特許第6334853号(P6334853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334853
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   A61B6/00 300J
   A61B6/00 320Z
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-126713(P2013-126713)
(22)【出願日】2013年6月17日
(65)【公開番号】特開2015-231(P2015-231A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】秋山 真己
(72)【発明者】
【氏名】竹元 久人
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−157400(JP,A)
【文献】 特開2011−188972(JP,A)
【文献】 特開2008−212550(JP,A)
【文献】 特開2007−190132(JP,A)
【文献】 特開2003−339686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
G21K 1/00 − 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線管と、
前記X線管から発生されたX線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器からの出力に基づいて、X線画像を発生する画像発生部と、
前記X線の線量を非低減で通過させる非低減通過部分と、前記非低減通過部分の周囲であって前記線量を低減させる線量低減部分とを有し、前記X線管の前面に設けられる線量低減フィルタと、
前記X線画像に操作者により設定された関心領域に対応する前記X線検出器における検出面上の部分領域に前記非低減通過部分を通過したX線を到達させるために、前記X線画像上の前記関心領域の位置に応じて、前記線量低減フィルタの移動量を決定する移動量決定部と、
前記移動量に応じて、前記X線管の前面におけるX線照射野内における前記非低減通過部分の位置を自在に移動可能に支持する移動支持機構と、
を具備することを特徴とするX線診断装置。
【請求項2】
前記移動量決定部は、
前記関心領域の大きさに基づいて、前記検出面に垂直な方向に沿って前記線量低減フィルタを移動させる垂直方向移動量を決定し、
前記移動支持機構は、
前記垂直方向移動量に従って、前記方向に沿って前記線量低減フィルタを移動すること、
を特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記移動量決定部は、
前記X線管の焦点と前記検出面における中心位置との間の距離と前記焦点と前記線量低減フィルタとの間の距離と前記非低減通過部分の大きさと前記関心領域の大きさとに基づいて、前記垂直方向移動量を決定すること、
を特徴とする請求項2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記線量低減部分は、
前記検出面において前記部分領域を除く他の領域を覆う大きさを有すること、
を特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記移動支持機構は、
前記線量低減フィルタを前記X線照射野から退避可能に支持すること、
を特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記移動支持機構は、
前記線量低減フィルタを交換可能に固定する固定部をさらに具備すること、
を特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記関心領域の位置を、直交座標系における座標として入力する入力部をさらに具備し、
前記移動量決定部は、
前記入力された関心領域の位置を前記直交座標系から極座標系に変換することにより、前記極座標系における前記移動量を決定し、
前記移動支持機構は、
前記極座標系における前記移動量に従って前記線量低減フィルタを移動可能に支持すること、
を特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項8】
X線を発生するX線管と、
前記X線管から発生されたX線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器からの出力に基づいて、X線画像を発生する画像発生部と、
前記X線の線量を所定の割合で低減させて通過させる微低減通過部分と、前記微低減通過部分の周囲であって前記線量を低減させる線量低減部分とを有し、前記X線管の前面に設けられる線量低減フィルタと、
前記X線画像に操作者により設定された関心領域に対応する前記X線検出器における検出面上の部分領域に前記微低減通過部分を通過したX線を到達させるために、前記X線画像上の前記関心領域の位置に応じて、前記線量低減フィルタの移動量を決定する移動量決定部と、
前記移動量に応じて、前記X線管の前面におけるX線照射野内における前記微低減通過部分の位置を自在に移動可能に支持する移動支持機構と、
を具備することを特徴とするX線診断装置。
【請求項9】
前記線量低減フィルタにおいて、
前記線量低減部分は、前記線量低減フィルタの略中央において穴あき形状を有し、
前記非低減通過部分は、前記穴あき形状により前記略中央に設けられること、
を特徴とする請求項1乃至請求項7のうちいずれか一項に記載のX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線透視を実行可能なX線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線診断装置において、関心領域(Region Of Interest:以下ROIと呼ぶ)を除いた領域(以下、非ROIと呼ぶ)における不要なX線の被曝を低減させる方法として、鉛を使用した複数の羽根(以下、鉛羽根と呼ぶ)を用いる方法がある。このとき、X線の照射野のうち非ROIに対応する領域にX線を入射させないために、鉛羽根によりX線が遮蔽される。これにより、被検体に対する被曝量が低減される。また、被検体に対するX線透視において、ROIに対応する領域に穴を設けたフィルタが用いられることがある。このフィルタには、ROIの周囲の非関心領域に対応する領域に、X線を遮蔽する物質(例えば、鉛など)が設けられる。このフィルタは、関心領域の位置に応じて手動により移動される。
【0003】
しかしながら、図19の透視画像1に示すように、例えば、X線透視において、非ROIは、透視できない問題がある。例えば、鉛羽根を用いて非ROIに関するX線を遮蔽する場合、鉛羽根は任意の位置に移動することはできないため、ROIは、撮像視野の中央部分に限定される。このため、中央部分に被検体を移動させる必要性が生じるため、検査効率が低下する問題がある。
【0004】
上記問題を解消するために穴を有するフィルタを用いた場合、図19の透視画像2に示すように、操作者はROIの移動先を推測する必要がある。このため、診断効率の低下、操作者に対する負担の増加などの問題がある。また、上記問題を避けるために、図19に透視画像3に示すように、撮像視野全域に亘ってX線を照射すると、被検体に対する不要な被曝が増加するという問題がある。
【0005】
加えて、穴を有するフィルタは、X線照射野から自動的に退避させることができない。このため、フィルタの不使用時において、操作者は、フィルタをX線診断装置から取り外さなければならない問題がある。加えて、このフィルタの使用の度に、操作者は、フィルタをX線診断装置に装着しなければならない。これらのことから、例えば、X線透視における診断効率が低下する問題がある。
【0006】
また、X線診断装置に取り付けられたフィルタは、交換できない問題がある。これにより、フィルタの穴の径を変更できないため、ROIの大きさが変更できない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−212420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
目的は、非関心領域における被曝量を低減し、かつ関心領域の位置及び大きさに応じて、線量低減フィルタを移動可能なX線診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係るX線診断装置は、X線を発生するX線管と、前記X線管から発生されたX線を検出するX線検出器と、前記X線検出器からの出力に基づいて、X線画像を発生する画像発生部と、前記X線の線量を非低減で通過させる非低減通過部分と、前記非低減通過部分の周囲であって前記線量を低減させる線量低減部分とを有し、前記X線管の前面に設けられる線量低減フィルタと、前記X線画像に操作者により設定された関心領域に対応する前記X線検出器における検出面上の部分領域に前記非低減通過部分を通過したX線を到達させるために、前記X線画像上の前記関心領域の位置に応じて、前記線量低減フィルタの移動量を決定する移動量決定部と、前記移動量に応じて、前記X線管の前面におけるX線照射野内における前記非低減通過部分の位置を自在に移動可能に支持する移動支持機構と、を具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係り、線量低減フィルタの一例を示す図である。
図3図3は、本実施形態に係り、焦点フィルタ間距離がaである場合において、線量低減フィルタの大きさの一例を示す図である。
図4図4は、本実施形態に係り、正方形の線量低減フィルタにおいて、最小の大きさの一例を示す図である。
図5図5は、本実施形態に係り、円形の線量低減フィルタにおいて、最小の大きさの一例を示す図である。
図6図6は、本実施形態に係り、関心領域(ROI)の位置に応じて線量低減フィルタを移動させた一例を示す図である。
図7図7は、本実施形態に係り、X線照射野内に配置された線量低減フィルタを、X線照射野内からX線照射野外へ移動させた一例を示す図である。
図8図8は、本実施形態に係り、図8は、X線可動絞りの内部に設けられた線量低減フィルタと、移動支持機構との一例を示す斜視図である。
図9図9は、本実施形態に係り、図8の斜視図において、開口から管球焦点に向かう視線方向で、X線可動絞りにおける並進機構と回転機構とを示す図である。
図10図10は、本実施形態に係り、フィルタ移動処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、本実施形態の第1の変形例に係り、X線可動絞りの内部に設けられた線量低減フィルタと、移動支持機構との一例を示す斜視図である。
図12図12は、本実施形態の第1の変形例に係り、図11の斜視図において、開口から管球焦点に向かう視線方向で、X線可動絞りにおける並進機構と回転機構とSID並進機構とを示す図である。
図13図13は、本実施形態の第1の変形例に係り、フィルタ移動処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、本実施形態の第2の変形例に係り、X線可動絞りの内部に設けられた線量低減フィルタと、移動支持機構との一例を示す斜視図である。
図15図15は、本実施形態の第2の変形例に係り、図14の斜視図において、開口から管球焦点に向かう視線方向で、X線可動絞りにおける第1、第2並進機構を示す図である。
図16図16は、本実施形態の第2の変形例に係り、フィルタ移動処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図17図17は、本実施形態の第3の変形例に係り、X線可動絞りの内部に設けられた線量低減フィルタと、移動支持機構と、固定部との一例を示す斜視図である。
図18図18は、本実施形態の第3の変形例に係り、図17の斜視図において、開口から管球焦点に向かう視線方向で、X線可動絞りにおける並進機構と回転機構と固定部とを示す図である。
図19図19は、従来のX線透視画像の一例を示す図である。
図20図20は、本実施形態に係り、非低減透過部分の形状が四角形である一例を示す図である。
図21図21は、本実施形態に係り、非低減通過部分の形状が貫通構造である一例を示す図である。
図22図22は、本実施形態に係り、微低減通過部分の厚みが線量低減部分の厚みより薄い一例を示す図である。
図23図23は、本実施形態に係り、微低減通過部分の形状の他の一例を示す図である。
図24図24は、本実施形態に係り、移動量決定部における移動量の決定の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係るX線診断装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0012】
図1は、本実施形態に係るX線診断装置1の構成を示している。本X線診断装置1は、高電圧発生部11と、X線管13と、X線可動絞り15と、X線検出器21と、支持機構23と、支持機構駆動部25と、天板27と、画像発生部29と、インターフェース部31と、記憶部33と、表示部35と、入力部37と、制御部39と、移動量決定部41と、を有する。
【0013】
高電圧発生部11は、後述するX線管13に供給する管電流と、X線管13に印加する管電圧とを発生する。高電圧発生部11は、X線撮影およびX線透視にそれぞれ適した管電流をX線管13に供給し、X線撮影およびX線透視各々にそれぞれ適した管電圧をX線管13に印加する。具体的には、高電圧発生部11は、後述する制御部39による制御のもとで、X線撮影条件またはX線透視条件に応じた管電圧と管電流とを発生する。
【0014】
X線管13は、高電圧発生部11から供給された管電流と、高電圧発生部11により印加された管電圧とに基づいて、X線の焦点(以下、管球焦点と呼ぶ)からX線を発生する。発生されたX線は、X線管13におけるX線放射窓から放射される。以下、管球焦点を通り、後述するX線検出器21におけるX線の検出面に垂直な軸をZ軸とする。z軸に垂直であって、後述する天板27の長軸方向に平行な方向(以下、第1方向と呼ぶ)をx軸とする。z軸とx軸とに垂直な軸(天板27の短軸方向に平行な方向:以下、第2方向と呼ぶ)をy軸とする。
【0015】
X線可動絞り15は、線量低減フィルタ17と、移動支持機構19と、図示していない複数の絞り羽根とを有する。X線可動絞り15は、X線管13の前面であって、X線管13とX線検出器21との間に設けられる。具体的には、X線可動絞り15は、X線管13におけるX線放射窓の前面に設けられる。X線可動絞り15は、照射野限定器とも称される。X線可動絞り15は、X線管13で発生されたX線を、操作者が所望する撮影部位以外に不要な被爆をさせないために、最大口径の照射範囲(以下、最大照射範囲と呼ぶ)を所定の照射範囲に絞る。
【0016】
X線可動絞り15は、第1方向に移動可能な複数の第1絞り羽根と、第2方向に移動可能な複数の第2絞り羽根とを有する。第1、第2絞り羽根各々は、X線管13により発生されたX線を遮蔽する鉛により構成される。なお、X線可動絞り15は、被検体Pへの被曝線量の低減および画質の向上を目的として、X線の照射野(以下、X線照射野と呼ぶ)に挿入される複数のフィルタ(以下、付加フィルタと呼ぶ)を有していてもよい。付加フィルタは、X線フィルタ、濾過板、ビームフィルタ、線質フィルタ、またはビームスペクトグラムフィルタとも呼ばれる。
【0017】
線量低減フィルタ17は、X線の線量を非低減で通過させる非低減通過部分と、非低減通過部分の周囲であって線量を低減させる線量低減部分とを有する。図2は、線量低減フィルタ17の一例を示す図である。図2に示すように、非低減通過部分171は、線量低減フィルタ17の中央部分に設けられる。図2に示すように、線量低減部分173は、非低減通過部分171の周囲に設けられる。非低減通過部分171は、例えば、線量低減フィルタ17に設けられた穴である。線量低減部分173は、線量低減フィルタ17から非低減通過部分171を除いた領域に設けられる。線量低減部分173は、X線管13により発生されたX線の線量を、所定の線量まで低減する。
【0018】
線量低減フィルタ17は、例えば、図2で示すように正方形の形状を有する。なお、線量低減フィルタ17の形状は、円形、矩形であってもよい。以下、説明を簡単にするために、線量低減フィルタ17の形状は、正方形として説明する。非低減通過部分171の形状は、後述する画像発生部29により発生されるX線画像上に設定される関心領域(Region Of Interest:以下、ROIと呼ぶ)の形状と相似な形状を有する。
【0019】
線量低減部分173は、X線検出器21におけるX線の検出面において、非ROIに対応する領域に到達するX線を透過させる大きさを有する。図2において、非低減通過部分171の形状は、円形として示されている。このとき、ROIの形状は円形である。なお、非低減通過部分171の形状は、図2では円形となっているが、任意の形状(矩形、多角形、楕円など)であってもよい。図20は、非低減透過部分171の形状が四角形である一例を示す図である。また、非低減通過部分171の形状は、図21に示すように貫通構造に限定されない。
【0020】
例えば、図22に示すように、線量低減フィルタ17は、非低減通過部分171の代わりに、X線の線量を所定の割合で低減させて通過させる微低減通過部分172を有していてもよい。微低減通過部分172は、線量低減部分173の厚みより薄い厚みを有する。所定の割合とは、例えば、線量低減部分173の厚みに対する微低減通過部分172の厚みに対応する。線量低減フィルタ17は、微低減通過部分172と、微低減通過部分172の周囲であって、微低減通過部分172より線量を低減させる線量低減部分173とを有する。なお、微低減通過部分172の形状は、図23に示すような形状であってもよい。
【0021】
以下、説明を簡単にするために、非低減通過部分171の形状は、円形であるものとする。線量低減部分173は、X線検出器21におけるX線の検出面において非ROIに対応する領域を覆う大きさを有する
線量低減フィルタ17の大きさは、管球焦点と線量低減フィルタ17との間の距離(以下、焦点フィルタ間距離と呼ぶ)におけるX線照射野の直径D2と、非低減通過部分171の直径D1とにより決定される。図3は、焦点フィルタ間距離がaである場合において、線量低減フィルタ17の大きさの一例を示す図である。図3は、焦点フィルタ間距離aにおけるX線照射野の直径D2と、非低減通過部分171の直径D1とを示している。このとき、線量低減フィルタ17の大きさ、すなわち、線量低減フィルタ17における第1方向の幅(以下、第1幅W1と呼ぶ)と、線量低減フィルタ17における第2方向の幅(以下、第2幅W2と呼ぶ)とは、D2の2倍からD1を引いた長さ以上であって、X線可動絞り15の第1方向または第2方向のうち短い方の長さ未満である。
【0022】
正方形の線量低減フィルタ17において、最小の大きさは、(2×D2−D1)^2で規定される。このとき、W1=W2=2×D2−D1となる。図4は、正方形の線量低減フィルタ17において、最小の大きさの一例を示す図である。図4に示すように、第1幅W1と第2幅W2とは、焦点フィルタ間距離aにおけるX線照射野の直径D2の2倍から、非低減通過部分171の直径D1を差分した長さとなる。図5は、円形の線量低減フィルタ17において、最小の大きさの一例を示す図である。図5に示すように、第1幅W1と第2幅W2とは、焦点フィルタ間距離aにおけるX線照射野の直径D2の2倍から、非低減通過部分の直径D1を差分した長さとなる。
【0023】
本線量低減フィルタ17の大きさを上記大きさにすることにより、線量低減フィルタ17を非関心領域(以下、非ROI)に対応する検出面には、線量を低減したX線を到達させることができる。焦点フィルタ間距離が長くなると、線量低減フィルタ17の大きさ(寸法)を大きくする必要がある。このため、線量低減フィルタ17は、X線可動絞り15の内部など、焦点フィルタ間距離が小さくなる位置に設置することが好ましい。なお、線量低減フィルタ17は、X線可動絞り15とX線放射窓との間に設けられてもよい。このとき、線量低減フィルタ17の移動に関する移動支持機構19も、X線可動絞り15とX線放射窓との間に設けられる。
【0024】
移動支持機構19は、後述する入力部37を介した操作者の指示、撮影条件、透視条件などに従って、制御部39の制御により、第1、第2絞り羽根を移動させる。第1、第2絞り羽根の移動により、X線照射野は絞られる。例えば、第1絞り羽根は、移動支持機構19により、第1方向(x軸)に移動される。第2絞り羽根は、移動支持機構19により、第2方向(y軸)に移動される。
【0025】
移動支持機構19は、線量低減フィルタ17を移動可能に支持する。移動支持機構19は、後述する移動量決定部41により決定された移動量に従って、線量低減フィルタ17を移動させる。具体的には、移動支持機構19は、ROIの位置に応じて線量低減フィルタ17をxy面上で移動させる。図6は、ROIの位置に応じて線量低減フィルタ17を移動させた一例を示す図である。図6に示すように、線量低減フィルタ17は、ROIの位置に応じて移動される。
【0026】
また、移動支持機構19は、線量低減フィルタ17を、X線照射野から退避可能に支持する。具体的には、移動支持機構19は、線量低減フィルタ17をX線照射野から退避させる指示が操作者により入力部37を介して入力されたとき、線量低減フィルタ17をX線照射野内から退避させるために、X線照射野内からX線照射野外へ線量低減フィルタ17を移動する。図7は、X線照射野内に配置された線量低減フィルタ17を、X線照射野内からX線照射野外へ移動させた一例を示す図である。
【0027】
なお、移動支持機構19は、例えばX線透視において、X線画像上にROIが設定されると、X線照射野外からX線照射野内へ、線量低減フィルタ17を、ROIの位置に応じて移動することも可能である。
【0028】
移動支持機構19は、xy平面上で線量低減フィルタ17を移動させるとき、第1方向(x軸)、第2方向(y軸)とのうちいずれか一方の方向またはxy平面内において一つの方向に並進移動させる並進機構と、z軸を回転軸として線量低減フィルタ17を回転させる回転機構とを有する。以下、説明を簡単にするために、並進機構は、第1方向(x軸)に沿った移動機構であるものとする。以下、図8を用いて、具体的に説明する。
【0029】
図8は、X線可動絞り15の内部に設けられた線量低減フィルタ17と、移動支持機構19との一例を示す斜視図である。図8に示すように、移動支持機構19は、第1移動支持部191と、第1駆動部193と、第2移動支持部195と、第2駆動部197とを有する。
【0030】
第1移動支持部191は、線量低減フィルタ17を、例えば、第1方向(x軸)に沿って移動可能に支持する。第1駆動部193は、後述する移動量決定部41により決定された移動量に従って、第1移動支持部191を、第1方向(x軸)に沿って移動させる。第1駆動部193は、例えばモータである。以下、第1移動支持部191と第1駆動部193とをまとめて並進機構と呼ぶ。
【0031】
第2移動支持部195は、z軸を回転軸として、並進機構を回転可能に支持する。第2駆動部197は、後述する移動量決定部41により決定された移動量に従って、z軸を回転軸として並進機構を回転させる。第2駆動部197は、例えばモータである。以下、第2移動支持部195と第2駆動部197とをまとめて回転機構と呼ぶ。
【0032】
図9は、図8の斜視図において、開口から管球焦点に向かう視線方向で、X線可動絞り15における並進機構と回転機構とを示す図である。図9に示すように、線量低減フィルタ17は、並進機構により、X線照射野から退避することが可能である。
【0033】
X線検出器21は、X線管13から発生され、被検体Pを透過したX線を検出する。例えば、X線検出器21は、例えば、フラットパネルディテクタ(Flat Panel Detecter:以下、FPDと呼ぶ)である。FPD21は、複数の半導体検出素子を有する。半導体検出素子には、直接変換形と間接変換形とがある。直接変換形とは、入射X線を直接的に電気信号に変換する形式である。間接変換形とは、入射X線を蛍光体で光に変換し、その光を電気信号に変換する形式である。
【0034】
X線の入射に伴って複数の半導体検出素子で発生された電気信号は、図示していないアナログディジタル変換器(Analog to Digital converter:以下、A/D変換器と呼ぶ)に出力される。A/D変換器は、電気信号をディジタルデータに変換する。A/D変換器は、ディジタルデータを、図示していない前処理部に出力する。なお、X線検出器21として、イメージインテンシファイア(Imageintensifier)などが用いられてもよい。
【0035】
支持機構23は、X線管13と、X線可動絞り15と、X線検出器21とを移動可能に支持する。具体的には、支持機構23は、例えば、図示していないCアームとCアーム支持部とを有する。Cアームは、X線管13およびX線可動絞り15と、X線検出器21とを、互いに向き合うように搭載する。なお、Cアームの代わりにΩアームが用いられてもよい。Cアーム支持部は、そのC形状に沿う方向に、Cアームをスライド可能に支持する。また、Cアーム支持部は、CアームとCアーム支持器との接続部を中心として、C形状に沿う方向に直交する方向に回転可能にCアームを支持する。
【0036】
なお、Cアーム支持部は、後述する天板27の短軸方向と長軸方向とに平行移動可能にCアームを支持することも可能である。また、Cアームは、X線管13の管球焦点とX線検出器21におけるX線の検出面との距離(線源受像面間距離(Source Image Distance:以下、SIDと呼ぶ))を変更可能に、X線管13と、X線可動絞り15と、X線検出器21とを支持する。
【0037】
支持機構駆動部25は、後述する制御部39の制御のもとで、支持機構23を駆動する。具体的には、支持機構駆動部25は、制御部39からの制御信号に応じた駆動信号をCアーム支持部に供給して、CアームをC形状に沿う方向にスライド、C形状に沿う方向に直交する方向(尾頭方向(CRA)または頭尾方向(CAU))に回転させる。X線透視時およびX線撮影時においては、X線管13とX線検出器21との間に、天板27に載置された被検体Pが配置される。
【0038】
図示していない天板駆動部は、後述する制御部39の制御のもとで、天板27を駆動することにより、天板27を移動させる。具体的には、天板駆動部は、制御部39からの制御信号に基づいて、天板27の短軸方向または天板27の長軸方向に、天板27をスライドさせる。また、天板駆動部は、鉛直方向に関して、天板27を昇降する。加えて、天板駆動部は、長軸方向と短軸方向とのうち少なくとも一つの方向を回転軸として、天板27を傾けるために天板27を回転してもよい。
【0039】
図示していない前処理部は、X線検出器21から出力されたディジタルデータに対して、前処理を実行する。前処理とは、X線検出器21におけるチャンネル間の感度不均一の補正、および金属等のX線強吸収体による極端な信号の低下またはデータの脱落に関する補正等である。前処理されたディジタルデータは、後述する画像発生部29に出力される。
【0040】
画像発生部29は、X線撮影された後に前処理されたディジタルデータに基づいて、X線画像を発生する。画像発生部29は、透視位置でX線透視された後に前処理されたディジタルデータに基づいて、透視画像を発生する。以下、撮影画像と透視画像とをまとめてX線画像と呼ぶ。画像発生部29は、発生したX線画像を、後述する記憶部33および表示部35に出力する。
【0041】
インターフェース部31は、例えば、ネットワーク、図示していない外部記憶装置に関するインターフェースである。本X線診断装置1によって得られたX線画像等のデータおよび解析結果などは、インターフェース部31およびネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0042】
記憶部33は、画像発生部29で発生された種々のX線画像、本X線診断装置1の制御プログラム、診断プロトコル、後述する入力部37から送られてくる操作者の指示、撮影条件、透視条件などの各種データ群、インターフェース部31とネットワークとを介して送られてくる被検体Pのボリュームデータなどを記憶する。また、記憶部33は、X線画像上に設定されたROIの位置およびSIDなど記憶する。なお、記憶部33は、後述するフィルタ移動処理に関する制御プログラムを記憶してもよい。
【0043】
表示部35は、画像発生部29により発生されたX線画像を表示する。表示部35は、X線撮影における撮影条件、X線透視における透視条件、SID、X線撮影の撮影条件、X線透視の透視条件等を入力するための入力画面を表示する。
【0044】
入力部37は、ROI、SID、X線撮影の撮影条件、X線透視の透視条件等を入力する。具体的には、入力部37は、操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定を本X線診断装置1に取り込む。入力部37は、図示しないが、関心領域の設定などを行うためのトラックボール、X線撮影またはX線透視の開始の契機となるスイッチボタン、マウス、キーボード等を有する。入力部37は、表示画面上に表示されるカーソルの座標を検出し、検出した座標を後述する制御部39に出力する。なお、入力部37は、表示画面を覆うように設けられたタッチパネルでもよい。この場合、入力部37は、電磁誘導式、電磁歪式、感圧式等の座標読み取り原理でタッチ指示された座標を検出し、検出した座標を制御部39に出力する。
【0045】
入力部37は、X線画像上に入力されたROIの位置(直交座標系での座標)を、後述する移動量決定部41に出力する。入力部37は、線量低減フィルタ17をX線照射野から退避させる指示(以下、退避指示と呼ぶ)を入力する。入力部37は、退避指示を、移動支持機構19に出力する。入力部37は、X線照射野外からX線照射野内へ、線量低減フィルタ17を、移動させる指示(以下、フィルタ挿入指示と呼ぶ)を入力してもよい。入力部37は、フィルタ挿入指示を、移動支持機構19に出力する。
【0046】
制御部39は、図示していないCPU(Central Processing Unit)とメモリを備える。制御部39は、入力部37から送られてくる操作者の指示、撮影条件、透視条件などに従って、X線撮影よび透視を実行するために、本X線診断装置1における各部を制御する。
【0047】
移動量決定部41は、入力部37を介して入力されたROIに対応する検出面上の部分領域に非低減通過部分171を通過したX線を到達させるために、ROIの位置に基づいて、線量低減フィルタ17の移動量を決定する。移動量決定部41は、決定した移動量を、移動支持機構19に出力する。
【0048】
具体的には、移動量決定部41は、移動前のROIの位置の座標(以下、移動前ROI座標と呼ぶ)を、直交座標系から極座標系に変換する。次いで、移動量決定部41は、入力部37により入力された移動後のROIの位置の座標(以下、移動後ROI座標と呼ぶ)を、直交座標系から極座標系に変換する。移動量決定部41は、極座標系における移動前ROI座標と移動後ROI座標とに基づいて、移動量を決定する。
【0049】
図24は、移動量決定部41における上記移動量の決定の一例を示す図である。直交座標系において、移動前ROI座標と移動後ROI座標とが、直交座標系で入力される。移動量決定部41は、移動前ROI座標と移動後ROI座標とをそれぞれ直交座標系から極座標系へ変換する。具体的には、移動量決定部41は、直交座標系における座標を(x、y)、極座標系における座標を(r、θ)とすると、rを、(x^2+y^2)^(1/2)として計算する(r=(x^2+y^2)^(1/2))。x≠0のとき、移動量決定部41は、θを、arctan(y/x)として計算する(θ=arctan(y/x))。移動量決定部41は、x=0かつy≠0のとき、θを、arctan(x/y)として計算する(θ=arctan(x/y))。x=0かつy=0のとき、移動量決定部41は、θをゼロとする(θ=0)。
【0050】
以上の計算により、移動量決定部41は、直交座標系における移動前ROI座標と移動後ROI座標とを、極座標系で出力する。次いで、移動量決定部41は、計算した極座標系での移動前ROI座標と移動後ROI座標とに基づいて、極座標系での移動量(半径方向に沿った並進移動量および回転方向に沿った回転移動量)を決定する。移動量決定部41は、並進移動量と回転移動量とを、第1駆動部193と第2駆動部197とにそれぞれ出力する。並進移動量と回転移動量とにそれぞれ従って、第1駆動部193と第2駆動部197とは、線量低減フィルタ17を移動させる。
【0051】
なお、移動量の決定は、以下のように決定してもよい。移動量決定部41は、ROIの中心座標と、線量低減フィルタ17における非低減通過部分171の中心座標とに基づいて、xy平面における直交座標系において、第1方向の移動量(以下、第1移動量と呼ぶ)および第2方向の移動量(以下、第2移動量と呼ぶ)を決定する。
【0052】
移動量決定部41は、第1、第2移動量を、xy平面において直交座標系から極座標系に変換する。すなわち、移動量決定部41は、第1移動量と第2移動量とに基づいて、並進機構により線量低減フィルタ17を並進移動する移動量(以下、並進移動量と呼ぶ)と、回転機構により並進機構を回転させる移動量(以下、回転角度と呼ぶ)とを決定する。移動量決定部41は、並進移動量を、並進機構における第1駆動部193に出力する。移動量決定部41は、回転角度を、回転機構における第2駆動部197に出力する。
【0053】
(線量低減フィルタ移動機能)
線量低減フィルタ移動機能とは、X線画像上に設定されたROIの位置に基づいて決定された線量低減フィルタ17の移動量を用いて、線量低減フィルタ17を移動させる機能である。以下、線量低減フィルタ移動機能に関する処理(以下、フィルタ移動処理と呼ぶ)について説明する。フィルタ移動処理は、ROIの位置の入力毎に実行される。
【0054】
図10は、フィルタ移動処理の手順の一例を示すフローチャートである。
入力部37を介して直交座標系におけるROIの中心位置が入力される(ステップSa1)。ROIの中心の座標に基づいて、線量低減フィルタ17の移動量(第1、第2移動量)が決定される(ステップSa2)。移動量(第1、第2移動量)が、極座標系の移動量(並進移動量、回転角度)に変換される(ステップSa3)。極座標系の移動量(並進移動量、回転角度)に従って、線量低減フィルタ17が移動される(ステップSa4)。
【0055】
被検体Pに対して、X線透視が実行される(ステップSa5)。X線検出器21からの出力に基づいて、透視画像が発生される(ステップSa6)。発生された透視画像が、表示部35に表示される(ステップSa7)。ROIの位置の変更指示(ステップSa8)があれば、ステップSa1乃至ステップSa7の処理が繰り返される。
【0056】
(第1の変形例)
実施形態との相違は、実施形態における線量低減フィルタ17の移動に加えて、X線画像上に入力されたROIの大きさに基づいて、SIDに平行な方向(z軸)に沿って線量低減フィルタ17を移動させることにある。以下、説明を簡単にするために、非低減通過部分171とROIとは円形であるものとし、ROIの大きさ(直径)をROI径、非低減通過部分171の大きさ(直径)をD1とよぶものとする。
【0057】
入力部37は、X線画像上に入力されたROIの大きさを入力する。入力部37は、ROIの大きさを、移動量決定部41に出力する。
【0058】
移動量決定部41は、入力部37を介して入力されたROIの大きさ(ROI径)と、線量低減フィルタ17の移動前の焦点フィルタ間距離a(以下、移動前FFDと呼ぶ)と、SIDと、非低減通過部分171の大きさD1とに基づいて、検出面に垂直な方向(SIDに平行な方向(z軸))に沿って、線量低減フィルタ17を移動させる移動量(以下、垂直方向移動量と呼ぶ)を決定する。
【0059】
具体的には、移動量決定部41は、非低減通過部分171の大きさにSIDをかけた積をROI径で除した値から移動前FFDを差分した値を、垂直方向移動量として決定する。すなわち、移動量決定部41は、垂直方向移動量を、D1×SID/ROI径−移動前FFDにより計算する。この計算式によれば、垂直方向移動量が正のとき、線量低減フィルタ17は、検出面に向かって移動される。また、垂直方向移動量が負のとき、線量低減フィルタ17は、管球焦点に向かって移動される。移動量決定部41は、垂直方向移動量を、移動支持機構19の後述する第3駆動部に出力する。
【0060】
図11は、X線可動絞り15の内部に設けられた線量低減フィルタ17と、移動支持機構19との一例を示す斜視図である。図11に示すように、移動支持機構19は、第1移動支持部191と、第1駆動部193と、第2移動支持部195と、第2駆動部197と、第3移動支持部201と、第3駆動部203とを有する。
【0061】
第3移動支持部201は、回転機構を、SID(z軸)に沿って移動可能に支持する。第3駆動部203は、移動量決定部41により決定された垂直方向移動量に従って、第2移動支持部195を、SID(z軸)に沿って移動させる。第3駆動部203は、例えばモータである。以下、第3移動支持部201と第3駆動部203とをまとめてSID並進機構と呼ぶ。
【0062】
図12は、図11の斜視図において、開口から管球焦点に向かう視線方向で、X線可動絞り15における並進機構と回転機構とSID並進機構とを示す図である。図12に示すように、線量低減フィルタ17は、SID並進機構により、ROIの大きさに応じてSIDに沿って移動される。
【0063】
(線量低減フィルタ移動機能)
本変形例における線量低減フィルタ移動機能とは、X線画像上に設定されたROIの大きさに基づいて決定された垂直方向移動量を用いて、線量低減フィルタ17を移動させる機能である。以下、線量低減フィルタ移動機能に関する処理(以下、フィルタ移動処理と呼ぶ)について説明する。フィルタ移動処理は、ROIの大きさの入力毎に実行される。
【0064】
図13は、フィルタ移動処理の手順の一例を示すフローチャートである。
入力部37を介して直交座標系におけるROIの大きさが入力される(ステップSb1)。ROIの大きさに基づいて、SIDに沿った線量低減フィルタ17の移動量(垂直方向移動量が決定される(ステップSb2)。決定された垂直方向移動量に従って、回転機構とともに線量低減フィルタ17が移動される(ステップSb3)。
【0065】
被検体Pに対して、X線透視が実行される(ステップSb4)。X線検出器21からの出力に基づいて、透視画像が発生される(ステップSb5)。発生された透視画像が、表示部35に表示される(ステップSb6)。ROIの大きさの変更指示(ステップSb7)があれば、ステップSb1乃至ステップSb6の処理が繰り返される。
【0066】
(第2の変形例)
実施形態との相違は、第2移動支持部195が、y軸方向に沿って並進機構を移動可能に支持することにある。
【0067】
図14は、X線可動絞り15の内部に設けられた線量低減フィルタ17と、移動支持機構19との一例を示す斜視図である。図14に示すように、移動支持機構19は、第1移動支持部191と、第1駆動部193と、y軸に沿って並進機構を移動可能に支持する第2移動支持部195と、第2駆動部197とを有する。以下、第1移動支持部191と第1駆動部193とをまとめて、第1並進機構と呼ぶ。また、第2移動支持部195と第2駆動部197とをまとめて、第2並進機構と呼ぶ。
【0068】
図15は、図14の斜視図において、開口から管球焦点に向かう視線方向で、X線可動絞り15における第1、第2並進機構を示す図である。図15に示すように、線量低減フィルタ17は、第1、第2並進機構により、ROIの位置に応じてx軸およびy軸に沿って移動される。
【0069】
移動量決定部41は、ROIの中心座標と、線量低減フィルタにおける非低減通過部分171の中心座標とに基づいて、xy平面における直交座標系において、第1移動量および第2移動量を決定する。移動量決定部41は、第1移動量と第2移動量とを、第1駆動部193と、第2駆動部197とにそれぞれ出力する。
【0070】
第2移動支持部195は、第1並進機構を、y軸に沿って移動可能に支持する。第2駆動部197は、移動量決定部41により決定された第2移動量に従って、第1移動支持部191を、y軸に沿って移動させる。
【0071】
(線量低減フィルタ移動機能)
線量低減フィルタ移動機能とは、X線画像上に設定されたROIの位置に基づいて決定された線量低減フィルタ17の移動量を用いて、線量低減フィルタ17を移動させる機能である。以下、線量低減フィルタ移動機能に関する処理(以下、フィルタ移動処理と呼ぶ)について説明する。フィルタ移動処理は、ROIの位置の入力毎に実行される。
【0072】
図16は、フィルタ移動処理の手順の一例を示すフローチャートである。
入力部37を介して直交座標系におけるROIの中心位置が入力される(ステップSc1)。ROIの中心の座標に基づいて、線量低減フィルタ17の移動量(第1、第2移動量)が決定される(ステップSc2)。移動量(第1、第2移動量)に従って、線量低減フィルタ17が移動される(ステップSc3)。
【0073】
被検体Pに対して、X線透視が実行される(ステップSc4)。X線検出器21からの出力に基づいて、透視画像が発生される(ステップSc5)。発生された透視画像が、表示部35に表示される(ステップSc6)。ROIの位置の変更指示(ステップSc7)があれば、ステップSc1乃至ステップSc6の処理が繰り返される。
【0074】
(第3の変形例)
実施形態との相違は、X線可動絞り15において、線量低減フィルタ17を交換可能な構造を有することにある。
【0075】
図17は、X線可動絞り15の内部に設けられた線量低減フィルタ17と、移動支持機構19と、固定部199との一例を示す斜視図である。図18は、図17の斜視図において、開口から管球焦点に向かう視線方向で、X線可動絞り15における並進機構と回転機構と固定部199とを示す図である。
【0076】
図17図18に示すように、移動支持機構19は、線量低減フィルタ17を固定する固定部199を有する。固定部199は、線量低減フィルタ17を、移動支持機構19に交換可能に固定する。線量低減フィルタ17は、固定部199を取り外すことにより、第1移動支持部191から取り外される。径が異なる非低減通過部分171を有する他の線量低減フィルタは、第1移動支持部191に、固定部199を介して取り付けられる。すなわち、ROIの大きさ(径)に応じて、ROI径に対応する非低減通過部分171を有する線量低減フィルタ17は、第1移動支持部191に、固定部199を介して取り付けられる。
【0077】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態におけるX線診断装置1によれば、表示されたX線画像上に設定されたROIの位置及び大きさに基づいて決定された移動量を用いて、非低減通過部分171を通過したX線を検出面のROIに対応した領域に到達させるために、線量低減フィルタ17を移動させることができる。これにより、被検体PでのROIに関する部分領域には、非低減でX線を照射することができる。加えて、被検体Pでの非ROIに関する部分領域には、低減されたX線を照射することができる。
【0078】
これらのことから、本実施形態に係るX線診断装置1によれば、ROIの位置および大きさに応じて、被検体Pを移動させる必要がないため、検査効率が向上する。加えて、本X線診断装置1によれば、操作者はROIの移動先を推測する必要がないため、診断効率が向上し、操作者に対する負担が軽減される。また、本X線診断装置1によれば、被検体Pに対する不要な被を低減させることができる。さらに、本X線診断装置1によれば、線量低減フィルタ17を、必要に応じてX線照射野から自動的に退避させること、およびX線照射野外からX線照射野内に挿入することが可能となる。これにより、診断効率が向上し、操作者の負担が軽減される。さらに、本X線診断装置1に取り付けられた線量低減フィルタ17は、容易に交換することが可能となる。これにより、ROIの径に応じて、適した線量低減フィルタ17に交換することが可能となる。
【0079】
以上のことから、本X線診断装置1によれば、例えば、被検体Pに対するX線透視において、非ROIにおけるX線の線量を低減させて、ROIの観察とROI周辺部の非ROIとの観察が可能となる。加えて、ROI周辺部の被曝低減が可能となる。また、ROIに関して任意の位置および任意の大きさで、線量低減フィルタ17を使用できるため、線量低減フィルタ17の使用の効率を向上させることができる。さらに、線量低減フィルタ17の使用および不使用時において、入力部37を介した遠隔操作で、線量低減フィルタ17を、X線照射野からの退避またはX線照射野へ挿入できるため、診断効率が向上する。
【0080】
加えて、実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0081】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…X線診断装置、11…高電圧発生部、13…X線管、15…X線可動絞り、17…線量低減フィルタ、19…移動支持機構、21…X線検出器、23…支持機構、25…支持機構駆動部、27…天板、29…画像発生部、31…インターフェース部、33…記憶部、35…表示部、37…入力部、39…制御部、41…移動量決定部、171…非低減通過部分、172…微低減通過部分、173…線量低減部分、191…第1移動支持部、193…第1駆動部、195…第2移動支持部、197…第2駆動部、199…固定部、201…第3移動支持部、203…第3駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24