(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開放範囲演算装置が、前記開放範囲の前記ヤードマシンの走行方向後側の端を、前記走行位置に基づいて算出するように構成されている、請求項1に記載の屋内貯蔵設備。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る屋内貯蔵設備を備えた貯蔵ヤードの様子を示す平面図、
図2は屋内貯蔵設備の概略構成を示す一部平面図、
図3はヤードマシンの概略構成を示す図、
図4は屋内貯蔵設備の制御構成を示すブロック図である。
【0012】
図1〜4に示されるように、本実施形態に係る屋内貯蔵設備10は、岸壁に隣接した貯蔵ヤードに設けられており、海上輸送されてきた石炭を一時的に貯蔵するものである。屋内貯蔵設備10は、X方向を長手方向とする細長い貯蔵建物1を備えている。屋内貯蔵設備10には、複数の貯蔵建物1がY方向に所定間隔で略平行に配置されている。Y方向は、X方向と略直交する方向である。なお、屋内貯蔵設備10は少なくとも1つの貯蔵建物1を備えていればよい。また、屋内貯蔵設備10の貯蔵物は石炭に限定されず、例えば、石炭、鉱石、石灰石、及びコークスなどのうち1種類以上であってよい。
【0013】
各貯蔵建物1は、X方向を長手方向とする細長い貯蔵域2と、貯蔵域2の周囲に立設された周壁3と、貯蔵域2の上方を覆う屋根4とを備えている。周壁3は、平面視において、X方向を長手方向とする長丸長方形を成している。周壁3のY方向両側には、それぞれ内側レール51と外側レール52とが設けられている。内側レール51と外側レール52はいずれもX方向を走行方向とするレールである。貯蔵域2をY方向両側から挟み込むように一対の内側レール51が配置され、さらに、一対の内側レール51をY方向両側から挟み込むように一対の外側レール52が配置されている。なお、貯蔵建物1は、周壁3に代えて、柱及び梁などから成る壁のない躯体を備えていてもよい。
【0014】
屋根4は、X方向に可動な複数の移動屋根40で構成されている。移動屋根40には、内移動屋根41と、外移動屋根42とがある。外移動屋根42は、内移動屋根41より一回り大きく当該内移動屋根41の外側を移動する。屋根4が閉じられた状態では、内移動屋根41と外移動屋根42とがX方向に交互に並べられており、内移動屋根41のX方向の端部と外移動屋根42のX方向の端部とが上下に重なっている。移動屋根40を移動させることにより、屋根4を部分的に開放することができる。
【0015】
内移動屋根41のY方向両端には、内側レール51上を走行する少なくとも1つのローラ(図示略)が各々設けられている。同様に、外移動屋根42のY方向両端には、外側レール52上を走行する少なくとも1つのローラ(図示略)が各々設けられている。移動屋根40に設けられたローラのうち少なくとも1つは駆動ローラであって、当該駆動ローラは屋根駆動装置54により回転駆動される。屋根駆動装置54によって駆動ローラが正転又は逆転駆動されると、移動屋根40がX方向へ移動する。屋根駆動装置54は各移動屋根40に設けられており、各移動屋根40は他の移動屋根40から独立して移動することができる。各屋根駆動装置54と制御装置6とは有線又は無線で通信可能に接続されており、屋根駆動装置54は制御装置6の制御を受けて動作する。
【0016】
移動屋根40に設けられたローラのうち少なくとも1つ(例えば、駆動ローラ)には、屋根位置検出装置55としてのロータリエンコーダが設けられている。このロータリエンコーダは、ローラの回転変位を測定し、その回転変位信号を制御装置6へ出力する。制御装置6では、回転変位信号に基づいて移動屋根40の位置を算出する。なお、屋根位置検出装置55は、ロータリエンコーダに限定されない。例えば、屋根位置検出装置55が、移動屋根40に設けられたGPSセンサを備えたものであってもよい。この場合、屋根位置検出装置55は、GPSセンサで移動屋根40の位置情報を取得し、取得した位置情報を制御装置6へ出力するように構成される。
【0017】
隣接する貯蔵建物1の間、及び、Y方向の両端に配置された貯蔵建物1のY方向外側には、X方向に延びる一対のレール7が敷設されている。この一対のレール7上にヤードマシン8が走行可能に設けられている。ヤードマシン8は、スタッカ(積付機)、リクレーマ(払出機)、及びスタッカ・リクレーマ(積付及び払出機)のうち少なくとも1つである。本実施例においては、貯蔵建物1のY方向の一方にスタッカ8Aが配備され、当該貯蔵建物1のY方向の他方にリクレーマ8Bが配備されている。
【0018】
一対のレール7間には、石炭をX方向に搬送するコンベヤ90が設けられている。そして、各コンベヤ90のX方向の少なくとも一方側には、搬送物をY方向及びX方向の少なくとも一方に搬送する共通コンベヤ91が設けられている。コンベヤ90には、共通コンベヤ91から搬送物を受け取ってヤードマシン8へ搬送する積付コンベヤと、ヤードマシン8から搬送物を受け取って共通コンベヤ91へ搬送する払出コンベヤとがある。また、共通コンベヤ91には、コンベヤ90へ搬送物を搬送する共通積付コンベヤと、コンベヤ90から搬送物を受け取って搬送する共通払出コンベヤとがある。積付コンベヤ及び共通積付コンベヤにより形成される搬送経路はスタッカ8Aと接続されており、これらのコンベヤによりスタッカ8Aへ石炭が搬入される。また、払出コンベヤ及び共通払出コンベヤにより形成される搬送経路はリクレーマ8Bと接続されており、これらのコンベヤによりリクレーマ8Bから石炭が搬出される。コンベヤ90は制御装置6と有線又は無線で通信可能に接続されたコンベヤ駆動装置92を備えており、共通コンベヤ91は制御装置6と有線又は無線で接続された共通コンベヤ駆動装置93を備えている。これらの駆動装置92,93は制御装置6の制御を受けて動作する。
【0019】
特に
図3に詳細に示されるように、ヤードマシン8は、一対のレール7上を走行する走行台車81と、走行台車81に旋回可能に支持されたブーム82と、旋回軸88を介してブーム82と反対側に設けられたカウンタウエイト87と、旋回軸88を中心にブーム82を水平方向に旋回させる旋回装置83と、俯仰軸89を中心にブーム82及びカウンタウエイト87を上下方向に揺動させる俯仰装置84とを少なくとも備えている。更に、ヤードマシン8は、ヤードマシン8の機能に応じた作業部(図示せず)及びその駆動装置86などを備えている。ヤードマシン8の作業部は、スタッカであれば例えばブームコンベヤ、トリッパーコンベヤなどであり、リクレーマであれば例えばバケットホイル、ブームコンベヤなどであり、スタッカ・リクレーマであれば例えばバケットホイル、ブームコンベヤ及びトリッパーコンベヤなどである。
【0020】
走行台車81は、コンベヤ90をY方向に跨いでおり、コンベヤ90のY方向両側に設けられたレール7上を走行する車輪81aを備えている。ヤードマシン8の走行位置xは、走行位置検出装置71により検出される。走行位置検出装置71は、例えば、走行台車81の車輪81aに設けられたロータリエンコーダを含んでいる。このロータリエンコーダは走行台車81の車輪81aの回転数を検出する。この検出信号は制御装置6へ出力されて、制御装置6でこの回転数を利用して走行位置xが算出される。但し、走行位置検出装置71に演算手段を備えて、走行位置検出装置71で走行位置xを算出し、算出された走行位置xが制御装置6へ出力されてもよい。なお、走行位置検出装置71は上記に限定されず、例えば、走行位置検出装置71がGPSセンサを含むものであってもよい。
【0021】
旋回装置83は、例えば、油圧モータを備えており、油圧モータの回転出力を利用してブーム82を旋回させる。旋回装置83は、更に、ブーム82の中立位置からの旋回角(以下、ブーム旋回角θ)を検出する旋回角検出装置73を備えている。なお、中立位置にあるブーム82は、当該ブーム82の長手方向がX方向と平行であり且つ水平である。旋回角検出装置73は、例えば、ブーム82の旋回軸88回りの回転変位を検出するロータリエンコーダである。但し、旋回角検出装置73はブーム旋回角θを検出できるものであれば、上記に限定されない。例えば、旋回角検出装置73が、旋回装置83へ出力される旋回指令値に基づいてブーム旋回角θを算出する演算手段であってもよい。旋回角検出装置73で検出されたブーム旋回角θは、制御装置6へ出力される。
【0022】
俯仰装置84は、例えば、ブーム82と連結されたロッドを有する油圧シリンダを備えており、ロッドの伸縮によりブーム82を俯仰軸89を中心として揺動させる。旋回装置83は、さらに、ブーム82の中立位置からの俯仰角(以下、ブーム俯仰角α)を検出する俯仰角検出装置74を備えている。俯仰角検出装置74は、例えば、ブーム82の俯仰軸89回りの回転変位を検出するロータリエンコーダである。但し、俯仰角検出装置74はブーム俯仰角αを検出できるものであれば、上記に限定されない。例えば、俯仰角検出装置74が、ロッドの変位量に基づいてブーム俯仰角αを検出するものであったり、旋回装置83へ出力される俯仰指令値に基づいてブーム俯仰角αを算出する演算手段であってもよい。俯仰角検出装置74で検出されたブーム俯仰角αは、制御装置6へ出力される。
【0023】
ヤードマシン8のブーム82の位置(以下、ブーム位置p)は、ブーム位置検出装置72により検出される。ここで、ブーム位置pは、ヤードマシン8の走行台車81に相対的なブーム82の先端の位置である。但し、ブーム位置pは、ブーム82の先端の位置に限定されず、ブーム82の先端以外の特定箇所の位置であってもよい。
【0024】
ブーム位置検出装置72は、上述の旋回角検出装置73と俯仰角検出装置74とを含んでいてよい。ブーム位置検出装置72は、ブーム旋回角θとブーム俯仰角αを検出して制御装置6へ出力し、制御装置6で検出されたブーム旋回角θと俯仰角検出装置74を利用してブーム位置pが算出される。但し、ブーム位置検出装置72が、検出されたブーム旋回角θとブーム俯仰角αとを利用してブーム位置pを算出し、算出したブーム位置pを制御装置6へ出力するように構成されていてもよい。
【0025】
ブーム位置pは、ブーム82の旋回軸88から先端までの長さ(以下、ブーム長さL)、地面から俯仰軸89までの高さ(以下、ブーム高さh)、及び、ブーム旋回角θ、ブーム俯仰角αを利用して求めることができる。なお、ブーム長さLとブーム高さhは定数であり、ブーム旋回角θとブーム俯仰角αが変数である。但し、ブーム位置検出装置72は上記に限定されない。例えば、ブーム位置検出装置72が、ブーム82の先端に取り付けられたGPSセンサと俯仰角検出装置74とを備え、GPSセンサが取得した位置情報と俯仰角検出装置74で検出されたブーム俯仰角αに基づいてブーム位置pが検出されるように構成されていてもよい。
【0026】
続いて、制御装置6について説明する。制御装置6は、屋内貯蔵設備10の制御に係る演算を行うとともに、屋内貯蔵設備10の動作を制御するものである。制御装置6は、CPU(Central Processing Unit)の他、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)、I/O(Input/output Port)等を有している(いずれも図示せず)。ROMには、CPUが実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。CPUが実行するプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、メモリカード等の各種記憶媒体に保存されており、これらの記憶媒体からROMにインストールされる。RAMには、プログラム実行時に必要なデータが一時的に記憶される。I/Fは、外部装置(例えば、操作盤60やパーソナルコンピュータなど)とのデータ送受信を行う。I/Oは、各種センサの検出信号の入力/出力を行う。制御装置6では、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアとCPU等のハードウェアとが協働することにより、以下に説明する制御装置6の各機能を実現する処理を行うように構成されている。なお、制御装置6は単一のCPUにより各処理を実行してもよいし、複数のCPUの組み合わせにより各処理を実行してもよい。
【0027】
制御装置6は、走行台車81を制御する走行制御ユニット61、ヤードマシン8を制御する作業制御ユニット62、移動屋根40を制御する屋根制御ユニット63、及び、屋根4の開放範囲Dを算出する開放範囲演算ユニット64としての機能を有する。開放範囲Dは、旋回するブーム82と屋根4との干渉を避けるために屋根4に形成される開口20のX方向の範囲である。上記の制御装置6が備える機能については後ほど説明する。
【0028】
ここで、上記構成の屋内貯蔵設備10における石炭の積付作業及び払出作業時の、制御装置6の処理の流れについて説明する。先ず、リクレーマによる石炭の払出作業時の制御装置6の処理の流れについて説明する。
図5は制御装置6の処理の流れを示すフローチャートである。
【0029】
待機状態のヤードマシン8(リクレーマ8B)は、ブーム82を中立位置に保持したまま、レール7上で停止している。制御装置6は、操作盤60から作業指令を受け取ると、払出作業に係る制御を開始する。作業指令には、作業内容(払出作業又は積付作業)と、作業範囲(作業範囲始端x
aと作業範囲終端x
b)とに係る情報が少なくとも含まれている。
【0030】
図5に示されるように、払出作業の作業指令を受けた制御装置6では(ステップS1)、ヤードマシン8を作業範囲始端x
aまで走行移動させるために、走行制御ユニット61が走行台車81の走行駆動部70を動作させる(ステップS2)。
【0031】
図6はヤードマシン8が作業範囲始端x
aまで移動した状態の屋内貯蔵設備10を示す図である。
図6に示されるように、ヤードマシン8は、ブーム82を中立位置へ保持したまま、その走行位置xが作業範囲始端x
aとなるまで移動する。ヤードマシン8が作業範囲始端x
aへ到着すると、作業制御ユニット62は、ヤードマシン8のブーム82を作業開始位置p
aへ移動させるために、旋回装置83及び俯仰装置84を動作させる(ステップS3)。
【0032】
図7はヤードマシン8のブーム82が作業開始位置p
aまで移動した状態の屋内貯蔵設備10を示す図である。
図7に示されるように、ヤードマシン8であるリクレーマ8Bは、バケットホイルを回転させながら、ブーム82を作業開始位置p
aから作業終了位置p
bまで移動させることによって、石炭の払い出しを行う。ブーム82の作業開始位置p
aと作業終了位置p
bとは、予め作業制御ユニット62に設定されている。作業開始位置p
aは、例えば、ブーム旋回角θが90°でブーム俯仰角αが0°となるブーム位置である。
【0033】
ブーム82が中立位置から作業開始位置p
aへ移動する際に、ブーム82が旋回及び上下揺動する。このようにブーム82が中立位置にないときに、開放範囲演算ユニット64は、走行位置検出装置71から取得したヤードマシン8の走行位置xに関する情報と、ブーム位置検出装置72から取得したブーム位置pに関する情報とを利用して、屋根4の開放範囲Dを算出する。詳細には、開放範囲演算ユニット64は、先ず、ヤードマシン8の走行位置x、ブーム旋回角θ、及びブーム俯仰角αを取得する(ステップS4)。次に、開放範囲演算ユニット64は、取得した走行位置x、ブーム旋回角θ、及びブーム俯仰角αと、予め設定されたブーム長さL及びブーム高さhとを利用して、開放範囲Dを算出する(ステップS5)。開放範囲Dを求める演算は、所定時間間隔(例えば、0.01秒間隔)で行われる。
【0034】
開放範囲Dは、開放範囲DのX方向の一端(以下、第1端Da)の位置(以下、第1端位置x
da)と、開放範囲DのX方向の他端(以下、第2端Db)の位置(以下、第2端位置x
db)とにより定まる。第1端Daは、開放範囲DのX方向の端のうち、ヤードマシン8が作業範囲始端x
aから作業範囲終端x
bまで走行移動するときの走行方向後側の端である。換言すれば、第1端Daは、開放範囲DのX方向の端のうち、作業開始位置p
aから作業終了位置p
bまで移動するブーム82から見たときに、ブーム82の後側にある端である。また、第2端Dbは、開放範囲DのX方向の端のうち、ヤードマシン8が作業範囲始端x
aから作業範囲終端x
bまで走行移動するときの走行方向前側の端である。換言すれば、第2端Dbは、開放範囲DのX方向の端のうち、作業開始位置p
aから作業終了位置p
bまで移動するブーム82から見たときに、ブーム82の前側にある端である。
【0035】
第1端位置x
daと第2端位置x
dbとは、例えば、次式1に基づいて算出される。
(式1)
x
da=x+k
a
x
db=x+L・cosα・cosθ+k
b
【0036】
図8はヤードマシン8のブーム82が作業終了位置p
bへ向けて旋回している状態の屋内貯蔵設備10を示す図である。例えば、
図8に示されるように、上記式1を用いて第1端位置x
daが算出されると、作業開始位置p
aにあるブーム82と開放範囲Dの第1端DaとのX方向間に所定のクリアランスk
aが存在する。また、上記式1を用いて第2端位置x
dbが算出されると、移動するブーム82と開放範囲Dの第2端DbとのX方向間に所定のクリアランスk
bが存在する。つまり、上記式1を用いて開放範囲Dが算出される場合、ヤードマシン8の走行位置が一定であれば、第1端位置x
daは一定であり、第2端位置x
dbはブーム位置p(即ち、ブーム旋回角θ及びブーム俯仰角α)の変化と対応して変位する。
【0037】
或いは、第1端位置x
daと第2端位置x
dbは、例えば、次式2に基づいて算出されてもよい。なお、式2中のy
0は、旋回軸88から移動屋根40までのY方向の距離である。
(式2)
x
da=x+y
0/tanθ+k
1
x
db=x+L・cosα・cosθ+k
2
【0038】
図9はヤードマシン8のブーム82が作業終了位置p
bへ向けて旋回している状態の屋内貯蔵設備10の別態様を示す図である。
図9に示されるように、上記式2を用いて第1端位置x
daが算出されると、ブーム82と開放範囲Dの第1端DaとのX方向間に所定のクリアランスk
aが存在する。なお、ブーム82のうちクリアランス算定に考慮されるのは、移動屋根40とX方向に重複する範囲である。また、上記式2を用いて第2端位置x
dbが算出されると、ブーム82と開放範囲Dの第2端DbとのX方向間に所定のクリアランスk
bが存在する。つまり、上記式2を用いて開放範囲Dが算出される場合、開放範囲Dの第1端位置x
daと第2端位置x
dbとは共に、ブーム位置p(即ち、ブーム旋回角θ及びブーム俯仰角α)の変化と対応して変位する。よって、原則的に、式2を用いて算出される開放範囲Dは、式1を用いて算出される開放範囲Dよりも狭い。
【0039】
なお、上記式1及び式2において、k
aは移動するブーム82と開放範囲Dの第1端DaとのX方向間のクリアランス、又は、作業開始位置p
aにあるブーム82と開放範囲Dの第1端DaとのX方向間のクリアランスである。クリアランスk
aは、定数であってよい。クリアランスk
aは、例えば、ブーム82が所定時間(例えば、1s)に移動する大きさ以上の値に定められる。また、k
bは移動するブーム82と第2端DbとのX方向間のクリアランスである。クリアランスk
bは、定数であってよいが、変数であることがより望ましい。クリアランスk
bが定数の場合は、例えば、クリアランスk
bがブーム82が所定時間(例えば、1s)に移動する大きさ以上の値とされる。クリアランスk
bが変数の場合は、例えば、クリアランスk
bは、ブーム82が所定時間(例えば、1s)に移動する大きさ以上であって、且つ、ブーム旋回角θの値と正比例する値とされる。つまり、クリアランスk
bはブーム旋回角θの増加に連れて増加し、同じく減少に連れて減少する。これは、ブーム82の旋回速度が一定である場合に、ブーム旋回角θが小さいとき(例えば、ブーム旋回角θが45°以下のとき)よりも、ブーム旋回角θが大きいとき(例えば、ブーム旋回角θが45°より大きいとき)が、所定時間(例えば、1s)あたりのブーム82の先端のX方向変位量が大きいためである。クリアランスk
bが変数であれば、開放範囲Dのブーム82の移動への追従性を高めることができる。
【0040】
上記のように開放範囲Dの第1端位置x
daと第2端位置x
dbとが算出されると、屋根制御ユニット63は、第1端位置x
daから第2端位置x
dbまでに亘る範囲の屋根4が開放されるように少なくとも1つの移動屋根40を移動させるために、少なくとも1つの屋根駆動装置54を動作させる(ステップS6)。
【0041】
ここで屋根制御ユニット63は、各屋根位置検出装置55から取得した各移動屋根40の位置から、移動すべき移動屋根40とその移動量を算出し、移動すべき移動屋根40の屋根駆動装置54を動作させる。なお、開口20の第1端Daを形成している移動屋根40及び第2端Dbを形成している移動屋根40のみならず、これらの移動屋根40に連なる他の移動屋根40も同時に移動させることがある。これは、開放範囲D以外の屋根4に開口20が生じないようにするためである。このように移動屋根40を移動させるときの自由度を確保するため、屋根4のX方向端部に位置する移動屋根40を周壁3よりもX方向端部へ突出するように設けたり、他と比較して広い範囲で上下に重複する少なくとも1組の内移動屋根41及び外移動屋根42を設けたりすることが望ましい。
【0042】
上記のように、移動屋根40の移動とヤードマシン8のブーム82の移動とを行って、ヤードマシン8のブーム82が作業開始位置p
aへ至ると、ヤードマシン8に払い出し動作させるために、作業制御ユニット62が作業部駆動装置86を動作させる(ステップS7)。1単位の払出作業では、リクレーマ8Bのブーム82を作業開始位置p
aから作業終了位置p
bまで移動させながら、バケットホイルとブームコンベヤを動作させることが行われる。この払出作業の間、開放範囲Dの算出と移動屋根40の移動とが継続して行われ、屋根4の開放範囲Dが変化する。上述の1単位の払出作業は、1つの走行位置xで複数回繰り返されてもよい。
【0043】
作業範囲始端x
aにおいて所定単位の払出作業が終了すると(ステップS8でNO)、続いて、ヤードマシン8が作業範囲始端x
aからX方向へ所定量だけ移動した次の走行位置xへ移動して、次の走行位置xで所定単位の払出作業が行われる。このようにして、ヤードマシン8の走行移動と払出作業とが繰り返し行われる。そして、作業範囲終端x
bにおいて所定単位の払出作業を終了すると、作業範囲の払出作業が完了する(ステップS8でYES)。作業範囲の払出作業が完了した後で、作業制御ユニット62は、ヤードマシン8のブーム82を中立位置へ移動させるために、旋回装置83及び俯仰装置84を動作させ(ステップS9)、屋根制御ユニット63は、屋根4の開口20を閉じるために、屋根駆動装置54を動作させる(ステップS10)。
【0044】
続いて、スタッカによる石炭の積付作業時の制御装置6の処理の流れについて説明する。
【0045】
石炭の積付作業時の制御装置6の処理の流れは、上述の石炭の払出作業時の制御装置6の処理の流れと略同じである。即ち、上述の石炭の払出作業時の制御装置6の処理の流れにおいて、リクレーマ8Bとあるのをスタッカ8Aと、払出とあるのを積付と、それぞれ読み替えればスタッカ8Aによる石炭の積付作業時の制御装置6の処理の流れが示される。但し、リクレーマ8Bが或る走行位置xにおいてブーム82を作業開始位置p
aから作業終了位置p
bまで旋回させることによって石炭の払い出しを行うのに対し、スタッカ8Aは或る走行位置xにおいてブーム82を旋回しないで石炭の積み付けを行う。よって、石炭の積付作業時には、スタッカ8Aが石炭を積み付けている間は屋根4の開放範囲Dを変化させる必要がない。なお、以上では、リクレーマ8Bによる石炭の払出作業とスタッカ8Aによる石炭の積付作業での制御装置6の処理について説明したが、スタッカ・リクレーマによる作業での制御装置6の処理も、上述の石炭の払出作業及び積付作業時の制御装置6の処理の流れと略同じである。
【0046】
以上説明した屋内貯蔵設備10では、ヤードマシン8のブーム82が中立位置にないときに、開放範囲Dの算出と移動屋根40の移動とが継続して行われる。開放範囲Dは、ヤードマシン8の走行位置x、ブーム旋回角θ、及びブーム俯仰角αの変化に対応して、即ち、ヤードマシン8の走行位置x及びブーム位置の変化に追従して変化する。ここで、開放範囲Dの第2端Dbは、第2端Dbとブーム82とのX方向間にクリアランスk
bが維持されるように変位する。加えて、開放範囲Dの第1端Daは、作業開始位置p
aにあるブーム82又は移動するブーム82と第1端DaとのX方向間にクリアランスk
aが維持されるように変位する。これらのクリアランスk
a,k
bは、ブーム82と屋根4との干渉を避けるために十分な値の中で、より小さい値に設定される。したがって、屋根4の開放範囲Dは、作業中に変化するヤードマシン8の走行位置とブーム位置とに対応して、作業に適切な範囲でより小さくなるように変化することとなる。
【0047】
ヤードマシン8のブーム82が旋回したときに、ブーム82と貯蔵建物1の干渉を回避することに加えて、カウンタウエイト87と貯蔵建物1の干渉を回避するように、屋内貯蔵設備10が構成されていてもよい。この場合、Y方向に隣接する貯蔵建物1の間に配備されたヤードマシン8の作業時に、隣接する貯蔵建物1のうち一方の貯蔵建物1においてブーム82と屋根4との干渉を回避するために開放範囲Dの算出と移動屋根40の移動とが行われ、同様に、隣接する貯蔵建物1のうち他方の貯蔵建物1においてカウンタウエイト87と屋根4との干渉を回避するために開放範囲Dの算出と移動屋根40の移動とが行われる。ここで、他方の貯蔵建物1においても、前述したブーム82の場合に倣って開放範囲Dの算出と移動屋根40の移動とが行われ、ヤードマシン8の走行位置x及びカウンタウエイト87の位置の変化に追従して屋根4の開放範囲Dが変化する。
【0048】
上記の通り、石炭の払出作業及び積付作業時にヤードマシン8のブーム82との干渉を避けるために部分的に開放された屋根4の開放範囲Dが、屋根4を少なくともブーム長さに亘って開放し続ける従来の場合(例えば、特許文献1に記載の技術)と比較して小さくなる。よって、屋根4の開口20を通じた貯蔵物の飛散量を抑制することと、屋根4の開口20を通じて貯蔵域2へ浸入する雨による貯蔵物の品質低下を抑制することとができる。
【0049】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0050】
上記実施形態において、開放範囲演算ユニット64は、ヤードマシン8のブーム旋回角θ、ブーム俯仰角α、ブーム長さL、及びブーム高さhを用いて特定されたブーム位置pを利用して開放範囲Dを算出している。但し、ブーム位置pの検出方法又は特定方法は、上記に限定されない。例えば、ヤードマシン8のブーム俯仰角αが可変でない場合には、開放範囲演算ユニット64が、ブーム位置検出装置72で検出されたヤードマシン8のブーム旋回角θと予め設定されたブーム長さL及びブーム高さhとを用いてブーム位置pを特定し、このブーム位置pを利用して開放範囲Dを算出するように構成されていてもよい。
【0051】
また、例えば、ブーム位置検出装置72がブーム82が移動開始してからの経過時間をカウントするタイマを備え、開放範囲演算ユニット64が、予め記憶されたブーム82の移動モデルとブーム82が移動開始してからの経過時間とに基づいてブーム位置pを特定し、このブーム位置pを利用して開放範囲Dを算出するように構成されていてもよい。