、AIM-V培地で2回洗浄を行って、FACS CantoIIを用いて測定を行った。抗原貪食能、抗原分解能のそれぞれの試験において、4℃で反応させた細胞を陰性コントロールに使用し、37℃で得られたmean fluorescent intensity(平均蛍光強度) (MFI)から差し引いた値(ΔMFI)を、抗原貪食能、抗原分解能として評価した。
【0060】
図8に、がん患者の単球から作製したDCを用いて、FITC-デキストラン(FITC-dextran)の取り込みとDQオバルブミン(DQ-OVA)の分解能を調べて、ΔMFIのドットプロットで抗原貪食能(
図8A)と抗原分解能(
図8B)を示した (n = 6)。OK432刺激後、IFN DC, IL-4 DCの抗原貪食能及び抗原分解能は低下し、成熟型DCに亢進した。IFN-OK DCとIL-4-OK DCに有意な差は認めなかった(NS = not significant)。Wilcoxon signed rank testを用いて有意差の検定を行った。
【0061】
5.In vitro CTL誘導
HLA-A
*02:01のがん患者(patient
#29)から作製したDCと、末梢血リンパ球(Peripheral Blood Lymphocytes: PBL)を用いて、in vitro CTL誘導を行った。AIM培地を用いて合成ペプチドMART-1, 26-35 A27L (ELAGIGILTV)を20μg/mlに調製し、DCと混合して37℃で1時間パルスし、マイトマイシンC (MMC, 25μg/ml; Kyowa Hakko Kogyo)で1時間処理し、AIM培地で2回洗浄を行ってDCを調製した。IL-2 (Imunace, 2.5 U/ml; Shionogi)、IL-7 (5 ng/ml; R&D Systems)、IL-15 (10 ng/ml; PeproTech)を添加したAIM培地を用いて、1×10
6 のDCとPBLを1:10で混合し、12ウェルプレートで3〜5日間の培養を行った。細胞の増殖に応じて、FCS 10%含有AIM-V培地を補充し、さらに2〜3日の培養を行って細胞を回収した。回収した細胞を CD8-FITC (Beckman Coulter), CD3-APC (eBioscience), T-select HLA-A*02:01 MART-1 tetramer-ELAGIGILTV-PE (MBL)で染色し、MART-1特異的なCTLの検出を行った。
【0062】
HLA-A
*02:01がん患者の単球を用いてDCを作製し、MART-1抗原をパルスして、PBL:DC = 10:1の割合で混合し、1週間の培養の後、MART tetramerを用いて細胞傷害性T細胞 (cytotoxic T lymphocyte: CTL)の検出を行った結果を
図9に示す。CD8とMART tetramerで展開したパネル内の数値は、それぞれのDCによって誘導されたCD3
+及びCD8
+細胞中のMART tetramer
+の割合を示す。Beforeのパネルでは、誘導開始前のPBL中のMART特異的CTLの割合を示す。IFN DC又はIL-4 DCにOK432刺激を加える事で、CTL誘導能は上昇し、それらに大きな差は認められなかった(n = 3の代表データ、n数を増やして、有意差を検討中)。この結果より、OK432刺激は抗原提示能を上昇し、IFN-OK DCとIL-4-OK DCは同様の抗原提示能を示す事が分かった。
【0063】
6.サイトカイン産生の測定
AIM-V培地で作成したDCを2×10
5細胞/ml に調製し、24ウェルプレートに播種し、24時間後の培養上清を回収してサイトカインの測定を行った。インターロイキン-12 (IL-12 p70)及びインターフェロン-γ(IFN-γ) (R&D Systems)と腫瘍壊死因子-α(TNF-α), インターロイキン-6 (IL-6)及びインターロイキン-10, IL-10 (BD Bioscience)のELISA kitを用いて、プロトコール通りに反応を行って、分光光度計MULTISKAN FC (Thermo Scientific)を用いて測定を行った。
【0064】
結果を
図10に示す。
図10A、B、C、D及びEは、それぞれ、IL-12、IFN-γ、TNF-α、IL-10及びIL-6の産生能を示す。
図10に示すように、OK432添加後、サイトカン産生能は上昇の傾向を示し、IFN-OK DCとIL-4-OK DCのサイトカン産生に有意な差は認めなかった。Wilcoxon signed rank testを用いて有意差の検定を行った。
【0065】
7.作製した樹状細胞の細胞傷害性
細胞傷害性試験は、1.に記載の方法で行った。
(1)がん細胞を攻撃する細胞傷害性
がん患者から作製したDCを用いて、慢性骨髄性白血病株K562を標的として、E:T = 50:1で18時間の反応を行って、細胞傷害性を調べた。結果を
図11に示す。既存の報告の通り、IFN DCは細胞傷害性を示し、実験系が上手く働く事を確認した。興味深い事に、OK432刺激をIFN DCに加える事で(IFN-OK DC)、細胞傷害性が有意に上昇し、IL-4-OK DCに比べて、有意に優れた細胞傷害性を示す事が明らかとなった。Bonfferoniの調整を加えたWilcoxon signed rank testを用いて有意差の検定を行った(n = 8、NS = not significant, *はp < 0.05を示す)。
【0066】
(2)CD56発現と細胞傷害性の相関
作製したDCを用いてCD56発現をFACSを用いて調べた。K562を標的として、IFN DC, IFN-OK DCをeffectorとし、E:1 = 50:1の割合で18時間反応をさせて測定を行った。Wilcoxon signed rank testを用いて、IFN DC, IFN-OK DCの有意差を検定した(NS = not significant, n = 6)。細胞傷害性とCD56発現(ΔMFI)の相関をスピアマンの順位相関係数で示し、有意差検定を行った。結果を
図12に示す。
図12Aは各方法で作製した樹状細胞のCD56発現(ΔMFI)を示し、
図12BはIFN DCにおけるCD56発現と細胞傷害性の相関を示し、
図12CはIFN-OK DCにおけるCD56発現と細胞傷害性の相関を示す。IFN DCは、R = 0.637, p = 0.173, n = 6であり、IFN-OK DCは、R = 0.714, p = 0.136, n = 6であった。IFN-OK DCの細胞傷害性はCD56の発現と高い相関を示す事が明らかとなった。
【0067】
(3)IFN-OK DCによる細胞傷害の機構
FCSを10%含有したAIM培地にIFN DC, IFN-OK DCを懸濁し、各抗体を添加して1時間後に、TRAIL感受性のK562細胞、FasL(Fasリガンド)感受性のMIA PaCa2をそれぞれ E:T= 50:1で混合し、18時間後に細胞傷害性をFACSを用いて測定した。結果を
図13に示す。
図13Aは、K562細胞の結果を示し、
図13BはMIA PaCa2の結果を示す。抗TRAIL抗体、抗FasL抗体で処理する事で、それぞれK562, MIA PaCa2に対する細胞傷害性は有意に抑制される事が明らかとなった(n = 7、Wilcoxon signed rank testを用いて、有意差の検定を行った。* は p < 0.05を示す)。この結果より、IFN-OK DCによる細胞傷害の機構に、TRAIL、FasLの関与が明らかとなった。
【0068】
IFN DCはTRAILによって、K562を細胞傷害すると報告されていたが、本実施例では認められなかった。OK432刺激を加えたIFN-OK DCにおいて、TRAIL, FasLの働く事は報告が初めてである。
【0069】
本実施例において、統計解析は統計ソフトRを用いて、Wilcoxon signed rank test, Tukey-Kramer testにより有意差の検定を実施し、Spearman's rank-order correlationにより相関係数と有意差の検定を行った。
【0070】
実施例2 IFN及びOK432を用いた樹状細胞の調製(その2)
1.樹状細胞の作製 PBMCsからソーティングしたCD14陽性細胞をGM-CSF (1,000U/ml; Miltenyi Biotec)及びPEG化インターフェロン α-2b製剤のPEGINTRON(登録商標)(1μg/ml; MSD)を含む培地に2〜4×10
6 細胞/mlで懸濁し、非接着の培養皿を使用し3日間の培養を行って、IFN-DCを作製した(
図15−1A)。さらに、GM-CSF (1,000U/ml; Miltenyi Biotec)及びPEG化インターフェロン α-2b製剤のPEGINTRON(登録商標)(1μg/ml; MSD)に加え、10μg/mlのOK432(streptococcal preparation, Chugai Pharmaceutical Co, Ltd, Tokyo, Japan), 50 ng/mlのPGE2 (Daiichi Fine Chemical Co, Ltd, Toyama, Japan)を含むを含む成熟培地で1日の培養後にmIFN-DCを回収した(
図15−1B)。一方、PBMCsを接着性の培養皿に播種し、非接着細胞を除去した後に、GM-CSF(50 ng/ml; Gentaur)及びIL-4(50 ng/ml; R&D Systems)を添加した培地で5日間の培養を行ってimDCを調製し(
図15−1C)、さらに18-24時間のOk432(10μg/ml)及びPGE2(50 ng/ml)を加えた培地による成熟化を加えて、mIL-4-DCを回収した(
図15−1D)。それぞれのDCにおいて、回収時に位相差顕微鏡で観察を行った。結果を
図15−2A〜Dに示す。黒のスケールバーは50 mmを表す。
図15−2A〜Dに示されるように、培養皿に散在しているIFN-DC(
図15−2A)は、OK432の刺激により(mIFN-DC,
図15−2B)、細胞集団の凝集(クラスター)が認められ、典型的な成熟型DCの表現系を示した。mIFN-DC(
図15−2A)とmIL-4-DC(
図15−2D)のクラスター形成は同様の傾向であり、成熟型DCの表現系が確認された。
【0071】
2.OK432刺激によるIFN-DCの細胞傷害性の向上
培養開始からDay 4の
図1のIFN-DC(PEGINTRON添加)の培養液に、サイトカインカクテルにOK432添加の有無(?/+)の培地をそれぞれ補充して、Day5に細胞を回収し、細胞傷害活性の測定を行った。結果を
図16に示す。
図16に示すようにOK432添加有で細胞傷害性(%)が著しく向上した。
【0072】
3.OK432による細胞傷害の誘導
DCをエフェクター細胞(E)に用いて、CFSEで染色したK562細胞を標的(T)として、E : T = 50 : 1で混合して18時間後にPI染色を行って、DCによる細胞傷害を検証した(N = 11の代表的なデータ)。結果を
図17及び
図18に示す。
図17のDCの表記は
図15−1の表記に対応している。パネル内の数値は細胞傷害されたK562細胞の割合を示し、CFSEで染色したK562細胞中のPI陽性細胞の割合で算出した。
図17に示すように、PEGINTRON及びOK-432を用いて作製したmIFN-DCの細胞傷害性が最も大きかった。
図18は、K562に対する細胞傷害を、ボックスプロットに表示した(N = 11)。*p<0.05, **p<0.01, NS = not significant
【0073】
4.mIFN-DCの細胞傷害性の検討
(1)mIFN-DCの細胞傷害性とCD56の相関
作製したDCのCD56発現をFACSにて測定した。
【0074】
DCのCD56の蛍光平均強度(MFI)をドットプロットで表示し、OK432成熟による比較を行った。結果を
図19に示す(*, p<0.05)。
図19のDCの表記は
図15−1の表記に対応している。
図20に、mIFN-DCにおけるCD56のMFIと細胞傷害性の相関を表示した (N=12)。
図19及び
図20に示すようにPEGINTRON及びOK-432を用いて作製したmIFN-DCの細胞傷害性はCD56の発現量と相関していた。
【0075】
(2)OK432による細胞傷害の誘導への細胞接触の関与
CFSEで標識したK562細胞に対して、PKH26で染色したIFN-DC又はmIFN-DCを1:1で混合して18時間反応を行った後、DAPI(青色)で5分反応後、蛍光顕微鏡下で観察を行った。
図21に顕微鏡像を示す。白の矢印は、DAPI陽性の死細胞を示し、白のスケールバーは50 μmを表す。
図21に示すように、IFN-DCとK562細胞によるクラスター形成は小さく(
図21上)、細胞は散在し、死細胞の数は僅かであった。一方で、mIFN-DCとK562のクラスターは大きく顕著であり(
図21下)、クラスター内部のK562細胞に多数の死細胞が観察された。この結果より、細胞傷害の誘導には、クラスター形成、すなわち細胞同士の接触が重要である可能性が示唆された。
【0076】
次いで、K562またはMIA PaCa-2を標的として、トランスウェルメンブレン0.4mmの有無で、IFN-DC又はmIFN-DCによる細胞傷害性を調べた(N=6)。結果を
図22に示す。
図22に示すように、K562細胞株を標的とした場合(
図22A)、IFN-DCによる細胞傷害は、細胞接触を阻害するトランスウェルのメンブレン(Insert)の有無で差は認められなかった。一方で、mIFN-DCによる細胞傷害は、細胞接触の阻害(Insert+)で有意に減少することが明らかとなった。つまり、OK432刺激で上昇したmIFN-DCによる細胞傷害には、細胞接触が重要であることが示唆された。この現象は、K562細胞株に限定的ではなく、MIA PaCa-2でも同様に認められることから(
図22B)、普遍的な細胞傷害の機構と考えられた。
【0077】
5.OK432によるTRAILとFas ligandを介した細胞傷害の誘導
次いで、DC細胞表面のTRAIL(N=9)及びFas ligand(N=8)のΔMFI(それぞれの特異的抗体からアイソタプコントロールを引いたMFI)の比較を行った。結果を
図24に示す。
図24に示すように、MFIから詳細に発現変動を評価し、統計的に有意差を検討した結果、mIFN-DC及びmIL-4-DCにおいて、OK432刺激はTRAIL及びFasリガンド発現を有意に上昇することが明らかとなった。また、mIL-4-DCに比べて、mIFN-DCにおけるTRAIL発現は有意に高く、IFN-DCにおける高いTRAIL発現が寄与していると考えられた。mIFN-DCにおけるTRAILの阻害は細胞傷害を抑制し、高いTRAIL発現は細胞傷害に機能的であることが示唆された。
【0078】
6.OK432による成熟DCの表現系の比較
がん患者由来のPBMCsから(N=8)、それぞれのDCsを作製し、典型的なDCマーカーをフローサイトメトリーで分析し、MFI(平均蛍光強度)を測定した。
図25−1〜
図25−3にMFIをドットプロットで示す。
図25−1に、CD11c(
図25−1A)、CD80(
図25−1B)及びCCR7(
図25−1C)を示し、
図25−2に、CD14(
図25−2A)、CD83(
図25−2B)及びHLA-ABC(
図25−2C)を示し、
図25−3に、CD40(
図25−3A)、CD86(
図25−3B)及びHLA-DR(
図25−3C)を示す。
【0079】
7.OK432刺激により作製した成熟DCの機能
ヒト悪性黒色腫細胞に特異的ながん抗原であるMart抗原をパルスしたDCを用いて、PBLと混合して一週間の培養後、CD3陽性リンパ球をゲーティングし、CD8-FITCとMART-1 tetramer-PEで展開し、Mart-1特異的なCTL誘導を調べた。パネル内の数値は、CD3及びCD8陽性細胞中のMART特異的なCTLの割合を示す。結果を
図26−1及び
図26−2(ドットプロット)に結果を示す。
図26−1及び
図26−2に示すようにmIFN-DCとmIL-4-DCとは抗原提示能において差はなかった。
【0080】
FITC-dextranの取り込みから抗原貪食能を調べて、DQ-Ovalbuminの蛍光強度から、抗原分解能を確認した。37℃の反応条件から4℃で反応を行った陰性コントロールの値を差し引いたΔMFIをドットプロットで表示した(n = 6)。結果を
図27に示す。
図27に示すように、IFN-DCとimDCに比べて、OK432刺激を与えたmIFN-DCとmIL-4-DCは、FITC-dextranの取り込みが顕著に減少し、同様の活性を示した(
図27A)。つまり、mIFN-DCとmIL4-DCの抗原貪食能は同様であった。DQ-ovalbumin分解による蛍光強度を測定した結果、OK432刺激で顕著な減少を示し、mIFN-DCとmIL-4-DCで同様の抗原分解能が認められた(
図27B)。これらの結果より、mIFN-DCとmIL-4-DCは同様の成熟型DCの抗原貪食能と抗原提示能を示すことが明らかになった。
【0081】
DC 2×10
5 cells/ml を24ウェルプレートに播種し、AIM培地を用いて24時間の培養後の上清を用いて、ELISAによりサイトカイン(IL-12、IFN-γ、TNF-α、IL-10及びIL-6)産生を測定した (N=8)。結果を
図28に示す。
図28に示すように、mIFN-DCにおいて、OK432刺激で上昇したCTL誘導を亢進するサイトカインIL-12(p70)及びIFN-γはmIL-4-DCと同様に認められた。可溶性の腫瘍壊死因子であるTNF-αに変動は認めなかった。CTL誘導を抑制するIL-10産生レベルは、mIFN-DCとmIL-4-DCで同様であった。また、CTL誘導能を低下させる制御性T細胞に対して抑制的に働くIL-6産生は、mIL-4-DCと比較し、mIFN-DCで有意に高い産生が認められた。これらの結果より、IL-6産生を除いて、mIFN-DCはmIL-4DCと同様の成熟型DCのサイトカイン産生能を有することが明らかとなった。
【0082】
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