特許第6334855号(P6334855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334855
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】把持切断装置及び把持切断方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   E04G23/08 D
   E04G23/08 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-130917(P2013-130917)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2015-4238(P2015-4238A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】596105208
【氏名又は名称】第一カッター興業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503258867
【氏名又は名称】株式会社ナベカヰ
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】高治 一彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稔
(72)【発明者】
【氏名】菅田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢礼
(72)【発明者】
【氏名】安立 陽
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 龍一
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 暁久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸作
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−248102(JP,A)
【文献】 特開2003−225876(JP,A)
【文献】 特開2005−002688(JP,A)
【文献】 特開2010−269568(JP,A)
【文献】 特開平06−313365(JP,A)
【文献】 特開平10−140855(JP,A)
【文献】 実開昭61−199319(JP,U)
【文献】 特開2013−194424(JP,A)
【文献】 特開2014−069529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の爪部を有し、旋回・傾倒・伸縮可能な駆動アームの先端に傾倒可能に取付けられ、前記一対の爪部によって切断対象部材を把持する把持手段と、
ワイヤーソーを有し、前記把持手段と連結手段で連結されるとともに該把持手段にスライド可能に保持され、前記把持手段で把持された前記切断対象部材側へ前記ワイヤーソーをスライドさせながら該ワイヤーソーによって前記切断対象部材を切断する切断装置と、
を有する把持切断装置。
【請求項2】
前記連結手段は、前記把持手段が前記切断対象部材を把持した状態で、前記切断装置の切断方向を、前記切断対象部材の軸線と交差する方向とする請求項1に記載の把持切断装置。
【請求項3】
前記切断装置は、前記駆動アームの長手方向の先端側に前記連結手段で連結されている請求項1又は2に記載の把持切断装置。
【請求項4】
旋回・傾倒・伸縮可能な駆動アームの先端に傾倒可能に取付けられ、切断対象部材を把持する把持手段と、
前記把持手段と連結手段で連結され、前記把持手段で把持された前記切断対象部材を切断する切断装置と、
を有し、
前記把持手段の両側面に、前記連結手段で一対の前記切断装置が連結されている把持切断装置。
【請求項5】
旋回・傾倒・伸縮可能な駆動アームの先端に傾倒可能に取付けられ、切断対象部材を把持する把持手段と、
前記把持手段と連結手段で連結され、前記把持手段で把持された前記切断対象部材を切断する切断装置と、
を有し、
前記切断装置は、
前記連結手段と連結される連結部材と、
前記連結部材に取付けられたスライド機構と、
前記スライド機構にスライド可能に取付けられた枠部材と、
前記枠部材に固定され、前記切断対象部材を切断するワイヤーソーが走行可能に取り付けられたサブフレームと、
を有する把持切断装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の把持切断装置を用いて、切断対象部材を切断する把持切断方法であって、
駆動アームの先端に取付けた把持手段で前記切断対象部材を把持する工程と、
前記把持手段が把持した前記切断対象部材を、切断装置で切断する工程と、
を有する把持切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持切断装置、及び把持切断装置を使用した把持切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物躯体の解体において、高所や人が近づき難い場所等における鉄骨梁や鉄骨柱等の切断は、例えば、油圧タイプの駆動アームの先端に切断装置(圧砕機)を取り付け、圧砕機の挟み部で挟み切って(圧砕して)いた。
しかし、圧砕機は挟み部の寸法から、挟み切ることができる鉄骨梁や鉄骨柱の寸法に限界があり、外径寸法や断面積の大きな鉄骨梁や鉄骨柱等の圧砕は困難であった。このため、高所や人が近づき難い場所等において、外径寸法や断面積が大きな、鉄骨梁や鉄骨柱等を切断する切断装置が求められていた。外径寸法や断面積が大きな鉄骨梁や鉄骨柱等の切断には、ワイヤーソーを使用することができる。
ここに、ワイヤーソーを、人が近づき難い場所で使用する切断技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1の切断機は、ワイヤーソーを使用したコンクリート切断機を、ゴム製クローラ付架台の上に、水平方向に移動自在に取付けて鉛直部材を水平方向に切断し、ゴム製クローラ付架台の位置を、コンクリート切断機を取付けた状態で上下動させ切断位置を変える構成である。
この構成を適用すれば、大型のコンクリート構築物の周囲が不整地であっても、ワイヤーソーをコンクリート構築物に近づけ、任意の高さでコンクリート構築物を切断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−189502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1は、鉛直部材を水平に切断することはできるが、水平部材を縦方向に切断することはできない。
本発明は、上記事実に鑑み、高所や人が近づき難い場所等において、切断対象部材を把持し、把持した状態で水平方向及び縦方向のいずれにも切断できる把持切断装置、及び把持切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る把持切断装置は、旋回・傾倒・伸縮可能な駆動アームの先端に傾倒可能に取付けられ、切断対象部材を把持する把持手段と、前記把持手段と連結手段で連結され、前記把持手段で把持された前記切断対象部材を切断する切断装置と、を有することを特徴としている。
【0007】
第1態様に係る把持切断装置によれば、旋回・傾倒・伸縮可能な駆動アームの先端に、傾倒可能に取り付けられた把持手段が傾倒して、高所にある切断対象部材が水平部材又は鉛直部材であっても、把持することができる。把持手段には、連結手段で切断装置が連結されており、把持手段が切断対象部材を把持した状態で切断できる。
このため、切断された切断対象部材が落下するのを防止でき、切断装置を把持手段に連結することで、安定した状態で切断できる。
【0008】
第2態様に係る把持切断装置は、第1態様に係る把持切断装置において、前記連結手段は、前記把持手段が前記切断対象部材を把持した状態で、前記切断装置の切断方向を、前記切断対象部材の軸線と交差する方向とすることを特徴としている。
【0009】
第2態様に係る把持切断装置によれば、連結手段は、把持手段が把持した状態で、切断対象部材の軸線と交差する方向に切断装置を取付ける。これにより、切断装置が切断対象部材を、軸線と交差する方向に切断することができる。この結果、切断装置が切断対象部材を、最短の切断距離で切断することができる。
【0010】
第3態様に係る把持切断装置は、第1態様又は第2態様に係る把持切断装置において、前記切断装置は、前記駆動アームの長手方向の先端側に前記連結手段で連結されていることを特徴としている。
これにより、切断装置が、駆動アームの旋回・傾倒・伸縮動作の妨げとはならない。
【0011】
第4態様に係る把持切断装置は、第1態様又は第2態様に係る把持切断装置において、前記把持手段の両側面に、前記連結手段で一対の前記切断装置が連結されていることを特徴としている。
これにより、把持手段の両側において、2か所同時に切断対象部材を切断できる。
【0012】
第5態様に係る把持切断装置は、第1態様〜第4態様のいずれか1つに係る把持切断装置において、前記切断装置は、前記連結手段と連結される連結部材と、前記連結部材に取付けられたスライド機構と、前記スライド機構にスライド可能に取付けられた枠部材と、前記枠部材に固定され、前記切断対象部材を切断するワイヤーソーが走行可能に取り付けられたサブフレームと、を有することを特徴としている。
【0013】
第5態様に係る把持切断装置によれば、切断装置はワイヤーソーを備え、枠部材をスライド機構で切断対象部材の方向へスライドさせることでサブフレームが移動され、ワイヤーソーで切断対象部材を切断することができる。これにより、外径寸法や断面積の大きい部材であっても、ワイヤーソーのスライド距離を調整することで切断することができる。
【0014】
第6態様に係る把持切断方法は、第1態様第5態様のいずれか1つに係る把持切断装置を用いて、切断対象部材を切断する把持切断方法であって、駆動アームの先端に取付けた把持手段で前記切断対象部材を把持する工程と、前記把持手段が把持した前記切断対象部材を、切断装置で切断する工程と、を有することを特徴としている。
【0015】
第6態様に係る把持切断方法によれば、切断対象部材を把持する工程で、駆動アームの先端に取付けた把持手段が切断対象部材を把持し、切断装置で切断する工程において、把持手段が把持した切断対象部材が切断される。
これにより、把持切断装置で切断対象部材を切断することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記構成としてあるので、高所や人が近づき難い場所等において、切断対象部材を把持し、把持した状態で水平方向及び縦方向のいずれにも切断できる把持切断装置、及び把持切断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る把持切断装置の基本構成を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る把持切断装置の分解斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る把持切断装置における把持装置の基本構成を示す斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る把持切断装置における切断装置の基本構成を示す斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る把持切断装置の把持手段で梁を把持した状態を示す斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る把持切断装置の把持手段で柱を把持した状態を示す斜視図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る把持切断装置の把持手段で梁を把持した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1図6を用いて、本発明の第1実施形態に係る把持切断装置10について説明する。図1図2図5の各斜視図に示すように、把持切断装置10は、爪部30A、30Bを備えた把持手段としての圧砕機(ニブラ)12と、切断対象部材である鉄骨梁14をワイヤーソー28で切断する切断装置20と、圧砕機12と切断装置20を連結するアタッチメント18と、を有している。
【0019】
圧砕機12は、図3に示すように、中央基材部64と、中央基材部64の一方の端部に形成され、駆動アーム16(図5参照)の先端部と接合される接合部32と、中央基材部64の他方の端部に設けられた2枚の爪部30A、30Bと、対向して設けられた爪部30A、30Bを、同一平面上で開閉させる2つのダンパー34A、34Bを有している。
2枚の爪部30A、30Bの対向する端面は把持切断面とされ、把持切断面には、対称形に切歯部38A、38Bと、鉄骨梁14を両側から挟んで挟持する挟持部(突起部)40A、40Bが形成されている。
【0020】
爪部30A、30Bの一端(切歯部38A、38B側の端部)は、中央基材部64側に設けられたピン接合部36A、36Bでピン接合され、爪部30A、30の他端部は、ピン接合部42A、42Bで、ダンパー34A、34Bの一端とピン接合されている。ダンパー34A、34Bの他端は、中央基材部64と接合部32の接合位置でピン接合されている。これにより、ダンパー34A、34Bを矢印R1の方向へ縮めることで、爪部30A、30の先端を矢印P1の方向へ広げることができ、ダンパー34A、34Bを矢印R2の方向へ伸ばすことで、爪部30A、30の先端を矢印P2の方向へ縮めることができる。
この結果、爪部30A、30Bの対向する切歯部38A、38Bは、鉄骨梁14を両側から押し当てて切断することができる。また、突起部40A、40Bは、鉄骨梁14を両側から押し当てて把持することができる。本実施形態では、切歯部38A、38Bは、鉄骨梁14の切断には使用しない。
【0021】
ここに、圧砕機12は、旋回・傾倒・伸縮可能な駆動アーム16の先端と接合部32で傾倒可能に接合されている。これにより、圧砕機12は、駆動アーム16の旋回・傾倒・伸縮動作で、切断対象部材の切断位置まで移動させられる。また、圧砕機12は、駆動アーム16の操作により、鉄骨梁14を突起部40A、40B等で把持する。
ここに、駆動アーム16には、建設作業機械で広く使用されている、様々な 駆動アーム16を使用することができる。建設作業機械は、オペレータが操作する。
【0022】
圧砕機12の中央基材部64の一方の側面には、アタッチメント(連結手段)18が連結されている。
アタッチメント18は、図2に示すように、圧砕機12と接合される鋼板で形成された圧砕機接合板44と、切断装置20と接合されるチャンネル材等で形成された切断装置接合部材46と、圧砕機接合板44と切断装置接合部材46を連結するチャンネル材等で形成された連結部材45と、を有している。
圧砕機接合板44、切断装置接合部材46、及び連結部材45は、側面視が同じ構成の2セットを、所定の距離を開けて対向させた構成とされ、所定の距離を開けることで連結強度を高くしている。
圧砕機接合板44は、圧砕機12の中央基材部64の一方の側面64Aと連結され、切断装置接合部材46は、切断装置20のメインフレーム22に取付けられた連結プレート48と連結される。
【0023】
ここに、図5に示すように、切断装置20は、駆動アーム16の長手方向の先端側にアタッチメント18で連結されている。即ち、駆動アーム16の軸線J1を切断対象部材の軸線J2と一致させたとき、圧砕機12を挟んで、駆動アーム16の反対側に、アタッチメント18で連結されている。これにより、切断装置20が駆動アーム16の屈伸動作や回転動作の妨げとはならない。
また、図5に示すように、アタッチメント18は、圧砕機12が鉄骨梁14を把持した状態で、切断装置20の切断方向を、鉄骨梁14の軸線と交差する方向としている。これにより、鉄骨梁14を軸線と交差する方向に、最短の切断距離で切断することができる。
【0024】
次に、切断装置20について説明する。
図4に示すように、切断装置20は、メインフレーム22とサブフレーム26を有している。メインフレーム22は、アタッチメント18と連結される連結プレート48と、連結プレート48に固定されたスライド機構50と、スライド機構50にスライド可能に取付けられたメイン枠材24を備えている。メイン枠材24には、サブフレーム26が固定され、サブフレーム26には、鉄骨梁14を切断するワイヤーソー28が走行可能に取り付けられている。これにより、メインフレーム22のメイン枠材24を、鉄骨梁14の方向へスライドさせることで、ワイヤーソー28が走行可能に取り付けられたサブフレーム26を鉄骨梁14の方向へ移動させ、ワイヤーソー28で鉄骨梁14を切断することができる。このとき、スライド距離を鉄骨梁14より大きくすることで、外径寸法や断面積の大きい鉄骨梁14であっても、ワイヤーソー28で切断することができる。
【0025】
メイン枠体24は門形に形成され、メイン枠材24の平行な2本の部材間には、交差する方向へ、連結プレート48が渡されている。連結プレート48はチャンネル材で形成され、連結プレート48の一方の平面側には、両端部にスライド機構50が固定されている。スライド機構50には、メイン枠材24の門形の柱部を構成する部材が2本平行に挿入されている。
スライド機構50には駆動モータ付きのピニオンが設けられ、メイン枠体24にはピニオンと噛み合うラックが構成されている(図示せず)。これにより、ピニオンの回転方向を制御することで、メイン枠体24を連結プレート48に対して交差する方向(矢印V1の方向)へ移動させることができる。
連結プレート48のスライド機構50が取り付けられた面と反対側には、アタッチメント18の切断装置接合部材46が連結される。
【0026】
メインフレーム22の解放端側には、サブフレーム26が取付けられている。サブフレーム26は、門形のサブ部材52を有し、サブ部材52の平行な2本の枠材の固定された端部側が、メイン枠体24の開口端に取付けられている。これにより、サブ部材52はメイン枠体24と一体となって連結プレート48に対して矢印V1の方向へ移動させることができる。
サブ部材52の固定された端部側には、交差する方向の枠材54A、54Bが取付けられ、サブ部材52の平行な2本の枠材の、枠材54A、54Bと反対側は、開放端とされている。
【0027】
枠材54Aには、ワイヤーソー28を走行させるメインプーリー56、メインモータ58が取付けられている。また、枠材54Bには、張力切断用の補助プーリー60が設けられている。また、サブフレーム26の解放端部側は、中空鋼管で開成されたサブ部材52の内部に、鋼管製の伸縮部材53が、矢印V2の方向へスライド可能に挿入されている。伸縮部材53には、切断用の補助プーリー62が設けられている。ワイヤーソー28は、これらの各プーリーに走行可能に取り付けられている。これにより、鉄骨梁14を開放端の間に位置させて、開放端の間を走行するワイヤーソー28で鉄骨梁14を切断することができる。このとき、鉄骨梁14の梁成が大きい場合には、伸縮部材53を伸ばしておくことで、必要な切断寸法を確保することができる。なお、図示は省略するが、枠材54A、54Bの中央部分に伸縮部材を設けることで、鉄骨梁14の梁幅が大きい場合に、必要な切断幅を確保することができる。
【0028】
ワイヤーソー28は、メインモータ58を、例えば矢印S1の方向へ回転させ、メインプーリー56を矢印S1の方向へ回転させる。これにより、メインプーリー56に掛けられたワイヤーソー28を矢印S2の方向へ走行させることができる。
ここに、図示は省略するが、ワイヤーソー28の走行は、建設作業機械からの遠隔操作で行われる。このとき、ワイヤーソー28を駆動するメインプーリー56に設けられた電動モータの駆動力(負荷)は、遠隔操作する操作位置で、電流値により確認することができる。これにより、ワイヤーソー28を、常に適切な張力で走行させることができる。
また、映像入力用の監視カメラ装置や、音声入力用のマイクロフォンを、例えば、把持切断装置のアタッチメント18に取付け、これらのモニタ装置を作業位置に設ければ、モニタ装置で、ワイヤーソー28の切断状況を映像と音で確認できる。これにより、切断作業をより正確に行うことができる。
【0029】
この構成とすることにより、圧砕機12と切断装置20がアタッチメント18で連結され、回動可能な駆動アーム16で一体的に移動される。これにより、駆動アーム16の先端を、例えば、高所や人が近づき難い場所にある鉄骨梁14まで移動させることができる。また、駆動アーム16を旋回・傾倒・伸縮させることで、鉄骨梁14のみならず、後述する鉄骨柱66の切断にも対応させることができる。
このとき、圧砕機12で鉄骨梁14を把持し、把持された鉄骨梁14を切断装置20で遠隔操作して切断するので、切断された鉄骨梁14が落下するのを防止することができる。また、圧砕機12が把持した状態で梁14を切断するので、切断に伴う鉄骨梁14の振動を抑制して切断することができる。
【0030】
次に、図5を用いて、鉄骨梁14を切断する切断方法について説明する。
先ず、把持切断装置10を駆動アーム16に取付ける。具体的には、鉄骨梁14を把持する圧砕機12と、圧砕機12が把持した鉄骨梁14を切断する切断装置20をアタッチメント18で連結し、把持切断装置10を組み立てる(図1参照)。続いて、駆動アーム16の先端に、把持切断装置10を取付ける。
続いて、建設作業機械を操作し、駆動アーム16を旋回・傾倒・伸縮させ駆動アーム16の先端に取付けた圧砕機12で、鉄骨梁14を把持する。このとき、圧砕機12の爪部30A、30Bの内側にある、先端の突起部40A、40B等で、鉄骨梁14を挟んで把持する。
最後に、圧砕機12が鉄骨梁14を把持した状態で、ワイヤーソー28を走行させながら、切断装置20がメイン枠材24、及びサブ枠材52を下方(矢印P1の方向)へ移動させ、ワイヤーソー28で鉄骨梁14を縦方向に切断する。
【0031】
次に、図6を用いて、鉄骨柱66を切断する切断方法について説明する。
この場合も、鉄骨梁14の場合と同様に、圧砕機12と、圧砕機12が把持した鉄骨梁14を切断する切断装置20をアタッチメント18で連結し、把持切断装置10を準備する。続いて、駆動アーム16の先端に、把持切断装置10を取付ける。
続いて、駆動アーム16を旋回・傾倒・伸縮させ駆動アーム16の先端に取付けた圧砕機12で、鉄骨梁14を把持する。このとき、圧砕機12の爪部30A、30Bの内側にある、先端の突起部40A、40B等で、鉄骨柱66を挟んで把持する。
最後に、圧砕機12が鉄骨柱66を把持した状態で、ワイヤーソー28を走行させながら、切断装置20がメイン枠体24、及びサブ部材52を横方(矢印P2の方向)へ移動させ、ワイヤーソー28で鉄骨柱66を横方向に切断する。
【0032】
上述したように、本実施形態では、圧砕機12が駆動アーム16の先端に取付けられているので、駆動アーム16を旋回・傾倒・伸縮させることで、圧砕機12で鉄骨柱66又は鉄骨梁14のいずれも把持させることができる。また、圧砕機12が把持した状態で、切断装置20が鉄骨柱66又は鉄骨梁14を切断するので、鉄骨柱66又は鉄骨梁14の振動を抑制して切断することができる。更に、切断された鉄骨柱66又は鉄骨梁14が落下するのを防止することができる。
【0033】
また、切断装置20は、サブフレーム26を鉄骨柱66又は鉄骨梁14の方向へスライドさせながら、ワイヤーソー28で切断する。これにより、外径寸法や断面積の大きい鉄骨柱66又は鉄骨梁14であっても、スライド距離を切断対象部材より大きくすることで、ワイヤーソー28で切断することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、切断対象部材の例として鉄骨梁14、鉄骨柱66について説明した。しかし、これに限定されることはなく、例えば高層ビルの躯体部材や、有害物質等で汚染された建屋の躯体部材に適用してもよい。また、原子力発電所等の放射化、放射能に汚染された、又は有害物質等に汚染された鉄骨構造や鋼構造(S造)、 重量鉄骨構造、軽量鉄骨構造、鉄筋コンクリート構造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC造)、コンクリート充填鋼管構造(CFT造)等の構造物の切断や解体に適用してもよい。
更に、脆弱な構造(震災、経年劣化等)での鉄骨構造、鋼構造(S造)、重量鉄骨構造、軽量鉄骨構造、鉄筋コンクリート構造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC造)、コンクリート充填鋼管構造(CFT造)等の構造物の切断や解体に適用してもよい。これにより、高所又は、建設作業機械が切断箇所まで接近できない構造物の切断や解体を行うことができる。
【0035】
また、本実施形態では、把持手段の例として圧砕機12を用いて説明した。しかし、これに限定されることはなく、切歯部38A、38Bを備えていない把持部のみの形状等、切断対象部材を切断時に把持し、切断後の切断対象部材を保持する機能を備えた把持手段であれば、他の形状でもよい。
また、本実施形態では、切断装置による切断方向を鉄骨梁14の軸線J2に対し、鉛直方向としたが、これに限定されることはなく、例えば、軸線J2に対し斜めに切断してもよい。これにより、例えば、鉄骨梁14の切り残される部分を下側にして、斜めに切断することにより、切り取られた鉄骨梁14の落下を、切り残した鉄骨梁14で抑制できる。
また、鉄骨梁14の軸線J2が斜めであってもよい。即ち、水平部材を斜めに切断するのみでなく、傾斜している鉄骨梁14を斜めに切断することもできる。
【0036】
更に、本実施形態で説明した駆動アーム16は、先端に取付けた把持切断装置10を任意の位置に移動できるものであれば、いずれでもよい。例えば、既存の鉄骨切断機に取付けられた駆動アーム、油圧ショベルタイプ等の作業装置に取付けられた駆動アーム、超大型ビル解体専用機等の作業装置に取付けられた駆動アーム、又は移動式クレーンタイプ等の建設作業機械に取付けられた駆動アーム等の、建設作業機械で操作される駆動アームであればよい。
【0037】
(第2実施形態)
図7を用いて、本発明の第2実施形態に係る把持切断装置70について説明する。
把持切断装置70は、一対の切断装置20A、20Bを、圧砕機12の両側面に、圧砕機12を挟んで取付けた点において第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0038】
把持切断装置70は、一対の切断装置20A、20Bを、圧砕機12を挟んで、圧砕機12の中央基材部64の両側面に、アタッチメント18A、18Bで連結されている。
即ち、圧砕機12の中央基材部64の一方の側面64Aには、アタッチメント18Aの一端が連結され、アタッチメント18Aの他端には、切断装置20Aの連結プレート48が接続されている。また、圧砕機12の中央基材部64の、側面64Aと対向する他方の側面64Bには、アタッチメント18Bの一端が連結され、アタッチメント18Bの他端には、切断装置20Bの連結プレート48が接続されている。
ここに、アタッチメント18A、18Bは、第1実施形態で説明したアタッチメント18と同じ構成であり、切断装置20A、20Bは、第1実施形態で説明した切断装置20と同じ構成である。
【0039】
これにより、把持切断装置70は、鉄骨梁14を圧砕機12で把持した状態において、一対の切断装置20A、20Bにより、ワイヤーソー28をそれぞれ走行させて、圧砕機12の両側の鉄骨梁14を、同時に2か所で切断することができる。これにより、解体作業の効率を高めることができる。
また、図示は省略するが、鉄骨柱66においても同様に、鉄骨柱を圧砕機12で把持した状態において、切断装置20A、20Bにより、ワイヤーソー28をそれぞれ走行させて、圧砕機12の両側の柱を同時に切断することができる。他の構成は、第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【符号の説明】
【0040】
10、70 把持切断装置
12 圧砕機(把持手段)
14 梁(切断対象部材)
16 駆動アーム
18 アタッチメント(連結手段)
20 切断装置
22 メインフレーム(切断装置)
24 枠部材(切断装置)
26 サブフレーム(切断装置)
28 ワイヤーソー(切断装置)
48 連結プレート(連結部材、切断装置)
50 スライド機構(切断装置)
66 柱(切断対象部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7