(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ズレ防止手段は、前記支持部材及び前記天井板にそれぞれ貼り付けられた一対の前記シート状部材から成り、一方の前記シート状部材の貼り付け面とは反対側の面には、他方の前記シート状部材に噛み合う目粗し部が形成されている請求項1に記載の天井構造。
前記天井板は、複数枚の天井部材が積層された積層天井板であり、前記積層天井板の前記天井部材間には、前記天井部材同士を接着させる接着手段、又は、前記天井部材間の摩擦抵抗を増大させる摩擦増大部材が設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の天井構造。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1〜
図7を用いて第1実施形態に係る天井構造について説明する。
図1(A)の断面図、
図1(B)の断面図(
図1(A)のP部拡大図)に示すように、天井を構成する天井部材10は、建物の床スラブ(躯体)14から吊り下げられた吊りボルト18で、野縁受け30が支持され、野縁受け30に野縁16が固定され、野縁16に天井板12が固定された構成である。
ここに、野縁受け30は、ハンガー32で吊りボルト18と接合され、野縁16は、野縁受け30と直交する方向に配置され、図示しないクリップで、野縁受け30と接合されている。また、天井板12は、接着剤20を間に挟んで、ビス22で野縁16に固定されている。
【0021】
図1(B)に示すように、野縁16は、鋼製のチャンネル材で断面形状がU字状に形成されている。チャンネル材の底部には平面部16Fが形成され、平面部16Fで天井板12の上面と当接され、ビス22で固定される。平面部16Fの両端部からは、側部が立ち上げられ、側部の上端部16Eは、野縁16の解放された内側に折り曲げられている。
天井板12は石膏ボード製とされ、下方(矢印Uの方向)からねじ込まれたビス22で、野縁16に固定されている。ビス22の頭部22Hは、天井板12の下面12Sから突出しないよう、天井板12の内部までねじ込まれている。野縁16の平面部と天井板12の上面の間には、接着剤20が塗布されている。接着剤20は、野縁16の全幅、且つ全長に渡り、所定の厚さTeで塗布されている。
【0022】
接着剤20の塗布は、下記手順で行われる。
先ず、
図2(A)に示すように、天井下地施工後に野縁16に接着剤20を所定量塗布し、接着剤20が硬化する前に、石膏ボード12を、野縁16に押当ててビス22で固定する。このとき、接着剤20の塗布量は、石膏ボード12の幅方向、及び長さ方向に万遍なく塗布し、塗布した状態における厚さTsを2mm前後とするのが望ましい。
【0023】
続いて、
図2(B)に示すように、接着剤20が硬化する前に、ビス22を所定位置までねじ込む。これにより、石膏ボード12に鉛直上向の圧力を与えて野縁16に押し当て、石膏ボード12に野縁16を押し当てた状態で固定することができる。このとき、接着剤20の厚さはTeとされる。接着剤20は、十分な圧力を与えた状態で硬化させないと、接着剤20の内部に空隙が生じ、石膏ボード12との接合部に不陸が発生したり、強度不足が危惧されるためである。
【0024】
本実施形態では、ビス22をねじ込み、石膏ボード12と野縁16の距離を縮める(接着剤厚さTsから、厚さTeへ縮める)ことで、この圧力を確保することができる。
ビス22の取付け間隔aは、
図2(C)の平面図、
図2(D)の断面図に示すように、一般的な、石膏ボード12の天井に使用される、ビス留め付け間隔a(a=150〜200mm)で、必要な支圧力は十分に確保できる。このとき、ビス22は、接着剤20の一部20Sを、野縁16の側面の外側へ押し出すまで圧力を掛けることになる。この結果、野縁16の側面の外側へ押し出された接着剤20Sが、野縁16の側面と天井板12の上面の隅部で硬化して、野縁16の側面と天井板12の上面を接着させる。これにより、野縁16と天井板12をより強く一体化できる。
【0025】
上述したように、一定厚み以上(Ts=2mm程度)に接着剤20を塗布し、接着剤20が未硬化の段階で、天井板12の下面から野縁16へビス22をねじ込むことで、天井板12と野縁16の間の距離が縮められ、未硬化の接着剤20に圧力が掛かる。この状態で接着剤20を硬化させることにより、支圧力を受けた接着剤20は厚みがTeと小さくなり、接着剤20の一部20Sは、野縁16の側面へ押し出される。
この結果、強度は見込めるが変形能力は小さいくなる。しかし、野縁16の側面へ押し出された接着剤20Sは、十分な厚みを有しており、後述するように、変形に追従することが可能となり、天井板12と野縁16を強く接着できる。また、接合部強度のバラツキも小さくなる。なお、実際に施工する場合は、シールガン等の使用も考えられるため、接着剤20は、厚みTeの管理ではなく、塗布量管理を行うのが望ましい。シールガン等を使用する場合には、野縁16の中央部に接着剤20を盛り、塗布長さと使用量を管理するとよい。
【0026】
ここで、従来の天井構造と対比しながら、本実施形態の作用について説明する。
従来の天井部材は、
図3(A)に示すように、石膏ボード製の天井板12は、ビス22で野縁16に固定され、天井板12と野縁16の間には接着剤20は用いられていない。野縁16に固定(留め付けられた)ビス22の引抜き耐力は高く、問題は生じないように思われていた。
しかし、
図1(A)に示すように、地震時においては、地震動による慣性力、衝撃力が、天井部材10に矢印K方向に作用する。地震動が継続した場合には、
図3(B)に示すように、ビス22が、野縁16との接合部22Kを中心に、矢印Rの方向へ繰り返し振動する。この結果、ビス22の頭部22Hが、ビス22周囲の石膏ボード12を徐々に破損し、破損が進行する。
最悪のケースでは、
図3(C)に示すように、ビス22周囲の石膏ボード12が大きく破損され、破損された石膏ボード12の穴径d2が、ビス22の頭部22Hの径d1より大きくなる。この状態に至ると、石膏ボード12がビス22から抜け落ちる。
【0027】
これに対し、本実施形態の天井構造は、
図1(B)に示すように、天井板12と野縁16の間に接着剤20が塗布されており、天井板12と野縁16の間の接合強度を増している。この結果、地震動を受けても天井板12と野縁16の接合部が変形しづらくなり、石膏ボード12の破損が抑制され、天井板12と野縁16が外れにくくなる。更に、野縁16の側面へ押し出された接着剤20Sが、天井板12と野縁16が外れるのを抑制する。
【0028】
次に、接着剤20の、必要なせん断接着耐力について説明する。
目標性能としては、石膏ボード12が、地震動による座屈や、衝突時に生じるパルス的な加速度応答を受けても、野縁16と石膏ボード12の接着状態が保たれることとした。
【0029】
地震時の応答加速度は、過去の事例から、床スラブが約0.35G、天井部材が約31Gという値が把握されている。これから、床−天井間の加速度増幅率Rを算出すると、加速度増幅率Rは約100倍となる(R=31G/0.35G≒100)。なお、床スラブの応答加速度が約0.35Gという値は、超高層建物における事例であり、一般的な建物ではない。一般的な建物の事例としては、約1.0Gが把握されている。一般的な建物に展開するため、床スラブの応答加速度の値として約1.0Gを採用することとした。この結果、天井部材10の最大応答加速度は、1.0Gの100倍である100Gとなる。
【0030】
必要なせん断接着耐力は、下記手順で試算した。
野縁16は300mmピッチで配置し、野縁16の全幅であり、且つ全長に接着剤を塗布すると仮定する。石膏ボード12の重量を1枚当たり10kg/m
2とすれば、野縁16の単位長さ当たり3kg/mとなり、必要接着せん断耐力は、最大応答加速度が100Gであることから、約3.0kN/mとなる。
ここで、野縁幅を25mmとすると、必要なせん断接着強度Fは、下式となる。
F=3.0×1000/25/1000
=0.12N/mm
2
これは、天井の一部にパルス的に生じる加速度に対する過大な必要耐力である。これから、一般的に使用されている接着剤のせん断強度で十分、必要強度を満たすといえる。
【0031】
次に、本実施形態の効果検証について説明する。
効果検証は、先ず、従来の天井部材の最大耐力と最大変位を把握した。続いて、本実施形態の天井部材と従来の天井部材を、同じ試験方法で試験して、接着強度を比較した。試験においては、石膏ボードと野縁との接合部の部分試験体を作り、部分試験体を所定方向へ加力して、接着強度を測定した。試験体への加力方向は、石膏ボードの長手方向、短手方向、面外方向の3方向とし、加力時の最大耐力、最大変位等を測定した。
【0032】
図4に、短手方向へ加力する試験方法と試験結果を示す。
図4(A)〜
図3(D)に、試験体No1〜No4の平面図を示す。
図4(A)〜
図3(D)は、試験体No1〜No4を下方から見上げた状態の平面形状である。石膏ボード34、35、36、37は、いずれも、平面視において幅W1が225mm、長さL1が900mmとした。野縁26、28は、いずれも長さ900mmとし、石膏ボード34、35、36、37の長手方向へ配置し、ビス22で固定した。
【0033】
野縁26は、幅の狭いシングルタイプであり、野縁28は、野縁26より幅が広いダブルタイプである。野縁26の短手方向の位置は、いずれも、石膏ボード34、35、36、37の短手方向の幅Waが150mmの位置とした。
ビス22の使用本数は、
図4(A)〜
図4(C)においては6本とし、6本を両端面から距離b1(b1=75mm)開けて、ピッチa1(a1=150mm)で設けられている。
図4(D)においては、12本とし、12本のビス22を、上記と同じピッチで、石膏ボード37aと37bの接合部25の両側に設けている。
【0034】
図4(A)に示す試験体No1は、継ぎ目(ジョイント部)なしの石膏ボード34に、シングルタイプの野縁26を取り付けた構成である。
図4(B)に示す試験体No2は、2枚の石膏ボード35a、35bの短手同志を、長手方向の中央部の接合部24で突合せ(ジョイント部)、シングルタイプの野縁26を取り付けて、一体化させた構成である。
図4(C)に示す試験体No3は、継ぎ目(ジョイント部)なしの石膏ボード36に、ダブルタイプの野縁28を取り付けた構成である。
図4(D)に示す試験体No4は、2枚の石膏ボード37a、37bの長手部同志を、野縁位置の接合部25で突合せ(ジョイント部)、接合部25に、全長に渡りダブルタイプの野縁28を取り付けた構成である。
【0035】
試験は、石膏ボード34、35、36、37を、野縁受け方向(短手方向)へ加力し、野縁26、28の両端部で反力を受け、試験体が破損に至る最大耐力と最大変位を測定した。破損状況は、目視によって確認した。
図4(E)に試験結果を示す。最大耐力は、ジョイント部を有する試験体No2、No4が、試験体No1、No3に比して小さい傾向を示した。2枚の石膏ボードを付き付けた構成が、強度上の弱点となっているものと思われる。最大変位は、ダブルタイプの野縁28を取り付けた試験体No3が最も大きく、長手方向の接合部25を有する試験体No4が最も小さい値を示した。
【0036】
次に、
図5に、長手方向へ加力する試験方法と試験結果を示す。
図5(A)〜
図5(D)に試験体No5〜No8の平面形状を示す。石膏ボード40、41、42、43は、いずれも、平面視において幅W2が300mm、長さL2が900mmとした。野縁26、28は、長さ900mmとし、石膏ボード40、41、42、43の長手方向へ配置して、ビス22で固定した。野縁26は、シングルタイプの野縁であり、野縁28は、ダブルタイプの野縁である。野縁26の位置は、幅300mmを150mmと150mmに仕切る中央位置(Wa=150mm)とした。ビス22の使用本数は、
図5(A)〜
図5(C)については6本とし、中央部を150mmピッチとし、両端部を75mm開けた6本使用した。また、
図3(D)については、12本とし、12本のビス22を、上記と同じピッチで、石膏ボード37aと37bの接合部25の両側に設けている。
【0037】
図5(A)に示す試験体No5は、継ぎ目(ジョイント部)なしの石膏ボード40に、シングルタイプの野縁26を取り付けた構成である。
図5(B)に示す試験体No6は、2枚の石膏ボード41の短手同志を、長手方向の中央部の接合部24で突合せ(ジョイント部)、シングルタイプの野縁26を取り付けた構成である。
図5(C)に示す試験体No7は、継ぎ目(ジョイント部)なしの石膏ボード42に、ダブルタイプの野縁28を取り付けた構成である。
図5(D)に示す試験体No8は、2枚の石膏ボード43の長手部同志を、野縁28の位置の接合部25で突合せ(ジョイント部)、ジョイント部に、全長に渡りダブルタイプの野縁28を取り付けた構成である。
【0038】
試験は、石膏ボード40、41、42、43を、矢印Pで示す野縁方向(長手方向)へ加力し、野縁26、28の端部で長手方向の反力を受けた。破損状況は、目視によって確認した。
図5(E)に試験結果を示す。石膏ボード40、41、42、43は、野縁26、28の応力伝達の過程でビス22の周りの石膏ボードが先に破壊する結果を示した。即ち、ビス22の挙動で、石膏ボード40、41、42、43の削られる箇所が、座屈時の石膏ボード40、41、42、43の弱点となっている。
【0039】
最大耐力は、試験体No6の2枚の石膏ボード40、41、42、43の短手同志を、長手方向の中央部で突合せた構成が、最も小さい傾向を示し、ジョイント部が弱点となり、最大耐力が小さくなる傾向が見られた。全体的には、上述して
図4より、大きい傾向を示した。また、最大変位は、石膏ボード40、41、42、43によるバラツキが小さくなる傾向を示した。
なお、図示は省略するが、面外方向への加力試験を行い、石膏ボードの破壊を確認した。石膏ボードと野縁の接合部の耐力は、上述した
図4、
図5の結果より、更に小さい値であった。
【0040】
続いて、本実施形態の試験片の試験結果について説明する。
図6(A)の平面図に示すように、試験体50は、野縁52と石膏ボード54を、接着剤又はビス留めした試験体である。石膏ボード54は、厚さ12.5mm、幅W3=150mm、長さL3=300mmとし、野縁52はシングルタイプとし、長さL5は600mmとした。野縁52の両端部は、石膏ボード54から長さL4=150mm突出している。
【0041】
図6(B)に示すように、試験体50はNo1〜No6までの6種類とした。
No1の試験体は、野縁52と石膏ボード54をビスのみで固定した構成であり、No2の試験体は、野縁52と石膏ボード54をビス及び接着剤で固定した構成であり、No3〜No6の試験体は、野縁52と石膏ボード54を接着剤のみ(ビスなし)で固定した構成である。
【0042】
試験方法は、石膏ボード54を矢印Pの方向に両側から拘束し、拘束下状態で、野縁52に矢印Q方向の強制変位を与えた。強制変位は、振幅を、±2→±4→±6→±8→±10mmの順に段階的に大きくした。また、同じ振幅の強制変位を各3回(3サイクル)繰り返した。
ここに、野縁52と石膏ボード54を接着する接着剤は、厚み(塗布厚さ)管理はせずに塗布量管理とした。なお、接着剤は、厚み2mmで一様に塗布した場合、十分に塗布できているものとした。また、接着剤は野縁52に塗布し、その後石膏ボードを押し付ける方法で塗布した。また、ビスを併用する場合(No2)は、接着剤が固まる前にビス留めを行った。
【0043】
図7に結果を示す。
図7(A)は、試験体No1の結果であり、
図7(B)は、試験体No2の結果である。
図7(A)、
図7(B)は、いずれも横軸が変位(mm)で、縦軸が荷重(kN)である。
図7(A)の特性M1は、試験体No1の変位と荷重の関係を示しており、
図7(B)の特性M2は、試験体No2の変位と荷重の関係を示している。
【0044】
結果から、同じ変位量を発生させるのに、
図7(A)に比べ、
図7(B)は大きな荷重を要している。これにより、試験体No2は、試験体No1に比べ、耐力が高いことが確認された。これは、接着剤塗布の効果によりものといえる。
ここに、図からは判別しづらいが、試験体No2は、強制変位を3サイクル繰り返しても、石膏ボード54の脱落はなかった。一方、試験体No1は、強制変位を与えた試験サイクルの途中で、石膏ボード54が脱落した。
【0045】
なお、試験体No3〜試験体No6は、いずれも接着剤のみで固定され、ビスは使用されていない。試験結果の特性図の記載は省略するが、いずれも、強制変位を与えた試験サイクルの途中で、石膏ボード54が接合部から脱落した。
ここに、試験体No2において、石膏ボードが脱落しないのは、野縁52裏の接着剤は、強制変位量が2〜4mmの変位を加えた段階で破壊していた。しかし、その後、側面にはみ出た接着剤(
図1(B)参照)が変形に追従することで脱落を防止していることが分かった。また、接着剤の塗布量が、すり切り(試験体No3)や、シールガンによる施工(試験体No5)では、その変形能力にバラつきが出やすかった。
【0046】
以上、説明したように、
図1に示す本実施形態とすることにより、石膏ボード12が、ビス22と接着剤20によって野縁16に固定されるため、石膏ボード12と野縁16の接合部の水平強度と剛性が向上し、落下防止対策となる。
また、接着剤20の塗布においては、塗布量管理を行うことで接合部の変形能力も確保することが可能となる。また、ビス22を有効利用することによって、接着剤が硬化するまで石膏ボード12と野縁16を固定することが可能となる。また、鉛直方向の強度を向上させることが可能となる。
【0047】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る天井構造について、
図8を用いて説明する。
図8(A)は天井板12を上方から見下ろした平面図であり、
図8(B)は
図8(A)のX−X線断面図である。
本実施形態に係る天井部材44は、片面に接着剤46Aが塗布された片面テープ46を、野縁16の下面に貼り付けた点において第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0048】
天井板12は、石膏ボード製であり、天井板12の野縁16と接する面12Uは、化粧がされていない紙で構成されている。このため、天井板12の表面の紙と類似する紙46Bを用いて、紙46Bの片面に接着剤46Aを塗布した片面テープ46を作成し、野縁16の天井板12側の表面16Dに貼り付けている。
施行時には、天井板12を野縁にビス22で固定する前に、紙用の接着剤47を、片面テープ46の紙46Bと野縁16の表面16Dとの間に塗布しながら、天井板12を野縁16に取付けて行く。接着剤47は、第1実施形態で使用した、野縁16と天井板12を接着させる接着剤20より安価で、且つ硬化が早いため、安価に早く施工できる。
この結果、野縁16と天井板12が横方向に相対的にズレにくくなり、地震時においても、天井板12と野縁16が外れにくくなる。
【0049】
なお、片面テープ46と天井板12の間に塗布する接着剤47は、省略してもよい。これにより、接着力は低下するが、天井板12Uの表面紙と片面テープ46の紙46Bが直接接触し、多少なりとも、野縁16と天井板12の横方向の相対的なズレに対する抵抗力を高めることができる。
【0050】
また、他の応用例として、片面テープ46に替えて、図示しない両面テープを用いてもよい。このとき、両面テープは、天井板12と野縁16をビス22で留める前に、天井板12と野縁16のいずれかに貼りつけておく。これにより、両面テープが、天井板12と野縁16の間を接着し、天井板12と野縁16との接合面の相対的なズレを抑制することができる。
他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
【0051】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る天井構造について、
図9を用いて説明する。
図9(A)は天井板12を下方から見上げた平面図であり、
図9(B)は
図9(A)のX−X線断面図である。
本実施形態に係る天井部材64は、野縁66の天井板12側の表面66Bに目粗し(ザラメ)を設ける点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0052】
野縁66の表面66Bは、一般的にはメタルタッチで表面が滑らかに形成されており、摩擦抵抗力は小さい。このため、例えば、表面66Bに目粗し(ザラメ)加工し、目粗し部68を形成する事で、摩擦抵抗力を高めることができる。目粗し部68を天井板12と当接させることにより、目粗し部68が、天井板12の紙面に食い込んで噛み合い、摩擦抵抗力を高める効果が生じる。但し、ビス22の間の、ビス22から離れた範囲では、天井板12が自重で撓むため、目粗し効果は小さくなる。
【0053】
ここに、目粗し部68は、野縁66の製作時に、表面加工して設けるのが望ましい。
なお、野縁66の製作時に加工できない場合には、野縁66のビス22でのビス留め予定位置の周辺を、ヤスリやサンドペーパー等で目粗し加工して形成してもよい。更に、他の構成として、片面が目粗し加工された紙を、接着剤で貼り付ける方法や、目粗し加工された紙を有する片面テープを貼リ付ける方法でもよい。
これにより、ビス留めしている野縁66近辺において、目粗し部68が天井板12の紙面に食い込んで、噛み合い、摩擦抵抗力を高める効果が生じる。
他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
【0054】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係る天井構造について、
図10を用いて説明する。
図10(A)は天井材72の断面図であり、
図10(B)は天井板72を下方から見上げた平面図である。
本実施形態に係る天井部材70は、複数枚の天井部材が積層された積層天井板である点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0055】
積層天井板72は、3枚の天井板73、74、75を積層した構成であり、長ビス78で野縁16に固定されている。積層天井板72において、天井板73と天井板74の間には、天井板73と天井板74を接着させる接着剤76が塗布され、天井板74と天井板75の間には、天井板74と天井板75を接着させる接着剤76が、それぞれ塗布されている。
【0056】
積層天井板72をこのような構成とすることにより、従来の問題点を解消できる。即ち、従来の積層天井板は、ビスによる点タッチ部だけで接合されていたため、地震時には、面タッチ部であっても、天井板の重ね面に滑りが発生し、ビス自体がグラつき始め、天井板のビスとの当接部分が破壊を始める。この部分の破壊が進行すると、天井板の滑り挙動が大きくなり、最悪の場合には石膏ボードの落下や、バランスが悪くなった天井架構の挙動が更に大きくなり天井崩落等につながる可能性を有していた。しかし、積層天井板を効果的に一体化することで、以下に説明するように問題点を解消できる。
【0057】
即ち、天井板73、74、75が一体化され、天井板73、74、75の間の、横方向の相対的なズレに対する摩擦抵抗が増大する。この結果、野縁16と天井板73、74、75が横方向にズレにくくなり、地震時においても、長ビス78自体のグラつきが抑えられ、天井板73、74、75と野縁16が外れにくくなり、天井板73、74、75の部分破壊が抑制される。
本実施形態の積層天井板72は、このような機能を有することから、高い遮音効果が要求されるホール・裁判所・会議室等の天井に安心して使用することができる。
【0058】
ここに、接着剤は、一般的な接着剤で良いが、積層天井板の一体性(強度)を更に向上させるために、接着剤に繊維材を混入したり、接着作業前に繊維剤を吹付け、或はメッシュ材やガラスクロス等の表面の目が荒い補強材を天井板間に貼付けても良い。
【0059】
なお、天井板73、74、75の一体化は、必ずしも接着剤76でなくても良い。例えば、摩擦抵抗力の大きい紙や両面テープ等の摩擦増大部材でもよい。これらにより、天井板73、74、75の間の、横方向の相対的なズレに対する摩擦抵抗が増大し、野縁16と天井板73、74、75が横方向にズレにくくなり、地震時においても、天井板73、74、75と野縁16が外れにくくなる。
【0060】
また、積層天井板72の積層方法としては、本実施形態では、長ビス78で野縁16に固定する方法について説明したが、これに限定されることはなく、例えば、図示は省略するが、天井板73を、第1実施形態で説明した方法で野縁16にビス留めし、床面側に設ける2枚目以降の天井板74、75は、接着剤を塗布しながらタッカー(大型ホッチキスの針)留めとしてもよい。即ち、天井板74は、天井板73との間に接着剤を塗布してタッカーで固定し、天井板75は、天井板74との間に接着剤を塗布してタッカーで固定する。これにより天井板73、74、75が一体化される。
【0061】
また、本実施形態では、積層天井板72は、天井板が3枚の場合を例にとり説明した。しかし、この枚数に限定されることはなく、天井板が2枚でも、4枚以上であってもよい。本実施形態の他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
なお、本実施形態の積層天井板72は、第1実施形態のみでなく、第2実施形態、第3実施形態、更には、後述する第5実施形態と組み合わせて適用することができる。これにより、様々な天井に活用できる。
【0062】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態に係る天井構造について、
図11を用いて説明する。
本実施形態に係る天井部材60は、接着剤62を天井板12の上面12Uと、野縁16の側面16Sで形成される隅部に塗布する点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
図11に示すように、接着剤62は、天井板12の上面12Uと、野縁16の側面16Sで形成される隅部2箇所に塗布される。即ち、接着剤62は、野縁16の両側面16Sの全長に渡り、天井板12の上面12Uとの隅部に、野縁16の外側から、所定量の接着剤62が塗布される。接着剤は、野縁16の両側にバランス良く、等量を塗布するのが望ましい。
【0063】
これにより、接着剤62の硬化により、天井板12と野縁16が強固に接合される。この結果、地震時においても、天井板12と野縁16が外れにくくなる。
また、本実施形態では、既存の天井板12と野縁16を、容易に補強することができる。即ち、既存の天井部材を解体せずに、野縁16と天井板12の隅部に、接着剤62を塗布すればよいため、広く、既存の天井部材を補強することができる。
他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。