(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記鉄含有化合物を含む蒸気及び前記窒素含有化合物を含む蒸気を加熱して前記鉄含有化合物を含む蒸気及び前記窒素含有化合物を含む蒸気を分解して、前記第一の層中で前記基材上に堆積する原子状窒素と原子状鉄を形成することを更に含む、請求項9〜17のいずれか1項に記載の方法。
原子状窒素及び原子状鉄が前記第一の層中で前記基材上に堆積するように、前記鉄含有化合物を含む蒸気、及び前記窒素含有化合物を含む蒸気の少なくとも1種の分解温度を超えて前記基材を加熱することを更に含む、請求項9〜18のいずれか1項に記載の方法。
前記鉄含有化合物を含む蒸気と、前記窒素含有化合物を含む蒸気と、前記炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気とを加熱して、前記鉄含有化合物を含む蒸気と、前記窒素含有化合物を含む蒸気と、前記炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気とを分解して、前記第二の層中で前記基材上に堆積する原子状窒素と、原子状鉄と、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種の原子とを形成することを更に含む、請求項9〜19のいずれか1項に記載の方法。
原子状窒素、原子状鉄、及び炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種の原子が前記第二の層中で前記基材上に堆積するように、前記鉄含有化合物を含む蒸気、前記窒素含有化合物を含む蒸気、及び前記炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気の少なくとも1種の分解温度を超えて前記基材を加熱することを更に含む、請求項9〜20のいずれか1項に記載の方法。
窒素含有溶媒と鉄ソースとを含む第一のコーティング溶液に基材を浸漬させるに際し、前記第一のコーティング溶液が、前記第一のコーティング溶液から堆積される鉄‐窒素混合物の液相線温度を超える第一の温度にて鉄ソースにより飽和されること、
前記第一のコーティング溶液を鉄‐窒素混合物の液相線温度未満の第二の温度に冷却して過飽和の第一のコーティング溶液を形成すること、
前記過飽和の第一のコーティング溶液中に前記基材を維持することにより、鉄と窒素を含む第一の層を前記基材上方に形成すること、
窒素含有溶媒と、鉄ソースと、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む化合物とを含む第二のコーティング溶液に前記基材を浸漬させるに際し、前記第二のコーティング溶液が、前記第二のコーティング溶液から堆積される混合物の液相線温度を超える第三の温度にて鉄ソースにより飽和されること、
前記第二のコーティング溶液を混合物の液相線温度未満の第四の温度に冷却して過飽和の第二のコーティング溶液を形成すること、
前記過飽和の第二のコーティング溶液中に前記基材を維持することにより、鉄と、窒素と、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種とを含む第二の層を前記基材上方に形成すること、
前記第一の層をアニールしてα’’‐Fe16N2を含む少なくとも幾らかの結晶を形成すること、及び
前記第二の層をアニールしてα’’‐Fe16(NxZ1-x)2(式中、Zは炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含み、xはゼロより大きく、1より小さい数である。)を含む少なくとも幾らかの結晶を形成することを含む方法。
窒素含有溶媒と鉄ソースとを含む第一のコーティング溶液に基材を浸漬させるに際し、前記第一のコーティング溶液が、前記第一のコーティング溶液から堆積される鉄‐窒素混合物の液相線温度を超える第一の温度にて鉄ソースにより飽和されること、
前記第一のコーティング溶液を鉄‐窒素混合物の液相線温度未満の第二の温度に冷却して過飽和の第一のコーティング溶液を形成すること、
前記過飽和の第一のコーティング溶液中に前記基材を維持することにより、鉄と窒素を含む第一の層を前記基材上方に形成すること、
窒素含有溶媒と、鉄ソースと、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む化合物とを含む第二のコーティング溶液に前記基材を浸漬させるに際し、前記第二のコーティング溶液が、前記第二のコーティング溶液から堆積される混合物の液相線温度を超える第三の温度にて鉄ソースにより飽和されること、
前記第二のコーティング溶液を混合物の液相線温度未満の第四の温度に冷却して過飽和の第二のコーティング溶液を形成すること、
前記過飽和の第二のコーティング溶液中に前記基材をある期間に亘って維持することにより、鉄と、窒素と、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種とを含む第二の層を前記基材上方に形成すること、並びに
前記第一の層をアニールしてα’’‐Fe16N2を含む少なくとも幾らかの結晶を形成すること、及び前記第二の層をアニールしてα’’‐Fe16N2とα’’‐Fe16Z2(式中、Zは炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む。)との混合物を含む少なくとも幾らかの結晶を形成することを含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、本開示の一部を形成する添付の図面及び例に関連してとられる以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。本開示は、本開示に記載され、及び/又は示された特定の装置、方法、応用、条件、又はパラメータに限定されないこと、並びに本開示で用いられる専門用語は、特に例を記載する目的であり、特許請求の範囲を限定するように意図されていないことを理解されたい。値の範囲が表されている場合、別の例は、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、値が、先行詞「約」の使用により概算として表されている場合、特定の値が別の例を形成することが理解されるであろう。全ての範囲は包括的であり、組み合わせることができる。更に、範囲に記載された値への言及は、その範囲内の各及び全ての値を含む。本開示で用いられる用語「含む」の使用は、用語「からなる」及び「本質的に〜からなる」を使用する他の実施態様も包含するべきである。
【0014】
わかりやすさのために別個の例の文脈において本開示で記載された本開示のある特徴は、単独の例の組み合わせで与えられてもよいことが理解されるであろう。逆に言うと、わかりやすさのために単独の例の文脈において記載された本開示の種々の特徴は、別個に又は任意のサブコンビネーションで与えられてもよい。
【0015】
本開示は、α’’‐Fe
16N
2を含む少なくとも1つの層を含む多層硬質磁性材料、及び多層硬質磁性材料を形成する技術を開示する。Fe
16N
2が高い飽和磁化、高い磁気異方性定数、及び高いエネルギー積を有するため、α’’‐Fe
16N
2を含む少なくとも1つの層を含む多層硬質磁性材料は、希土類元素を含む永久磁石の代替物を提供することができる。
【0016】
α’’‐Fe
16N
2を含む少なくとも1つの層を含む硬質磁性材料を形成する方法としては、化学気相堆積(CVD)又は液相エピタキシー(LPE)を挙げることができる。これらの方法のいずれかを用いて、基材上にα’’‐Fe
16N
2を含む少なくとも1つの層、及び軟質磁性材料を含む少なくとも1つの層を含む薄膜を堆積させることができる。幾つかの例において、基材としてはシリコン、GaAs、InGaAsなどの半導体を挙げることができる。他の例において、基材はガラス、高温ポリマー、SiC、MgO、SiO
2(例えばSi又は他の半導体基材上のSiO
2の層)、金属、たとえばFe、Al、又は銅などの別の材料を含むことができる。
【0017】
α’’‐Fe
16N
2を含む少なくとも1つの層を含む多層硬質磁性材料は、α’’‐Fe
16N
2を含む少なくとも1つの層に加えて少なくとも1つの他の層も含む。例えば、多層構造はα’’‐Fe
16N
2を含む幾つかの層と、軟質磁性材料を含む幾つかの層とを含むことができる。幾つかの例において、軟質磁性材料は、α’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2(式中、xはゼロより大きく、1より小さい数である。)、又はα’’‐Fe
16N
2とα’’‐Fe
16Z
2(式中、Zはホウ素(B)、炭素(C)、又は酸素(O)の少なくとも1種である。)との混合物を含むことができる。軟質磁性材料の別の例としては、純粋なFeが挙げられる。α’’‐Fe
16N
2を含む1つ又はそれより多くの層は、軟質磁性材料を含む1つ又はそれより多くの層と交互に配置されることができる。幾つかの例において、層の各々をCVD又はLPEを用いて堆積させることができる。軟質磁性材料を含む層は、多層構造が硬質磁性材料として働くように、α’’‐Fe
16N
2を含む層と交換結合することができる。
【0018】
CVD又はLPEは、半導体デバイスへのα’’‐Fe
16N
2を含む硬質磁性材料の組み入れ、及び半導体プロセスへのα’’‐Fe
16N
2形成の組み入れを可能にすることができる。例えば、α’’‐Fe
16N
2を含む硬質磁性材料は、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)、磁性体論理デバイス、磁気ストレージデバイス、磁気微小電気機械システム(MEMS)、微小モーター、マイクロアクチュエーターなどに組み入れることができる。
【0019】
他の例において、α’’‐Fe
16N
2と軟質磁性材料を含む層とを含む硬質磁性材料は、例えば複数の層を結合することによりバルク磁性材料に組み入れることができる。バルク磁性材料は、硬質磁性材料(例えば永久磁石)であることができ、電気モーター、発電機、磁気センサ、アクチュエーター、自動車の部品、風力タービンの部品などの物品中で使用することができる。幾つかの例において、α’’‐Fe
16N
2と軟質磁性材料を含む層とを含む硬質磁性材料は、加工対象物(ペレット、ロッド、薄膜、ナノ粒子、粉末、又はナノスケール粉末を挙げることができる)に組み入れることができる。
【0020】
図1は、基材12と、α’’‐Fe
16N
2を含む少なくとも1つの層を含む多層硬質磁性材料14とを含む例示的な物品10を示す概念概略図である。
図1に示されるように、多層硬質磁性材料14は、層16の第一の組と、層18の第二の組とを含む。層16の第一の組の1つ又はそれより多くの各層は、層18の第二の組の1つ又はそれより多くの各層と交互であり、または交互に配置されることができる。物品10の例としては、半導体デバイス、MRAM、磁性体論理デバイス、磁気ストレージデバイス、磁気MEMS、マイクロモーター、マイクロアクチュエーター、マイクロセンサなどが挙げられる。
【0021】
幾つかの例において、層16の第一の組の層はα’’‐Fe
16N
2を含み、層18の第二の組の層は軟質磁性材料を含む。他の例において、層16の第一の組の層は軟質磁性材料を含み、層18の第二の組の層はα’’‐Fe
16N
2を含む。言い換えると、α’’‐Fe
16N
2を含む層が基材12の最近接であることができ、または軟質磁性材料を含む層が基材12の最近接であることができる。記述の目的のみのために、層16の第一の組は、α’’‐Fe
16N
2を含むとして以下で記載され、層18の第二の組は、軟質磁性材料を含むとして以下で記載される。
【0022】
基材12は、任意の材料であって、その上に多層硬質磁性材料14を形成することができるものを含むことができる。幾つかの例において、基材12は、シリコン、GaAs、InGaAsなどの半導体を含むことができる。他の例において、基材は別の材料、たとえばガラス、高温ポリマー、SiC、MgO、SiO
2(例えばSi又は他の半導体基材上のSiO
2の層)、金属、たとえばFe、Al、又はCuなどを含むことができる。
【0023】
幾つかの例において、基材12は、α’’‐Fe
16N
2、α’’‐Fe
16Z
2(式中、ZはC、B、又はOの少なくとも1種を含む。)及び/又はα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2(式中、xはゼロより大きく、1より小さい数である。)とは異なる格子構造、異なる格子パラメータ、又は両方を有する結晶性材料を含むことができる。幾つかの例において、加えて、または代わりに、基材12はα’’‐Fe
16N
2、α’’‐Fe
16Z
2、及び/又はα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2とは異なる熱膨張係数(CTE)を有することができる。基材12が、α’’‐Fe
16N
2、α’’‐Fe
16Z
2、及び/又はα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2とは異なる格子構造、異なる格子パラメータ、又は異なるCTEのうちの少なくとも1つを含む例において、基材12はアニール法中の多層硬質磁性材料14に歪みを与える場合があり、このことは多層硬質磁性材料14の各層16及び18中のα’’‐Fe
16N
2、α’’‐Fe
16Z
2、及び/又はα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2の形成を促進する場合がある。
【0024】
α’’‐Fe
16N
2を含む層16は、硬質磁性材料を含むことができる。α’’‐Fe
16N
2は、体心立方(bct)結晶構造を有する。α’’‐Fe
16N
2中では、窒素原子は鉄格子内で規則的である。
図2は、α’’‐Fe
16N
2ユニットセルを示す概念図である。
図2に示されるように、α’’‐Fe
16N
2相中で、窒素原子は(002)(鉄)結晶面に沿って整列している。また、
図2に示されるように、鉄窒化物ユニットセルは、<001>軸に沿ったα’’‐Fe
16N
2ユニットセルの長さが約6.28オングストローム(Å)である一方、<010>及び<100>軸に沿ったα’’‐Fe
16N
2ユニットセルの長さが約5.72Åであるように無秩序である。α’’‐Fe
16N
2ユニットセルは、歪んだ状態である際、bctユニットセルとよばれる場合がある。α’’‐Fe
16N
2ユニットセルが歪んだ状態である際、<001>軸はユニットセルのc軸とよばれる場合がある。c軸は、α’’‐Fe
16N
2ユニットセルの磁気容易軸であることができる。言い換えると、α’’‐Fe
16N
2結晶は、磁気異方性を示す。
【0025】
α’’‐Fe
16N
2は、高い飽和磁化及び高い磁気異方性定数を有する。高い飽和磁化及び磁気異方性定数は、希土類磁石より高い場合がある磁気エネルギー積をもたらす。例えば、薄膜α’’‐Fe
16N
2永久磁石から集められた実験的証拠は、バルクα’’‐Fe
16N
2永久磁石が、約134メガガウス
*エールステッド(MGOe)程度(約60MGOeのエネルギー積を有する)NdFeBのエネルギー積の約2倍である)のエネルギー積を含む望ましい磁気特性を有する場合があることを示唆する。加えて、鉄と窒素は豊富な元素であるため、それほど高価でなく、製造が容易である。α’’‐Fe
16N
2磁石の高いエネルギー積は、数ある応用の中でも特に、電気モーター、発電機、変圧器、磁気記録メディア、磁気共鳴映像法(MRI)磁石、磁気センサ、磁気アクチュエーター、自動車の部品、及び風力タービンの部品に有用である場合がある。
【0026】
しかし、α’’‐Fe
16N
2を製造することは難しく、層16の第一の組中の各層の一部だけがα’’‐Fe
16N
2を含む場合がある。
図3は、鉄又は鉄窒化物(例えばFe
8N)のドメイン22と、α’’‐Fe
16N
2ドメイン24とを有する材料を示す概念図である。幾つかの例において、層16の第一の組中の各層中のα’’‐Fe
16N
2ドメイン24は、各層内の鉄又は鉄窒化物(例えばFe
8N)のドメイン22と交換スプリング結合することができる。これにより、層の一部だけがα’’‐Fe
16N
2ドメイン24を含むとしても、実質的に全体においてα’’‐Fe
16N
2ドメイン24の特性を示す層をもたらすことができる。
【0027】
幾つかの例において、層16の第一の組の各層は、ナノメートルスケールで構造化されてよく(例えば、鉄又は鉄窒化物のドメイン22、及びα’’‐Fe
16N
2ドメイン24のサイズはナノメートルオーダーである)、磁気的に硬質のα’’‐Fe
16N
2ドメイン24と磁気的に軟質の鉄又は鉄窒化物のドメイン22との磁気結合は、実質的に層16の第一の組の各層のそれぞれの全体に亘って生じることができる。幾つかの例において、ドメインのサイズは約5nm〜約100nmであることができる。より大きいドメインサイズは層16の第一の組の保磁力を減少させる場合がある。磁気的に軟質の材料がFe又はFe
8Nを含む場合などの幾つかの例において、α’’‐Fe
16N
2ドメイン24とFe又はFe
8Nドメイン22の結晶学的組織は、コヒーレントであることができる。言い換えると、ドメイン22及び24間の格子整合があってよい。このことは、磁気的に硬質のα’’‐Fe
16N
2ドメイン24及び磁気的に軟質のFe又はFe
8Nドメイン22間で、特に相界面を横切って、効率的な交換スプリング結合を促進する場合がある。
【0028】
交換スプリング結合は、磁気的に軟質の材料を効果的に硬質化させ、完全にα’’‐Fe
16N
2で形成された層のものと類似のバルク材料の磁気特性を与えることができる。磁性材料の体積全体に亘る交換スプリング結合を達成するために、α’’‐Fe
16N
2ドメイン24を層16の第一の組からの各層全体に亘って、例えばナノメートル又はマイクロメートルスケールで分散させることができる。例えば、磁気的に硬質のFe
16N
2ドメイン24は、層16の第一の組の層の全体積の約5体積%〜約40体積%、又は層の全体積の約5体積%〜約20体積%、又は層の全体積の約10体積%〜約20体積%、又は層の全体積の約10体積%〜約15体積%、又は層の全体積の約10体積%を構成することができ、体積の残りは磁気的に軟質の材料である。磁気的に軟質の材料としては、例えばFe、FeCo、Fe
8N又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0029】
幾つかの例において、層16の第一の組は強磁性若しくは非磁性のドーパント及び/又は相安定剤等の少なくとも1種のドーパントを追加的に含むことができる。幾つかの例において、少なくとも1種の強磁性又は非磁性のドーパントは、強磁性又は非磁性の不純物とよばれる場合があり、及び/または相安定剤は、相安定化不純物とよばれる場合がある。強磁性又は非磁性のドーパントを、層16の第一の組から形成された硬質磁性材料の磁気モーメント、磁気保磁力、又は熱的安定性のうちの少なくとも1つを増大させるのに用いることができる。強磁性又は非磁性のドーパントの例としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Pt、Au、Sm、C、Pb、W、Ga、Y、Mg、Hf、及びTaが挙げられる。例えば、少なくとも1つのFe
16N
2相ドメインを含む鉄窒化物材料中に約5at%〜約15at%の濃度でMnドーパント原子を含むことは、Mnドーパント原子を含まない鉄窒化物材料に比べてFe
16N
2相ドメインの熱的安定性及び材料の磁気保磁力を向上させる場合がある。幾つかの例において、1種より多くの(例えば少なくとも2種の)強磁性又は非磁性ドーパントは、鉄と窒素を含む混合物において含むことができる。幾つかの例において、強磁性又は非磁性のドーパントは、ドメイン壁ピン止めサイトとして機能する場合があり、それは層16の第一の組から形成された磁性材料の保磁力を向上させる場合がある。表1は、層16の第一の組内の強磁性又は非磁性のドーパントの例示的な濃度を含む。
【0031】
代わりに、又は加えて、層16の第一の組は少なくとも1種の相安定剤を含むことができる。少なくとも1種の相安定剤は、Fe
16N
2の体積比、熱的安定性、保磁力及び耐腐食性のうちの少なくとも1つを向上させるように選択された元素であることができる。層16の第一の組に存在する場合、少なくとも1種の相安定剤は、約0.1at%〜約15at%の濃度にて鉄と窒素を含む混合物中に存在することができる。混合物中に少なくとも2種の相安定剤が存在する幾つかの例において、少なくとも2種の相安定剤の全濃度は、約0.1at%〜約15at%であることができる。少なくとも1種の相安定剤としては、例えば、B、Al、C、Si、P、O、Co、Cr、Mn、及び/又はSを挙げることができる。例えば、少なくとも1つのFe
16N
2相ドメインを含む鉄窒化物材料中に約5at%〜約15at%の濃度でMnドーパント原子を含むことは、Mnドーパントを含まない鉄窒化物材料と比べてFe
16N
2相ドメインの熱的安定性及び鉄窒化物材料の磁気保磁力を向上させる場合がある。
【0032】
層18の第二の組の層は、磁気的に軟質の材料を含むことができる。例えば、磁気的に軟質の材料としては、Fe、FeCo、Fe
8Nなどを挙げることができる。幾つかの例において、磁気的に軟質の材料としては、α’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2又はα’’‐Fe
16N
2とα’’‐Fe
16Z
2(式中、ZはC、B、又はOの少なくとも1種を含む。)との混合物を挙げることができる。
【0033】
上記のとおり、α’’‐Fe
16N
2は、c軸に沿って磁気容易軸がある硬質磁性材料である。計算は、α’’‐Fe
16N
2の磁気結晶異方性が、約1.6×10
7erg/cm
3であることができることを示す。また、α’’‐Fe
16N
2は約2.3ボーア磁子毎Fe原子(μ
B/Fe)の比較的高い理論磁気飽和モーメントを有する。
【0034】
同様に、α’’‐Fe
16Z
2は、Z原子が鉄結晶格子内で規則的である場合、硬質磁性材料であることができる。α’’‐Fe
16N
2と同様に、規則的なα’’‐Fe
16Z
2中のZ原子(C、B、又はO)は、鉄結晶内の格子間サイトに位置することができる。例えば、規則的なα’’‐Fe
16Z
2中のZ原子(C、B、又はO)は、
図2示されるN原子と同じ場所に位置することができる。しかし、規則的なα’’‐Fe
16Z
2では、格子パラメータはα’’‐Fe
16N
2とは異なることができる。
【0035】
更に、Zが炭素(C)である場合などの規則的なα’’‐Fe
16Z
2は、a‐b面(例えば[100]、c軸に対して垂直)にある磁気容易軸による磁気結晶異方性を示す場合がある。したがって、α’’‐Fe
16C
2中の磁気結晶異方性の方向は、α’’‐Fe
16C
2中の磁気結晶異方性の方向に対して実質的に垂直であることができる。計算は、規則的なα’’‐Fe
16N
2中の磁気結晶異方性が約−1.4×10
7erg/cm
3であることができることを示す。また、α’’‐Fe
16C
2は、約2.1μ
B/Feの比較的高い理論磁気飽和モーメントを有する。
【0036】
したがって、α’’‐Fe
16C
2とα’’‐Fe
16N
2結晶の各々のc軸を実質的に同じ方向に配向しつつ、規則的なα’’‐Fe
16C
2を所定量でα’’‐Fe
16N
2と混合する際、磁気結晶異方性を実質的に相殺することができ、ゼロに近い磁気結晶異方性値を有する材料を残しつつ、約2.2μ
B/Fe(α’’‐Fe
16N
2とα’’‐Fe
16C
2の理論磁気飽和モーメントの平均)の理論磁気飽和モーメントを与える。例えば、約4.667:5.333の体積比でα’’‐Fe
16N
2とα’’‐Fe
16C
2を含む磁性材料は、約0の保磁力と約2.2μ
B/Feの理論磁気飽和モーメントを有することができる。このように、α’’‐Fe
16N
2ドメインとα’’‐Fe
16C
2ドメインの所定量の混合物は、ゼロに近い磁気結晶異方性値と比較的高い磁気飽和モーメントを有する軟質磁性材料を作り出すことができる。同様の結果を、C、B、及びOの類似の原子半径に基づいて、B、O、又は両方とCが置き換わった場合に予測することができる。
【0037】
幾つかの例において、得られる材料は、
図4に示されたものと類似であることができる。
図4は、α’’‐Fe
16N
2のドメイン32と、ZがC、B、又はOの少なくとも1種を含むα’’‐Fe
16Z
2のドメイン34とを含む軟質磁性材料を示す概念図である。幾つかの例において、別個のα’’‐Fe
16Z
2のドメイン34と共に別個のα’’‐Fe
16N
2のドメイン32が存在することができる。α’’‐Fe
16N
2のドメイン32の容易軸が
図4に実質的に垂直に配向するように示されている一方、α’’‐Fe
16Z
2のドメインの容易軸は、
図4に実質的に水平に配向するように示されている。α’’‐Fe
16N
2のドメイン12とα’’‐Fe
16Z
2のドメイン14が所定の量(例えば約4.667:5.333)で存在する場合、互いに打ち消し合う類似の大きさで反対の符号の磁気結晶異方性をもたらすことができ、高い飽和磁化と低い磁気結晶異方性を有する材料をもたらす。
【0038】
他の例において、各α’’‐Fe
16N
2のドメイン32の全てが実質的に同じ方向にある磁気容易軸を有するのではなく、各α’’‐Fe
16N
2のドメイン32の各容易軸は、実質的にランダムに分散することができる。同様に、各α’’‐Fe
16Z
2のドメイン34の各容易軸は、実質的にランダムに分散することができる。これにより、高い飽和磁化と低い磁気結晶異方性を有する材料をもたらすこともできる。
【0039】
幾つかの例において、α’’‐Fe
16N
2と各α’’‐Fe
16Z
2の別個のドメインを含むのではなく、材料は、α’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2(式中、ZはC、B、又はOの少なくとも1種を含み、xはゼロより大きく、1より小さい数である。)の1つ又はそれより多くの結晶を含むことができる。これらの例において、別個のドメインを形成するのではなく、鉄、窒素、及びZ原子は、幾つかの格子間位置が窒素原子により充填され、幾つかの格子間位置がZ原子により充填されている結晶構造を形成する。例えば、
図2は例示的なα’’‐Fe
16N
2ユニットセルを示す概念図である。
図2中のユニットセルは、5つのN原子(1つのN原子は完全にユニットセル中にあり、4つのN原子は部分的にユニットセル中にある)を示す。α’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2中では、N原子の少なくとも幾つかをZ(C、B、又はOの少なくとも1種)原子により置換することができる。α’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2は、各ユニットセル中に幾つかのN原子及び幾つかのZ原子を含まない場合がある(例えば幾つかのユニットセルはN原子だけを含むことができ、幾つかのユニットセルはZ原子だけを含むことができる)ものの、軟質磁性材料の体積で平均された際、FeとNとZ原子の比を化学式Fe
16(N
xZ
1-x)
2で表すことができる。
【0040】
軟質磁性材料を含む層18の第二の組の層は、α’’‐Fe
16N
2を含む層16の第一の組の層と交互に配置される。層16の第一の組の層と、層18の第二の組の層の厚さは、層18の第二の組の層が層16の第一の組の層と磁気的に交換スプリング結合するように選択することができる。例えば、層16と層18の各々は、約50nm未満の(基材12の表面と垂直の)厚さを規定することができる。層16の第一の組の層と層18の第二の組の層の隣接する層との交換スプリング結合は、α’’‐Fe
16N
2を含む層16の第一の組のものと類似の特性を示す実質的に全体の体積の多層硬質磁性材料14をもたらすことができる。
【0041】
幾つかの例において、多層硬質磁性材料14は、化学気相堆積(CVD)又は液相エピタキシー(LPE)を用いて形成することができる。
図5は、多層コーティング48を形成する例示的なCVD装置40を示す概念概略図である。多層コーティング48を次いでアニールし、
図1に関して記載される多層硬質磁性材料14を形成することができる。
【0042】
装置40は、サセプタ44を取り囲むことができるCVDチャンバ42を含む。基材46はサセプタ44により保持され、多層コーティング48は基材46の少なくとも一部の上に形成される。CVDチャンバ42は、例えばクオーツ又は別の耐火性材料を含むことができる。幾つかの例において、CVDチャンバ42を、ラジオ周波数(RF)磁気エネルギーに対して実質的に透明な材料で形成することができる。
【0043】
幾つかの例において、CVDチャンバ42は、RF誘導コイル50により少なくとも部分的に取り囲まれる。RF誘導コイル50を流れるように、RFにおいて交流電流を生じさせるRFソース(
図5には示されていない)にRF誘導コイル50を電気的に接続することができる。幾つかの例において、RF誘導コイル50により生成したRF磁場は、RFエネルギーを熱に変換するサセプタ44により吸収されてよい。これは、基材46を加熱する。したがって、幾つかの例において、サセプタ44はRF誘導コイル50により発生する周波数のRFエネルギーを吸収するグラファイト又は別の材料を含むことができる。
【0044】
幾つかの例において、サセプタ44はインレット52に対する斜面において、基材46を配置するように形成され、または配向されてよい。インレット52に対する斜面において基材46を配置することは、コーティングガスが実質的に水平な基材46に沿って流れる際のコーティングガスからの反応物の減少に起因する、基材46の下流位置が基材46の上流位置より薄いコーティングによりコーティングされる現象である下流デプレションを低減し、または実質的に消滅させることができる。
【0045】
幾つかの例において、RF誘導コイル50により加熱されたサセプタ44を含むのではなく、CVDチャンバ42の全体積が加熱されるように、CVDチャンバ42を加熱することができる。例えば、CVDチャンバ42を炉内に配することができ、またはCVDチャンバ42を、RFエネルギーを吸収し、CVDチャンバ42の体積を加熱する材料で形成することができる。
【0046】
基材46は、任意の材料であって、その上に多層コーティング48を形成することができる材料を含むことができ、
図1に関して記載される基材12の例であることができる。例えば、基材46はシリコン、GaAs、InGaAsなどの半導体を含むことができる。他の例において、基材は別の材料、たとえばガラス、高温ポリマー、SiC、MgO、SiO
2(例えばSi又は他の半導体基材上のSiO
2の層)、などを含むことができる。
【0047】
幾つかの例において、基材46は、α’’‐Fe
16N
2、α’’‐Fe
16Z
2、又はα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2(式中、ZはC、B、又はOの少なくとも1種を含む。)のうちの少なくとも1つとは異なる格子構造、異なる格子パラメータ、又は両方を有する結晶性材料を含むことができる。幾つかの例において、加えて、または代わりに、基材46はα’’‐Fe
16N
2、α’’‐Fe
16Z
2、又はα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2のうちの少なくとも1つとは異なる熱膨張係数(CTE)を有することができる。基材46が、α’’‐Fe
16N
2、α’’‐Fe
16Z
2、又はα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2のうちの少なくとも1つとは異なる格子構造、異なる格子パラメータ、又は異なるCTEのうちの少なくとも1つを含む例において、基材46はアニール法中のコーティング48に歪みを与える場合があり、このことはコーティング48中のα’’‐Fe
16N
2、α’’‐Fe
16Z
2、又はα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2のうちの少なくとも1つの形成を促進する場合がある。
【0048】
CVDチャンバ42は、インレット52及びアウトレット54を含むことができる。インレット52を、コーティングガスの1種又はそれより多くのソースに流体的に接続することができる。例えば、装置40において、インレット52はキャリアガスソース56、コーティング成分の第一のソース60、コーティング成分の第二のソース64、及びコーティング成分の第三のソース68に流体的に接続される。
【0049】
幾つかの例において、キャリアガスソース56は、CVDチャンバ12の内側にコーティングガスを運ぶガスを含むことができる。幾つかの例において、キャリアガスソース56は、実質的に不活性のガス(例えば装置40の動作中に装置40内に存在する他の元素及び化合物と実質的に反応性でないガス)のソースを含むことができる。実質的に不活性のガスとしては、例えばアルゴン等の希ガスを挙げることができる。
【0050】
幾つかの例において、キャリアガスソース56は、加えて、または代わりに、装置40内に存在する1種又はそれより多くの元素及び化合物と反応することができるガスを含むことができる。例えば、キャリアガスソース56は、水素ガス(H
2)のソースを含むことができる。幾つかの例において、水素ガスは鉄前駆体と反応して鉄を遊離させることができる。幾つかの例において、キャリアガスソース56は実質的に不活性のガスと、装置40内に存在する1種又はそれより多くの元素及び化合物と反応するガスとの混合物を含むことができる。例えば、キャリアガスソース56は、水素ガスとアルゴンとの混合物を含むことができる。
【0051】
キャリアガスソース56を、管路又はパイプ、及び少なくとも1つのバルブ58を介してCVDチャンバ42に流体的に接続することができる。バルブ58を、キャリアガスソース56からCVDチャンバ42へのキャリアガスの流れを制御するのに用いることができる。
【0052】
装置40は第一のソース60も含む。第一のソース60は、窒素含有化合物を含む蒸気のソースを含むことができる。幾つかの例において、第一のソース60は、ガス状アンモニア(NH
3)等の窒素前駆体のガス状ソースを含むことができる。他の例において、第一のソース60は硝酸アンモニウム(NH
4NO
3、固体)、アミド(液体又は固体)、又はヒドラジン(液体)等の窒素前駆体の液体又は固体ソースを含むことができる。
【0053】
アミドはC‐N‐H結合を含み、ヒドラジンはN‐N結合を含む。硝酸アンモニウム、アミド及びヒドラジンは、鉄窒化物を含む材料を形成する窒素ドナーとして働くことができる。任意のアミドを用いることができるが、例示的なアミドとしては、カルバミド((NH
2)
2CO、尿素ともよばれる)、メタンアミド(式1)、ベンズアミド(式2)、及びアセトアミド(式3)が挙げられる。
【0055】
幾つかの例において、アミン基によるカルボン酸のヒドロキシル基の置換により、アミドをカルボン酸から誘導することができる。この種類のアミドは、酸アミドとよばれる場合がある。
【0056】
第一のソース60中の窒素含有化合物が固体又は液体である例において、第一のソース60は、窒素含有化合物を揮発させ、窒素含有化合物を含む蒸気を形成する熱源を含むことができる。
【0057】
第一のソース60を、管路又はパイプ及び少なくとも1つのバルブ62を介してCVDチャンバ42に流体的に接続することができる。バルブ62を、第一のソース60からCVDチャンバ42への窒素含有蒸気の流れを制御するのに用いることができる。
【0058】
装置40は、第二のソース64も含む。第二のソース64は、Zが炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含むZ原子含有化合物を含む蒸気のソースを含むことができる。記述の目的のみのために、
図5及び6は炭素含有化合物のソースである第二のソース64により記載される。しかし、同様の原理をホウ素含有材料のソース、酸素含有材料のソース、又はその両方に適用することができることが理解されるであろう。
【0059】
幾つかの例において、第二のソース64は、ガス状一酸化炭素(CO)、ガス状二酸化炭素(CO
2)、又はガス状メタン(CH
4)等の炭素含有化合物のガス状ソースを含むことができる。他の例において、第二のソース64は、純粋な炭素(例えばグラファイト)又は尿素等の炭素含有化合物の液体又は固体ソースを含むことができる。第二のソース64中の炭素含有化合物が固体又は液体である例において、第二のソース64は、炭素含有化合物を揮発させ、炭素含有化合物を含む蒸気を形成する熱源を含むことができる。
【0060】
第二のソース64を、管路又はパイプ及び少なくとも1つのバルブ66を介してCVDチャンバ42に流体的に接続することができる。バルブ66を、第二のソース64からCVDチャンバ42への炭素含有蒸気の流れを制御するのに用いることができる。
【0061】
尿素が炭素ソース及び窒素ソースの両方に用いられる場合などの幾つかの例において、装置40は、窒素含有化合物及び炭素含有化合物のための別個の第一及び第二のソース60及び64を含まない場合があるが、代わりに、窒素含有化合物及び炭素含有化合物の両方のための単一のソースを含むことができる。
【0062】
装置40は第三のソース68も含む。第三のソース68は、鉄又は鉄前駆体(又はドナー)のソースを含むことができる。
図5に示される例において、第三のソース68はFeCl
3又はFe(CO)
5等の液体鉄ドナー70を含む。第三のソース68は、ガスソース72から第三のソース68へのガスの流れを制御するバルブ74を介してガスソース72に流体的に結合される。幾つかの例において、ガスソース72は水素(H
2)ガス又は別の還元ガスのソースであることができる。
【0063】
ガスソース72からのガスは、第三のソース68に流入し、液体鉄ドナー70の少なくとも幾らかを揮発させる。ガスソース72からのガスは、次いで鉄含有化合物を含む蒸気を、インレット52を介してCVDチャンバ42に運ぶ。
【0064】
バルブ58、62、66及び74は、CVDチャンバ42へのガス及び蒸気の全流速と、CVDチャンバ42へ流入するガス及び蒸気中のキャリアガス、窒素含有化合物を含む蒸気、炭素含有化合物を含む蒸気、及び鉄含有化合物を含む蒸気の相対割合とを制御するのに用いることができる。例えば、バルブ58、62、66及び74を、層16の第一の組の層と層18の第二の組の層を交互に配置するように制御して、
図1に示される多層硬質磁性材料14を製造することができる。α’’‐Fe
16N
2を含む層16の第一の組の層を形成するために、バルブ58、62、66及び74を、炭素含有化合物を含む蒸気がCVDチャンバ42に流入することを防ぎつつ、キャリアガス、窒素含有化合物を含む蒸気、及び鉄含有化合物を含む蒸気がCVDチャンバ42に流入するように制御することができる。幾つかの例において、層16の第一の組の層を形成するために、バルブ58、62、66及び74を制御することにより、CVDチャンバ42に流入するキャリアガス、窒素含有化合物を含む蒸気、及び鉄含有化合物を含む蒸気が、約11.5:1(鉄:窒素)〜約5.65:1(鉄:窒素)のCVDチャンバ42へ流入するガス及び蒸気中の鉄と窒素の原子比率を生成することができる。例えば、CVDチャンバ12へ流入するガス及び蒸気中の鉄と窒素原子の原子比率は、約9:1(鉄:窒素)、約8:1(鉄:窒素)、又は約6.65:1(鉄:窒素)であることができる。
【0065】
幾つかの例において、層16の第一の組の層を形成するために、キャリアガスの流速は、約5標準cm
3/分(sccm)〜約5000sccmであることができ、窒素含有化合物を含む蒸気の流速は約10sccm〜約1000sccmであることができ、鉄含有化合物を含む蒸気の流速は約100sccm〜約5000sccmであることができる。これらのような流速は、約100マイクロメートル毎時(μm/h)〜約1000μm/hの層16の第一の組の層の成長速度をもたらす場合がある。
【0066】
幾つかの例において、鉄含有化合物の分解温度、窒素含有化合物の分解温度、又はその両方を超えて、基材46をサセプタ44及びRF誘導コイル50により加熱することができる。例えば、基材46をサセプタ44及びRF誘導コイル50により約200℃〜約1000℃の温度に加熱することができる。
【0067】
実質的にサセプタ44及び基材46のみが加熱される幾つかの例において、鉄含有化合物及び窒素含有化合物は分解して鉄及び窒素を放出することができ、または互いに反応して鉄窒化物化合物を形成することができる。基材46が加熱されるため、この1種又は複数種の反応は、基材46の表面にて起こることができ、形成され、鉄及び窒素を含む層16の第一の組の層をもたらす。
【0068】
(例えば炉により)実質的にCVDチャンバ42の全体積が加熱される例において、分解反応又は鉄含有化合物と窒素含有化合物との反応は、CVDチャンバ42の体積内の基材上方で起こることができる。放出された鉄及び窒素原子又は鉄窒化物化合物は、次いで層16の第一の組の層において基材46の表面上方に堆積することができる。
【0069】
幾つかの例において、鉄含有化合物と窒素含有化合物との反応は、
16FeCl
3+2NH
3+21H
2→2Fe
8N+48HCl
を含むことができる。
【0070】
上記のように、層16の第一の組の層の形成中、CVDチャンバ42に入るガス及び蒸気中の鉄と窒素の比は、約11.5:1(鉄:窒素)〜約5.65:1(鉄:窒素)、たとえば約8:1(鉄:窒素)であることができる。層16の第一の組の層は、CVDチャンバ42に入るガス及び蒸気中の鉄と窒素の比とほぼ同じ比を含むことができる。したがって、層16の第一の組の層は約11.5:1(鉄:窒素)〜約5.65:1(鉄:窒素)、たとえば約9:1(鉄:窒素)、約8:1(鉄:窒素)、又は約6.65:1(鉄:窒素)の鉄対窒素比を含むことができる。
【0071】
幾つかの例において、層16の第一の組の層は堆積された際、鉄及び/又は窒素に加えて鉄窒化物、たとえばFeN、Fe
2N(例えばξ‐Fe
2N)、Fe
3N(例えばε‐Fe
3N)、Fe
4N(例えばγ’‐Fe
4N、γ‐Fe
4N、又はその両方)、Fe
2N
6、Fe
8N、α’’‐Fe
16N
2、又はFeN
x(式中、xは約0.05〜約0.5である。)の少なくとも1種を含むことができる。幾つかの例において、層16の第一の組の層は、少なくとも92原子パーセント(at.%)の純度(例えば合計の鉄及び窒素含有量)を有することができる。
【0072】
層16の第一の組の層は、任意の選択された厚さを含むことができ、厚さは、CVD法が実施される時間を含むCVDパラメータに、少なくとも部分的に依存する場合がある。幾つかの例において、層16の第一の組の層の選択された厚さは、層18の第二の組の層と層16の第一の組の層との交換スプリング結合を可能にする厚さに基づくことができる。例えば、層16の第一の組の層の厚さは、約50nm未満であることができる。
【0073】
幾つかの例において、軟質磁性材料を含む層18の第二の組の層を形成するために、バルブ58、62、66及び74を、窒素含有化合物及び炭素含有化合物を含む蒸気がCVDチャンバ42に流入することを防ぎつつ、キャリアガス、及び鉄含有化合物を含む蒸気がCVDチャンバ42に流入するように制御することができる。これにより、堆積した実質的に純粋な鉄を含む層をもたらすことができる。
【0074】
他の例において、層18の第二の組の層を形成するために、バルブ58、62、66及び74を制御して、キャリアガス、窒素含有化合物を含む蒸気、炭素含有化合物を含む蒸気、及び鉄含有化合物を含む蒸気をCVDチャンバ42に流入させ、約11.5:1(鉄:窒素+炭素)〜約5.65:1(鉄:窒素+炭素)のCVDチャンバ42へ流入するガス及び蒸気中の鉄と窒素及び炭素の組み合わせとの原子比率を生成することができる。例えば、CVDチャンバ42へ流入するガス及び蒸気中の鉄と窒素及び炭素の組み合わせとの原子比率は、約9:1(鉄:窒素+炭素)、約8:1(鉄:窒素+炭素)、又は約6.65:1(鉄:窒素+炭素)であることができる。
【0075】
加えて、バルブ62及び66を制御することにより、窒素含有化合物を含む蒸気と炭素含有化合物を含む蒸気の相対的な流速を制御して、CVDチャンバ42へ流入するガス中の窒素と炭素の所定の原子比率を生成することができる。例えば、バルブ62及び66を制御することにより、窒素含有化合物を含む蒸気と炭素含有化合物を含む蒸気の相対的な流速を制御して、約0.1:1〜約10:1、たとえば約1:1又は約4.667:5.333の窒素と炭素の原子比率を生成することができる。
【0076】
幾つかの例において、層18の第二の組の層を形成するために、キャリアガスの流速は、約5sccm〜約5000sccmであることができ、窒素含有化合物を含む蒸気の流速は約10sccm〜約1000sccmであることができ、炭素含有化合物を含む蒸気の流速は、約0.1sccm〜約1000sccmであることができ、鉄含有化合物を含む蒸気の流速は約100sccm〜約5000sccmであることができる。これらのような流速は、約100マイクロメートル毎時(μm/h)〜約1000μm/hの層18の第二の組の層の成長速度をもたらす場合がある。
【0077】
幾つかの例において、鉄含有化合物の分解温度、窒素含有化合物の分解温度、又は炭素含有化合物の分解温度のうちの少なくとも1つを超えて、基材46をサセプタ44及びRF誘導コイル50により加熱することができる。例えば、基材46をサセプタ44及びRF誘導コイル50により約200℃〜約1000℃の温度に加熱することができる。
【0078】
実質的にサセプタ44及び基材46のみが加熱される幾つかの例において、鉄含有化合物、窒素含有化合物、及び炭素含有化合物は分解して鉄、窒素及び炭素を放出することができ、または互いに反応して鉄‐窒素‐炭素化合物を形成することができる。基材46が加熱されるため、この1種又は複数種の反応は、基材46の表面にて起こることができ、形成され、鉄、窒素、及び炭素を含む層18の第二の組の層をもたらす。
【0079】
(例えば炉により)実質的にCVDチャンバ42の全体積が加熱される例において、分解反応又は鉄含有化合物、窒素含有化合物、及び炭素含有化合物との間の反応は、CVDチャンバ42の体積内の基材上方で起こることができる。放出された鉄、窒素、及び炭素原子又は鉄‐炭化物‐窒化物化合物は、次いで層18の第二の組の層において基材46の表面上方に堆積することができる。
【0080】
本開示において用いられる、基材「上方に」堆積すること又は形成することは、基材の表面上に直接的に層が堆積し、又は形成すること、及び別の層に層が堆積することの両方を含む。他の層は、基材の表面上に直接的にあることができ、または基材上又は基材上方の更に別の層上にあることができる。例えば、
図5は基材46上方の層16の第一の組の層と、基材46上方の層18の第二の組の層とを形成するように記載されている。このことは、層16の第一の組の層を基材46上に直接的に形成することができ、層18の第二の組の層上に形成することができ、または別の層上に形成することができることを意味する。同様に、このことは、層18の第二の組の層を基材46上に直接的に形成することができ、層16の第一の組の層上に形成することができ、または別の層上に形成することができることを意味する。「上に」堆積すること、又は形成することは、層が下にある層上に直接的に形成され、間に層がないことを意味する。
【0081】
幾つかの例において、鉄含有化合物、窒素含有化合物、及び炭素含有化合物の間の反応は、
16FeCl
3+2NH
3+2CH
4+17H
2→2Fe
8NC+48HCL
を含むことができる。
【0082】
上記のように、層18の第二の組の層の形成中にCVDチャンバ42に入るガス及び蒸気中の鉄と窒素+炭素との比は、約11.5:1(鉄:(窒素+炭素))〜約5.65:1(鉄:(窒素+炭素))、たとえば約8:1(鉄:(窒素+炭素))であることができる。層18の第二の組の層は、CVDチャンバ42に入るガス及び蒸気中の鉄と窒素の比とほぼ同じ比を含むことができる。したがって、層18の第二の組の層は、約11.5:1(鉄:(窒素+炭素))〜約5.65:1(鉄:(窒素+炭素))、たとえば約9:1(鉄:(窒素+炭素))、約8:1(鉄:(窒素+炭素))、又は約6.65:1(鉄:(窒素+炭素))の鉄と窒素+炭素との比を含むことができる。
【0083】
層18の第二の組の層は、任意の選択された厚さを含むことができ、厚さは、CVD法が実施される時間を含むCVDパラメータに、少なくとも部分的に依存する場合がある。幾つかの例において、層18の第二の組の層の選択された厚さは、層18の第二の組の層と層16の第一の組の層との交換スプリング結合を可能にする厚さに基づくことができる。例えば、層18の第二の組の層の厚さは、約50nm未満であることができる。
【0084】
層16の第一の組の層と層18の第二の組の層とを交互に堆積させ、
図1に示される多層硬質磁性材料14と類似する、または実質的に同じ構造の形成をもたらすように、バルブ58、62、66及び74を制御することができる。層16の第一の組の層と層18の第二の組の層の数を、多層コーティング48から形成することができる多層硬質磁性材料14の所望の最終的な構造に基づいて選択することができる。
【0085】
幾つかの例において、コーティング48が形成されるようにさらされる基材46の部分だけを残しつつ、基材46の一部をマスクすることができる。他の例において、多層コーティング48によりコーティングされた基材46の部分だけを残しつつ、多層コーティング48の堆積後に多層コーティング48の一部をエッチングして、多層コーティング48の一部を除去することができる。このように、多層コーティング48を基材46の選択された部分のみの上で制御可能に形成することができ、その後多層硬質磁性材料14に転換することができる。
【0086】
多層コーティング48が所定の厚さに形成されたら、基材16及びコーティング18をCVDチャンバ12から取り出し、アニール法に供することができる。アニール法は、多層硬質磁性材料14を促進することができる。
【0087】
アニール法は、基材46と多層コーティング48の熱膨張係数の差により多層コーティング48の少なくとも1つの中に歪みを生成する温度にて実施することにより、α’’‐Fe
16N
2、α’’‐Fe
16Z
2相、又はα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2相(式中、ZはC、B、又はOの少なくとも1種を含む。)の少なくとも1種にアクセスしてよい。加えて、アニール法は、多層コーティング48の各層中の鉄結晶内にN+イオン、Z+イオン、又はその両方を拡散させて、α’’‐Fe
16N
2、α’’‐Fe
16Z
2、又はα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2を形成する。幾つかの例において、比較的低温でのアニールは、部分的なFe
8N無秩序相のα’’‐Fe
16N
2秩序相への転換を可能にする。同様に、比較的低温でのアニールは、部分的なFe
8Z無秩序相のα’’‐Fe
16Z
2秩序相への転換と、部分的なFe
8(N
xZ
1-x)無秩序相のα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2秩序相への転換を可能にすることが予測される。
【0088】
幾つかの例において、アニール中の歪みは、多層コーティング48中の少なくとも幾らかの粒子ドメイン(例えば、層16の第一の組の少なくとも幾つかの層中の少なくとも幾らかのα’’‐Fe
16N
2ドメイン)の形状を引き延ばす場合がある。粒子の引き伸ばしは、層16の第一の組中の層の磁気異方性に寄与する場合がある。加えて、幾つかの例において、層16の第一の組中の層の寸法及び形状は、形状異方性に寄与する場合があり、それは層16の第一の組中の層の磁気異方性に更に寄与する場合がある。
【0089】
幾つかの例において、アニール法は、約300℃未満の温度、たとえば約120℃〜約300℃、約120℃〜約220℃、又は約150℃〜約220℃にて実施することができる。アニール法は、窒素(N
2)又はアルゴン(Ar)雰囲気中、又は真空又は近真空中で実施することができる。
【0090】
アニール工程の温度及び継続時間は、例えばサンプルのサイズ、及びアニール温度における鉄中の窒素原子及び鉄中のZ原子の拡散係数に基づいて選択することができる。これらの要因に基づいて、温度及び継続時間は、窒素原子及びZ原子が多層コーティング48の各層内の位置へ拡散してFe
16N
2ドメイン、α’’‐Fe
16Z
2ドメイン、及び/又はα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2ドメインを形成するのに十分な時間を与えるように選択することができる。
【0091】
加えて、アニール法の温度及び継続時間は、多層コーティング48の各層中の各相ドメインの所望の体積分率に基づいて選択することができる。例えば、選択された温度において、より長いアニール法は、α’’‐Fe
16N
2のより高い体積分率をもたらすことができる。同様に、所定のアニール法継続時間に対して、より高い温度はα’’‐Fe
16N
2のより高い体積分率をもたらすことができる。しかし、上記の閾値継続時間に関して、α’’‐Fe
16N
2の追加の体積分率は、α’’‐Fe
16N
2の体積分率が比較的安定な値に到達する際、制限され、またはなくなる場合がある。例えば、約150℃の温度において、約20時間後にα’’‐Fe
16N
2の体積分率は安定な値に到達する。アニール工程の継続時間は、少なくとも約5時間、たとえば少なくとも約20時間、又は約5時間〜約100時間、又は約5時間〜約80時間、又は約20時間〜約80時間、又は約40時間であることができる。
【0092】
Fe
8N及びα’’‐Fe
16N
2は、類似の体心立方(bct)結晶構造を有する。しかし、α’’‐Fe
16N
2中で窒素原子が鉄格子内で規則的である一方、Fe
8N中では、窒素原子は鉄格子内にランダムに分布している。
【0093】
アニール法は、アニール工程中の基材46と多層コーティング48の異なる膨張の結果として鉄結晶格子に与えられた歪みに少なくとも部分的に起因して、bctα’’‐Fe
16N
2相結晶構造の形成を促進する。例えば、鉄の熱膨張係数が11.8μm/m・Kである一方、ケイ素では2.6μm/m・Kである。この熱膨張係数の差は、多層コーティング48中の第一の層16のある層の主面と実質的に平行な圧縮応力と、(110)面を含む多層コーティング48中の第一の層16のある層上の<001>結晶方向に沿って生成される、対応する引張力とをもたらす。幾つかの例において、多層コーティング48中の第一の層16のある層上の歪みは約0.3%〜約7%であることができ、それは、鉄窒化物の個々の結晶上に実質的に類似の歪みをもたらすことができ、ユニットセルは約0.3%〜約7%で<001>軸に沿って伸張する。このことは、α’’‐Fe
16N
2結晶の好ましい位置における窒素原子の組み入れを促進する場合がある。
【0094】
幾つかの例において、多層コーティング48中の第一の層16の全てをα’’‐Fe
16N
2相に転換するのではなく、アニール法は、Fe、Fe
8N、及び/又は鉄窒化物組成物のドメイン内にα’’‐Fe
16N
2相ドメインの形成をもたらすことができる。例えば、得られた構造は、
図3に関して示され、記載された構造に類似であることができる。
【0095】
同様に、α’’‐Fe
16C
2中の炭素原子及びα’’‐Fe
16(N
xC
1-x)
2中の窒素及び炭素原子は、(002)(鉄)結晶面に沿って整列することができる。アニール法は、アニール工程中の基材46と多層コーティング48の異なる膨張の結果として鉄結晶格子に与えられた歪みに少なくとも部分的に起因して、層18の第二の組の層中のbctα’’‐Fe
16C
2相結晶構造又はα’’‐Fe
16(N
xC
1-x)
2の形成を促進する。
【0096】
図5は、液体鉄含有材料を用いたCVDの例示的な装置40を示すが、他の例において、CVDは固体鉄含有材料を用いて実施することができる。
図6は、α’’‐Fe
16N
2を含む少なくとも1つの層を含む多層硬質磁性材料を形成する例示的な化学気相堆積装置を示す概念概略図である。幾つかの例において、
図6の装置80は、本開示に記載の相違を除いて、
図5に関連して記載された装置40と類似であってよく、または実質的に同じであってよい。
【0097】
装置80は、CVDチャンバ82を含む。CVDチャンバ82は、
図5のサセプタ44と類似であってよく、または実質的に同じであってよいサセプタ84を取り囲む。
図6に示される例において、サセプタ84はインレット86、88及び90に対する斜面において、基材46を配置するように形成されておらず、または配向されていない。他の例において、サセプタ84は、インレット86、88及び90に対する斜面において、基材46を配置するように形成されることができ、または配向されることができる。CVDチャンバ82は、例えばクオーツ又は別の耐火性材料を含むことができる。幾つかの例において、CVDチャンバ82を、ラジオ周波数(RF)磁気エネルギーに対して実質的に透明な材料で形成することができる。
【0098】
CVDチャンバ82は、RF誘導コイル20により少なくとも部分的に取り囲まれている。RF誘導コイル50は、
図5に示されたRF誘導コイルと類似であってよく、または実質的に同じであってよい。CDVチャンバ82は、多層コーティング48が形成されている基材46を取り囲む。基材46は、サセプタ54上に配される。
【0099】
幾つかの例において、RF誘導コイル50により加熱されたサセプタ84を含むのではなく、CVDチャンバ82の全体積が加熱されるように、CVDチャンバ82を加熱することができる。例えば、CVDチャンバ82を炉内に配することができ、またはCVDチャンバ82を、RFエネルギーを吸収し、CVDチャンバ82の体積を加熱する材料で形成することができる。
【0100】
CVDチャンバ82は、インレット86、88及び90、並びにアウトレット54を含むことができる。インレット86、88及び90を、コーティングガスの1つ又はそれより多くのソースに流体的に接続することができる。例えば、装置80において、インレット86は固体鉄含有材料94を取り囲んでいるチャンバ92に流体的に接続され、インレット88はバルブ62を介してコーティング成分の第一のソース60に流体的に結合され、インレット90はバルブ66を介してコーティング成分の第二のソース64と流体的に結合される。第一のソース60、バルブ62、第二のソース64、及びバルブ66は、
図5に関して上記に記載されたものと類似であってよく、または実質的に同じであってよい。例えば、第一のソース60は、窒素含有化合物を含む蒸気のソースを含むことができ、第二のソース64は炭素含有化合物(より一般的には、炭素含有化合物、ホウ素含有化合物、又は酸素含有化合物の少なくとも1種を含む蒸気のソース)を含む蒸気のソースを含むことができる。
【0101】
チャンバ92は、固体鉄含有材料94を取り囲む。幾つかの例において、鉄含有材料94としては、鉄含有粉末、ビレット、又は基材上に堆積した薄膜を挙げることができる。幾つかの例において、鉄含有粉末中の粒子は、ナノメートル又はマイクロメートルオーダーの平均特性寸法を規定することができる。幾つかの例において、鉄含有薄膜は、約500ナノメートル(nm)〜約1ミリメートル(mm)の厚さを規定することができる。幾つかの例において、鉄含有材料94は、実質的に純粋な鉄(例えば、90at%を超える純度の鉄)を含む。他の例において、鉄含有材料94は、酸化鉄(例えばFe
2O
3又はFe
3O
4)を含むことができる。
【0102】
チャンバ92は、第一のインレット96及び第二のインレット98を含むことができる。第一のインレット96を、バルブ102により第一のガスソース100に流体的に接続することができる。第一のガスソース100としては、HCl等の酸又は塩化物のソースを挙げることができる。酸又は塩化物は、鉄含有材料94と反応して鉄含有蒸気を形成することができる。例えば、HClは鉄含有材料94と反応して塩化鉄(FeCl
3)を形成することができ、それは加熱されて蒸気を形成することができる。
【0103】
第二のインレット98を、バルブ106によりキャリアガスソース104に流体的に結合することができる。幾つかの例において、キャリアガスソース104は、実質的に不活性のガス(例えば、装置80の動作中に装置80内に存在する他の元素及び化合物と実質的に反応性でないガス)のソースを含むことができる。実質的に不活性のガスとしては、例えばアルゴン等の希ガスを挙げることができる。
【0104】
バルブ62、66、102及び106は、CVDチャンバ82へのガス及び蒸気の全流速と、CVDチャンバ82へ流入するガス及び蒸気中のキャリアガス、窒素含有蒸気、炭素含有蒸気、及び鉄含有蒸気の相対割合とを制御するのに用いることができる。例えば、バルブ62、66、102及び106を制御することにより、層16の第一の組の層と層18の第二の組の層を交互に堆積させて、
図1及び
図5に示される多層硬質磁性材料14を製造することができる。α’’‐Fe
16N
2を含む層16の第一の組の層を形成するために、バルブ62、66、102及び106を制御することにより、炭素含有化合物を含む蒸気のCVDチャンバ82への流入を防ぎつつ、キャリアガス、窒素含有化合物を含む蒸気、及び鉄含有化合物を含む蒸気をCVDチャンバ82へ流入させることができる。幾つかの例において、層16の第一の組の層を形成するために、バルブ62、66、102及び106を制御することにより、CVDチャンバ82へ流入するキャリアガス、窒素含有化合物を含む蒸気、及び鉄含有化合物を含む蒸気が、約11.5:1(鉄:窒素)〜約5.65:1(鉄:窒素)のCVDチャンバ82へ流入するガス及び蒸気中の鉄と窒素の原子比率を生成することができる。例えば、CVDチャンバ82へ流入するガス及び蒸気中の鉄と窒素原子の原子比率は、約9:1(鉄:窒素)、約8:1(鉄:窒素)、又は約6.65:1(鉄:窒素)であることができる。
【0105】
幾つかの例において、層16の第一の組の層を形成するために、キャリアガスの流速は、約5sccm〜約5000sccmであることができ、窒素含有化合物を含む蒸気の流速は、約10sccm〜約1000sccmであることができ、鉄含有化合物を含む蒸気の流速は、約100sccm〜約5000sccmであることができる。これらのような流速は、約100μm/h〜約1000μm/hの層16の第一の組の層の成長速度をもたらす場合がある。
【0106】
幾つかの例において、HClは、以下の反応:
Fe+HCl→FeCl
3+H
2
にしたがってチャンバ92中でFeと反応することができる。FeCl
3とH
2は、蒸気をNH
3等の窒素含有蒸気と混合することができる第一のインレット86を介してCVDチャンバ82に流入することができる。幾つかの例において、窒素含有蒸気及び鉄含有蒸気は、鉄と窒素の約8:1の比を含む層16の第一の組の層を堆積させる以下の反応:
16FeCl
3+2NH
3+21H
2→2Fe
8N+48HCl
にしたがって反応することができる。
【0107】
幾つかの例において、軟質磁性材料を含む層18の第二の組の層を形成するために、バルブ62、66、102及び106を制御することにより、窒素含有化合物及び炭素含有化合物を含む蒸気がCVDチャンバ82に流入することを防ぎつつ、キャリアガス、及び鉄含有化合物を含む蒸気がCVDチャンバ82に流入させることができる。これにより、堆積した実質的に純粋な鉄を含む層をもたらすことができる。
【0108】
他の例において、層18の第二の組の層を形成するために、バルブ62、66、102及び106を制御して、キャリアガス、窒素含有化合物を含む蒸気、炭素含有化合物を含む蒸気、及び鉄含有化合物を含む蒸気をCVDチャンバ82に流入させ、約11.5:1(鉄:窒素+炭素)〜約5.65:1(鉄:窒素+炭素)のCVDチャンバ82へ流入するガス及び蒸気中の鉄と窒素及び炭素の組み合わせとの原子比率を生成することができる。例えば、CVDチャンバ82へ流入するガス及び蒸気中の鉄と窒素及び炭素の組み合わせとの原子比率は、約9:1(鉄:窒素+炭素)、約8:1(鉄:窒素+炭素)、又は約6.65:1(鉄:窒素+炭素)であることができる。
【0109】
加えて、バルブ62及び66を制御することにより、窒素含有化合物を含む蒸気と炭素含有化合物を含む蒸気の相対的な流速を制御して、CVDチャンバ82へ流入するガス中の窒素と炭素の所定の原子比率を生成することができる。例えば、バルブ62及び66を制御することにより、窒素含有化合物を含む蒸気と炭素含有化合物を含む蒸気の相対的な流速を制御して、約0.1:1〜約10:1、たとえば約1:1又は約4.667:5.333の窒素と炭素の原子比率を生成することができる。
【0110】
幾つかの例において、層18の第二の組の層を形成するために、キャリアガスの流速は、約5cm
3/分〜約5000cm
3/分であることができ、窒素含有化合物を含む蒸気の流速は約10cm
3/分〜約1000sccmであることができ、炭素含有化合物を含む蒸気の流速は、約0.1sccm〜約1000sccmであることができ、鉄含有化合物を含む蒸気の流速は約100sccm〜約5000sccmであることができる。これらのような流速は、約100μm/h〜約1000μm/hの層18の第二の組の層の成長速度をもたらす場合がある。
【0111】
幾つかの例において、HClは、以下の反応:
Fe+HCl→FeCl
3+H
2
にしたがってチャンバ92中でFeと反応することができる。FeCl
3とH
2は、蒸気をNH
3等の窒素含有蒸気と混合することができる第一のインレット86を介してCVDチャンバ82に流入することができる。幾つかの例において、窒素含有蒸気及び鉄含有蒸気は、鉄と窒素+炭素との約8:1の比を含む層18の第二の組の層を堆積させる以下の反応:
16FeCl
3+2NH
3+2CH
4+17H
2→2Fe
8NC+48HCl
にしたがって反応することができる。
【0112】
図5に関して上記で記載されたように、多層コーティング48が所定の厚さに形成されたら、多層コーティング48をアニールして、層16の第一の組の層中の鉄窒化物混合物の少なくとも幾らかをα’’‐Fe
16N
2に転換し、層18の第二の組の層中の鉄‐炭化物‐窒化物混合物の少なくとも幾らかをα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2又はα’’‐Fe
16N
2とα’’‐Fe
16Z
2(式中、Zは炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む。)との混合物に転換することができる。アニール法は、
図5に関して上記に記載されたものと類似であってよく、または実質的に同じであってよい。
【0113】
CVDを用いて基材46上に多層硬質磁性材料14を形成することにより、CVD及びCVDを利用する既存の製造技術を用いて形成された他の製品に、多層硬質磁性材料14を組み入れることができる。マスキングを含む既存のCVD製造操作を用いて、多層硬質磁性材料14を基材46の所定の部分又は領域に堆積させることができる。例えば、多層硬質磁性材料14をCMOS(相補的金属酸化物半導体)集積回路デバイスに組み入れることができ、多層硬質磁性材料42を形成するCVD法を既存のCMOS加工方法に組み入れることができる。他の例において、CVDを用いて形成された多層硬質磁性材料14を、数ある応用の中でも特に、電気モーター、発電機、変圧器、磁気記録メディア、磁気共鳴映像法(MRI)磁石、MRAM、磁性体論理デバイス、磁気MEMS、及びマイクロアクチュエーター等の高質磁性材料を利用する他のデバイスに組み入れることができる。
【0114】
CVDは、分子ビームエピタキシー(MBE)等の幾つかの他の技術より速く多層コーティング層48を成長させる場合がある一方、幾つかの例において、スパッタリング等の幾つかの他の技術と比較して優れたコーティングを形成する場合がある。
【0115】
他の例において、コーティング(例えば多層コーティング48)を液相エピタキシー(LPE)を用いて基材(例えば基材46)上に形成することができる。LPEにおいて、コーティング材料を含む溶液を冷却して過飽和の溶液を形成することができる。溶液中のコーティング材料は、溶液に浸漬され(immersed)、または浸漬された(submerged)基材上にコーティングを堆積させる。幾つかの例において、LPE法が近平衡プロセスであるように、過飽和の程度は低くてよい。これは、高い結晶品質のコーティングをもたらす場合がある(例えば、ほとんど完全な結晶構造)。加えて、溶液中のコーティング材料の濃度が蒸気相法におけるコーティング材料の濃度よりはるかに高いため、コーティングの成長速度は、蒸気相法を用いて成長したコーティングの成長速度より高い場合がある。
【0116】
図7は、LPEを用いて基材46上に鉄窒化物を含む少なくとも1つの層と鉄、窒素、及び炭素を含む少なくとも1つの層とを含む多層コーティングを形成する例示的な装置110を示す概念概略図である。装置110は、コーティング溶液116が含まれるるつぼ112を含む。装置110はRF誘導コイル114も含み、それはるつぼ112を少なくとも部分的に取り囲んでいる。RF誘導コイル114を流れるように、RFにおいて交流電流を生じさせるRFソース(
図7には示されていない)にRF誘導コイル114を電気的に接続することができる。幾つかの例において、RF誘導コイル114により生成したRF磁場は、コーティング溶液116が加熱されるように、コーティング溶液116又はるつぼ112により吸収されてよい。
【0117】
コーティング溶液116は、溶媒中の鉄の溶液を含むことができる。コーティング溶液116は、鉄と窒素を含む層を形成する際に第一の溶液を、鉄、炭素、及び窒素を含む層を形成する際に第二の異なる溶液を含むことができる。
【0118】
幾つかの例において、鉄と窒素を含む層を形成する際に、溶媒は、硝酸アンモニウム、尿素、アミド又はヒドラジン等の窒素含有化合物を含むことができる。幾つかの例において、溶媒を、堆積温度及び圧力にて窒素により過飽和にすることができる。任意のアミドを用いることができるが、例示的なアミドとしては、カルバミド(尿素ともよばれる(NH
2)
2CO)、メタンアミド(上記の式1)、ベンズアミド(上記の式2)、アセトアミド(上記の式3)、及び酸アミドが挙げられる。アミドは、LPE法中にコーティング溶液116により経験した温度にて液体であるように選択することができる。
【0119】
コーティング溶液116は、鉄ソースも含む。幾つかの例において、鉄ソースは鉄含有化合物を含むことができる。幾つかの例において、鉄ソースは液体鉄ドナー、たとえばFeCl
3又はFe(CO)
5を含む。他の例において、鉄ソースは鉄含有粉末を含むことができる。幾つかの例において、鉄含有粉末は、実質的に純粋な鉄(例えば90at%を超える純度の鉄)を含むことができる。幾つかの例において、鉄含有粉末は、酸化鉄(例えばFe
2O
3又はFe
3O
4)を含むことができる。
【0120】
鉄と窒素を含む層を形成するLPEプロセス中、コーティング溶液116を、
図8に示される液体‐固体鉄‐窒素相図の液相線温度を超える温度に加熱することができる。例えば、溶媒を液体‐固体鉄‐窒素相図中の点Aにより示される温度に加熱することができる。幾つかの例において、溶媒は、点Aにより示された温度に加熱される際、鉄ソースを含まなくてよい。
【0121】
鉄ソース又は鉄含有材料を次いで溶媒に溶解させ、鉄含有材料により飽和したコーティング溶液116を形成することができる。この飽和溶液は、液体‐固体鉄‐窒素相図の点Bにより示されている。基材46を次いでコーティング溶液116に浸漬することができる。
【0122】
コーティング溶液116と基材46を、次いで鉄‐窒素コーティングが形成される液相線温度未満の点Cにより示された温度に冷却することができる。このことは、鉄含有材料により過飽和にされたコーティング溶液116を生じさせ、それはLPEコーティング法を駆動する。幾つかの例において、LPEコーティング法が実施される点Cにより示された温度は、(点Cがより高い温度を示すが)約600℃〜約800℃であることができる。点Cは、析出が終わる液相線上の点Dに到達するまで2相領域にあり、それは、基材46の表面上の鉄窒化物の析出の駆動力を与える。幾つかの例において、コーティング溶液86中の鉄と窒素の濃度、及びLPEコーティング法が実施される温度を制御して、約11.5:1(鉄:窒素)〜約5.65:1(鉄:窒素)の鉄と窒素の原子比率を与えることができる。例えば、鉄と窒素原子の原子比率は、約9:1(鉄:窒素)、約8:1(鉄:窒素)又は約6.65:1(鉄:窒素)であることができる。
【0123】
鉄と窒素を含むコーティングがLPEにより形成されたら、基材46をるつぼ112から取り出すことができる。
【0124】
第二のコーティング溶液116を、鉄、炭素、及び窒素を含む層を形成するために形成することができる。幾つかの例において、鉄、炭素、及び窒素を含む層を形成する際、溶媒は、硝酸アンモニウム、尿素、アミド又はヒドラジン等の窒素含有化合物を含むことができる。幾つかの例において、溶媒を、堆積温度及び圧力にて窒素により過飽和にすることができる。任意のアミドを用いることができるが、例示的なアミドとしては、カルバミド(尿素ともよばれる(NH
2)
2CO)、メタンアミド(上記の式1)、ベンズアミド(上記の式2)、アセトアミド(上記の式3)、及び酸アミドが挙げられる。アミドは、LPE法中にコーティング溶液116により経験した温度にて液体であるように選択することができる。
【0125】
コーティング溶液116は、炭素含有化合物も含むことができる。例えば、コーティング116は溶解した一酸化炭素、溶解した二酸化炭素、溶解したメタン又は尿素を含むことができる。幾つかの例において、炭素含有化合物及び窒素含有化合物は同じ(例えば尿素)であることができる。
【0126】
コーティング溶液116は、鉄ソースも含む。幾つかの例において、鉄ソースは鉄含有化合物を含むことができる。幾つかの例において、鉄ソースはFeCl
3、Fe(CO)
5、実質的に純粋な鉄(例えば90at%を超える純度の鉄)、Fe
2O
3又はFe
3O
4の少なくとも1種を含む。
【0127】
鉄、炭素、及び窒素を含む層を形成するLPEプロセス中、コーティング溶液116を、基材46上に堆積される鉄、炭素、及び窒素の混合物の液相線温度を超える温度に加熱することができる。幾つかの例において、溶媒は、液相線温度を超える温度に加熱される際、鉄ソース、炭素ソース、又はその両方を含まなくてよい。
【0128】
鉄ソース及び炭素ソースを次いで溶媒に溶解させ、鉄含有材料、炭素ソース、又はその両方により飽和したコーティング溶液116を形成することができる。基材46を次いでコーティング溶液116に浸漬することができる。
【0129】
コーティング溶液116と基材46を、次いで形成された鉄‐炭素‐窒素コーティングの液相線温度未満の温度に冷却することができる。これにより、鉄含有材料、炭素含有材料、又はその両方により過飽和にされたコーティング溶液116を生じさせ、それはLPEコーティング法を駆動する。幾つかの例において、LPEコーティング法が実施される温度は、約600℃〜約1000℃であることができる。この温度は、2相領域にあることができ、それは、基材12の表面上の鉄‐炭素‐窒素の析出の駆動力を与える。幾つかの例において、コーティング溶液116中の鉄、炭素、及び窒素の濃度、並びにLPEコーティング法が実施される温度を制御して、約11.5:1(鉄:(窒素+炭素))〜約5.65:1(鉄:(窒素+炭素))の鉄と窒素+炭素との原子比率を与えることができる。例えば、鉄と窒素原子の原子比率は、約9:1(鉄:(窒素+炭素))、約8:1(鉄:(窒素+炭素))又は約6.65:1(鉄:(窒素+炭素))であることができる。
【0130】
鉄及び窒素を含む少なくとも1つの層と、鉄、炭素、及び窒素を含む少なくとも1つの層とを含む多層コーティング後に、多層コーティングを
図5に関して記載されたものと類似、又は実質的に同じ条件下でアニールすることができる。アニールが、鉄及び窒素を含む層中のα’’‐Fe
16N
2の形成と、鉄、Z原子(例えば炭素)、及び窒素を含む層中のα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2相(式中、ZはC、B、又はOの少なくとも1種を含む。)、又はα’’‐Fe
16N
2相とα’’‐Fe
16Z
2相との混合物の形成とを促進することにより、
図1に示された多層硬質磁性材料14を形成することができる。
【0131】
α’’‐Fe
16N
2は、高い飽和磁化及び磁気異方性定数を有する。高い飽和磁化及び磁気異方性定数は、希土類磁石より高い場合がある磁気エネルギー積をもたらす。例えば、薄膜α’’‐Fe
16N
2永久磁石から集められた実験的証拠は、バルクFe
16N
2永久磁石が、約134メガガウス
*エールステッド(MGOe)程度(約60MGOeのエネルギー積を有する)NdFeBのエネルギー積の約2倍である)のエネルギー積を含む望ましい磁気特性を有する場合があることを示唆する。加えて、鉄と窒素は豊富な元素であるため、それほど高価でなく、製造が容易である。α’’‐Fe
16N
2磁石の高いエネルギー積を、数ある応用の中でも特に、電気モーター、発電機、変圧器、磁気記録メディア、及び磁気共鳴映像法(MRI)磁石に用いることができる。多層硬質磁性材料14(
図1)において、α’’‐Fe
16N
2を含む層16の第一の組の層は、軟質磁性材料を含む層18の第二の組の層と交換スプリング結合することができる。このように、多層硬質磁性材料14は、α’’‐Fe
16N
2からなる材料と類似の磁気特性を有することができる。
【0132】
範囲が分子量等の物理的特性、又は化学式等の化学的特性に関して本開示で用いられる場合、その特定の例に関する範囲の全ての組み合わせ及びサブコンビネーションが含まれることが意図される。
【0133】
この特許出願は、国際特許出願第PCT/US2012/051382(2012年8月17日出願)、国際特許出願第PCT/US2014/015104(2014年2月6日出願)、及び国際特許出願第PCT/US2014/043902(2014年6月24日出願)に関連する。これらの国際特許出願の全体の内容は、参照により本開示に組み入れられる。
【0134】
本書面において引用され、または記載された各特許、特許出願、及び公報の開示は、その全体において参照により本開示に組み入れられる。
【0135】
態様1:鉄ソースを加熱して鉄含有化合物を含む蒸気を形成すること、鉄含有化合物を含む蒸気から鉄を、窒素含有化合物を含む蒸気から窒素を基材上方に堆積させて、鉄と窒素を含む第一の層を形成すること、鉄含有化合物を含む蒸気から鉄を、窒素含有化合物を含む蒸気から窒素を、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気から炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を前記基材上方に堆積させて、鉄と、窒素と、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種とを含む第二の層を形成すること、及び前記第一の層をアニールしてα’’‐Fe
16N
2を含む少なくとも幾らかの結晶を、前記第二の層をアニールしてα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2(式中、Zは炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含み、xはゼロより大きく、1より小さい数である。)を含む少なくとも幾らかの結晶を形成することを含む方法。
態様2:鉄ソースを加熱して鉄含有化合物を含む蒸気を形成すること、鉄含有化合物を含む蒸気から鉄を、窒素含有化合物を含む蒸気から窒素を基材上方に堆積させて、鉄と窒素を含む第一の層を形成すること、鉄含有化合物を含む蒸気から鉄を、窒素含有化合物を含む蒸気から窒素を、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気から炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を前記基材上方に堆積させて、鉄と、窒素と、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種とを含む第二の層を形成すること、及び前記第一の層をアニールしてα’’‐Fe
16N
2を含む少なくとも幾らかの結晶を、前記第二の層をアニールしてα’’‐Fe
16N
2を含む少なくとも幾らかの結晶とα’’‐Fe
16Z
2(式中、Zは炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む。)を含む少なくとも幾らかの結晶とを形成することを含む方法。
態様3:前記第一の層が前記基材上に形成され、前記第二の層が前記第一の層上に形成される、態様1又は2に記載の方法。
態様4:前記第二の層が前記基材上に形成され、前記第一の層が前記第二の層上に形成される、態様1又は2に記載の方法。
態様5:前記鉄ソースが固体鉄を含む、態様1〜4のいずれかに記載の方法。
態様6:前記固体鉄が、鉄粉末又は鉄薄膜の少なくとも1種を含む、態様1〜4のいずれかに記載の方法。
態様7:鉄ソースが固体鉄前駆体を含む、態様1〜4のいずれかに記載の方法。
態様8:前記固体鉄前駆体が、Fe
2O
3粉末又はFe
2O
4粉末の少なくとも1種を含む、態様7に記載の方法。
態様9:前記鉄ソースが液体鉄前駆体を含む、態様1〜4のいずれかに記載の方法。
態様10:前記液体鉄前駆体が、FeCl
3又はFe(CO)
5の少なくとも1種を含む、態様9に記載の方法。
態様11:前記窒素含有化合物を含む蒸気が、少なくとも尿素を加熱して尿素を含む蒸気を形成することにより形成される、態様1〜10のいずれかに記載の方法。
態様12:前記窒素含有化合物を含む蒸気が、少なくともアミド又はヒドラジンの少なくとも1種を加熱して窒素含有化合物を含む蒸気を形成することにより形成される、態様1〜10のいずれかに記載の方法。
態様13:前記窒素含有化合物を含む蒸気がNH
3蒸気を含む、態様1〜10のいずれかに記載の方法。
態様14:前記窒素含有化合物を含む蒸気が、プラズマを用いて二原子窒素から形成された原子状窒素を含む、態様1〜10のいずれかに記載の方法。
態様15:前記炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気を与えることが、炭素の固体ソースを加熱して炭素を含む蒸気を形成することを含む、態様1〜14のいずれかに記載の方法。
態様16:前記炭素の固体ソースが、純粋な炭素又は尿素の少なくとも1種を含む、態様15に記載の方法。
態様17:前記炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気が、一酸化炭素、二酸化炭素、又はメタンの少なくとも1種を含む蒸気を含む、態様1〜14のいずれかに記載の方法。
態様18:前記鉄含有化合物を含む蒸気及び前記窒素含有化合物を含む蒸気を加熱して前記鉄含有化合物を含む蒸気及び前記窒素含有化合物を含む蒸気を分解して、前記第一の層中で前記基材上に堆積する原子状窒素と原子状鉄を形成することを更に含む、態様1〜17のいずれかに記載の方法。
態様19:原子状窒素及び原子状鉄が前記第一の層中で前記基材上に堆積するように、前記鉄含有化合物を含む蒸気、及び前記窒素含有化合物を含む蒸気の少なくとも1種の分解温度を超えて前記基材を加熱することを更に含む、態様1〜18のいずれかに記載の方法。
態様20:前記鉄含有化合物を含む蒸気と、前記窒素含有化合物を含む蒸気と、前記炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気とを加熱して、前記鉄含有化合物を含む蒸気と、前記窒素含有化合物を含む蒸気と、前記炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気とを分解して、前記第二の層中で前記基材上に堆積する原子状窒素と、原子状鉄と、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種の原子とを形成することを更に含む、態様1〜19のいずれかに記載の方法。
態様21:原子状窒素、原子状鉄、及び炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種の原子が前記第二の層中で前記基材上に堆積するように、前記鉄含有化合物を含む蒸気、前記窒素含有化合物を含む蒸気、及び前記炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気の少なくとも1種の分解温度を超えて前記基材を加熱することを更に含む、態様1〜20のいずれかに記載の方法。
態様22:前記第一の層と前記第二の層をアニールすることが、約5時間〜80時間、約100℃〜約300℃の温度にて層を加熱することを含む、態様1〜21のいずれかに記載の方法。
態様23:前記基材が、シリコン、GaAs、SiC、InGaAs、MgO、SiO
2、ガラス、又は高温ポリマーの少なくとも1種を含む、態様1〜22のいずれかに記載の方法。
態様24:窒素含有溶媒と鉄ソースとを含む第一のコーティング溶液に基材を浸漬させるに際し、前記第一のコーティング溶液が、前記第一のコーティング溶液から堆積される鉄‐窒素混合物の液相線温度を超える第一の温度にて鉄ソースにより飽和されること、前記第一のコーティング溶液を鉄‐窒素混合物の液相線温度未満の第二の温度に冷却して過飽和の第一のコーティング溶液を形成すること、前記過飽和の第一のコーティング溶液中に前記基材を維持することにより、鉄と窒素を含む第一の層を前記基材上方に形成すること、窒素含有溶媒と、鉄ソースと、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む化合物とを含む第二のコーティング溶液に前記基材を浸漬させるに際し、前記第二のコーティング溶液が、前記第二のコーティング溶液から堆積される混合物の液相線温度を超える第三の温度にて鉄ソースにより飽和されること、前記第二のコーティング溶液を混合物の液相線温度未満の第四の温度に冷却して過飽和の第二のコーティング溶液を形成すること、前記過飽和の第二のコーティング溶液中に前記基材を維持することにより、鉄と、窒素と、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種とを含む第二の層を前記基材上方に形成すること、前記第一の層をアニールしてα’’‐Fe
16N
2を含む少なくとも幾らかの結晶を形成すること、及び前記第二の層をアニールしてα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2(式中、Zは炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含み、xはゼロより大きく、1より小さい数である。)を含む少なくとも幾らかの結晶を形成することを含む方法。
態様25:窒素含有溶媒と鉄ソースとを含む第一のコーティング溶液に基材を浸漬させるに際し、前記第一のコーティング溶液が、前記第一のコーティング溶液から堆積される鉄‐窒素混合物の液相線温度を超える第一の温度にて鉄ソースにより飽和されること、前記第一のコーティング溶液を鉄‐窒素混合物の液相線温度未満の第二の温度に冷却して過飽和の第一のコーティング溶液を形成すること、前記過飽和の第一のコーティング溶液中に前記基材を維持することにより、鉄と窒素を含む第一の層を前記基材上方に形成すること、窒素含有溶媒と、鉄ソースと、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む化合物とを含む第二のコーティング溶液に前記基材を浸漬させるに際し、前記第二のコーティング溶液が、前記第二のコーティング溶液から堆積される混合物の液相線温度を超える第三の温度にて鉄ソースにより飽和されること、前記第二のコーティング溶液を混合物の液相線温度未満の第四の温度に冷却して過飽和の第二のコーティング溶液を形成すること、前記過飽和の第二のコーティング溶液中に前記基材をある期間に亘って維持することにより、鉄と、窒素と、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種とを含む第二の層を前記基材上方に形成すること、前記第一の層をアニールしてα’’‐Fe
16N
2を含む少なくとも幾らかの結晶を形成すること、及び前記第二の層をアニールしてα’’‐Fe
16N
2とα’’‐Fe
16Z
2(式中、Zは炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む。)との混合物を含む少なくとも幾らかの結晶を形成することを含む方法。
態様26:前記第一の層が前記基材上に形成され、前記第二の層が前記第一の層上に形成される、態様24又は25に記載の方法。
態様27:前記第二の層が前記基材上に形成され、前記第一の層が前記第二の層上に形成される、態様24又は25に記載の方法。
態様28:前記溶媒が、アミド又はヒドラジンの少なくとも1種を含む、態様24〜27のいずれかに記載の方法。
態様29:前記鉄ソースが、実質的に純粋な鉄、FeCl
3、Fe(CO)
5、又は酸化鉄の少なくとも1種を含む、態様24〜28のいずれかに記載の方法。
態様30:前記第二の温度が約600℃〜約800℃である、態様24〜29のいずれかに記載の方法。
態様31:前記第一のコーティングが、約11.5:1(鉄:窒素)〜約5.65:1(鉄:窒素)の鉄と窒素の原子比率を含む、態様24〜30のいずれかに記載の方法。
態様32:前記第一のコーティングが、約8:1(鉄:窒素)の鉄と窒素の原子比率を含む、態様24〜30のいずれかに記載の方法。
態様33:前記第二のコーティングが、約11.5:1〜約5.65:1の鉄:窒素+炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種の原子比率を含む、態様24〜32のいずれかに記載の方法。
態様34:前記第二のコーティングが、約8:1の鉄:窒素+炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種の原子比率を含む、態様24〜32のいずれかに記載の方法。
態様35:前記第一のコーティングをアニールしてα’’‐Fe
16N
2を含む少なくとも幾らかの結晶を形成すること、及び前記第二のコーティングをアニールしてα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2又はα’’‐Fe
16N
2とα’’‐Fe
16Z
2との混合物を含む少なくとも幾らかの結晶を形成することが、約5時間〜約80時間、約100℃〜約300℃の温度にて前記第一のコーティング及び前記第二のコーティングを加熱することを含む、態様24〜34のいずれかに記載の方法。
態様36:前記基材が、シリコン、GaAs、SiC、InGaAs、MgO、SiO
2、ガラス、又は高温ポリマーの少なくとも1種を含む、態様24〜35のいずれかに記載の方法。
態様37:態様1〜36のいずれかに記載の方法により形成された物品。
態様38:各層がα’’‐Fe
16N
2を含む、層の第一の組と、各層がα’’‐Fe
16N
2とα’’‐Fe
16Z
2(式中、ZはC、B、又はOの少なくとも1種を含む。)との混合物を含む、層の第二の組とを含む物品であって、前記層の第一の組の1つ又はそれより多くの各層が、前記層の第二の組の1つ又はそれより多くの各層と交互に配置されている物品。
態様39:前記層の第二の組の各層中のα’’‐Fe
16N
2とα’’‐Fe
16Z
2の比が約1:1である、態様38に記載の物品。
態様40:各層がα’’‐Fe
16N
2を含む、層の第一の組と、各層がα’’‐Fe
16(N
xZ
1-x)
2(式中、ZはC、B、又はOの少なくとも1種を含み、xはゼロより大きく、1より小さい数である。)を含む、層の第二の組とを含む物品であって、前記層の第一の組の1つ又はそれより多くの各層が、前記層の第二の組の1つ又はそれより多くの各層と交互に配置されている物品。
態様41:xが約0.5に等しい、態様40に記載の物品。
態様42:高温ポリマー、シリコン、GaAs、SiC、INGaAs、MgO、SiO
2、又はガラスの少なくとも1種を含む基材を更に含み、前記層の第一の組と前記層の第二の組が、前記基材上に形成されている、態様38〜41のいずれかに記載の物品。
態様43:交換スプリング結合により、前記層の第二の組の1つ又はそれより多くの各層が、前記層の第一の組の1つ又はそれより多くの各層と磁気的に結合している、態様38〜42のいずれかに記載の物品。
【0136】
種々の例が記載されてきた。当業者は、種々の変更及び改変が本開示に記載の例に対してなされることができること、並びに係る変更及び改変が本開示の精神から逸脱することなくなされることができることを理解するであろう。これら及び他の例は、以下の特許請求の範囲内である。
本開示は以下も包含する。
[1]
各層がα’’‐Fe16N2を含む、層の第一の組と、
各層がα’’‐Fe16N2とα’’‐Fe16Z2(式中、ZはC、B、又はOの少なくとも1種を含む。)との混合物を含む、層の第二の組と
を含む物品であって、前記層の第一の組の1つ又はそれより多くの各層が、前記層の第二の組の1つ又はそれより多くの各層と交互に配置されている物品。
[2]
前記層の第二の組の各層中のα’’‐Fe16N2とα’’‐Fe16Z2の比が約1:1である、上記態様1に記載の物品。
[3]
前記層の第二の組の各層中のα’’‐Fe16N2とα’’‐Fe16Z2の比が約4.667:5.333である、上記態様1に記載の物品。
[4]
各層がα’’‐Fe16N2を含む、層の第一の組と、
各層がα’’‐Fe16(NxZ1-x)2(式中、ZはC、B、又はOの少なくとも1種を含み、xは0より大きく、1より小さい数である。)を含む、層の第二の組と
を含む物品であって、前記層の第一の組の1つ又はそれより多くの各層が、前記層の第二の組の1つ又はそれより多くの各層と交互に配置されている物品。
[5]
xが約0.5に等しい、上記態様4に記載の物品。
[6]
前記層の第二の組の各層中のα’’‐Fe16N2とα’’‐Fe16Z2の比が約0.4667である、上記態様4に記載の物品。
[7]
高温ポリマー、シリコン、GaAs、SiC、INGaAs、MgO、SiO2、ガラス、又は金属の少なくとも1種を含む基材を更に含み、前記層の第一の組と前記層の第二の組が、前記基材上に形成されている、上記態様1〜6のいずれかに記載の物品。
[8]
交換スプリング結合により、前記層の第二の組の1つ又はそれより多くの各層が、前記層の第一の組の1つ又はそれより多くの各層と磁気的に結合している、上記態様1〜7のいずれかに記載の物品。
[9]
強磁性ドーパント、非磁性ドーパント、又は相安定剤の少なくとも1種を更に含む、上記態様1〜8のいずれかに記載の物品。
[10]
前記層の第一の組の少なくとも1つの層の厚さが、約50nm未満である、上記態様1〜9のいずれかに記載の物品。
[11]
前記層の第一の組の少なくとも1つの層が、軟質磁性材料を含む少なくとも1つのドメインを更に含み、前記層の第一の組の少なくとも1つの層中のα’’‐Fe16N2が、軟質磁性材料を含む少なくとも1つのドメインと磁気的に結合している、上記態様1〜9のいずれかに記載の物品。
[12]
前記物品が、電気モーター、発電機、センサ、アクチュエーター、自動車の部品、又は風力タービンの部品である、上記態様1〜11のいずれかに記載の物品。
[13]
鉄ソースを加熱して鉄含有化合物を含む蒸気を形成すること、
鉄含有化合物を含む蒸気から鉄を、窒素含有化合物を含む蒸気から窒素を基材上方に堆積させて、鉄と窒素を含む第一の層を形成すること、
鉄含有化合物を含む蒸気から鉄を、窒素含有化合物を含む蒸気から窒素を、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気から炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を前記基材上方に堆積させて、鉄と、窒素と、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種とを含む第二の層を形成すること、及び
前記第一の層をアニールしてα’’‐Fe16N2を含む少なくとも幾らかの結晶を、前記第二の層をアニールしてα’’‐Fe16(NxZ1-x)2(式中、Zは炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含み、xはゼロより大きく、1より小さい数である。)を含む少なくとも幾らかの結晶を形成することを含む方法。
[14]
鉄ソースを加熱して鉄含有化合物を含む蒸気を形成すること、
鉄含有化合物を含む蒸気から鉄を、窒素含有化合物を含む蒸気から窒素を基材上方に堆積させて、鉄と窒素を含む第一の層を形成すること、
鉄含有化合物を含む蒸気から鉄を、窒素含有化合物を含む蒸気から窒素を、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気から炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を前記基材上方に堆積させて、鉄と、窒素と、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種とを含む第二の層を形成すること、及び
前記第一の層をアニールしてα’’‐Fe16N2を含む少なくとも幾らかの結晶を、前記第二の層をアニールしてα’’‐Fe16N2を含む少なくとも幾らかの結晶とα’’‐Fe16Z2(式中、Zは炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む。)を含む少なくとも幾らかの結晶とを形成することを含む方法。
[15]
前記第一の層が前記基材上に形成され、前記第二の層が前記第一の層上に形成される、上記態様13又は14に記載の方法。
[16]
前記第二の層が前記基材上に形成され、前記第一の層が前記第二の層上に形成される、上記態様13又は14に記載の方法。
[17]
前記鉄ソースが固体鉄を含む、上記態様13〜16のいずれかに記載の方法。
[18]
前記固体鉄が、鉄粉末又は鉄薄膜の少なくとも1種を含む、上記態様13〜16のいずれかに記載の方法。
[19]
鉄ソースが固体鉄前駆体を含む、上記態様13〜16のいずれかに記載の方法。
[20]
前記固体鉄前駆体が、Fe2O3粉末又はFe2O4粉末の少なくとも1種を含む、上記態様19に記載の方法。
[21]
前記鉄ソースが液体鉄前駆体を含む、上記態様13〜16のいずれかに記載の方法。
[22]
前記液体鉄前駆体が、FeCl3又はFe(CO)5の少なくとも1種を含む、上記態様21に記載の方法。
[23]
前記窒素含有化合物を含む前記蒸気が、少なくとも尿素を加熱して尿素を含む蒸気を形成することにより形成される、上記態様13〜22のいずれかに記載の方法。
[24]
前記窒素含有化合物を含む蒸気が、少なくともアミド又はヒドラジンの少なくとも1種を加熱して窒素含有化合物を含む蒸気を形成することにより形成される、上記態様13〜22のいずれかに記載の方法。
[25]
前記窒素含有化合物を含む蒸気がNH3蒸気を含む、上記態様13〜22のいずれかに記載の方法。
[26]
前記窒素含有化合物を含む蒸気が、プラズマを用いて二原子窒素から形成された原子状窒素を含む、上記態様13〜22のいずれかに記載の方法。
[27]
前記炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気を与えることが、炭素の固体ソースを加熱して炭素を含む蒸気を形成することを含む、上記態様13〜22のいずれかに記載の方法。
[28]
前記炭素の固体ソースが、純粋な炭素又は尿素の少なくとも1種を含む、上記態様27に記載の方法。
[29]
前記炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気が、一酸化炭素、二酸化炭素、又はメタンの少なくとも1種を含む蒸気を含む、上記態様13〜26のいずれかに記載の方法。
[30]
前記鉄含有化合物を含む蒸気及び前記窒素含有化合物を含む蒸気を加熱して前記鉄含有化合物を含む蒸気及び前記窒素含有化合物を含む蒸気を分解して、前記第一の層中で前記基材上に堆積する原子状窒素と原子状鉄を形成することを更に含む、上記態様13〜29のいずれかに記載の方法。
[31]
原子状窒素及び原子状鉄が前記第一の層中で前記基材上に堆積するように、前記鉄含有化合物を含む蒸気、及び前記窒素含有化合物を含む蒸気の少なくとも1種の分解温度を超えて前記基材を加熱することを更に含む、上記態様13〜30のいずれかに記載の方法。
[32]
前記鉄含有化合物を含む蒸気と、前記窒素含有化合物を含む蒸気と、前記炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気とを加熱して、前記鉄含有化合物を含む蒸気と、前記窒素含有化合物を含む蒸気と、前記炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気とを分解して、前記第二の層中で前記基材上に堆積する原子状窒素と、原子状鉄と、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種の原子とを形成することを更に含む、上記態様13〜31のいずれかに記載の方法。
[33]
原子状窒素、原子状鉄、及び炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種の原子が前記第二の層中で前記基材上に堆積するように、前記鉄含有化合物を含む蒸気、前記窒素含有化合物を含む蒸気、及び前記炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む蒸気の少なくとも1種の分解温度を超えて前記基材を加熱することを更に含む、上記態様13〜32のいずれかに記載の方法。
[34]
前記第一の層と前記第二の層をアニールすることが、約5時間〜80時間、約100℃〜約300℃の温度にて層を加熱することを含む、上記態様13〜33のいずれかに記載の方法。
[35]
前記基材が、シリコン、GaAs、SiC、InGaAs、MgO、SiO2、ガラス、高温ポリマー、又は金属の少なくとも1種を含む、上記態様13〜34のいずれかに記載の方法。
[36]
窒素含有溶媒と鉄ソースとを含む第一のコーティング溶液に基材を浸漬させるに際し、前記第一のコーティング溶液が、前記第一のコーティング溶液から堆積される鉄‐窒素混合物の液相線温度を超える第一の温度にて鉄ソースにより飽和されること、
前記第一のコーティング溶液を鉄‐窒素混合物の液相線温度未満の第二の温度に冷却して過飽和の第一のコーティング溶液を形成すること、
前記過飽和の第一のコーティング溶液中に前記基材を維持することにより、鉄と窒素を含む第一の層を前記基材上方に形成すること、
窒素含有溶媒と、鉄ソースと、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む化合物とを含む第二のコーティング溶液に前記基材を浸漬させるに際し、前記第二のコーティング溶液が、前記第二のコーティング溶液から堆積される混合物の液相線温度を超える第三の温度にて鉄ソースにより飽和されること、
前記第二のコーティング溶液を混合物の液相線温度未満の第四の温度に冷却して過飽和の第二のコーティング溶液を形成すること、
前記過飽和の第二のコーティング溶液中に前記基材を維持することにより、鉄と、窒素と、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種とを含む第二の層を前記基材上方に形成すること、
前記第一の層をアニールしてα’’‐Fe16N2を含む少なくとも幾らかの結晶を形成すること、及び
前記第二の層をアニールしてα’’‐Fe16(NxZ1-x)2(式中、Zは炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含み、xはゼロより大きく、1より小さい数である。)を含む少なくとも幾らかの結晶を形成することを含む方法。
[37]
窒素含有溶媒と鉄ソースとを含む第一のコーティング溶液に基材を浸漬させるに際し、前記第一のコーティング溶液が、前記第一のコーティング溶液から堆積される鉄‐窒素混合物の液相線温度を超える第一の温度にて鉄ソースにより飽和されること、
前記第一のコーティング溶液を鉄‐窒素混合物の液相線温度未満の第二の温度に冷却して過飽和の第一のコーティング溶液を形成すること、
前記過飽和の第一のコーティング溶液中に前記基材を維持することにより、鉄と窒素を含む第一の層を前記基材上方に形成すること、
窒素含有溶媒と、鉄ソースと、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む化合物とを含む第二のコーティング溶液に前記基材を浸漬させるに際し、前記第二のコーティング溶液が、前記第二のコーティング溶液から堆積される混合物の液相線温度を超える第三の温度にて鉄ソースにより飽和されること、
前記第二のコーティング溶液を混合物の液相線温度未満の第四の温度に冷却して過飽和の第二のコーティング溶液を形成すること、
前記過飽和の第二のコーティング溶液中に前記基材をある期間に亘って維持することにより、鉄と、窒素と、炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種とを含む第二の層を前記基材上方に形成すること、並びに
前記第一の層をアニールしてα’’‐Fe16N2を含む少なくとも幾らかの結晶を形成すること、及び前記第二の層をアニールしてα’’‐Fe16N2とα’’‐Fe16Z2(式中、Zは炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種を含む。)との混合物を含む少なくとも幾らかの結晶を形成することを含む方法。
[38]
前記第一の層が前記基材上に形成され、前記第二の層が前記第一の層上に形成される、上記態様36又は37に記載の方法。
[39]
前記第二の層が前記基材上に形成され、前記第一の層が前記第二の層上に形成される、上記態様36又は37に記載の方法。
[40]
前記溶媒が、アミド又はヒドラジンの少なくとも1種を含む、上記態様36〜39のいずれかに記載の方法。
[41]
前記鉄ソースが、実質的に純粋な鉄、FeCl3、Fe(CO)5、又は酸化鉄の少なくとも1種を含む、上記態様36〜40のいずれかに記載の方法。
[42]
前記第二の温度が約600℃〜約800℃である、上記態様36〜41のいずれかに記載の方法。
[43]
前記第一のコーティングが、約11.5:1(鉄:窒素)〜約5.65:1(鉄:窒素)の鉄と窒素の原子比率を含む、上記態様36〜42のいずれかに記載の方法。
[44]
前記第一のコーティングが、約8:1(鉄:窒素)の鉄と窒素の原子比率を含む、上記態様36〜42のいずれかに記載の方法。
[45]
前記第二のコーティングが、約11.5:1〜約5.65:1の鉄:窒素+炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種の原子比率を含む、上記態様36〜44のいずれかに記載の方法。
[46]
前記第二のコーティングが、約8:1の鉄:窒素+炭素、ホウ素、又は酸素の少なくとも1種の原子比率を含む、上記態様36〜44のいずれかに記載の方法。
[47]
前記第一のコーティングをアニールしてα’’‐Fe16N2を含む少なくとも幾らかの結晶を形成すること、及び前記第二のコーティングをアニールしてα’’‐Fe16(NxZ1-x)2又はα’’‐Fe16N2とα’’‐Fe16Z2との混合物を含む少なくとも幾らかの結晶を形成することが、約5時間〜約80時間、約100℃〜約300℃の温度にて前記第一のコーティング及び前記第二のコーティングを加熱することを含む、上記態様36〜46のいずれかに記載の方法。
[48]
前記基材が、シリコン、GaAs、SiC、InGaAs、MgO、SiO2、ガラス、高温ポリマー、又は金属の少なくとも1種を含む、上記態様36〜47のいずれかに記載の方法。
[49]
上記態様13〜48のいずれかに記載の方法により形成された物品。
[50]
上記態様13〜48のいずれかに記載の方法により製造されたα’’‐Fe16N2を含む結晶を含む加工対象物。
[51]
前記加工対象物が、ペレット、ロッド、薄膜、ナノ粒子、粉末、又はナノスケール粉末である、上記態様50に記載の加工対象物。