(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
<実施形態>
(原子層堆積装置の構成)
まず、
図1を参照して、本実施形態の原子層堆積装置の構成を説明する。
図1は、本実施形態の原子層堆積装置10Aの一例を示す概略構成図であり、
図2は原子層堆積装置10Aの平面図である。本実施形態の原子層堆積装置10Aは、原料ガスと反応ガスとを交互に供給し、基板S上に原子層単位で薄膜を形成する。その際、反応活性を高めるため、プラズマを発生させることもできる。本実施形態では、プラズマの発生に平行平板電極を用いるが、この方式に限定されない。特に、本実施形態では、常温・常圧で液体である原料を用いて薄膜を形成する。
本実施形態の原子層堆積装置10Aは、成膜容器20と、排気部40と、高周波電源50と、制御部52と、原料ガス供給部70と、反応ガス供給部80と、パージガス供給部90と、を備える。
【0027】
成膜容器20は、真空チャンバ30と、インジェクタ60と、を備える。
まず、真空チャンバ30について説明する。真空チャンバ30は、支持部32と、上側電極36と、下側電極38と、を備える。支持部32の上面には下側電極38が設けられている。ここで、下側電極38は接地されている。基板Sは、真空チャンバ30の下方から支持部32を貫通するリフトピン44によって支持される。リフトピン44は昇降機構46によって上下方向に昇降可能であり、リフトピン44が基板Sを支持した状態で昇降機構46がリフトピン44を下方向に移動させることにより、基板Sは下側電極38の上に載置される。
また、支持部32の内部には加熱ヒータ34が設けられており、加熱ヒータ34により基板Sの温度を調整することができる。例えば、プラズマALDの場合、基板Sを50〜200℃に加熱する。
【0028】
上側電極36は基板Sの上方に設けられ、高周波電源50と接続されている。高周波電源50が所定の周波数の高周波電流を供給することにより、上側電極36と下側電極38との間でプラズマが生成される。
また、高周波電源50は制御部52と接続されている。高周波電源50が上側電極36に高周波電流を供給するタイミングは、制御部52により制御される。
【0029】
制御部52には、膜厚計測装置56および膜質計測装置57が接続されている。
膜厚計測装置56は、基板S上に形成された薄膜の厚さを計測し、計測情報を制御部52へ入力する。膜厚の計測は、例えば反射率分光法(光干渉法)等により、基板の外周部の4点および中央部の1点において行うことができる。
膜質計測装置57は、基板S上に形成された薄膜の膜質を計測し、計測情報を制御部52へ入力する。膜質の計測は、基板の外周部の4点および中央部の1点において、例えば薄膜の屈折率を計測することにより行う。例えば、屈折率が高ければ緻密な薄膜であると評価できる。
なお、本実施形態では、膜厚計測装置56を真空チャンバ30の外部に設け、成膜後、真空チャンバ30から取り出された基板S上の薄膜の厚さを計測する。また、膜厚計測装置56を真空チャンバ30の内部に設け、真空チャンバ30内の基板S上に成膜された薄膜の厚さを計測してもよい。
制御部52は、制御信号を生成して、原料ガスバルブ78、反応ガスバルブ84、排気バルブ54A、54B、54C、54D、パージガスバルブ94に制御信号を供給する。
【0030】
次に、インジェクタ60について説明する。インジェクタ60は、原料ガスおよび反応ガスを真空チャンバ30内に供給する。
図3は
図2のインジェクタ60を矢印III方向から見た立面図である。インジェクタ60には、
図3に示すように、水平方向(
図1の紙面に垂直な方向)に細長い原料ガス供給口62と、水平方向に細長い反応ガス供給口64と、水平方向に細長いパージガス供給口66と、が形成されている。原料ガス供給部70から供給される原料ガスは、原料ガス供給口62を通って、成膜容器20の内部に供給される。また、反応ガス供給部80から供給される反応ガスは、反応ガス供給口64を通って、成膜容器20の内部に供給される。また、パージガス供給部90から供給される反応ガスは、パージガス供給口66を通って、成膜容器20の内部に供給される。
【0031】
排気部40は、排気管42を介して成膜容器20(真空チャンバ30)内に供給された原料ガス、反応ガス、パージガスを排気する。排気部40は、例えば、ドライポンプである。
排気管42は、真空チャンバ30に設けられた複数の排気口42a、42b、42c、42dと接続されている。排気管42は分岐していてもよいし、各排気口42a、42b、42c、42d毎にそれぞれ排気管42および排気部40を設けてもよい。
複数の排気口42a、42b、42c、42dは、真空チャンバ30のインジェクタ60とは反対側の端部に、水平方向に間隔を空けて直線状に配列されている。排気管42の排気口42a、42b、42c、42d側の端部には、それぞれ排気バルブ54A、54B、54C、54D(
図2参照)が設けられている。なお、
図1では、排気バルブ54A、54B、54C、54Dを1つの符号54で示す。
排気バルブ54A、54B、54C、54Dの開閉度および開閉のタイミングは、それぞれ制御部52により制御される。排気バルブ54A、54B、54C、54Dが、制御部52の制御信号に応じて所定の開度で開くことで、真空チャンバ30内のガスが排気管42を通じて排気部40により排気される。
排気部40が真空チャンバ30内を排気することにより、原料ガス、反応ガス、パージガスが真空チャンバ30内に供給されても、真空チャンバ30内の真空度は、10Pa〜100Pa程度に維持される。
【0032】
次に、原料ガス供給部70について説明する。原料ガス供給部70は、気化器71と、液体原料貯蔵部72と、液圧計74と、加圧部76と、原料ガスバルブ78と、を備える。
気化器71は、液体原料貯蔵部72に貯蔵された液体原料を気化させ、インジェクタ60に供給する原料ガスを生成する。
液体原料貯蔵部72は、薄膜の形成に用いられる液体原料を貯蔵する。液体原料貯蔵部72に貯蔵される液体原料は、例えば、TMA(トリメチルアルミニウム)、TDMAS(トリスジメチルアミノシラン)、TEMAZ(テトラキスエチルメチルアミノ・ジルコニウム)、TEMAH(テトラキスエチルメチルアミノ・ハフニウム)である。
【0033】
液圧計74は、液体原料貯蔵部72の圧力を検知する。液圧計74が検知した圧力のデータは、加圧部76へ送信される。
液圧計74が検知した圧力のデータに基づいて、加圧部76は、液体原料貯蔵部72内に貯蔵されている液体原料の圧力が一定となるように、液体原料を加圧する。加圧部76は、例えば、N
2ガスやArガスなどの不活性ガスを液体原料貯蔵部72内に導入することにより、液体原料を加圧する。
【0034】
原料ガスバルブ78は、気化器71により気化された原料ガス流量を調節してインジェクタ60に供給する。原料ガスバルブ78は、例えば、スウェジロック社製のALDバルブを用いることができる。
【0035】
また、原料ガスバルブ78は制御部52と接続されている。気化器71により気化された原料ガスの流量は、制御部52により原料ガスバルブ78の開度が調節されることで制御される。
【0036】
次に、反応ガス供給部80について説明する。反応ガス供給部80は、反応ガス貯蔵部82と、反応ガスバルブ84と、を備える。
反応ガス貯蔵部82は、薄膜の形成に用いられる反応ガスを貯蔵する。反応ガス貯蔵部82に貯蔵される反応ガスは、例えば、O
2ガス、N
2ガスである。
反応ガスバルブ84は、制御部52と接続されている。反応ガスバルブ84の開度は制御部52により制御される。反応ガスバルブ84は、原料ガスの成膜容器20内への供給が停止している間に、開き、反応ガスが成膜容器20内へ供給される。
【0037】
次に、パージガス供給部90について説明する。パージガス供給部90は、パージガス貯蔵部92と、パージガスバルブ94と、を備える。
パージガス貯蔵部92は、Arガスなどのパージガスを貯蔵する。パージガスバルブ94は、制御部52と接続されている。パージガスバルブ94の開度は制御部52により制御される。
なお、N
2ガスをパージガスとして用いてもよい。反応ガスとしてN
2ガスを用いる場合には、パージガスの代わりに反応ガスを用い、パージガス供給部90の代わりに反応ガス供給部80を用いてもよい。
以上が本実施形態の原子層堆積装置10Aの概略構成である。
【0038】
次に、排気バルブ54A、54B、54C、54Dの動作について、
図2を用いてさらに詳細に説明する。
排気管42が真空チャンバ30に接続される排気口が1つの場合、排気口の中央部の近傍ほど原料ガスおよび反応ガスの流量が多く、排気管42の中央部から遠いほど原料ガスおよび反応ガスの流量が少なくなっていた。このため、基板Sの全領域において原料ガスおよび反応ガスの流量を均一にすることができず、基板Sの排気口の中央部から遠い領域では膜厚が薄くなり、膜厚を均一にすることが困難であった。
【0039】
本実施形態においては、真空チャンバ30に複数の排気口42a、42b、42c、42dが水平方向に分散して設けられており、各排気口42a、42b、42c、42dに対応する排気管42にそれぞれ排気バルブ54A、54B、54C、54Dが設けられている。このため、排気バルブ54A、54B、54C、54Dの開度を調整することで、各排気口42a、42b、42c、42dから排気される原料ガスおよび反応ガスの流量を制御することができる。これにより、基板Sの全領域において原料ガスおよび反応ガスの流量を均一にすることができる。
【0040】
例えば、膜厚計測装置56により計測した膜厚が基板Sの中央部ほど厚く、外周部ほど薄い場合には、原料ガスおよび反応ガスの流量が基板Sの中央部ほど多く、外周部ほど少ないと推定される。この場合、水平方向に間隔を空けて直線状に配列された排気口42a、42b、42c、42dのうち、両端部の排気口42a、42dの開度を大きくし、中央部の排気口42b、42cの開度を小さくすることで、基板Sの外周部における原料ガスおよび反応ガスの流量を基板Sの中央部における原料ガスおよび反応ガスの流量と同量程度まで増やし、基板Sの全領域において原料ガスおよび反応ガスの流量を均一にすることができる。
また、膜厚計測装置56により計測した膜厚が基板Sの中央部ほど薄く、外周部ほど厚い場合には、両端部の排気口42a、42dの開度を小さくし、中央部の排気口42b、42cの開度を大きくすることで、基板Sの中央部における原料ガスおよび反応ガスの流量を基板Sの外周部における原料ガスおよび反応ガスの流量と同量程度まで増やし、基板Sの全領域において原料ガスおよび反応ガスの流量を均一にすることができる。
このように、膜厚計測装置56により計測された膜厚の基板Sにおける分布に応じて、排気バルブ54A、54B、54C、54Dの開度を調整することで、厚さの均一な膜を基板S上に形成することができる。
【0041】
また、膜質計測装置57により計測した膜質が基板Sの中央部ほど緻密(高屈折率)であり、外周部ほど疎(低屈折率)である場合には、原料ガスおよび反応ガスの流量が基板Sの中央部ほど多く、外周部ほど少ないと推定される。この場合、排気口42a、42b、42c、42dのうち、両端部の排気口42a、42dの開度を大きくし、中央部の排気口42b、42cの開度を小さくすることで、基板Sの外周部における原料ガスおよび反応ガスの流量を基板Sの中央部における原料ガスおよび反応ガスの流量と同量程度まで増やし、基板Sの全領域において原料ガスおよび反応ガスの流量を均一にすることができる。
また、膜質計測装置57により計測した膜質が基板Sの中央部ほど疎(低屈折率)であり、外周部ほど緻密(高屈折率)である場合には、両端部の排気口42a、42dの開度を小さくし、中央部の排気口42b、42cの開度を大きくすることで、基板Sの中央部における原料ガスおよび反応ガスの流量を基板Sの外周部における原料ガスおよび反応ガスの流量と同量程度まで増やし、基板Sの全領域において原料ガスおよび反応ガスの流量を均一にすることができる。
このように、膜質計測装置57により計測された膜質の基板Sにおける分布に応じて、排気バルブ54A、54B、54C、54Dの開度を調整することで、均一な膜質の薄膜を基板S上に形成することができる。
【0042】
(原子層堆積方法)
次に、
図4、
図5を参照して、本実施形態の原子層堆積装置10Aを用いた原子層堆積法について説明する。
図4は、本実施形態の原子層堆積方法の1サイクルの一例を示すフローチャートである。また、
図5(a)〜(d)は、基板Sの上に薄膜が形成される工程を示す図である。
【0043】
まず、原料ガス供給部70が成膜容器20の内部に原料ガスを供給する(ステップS101)。
ステップS101において、液圧計74は、液体原料貯蔵部72の圧力を検知し、液圧計74が検知した圧力のデータに基づいて、液体原料貯蔵部72内に貯蔵されている液体原料の圧力が一定となるように、加圧部76が液体原料を加圧する。そのため、原料ガスバルブ78には液体原料貯蔵部72から一定の圧力で液体原料が供給される。
【0044】
液体原料貯蔵部72から供給された液体原料を気化器71が気化し、制御部52によって制御されるタイミングで、原料ガス供給口62から成膜容器20の内部に原料ガス110が供給される。このとき、基板Sの全領域において原料ガス110の流量が均一となるように、排気バルブ54A、54B、54C、54Dの開度を調節し、排気部40が成膜容器20の内部の気体を排気する。
図5(a)に示されるように、ステップS101によって、成膜容器20の内部に原料ガス110が供給され、基板Sの上に原料ガス110が吸着して、吸着層102が形成される。
【0045】
次に、パージガス供給部90が、成膜容器20の内部にパージガスを供給する(ステップS102)。制御部52は、パージガスバルブ94を開く制御信号を送り、パージガス貯蔵部92から、成膜容器20の内部にパージガス112を供給する。例えば、パージガスバルブ94を0.1秒間開き、成膜容器20の内部にパージガス112を供給する。また、排気部40が、成膜容器20の内部の原料ガス110やパージガス112を排気する。排気部40は、例えば、2秒間、成膜容器20の内部の原料ガス110やパージガス112を排気する。このとき、基板Sの全領域において原料ガス110の流量が均一となるように、排気バルブ54A、54B、54C、54Dの開度を調節し、排気部40が成膜容器20の内部の気体を排気する。
図5(b)に示されるように、ステップS102によって、成膜容器20の内部にパージガス112が供給され、基板Sの上に吸着していない原料ガス110が成膜容器20からパージされる。なお、パージガス112は、原料ガス110が供給されるとき、同時に供給されてもよい。
【0046】
次に、反応ガス供給部80が、成膜容器20の内部に反応ガスを供給する(ステップS103)。制御部52によって制御されるタイミングによって、反応ガスバルブ84が開放され、反応ガス供給口64から成膜容器20の内部に反応ガス114が供給される。反応ガス供給部80は、例えば、1秒間、成膜容器20の内部に反応ガス114を供給する。このとき、基板Sの全領域において反応ガス114の流量が均一となるように、排気バルブ54A、54B、54C、54Dの開度を調節し、排気部40が成膜容器20の内部の気体を排気する。
図5(c)に示されるように、ステップS103によって、成膜容器20の内部に反応ガス114が供給される。
【0047】
また、高周波電源50が上側電極36に所定の周波数の高周波電流を供給し、上側電極36と下側電極38との間でプラズマを発生させる(ステップS104)。高周波電源50は、例えば、0.2秒間、反応ガス114のプラズマを発生させる。高周波電源50が反応ガス114のプラズマを発生させることにより、反応ガス114が吸着層102と反応し、薄膜層104が形成される。
【0048】
なお、高周波電源50が反応ガス114のプラズマを発生させるタイミングは、反応ガス供給部80が成膜容器20の内部に反応ガス114を供給するタイミングと同時でもよい。
また、プラズマを発生させることなく、反応ガス114が吸着層102と反応する場合、ステップS104は省略することができる。この場合、反応ガス114が吸着層102と十分に反応するよう、加熱ヒータ34が基板Sを200〜400℃に加熱する(熱ALD)。
【0049】
次に、パージガス供給部90が、成膜容器20の内部にパージガス112を供給する(ステップS105)。パージガス供給部90は、例えば、0.1秒間、成膜容器20の内部にパージガス112を供給する。また、排気部40が、成膜容器20の内部の反応ガス114やパージガス112を排気する。このとき、基板Sの全領域において反応ガス114の流量が均一となるように、排気バルブ54A、54B、54C、54Dの開度を調節し、排気部40が成膜容器20の内部の気体を排気する。
図5(d)に示されるように、ステップS105によって、成膜容器20の内部にパージガス112が供給され、反応ガス114が成膜容器20からパージされる。
【0050】
以上説明したステップS101〜S105により、基板Sの上に一原子層分の薄膜層104が形成される。以下、ステップS101〜S105を繰り返すことにより、所望の膜厚の薄膜層104を形成することができる。
なお、ステップS101〜S105を所定回数繰り返すごとに膜厚計測装置56により膜厚を計測し、排気バルブ54A、54B、54C、54Dの開度を調節してもよい。これにより、基板Sの全領域において均一な厚さの膜を形成することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の原子層堆積装置10Aでは、真空チャンバ30に複数の排気口42a、42b、42c、42dが水平方向に分散して設けられており、各排気口42a、42b、42c、42dに対応する排気管42にそれぞれ排気バルブ54A、54B、54C、54Dが設けられている。このため、排気バルブ54A、54B、54C、54Dの開度を調整することで、排気口42a、42b、42c、42dから排気される原料ガスおよび反応ガスの流量を制御することができる。これにより、基板Sの全領域において原料ガスおよび反応ガスの流量を均一にすることができる。
なお、上記実施形態においては、排気バルブ54A、54B、54C、54Dの開度をそれぞれ調節することで各排気口42a、42b、42c、42dからの排気量を調整する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、排気バルブ54A、54B、54C、54Dの開時間を調整することで各排気口42a、42b、42c、42dからの排気量を調整してもよい。
【0052】
<変形例>
図6は変形例に係る原子層堆積装置10Bを示す
図2と同様の平面図である。なお、上記実施形態と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
本変形例においては、原料ガス、反応ガスおよびパージガスを真空チャンバ30に供給する複数のインジェクタ60A、60B、60C、60Dが、水平方向に間隔を空けて直線状に配列されている。インジェクタ60A、60B、60C、60Dには、それぞれ原料ガス、反応ガスまたはパージガスを供給する配管が接続されている。この配管は分岐していてもよいし、インジェクタ60A、60B、60C、60Dにそれぞれ設けてもよい。
【0053】
インジェクタ60Aに原料ガス、反応ガス、パージガスを供給する各配管には、原料ガスバルブ78A、反応ガスバルブ84A、パージガスバルブ94Aが設けられている。インジェクタ60Bに原料ガス、反応ガス、パージガスを供給する各配管には、原料ガスバルブ78B、反応ガスバルブ84B、パージガスバルブ94Bが設けられている。インジェクタ60Cに原料ガス、反応ガス、パージガスを供給する各配管には、原料ガスバルブ78C、反応ガスバルブ84C、パージガスバルブ94Cが設けられている。インジェクタ60Dに原料ガス、反応ガス、パージガスを供給する各配管には、原料ガスバルブ78D、反応ガスバルブ84D、パージガスバルブ94Dが設けられている。
【0054】
図7は
図6のインジェクタ60A、60B、60C、60Dを矢印VII方向から見た立面図である。
図7に示すように、各インジェクタ60A、60B、60C、60Dには、
図3に示すように、水平方向(
図1の紙面に垂直な方向)に細長い原料ガス供給口62と、水平方向に細長い反応ガス供給口64と、水平方向に細長いパージガス供給口66と、が形成されている。
【0055】
本変形例においては、原料ガスバルブ78A、78B、78C、78Dの開度を調整することで、各原料ガスバルブ78A、78B、78C、78Dから供給される原料ガスの流量を制御することができる。
例えば、膜厚計測装置56により計測した膜厚が基板Sの中央部ほど厚く、外周部ほど薄い場合や、膜質計測装置57により計測した膜質が基板Sの中央部ほど緻密(高屈折率)であり、外周部ほど疎(低屈折率)である場合には、原料ガスおよび反応ガスの流量が基板Sの中央部ほど多く、外周部ほど少ないと推定される。
この場合、水平方向に間隔を空けて直線状に配列されたインジェクタ60A、60B、60C、60Dに原料ガスを供給する原料ガスバルブ78A、78B、78C、78Dのうち、両端部のインジェクタ60A、60Dに原料ガスを供給する原料ガスバルブ78A、78Dの開度を大きくし、中央部のインジェクタ60B、60Cに原料ガスを供給する原料ガスバルブ78B、78Cの開度を小さくすることで、基板Sの外周部における原料ガスの流量を基板Sの中央部における原料ガスの流量と同量程度まで増やし、基板Sの全領域において原料ガスの流量を均一にすることができる。
【0056】
また、反応ガスバルブ84A、84B、84C、84Dの開度を調整することで、各反応ガスバルブ84A、84B、84C、84Dから供給される反応ガスの流量を制御することができる。
例えば、水平方向に間隔を空けて直線状に配列されたインジェクタ60A、60B、60C、60Dに反応ガスを供給する反応ガスバルブ84A、84B、84C、84Dのうち、両端部のインジェクタ60A、60Dに反応ガスを供給する反応ガスバルブ84A、84Dの開度を大きくし、中央部のインジェクタ60B、60Cに反応ガスを供給する反応ガスバルブ84B、84Cの開度を小さくすることで、基板Sの外周部における反応ガスの流量を基板Sの中央部における原料ガスの流量と同量程度まで増やし、基板Sの全領域において反応ガスの流量を均一にすることができる。
【0057】
さらに、パージガスバルブ94A、94B、94C、94Dの開度を調整することで、基板Sの全領域において原料ガスおよび反応ガスの滞留時間を均一にすることができる。
例えば、水平方向に間隔を空けて直線状に配列されたインジェクタ60A、60B、60C、60Dにパージガスを供給するパージガスバルブ94A、94B、94C、94Dのうち、中央部のインジェクタ60B、60Cにパージガスを供給するパージガスバルブ94B、94Cの開度を大きくし、両端部のインジェクタ60A、60Dにパージガスを供給するパージガスバルブ94A、94Dの開度を小さくすることで、基板Sの外周部における原料ガスおよび反応ガスの滞留時間を基板Sの中央部における原料ガスおよび反応ガスの滞留時間と同程度まで長くし、基板Sの全領域において均一な厚さの膜を形成することができる。
【0058】
このように、膜厚計測装置56により計測された膜厚の基板Sにおける分布に応じて、原料ガスバルブ78A、78B、78C、78D、反応ガスバルブ84A、84B、84C、84D、パージガスバルブ94A、94B、94C、94D、排気バルブ54A、54B、54C、54Dの開度を調整することで、厚さの均一な膜を基板S上に形成することができる。
【0059】
なお、上記実施形態においては、原料ガスバルブ78A、78B、78C、78Dの開度をそれぞれ調節することで各インジェクタ60A、60B、60C、60Dからの原料ガスの供給量を調整する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、原料ガスバルブ78A、78B、78C、78Dの開時間を調整することで各インジェクタ60A、60B、60C、60Dからの原料ガスの供給量を調整してもよい。
【0060】
また、上記実施形態においては、反応ガスバルブ84A、84B、84C、84Dの開度をそれぞれ調節することで各インジェクタ60A、60B、60C、60Dからの反応ガスの供給量を調整する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、反応ガスバルブ84A、84B、84C、84Dの開時間を調整することで各インジェクタ60A、60B、60C、60Dからの反応ガスの供給量を調整してもよい。
【0061】
また、上記実施形態においては、パージガスバルブ94A、94B、94C、94Dの開度をそれぞれ調節することで各インジェクタ60A、60B、60C、60Dからのパージガスの供給量を調整する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、パージガスバルブ94A、94B、94C、94Dの開時間を調整することで各インジェクタ60A、60B、60C、60Dからのパージガスの供給量を調整してもよい。
【0062】
なお、原料ガス、反応ガス、パージガスの供給口の数は、排気口の数と異なっていてもよいが、供給口の数と排気口の数は同数であることが好ましい。供給口の数と排気口の数が同数であれば、供給量と排気量の調整を同期させて行うことができるためである。
また、供給口と排気口は、
図6に示すように、間に基板Sを挟んで対向するように設けられていることが好ましい。供給口と排気口を対向させることで、供給口から排気口に向かって基板S上を流れる原料ガス流、反応ガス流、パージガス流が層流となり、乱流の発生を防ぐことができるからである。
【0063】
<実施例>
図6に示すのと同様に、4個のインジェクタ60A、60B、60C、60Dおよび4個の排気口42a、42b、42c、42dを有する成膜装置を用いて、1100mm×1300mmのG5ガラス基板に、AlONの薄膜を形成した。液体原料(Al源)としてTMA(トリメチルアルミニウム)、反応ガスとして酸素および窒素を用いた。
原料ガスを供給する際に、制御信号のパルス長を調整することで、原料ガスバルブ78A、78Dの開時間を0.5秒、原料ガスバルブ78B、78Cの開時間を0.1秒とした。また、反応ガスを供給する際に、制御信号のパルス長を調整することで、いずれの反応ガスバルブ84A、84B、84C、84Dの開時間も1秒とした。
排気バルブ54A、54B、54C、54Dの開度はいずれも100%(全開)とした。
図4に示すのと同様のサイクルを600回繰り返すことで、AlONの薄膜を形成した。反射率分光法により、基板の外周部の4点および中央部の1点において膜厚を計測したところ、平均膜厚は100nmであり、バラツキは±4%であった。
【0064】
<比較例>
1個のインジェクタおよび1個の排気口のみを有する成膜装置を用いて、1100mm×1300mmのG5ガラス基板に、AlONの薄膜を形成した。液体原料(Al源)としてTMA(トリメチルアルミニウム)、反応ガスとして酸素および窒素を用いた。
原料ガスおよび反応ガスを供給する際に、制御信号のパルス長を調整することで、原料ガスバルブの開時間を0.3秒とした。反応ガスバルブの開時間を1秒とした。排気バルブの開度は100%(全開)とした。
図4に示すのと同様のサイクルを600回繰り返すことで、AlONの薄膜を形成した。反射率分光法により、基板の外周部の4点および中央部の1点において膜厚を計測したところ、平均膜厚は100nmであり、バラツキは±15%であった。
【0065】
以上、本発明の原子層堆積装置および原子層堆積方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
例えば、上記実施形態および変形例においては、4個の排気バルブ54A、54B、54C、54Dを用いる場合について説明したが、本発明はこれに限らず、2個以上の任意の数の排気バルブを用いることができる。例えば、2個、8個、16個、32個等、2のべき乗個(2
n個、指数nは自然数)の排気バルブを用いてもよい。
同様に、上記変形例においては、4個のインジェクタ60A、60B、60C、60Dを用いる場合について説明したが、本発明はこれに限らず、2個以上の任意の数のインジェクタを用いることができる。例えば、2個、8個、16個、32個等、2のべき乗個(2
n個、指数nは自然数)のインジェクタを用いてもよい。