特許第6334907号(P6334907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334907
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】バンド付掻破検知通知装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   A61B5/10 310G
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-253819(P2013-253819)
(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公開番号】特開2015-112127(P2015-112127A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(72)【発明者】
【氏名】野呂 雄一
(72)【発明者】
【氏名】水谷 仁
(72)【発明者】
【氏名】尾本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】山中 恵一
【審査官】 多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−261315(JP,A)
【文献】 特開2008−042741(JP,A)
【文献】 特開昭56−091732(JP,A)
【文献】 特開2005−192802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 − 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象者の腕または指に装着されて掻破を検知し、外部に通知するバンド付掻破検知通知装置であって、
手首または、指に装着して使用され、
少なくともセンサ素子と、センサアンプと、AD変換ユニットと、データ処理ユニットと、無線ユニットと、アンテナと、警告部品と、電池と、筐体と、が第1樹脂でモールド一体化されており、
前記センサ素子が圧電素子、加速度センサ、歪ゲージ、コンデンサマイクロホンの何れか1つであり、
前記センサ素子が、感圧面を前記計測対象者の皮膚表面に対向させて前記筐体内に筐体とは所定間隔を保ち、直接接触しない状態で柔軟性のゴム硬度5〜15度のウレタンゴムまたは、ゴム硬度5〜10度のシリコンゴムである第2樹脂でモールドされ、
前記筐体が導電体材料で構成され、少なくとも前記センサ素子と前記センサアンプが前記計測対象者の皮膚表面との対向方向を除く5方向を前記筐体に包囲されていることを特徴とする掻破検知通知装置。
【請求項2】
前記第1樹脂がゴム硬度30〜80度のプラスチックであることを特徴とする請求項1に記載のバンド付掻破検知通知装置。
【請求項3】
前記筐体が導電性材料であって、前記計測対象者の手首または指の皮膚に直接接触させる構造であることを特徴とする請求項1乃至2の何れか1項に記載のバンド付掻破検知通知装置。
【請求項4】
前記センサ素子と前記センサアンプに加え、前記AD変換ユニットと、前記データ処理ユニットと、前記無線ユニットとが、前記計測対象者の皮膚表面との対向方向を除く5方向を前記筐体に包囲されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のバンド付掻破検知通知装置。
【請求項5】
前記無線ユニットと前記アンテナが、無線により送受信する通信機能を有し、前記バンド付掻破検知通知装置が腕に装着して使用される腕時計タイプであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のバンド付掻破検知通知装置。














【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アトピー性皮膚炎の患者等が腕や指に装着し、掻破行動を測定する装置に関し、更に詳細には、アトピー性皮膚炎の患者等が無意識に行う掻破行動を検知して警告を発したり、検知データを無線通信で外部機器に送信する機能を有する掻破検知通知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人体に装着する小型軽量の肉伝導マイクロホンであって、人の動きに伴う装着ずれや脱落、雑音の混入などが生じにくく、体型等の個人差に対しても装着適応性の高い肉伝導マイクロホンの発明が開示されている。
該肉伝導マイクロホンは、皮膚表面に密着されて肉伝導音を伝播させる軟性部材からなる肉伝導音伝播部と、その肉伝導音を電気信号に変換するマイクロホンなどで構成される。
【0003】
また、この肉伝導マイクロホンは、声帯、呼吸音、心臓や脈拍音など、生体内を伝導する音声を採取するが、外部ノイズや、装着に起因するノイズの収集を極力避けるための構造を工夫している。
しかし、特許文献1の先行技術は、人の掻破行動に伴い発生させる掻破音を計測対象としないため、アトピー性皮膚炎の患者が指先で患部を掻く動作に伴い発する音、振動などの計測用には不向きである。
【0004】
特許文献2には、人間を含む動物が特定の体動を実施するとき発生させる音や振動に着目し、これらが体内を伝導する音や振動(以下、体動音と記す)をマイクロホンを用いて採集し、予め磁気記録装置等に記憶した特定体動音の標準パターン信号と比較することにより、採集された体動音が特定体動音であるかどうかを判定する体動音測定装置と、その判定結果を出力装置を通じて外部に出力する発明が開示されている。
また、特許文献2には、人の腕に装着して掻破回数を計測して表示する体動検査装置の概念図も開示されているが、腕時計タイプの掻破検知通知装置の具体的な構成は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−42741
【特許文献2】特開2005−261315
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人が行う掻破行動は通常、指、手を用いて実施される。従って、掻破行動に伴い発生する音や振動は、発生源に近い手や指に掻破検知通知装置のセンサを設置して観測することが、データの検出感度を確保する上で重要である。
しかし、センサを手や指に設置した場合、手や指は掻破行動とは関係ない様々な動作を行うので、この動作に随伴して手、指が周囲にある物に接触して発生させる衝撃音、変形音、摩擦音など様々なノイズをセンサが採集してしまう問題がある。
【0007】
また、手首太さ、形状は人により様々で、掻破検知通知装置を多くの人々の手首に首尾よくフィットさせることは容易ではない。
さらに、手首に装着する掻破検知通知装置の形状やサイズは、人の自然な掻破行動を制約しない範囲で小型かつ軽量のものが望ましい。
ただし、センサ部のみを分離して手首に装着する形態では、センサが収集した体動音信号を検査装置本体に伝送する必要があり、ケーブルを用いた有線方式ではケーブル自体の断線や掻破行動の阻害が懸念される。
【0008】
センサ以外の装置構成要素を全て手首に装着する場合、装置全体の重量が増すため加速度の影響を受け易く、掻破行動以外の動作ノイズが混入する。
掻破検査装置の技術課題は、特許文献1や特許文献2など従来技術の組合せや転用だけでは容易には解決できない。
【0009】
本発明は、人が就寝時や覚醒時において無意識に行う掻破行動等により、指や手に発生する掻破音を採集するバンド付き掻破検知通知装置であって、腕や指に装着して使用され、周囲のものと強く接触・摩擦してもこれらに起因するノイズを極限まで抑えることができ、しかも、外部からの耐電磁波ノイズにも優れ、計測データの信頼性を確実に保証できる掻破検知通知装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、計測対象者の腕または指に装着されて掻破行動を検知し、検知データを外部に通知する通信機能を有するバンド付掻破検知通知装置である。
計測対象者は、本バンド付掻破検知通知装置を手首または、指に装着して使用する。
また、本バンド付掻破検知通知装置は少なくともセンサ素子と、センサアンプと、AD変換ユニットと、データ処理ユニットと、無線ユニットと、アンテナと、警告部品と、電池と、筐体と、が第1樹脂でモールド一体化されて作られる。
【0011】
これにより、本掻破検知通知装置では腕や指に装着されて振り回されたり、腕や指が外部物体に衝突した場合であっても、内部に実装される個々の部品類は一体に運動し、相対的な位置ズレを生じることはなく、人の動作に伴うノイズ発生を極小とすることができる。
【0012】
センサ素子は、圧電素子、加速度センサ、歪ゲージ、コンデンサマイクロホンの中から何れか1つが用途に応じて選択される。
センサ素子は、高剛性の筐体に、皮膚との対向面を除く5方向が包囲され、しかも筐体とは所定間隔を保ち、直接接触しない状態で柔軟性に富む第2樹脂にモールドされるので、腕や指が外部物体に接触しても伝導する衝撃が緩和され、機械的ノイズと電磁波ノイズの両面で、耐ノイズ性に優れた構成になっている。
【0013】
また、センサ素子は感圧面側も第2樹脂でモールドされるので、本バンド付掻破検知通知装置を計測対象者が腕または指に装着すると、センサ素子はモールド樹脂を挟んで感圧面が計測対象者の皮膚と対向し、しかも、第2樹脂が計測対象者の皮膚と密着するので、掻破行動により発生する体動音を高感度で収集することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、モールドに使用される第1樹脂がゴム硬度30〜80度のプラスチックであり、代表的にはシリコンゴムが使用される。また、第2樹脂にはゴム硬度5〜15のウレタンゴムあるいは、ゴム硬度5〜10度のシリコンゴムが使用される。ウレタンゴムには様々な種類があるが、人の皮膚に優しいウレタンゴムを使用し、また、シリコンゴムの場合も人の皮膚に優しいシリコンゴムを使用する。
【0015】
一般に、シリコンゴムと比較してウレタンゴムは肌に対する親和性が高く、センサ素子の感圧面に使用するモールド樹脂としてはウレタンゴムの方がより好ましい。また、ゴム硬度5〜15度と、低いゴム硬度範囲のウレタンゴムとすることで、計測対象者の腕や指に良好にフィットさせ、体動音を高感度で収集することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、電子部品等を実装する筐体に導電性材料が用いられる。導電性材料として金属、炭素繊維、導電性プラスチックなどを用いることができる。導電性材料に金属を採用する場合、ステンレス、チタンなどの人の皮膚に優しい金属を使用する。
また、筐体を対象者の手首または指の皮膚に直接接触させることで、外部からの電磁波ノイズを筐体で吸収させ、対象者の人体をアースとして逃がすことができる。これにより、耐電磁波ノイズ性に優れた信頼性の高いデータ採集を可能とした。
【0017】
請求項4に記載の発明は、センサ素子とセンサアンプに加え、AD変換ユニットと、データ処理ユニットと、記無線ユニットとを、計測対象者の皮膚表面との対向方向を除く5方向について、筐体に包囲させる発明である。これにより、本掻破検知通知装置に実装される電子部品類は6方向中5方向を筐体により電磁シールドされ、残る1方向を人体により電磁シールドされるので、外部からの電磁波ノイズを確実に遮断することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、電子部品の実装された基板が無線通信機能を有し、無線で送受信を行う。センサ素子により検出される音や振動のアナログデータは、本バンド付掻破検知通知装置内でA/D変換され、データ処理ユニットで様々なデータ処理がなされ、これらデータ処理結果は警告部品により警告として発せられたり、アンテナを介し外部機器に無線送信される。
【0019】
従って、本バンド付掻破検知通知装置は、内蔵する警告装置にデータ処理結果を伝達するだけでなく、外部に設置されるコンピュータなどの機器にも様々な処理レベルのデータを送信したり、逆に外部機器から制御指令などのデータを入手することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、掻破検知通知装置に実装される無線ユニットとアンテナが無線通信によるデータの送受信機能を備え、腕に装着して使用される腕時計タイプのリストバンド付掻破検知通知装置である。本バンド付掻破検知通知装置を腕時計と同じ要領で腕に装着すると、ゴム硬度の低いウレタンゴムが手首形状の異なる個々人に対し、良好にフィットし、体内を伝導する音や振動を高感度に収集するので、信頼性の高いデータを採集できる。また、腕時計タイプであるので、装着が簡単、確実で、安定して掻破振動や掻破音を収集することができる。
【発明の効果】
【0021】
アトピー性皮膚炎をはじめとする慢性皮膚炎症性疾患は、就寝中や覚醒中であっても無意識に掻破行動を行う。掻破行為は治療面からは好ましくなく、本人に自覚させて停止させる必要がある。本バンド付掻破検知通知装置では機械的ノイズ、電磁波ノイズの少ない信頼性の高い掻破データを取集できるので、採集されるデータについて、掻破行動パターンかどうかを確実に判定し、掻破行動パターンと認定した場合、本人に警告して掻破行為を停止させたり、小さい子供の場合は無線通信回線を介して親に知らせ、親が子供の掻破行為を停止させることができる。更には、診掻破行為データの全て、或いは一部について無線通信回線を介して病院のサーバーに登録させることで、診断や治療に使用することなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による掻破検知通知装置の断面図
図2】腕装着型リストバンド付掻破検知通知装置の腕への装着状況
図3】指装着型バンド付掻破検知通知装置の指への装着状況
図4】腕装着型リストバンド付掻破検知通知装置の表面外観図
図5】腕装着型リストバンド付掻破検知通知装置の裏面外観図
図6】モールド樹脂1の有無による出力波形の相違
図7】簡易シールド構造
図8】2層シールド構造
図9】簡易シールド構造の出力波
図10】本発明の電磁波シールド構造の出力波
図11】本発明の電磁波シールドと2層電磁波シールド構造の出力波形
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態として一実施例を図1図11に基づいて説明する。
本発明の腕装着型掻破検知通知装置の構成と製作方法について、図1に示す腕装着型掻破検知通知装置の断面図を用いて説明する。
【0024】
電磁遮蔽機能を有するステンレス製筐体19の略中央部にセンサプリアンプ12が筐体19から絶縁されて実装される。また、筐体19の手首側内部にセンサ素子11がセンサプリアンプ12に配線されて、ウレタンゴム(第2樹脂)20でポッティングされる。筐体19の上面には、絶縁基板に表面実装されたAD変換ユニット13と、データ処理ユニット14と、無線ユニット15が実装配線される。無線ユニット15には無線通信用のアンテナ16の一端が取付けられ、アンテナ16の他端は筐体19に設けられた穴から、筐体19と絶縁されて、筐体外部に引き出される。
【0025】
また、警告部品17を筐体19の右側に、電池18を筐体19の左側に配置して、全体の重心バランスが中央部になるよう配置する。また、これら全ての部品は一体に組み立てられた後、別途準備されたモールド用金型に収納され、モールド(第2樹脂)21で一体にモールドされる。モールド21の材料には、主剤に触媒を加えて硬化させる硬質シリコンゴムを用い、ポッティング方法により作成する。このモールド21の左右両端部には、一対のバンド22を連結するための連結環25を設ける。
なお、腕装着型掻破検知通知装置10に実装される部品類の全体配置については、装置全体の重心が装置の中心軸上に近づくよう各部品を配置した。
【0026】
なお、本モールド21による一体化作業では、筐体19の下面と、ウレタンゴム20の下面はマスキングテープを施して、ポッティング作業を行い、ポッティング樹脂が硬化後マスキングテープを除去し、筐体19の下面と、ウレタンゴム20の下面を露出させる。これにより、腕装着型掻破検知通知装置10を手首に装着させたとき、筐体19の下面と、ウレタンゴム20の下面を手首の皮膚に確実に接触させることができる。
【0027】
一対のバンド22は、それぞれモールド21の左右それぞれ2箇所に設けられた連結環25に連結用穴を位置合わせし、連結ピン24を貫通させて一体化させる。一対のバンド22には面ファスナー構造が設けられ、面ファスナーを重ね合わせて結合させる。面ファスナーをベルト構造、ボタン構造などに置き換えてもよい。
【0028】
図4は組立の完了した腕装着型掻破検知通知装置10を正面側斜め上方からの外観図で、図5は裏面から外観図である。腕装着型掻破検知通知装置10は図2に示すように、対象者の腕23に装着、固定されて使用される。
図3に指に装着して使用する指装着型掻破検知通知装置30を示す。指装着型掻破検知通知装置30は、指31に装着して使用され、基本構造は腕装着型掻破検知通知装置10と同じである。しかし、指31に装着して使用するため小型化が図られ、また、バンド22に相当する部分は、通常の指輪と同様リングとすることができる。
【0029】
次に、ウレタンゴム(第2樹脂)20のゴム硬度を5〜15度とした理由について、説明する。
2液混合タイプ、室温硬化型、ゴム硬度5、10、15、20の4種類の市販のゴムウレタンゴムについて試作を行い、次の(1)、(2)評価を行った。
また、ゴム硬度5、10、15、20の4種類の市販のシリコンゴムについても次の(1)、(2)の評価を行った。
(1)耐ズレ性試験:腕に装着したときの滑り難さを感覚的に相対評価する(感応試験)。
(2)検出感度試験:掻破振動や掻破音の検出性能を相対評価する(定性評価)。
これらは何れも主観的評価になるが評価結果は表1の通りであった。
【0030】
【表1】
【0031】
表1から次が結論づけられる。
(1) ウレタンゴムでは、耐ズレ特性と検出感度の両面から、ゴム硬度5〜15度の範囲が好適である。
(2) シリコンゴムの場合は、耐ズレ特性と検出感度の両面からゴム硬度5〜10度が好適である。
ウレタンゴムとシリコンゴムの違いは、ウレタンゴムの表面にはタック性があり、皮膚に良く馴染むため、シリコンゴムに比べ広いゴム硬度範囲で耐ズレ性や検出感度に優れた特性が得られる。
また、掻破振動や掻破音の検出感度は、振動の伝搬特性を考慮すると、人の皮膚のゴム硬度に類似するゴム硬度の材料が好適と考えられる。人の皮膚のゴム硬度は約10度であり、前記好適としたゴム硬度範囲に含まれる。
【0032】
次に、筐体に実装した部品のモールド樹脂による固定効果について説明を行う。
図6は、図1に示す腕装着型掻破検知通知装置10について、モールド樹脂1によるモールドの有無による耐機械衝撃特性の違いを比較した試験データである。X軸が時間で、Y軸はノイズ波形の波高値である。Aはモールド樹脂1なし、Bがモールド樹脂ありの場合である。モールド樹脂によるモールド効果により衝撃に起因するノイズが低減されており、モールド樹脂により耐機械的衝撃特性の向上することが確認できる。
【0033】
次に、外来電磁波ノイズに対するシールド効果について説明を行う。
外来電磁波ノイズに対する評価は、筐体19によるシールド構造の一部を除去した図7に示す簡易シールド構造の簡易シールド構造腕装着型掻破検知通知装置27と、図1に示す本発明のシールド構造の腕装着型掻破検知通知装置10と、図8に示す本発明に内部シール部材26を追加した2層シールド構造の2層シールド構造腕装着型掻破検知通知装置28の3種類について実施した。
【0034】
図9は簡易シールド構造腕装着型掻破検知通知装置27についての出力波形のスペクトル図であり、X軸が周波数、Y軸がスペクトル強度である。図10は腕装着型掻破検知通知装置10の出力波形のスペクトル図で、図9同様X軸が周波数、Y軸がスペクトル強度である。
図9,10について、センサ出力に対する背景雑音の大きさを相対評価すると、簡易シールド構造腕装着型掻破検知通知装置27のシール構造に比較して、本発明の腕装着型掻破検知通知装置10のシールド構造では背景雑音が大幅に低減されていることが確認できる。
【0035】
また、図11に示す2つの出力波形は、Aが腕装着型掻破検知通知装置10の出力波形のスペクトルであり、Bが2層シールド構造腕装着型掻破検知通知装置28の出力波形のスペクトルである。X軸が時間で、Y軸はノイズ波形の波高値である。図11から
Bの電磁波ノイズ波高値はAに比べ更に低減されており、2層シールド構造を採用することで、外来電磁波ノイズを更に遮断できることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
皮膚の痒みは、アトピー性皮膚炎など慢性皮膚炎症性疾患だけでなく、様々な病気治療に使用される薬剤の副作用として現れることがある。本発明のバンド付掻破検知通知装置は掻破行為を容易に検知できるので、慢性皮膚炎症性疾患に限定されることなく、様々な医療分野や日常生活でも活用できる。
【符号の説明】
【0037】
10 腕装着型掻破検知通知装置
11 センサ素子
12 センサプリアンプ
13 AD変換ユニット
14 データ処理ユニット
15 無線ユニット
16 アンテナ
17 警告部品
18 電池
19 筐体
20 ウレタンゴム
21 モールド
22 バンド
23 腕
24 連結ピン
25 連結環
26 内部シール部材
27 簡易シールド構造腕装着型掻破検知通知装置
28 2層シールド構造腕装着型掻破検知通知装置
30 指装着型掻破検知通知装置
31 指

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11