(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記微粉が、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、及び炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1又は2記載のポリアセタール樹脂組成物のペレット。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
本実施形態における導電性ポリアセタール樹脂組成物のペレットは、ポリアセタール樹脂(A)と、導電性フィラー(B)とを含み、円相当径が0.05μm以上1000μm以下の微粉の含有量が10ppm以上500ppm以下である。
【0011】
[ポリアセタール樹脂(A)]
ポリアセタール樹脂としては、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーが挙げられる。ポリアセタールホモポリマーは、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られるものである。したがって、ポリアセタールホモポリマーは、実質的にオキシメチレン単位からなる。ポリアセタールコポリマーは、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール等のグリコール、ジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、環状ホルマールとを共重合させて得られるものである。また、ポリアセタールコポリマーとして、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー、又は、多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーを用いることもできる。
【0012】
さらには、ポリアセタール樹脂は、両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えばポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒドの単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマーであってもよい。同じく、ポリアセタール樹脂は、両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと環状エーテルや環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーであってもよい。以上のように、本実施形態におけるポリアセタール樹脂としては、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーのいずれも用いられ得る。また、ポリアセタール樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。ポリアセタール樹脂は、好ましくはポリアセタールコポリマーを含む。
【0013】
トリオキサンを用いてポリアセタールコポリマーを得る場合、上記1,3−ジオキソラン等のコモノマーは、一般的には、トリオキサン100molに対して0.1〜60mol、好ましくは0.1〜20mol、更に好ましくは0.13〜10molで用いられる。本実施形態において、ポリアセタールコポリマーの好適な融点は162℃〜173℃であり、より好ましくは167℃〜173℃、更に好ましくは167℃〜171℃である。融点が167℃〜171℃であるポリアセタールコポリマーは、トリオキサン100molに対して1.3〜3.5mol程度のコモノマーを用いることにより得ることができる。
【0014】
ポリアセタールコポリマーの重合に用いられる重合触媒としては、ルイス酸、プロトン酸、及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。ルイス酸としては、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、より具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン、及びその錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸、そのエステル又は無水物の具体例としては、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。これらの中でも、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素水和物、及び、酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルを好適な例として挙げることができる。
【0015】
ポリアセタールコポリマーは、従来公知の方法、例えば、米国特許第3027352号明細書、同第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、同第1495228号明細書、同第1720358号明細書、同第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報及び特開平7−70267号公報に記載の方法によって重合することができる。上記の重合により得られたポリアセタールコポリマーには、熱的に不安定な末端部〔−(OCH
2)
n−OH基〕が存在するため、そのままでは実用に供することは好ましくない。そこで、不安定な末端部の分解除去処理を実施することが好ましく、具体的には、以下に示す特定の不安定末端部の分解除去処理を行うことが好ましい。すなわち、その特定の不安定末端部の分解除去処理では、下記一般式(1)で表わされる少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下に、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールコポリマーに対して、それを溶融させた状態で加熱処理を施す。
[R
1R
2R
3R
4N
+]
nX
-n ・・・ (1)
ここで、式(1)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、各々独立して、炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基における少なくとも1個の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は、炭素数6〜20のアリール基における少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基で置換されたアルキルアリール基を示し、置換又は非置換のアルキル基は直鎖状、分岐状、若しくは環状である。上記置換アルキル基における置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、上記非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基において水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1〜3の整数を示す。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を示す。
【0016】
第4級アンモニウム化合物は、上記一般式(1)で表わされるものであれば特に制限はないが、本発明による上記効果をより有効かつ確実に奏する観点から、一般式(1)におけるR
1、R
2、R
3、及びR
4が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、更に、R
1、R
2、R
3、及びR
4の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものが特に好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸等の水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;チオ硫酸等のチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸塩が挙げられる。これらの中でも、水酸化物(OH
-)、硫酸(HSO
4-、SO
42-)、炭酸(HCO
3-、CO
32-)、ホウ酸(B(OH)
4-)、及びカルボン酸の塩が好ましい。カルボン酸の中では、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。第4級アンモニウム化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類を併用してもよい。
【0017】
第4級アンモニウム化合物の使用量は、ポリアセタールコポリマーと第4級アンモニウム化合物との合計質量に対する、下記式(2)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素量に換算して、好ましくは0.05〜50質量ppm、より好ましくは1〜30質量ppmである。
P×14/Q ・・・ (2)
ここで、式(2)中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタールコポリマーに対する濃度(質量ppm)を示し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を示す。
【0018】
第4級アンモニウム化合物の使用量が0.05質量ppm未満であると不安定末端部の分解除去速度が低下する傾向にあり、50質量ppmを超えると不安定末端部の分解除去後のポリアセタールコポリマーの色調が悪化する傾向にある。
【0019】
本実施形態におけるポリアセタール樹脂の不安定末端部は、融点以上260℃以下の温度でポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理すると、分解除去される。この分解除去処理に用いる装置としては特に制限はないが、押出機、ニーダー等が好適である。分解により発生したホルムアルデヒドは通常、減圧下で除去される。第4級アンモニウム化合物をポリアセタールコポリマー中に存在させる方法には特に制約はなく、例えば、重合触媒を失活する工程において水溶液として添加する方法、重合により生成したポリアセタールコポリマーパウダーに吹きかける方法が挙げられる。いずれの方法を用いても、ポリアセタールコポリマーを加熱処理する工程において、そのコポリマー中に第4級アンモニウム化合物が存在していればよい。例えば、ポリアセタールコポリマーが溶融混練及び押し出される押出機の中に第4級アンモニウム化合物を注入してもよい。あるいは、その押出機等を用いて、ポリアセタールコポリマーにフィラーやピグメントを配合する場合、ポリアセタールコポリマーの樹脂ペレットに第4級アンモニウム化合物をまず添着し、その後のフィラーやピグメントの配合時に不安定末端部の分解除去処理を行ってもよい。
【0020】
不安定末端部の分解除去処理は、重合により得られたポリアセタールコポリマーと共存する重合触媒を失活させた後に行うことも可能であり、重合触媒を失活させずに行うことも可能である。重合触媒の失活処理としては、アミン類等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法が挙げられる。重合触媒の失活を行わない場合、ポリアセタールコポリマーの融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にてそのコポリマーを加熱し、重合触媒を揮発により減少させた後、不安定末端部の分解除去操作を行うことも有効な方法である。
【0021】
上述のような不安定末端部の分解除去処理により、不安定末端部がほとんど存在しない非常に熱安定性に優れたポリアセタールコポリマーを得ることができる。
【0022】
[導電性フィラー(B)]
本実施形態における導電性フィラー(B)は、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、及び炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上である。樹脂組成物の導電性のばらつきを少なくするという観点から、カーボンブラックと黒鉛を少なくとも含むことが好ましい。
【0023】
カーボンブラックの種類としては特に限定されず、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のいずれでもよく、中でも、少量の配合で高い導電性を付与することができるという観点から、粒子径が小さいか又は表面積が大きく鎖状構造の発達したものが好ましい。カーボンブラックの平均一次粒子径は、0.05μm以下であることが好ましい。ここで、カーボンブラックの平均一次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により1万倍から5万倍の拡大倍率でカーボンブラックを観察し、最低100個のカーボンブラック粒子について長径と短径とを計測し、その平均値を計算することにより求められる。
【0024】
また、カーボンブラックのDBP吸油量(ASTM D2415−65Tに準拠して測定)は、350mL/100g以上であることが好ましく、400mL/100g以上であることがより好ましい。カーボンブラックのDBP吸油量が350mL/100g以上であることにより、少ない添加量で、良好な導電性を得ることができる傾向にある。具体的なカーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラックEC〔DBP:350mL/100g〕、EC300J[DBP:365mL/100g]、EC600JD〔DBP:480mL/100g〕(ライオン(株)製)、プリンテックスXE2−B〔DBP:420mL/100g〕(エボニック デグサ ジャパン(株)製)等が挙げられる。また、2種以上のカーボンブラックを併用してもよい。
【0025】
黒鉛は、人造品及び天然品から、目的に応じて適宜選択することができる。本実施形態において使用される黒鉛粉末の形状は、鱗片状、塊状、球状等のいずれでもよいが、より良好な導電性を発現させる観点から、鱗片状の天然黒鉛が特に好ましい。黒鉛粉末の平均一次粒子径は、0.5〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは1〜80μmである。黒鉛粉末の平均一次粒子径は、十分な導電性を発現させる観点から0.5μm以上が好ましく、取り扱い性と成形品表面外観保持の観点から100μm以下が好ましい。ここで、黒鉛粉末の平均一次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により5千倍から3万倍の拡大倍率で黒鉛粉末を観察し、最低100個の黒鉛粒子について長径と短径とを計測し、その平均値を計算することにより求められる。
【0026】
カーボンナノチューブは、平均繊維径が1nm〜100nmであり、平均アスペクト比が5以上のカーボンナノチューブであることが好ましい。カーボンナノチューブの平均繊維径は、より好ましくは3〜80nmであり、さらに好ましくは5〜70nmである。カーボンナノチューブの平均繊維径は、繊維としての製造性の観点から1nm以上であることが好ましく、所望の導電性を得る観点から100nm以下であることが好ましい。
【0027】
また、カーボンナノチューブの平均アスペクト比は、導電性付与効果の観点から5以上であることが好ましく、より好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上である。平均アスペクト比が高い方が、導電性付与効果が高くなる傾向にあるため好ましい。
【0028】
ここで、カーボンナノチューブの平均繊維径、平均アスペクト比は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により1万倍から5万倍の拡大倍率でカーボンナノチューブを観察し、最低100本のカーボンナノチューブについて繊維径と繊維長とを計測し、その平均値を計算することにより求められる。
【0029】
カーボンナノチューブとしては、特に限定されず、例えば気相成長法、アーク放電法、レーザー蒸発法等により得られる単層ナノチューブや多層ナノチューブが好ましく使用できる。またこれらを2種以上併用することも可能である。カーボンナノチューブは、特公表昭62−500943号公報、特公表平2−503334号公報、特開平11−256430号公報等に開示されている方法により製造することができる。
【0030】
また、カーボンナノチューブは樹脂への密着性、分散性を改良するためにカップリング剤で処理されていてもよい。かかるカップリング剤としてはイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボロン系化合物、エポキシ化合物等が挙げられる。これらの中では、有機シラン系化合物が好ましく、その具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン化合物;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有アルコキシシラン化合物;γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドトリエトキシシラン等のウレイド基含有アルコキシシラン化合物;γ−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルエチルジメトキシシラン等のイソシアナート基含有アルコキシシラン化合物;γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン化合物;γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン等の水酸基含有アルコキシシラン化合物等が挙げられ、その使用量はカーボンナノチューブ100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0031】
炭素繊維としては、特に制限はなく公知の炭素繊維を使用することができ、例えば、PAN系、ピッチ系、セルロース系、及び金属コートを施した炭素繊維等が挙げられる。その中でも、導電性向上の観点から、PAN系炭素繊維が好ましい。
【0032】
炭素繊維の直径は、導電性と取り扱いの容易さのバランスの観点から、好ましくは3〜20μmであり、より好ましくは5〜15μm、さらに好ましくは5〜10μmである。ここで、炭素繊維の直径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により5千倍から3万倍の拡大倍率で炭素繊維を観察し、最低100本のカーボンナノチューブについて繊維径と繊維長とを計測し、その平均値を計算することにより求められる。
【0033】
また、炭素繊維には、樹脂組成物の力学的特性の向上、あるいは導電性の向上の目的で、カップリング剤やサイジング剤等の表面処理剤による処理が施されていてもよい。かかる表面処理剤としては、例えば、シラン系、チタネート系等のカップリング剤、エポキシ系、ウレタン系、エーテル系、エステル系、アミド系、アクリル系、ポリビニルアルコール系のサイジング剤等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
ポリアセタール樹脂(A)と導電性フィラー(B)の質量比(A)/(B)は99/1〜50/50であることが好ましく、97/3〜60/40であることがより好ましく、95/5〜70/30であることがさらに好ましい。質量比(A)/(B)が上記範囲であると、熱安定性と導電性を両立させたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる傾向にある。
【0035】
さらに、導電性フィラー(B)としては、カーボンブラックと黒鉛を少なくとも含むことが好ましい。この場合のカーボンブラックと黒鉛の質量比は95/5〜50/50であることが好ましく、90/10〜60/40であることがより好ましい。カーボンブラックと黒鉛の質量比が上記範囲であると、導電性と靭性を両立させたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる傾向にある。
【0036】
[ポリオレフィン樹脂(C)]
本実施形態における導電性ポリアセタール樹脂組成物は、融点が120℃以下のポリオレフィン樹脂(C)をさらに含むことが好ましい。導電性ポリアセタール樹脂組成物がポリオレフィン樹脂(C)を含むと、靭性に優れた導電性ポリアセタール樹脂を得ることができる傾向にある。融点が120℃以下のポリオレフィン樹脂(C)は、オレフィン系不飽和化合物のホモ重合体又は共重合体、或いはその変性体である。具体的には、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリプロピレン−ブテン共重合体、ポリブテン、ポリブタジエンの水添物、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。変性体としては、他のビニル化合物の1種以上をグラフトさせたグラフト共重合体;α,β−不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸等)又はその酸無水物で(必要により過酸化物を併用して)変性したもの;オレフィン系化合物と酸無水物を共重合したものが挙げられる。
【0037】
これらの中でも、ポリエチレンが好ましく、高圧法低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm
3以上0.93g/cm
3未満のポリエチレン)がより好ましい。高圧法低密度ポリエチレンの具体例としては、サンテックLD L1850A(融点107℃、旭化成ケミカルズ(株)製)、ペトロセン342(融点102℃、東ソー(株)製)等を挙げることができる。これらのポリオレフィン樹脂の分子量は特に限定されないが、好ましくは重量平均分子量で10,000〜300,000の範囲であり、より好ましくは10,000〜100,000であり、さらに好ましくは15,000〜80,000である。ここで、ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0038】
[ホルムアルデヒド反応性窒素化合物(D)]
本実施形態における導電性ポリアセタール樹脂組成物は、ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(D)をさらに含むことが好ましい。ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(D)を含むと、熱安定性の高いポリアセタール樹脂組成物を得ることができる傾向にある。ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(D)の具体例としては、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、及びこれらの、例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等を挙げることができる。また上記の他にも、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられ、例えばアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。その他にも、アミド化合物、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの縮合物、尿素、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物を挙げることができる。
【0039】
アミド化合物の具体例としては、イソフタル酸ジアミド等の多価カルボン酸アミド、アントラニルアミドが挙げられる。アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、2,4 −ジアミノ−sym−トリアジン、メラミン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N, N−ジアリルメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン等が挙げられる。アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミン等が挙げられる。アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物等が挙げられる。
【0040】
尿素誘導体の具体例としては、N−置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物等が挙げられる。N−置換尿素の具体例としては、アルキル基等の置換基が置換したメチル尿素、アルキレンビス尿素、アリール置換尿素等が挙げられる。尿素縮合体の具体例としては、尿素とホルムアルデヒドの縮合体等が挙げられる。ヒダントイン化合物の具体例としては、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン等が挙げられる。
【0041】
ウレイド化合物の具体例としては、アラントイン等が挙げられる。ヒドラジン誘導体としてはヒドラジド化合物が挙げられる。ヒドラジド化合物の具体例としては、ジカルボン酸ジヒドラジドが挙げられ、更に具体的には、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド等が挙げられる。イミド化合物の具体例としては、スクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミド等が挙げられる。
【0042】
これらのホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、メラミンが特に好ましい。
【0043】
[エポキシ化合物(E)]
本実施形態における導電性ポリアセタール樹脂組成物は、エポキシ化合物(E)をさらに含むことが好ましい。エポキシ化合物(E)を含むと、熱安定性の高い導電性ポリアセタール樹脂組成物を得ることができる傾向にある。エポキシ化合物(E)は、モノ又は多官能グリシジル誘導体、或いは不飽和結合をもつ化合物を酸化してエポキシ基を生じさせた化合物であることが好ましい。また、エポキシ化合物には、エポキシ樹脂硬化性添加剤を添加することができる。エポキシ硬化性添加剤としては、塩基性窒素化合物や塩基性リン化合物が通常用いられるが、その他のエポキシ硬化作用(効果促進作用を含む)を持つ化合物のいずれも使用することができる。
【0044】
エポキシ化合物としては、例えば、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ベヘニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(エチレンオキシドのユニット;2〜30)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(プロピレンオキシドのユニット;2〜30)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0045】
また、エポキシ化合物としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジグリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとの縮合物(エポキシ等量;100〜400、軟化点;20〜150℃)、グリシジルメタクリレート、ヤシ脂肪酸グリシジルエステル、大豆脂肪酸グリシジルエステル等も挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0046】
エポキシ樹脂硬化性添加剤の具体的な化合物としては、イミダゾール;1−ヒドロキシエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ビニル−2−フェニルイミダゾール等の置換イミダゾール;オクチルメチルアミン、ラウリルメチルアミン等の脂肪族2級アミン;ジフェニルアミン、ジトリルアミン等の芳香族2級アミン;トリラウリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルステアリルアミン、トリステアリルアミン等の脂肪族3級アミン、;トリトリルアミン、トリフェニルアミン等の芳香族3級アミン;セチルモルホリン、オクチルモルホリン、P−メチルベンジルモルホリン等のモルホリン化合物;ジシアンジアミド、メラミン、尿素等へのアルキレンオキシド付加物(付加モル数1〜20モル);トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン等のリン化合物等が挙げられるがこれらに限定されない。これらのエポキシ化合物、エポキシ樹脂硬化性添加剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
また、本実施形態における導電性ポリアセタール樹脂組成物のペレットには、本発明の目的を損なわない範囲で、従来ポリアセタール樹脂組成物に使用されている安定剤の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
安定剤としては、酸化防止剤、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤及びこれらの組合せが好適である。
【0049】
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)が挙げられる。さらに、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレンビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミドも挙げられる。
【0050】
上述したヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンが好ましい。
【0051】
ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩が挙げられる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウム等の水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、硼酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。具体的にはカルシウム塩が好ましく、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、及び脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)が挙げられ、脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。これらの中では、脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)がより好ましい。
【0052】
安定剤の組合せとしては、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)又はテトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンに代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤と、メラミンに代表されるホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物と、脂肪酸カルシウム塩に代表されるアルカリ土類金属の脂肪酸塩との組合せが特に好ましい。
【0053】
本実施形態における導電性ポリアセタール樹脂組成物のペレットは、円相当径が0.05μm以上1000μm以下の微粉を、10ppm以上500ppm以下の含有量で含む。微粉の円相当径は、導電性の安定性とペレットの滑り抑制の観点から、0.05μm以上1000μm以下であり、好ましくは0.1μm以上750μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上500μm以下である。
微粉の円相当径は、粒度・形状分布測定器(例えば、セイシン企業(株)製粒度分布測定機PITA−1)を用いて求めることができる。
【0054】
また、円相当径が0.05μm以上1000μm以下の微粉の含有量は、導電性の安定性とペレットの滑り抑制の観点から、10ppm以上500ppm以下であり、好ましくは10ppm以上100ppm以下であり、より好ましくは15ppm以上75ppm以下である。
上記微粉の含有量は、例えば導電性ポリアセタール樹脂組成物のペレットの特定量を振動式等の微粉選別機に投入しペレット中から微粉の選別を行い、微粉の質量を測定することで解析することができる。例えば、一般的なペレットの製品袋である25kg製品袋で測定する場合には、25kg製品袋からペレットを全量微粉選別機に投入し、更に25kg製品袋の内側に付着したペレット及び微粉をエアーブローにより落とし、それらも微粉選別機の中に投入する。投入されたペレット全量を微粉選別機によってペレットと微粉に選別する。なお、本実施形態において、径の小さいペレット(具体的には直径1000μm以下の小ペレット)は「微粉」であると判断する。
【0055】
本実施形態における導電性ポリアセタール樹脂組成物のペレットに含まれる微粉は、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、及び炭素繊維からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。これらの導電性フィラーを微粉として含むことにより、ペレットの帯電性を防ぐことができ、ペレットが成形機や押出機のホッパーに付着することを防ぐことができる。そのため、ペレットの成形機や押出機へのフィード量が安定し、得られる導電性ポリアセタール樹脂組成物の特性がより一層安定する。更に、微粉が導電性ポリアセタール樹脂組成物に含まれる、少なくとも1種の導電性フィラー(B)と同じ導電性フィラーを含むことがより好ましく、導電性ポリアセタール樹脂組成物と同組成であることが更に好ましい。微粉は、導電性ポリアセタール樹脂組成物のペレットから脱離したものであることが特に好ましい。
【0056】
本実施形態における導電性ポリアセタール樹脂組成物のペレットに含まれる微粉の円相当径及び含有量を特定範囲に制御する方法としては、例えば
、ペレットに特定の円相当径の微粉を特定量直接添加する方法が挙げられる。また
、ポリアセタール樹脂と導電性フィラーを押出機で溶融混練して押し出されたストランドをペレタイズする際のストランド温度を調節する方法
、ストランドカットの際のカッターの種類を適宜選択する方法
、カットされたペレットの後工程でのふるい分けの有無
、ペレットを空気輸送する際の風速を調節する方法
、ペレットの形状・大きさを調節する方法等により、導電性ポリアセタール樹脂組成物のペレットに含まれる微粉の円相当径及び含有量を、特定範囲に制御することができる。
【0057】
押出機で溶融混練されて押し出されたストランドをペレタイズする際のストランド温度を調節する方法によって微粉の円相当径及び含有量を調節する場合、ストランドの表面温度は40℃以上140℃以下とすることが好ましく、60℃以上140℃以下とすることがより好ましく、100℃以上140℃以下とすることがさらに好ましい。ストランドカッターは、例えば、ドラムカット式、ファンカット式等の方式のものを用いることができる。
【0058】
ペレットを空気輸送する際の風速を調節する方法によって微粉の含有量を調節する場合、単位時間当たりのペレット輸送量をA(kg/h)、風速をB(m/s)としたとき、両者の比A/Bを5〜20の範囲に調整することが好ましく、7〜17の範囲に調整することがより好ましい。
【0059】
ペレットを空気輸送する方法は、押出、ペレタイズされたペレットを包装等の目的で製品ホッパーに送るため等に用いられ、ペレットを生産しながら連続的に移動させることができるため好ましい。空気輸送のために空気の流れを生成する装置としては、吸引輸送方式、圧送輸送方式等のいずれでもよい。空気輸送の際の風速Bは、上記のA/Bを満足する範囲であれば特に限定されないが、15m/s以下であることが好ましく、より好ましくは12m/s以下である。なお、ここでいう「風速」とは、空気輸送ライン内における最大風速のことを指し、吸引輸送方式を用いる場合は空気食い込み口で、圧送輸送方式を用いる場合は空気の排出口で、通常一般的に用いられている風車型風速計、風杯型風速計、超音波式風速計、ダインス式風速計、熱線式風速計等を用いて測定した風速のことをいう。また、ペレットを空気輸送する配管の材質は特に限定されず、金属製、樹脂製、ガラス製等のいずれでもよい。
【0060】
また、空気輸送において、空気輸送装置によって送られる時間当たりのペレット輸送量Aは、100kg/h以上300kg/h以下であることが好ましく、より好ましくは150kg/h以上250kg/h以下である。
【0061】
ペレットの形状・大きさを調節することで微粉の含有量を調節する場合、ペレットの形状は円柱型であることが好ましく、その円筒断面の平均直径は1mm以上4mm以下であることがより好ましい。ここで、円筒断面の平均直径は、最低30個のペレットの円筒断面をノギスにより測定し、その平均値を求めることにより得られる値をいう。
【0062】
また、ペレットの組成面において、微粉の含有量を調節する方法としては、例えば、導電性フィラーとしてカーボンブラックと黒鉛を少なくとも配合する方法、融点が120℃以下のポリオレフィン樹脂を配合する方法等を挙げることができる。ポリオレフィン樹脂としては、前述の高圧法低密度ポリエチレンが好ましく、中でもJIS K 7206に基づくビカット軟化点が80℃以上110℃未満であり、かつJIS K 7210に基づくメルトフローレートが5g/10min以上20g/10min以下である高圧法低密度ポリエチレンが好ましい。
【0063】
本実施形態におけるポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造する装置としては、一般に実用されている混練機が適用できる。例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等を用いることができる。中でも、減圧装置、及びサイドフィーダー設備を装備した2軸押出機が特に好ましい。溶融混練の方法としては、例えば、すべての成分のブレンド物を押出機トップのフィーダー(以下、トップフィーダーと呼ぶ)から連続的にフィードして溶融混練させる方法、(B)成分以外のブレンド物をトップフィーダーから連続的にフィードして溶融混練させた後、該溶融混練物に、押出機サイドに設けられたフィーダー(以下、サイドフィーダーと呼ぶ)から(B)成分を連続的にフィードしてさらに溶融混練させる方法等を挙げることができる。
【0064】
押出機の減圧度に関しては、0〜0.07MPaが好ましい。混練の温度は、用いるポリアセタール樹脂のJIS K7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求まる融点より1〜100℃高い温度が好ましい。より具体的には160℃から240℃であることが好ましい。混練機での剪断速度は100rpm以上であることが好ましく、混練時の平均滞留時間は30秒〜1分であることが好ましい。
【0065】
導電性ポリアセタール樹脂組成物のペレットを成形する方法については特に制限されず、公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法を用いることができる。
【0066】
導電性ポリアセタール樹脂組成物のペレットの成形体の具体的な用途としては、導電性樹脂が一般的に用いられるメンブレンスイッチ、キースイッチ、複写機チャージャー、電子ライター着火部材の他、安定した低い接触電気抵抗が要求される電気接点部材、導電性軸受、複写機ドラムフランジ、複写機ドラムギア等に特に好適に用いられる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例よって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。まず、実施例及び比較例で使用する成分の内容と評価方法を以下に示す。
【0068】
使用成分の内容
ポリアセタール樹脂(A)
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)を80℃に調整し、トリオキサンを4kg/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを128.3g/h(トリオキサン1molに対して、3.9mol%)、連鎖移動剤としてメチラールを、得られるポリアセタール樹脂のメルトフローレートが10g/10minとなるように調整して連続的に添加した。さらに重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1molに対して1.5×10
-5molで連続的に添加し重合を行なった。重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行なった。失活されたポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後、120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行い、窒素量に換算して20質量ppmとした。乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で不安定末端部分の分解除去を行なった。不安定末端部分の分解されたポリアセタールコポリマーは、ベント真空度20Torrの条件下に脱揮され、押出機ダイス部よりストランドとして押出され、ペレタイズされた。このようにして得られたポリアセタール樹脂100質量部に対し、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部を添加し、ベント付2軸押出機で溶融混練することによりポリアセタール樹脂ペレットを製造し、これを実施例及び比較例で使用するポリアセタール樹脂とした。
【0069】
導電性フィラー(B)
(B−1)ケッチェンブラックEC300J(ライオン(株)製カーボンブラック、DBP吸油量:365mL/100g)
(B−2)プリンテックスXE2−B(オリオンエンジニアドカーボンズ(株)製カーボンブラック、DBP吸油量:420mL/100g)
(B−3)F#3(日本黒鉛(株)製、鱗片状天然黒鉛、平均粒径60μm)
(B−4)F#2(日本黒鉛(株)製、鱗片状天然黒鉛、平均粒径120μm)
(B−5)TR06Q(三菱レイヨン(株)製、平均繊維径7μm:炭素繊維)
(B−6)VGCF−S(昭和電工(株)製、平均繊維径80nm:カーボンナノチューブ)
【0070】
ポリオレフィン樹脂(C)
(C−1)サンテックL−1850A(旭化成ケミカルズ(株)製LDPE、融点107℃、ビカット軟化点87℃、MFR6.7g/10min、密度0.92g/cm
3)
(C−2)EA9FT(日本ポリプロ(株)製ポリプロピレン、融点166℃)
【0071】
ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(D)
メラミン(日産化学(株)製)
【0072】
エポキシ化合物(E)
クレゾールノボラックとエピクロロヒドリンとの縮合物(旭化成イーマテリアルズ(株)製、エポキシ当量=350、軟化点=80℃)
【0073】
エポキシ樹脂硬化性添加剤(硬化促進剤)
トリフェニルホスフィン(北興化学工業(株)製)
ジシアンジアミド(日本カーバイト工業(株)製)
【0074】
〈ポリアセタール樹脂組成物ペレットの製造方法〉
上流側と下流側に1か所ずつ供給口を有する、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=58.4(バレル数:13)の2軸押出機(TEM48−SS:東芝機械(株)製)を用い、シリンダー温度を200℃に設定し、スクリュー回転数400rpm、押出量200kg/hで押出を行った。また、押出機のダイヘッドは、4.5mmφ×13穴のものを用いた。押出機のダイより押出されたポリアセタール樹脂組成物はストランドバスに張られた水により冷却及び固化され、ペレタイザーに導かれて円柱型のペレットとされた。用いたペレタイザーは、下記の2種類である。
ペレタイザーI :O−M(株)製 SGS−100S(ドラム式ペレタイザー)
ペレタイザーII:星プラスチック(株)製 FC2512−S2(ファンカット式ペレタイザー)
このとき、ペレタイザーに入る直前のストランドの表面温度を、校正された赤外線式温度計により測定した。また、円柱状のペレットの円筒断面の平均直径と平均長さは、任意に100個のペレットを採取し、その全ての円筒断面の直径と長さをノギスで計測し、得られたそれぞれ100個の数値を単純平均することにより得た。
図1に示したとおり、ペレタイザー出口には圧送輸送方式のブロワー(インバーターを設置することにより風速が変えられる仕様のもの)を設け、ペレットが連続的に75mmφの金属製の配管に導かれるようにした。なお、ペレタイザー出口には任意に振動式の分級器を設置することにより、ペレットが圧送される前にストランドカット時に生成した微粉を取り除くことができる構造とした。空気輸送されたペレットは最終的にブロワーの排気口を基準として3.5mの高さまで送られ、製品ホッパーに導かれた。上記運転を1時間行い、製品ホッパー下部よりペレットを抜き出し、微粉量と体積抵抗率の測定を行った。
【0075】
〈ペレット中に含まれる微粉量と平均粒径の測定方法〉
最終段のスクリーンを2mmφのパンチングプレートとしたタナカ(株)製振動式ペレット選別機PSL−300A型を用い、すべてのプロセスを通過した後に包装された、25kg袋全ペレット中に含まれる微粉の量を測定した。25kg袋の中のペレットを選別機に投入する際には、包装袋の内側に付着したペレット又は微粉をエアーブローにより落とし、それらも選別機の中に投入して微粉の選別を行い、選別された微粉の質量を測定することにより行った。また、微粉の平均粒径はセイシン企業(株)製粒度分布測定機PITA−1を用いて測定を行い、微粉の粒径のD50値を円相当径とした。
【0076】
〈ペレットのスクリューへの噛み込み性の評価方法〉
東芝機械製EC5P射出成形機のシリンダー温度を200℃、金型温度90℃に設定し、得られたペレットから89×18×4mmの試験片の500ショットの連続成形を行った。この際、ペレットが成形機スクリューに噛み込まずに成形トラブルが起こったものについてはそのショット数を記録し、トラブル発生なく500ショット連続成形できたものについては「トラブルなし」と表記した。
【0077】
〈体積抵抗率(導電性)の測定方法〉
東芝機械(株)製EC75NII射出成形機を用いて、シリンダー温度205℃、金型温度を90℃に設定し、射出圧力68MPa、射出時間35秒、冷却15秒の射出条件で評価用ISOダンベルを得た。このISOダンベルから30×20×4mmの平板を切り出し、四探針ASPプローブ(ピン間5mm、ピン先0.37mmR×4、バネ圧210g/本、JIS K7194対応)をこの平板に押し当て、三菱化学製ロレスタ−GPにより印加電圧90Vで、連側30ショットの成形片の体積抵抗率を測定し、その平均値と標準偏差を算出した。体積抵抗率の平均値が低いほど導電性に優れ、標準偏差が小さいほど導電性のばらつきが小さいことを示す。
【0078】
〈熱安定性の評価方法〉
シリンダー温度205℃に設定した東芝機械(株)製EC5P射出成形機のシリンダー内に樹脂組成物を滞留させて13×3×89mmの成形片を成形した際に、成形片の表面の2/3にシルバーストリークが発生する限界滞留時間(分)を測定した。この限界滞留時間が長いほど、熱安定性に優れると判断できる。
【0079】
〈摺動性の評価方法〉
上記体積抵抗率の測定に用いた評価用ISOダンベルを用いて、往復動摩擦摩耗試験機(東洋精密(株)製、商品名「AFT−15MS型」)により荷重2kg、線速度30mm/sec、往復距離10mmの条件下、環境温度23℃で10000回の往復試験を行い、10000回目の摩擦係数を測定した。相手材料としては、SUS球(SUS304、R=2.5mm)を用いた。摩擦係数が小さいものほど、摺動性に優れると判断できる。
【0080】
[実施例1〜35]
各成分を表1及び表3に示す割合で配合し、それぞれ表1及び表3に示された製造条件により溶融混練を行った。押出された樹脂はストランドカッターでペレットとした。得られたペレットを用いて上述の方法により各評価を行い、結果を表2及び表4に示した。
【0081】
[比較例1〜18]
各成分を表5に示す割合で配合し、それぞれ表5に示された製造条件により溶融混練を行った。押出された樹脂はストランドカッターでペレットとした。得られたペレットを用いて上述の方法により各評価を行い、結果を表6に示した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】