特許第6334834号(P6334834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6334834車両用シート部材および車両用シート並びにそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334834
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】車両用シート部材および車両用シート並びにそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20180521BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20180521BHJP
   A47C 7/18 20060101ALI20180521BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20180521BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20180521BHJP
【FI】
   B60N2/68
   A47C7/02 A
   A47C7/18
   A47C27/14 A
   B60N2/44
【請求項の数】9
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-561425(P2017-561425)
(86)(22)【出願日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】JP2017002654
(87)【国際公開番号】WO2017138359
(87)【国際公開日】20170817
【審査請求日】2017年11月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-21648(P2016-21648)
(32)【優先日】2016年2月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 有史
【審査官】 小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5344395(JP,B2)
【文献】 特開2015−174340(JP,A)
【文献】 特開2012−025908(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/133619(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
A47C 7/02
A47C 7/18
A47C 27/14
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂成形体に埋設される本体部と前記本体部から突起しており先端側が発泡樹脂成形体から外部に突出し基端部が発泡樹脂成形体に埋設される突出部とからなるフレーム材が発泡樹脂成形体に一体成形されている車両用シート部材の製造方法であって、
成形型内に、前記フレーム材を、前記本体部が成形型の内部に位置するように配置するとともに、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子を充填した後、前記成形型内で前記予備発泡樹脂粒子を発泡させて型内発泡成形により前記発泡樹脂成形体を成形する型内発泡成形工程と、
前記成形型を脱型して前記車両用シート部材を得る脱型工程と
を含み、
前記型内発泡成形工程において、前記脱型工程で得られる前記車両用シート部材における前記発泡樹脂成形体の外寸をA、前記外寸に対応する前記成形型の内寸をBとしたとき、(B−A)/Bが2.5/1000以上、13/1000以下となるように、前記発泡樹脂成形体を成形することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
発泡樹脂成形体に埋設される本体部と前記本体部から突起しており先端側が発泡樹脂成形体から外部に突出し基端部が発泡樹脂成形体に埋設される突出部とからなるフレーム材が発泡樹脂成形体に一体成形されている車両用シート部材の製造方法であって、
成形型内に、前記フレーム材を、前記本体部が成形型の内部に位置するように配置するとともに、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子を充填した後、前記成形型内で前記予備発泡樹脂粒子を発泡させて型内発泡成形により前記発泡樹脂成形体を成形する型内発泡成形工程と、
前記成形型を脱型して前記車両用シート部材を得る脱型工程と
を含み、
前記型内発泡成形工程が、発泡倍率が10〜60倍であり、前記予備発泡樹脂粒子に由来する発泡粒子間の融着率が50〜100%となるように前記発泡樹脂成形体を成形する工程であり、
前記樹脂が、所定の型内形状を有する標準成形型を用いて、前記発泡倍率及び前記融着率となるように型内発泡成形し、脱型して標準発泡樹脂成形体を製造した場合に、前記標準発泡樹脂成形体の外寸をC、前記外寸に対応する前記標準成形型の内寸をDとしたときに、(D−C)/Dが2.5/1000以上、13/1000以下となる樹脂であることを特徴とする、前記方法。
【請求項3】
前記発泡樹脂成形体は平面視で概略長方形であり、フレーム材の前記本体部は一部に前記発泡樹脂成形体の長手方向に沿う部分を有しており、前記突出部は前記本体部の前記長手方向に沿う部分に形成されている、請求項1又はに記載の方法。
【請求項4】
発泡樹脂成形体に埋設される本体部と前記本体部から突起しており先端側が発泡樹脂成形体から外部に突出し基端部が発泡樹脂成形体に埋設される突出部とからなるフレーム材が発泡樹脂成形体に一体成形されている車両用シート部材と、前記車両用シート部材の上部に配置された上シート部材とを備え、前記上シート部材は荷重がかかることによって弾性変形するクッション材を含み、前記車両用シート部材における前記発泡樹脂成形体は前記上シート部材よりも圧縮強度が高い、車両用シートの製造方法であって、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法により前記車両用シート部材を製造する車両用シート部材製造工程と、
前記車両用シート部材製造工程で得られた前記車両用シート部材の上部に前記上シート部材を配置して前記車両用シートを製造する車両用シート製造工程と
を含むことを特徴とする前記方法。
【請求項5】
発泡樹脂成形体に埋設される本体部と前記本体部から突起しており先端側が発泡樹脂成形体から外部に突出し基端部が発泡樹脂成形体に埋設される突出部とからなるフレーム材が発泡樹脂成形体に一体成形されている車両用シート部材であって、
前記発泡樹脂成形体が、成形型を用いた型内発泡成形により得られたものであり、前記発泡樹脂成形体の外寸をA、前記外寸に対応する前記成形型の内寸をBとしたとき、(B−A)/Bが2.5/1000以上、13/1000以下であることを特徴とする、前記車両用シート部材。
【請求項6】
発泡樹脂成形体に埋設される本体部と前記本体部から突起しており先端側が発泡樹脂成形体から外部に突出し基端部が発泡樹脂成形体に埋設される突出部とからなるフレーム材が発泡樹脂成形体に一体成形されている車両用シート部材であって、
前記発泡樹脂成形体が、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子を成形型内に充填し型内発泡成形して得られたものであり、
前記発泡樹脂成形体において、発泡倍率が10〜60倍であり、前記予備発泡樹脂粒子に由来する発泡粒子間の融着率が50〜100%であり、
前記樹脂が、所定の型内形状を有する標準成形型を用いて、前記発泡倍率及び前記融着率となるように型内発泡成形し、脱型して標準発泡樹脂成形体を製造した場合に、前記標準発泡樹脂成形体の外寸をC、前記外寸に対応する前記標準成形型の内寸をDとしたときに、(D−C)/Dが2.5/1000以上、13/1000以下となる樹脂である、前記車両用シート部材。
【請求項7】
前記発泡樹脂成形体が、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂の発泡成形体、又は、ポリスチレン系樹脂の発泡成形体であることを特徴とする、請求項又はに記載の車両用シート部材。
【請求項8】
前記発泡樹脂成形体は平面視で概略長方形であり、フレーム材の前記本体部は一部に前記発泡樹脂成形体の長手方向に沿う部分を有しており、前記突出部は前記本体部の前記長手方向に沿う部分に形成されている、請求項5〜7のいずれか1項に記載の車両用シート部材。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の車両用シート部材と、前記車両用シート部材の上部に配置された上シート部材とを備え、前記上シート部材は荷重がかかることによって弾性変形するクッション材を含み、前記車両用シート部材における前記発泡樹脂成形体は前記上シート部材よりも圧縮強度が高い、車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート部材および車両用シート並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用シートとして、発泡樹脂成形体に埋設される本体部と前記本体部から突起しており先端側が発泡樹脂成形体から外部に突出する突出部とからなるフレーム材が発泡樹脂成形体に一体成形されている車両用シート部材を少なくとも備えた車両用シートは、知られている。また、そのような車両用シート部材の上部に積層する上シート部材をさらに有し、前記上シート部材は荷重がかかることによって弾性変形するクッション材からなり、前記車両用シート部材は前記上シート部材よりも圧縮強度が高い発泡樹脂成形体からなる車両用シートも知られている。
【0003】
特許文献1や特許文献2には、上記形態の車両用シートにおいて、その車両用シート部材の裏面側にフレーム材の形状に沿った凹溝または切り欠きを形成し、該凹溝または切り欠き内にフレーム材を挿入して固定するようにした形態の車両用シートが記載されている。この形態の車両用シートでは、車両用シート部材に対してフレーム材をしっかりと位置固定することが難しく、位置ずれや位置ずれによる異音の発生が生じる場合がある。また、位置ずれにより、車両本体側へ車両用シートを固定することが困難となる場合も生じやすい。
【0004】
その不都合を解決することのできる車両用シートとして、特許文献3および特許文献4には、車両用シート部材にフレーム材を成形時に一体成形するようにした車両用シートが記載されている。この形態の車両用シートでは、発泡樹脂成形体である車両用シート部材の内部にフレーム材が一体に成形されているので、車両用シート部材内でフレーム材が位置ずれを起こすのを回避できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2591763号公報
【特許文献2】特許第5344395号公報
【特許文献3】特開2001−161508号公報
【特許文献4】国際公開WO2015/159691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3あるいは特許文献4に記載される形態の車両用シートは、車両用シート部材を構成する発泡樹脂成形体の内部にフレーム材が一体成形されているので、フレーム材の位置ずれが生じ難い利点がある。しかし、通常、発泡樹脂成形体は脱型後にわずかではあるが収縮する性質があり、その収縮とともに、わずかではあるが、通常ワイヤーであるフレーム材が変形するのを避けられない。その変形により車両本体への固定部として機能する前記突出部の位置も当初の位置からわずかに変位する。現在の車両、特に自動車においては、高い寸法精度が要求されるようになってきており、組み付け精度を向上させるために、発泡成形後に生じる前記した突出部の変位を小さくすることが課題と考えられている。
【0007】
本発明者らはまた、車両用シート部材のように内部にフレーム材を一体成形した発泡樹脂成形体は、脱型後に収縮する際にフレーム材と相互に干渉することがあるため、フレーム材を含まず発泡樹脂のみからなる成形体と比べて、脱型後の寸法変化が複雑であり、脱型後の寸法の制御が難しいという新たな課題を見出した。
【0008】
本発明者らは更にまた、前記車両用シート部材において、前記発泡樹脂成形体が前記突出部の基端部及び前記本体部を保持する強度が十分でないと、前記突出部を車両本体に締結するときに前記基端部及び前記本体部が前記発泡樹脂成形体に対して相対的に移動してしまい、前記車両用シート部材と車両本体とを十分な強度で締結することができないという更なる新たな課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、
発泡樹脂成形体に埋設される本体部と前記本体部から突起しており先端側が発泡樹脂成形体から外部に突出する突出部とからなるフレーム材が発泡樹脂成形体に一体成形されている車両用シート部材の製造方法であって、
成形型内に、前記フレーム材を、前記本体部が成形型の内部に位置するように配置するとともに、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子を充填した後、前記成形型内で前記予備発泡樹脂粒子を発泡させて型内発泡成形により前記発泡樹脂成形体を成形する型内発泡成形工程と、
前記成形型を脱型して前記車両用シート部材を得る脱型工程と
を含み、
前記型内発泡成形工程において、前記脱型工程で得られる前記車両用シート部材における前記発泡樹脂成形体の外寸をA、前記外寸に対応する前記成形型の内寸をBとしたとき、(B−A)/Bが13/1000以下となるように、前記発泡樹脂成形体を成形することを特徴とする、前記方法に関する。
【0010】
本発明の第一の態様によれば、前記発泡樹脂成形体の製造過程での寸法変化が抑制されるため、(B−A)/Bが13/1000を超える場合と比較して、前記突出部の変位量を低減した車両用シート部材を製造することができる。また、内部にフレーム材を一体成形した前記発泡樹脂成形体でありながら脱型後の寸法変化が小さいため、高い寸法精度を実現した車両用シート部材を製造することができる。
【0011】
本発明の第一の態様では、前記型内発泡成形工程において、(B−A)/Bが2.5/1000以上、13/1000以下となるように、前記発泡樹脂成形体を成形することが好ましい。この場合には、前記フレーム材のうち前記突出部の基端部及び前記本体部が、製造過程での前記発泡樹脂成形体の収縮により、周囲の前記発泡樹脂成形体により十分な強度で保持された車両用シート部材を製造することができる。この方法で製造された車両用シート部材は前記突出部を介して車両本体に確実に締結することができる。
【0012】
本発明の第二の態様は、
発泡樹脂成形体に埋設される本体部と前記本体部から突起しており先端側が発泡樹脂成形体から外部に突出する突出部とからなるフレーム材が発泡樹脂成形体に一体成形されている車両用シート部材の製造方法であって、
成形型内に、前記フレーム材を、前記本体部が成形型の内部に位置するように配置するとともに、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子を充填した後、前記成形型内で前記予備発泡樹脂粒子を発泡させて型内発泡成形により前記発泡樹脂成形体を成形する型内発泡成形工程と、
前記成形型を脱型して前記車両用シート部材を得る脱型工程と
を含み、
前記型内発泡成形工程が、発泡倍率が10〜60倍であり、前記予備発泡樹脂粒子に由来する発泡粒子間の融着率が50〜100%となるように前記発泡樹脂成形体を成形する工程であり、
前記樹脂が、所定の型内形状を有する標準成形型を用いて、前記発泡倍率及び前記融着率となるように型内発泡成形し、脱型して標準発泡樹脂成形体を製造した場合に、前記標準発泡樹脂成形体の外寸をC、前記外寸に対応する前記標準成形型の内寸をDとしたときに、(D−C)/Dが13/1000以下となる樹脂であることを特徴とする、前記方法に関する。
【0013】
上記の通り、内部にフレーム材を一体成形した発泡樹脂成形体は、脱型後に収縮する際にフレーム材と相互に干渉することがあるため、フレーム材を含まず発泡樹脂のみからなる成形体と比べて、脱型後の寸法変化が複雑であり、完成品の寸法の制御が難しいという課題がある。本発明の第二の態様では、寸法変化の小さい樹脂を用いることにより、複数の車両用シート部材を製造する場合に、個々の車両用シート部材での発泡樹脂成形体ごとの寸法の違いを小さくすることができる。従って本発明の第二の態様によれば、目標とする寸法の発泡樹脂成形体を有する車両用シート部材を生産する際の歩留まりを向上させることができる。
【0014】
また、本発明の第二の態様によれば、前記発泡樹脂成形体の製造過程での寸法変化が抑制されるため、(D−C)/Dが13/1000を超える場合と比較して、前記突出部の変位量を低減した車両用シート部材を製造することができる。
【0015】
本発明の第二の態様では、前記樹脂として、(D−C)/Dが2.5/1000以上、13/1000以下となる樹脂を用いることが好ましい。この場合には、前記フレーム材のうち前記突出部の基端部及び前記本体部が、製造過程での前記発泡樹脂成形体の収縮により、周囲の前記発泡樹脂成形体により十分な強度で保持された車両用シート部材を製造することができる。この方法で製造された車両用シート部材は前記突出部を介して車両本体に確実に締結することができる。
【0016】
本発明の第一の態様及び第二の態様では、前記発泡樹脂成形体は平面視で概略長方形であり、フレーム材の前記本体部は一部に前記発泡樹脂成形体の長手方向に沿う部分を有しており、前記突出部は前記本体部の前記長手方向に沿う部分に形成されていることがより好ましい。発泡樹脂成形体が平面視で概略長方形である場合、短手方向と比較して長手方向での収縮量は大きくなる。その大きくなる方向に沿う前記本体部の部分に前記突出部が形成されている形態の車両用シートにおいて、本発明の作用効果は一層確実に奏される。
【0017】
本発明の第三の態様は、
前記車両用シート部材と、前記車両用シート部材の上部に配置された上シート部材とを備え、前記上シート部材は荷重がかかることによって弾性変形するクッション材を含み、前記車両用シート部材における前記発泡樹脂成形体は前記上シート部材よりも圧縮強度が高い、車両用シートの製造方法であって、
本発明の第一の態様又は第二の態様に係る方法により前記車両用シート部材を製造する車両用シート部材製造工程と、
前記車両用シート部材製造工程で得られた前記車両用シート部材の上部に前記上シート部材を配置して前記車両用シートを製造する車両用シート製造工程と
を含むことを特徴とする前記方法に関する。
【0018】
本発明の第三の態様の方法によれば、上シート部材によって座る者に心地よい弾性感を与えることができるとともに、車両用シート部材によって、車両用シートが必要以上に変形するのを阻止することができ、快適性と安全性とを兼ね備えた車両用シートが得られる。
【0019】
本発明の第四の態様は、
発泡樹脂成形体に埋設される本体部と前記本体部から突起しており先端側が発泡樹脂成形体から外部に突出する突出部とからなるフレーム材が発泡樹脂成形体に一体成形されている車両用シート部材であって、
前記発泡樹脂成形体が、成形型を用いた型内発泡成形により得られたものであり、前記発泡樹脂成形体の外寸をA、前記外寸に対応する前記成形型の内寸をBとしたとき、(B−A)/Bが13/1000以下であることを特徴とする、前記車両用シート部材に関する。
【0020】
本発明の第四の態様に係る車両用シート部材は、前記発泡樹脂成形体の製造過程での寸法変化が小さいため、(B−A)/Bが13/1000を超える場合と比較して、前記突出部の変位量が小さい。また、この態様に係る車両用シート部材は、前記発泡樹脂成形体の製造過程での寸法変化が小さいため、前記発泡樹脂成形体の内部にフレーム材が一体成形されているにも関わらず、高い寸法精度を有する。
【0021】
本発明の第四の態様に係る車両用シート部材は、更に、上記で定義する(B−A)/Bが2.5/1000以上、13/1000以下であることが好ましい。この車両用シート部材は、前記フレーム材のうち前記突出部の基端部及び前記本体部が、製造過程での前記発泡樹脂成形体の収縮により、周囲の前記発泡樹脂成形体により十分な強度で保持されるため、前記突出部を介して車両本体に確実に締結することができる。
【0022】
本発明の第五の態様は、
発泡樹脂成形体に埋設される本体部と前記本体部から突起しており先端側が発泡樹脂成形体から外部に突出する突出部とからなるフレーム材が発泡樹脂成形体に一体成形されている車両用シート部材であって、
前記発泡樹脂成形体が、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子を成形型内に充填し型内発泡成形して得られたものであり、
前記発泡樹脂成形体において、発泡倍率が10〜60倍であり、前記予備発泡樹脂粒子に由来する発泡粒子間の融着率が50〜100%であり、
前記樹脂が、所定の型内形状を有する標準成形型を用いて、前記発泡倍率及び前記融着率となるように型内発泡成形し、脱型して標準発泡樹脂成形体を製造した場合に、前記標準発泡樹脂成形体の外寸をC、前記外寸に対応する前記標準成形型の内寸をDとしたときに、(D−C)/Dが13/1000以下となる樹脂である、前記車両用シート部材に関する。
【0023】
本発明の第五の態様に係る車両用シート部材は、前記発泡樹脂成形体の製造過程での寸法変化が小さいため、上記で定義する(D−C)/Dが13/1000を超える場合と比較して、前記突出部の変位量が小さい。また、この態様に係る車両用シート部材は、前記発泡樹脂成形体の製造過程での寸法変化が小さいため、前記発泡樹脂成形体の内部にフレーム材が一体成形されているにも関わらず、高い寸法精度を有する。
【0024】
本発明の第五の態様に係る車両用シート部材は、更に、上記で定義する(D−C)/Dが2.5/1000以上、13/1000以下の樹脂による発泡樹脂成形体を備えることが好ましい。この車両用シート部材は、前記フレーム材のうち前記突出部の基端部及び前記本体部が、製造過程での前記発泡樹脂成形体の収縮により、周囲の前記発泡樹脂成形体により十分な強度で保持されるため、前記突出部を介して車両本体に確実に締結することができる。
【0025】
本発明の第六の態様は、
発泡樹脂成形体に埋設される本体部と前記本体部から突起しており先端側が発泡樹脂成形体から外部に突出する突出部とからなるフレーム材が発泡樹脂成形体に一体成形されている車両用シート部材であって、
前記発泡樹脂成形体が、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂の発泡成形体、又は、ポリスチレン系樹脂の発泡成形体であることを特徴とする、前記車両用シート部材に関する。
【0026】
本発明の第六の態様に係る車両用シート部材は、前記発泡樹脂成形体の製造過程での寸法変化が小さいため、他の樹脂からなる発泡樹脂成形体を備える場合と比較して、前記突出部の変位量が小さい。また、この態様に係る車両用シート部材は、前記発泡樹脂成形体の製造過程での寸法変化が小さいため、前記発泡樹脂成形体の内部にフレーム材が一体成形されているにも関わらず、高い寸法精度を有する。本発明の第六の態様に係る車両用シート部材はまた、前記フレーム材のうち前記突出部の基端部及び前記本体部が、製造過程での前記発泡樹脂成形体の収縮により、周囲の前記発泡樹脂成形体により十分な強度で保持されるため、前記突出部を介して車両本体に確実に締結することができる。
【0027】
本発明の第四の態様、第五の態様及び第六の態様では、より好ましくは、前記発泡樹脂成形体は平面視で概略長方形であり、フレーム材の前記本体部は一部に前記発泡樹脂成形体の長手方向に沿う部分を有しており、前記突出部は前記本体部の前記長手方向に沿う部分に形成されている。発泡樹脂成形体が平面視で概略長方形である場合、短手方向と比較して長手方向での収縮量は大きくなる。その大きくなる方向に沿う前記本体部の部分に前記突出部が形成されている形態の車両用シートにおいて、本発明の作用効果は一層確実に奏される。
【0028】
本発明の第七の態様は、
本発明の第四の態様、第五の態様又は第六の態様に係る車両用シート部材と、前記車両用シート部材の上部に配置された上シート部材とを備え、前記上シート部材は荷重がかかることによって弾性変形するクッション材を含み、前記車両用シート部材における前記発泡樹脂成形体は前記上シート部材よりも圧縮強度が高い、車両用シートに関する。
【0029】
本発明の第七の態様に係る車両用シートは、上シート部材によって座る者に心地よい弾性感を与えることができるとともに、車両用シート部材によって、車両用シートが必要以上に変形するのを阻止することができ、快適性と安全性とを兼ね備えた車両用シートである。
【0030】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2016−021648号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、近年求められている車両本体側への高い取り付け精度を十分に満足した車両用シート部材および車両用シート並びにその製造方法を提供する。
【0032】
本発明の一態様によれば、発泡樹脂成形体に埋設される本体部と前記本体部から突起しており先端側が発泡樹脂成形体から外部に突出する突出部とからなるフレーム材が発泡樹脂成形体に一体成形されている車両用シート部材において、車両本体への固定部となる前記フレーム材の前記突出部の変位を低減することができる。
【0033】
本発明の一態様によれば、発泡樹脂成形体に埋設される本体部と前記本体部から突起しており先端側が発泡樹脂成形体から外部に突出する突出部とからなるフレーム材が発泡樹脂成形体に一体成形されている車両用シート部材の製造において、目標とする寸法を有する前記車両用シート部材を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明による車両用シートの一実施の形態を示す斜視図。
図2図1に示す車両用シートを底面から見た図。
図3図2のIII−III線に沿う断面図。
図4図2のIV−IV線に沿う断面図。
図5】本発明による車両用シート部材30の製造方法における、型内発泡成形工程を説明するための模式図である。
図6】本発明による車両用シート部材30の製造方法における、脱型工程後の車両用シート部材30を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明による車両用シート部材および車両用シートの一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0036】
まず図1〜4に基づいて車両用シート部材および車両用シートの一実施形態の構造を説明し、本発明の各態様について個別に説明する。
<車両用シート部材および車両用シートの構造>
図1に示すように、車両用シート50は、基本構成として、発泡樹脂成形体10と該発泡樹脂成形体10内に一体成形により埋設されたフレーム材20とからなる車両用シート部材30を有する。車両用シート部材30の全体形状に特に制限はないが、平面視で概略長方形である形状が一般的であり、このとき車両用シート部材30は、概ね平面に沿った方向に広がりを有する全体形状を有することが一般的である。もちろん、発泡樹脂成形体10の平面視での形状および厚みは、当該車両用シート50が取り付けられる車両本体側の形状によって種々変化する。
【0037】
前記発泡樹脂成形体10は、発泡樹脂の型内発泡成形体である。好適な樹脂の種類、発泡倍率、融着率等については後に詳述する。
【0038】
フレーム材20は、前記発泡樹脂成形体10に所要の保形性と強度を付与するために埋め込まれるものであり、一般に、直径が3〜6mm程度の鋼製の線材(ワイヤー)が用いられる。薄板状の鋼材であってもよい。フレーム材20は、図示されるように、発泡樹脂成形体10の外周に沿うようにして、外周面から少し内側に入った箇所に埋設されている本体部21と、該本体部21における発泡樹脂成形体10の一方の長手方向の側面に沿う部分22で形成される2つの第1の突出部23、23とを含む。ただし、第1の突出部23、23は必ずしも前記部分22に形成されている必要はない。また、必須ではないが、図示の例では、発泡樹脂成形体10の他方の長手方向の側面に沿う本体部21の部分24にも1つの第2の突出部25が形成されている。
【0039】
前記第1の突出部23は、発泡樹脂成形体10の厚み方向に向けて突起しており、その先端部が発泡樹脂成形体10の裏面側から外部に突出している。また、第2の突出部25は、発泡樹脂成形体10の面方向に向けて突起しており、その先端部が発泡樹脂成形体10の側面側から外部に突出している。図示の例では、前記第1および第2の突出部23、25は本体部21を構成する鋼製の線材を略U字状に折り曲げることで形成しているが、別途構成した略U字状をなす突出部を本体部21に溶着等で一体化したものであってもよい。また、図示しないが、金属製や樹脂製のプレートを隅部に配置して、該プレートを鋼製の線材(ワイヤー)により一体に連接した形態のものでもよい。また、そのようなプレートに前記第1の突出部23、23を立設するようにしたものでもよい。
【0040】
前記第1の突出部23、23が形成される位置は、車両用シート50を取り付ける車両本体側での取り付け冶具の位置に応じて設定されるが、一般的に、本体部21における発泡樹脂成形体10の一方の長手方向の側面に沿う部分22の両端部に寄った位置であることが多い。
【0041】
図示される車両用シート50は、上記した車両用シート部材30の上部に上シート部材40をさらに有している。ここで車両用シート部材30の上部とは、車両用シート部材30を車両に設置したときに、車両の搭乗者が座る側となる、車両用シート部材30における位置を指す。この上シート部材40は荷重がかかることによって弾性変形するクッション材からなっており、車両用シート部材30は前記上シート部材40よりも圧縮強度が高い発泡樹脂成形体から形成されている。上シート部材40を構成するクッション材の一例として、軟質ポリウレタン系発泡体が挙げられる。この場合、前記したように、車両用シート部材30を構成する発泡樹脂成形体は、発泡ポリスチレン系樹脂による成形体、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂の発泡複合樹脂による成形体、発泡ポリオレフィン系樹脂による成形体、或いは、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂とを含む発泡複合樹脂による成形体であることが好ましい。この態様の車両用シート50では、上シート部材40によって座る者に心地よい弾性感を与えることができ、車両用シート部材30によって、車両用シート50が必要以上に変形するのを阻止することができる。また、図示しないが、実際の使用に当たっては、車両用シート50は適宜のカバー材によって覆われる。
【0042】
以下、本発明の各態様について更に具体的に説明する。
<第一の態様>
本発明の第一の態様は、車両用シート部材30の製造方法であって、
成形型100内に、フレーム材20を、本体部21が成形型100の内部に位置するように配置するとともに、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子を充填した後、前記成形型100内で前記予備発泡樹脂粒子を発泡させて型内発泡成形により発泡樹脂成形体10を成形する型内発泡成形工程と、
成形型100を脱型して車両用シート部材30を得る脱型工程と
を含み、
前記型内発泡成形工程において、前記脱型工程で得られる車両用シート部材30における発泡樹脂成形体10の外寸をA、前記外寸に対応する成形型100の内寸をBとしたとき、(B−A)/Bが13/1000以下、より好ましくは2.5/1000以上、13/1000以下、より好ましくは3/1000以上、より好ましくは11/1000以下、より好ましくは10/1000以下、より好ましくは9/1000以下となるように、発泡樹脂成形体10を成形することを特徴とする。
【0043】
前記の(B−A)/Bは、型内発泡成形工程において成形型100内で成形された発泡樹脂成形体10が、脱型工程後にどれだけ収縮するかを表す指標となる。
【0044】
(B−A)/Bが13/1000以下である場合、発泡樹脂成形体10の収縮量が十分に小さく、最終的な車両用シート部材30におけるフレーム材20及び突出部23、25の変位量が小さくなるため好ましい。(B−A)/Bが2.5/1000以上の場合、フレーム材20のうち突出部23、25の基端部231,251及び本体部21が、製造過程での発泡樹脂成形体10の収縮により、周囲の発泡樹脂成形体10により十分な強度で保持されるため好ましい。
【0045】
発泡樹脂成形体10の外寸としては、脱型工程後十分な時間が経過後、例えば脱型工程から温度及び気圧を特に調整していない大気下で(すなわち、室温及び大気圧の条件下で)24時間以上静置した後に測定した外寸を使用することができる。発泡樹脂成形体10の外寸を測定する部分は特に限定されず、例えば、発泡樹脂成形体10の任意の部分の幅である。発泡樹脂成形体10が概ね平面に沿った方向に広がりを有する全体形状を有するものである場合、平面視したときの任意の箇所の幅であってもよいし、厚さ方向の幅であってもよい。発泡樹脂成形体10が平面視で概略長方形である形状である場合、図6に示すように、平面視での長さAを発泡樹脂成形体10の外寸とすることができる。
【0046】
成形型100の、発泡樹脂成形体10の前記外寸に対応する内寸は、発泡樹脂成形体10の前記外寸に応じて定まる。例えば、発泡樹脂成形体10が平面視で概略長方形である形状である場合、図6に示すように平面視での長さAを発泡樹脂成形体10の外寸とすれば、図5に示すように成形型100の対応する長さBを成形型100の内寸とする。
【0047】
型内発泡成形工程では、成形型100内に、フレーム材20を、本体部21が成形型100の内部(キャビティ内)に位置するように配置する。このとき、フレーム材20のうち突出部23、25の先端部は、型内発泡成形の際に発泡樹脂で満たされる成形型100のキャビティ内には位置しないようにすることが好ましい。例えば図5に示すように、フレーム材20のうち突出部23、25の先端部が成形型100の外部(キャビティ以外の部分)に位置するようにフレーム材20を配置する。また、図示する例とは異なり、フレーム材20のうち突出部23、25の先端部の周囲に発泡樹脂が入り込まないような囲いを設けた状態でフレーム材20を成形型100のキャビティ内に配置してもよい。このように配置することで、型内発泡成形工程と後述する脱型工程とによって、フレーム材20のうち本体部21と、突出部23、25の基端部231、251とが発泡樹脂成形体10に埋設され、突出部23、25の先端部が発泡樹脂成形体10の外部に露出した構造の車両用シート部材30が得られる。
【0048】
型内発泡成形工程において(B−A)/Bが上記の所定範囲となるように型内発泡成形を行うためには、樹脂の種類、発泡倍率、融着率等を適宜調整して型内発泡成形を行えばよい。
【0049】
以下、本発明の第一の態様における樹脂、発泡剤、発泡性樹脂粒子、予備発泡樹脂粒子、型内発泡成形工程、脱型工程について説明する。
(樹脂)
樹脂としては特に限定されず、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂とを含む複合樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が使用できるが、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂、ポリスチレン系樹脂、又は、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂とを含む複合樹脂を用いるときは、後述するような一般的な発泡倍率及び融着率となる条件で型内発泡成形を行えば(B−A)/Bが上記の所定範囲とすることができるため特に好ましい。
【0050】
発泡性樹脂粒子は、樹脂粒子に発泡剤を含浸させたものであり、樹脂の重合による形成と同時に発泡剤を含浸させてもよいし、樹脂の重合後に発泡剤を含浸させてもよい。
【0051】
以下に、本発明に好適に用いることができる樹脂粒子、並びに、樹脂粒子に発泡剤を含浸させた発泡性樹脂粒子について詳述する。
(ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子)
該複合樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂と、ポリスチレン系樹脂とを含んでいる。
【0052】
複合樹脂粒子の形状は、例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状であることが好ましい。
【0053】
また、平均粒径には、格別の制限はないが、0.3〜7mmであることが好ましい。平均粒径が0.3mm未満の場合、発泡性樹脂粒子の発泡剤の保持性が低くなり、低密度化が困難となることがある。7mmを超えると、予備発泡樹脂粒子の成形型への充填性が低下することや、発泡成形体の薄肉化が困難となることがある。
【0054】
更に、複合樹脂粒子の最大径Lと最小径Dの比(L/D)にも、格別の制限はないが、1〜1.6であることが好ましい。1.6を超えるような偏平度の大きい粒子は、予備発泡樹脂粒子の成形型への充填性が低下することがある。
【0055】
(1)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の炭素数2〜10のオレフィンモノマー由来の単位を含む樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンモノマーの単独重合体でもよく、オレフィンモノマーと、オレフィンモノマーと共重合しうる他のモノマーとの共重合体であってもよい。更に、ポリオレフィン系樹脂は、架橋していてもよい。共重合体としては、酢酸ビニルとエチレンとの共重合体(EVA)が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、例えば、18〜50万の重量平均分子量を有する樹脂を使用できる。
【0056】
ポリオレフィン系樹脂としてEVAを使用する場合、EVA中の酢酸ビニル由来の単位の含量は、5.5〜8質量%であることが好ましい。含量が5.5質量%未満の場合、発泡成形性が低下することがある。含量が8質量%より多い場合、EVAの融点が100℃未満となることで、発泡成形が困難となることがある。また、ポリオレフィン系樹脂中、EVAが80質量%以上含まれていることが好ましい。
【0057】
(2)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、置換スチレン(置換基は、低級アルキル、ハロゲン原子(特に塩素原子)等)のスチレン系モノマーに由来する樹脂が挙げられる。置換スチレンとしては、例えば、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン等が挙げられる。更に、ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体の単独重合体であってもよいし、スチレン系単量体と、スチレン系単量体と共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル部分の炭素数1〜8程度)、ジビニルベンゼン、エチレングリコールのモノ又はジ(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。
【0058】
他のモノマーを使用する場合、スチレン系モノマー100質量部に対して、30質量部以下の範囲で使用することが好ましい。
【0059】
ポリスチレン系樹脂は、スチレンのみに由来する樹脂であることがより好ましい。
【0060】
(3)ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂との含有量
ポリスチレン系樹脂の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、120〜400質量部とすることができる。ポリスチレン系樹脂の含有量が120質量部未満の場合、発泡性樹脂粒子の発泡性、発泡成形体の耐薬品性及び耐熱性が低下することがある。一方、ポリスチレン系樹脂の含有量が400質量部より多い場合、発泡成形体の剛性が低下することがある。より好ましいポリスチレン系樹脂の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、150〜250質量部である。
【0061】
(4)他の添加剤
複合樹脂粒子には、他の添加剤が含まれていてもよい。他の添加剤としては、核剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、鱗片状珪酸塩等が挙げられる。
【0062】
核剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アマイド等が挙げられる。
【0063】
着色剤としては、カーボンブラック、酸化鉄、グラファイト等が挙げられる。
【0064】
難燃剤としては、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、デカブロモジゲニルエーテル、トリブロモフェニルアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジ(ヒドロキシエチル)エーテル、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル等の臭素系難燃剤、塩化パラフィン、塩化トリフェニル、塩化ジフェニル、パークロルペンタシクロデカン、クロルジシクロペンタジエン等の塩素系難燃剤、1,2−ジブロモ−3−クロルプロパン、2−クロル−1,2,3,4−テトラブロモブタン等の塩素臭素含有難燃剤、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロルプロピル)ホスフェート等のリン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤が挙げられる。
【0065】
難燃剤の使用量は、複合樹脂粒子100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。使用量が1質量部未満の場合、複合樹脂粒子の遅燃性を生じがたいことがある。10質量部より多い場合、多量の使用に見合う効果がないだけでなく、発泡成形体が脆くなることがある。より好ましい使用量は、2〜8質量部である。
【0066】
鱗片状珪酸塩としては、雲母(例えば、天然雲母、合成雲母)、セリサイト等が挙げられる。
【0067】
(5)複合樹脂粒子の製造方法
複合樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを粒子中に含ませることができさえすれば、どのような方法で製造してもよい。例えば、両樹脂を押出機中で混練し、混練物をカットする方法、ポリオレフィン系樹脂を含む種粒子に、水性媒体中で、スチレン系モノマーを含浸させ、次いでそのモノマーを重合させる方法等が挙げられる。この内、後者の方法は、より均一に両樹脂を混合でき、かつより球形に近い粒子が得られる観点から好ましい。ここで、後者の方法により得られた複合樹脂粒子をポリオレフィン改質ポリスチレン系樹脂粒子と、また単に改質樹脂粒子とも称する。後者の方法は、例えば、下記工程
(i)ポリオレフィン系樹脂を含む種粒子100質量部を水性媒体中に分散させてなる分散液中で、スチレン系モノマー120〜400質量部を種粒子に含浸させるモノマー含浸工程と、
(ii)含浸と同時に又は含浸後、スチレン系モノマーを重合させる重合工程と
を含む。
【0068】
(a)モノマー含浸工程
(a−1)種粒子は、公知の方法で得ることができる。例えば、まず、押出機を使用してポリオレフィン系樹脂を溶融押出した後、水中カット、ストランドカット、ホットカット等により造粒することで、種粒子を作製できる。通常、使用する種粒子の形状は、例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、ペレット状又はグラニュラー状とできる。
【0069】
個々の種粒子の質量は、格別の制限はない。但し、改質樹脂粒子の質量がこの質量によって規定されることを考えると、通常10〜500mg/100個程度の質量とできる。
【0070】
また、個々の種粒子の平均粒径にも、格別の制限はない。但し、改質樹脂粒子の平均粒径がこの平均粒径によって規定されることを考えると、0.2〜1.5mmの平均粒径とできる。平均粒径が0.2mm未満の場合、発泡性樹脂粒子の発泡剤の保持性が低くなり、低密度化が困難となることがある。1.5mmを超えると、予備発泡樹脂粒子の成形型への充填性が低下することや、発泡成形体の薄肉化が困難となることがある。
【0071】
更に、個々の種粒子の最大径Lと最小径Dの比(L/D)にも、格別の制限はない。但し、改質樹脂粒子のL/DがこのL/Dによって規定されることを考えると、1〜1.6のL/Dとできる。1.6を超えるような偏平度の大きいものは、発泡樹脂粒子の成形型への充填性が低下することがある。
【0072】
種粒子は、上記項目(4)で挙げた他の添加剤を含んでいてもよい。
【0073】
(a−2)水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。水性媒体には、スチレン系モノマーの液滴及び種粒子の分散性を安定させるために分散剤が含まれていてもよい。
【0074】
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。ここで、難溶性無機化合物を用いる場合には、界面活性剤も使用することが好ましい。分散剤の使用量は、分散剤を含む水性媒体中、0.1〜4質量%であることが好ましい。0.1質量%未満の場合、分散安定性の効果が発現し難いことがある。4質量%より多い場合、分散安定性の効果は発現するが、多量の使用に見合う効果が望めず、製造コストが上昇することがある。
【0075】
界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0076】
(a−3)スチレン系モノマーの種粒子への含浸は、通常、スチレン系モノマーの重合が実質的に生じない温度下で行なわれる。また、スチレン系モノマーを種粒子に含浸させつつ、スチレン系モノマーの重合を行ってもよい。含浸温度は、通常、50〜100℃の範囲である。
【0077】
(b)重合工程
重合工程は、含浸と同時に又は含浸後、行われる。
【0078】
(b−1)スチレン系モノマーの重合は、重合開始剤の存在下で行うことができる。
【0079】
重合開始剤としては、いずれも通常のスチレンの重合において用いられる重合開始剤を用いることができる。例えばt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート等の3級アルコキシラジカルを発生する開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の開始剤、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。分子量を調整し、残存モノマーを減少させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が80〜120℃の範囲にある複数種の重合開始剤を併用することが好ましい。
【0080】
(b−2)スチレン系モノマーには、可塑剤、連鎖移動剤、油溶性重合禁止剤、水溶性重合禁止剤、気泡調整剤、難燃剤、難燃助剤等が含まれていてもよい。
【0081】
可塑剤としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸エチル、フタル酸ジオクチル、テトラクロロエチレン等が挙げられる。
【0082】
連鎖移動剤としては、メルカプタン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
【0083】
(b−3)重合温度は、70〜140℃の範囲が好ましく、90〜130℃の範囲がより好ましい。重合温度へは、一定又は段階的に暫時昇温してもよい。昇温速度は、0.1〜2℃/分であることが好ましい。
【0084】
(b−4)必要に応じてポリオレフィン系樹脂を架橋してもよい。架橋剤としては、例えば、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン等の有機過酸化物が挙げられる。これら架橋剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。架橋剤の使用量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.05〜1質量部であることが好ましい。
【0085】
架橋のタイミングは、スチレン系モノマーの重合前や、重合後が挙げられる。架橋剤は、それ単独で重合系に添加してもよい。架橋剤の添加は、作業上の安全性の観点から、溶剤、可塑剤又はスチレン系モノマーに溶解した溶液や、水に分散させた分散液の形態で添加することが好ましい。
【0086】
また、必要に応じて、気泡調整剤、難燃剤、難燃助剤等を架橋時に反応系内に添加してもよい。
【0087】
(6)市販の複合樹脂粒子
ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子としては市販品を購入して用いることもできる。ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子の市販品としては積水化成品工業株式会社製のピオセラン(登録商標):OP−30EU、OP−30ELV等が例示できる。
(ポリスチレン系樹脂粒子)
(1)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂粒子を構成するポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらのモノマーのうち2種以上の共重合体等が挙げられ、スチレン成分を50質量%以上含有するポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。
【0088】
また、前記ポリスチレン系樹脂としては、前記スチレン系モノマーを主成分とし、このスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体であってもよい。このようなビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性モノマーなどが挙げられる。
【0089】
さらに、前記ポリスチレン系樹脂は、バージン原料、使用済みの発泡成形体のリサイクル品、または家電製品を構成していたプラスチック材料、及びそれらの混合物でも良い。
【0090】
また、前記ポリスチレン系樹脂には、上記の(ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子)の(4)で挙げたような他の添加剤が含まれてもよい。
【0091】
本発明に使用するポリスチレン系樹脂粒子としては、形状は特に限定されないが、球状が好ましく、粒子径は、後述するポリスチレン系樹脂予備発泡粒子の成形型内への充填容易性の点から、0.3〜2.0mm、好ましくは0.3〜1.4mmが好ましい。また、形状が柱状となる場合は前記の好ましい粒径に相当する体積とすることが好ましい。更に、ポリスチレン系樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、小さいと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の機械的強度が低下することがある一方、大きいと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、高発泡倍率のポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができないおそれがあるので、12万〜60万の範囲とするのが好ましい。
【0092】
(2)ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の材料となるポリスチレン系樹脂粒子の製造方法としては、汎用の方法が用いられ、例えば、バージン原料、回収品を押出機に供給して溶融混練し、押出機からストランド状に押出して冷却してから所定長さ毎に切断してポリスチレン系樹脂粒子を製造する方法(ストランドカット法)、押出機の先に取り付けた口金の孔から水中に押し出すと同時に切断し冷却してポリスチレン系樹脂粒子を製造する方法(水中ホットカット法)などが挙げられる。また、この押出機内の樹脂に鱗片状珪酸塩や金属酸化物を分散させた後、所定長さ毎に切断してポリスチレン系樹脂粒子としても良い。
【0093】
また、前記にて得られたポリスチレン系樹脂粒子を種粒子として水中懸濁液中にてスチレン系モノマーをポリスチレン系樹脂種粒子中に含浸させてシード重合させるシード重合法にてポリスチレン系樹脂粒子を製造し、続いて作製したポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を添加する方法を採用しても良い。
【0094】
前記スチレン系モノマーをポリスチレン系樹脂種粒子中に吸収させ、重合させてシード重合させる際のスチレン系モノマーの添加量は、種粒子100質量部に対してスチレン系モノマー10〜800質量部の範囲である。また、好ましい範囲は50〜500質量部である。添加量が10質量部未満では、スチレン系モノマーの量および重合開始剤の量が少なすぎて、種粒子の中心部まで吸収されず種粒子中での均一なシード重合ができない。また、添加量が800質量部を超えると、シード重合に要する時間がかかりすぎて生産性が低下することに加えて、種粒子に吸収されなかったスチレン系モノマー由来の重合粉末が多量に発生し好ましくない。
【0095】
前記スチレン系モノマーをポリスチレン系樹脂種粒子中に含浸させてシード重合させる際に用いられる重合開始剤としては、特に限定されず、上記の(ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子)の(5)の(b−1)で挙げた重合開始剤が使用できる。
【0096】
そして、前記シード重合、および発泡剤を含有させる際に、スチレン系モノマーの液滴及びポリスチレン系樹脂種粒子、ポリスチレン系樹脂粒子の分散性を安定させるために分散剤を用いてもよく、このような分散剤としては、上記の(ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子)の(5)の(a−2)で挙げた分散剤が使用できる。
【0097】
(3)市販のポリスチレン系樹脂粒子
ポリスチレン系樹脂粒子としては市販品を購入して用いることもできる。ポリスチレン系樹脂粒子の市販品としては積水化成品工業株式会社製のエスレンビーズ:FDK−40LV、ESDK等が例示できる。
(他の樹脂粒子)
他の樹脂粒子についても、上記で詳述したポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子又はポリスチレン系樹脂粒子と同様の形状の樹脂粒子を用いることができ、同様の他の添加物を適宜含有することができる。
【0098】
他の樹脂粒子としては、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂とを含む複合樹脂、ポリオレフィン系樹脂粒子、ポリエステル系樹脂粒子が例示できる。
【0099】
ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂とを含む複合樹脂におけるポリスチレン系樹脂は、上記の(ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子)の(2)で挙げたポリスチレン系樹脂が例示できる。
【0100】
前記複合樹脂におけるポリフェニレンエーテル樹脂は、次式:
【0101】
【化1】
【0102】
(式中、R,Rは、炭素数1〜4個のアルキル基またはハロゲン原子を示し、nは重合度をあらわす。)で示されるポリフェニレンエーテル樹脂をいい、その具体例としては、ポリ(2、6−ジメチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2、6−ジエチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2、6−ジクロルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−クロロ−6−メチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−イソプロピルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2、6−ジ−n−プロピルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−ブロモ−6−メチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−クロロ−6−ブロモフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−クロロ−6−エチルフェニレン−1、4−エーテル)などが挙げられる。重合度(上記式中のn)は10〜5000であればよく、5000以下のとき均一な発泡体が得られ易く、10以上のとき目的の耐熱性を有する発泡体が得られ易い。
【0103】
前記複合樹脂における、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂との割合は特に限定されないが、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂とを合計100質量部としたとき、90〜10質量部のポリスチレン系樹脂と、10〜90質量部のポリフェニレンエ−テル樹脂とを含むことが好ましく、ポリスチレン系樹脂90〜30質量部と、ポリフェニレンエ−テル樹脂10〜70質量部とを含むことがより好ましい。ポリスチレン系樹脂が90質量部以下、ポリフェニレンエ−テル樹脂が10質量部以上のときに、前記複合樹脂の発泡成形体に十分な耐熱性が付与され易い。
【0104】
ポリオレフィン系樹脂粒子を構成するポリオレフィン系樹脂としては、上記の(ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子)の(1)で挙げたポリオレフィン系樹脂が例示できる。ポリエステル系樹脂粒子を構成するポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレートが例示できる。
【0105】
これらの他の樹脂を含む粒子を製造する方法としては、上記で詳述したポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子又はポリスチレン系樹脂粒子と同様に汎用の方法が用いられる。例えば、樹脂のバージン原料、回収品を押出機に供給して溶融混練し、押出機からストランド状に押出して冷却してから所定長さ毎に切断して樹脂粒子を製造する方法(ストランドカット法)、押出機の先に取り付けた口金の孔から水中に樹脂を押し出すと同時に切断し冷却して樹脂粒子を製造する方法(水中ホットカット法)等により樹脂粒子を製造することができる。また、この押出機内の樹脂に鱗片状珪酸塩や金属酸化物を分散させた後、所定長さ毎に切断して樹脂粒子としても良い。また、前記にて得られた樹脂粒子を種粒子として水中懸濁液中にてモノマーを樹脂種粒子中に含浸させてシード重合させるシード重合法にて樹脂粒子を製造し、続いて作製した樹脂粒子に発泡剤を添加する方法を採用しても良い。
【0106】
特に、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂とを含む複合樹脂の粒子は、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂とを粒子中に含ませることができさえすれば、どのような方法で製造してもよい。例えば、両樹脂を押出機中で混練し、混練物をカットする方法、一方の樹脂を含む種粒子に、水性媒体中で、他方の樹脂を形成するモノマーを含浸させ、次いでそのモノマーを重合させる方法等が挙げられる。この内、後者の方法は、より均一に両樹脂を混合でき、かつより球形に近い粒子が得られる観点から好ましい。ここで、後者の方法により得られた複合樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂変性ポリフェニレンエーテル樹脂粒子とも称する。種粒子へのモノマーの含浸工程及び重合工程は、上記の(ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子)の(5)で説明した手順と類似の手順により行うことができる。
【0107】
上記のような他の樹脂を含む粒子についても市販品を購入して使用してもよい。
(発泡性樹脂粒子)
発泡性樹脂粒子に含まれる発泡剤としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。特に、沸点が使用樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状又は液状の有機化合物が適している。例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち炭化水素を使用するのが、オゾン層の破壊を防止する観点、及び空気と速く置換し、発泡成形体の経時変化を抑制する観点で好ましい。炭素水素の内、沸点が−45〜40℃の炭化水素がより好ましく、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン等が更に好ましい。
【0108】
発泡性樹脂粒子中における発泡剤の含有量が少ないとき、発泡成形体の高発泡倍率化が困難となることがあると共に、発泡樹脂粒子同士の熱融着が不充分となって発泡成形体の外観性が低下することがある。一方、発泡剤の含有量が多いとき、発泡樹脂粒子中の発泡ガスの調整や発泡成形に時間を要して製造効率が低下することがあり、また、最終的に得られる発泡成形体が収縮し易く(B−A)/Bが上記所定の範囲よりも大きくなる傾向がある。好ましい含有量は、発泡性樹脂粒子100質量部に対して、5〜25質量部である。なお、発泡性樹脂粒子中における発泡剤の含有量は、製造直後に13℃の恒温室内に5日間放置した上で測定されたものである。
(発泡性樹脂粒子の製造方法)
発泡剤の含浸は、樹脂の重合後の粒子に行ってもよく、重合途中の粒子に行ってもよい。重合の途中での含浸は、水性媒体中で含浸させる方法(湿式含浸法)により行うことができる。重合後の含浸は、湿式含浸法か、又は媒体非存在下で含浸させる方法(乾式含浸法)により行うことができる。また、重合の途中での含浸は、通常重合後期に行うことが好ましい。重合後期は、構成モノマーの70質量%が重合してから後であることが好ましい。また、構成モノマーの99質量%が重合してから発泡剤を重合に続けて含浸させることも可能である。
【0109】
発泡剤の含浸温度は、50〜140℃とすることができる。
【0110】
発泡剤の含浸を、発泡助剤の存在下で行ってもよい。発泡助剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン等の溶剤や、ジイソブチルアジペート、ジアセチル化モノラウレート、やし油等の可塑剤(高沸点溶剤)等が挙げられる。発泡助剤の添加量は、複合樹脂粒子100質量部に対して、0.2〜2.5質量部であることが好ましい。
【0111】
必要に応じて、表面処理剤(例えば、結合防止剤、融着促進剤、帯電防止剤、展着剤等)を発泡剤含浸時の系内に添加してもよい。
【0112】
結合防止剤は、以下で説明する発泡樹脂粒子製造時の加熱により発泡性樹脂粒子同士が結合することを防止する役割を果たす。結合防止剤としては、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0113】
融着促進剤は、型内成形時の発泡樹脂粒子の融着を促進させる役割を果たす。融着促進剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル等が挙げられる。
【0114】
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸ソルビタンエステル等が挙げられる。
【0115】
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0116】
これら表面処理剤の添加量(合計値)は、樹脂粒子100質量部に対して、0.01〜2質量部であることが好ましい。
(予備発泡樹脂粒子)
発泡性樹脂粒子は、発泡機(予備発泡機)で水蒸気等を用いて発泡(予備発泡)されて多数の小孔を有する予備発泡樹脂粒子(単に発泡樹脂粒子ともいう)とされる。予備発泡樹脂粒子の嵩倍数は、好ましくは10〜60倍の範囲、より好ましくは10〜50倍の範囲、より好ましくは20〜50倍の範囲、より好ましくは25〜45倍の範囲である。予備発泡樹脂粒子は、予備発泡後、通常24時間程度20〜60℃で保存して熟成させることが好ましい。
【0117】
予備発泡樹脂粒子の嵩倍数及び嵩密度は以下の手順で測定する。
【0118】
まず、予備発泡樹脂粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積VcmをJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいて発泡粒子の嵩倍数及び嵩密度を測定する。
【0119】
嵩倍数(倍=cm/g)=測定試料の体積(V)/測定試料の質量(W)
嵩密度(g/cm)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
(型内発泡成形)
本発明の型内発泡成形工程では、成形型100内に、フレーム材20を既述のように配置し、更に予備発泡樹脂粒子を充填した後、成形型100内で前記予備発泡樹脂粒子を発泡させて型内発泡成形により発泡樹脂成形体10を成形する。成形型100としては多数の小孔を有する閉鎖成形型を用いる。前記予備発泡樹脂粒子の発泡は、水蒸気等で成形型100のキャビティ内を加熱して発泡させ、予備発泡樹脂粒子間の空隙を埋めるとともに、予備発泡樹脂粒子を相互に融着させることにより一体化する。
【0120】
型内発泡成形工程で得られる発泡樹脂成形体10の倍数は、好ましくは10〜60倍の範囲、より好ましくは10〜50倍の範囲、より好ましくは20〜50倍の範囲、より好ましくは25〜45倍の範囲である。発泡樹脂成形体10の倍数がこの範囲となるようにすることで、(B−A)/Bが13/1000以下、より好ましくは2.5/1000以上、13/1000以下、より好ましくは3/1000以上、より好ましくは11/1000以下、より好ましくは10/1000以下、より好ましくは9/1000以下となる発泡樹脂成形体10を成形することが容易である。発泡樹脂成形体10の倍数は、例えば、成形型100のキャビティ内への予備発泡樹脂粒子の充填量を調節する等して制御することができる。
【0121】
本発明において発泡樹脂成形体の密度は、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定した密度のことである。具体的には、発泡樹脂成形体の発泡倍率(「発泡倍数」又は「倍数」ともいう)と密度は次の方法により測定することができる。
【0122】
50cm以上(半硬質および軟質材料の場合は100cm以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に発泡樹脂成形体から切り出し、その質量を測定し、次式により算出する。
【0123】
発泡倍率(倍=cm/g)=試験片体積(cm)/試験片質量(g)
密度(g/cm)=試験片質量(g)/試験片体積(cm
試験片状態調節:試験片は、成形後72時間以上経過した発泡樹脂成形体の試料から切り取り、温度23℃±2℃相対湿度50%±5%または温度27℃±2℃相対湿度65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
【0124】
型内発泡成形工程で得られる発泡樹脂成形体10の、予備発泡樹脂粒子に由来する発泡粒子間の融着率は特に限定されないが50〜100%、より好ましくは70〜100%、より好ましくは90〜100%である。
【0125】
ここで前記融着率とは、発泡樹脂成形体10を折り曲げて破断したときに断面上に現れる、予備発泡樹脂粒子に由来する発泡粒子の総数のうち、粒子の内部で破断している前記発泡粒子の数の割合を百分率で表したものである。前記融着率の測定は具体的には次の手順で行うことができる。発泡樹脂成形体を手で二分割し、破断面における発泡粒子について、100〜150個の任意の範囲について粒子内で破断している粒子の数(a)と粒子同士の界面で破断している粒子の数(b)とを数える。結果を、式[(a)/((a)+(b))]×100に代入して得られた値を融着率(%)とする。発泡樹脂成形体の二分割は、例えば、発泡樹脂成形体の中心に沿ってカッターナイフで深さ約5mmの切り込み線を入れた後、この切り込み線に沿って発泡樹脂成形体を手で二分割することにより行うことができる。
【0126】
発泡樹脂成形体10の前記融着率が上記の範囲となるようにすることで、(B−A)/Bが13/1000以下、より好ましくは2.5/1000以上、13/1000以下、より好ましくは3/1000以上、より好ましくは11/1000以下、より好ましくは10/1000以下、より好ましくは9/1000以下となる発泡樹脂成形体10を成形することが容易である。前記融着率は、例えば、加熱発泡に際しての熱量を制御する等して制御することができる。
(脱型工程)
脱型工程は、成形型100を脱型して車両用シート部材30を得る工程である。成形型100は、図5に示すように、第一の成形型101と第二の成形型102とを組み合わせたものである場合、第一の成形型101と第二の成形型102とを分割して車両用シート部材30を取り出すことができる。
【0127】
以下、本発明の第二〜第七の態様について、上述の第一の態様との相違点や特徴点について説明するが、上述の第一の態様と共通する事項及び自明な事項については説明を省略する。本発明の第二〜第七の態様において記載されていない事項については、上述の第一の態様に関して説明した通りである。
<第二の態様>
本発明の第二態様は、車両用シート部材30の製造方法であって、
成形型100内に、フレーム材20を、本体部21が成形型100の内部に位置するように配置するとともに、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子を充填した後、成形型100内で前記予備発泡樹脂粒子を発泡させて型内発泡成形により発泡樹脂成形体10を成形する型内発泡成形工程と、
成形型100を脱型して車両用シート部材30を得る脱型工程と
を含み、
前記型内発泡成形工程が、発泡倍率が10〜60倍であり、前記予備発泡樹脂粒子に由来する発泡粒子間の融着率が50〜100%となるように発泡樹脂成形体10を成形する工程であり、
前記樹脂が、所定の型内形状を有する標準成形型を用いて、前記発泡倍率及び前記融着率となるように型内発泡成形し、脱型して標準発泡樹脂成形体を製造した場合に、前記標準発泡樹脂成形体の外寸をC、前記外寸に対応する前記標準成形型の内寸をDとしたときに、(D−C)/Dが13/1000以下となる樹脂であることを特徴とする。
【0128】
前記の(D−C)/Dは、樹脂のみを用いて型内発泡成形して標準発泡樹脂成形体を形成した場合に、標準発泡樹脂成形体が脱型後にどれだけ収縮するかを表す指標である。
【0129】
内部にフレーム材を一体成形した発泡樹脂成形体は、フレーム材を含まず発泡樹脂のみからなる成形体と比べて、脱型後の寸法変化が複雑であり、完成品の寸法の制御が難しいという課題があるが、樹脂として(D−C)/Dが13/1000以下の樹脂を使用することで、複数の車両用シート部材30を製造する場合に、個々の車両用シート部材30での発泡樹脂成形体10ごとの寸法の違いを小さくすることができる。このため、本発明の第二の態様によれば、目標とする寸法の発泡樹脂成形体10を有する車両用シート部材30を生産する際の歩留まりを向上させることができる。また、本発明の第二の態様の方法では、上記の所定の樹脂を用いることにより、製造された車両用シート部材30が、第一の態様について規定した(B−A)/Bが最大でも13/1000となるため、発泡樹脂成形体10の収縮量が十分に小さく、最終的な車両用シート部材30におけるフレーム材20及び突出部23、25の変位量が小さくなるため好ましい。
【0130】
本発明の第二態様では、より好ましくは(D−C)/Dが2.5/1000以上、13/1000以下、より好ましくは3/1000以上、より好ましくは11/1000以下、より好ましくは10/1000以下、より好ましくは9/1000以下である樹脂を用いる。(D−C)/Dが2.5/1000以上又は3/1000以上である場合、フレーム材20のうち突出部23、25の基端部231,251及び本体部21が、製造過程での発泡樹脂成形体10の収縮により、周囲の発泡樹脂成形体10により十分な強度で保持されるため好ましい。一方、(D−C)/Dが11/1000以下又は10/1000以下である場合、最終的な車両用シート部材30におけるフレーム材20及び突出部23、25の変位量が更に小さくなるため好ましい。
【0131】
標準発泡樹脂成形体の外寸Cとしては、脱型工程後十分な時間が経過後、例えば脱型工程から温度及び気圧を特に調整していない大気下で(すなわち、室温及び大気圧の条件下で)24時間以上静置した後に測定した外寸を使用することができる。標準発泡樹脂成形体の外寸Cを測定する部分は特に限定されず、標準発泡樹脂成形体の任意の部分の幅である。標準発泡樹脂成形体が概ね平面に沿った方向に広がりを有する全体形状を有するものである場合、平面視したときの任意の箇所の幅であってもよいし、厚さ方向の幅であってもよい。例えば、標準発泡樹脂成形体が平面視で概略長方形である形状である場合、平面視での長さを発泡樹脂成形体の外寸とすることができる。
【0132】
標準成形型の、標準発泡樹脂成形体の外寸Cに対応する内寸Dは、標準発泡樹脂成形体の外寸Cに応じて定まる。
【0133】
本発明の第二の態様は、更に、本発明の第一の態様と同様の特徴を備えることが好ましい。すなわち、本発明の第二の態様での前記型内発泡成形工程において、第一の態様について規定した(B−A)/Bが13/1000以下、より好ましくは2.5/1000以上、13/1000以下、より好ましくは3/1000以上、より好ましくは11/1000以下、より好ましくは10/1000以下、より好ましくは9/1000以下となるように、発泡樹脂成形体10を成形する。
【0134】
本発明の第二の態様において使用する樹脂は、前記の(D−C)/Dが前記範囲となる樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂とを含む複合樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が使用でき、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂、又は、ポリスチレン系樹脂が特に好ましい。本発明の第二の態様において使用する樹脂のより好ましい形態は、本発明の第一の態様に関して説明した通りである。
【0135】
本発明の第二の態様では、発泡樹脂成形体10の発泡倍率及び融着率の好適な範囲は、第一の態様に関して好適な範囲として例示した通りである。
【0136】
本発明の第二の態様では、標準発泡樹脂成形体の前記発泡倍率の値及び前記融着率の値は、それぞれ、発泡樹脂成形体10の前記発泡倍率の値及び前記融着率の値を100としたとき、好ましくは80〜120であり、より好ましくは90〜110であり、特に好ましくは98〜102であり、最も好ましくは100である。前記融着率の定義は本発明の第一の態様に関して既述の通りである。標準発泡樹脂成形体を製造する際に用いる発泡剤、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子、及び、発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子はそれぞれ、第一の態様に関して既述の、発泡樹脂成形体10を製造する際に用いるものと同じであることが好ましい。
【0137】
本発明の第二の態様において、前記の所定の型内形状を有する標準成形型は特に限定されないが、例えば、車両用シート部材30の製造に用いる前記成形型や、キャビティ内の形状が正六面体の型(例えばキャビティ内の形状が一辺10cmの正六面体の型)が挙げられる。標準成形型を用いて成形される標準発泡樹脂成形体は、好ましくはフレーム材を含まず発泡樹脂のみからなる。
<第三の態様>
本発明の第三の態様は、車両用シート50の製造方法であって、本発明の第一の態様又は第二の態様に係る方法により車両用シート部材30を製造する車両用シート部材製造工程と、
車両用シート部材製造工程で得られた車両用シート部材30の上部に上シート部材40を配置して車両用シート50を製造する車両用シート製造工程と
を含む。
【0138】
車両用シート製造工程において、車両用シート部材30と上シート部材40とを組み合わせる手段は特に限定されず、適当な接着剤、接合部材等の接合手段により車両用シート部材30の上面(第一の突出部23が突出している面と対向する面)に上シート部材40を接合してもよいし、車両用シート部材30と上シート部材40とを接合手段を用いずに重ね合わせた状態で車両用シート50を適宜のカバー材によって被覆して車両用シート部材30と上シート部材40とを一体化してもよい。上シート部材40については既述の通りである。
<第四の態様>
本発明の第四の態様は、
車両用シート部材30であって、
発泡樹脂成形体10が、成形型100を用いた型内発泡成形により得られたものであり、発泡樹脂成形体10の外寸をA、前記外寸に対応する成形型100の内寸をBとしたとき、(B−A)/Bが13/1000以下、より好ましくは2.5/1000以上、13/1000以下、より好ましくは3/1000以上、より好ましくは11/1000以下、より好ましくは10/1000以下、より好ましくは9/1000以下であることを特徴とする、車両用シート部材30に関する。
【0139】
本発明の第四の態様において、成形型100を用いた型内発泡成形の方法としては、具体的には本発明の第一の態様に関して詳述した方法が例示できる。
【0140】
本発明の第四の態様において、発泡樹脂成形体10を構成する樹脂としては、本発明の第一の態様に関して詳述した樹脂が挙げられ、特に好ましくは、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂、又は、ポリスチレン系樹脂である。この樹脂を用いることで、(B−A)/Bを上記の範囲とすることが容易である。
【0141】
本発明の第四の態様では、発泡樹脂成形体10において、発泡倍率が10〜60倍であり、前記予備発泡樹脂粒子に由来する発泡粒子間の融着率が50〜100%である場合に、(B−A)/Bを上記の範囲とすることが容易であるためより好ましい。発泡倍率及び融着率の更に好ましい範囲は、第一の態様に関して好適な範囲として例示した通りである。
<第五の態様>
本発明の第五の態様は、
車両用シート部材30であって、
発泡樹脂成形体10が、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子を成形型内に充填し型内発泡成形して得られたものであり、
発泡樹脂成形体10において、発泡倍率が10〜60倍であり、前記予備発泡樹脂粒子に由来する発泡粒子間の融着率が50〜100%であり、
前記樹脂が、所定の型内形状を有する標準成形型を用いて前記発泡倍率及び前記融着率となるように型内発泡成形し、脱型して標準発泡樹脂成形体を製造した場合に、前記標準発泡樹脂成形体の外寸をC、前記外寸に対応する前記標準成形型の内寸をDとしたときに、(D−C)/Dが13/1000以下、より好ましくは2.5/1000以上、13/1000以下、より好ましくは3/1000以上、より好ましくは11/1000以下、より好ましくは10/1000以下、より好ましくは9/1000以下となる樹脂である、車両用シート部材30に関する。
【0142】
本発明の第五の態様では、発泡樹脂成形体10の発泡倍率及び融着率の好適な範囲は、第一の態様に関して好適な範囲として例示した通りである。
【0143】
本発明の第五の態様では、標準発泡樹脂成形体の前記発泡倍率の値及び前記融着率の値は、それぞれ、発泡樹脂成形体10の前記発泡倍率の値及び前記融着率の値を100としたとき、好ましくは80〜120であり、より好ましくは90〜110であり、特に好ましくは98〜102であり、最も好ましくは100である。前記融着率の定義は本発明の第一の態様に関して既述の通りである。標準発泡樹脂成形体を製造する際に用いる発泡剤、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子、及び、発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子はそれぞれ、第一の態様に関して既述の、発泡樹脂成形体10を製造する際に用いるものと同じであることが好ましい。
【0144】
本発明の第五の態様において、前記の所定の型内形状を有する標準成形型は特に限定されないが、例えば、車両用シート部材30の製造に用いる前記成形型や、キャビティ内の形状が正六面体の型(例えばキャビティ内の形状が一辺10cmの正六面体の型)が挙げられる。標準成形型を用いて成形される標準発泡樹脂成形体は、好ましくはフレーム材を含まず発泡樹脂のみからなる。
【0145】
本発明の第五の態様において、発泡樹脂成形体10を構成する樹脂としては、本発明の第一の態様に関して詳述した樹脂が挙げられ、特に好ましくは、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂、又は、ポリスチレン系樹脂である。
<第六の態様>
本発明の第六の態様は、
車両用シート部材30であって、
発泡樹脂成形体10が、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂の発泡成形体、又は、ポリスチレン系樹脂の発泡成形体であることを特徴とする、車両用シート部材30に関する。
【0146】
本発明の第六の態様では、発泡樹脂成形体10において、発泡倍率が10〜60倍であり、前記予備発泡樹脂粒子に由来する発泡粒子間の融着率が50〜100%である場合に、突出部23、25の変位量が特に小さい。また、発泡樹脂成形体10の製造過程での寸法変化が特に小さいため、発泡樹脂成形体10の内部にフレーム材20が一体成形されているにも関わらず、更に高い寸法精度を有する。また、フレーム材20のうち突出部23、25の基端部231、251及び本体部21が、製造過程での発泡樹脂成形体10の収縮により、周囲の発泡樹脂成形体10により更に強固に保持されるため、突出部23、25を介して車両本体に更に確実に締結することができる。発泡倍率及び融着率の更に好ましい範囲は、第一の態様に関して好適な範囲として例示した通りである。
<第七の態様>
本発明の第七の態様は、
本発明の第四の態様、第五の態様又は第六の態様に係る車両用シート部材30と、車両用シート部材30の上部に配置された上シート部材40とを備える車両用シート50に関する。
【実施例】
【0147】
以下、実験結果に基づき本発明の優位性を説明するが、本発明の範囲はこれらの具体例に限定されるものではない。
[樹脂成形収縮率]
フレーム材を用いず発泡樹脂のみを用いて、所定の型内形状を有する標準成形型を用いて型内発泡成形して標準発泡樹脂成形体を製造した場合の、前記標準発泡樹脂成形体の外寸をC、前記外寸に対応する前記標準成形型の内寸をDとしたときの(D−C)/Dを当該樹脂の「樹脂成形収縮率」とする。
【0148】
下記の実施例1では、樹脂成形収縮率が3/1000未満の樹脂として、発泡倍率40倍、融着率98%のときの樹脂成形収縮率が約2/1000である、ポリスチレン樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂とからなる複合樹脂(ポリスチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂)を用いた。この樹脂成形収縮率は、下記の実施例1に用いる成形型100を標準成形型として用い、フレーム材20を用いない以外は下記の実施例1と同様の条件で製造した発泡樹脂成形体を標準発泡成形体として求めた。融着率は次の手順で測定した値である。発泡樹脂成形体の中心に沿ってカッターナイフで深さ約5mmの切り込み線を入れる。この後、この切り込み線に沿って発泡成形体を手で二分割する。その破断面における発泡粒子について、100〜150個の任意の範囲について粒子内で破断している粒子の数(a)と粒子同士の界面で破断している粒子の数(b)とを数える。結果を、式[(a)/((a)+(b))]×100に代入して得られた値を融着率(%)とする。下記の融着率についても同様である。
【0149】
下記の実施例2では、樹脂成形収縮率が3/1000以上13/1000以下の樹脂として、発泡倍率30倍、融着率98%のときの樹脂成形収縮率が約3/1000である、ポリスチレン系樹脂を用いた。この樹脂成形収縮率は、下記の実施例2に用いる成形型100を標準成形型として用い、フレーム材20を用いない以外は下記の実施例2と同様の条件で製造した発泡樹脂成形体を標準発泡成形体として求めた。
【0150】
下記の実施例3では、樹脂成形収縮率が3/1000以上13/1000以下の樹脂として、発泡倍率30倍、融着率98%のときの樹脂成形収縮率が約8/1000である、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂の複合樹脂(ピオセラン(登録商標):OP−30EU、積水化成品工業社製)を用いた。この樹脂成形収縮率は、下記の実施例3に用いる成形型100を標準成形型として用い、フレーム材20を用いない以外は下記の実施例3と同様の条件で製造した発泡樹脂成形体を標準発泡成形体として求めた。
【0151】
下記の比較例1では、樹脂成形収縮率が13/1000よりも大きい樹脂として、発泡倍率30倍、融着率98%のときの樹脂成形収縮率が約18/1000である、ポリプロピレン系樹脂を用いた。この樹脂成形収縮率は、下記の比較例1に用いる成形型100を標準成形型として用い、フレーム材20を用いない以外は下記の比較例1と同様の条件で製造した発泡樹脂成形体を標準発泡成形体として求めた。
[実施例1]
実施の形態で説明した形態の車両用シート部材30を型内発泡成形により製造した。使用した成形型100は、車両シート部材30の長手方向の幅に対応する内寸(図5での内寸B)が1262.5mmであった。発泡樹脂として、樹脂成形収縮率が約2/1000の上記のポリスチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂を用いた。フレーム材20には、直径4.5mmの鉄線(SWM−B)を用いた。上記の成形型100を用いた場合に、仮に、フレーム材20を含む発泡樹脂成形体10の成形後の外寸が成形型100の内寸に対して2/1000だけ小さいと仮定すると、発泡樹脂成形体10の長手方向の幅(図6での外寸A)が1260mmとなる。同様に、発泡樹脂成形体10の短手方向の幅は550mm、厚さは160mmとなるように、成形型100の内寸が設計されている。発泡樹脂成形体10の長手方向の幅(外寸A)の製品としての許容値は1260mm±6mmである。
【0152】
フレーム材20を、車両用シート部材30を構成する発泡樹脂成形体10の厚み方向のほぼ中央部であって、発泡樹脂成形体10の周側面からほぼ30mmだけ内側の位置に全周にわたって配置した。発泡樹脂成形体10一方の長手方向の側面に沿う前記本体部21の部分22には、頂点間の距離700mmをおいて、2つの第1の突出部23、23を形成し、また、発泡樹脂成形体10の他方の長手方向の側面に沿う本体部20の部分24の中央部にも第2の突出部25を1つ形成した。
【0153】
前記ポリスチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂の予備発泡樹脂粒子(嵩倍数40倍)は、以下の手順で製造した。5リットルのオートクレーブ中にポリスチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(ポリスチレン樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂との合計100質量部としたとき、ポリフェニレンエーテル含有量約50質量部、Tg;約145℃)を1600g、水を2500g、酸化マグネシウムを32g投入し、密封状態で攪拌しながら、n−ブタン80gを圧入、含浸させた。その後120℃まで昇温し、この温度で15時間維持した。その時の圧力は14kg/cmであった。しかる後に30℃まで冷却して、取り出した。このビーズ状の基材樹脂粒子を洗浄、脱水、乾燥後、密閉容器に入れ、保冷庫(15℃)の温度で72時間保持・熟成し、発泡性樹脂粒子とした。ビーズ状の基材樹脂粒子中のn−ブタン含有量は2.5質量部であった。このビーズ状の発泡性樹脂粒子を加圧発泡機に入れ、スチームにより加熱し発泡させ、嵩密度を0.025g/cmに調整し、24時間放置し熟成した。こうして、前記ポリスチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂の予備発泡樹脂粒子(嵩倍数40倍)を製造した。
【0154】
キャビティ内にフレーム材20が配置された成形型100に前記の予備発泡樹脂粒子(嵩倍数40倍)を充填し型締めして、水蒸気で成形型100のキャビティ内を加熱して発泡させ、予備発泡樹脂粒子間の空隙を埋めるとともに、予備発泡樹脂粒子を相互に融着させることにより一体化し、脱型して車両用シート部材30を製造した。このとき発泡樹脂成形体10の発泡倍率は40倍、融着率は98%であった。
【0155】
脱型後24時間経過後に車両用シート部材30における発泡樹脂成形体10の外寸を測定した。
【0156】
以上の操作を10回行い、10個の車両用シート部材30を製造した。
【0157】
製造された10個の車両用シート部材30は全て、発泡樹脂成形体10の長手方向の幅(外寸A)が許容値である1260mm±6mmの範囲内であり、製品規格を満足するものであった。
【0158】
一方、製造された車両シート部材30において、発泡樹脂成形体10から第1の突出部23を引き抜くのに必要な力を「引き抜き強度」とした。引き抜き強度は、脱型後24時間経過後に、第1の突出部23にプッシュプルゲージをセットし、発泡樹脂成形体10を固定した状態で第1の突出部23を引っ張り、引き抜き強度を測定した。一方、車両シート部材30の、第1の突出部23を介した車両への締結強度(車両締結強度)が別途規定されている。10個の車両シート部材30について、脱型後24時間経過後に測定した引き抜き強度と、要求される車両締結強度とを比較したところ、いずれも、引き抜き強度が車両締結強度を下回った。
[実施例2]
実施の形態で説明した形態の車両用シート部材30を型内発泡成形により製造した。使用した成形型100は、車両シート部材30の長手方向の幅に対応する内寸(図5での内寸B)が1263.8mmであった。発泡樹脂として、樹脂成形収縮率が約3/1000の上記のポリスチレン系樹脂を用いた。上記の成形型100を用いた場合に、仮に、フレーム材20を含む発泡樹脂成形体10の成形後の外寸が成形型100の内寸に対して3/1000だけ小さいと仮定すると、発泡樹脂成形体10の長手方向の幅(図6での外寸A)が1260mmとなる。同様に、発泡樹脂成形体10の短手方向の幅は550mm、厚さは160mmとなるように、成形型100の内寸が設計されている。発泡樹脂成形体10の長手方向の幅(外寸A)の製品としての許容値は1260mm±6mmである。
【0159】
フレーム材20は実施例1と同様のものを用いた。
【0160】
前記ポリスチレン系樹脂の予備発泡樹脂粒子(嵩倍数30倍)は、樹脂及び嵩倍数が異なる以外は、実施例1で用いた予備発泡樹脂粒子と同様の手順により製造した。
【0161】
キャビティ内にフレーム材20が実施例1と同様に配置された成形型100に前記ポリスチレン系樹脂の予備発泡樹脂粒子(嵩倍数30倍)を充填し型締めして、水蒸気で成形型100のキャビティ内を加熱して発泡させ、予備発泡樹脂粒子間の空隙を埋めるとともに、予備発泡樹脂粒子を相互に融着させることにより一体化し、脱型して車両用シート部材30を製造した。このとき発泡樹脂成形体10の発泡倍率は30倍、融着率は98%であった。
【0162】
脱型後24時間経過後に車両用シート部材30における発泡樹脂成形体10の外寸を測定した。
【0163】
以上の操作を10回行い、10個の車両用シート部材30を製造した。
【0164】
製造された10個の車両用シート部材30は全て、発泡樹脂成形体10の長手方向の幅(外寸A)が許容値である1260mm±6mmの範囲内であり、製品規格を満足するものであった。
【0165】
また、10個の車両シート部材30について、脱型後24時間経過後に測定した引き抜き強度と、要求される車両締結強度とを比較したところ、いずれも、引き抜き強度が車両締結強度を上回った。このことは、フレーム材20のうち突出部23、25の基端部231,251及び本体部21が、製造過程での発泡樹脂成形体10の収縮により、周囲の発泡樹脂成形体10により十分な強度で保持されている結果であると考えられる。
【0166】
製造された車両シート部材30の1つについて、脱型後24時間経過後に発泡樹脂成形体10の外寸を測定した。発泡樹脂成形体10の長手方向の幅(図6での外寸A)は1260mmであり、短手方向の幅は550mmであった。すなわち発泡樹脂成形体10における外寸をA、前記外寸に対応する前記成形型100の内寸をBとしたとき、(B−A)/Bは3/1000であった。また、脱型後24時間経過後に、2つの第1の突出部23、23の頂点間の距離を測定したところ699.0mmであった。該距離の変化率([(成形前の距離)−(脱型後の距離)]/(成形前の距離))は1/1000であった。
[実施例3]
実施の形態で説明した形態の車両用シート部材30を型内発泡成形により製造した。使用した成形型100は、車両シート部材30の長手方向の幅に対応する内寸(図5での内寸B)が1270.1mmであった。発泡樹脂として、樹脂成形収縮率が約8/1000の上記のポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂の複合樹脂を用いた。上記の成形型100を用いた場合に、仮に、フレーム材20を含む発泡樹脂成形体10の成形後の外寸が成形型100の内寸に対して8/1000だけ小さいと仮定すると、発泡樹脂成形体10の長手方向の幅(図6での外寸A)が1260mmとなる。同様に、発泡樹脂成形体10の短手方向の幅は550mm、厚さは160mmとなるように、成形型100の内寸が設計されている。発泡樹脂成形体10の長手方向の幅(外寸A)の製品としての許容値は1260mm±6mmである。
【0167】
フレーム材20は実施例1と同様のものを用いた。
【0168】
前記のポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂の複合樹脂の予備発泡樹脂粒子(嵩倍数30倍)は、樹脂及び嵩倍数が異なる以外は、実施例1で用いた予備発泡樹脂粒子と同様の手順により製造した。
【0169】
キャビティ内にフレーム材20が実施例1と同様に配置された成形型100に前記複合樹脂の予備発泡樹脂粒子(嵩倍数30倍)を充填し型締めして、水蒸気で成形型100のキャビティ内を加熱して発泡させ、予備発泡樹脂粒子間の空隙を埋めるとともに、予備発泡樹脂粒子を相互に融着させることにより一体化し、脱型して車両用シート部材30を製造した。このとき発泡樹脂成形体10の発泡倍率は30倍、融着率は98%であった。
【0170】
脱型後24時間経過後に車両用シート部材30における発泡樹脂成形体10の外寸を測定した。
【0171】
以上の操作を10回行い、10個の車両用シート部材30を製造した。
【0172】
製造された10個の車両用シート部材30は全て、発泡樹脂成形体10の長手方向の幅(外寸A)が許容値である1260mm±6mmの範囲内であり、製品規格を満足するものであった。
【0173】
また、10個の車両シート部材30について、脱型後24時間経過後に測定した引き抜き強度と、要求される車両締結強度とを比較したところ、いずれも、引き抜き強度が車両締結強度を上回った。このことは、フレーム材20のうち突出部23、25の基端部231,251及び本体部21が、製造過程での発泡樹脂成形体10の収縮により、周囲の発泡樹脂成形体10により十分な強度で保持されている結果であると考えられる。
【0174】
製造された車両シート部材30の1つについて、脱型後24時間経過後に発泡樹脂成形体10の外寸を測定した。発泡樹脂成形体10の長手方向の幅(図6での外寸A)は1260mmであり、短手方向の幅は550mmであった。すなわち発泡樹脂成形体10における外寸をA、前記外寸に対応する前記成形型100の内寸をBとしたとき、(B−A)/Bは8/1000であった。また、脱型後24時間経過後に、2つの第1の突出部23、23の頂点間の距離を測定したところ696.5mmであった。該距離の変化率([(成形前の距離)−(脱型後の距離)]/(成形前の距離))は5/1000であった。
[比較例1]
実施の形態で説明した形態の車両用シート部材30を型内発泡成形により製造した。使用した成形型100は、車両シート部材30の長手方向の幅に対応する内寸(図5での内寸B)が1282.7mmであった。発泡樹脂として、樹脂成形収縮率が約18/1000の上記のポリプロピレン系樹脂を用いた。上記の成形型100を用いた場合に、仮に、フレーム材20を含む発泡樹脂成形体10の成形後の外寸が成形型100の内寸に対して18/1000だけ小さいと仮定すると、発泡樹脂成形体10の長手方向の幅(図6での外寸A)が1260mmとなる。同様に、発泡樹脂成形体10の短手方向の幅は550mm、厚さは160mmとなるように、成形型100の内寸が設計されている。発泡樹脂成形体10の長手方向の幅(外寸A)の製品としての許容値は1260mm±6mmである。
【0175】
フレーム材20は実施例1と同様のものを用いた。
【0176】
前記ポリプロピレン系樹脂の予備発泡樹脂粒子(嵩倍数30倍)は、樹脂及び嵩倍数が異なる以外は、実施例1で用いた予備発泡樹脂粒子と同様の手順により製造した。
【0177】
キャビティ内にフレーム材20が実施例1と同様に配置された成形型100に前記ポリプロピレン系樹脂の予備発泡樹脂粒子(嵩倍数30倍)を充填し型締めして、水蒸気で成形型100のキャビティ内を加熱して発泡させ、予備発泡樹脂粒子間の空隙を埋めるとともに、予備発泡樹脂粒子を相互に融着させることにより一体化し、脱型して車両用シート部材30を製造した。このとき発泡樹脂成形体10の発泡倍率は30倍、融着率は98%であった。
【0178】
脱型後24時間経過後に車両用シート部材30における発泡樹脂成形体10の外寸を測定した。
【0179】
以上の操作を10回行い、10個の車両用シート部材30を製造した。
【0180】
製造された10個の車両用シート部材30のうち2個のみが、発泡樹脂成形体10の長手方向の幅(外寸A)が許容値である1260mm±6mmの範囲内であり、製品規格を満足するものであったが、残りの8個は1260mm±6mmの範囲外であり、製品規格を満足しなかった。
【0181】
また、10個の車両シート部材30について、脱型後24時間経過後に測定した引き抜き強度と、要求される車両締結強度とを比較したところ、一部、引き抜き強度が車両締結強度を下回った。このことは、樹脂成形収縮率が約18/1000の樹脂を用いた発泡成形体10では、フレーム材20のうち突出部23、25の基端部231,251及び本体部21を十分な強度で保持できない場合があることを示唆する。
【0182】
また、脱型後24時間経過後に、2つの第1の突出部23、23の頂点間の距離を測定したところ694.5mmであった。該距離の変化率([(成形前の距離)−(脱型後の距離)]/(成形前の距離))は7.9/1000であった。
【符号の説明】
【0183】
10…発泡樹脂成形体
20…フレーム材
21…フレーム材の本体部
23…第1の突出部
25…第2の突出部
30…車両用シート部材
40…上シート部材
50…車両用シート
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6