特許第6334953号(P6334953)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334953
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】背対面切替式乳母車
(51)【国際特許分類】
   B62B 9/10 20060101AFI20180521BHJP
   B62B 7/08 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B62B9/10 Z
   B62B7/08
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-35661(P2014-35661)
(22)【出願日】2014年2月26日
(65)【公開番号】特開2015-160471(P2015-160471A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】508189474
【氏名又は名称】アップリカ・チルドレンズプロダクツ合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 寛
(72)【発明者】
【氏名】益子 満哉
【審査官】 白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−082082(JP,A)
【文献】 特開昭52−053344(JP,A)
【文献】 特開昭57−087757(JP,A)
【文献】 特開平09−193810(JP,A)
【文献】 特開2002−316650(JP,A)
【文献】 特開2004−114982(JP,A)
【文献】 実開昭63−034766(JP,U)
【文献】 特開2000−159121(JP,A)
【文献】 特開昭60−135365(JP,A)
【文献】 特開2014−028618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 7/00−19/04
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部に前輪を有し車幅方向に離隔して配置される1対の前脚と、
下端部に後輪を有し車幅方向に離隔して配置される1対の後脚と、
車幅方向に延び、前記1対の前脚同士および/または前記1対の後脚同士を互いに連結する少なくとも1つの車幅方向部材と、
前記後脚の上下方向中央領域にそれぞれ設けられる1対の後脚ブラケットと、
下端部が前記後脚ブラケットに揺動軸を介してそれぞれ取り付けられて後方の背面押し位置と前方の対面押し位置に揺動可能な1対の押棒と、
前記押棒よりも車幅方向内側に配置されて前記後脚の上端部からそれぞれ後方へ延びる1対の手摺部材と、
下端部が前記後脚または前記後脚ブラケットに軸を介して連結され、上下方向中央領域が軸を介して前記手摺部材の後端部に連結され、上端領域が前記手摺部材を超えて上方へ延びる1対の背もたれ支持棒とを備え、
前記押棒の下端部の車幅方向位置が、前記後脚の上下方向中央領域の車幅方向位置と重なる、背対面切替式乳母車。
【請求項2】
前記背もたれ支持棒は前記手摺部材よりも車幅方向内側に配置される、請求項1に記載の背対面切替式乳母車。
【請求項3】
前記背もたれ支持棒の上端部同士が互いに接続する、請求項1または2に記載の背対面切替式乳母車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押棒を背面押し位置と対面押し位置との間で切り替えることができる背対面切替式乳母車に関する。
【背景技術】
【0002】
背対面切替式乳母車は、乳母車の押棒を幼児用座席後方の背面押し位置と、幼児用座席前方の対面押し位置とに切り替え可能であることから、幼児用座席に着座する乳幼児が乳母車進行方向の視界を得ることができ、あるいは乳母車の操作者が乳母車を前方に押し進めつつ幼児用座席に着座する乳幼児と対面することができる。かかる利便性の故、多くの背対面切替式乳母車が市販されている。
【0003】
一般的な背対面切替式乳母車のフレーム構造として例えば、特開2012−136222号公報(特許文献1)および特開2000−159121号公報(特許文献2)に記載のごときものが知られている。これら特許文献に記載の背対面切替式乳母車は、車幅方向に離隔した1対の前脚と、1対の後脚と、1対の押棒(手押し杆ともいう)を備える。各押棒は、これら前脚および後脚よりも車幅方向外側に配置される。また各押棒の下端は、各後脚の車幅方向外側に付設されたブラケットに支持される。そして各押棒は、下端を中心として前後方向に揺動する。
【0004】
特に特許文献1記載の乳母車は、乳母車の折り畳み操作の際に乳母車の展開状態を解除するためのロック解除機構を備える。ロック解除機構は、押棒と、手摺部材(アームレストともいう)の後端部を支持する手摺支持部材(パイプともいう)に亘って設けられている。
【0005】
また特許文献2記載の乳母車は、手摺部材(手摺枠ともいう)の後端部を支持する手摺支持部材(手摺支持棒ともいう)を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−136222号公報
【特許文献2】特開2000−159121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来のような乳母車にあっては、さらに改善すべき点があることを本発明者は見いだした。特許文献1の乳母車では、フレーム構造とは別に、幼児用座席の背もたれを支持する背もたれ枠を設ける必要がある。背もたれ枠は、ロック解除機構の動作を阻害することがないよう、1対の手摺支持部材には設けられず、例えば前後方向に延びて幼児用座席の座部を支持する前後方向部材(連結バーともいう)や、1対の後脚に設けられて、上方に向かって延びる。特許文献1の手摺支持部材が支持する対象は手摺の後端部のみであり、幼児用座席の背もたれを支持していない。特許文献1記載の乳母車は、手摺支持部材とは別に背もたれ枠を備えることから部品が多く、部品点数において改善の余地がある。
【0008】
特許文献2記載の乳母車では、背もたれ枠(背もたれ部材ともいう)が、手摺部材の後端部に設けられて、上方に向かって延びる。この場合も背もたれ枠および手摺支持部材の双方が必要となり、部品点数において改善の余地がある。
【0009】
本発明は、上述の実情に鑑み、従来よりも部品点数を減らし、簡単な構造でありながら幼児用座席の背もたれを確りと支持することができる背対面切替式乳母車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため本発明による背対面切替式乳母車は、下端部に前輪を有し車幅方向に離隔して配置される1対の前脚と、下端部に後輪を有し車幅方向に離隔して配置される1対の後脚と、車幅方向に延び、1対の前脚同士および/または1対の後脚同士を互いに連結する少なくとも1つの車幅方向部材と、後脚の上下方向中央領域にそれぞれ設けられる1対の後脚ブラケットと、下端部が後脚ブラケットに揺動軸を介してそれぞれ取り付けられて後方の背面押し位置と前方の対面押し位置に揺動可能な1対の押棒と、押棒よりも車幅方向内側に配置されて後脚の上端部からそれぞれ後方へ延びる1対の手摺部材と、下端部が後脚または後脚ブラケットに軸を介して連結され、上下方向中央領域が軸を介して前記手摺部材の後端部に連結され、上端領域が手摺部材を超えて上方へ延びる1対の背もたれ支持棒とを備える
【0011】
かかる本発明によれば、手摺部材の後端部は背もたれ支持棒の上下方向中央領域と連結することから、従来のように手摺支持部材を有さなくても手摺部材の後端部を支持することができる。また背もたれ支持棒は、手摺部材によって前後方向に動かないよう確りと固定され、幼児用座席に座る乳幼児の背中を支えることができる。なお、背もたれ支持棒の下端部が後脚または後脚ブラケットに支持されるとは、背もたれ支持棒の下端部が後脚に直接取り付けられてもよいし、あるいは背もたれ支持棒の下端部が後脚ブラケットを介して後脚に間接的に取り付けられてもよいし、あるいは背もたれ支持棒の下端部が他の部材を介して後脚に間接的に取り付けられてもよい。
【0012】
背もたれ支持棒は押棒よりも車幅方向内側に配置されるとよい。本発明の一実施形態として、背もたれ支持棒は手摺部材よりも車幅方向内側に配置される。他の実施形態として、背もたれ支持棒は手摺部材よりも車幅方向外側に配置される。あるいは他の実施形態として、背もたれ支持棒の車幅方向位置と手摺部材の車幅方向位置が重なるように配置される。
【0013】
本発明の好ましい実施形態として、背もたれ支持棒の上端部同士が互いに接続する。かかる実施形態によれば、1対の背もたれ支持棒全体で乳幼児の背中を支持することができ、乳幼児の背中の荷重が一方の背もたれ支持棒のみに偏在して作用することがない。1対の背もたれ支持棒の上端部同士が互いに接続するとは、1対の背もたれ支持棒が一体形成された1部材であってもよいし、あるいは一方の背もたれ支持棒の上端部と他方の背もたれ支持棒の上端部とが差し込み固定等によって結合されたものであってもよいし、あるいは一方の背もたれ支持棒の上端部と他方の背もたれ支持棒の上端部との間に車幅方向に延びる棒が架設されてもよい。他の実施形態として、車幅方向一方の背もたれ支持棒と車幅方向他方の背もたれ支持棒が互いに切り離されて配置される。
【0014】
本発明のさらに好ましい実施形態として、押棒の下端部の車幅方向位置が、後脚の上下方向中央領域の車幅方向位置と重なる。かかる実施形態によれば、押棒と後脚の接続箇所になる、押棒下端部の車幅方向位置と後脚の上下方向中央領域の車幅方向位置とが重なることから、乳母車の操作者が押棒を押し引きする力が、車幅方向に延びる部材、例えば押棒の揺動軸等を介さず、後脚に直接入力される。したがって特許文献1および特許文献2の従来技術と比較して、フレーム構造のガタツキを軽減することができる。
【0015】
また特許文献1および特許文献2の乳母車と比較して、幼児用座席を包囲する乳母車の車体フレームの車幅方向寸法を、押棒と後脚の重なり幅だけ縮小することができる。これにより乳母車全体の車幅方向寸法を変更することなく幼児用座席の車幅方向寸法を拡張することができる。なお押棒の下端部の車幅方向位置が、後脚の上下方向中央領域の車幅方向位置と重なるとは、少なくとも一部が重なるものであればよく、例えば押棒の下端部と後脚の上下方向中央領域が車幅方向において整列してもよい。また1対の押棒の下端部同士の間隔と、1対の後脚の上下方向中央領域同士の間隔が略等しくてもよい。また一方の押棒の下端部における芯から他方の押棒の下端部における芯までの芯間距離と、一方の後脚の上下方向中央領域における芯から他方の後脚の上下方向中央領域における芯までの芯間距離が略等しくてもよい。前脚と後脚は共通する回動軸で直接的に連結されてもよいし、あるいは他のフレーム部材が介在することによって間接的に連結されてもよい。他の実施形態として、押棒の下端部が、後脚の上下方向中央領域よりも車幅方向外側に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、従来の手摺支持部材を省略することが可能となり、部品点数を減らすことができる。しかも、簡単な構造でありながら幼児用座席の背もたれを確りと支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態になる背対面切替式乳母車を示す斜視図である。
図2】同実施形態を示す側面図である。
図3】同実施形態を示す平面図である。
図4】同実施形態を示す正面図である。
図5】同実施形態を示す背面図である。
図6】押棒と後脚との連結部分を拡大して示す説明図である。
図7】同実施形態を示す斜視図である。
図8】同実施形態を示す側面図である。
図9】同実施形態を示す平面図である。
図10】同実施形態を示す正面図である。
図11】同実施形態を示す背面図である。
図12】押棒と後脚との連結部分を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態になる背対面切替式乳母車を示す斜視図である。図2は同実施形態を示す側面図である。図3は同実施形態を示す平面図である。図4は同実施形態を示す正面図である。図5は同実施形態を示す背面図である。図6は、押棒と後脚との連結部分を拡大して示す説明図である。図1図6はいずれも押棒が背面押し位置にされた状態を示す。発明の理解を容易にするため、図面には背対面切替式乳母車の車体フレームを主に示し、幼児用座席や幌等を省略する。
【0019】
本実施形態の背対面切替式乳母車は、車体フレームとして、1対の前脚11、1対の後脚13、1対の押棒17、1対の座部支持棒19、および少なくとも1つの車幅方向部材を備える。これら各フレーム部材は、車幅方向に離隔して左右に設けられ、対をなす。また車幅方向部材は車幅方向に延びて、対をなす左右のフレーム部材同士を結合するものであればよく、数および配置箇所は特に限定されない。本実施形態では車幅方向部材として、1対の前脚11同士を結合する前脚結合部材21、1対の後脚13同士を結合する後脚結合部材23、1対の押棒17同士を結合するハンドル27、および1対の座部支持棒19同士を結合する座部結合部材29を有する。本実施形態の車体フレームは左右対称に構成されることから、車幅方向一方のフレーム部材について主に説明し、車幅方向他方のフレーム部材については説明を省略する。
【0020】
上下方向に延びる各前脚11の下端には、前輪12が設けられる。各前脚11よりも後方で上下方向に延びる各後脚13の下端には、後輪14が設けられる。車幅方向に延びる前脚結合部材21の両端は、各前脚11の下端部と結合する。車幅方向に延びる後脚結合部材23の両端も、各後脚13の下端部と結合する。前脚11の下端部に前輪12を旋回可能に取り付けるため、および前脚11の下端部と前脚結合部材21の端部を結合するため、前脚11の下端部は前脚11の上下方向中央領域よりも太く形成される。後脚13の下端部も同様である。
【0021】
前脚11の上端および後脚13の上端は車幅方向に延びる回動軸を介して手摺部材15の前端に回動可能に連結される。車体フレームに付設される1対の手摺部材15は、幼児用座席の両側に配置されて、幼児用座席空間と幼児用座席空間よりも車幅方向外側の席外空間とを仕切る。図1に示すように、手摺部材15の前端の車幅方向外側には、前脚11の上端が隣接配置され、前脚11の上端の車幅方向外側には、後脚13の上端が隣接配置される。ただし前脚11の上端の車幅方向外側面は、後脚13の上端を受け入れるよう切り欠かれ、前脚11の上端の車幅方向厚みは前脚11の他の部位よりも略半分に形成される。また後脚13の上端の車幅方向内側面は、前脚11の上端を受け入れるよう切り欠かれ、後脚13の上端の車幅方向厚みは後脚13の他の部位よりも略半分に形成される。そして前脚11の車幅方向厚みと後脚13の車幅方向厚みは略一致する。したがって図4および図5に示すように、前後方向から車体フレームを観察すると、前脚11および後脚13は車幅方向位置が一致するよう整列し、重なってみえる。また手摺部材15は、前脚11および後脚13よりも車幅方向内側に配置され、図1図3に示すように前後方向に真っ直ぐに延びる。
【0022】
各押棒17は上下方向に延び、図1に示すように押棒17の下端は後脚13の上下方向中央領域に連結され、押棒17の上端はハンドル27の端部と結合する。押棒17の車幅方向厚みは、前脚11および後脚13の車幅方向厚みに等しい。したがって図4および図5に示すように、前後方向から車体フレームを観察すると、押棒17と前脚11または後脚13は車幅方向位置が一致するよう整列し、重なってみえる。また図3に示すように、上方から車体フレームを観察すると、押棒17と後脚13は車幅方向位置が一致するよう整列し、重なってみえる。そして手摺部材15は、押棒17よりも車幅方向内側に配置される。
【0023】
各後脚13の上下方向中央領域には、後脚ブラケット16が設けられる。1対の後脚ブラケット16は、1対の後脚13よりも車幅方向内側に隣接して配置される。後脚ブラケット16の周辺構造を拡大して示す図6を参照して、各後脚ブラケット16は略L字のように屈曲して延び、当該L字状の一端側を下端領域として後脚13に沿って上下方向に延び、また当該L字状の他端側を上端領域として後脚13から後方へ突出する。各後脚ブラケット16の上端領域は、車幅方向に延びる揺動軸26を介して、押棒17の下端部と回動可能に連結する。各後脚ブラケット16の下端領域は、車幅方向に延びる回動軸24を介して、後脚13と回動可能に連結する。ただし図6に示すように、後脚ブラケット16の下端領域は、その最下端が後脚13の芯から前方にずれるよう屈曲形成される。また後脚13の上下方向中央領域には、後脚13の芯から前方にずれるよう突出する突出部13pが形成される。そして突出部13pと後脚ブラケット16の最下端が回動軸24を介して連結される。
【0024】
各後脚13の上下方向中央領域における後面には支持部13sが設けられる。支持部13sは後方へ突出し、その先端が押棒17の下端を受け入れるように窪んでいる。これにより支持部13sは押棒17から入力される押圧力を好適に受け止める。具体的には図2および図6に示すように、車幅方向に観察して押棒17の下端部が半円状に丸みを帯びて形成される。また押棒17の下端の丸み形状に対応するように支持部13sの先端が半円状に窪んで形成される。そして押棒17の下端部が支持部13sに突き当てられる。
【0025】
なお図6には示さなかったが、各後脚ブラケット16は、図1に示すように揺動軸26を介して、背もたれ支持棒28の下端と連結する。また各後脚ブラケット16は、上側の揺動軸26と下側の回動軸24との間の部位で、別な支持棒30と連結する。さらに各後脚ブラケット16は、上側の揺動軸26と下側の回動軸24との間の部位で、車幅方向に延びる回動軸を介して、座部支持棒19の後端部と連結する。なお各座部支持棒19の後端は、座部結合部材29の車幅方向端と結合する。これに対し各座部支持棒19の前端は、前脚11の上下方向中央領域と回動軸を介して連結する。1対の座部支持棒19および座部結合部材29は、図示しない幼児用座席の座部を支持する。
【0026】
後脚ブラケット16から立ち上がって延びる背もたれ支持棒28は、図3図5に示すように逆U字状の1部材であって、車幅方向一方の背もたれ支持棒の上端部と車幅方向他方の背もたれ支持棒の上端部が滑らかに結合する。なお背もたれ支持棒28の一方の下端部も他方の下端部も、各後脚ブラケット16の車幅方向内側に取り付けられる。背もたれ支持棒28は、図示しない幼児用座席の背もたれ部を支持する。また背もたれ支持棒28は、揺動軸26よりも上方の上下方向中央領域で、図1に示すように軸31を介して手摺部材15の後端部と連結される。前脚11、後脚13、押棒17、座部支持棒19、車幅方向部材といった車体フレームのフレーム部材は、幼児用座席の荷重を常時支持するとともに、背対面切替式乳母車の操作者が押棒17に加える力を受け止める。手摺部材15、背もたれ支持棒28、支持棒30といった非フレーム部材は、車体フレームのように幼児用座席の荷重および押棒17の力を負担するものではないため、自身の曲げ強度および相手材への取り付け強度が車体フレームのフレーム部材よりも小さくてよい。
【0027】
逆U字状の背もたれ支持棒28には、図示しない幼児用座席の背もたれを吊るすように取り付けるとよい。好ましくは背もたれ支持棒28から、背もたれ支持棒28に吊り下げ支持された背もたれまでの距離を可変とすることにより、幼児用座席のリクライニング機能を実現してもよい。いずれにせよ背もたれ支持棒28は、手摺部材15よりも車幅方向内側に配置される。これにより背もたれ支持棒28は、手摺部材15よりも車幅方向外側に配置される押棒17と干渉することがない。
【0028】
逆U字状の支持棒30は、逆U字状の背もたれ支持棒28よりも車幅方向内側に配置され、例えば略水平状態まで後傾される幼児用座席の背もたれを支持する。支持棒30の一方の下端部も他方の下端部も、各後脚ブラケット16の車幅方向内側に取り付けられる。
【0029】
本実施形態の背対面切替式乳母車は折り畳み可能である。折り畳み操作は、図1図6に示す展開状態を保持する図示しない展開状態ロック機構を解除し、押棒17を支持部13sから離す方向に引き上げ、後脚ブラケット16を上下反転させるように回動させることにより行う。後脚ブラケット16の上下反転に伴い座部支持棒19は、後端が前端よりも低くなるよう後方へ回動し、前脚11を後脚13に向かって引き込む。そうすると前脚11および後脚13は、自身の上端の回動軸を中心として手摺部材15に近づき、手摺部材15や座部支持棒19とともに直立姿勢になる。また押棒17および背もたれ支持棒28は展開状態のときよりも低い位置に変位し、かつ直立姿勢になる。これにより背対面切替式乳母車は、展開状態よりも前後方向および高さ方向が縮小された折り畳み状態にされる。
【0030】
次に押棒17の対面押し位置について説明する。図7図11は押棒17の対面押し位置を示す図であって、図7は斜視図であり、図8は側面図であり、図9は平面図であり、図10は正面図であり、図11は背面図であり、図12は、押棒と後脚との連結部分を拡大して示す説明図である。
【0031】
各押棒17は、その下端に設けられた揺動軸26を中心として前後に揺動可能であり、図1図6に示すように後方の背面押し位置と、図7図12に示すように前方の対面押し位置とに揺動可能である。そして押棒17は図示しない押棒ロック機構によって背面押し位置または対面押し位置に保持される。対面押し位置で各押棒17の下端領域は、図8に示すように前脚11の上端領域と略平行に延びる。そして図12に示すように押棒17の下端が支持部13sの半円状窪みに受け入れられて支持されるとともに、後脚13の上端および前脚11の上端が押棒17の上下方向途中部分を支持する。
【0032】
ところで本実施形態によれば、後脚13の上下方向中央領域にそれぞれ設けられる1対の後脚ブラケット16と、下端部が後脚ブラケット16に揺動軸26を介してそれぞれ取り付けられて後方の背面押し位置と前方の対面押し位置に揺動可能な1対の押棒17とを備える。そして図5および図11に示すように、押棒17の下端部の車幅方向位置が、後脚13の上下方向中央領域の車幅方向位置と重なることを特徴とする。これにより背対面切替式乳母車の操作者が押棒17を押し引きしても、押棒17の力が支持部13sを経て後脚13に直接入力される。したがって押棒17の力が車幅方向に伝達されることがなく、従来技術で問題となっていた押棒や車体フレームのガタツキを軽減することができる。
【0033】
また本実施形態によれば、図6に示すように後脚ブラケット16の上端は後脚13から後方へ突出し、押棒17は背面押し位置で揺動軸26から上方に向かうにつれて後脚13から離れるように延びる。また押棒17は図8に示すように対面押し位置で後脚13の上端部に沿って延びる。これにより対面切替式乳母車の操作者が押棒17を押し引きしても、押棒17の力が支持部13sを経て後脚13に直接入力される。
【0034】
また本実施形態によれば、押棒17よりも車幅方向内側に配置されて後脚13の上端部からそれぞれ後方へ延びる1対の手摺部材15をさらに備える。これにより1対の手摺部材15間の幼児用座席空間と、1対の手摺部材15の車幅方向外側に位置する押棒17の揺動領域とを分けることができる。
【0035】
また本実施形態によれば、下端部が後脚13に支持されて上方へ延びる幼児用座席の背もたれ支持棒28をさらに備え、手摺部材15の後端部が軸31を介して背もたれ支持棒28の上下方向中央領域と連結する。これにより背もたれ支持棒28は安定して支持される。
【0036】
また本実施形態によれば、前後方向に延びる1対の座部支持棒19をさらに備え、座部支持棒19の前端部が前脚11の上下方向中央部に回動可能に取り付けられ、座部支持棒19の後端部が後脚ブラケット16に回動可能に連結される。後脚ブラケット16は、後脚13の上下方向中央領域および押棒17の下端部からみて車幅方向にずらして配置される。後脚ブラケット16の下端部は回動軸24を介して後脚13の上下方向中央領域に回動可能に連結される。後脚ブラケット16の上端部は揺動軸26を介して押棒17の下端部に揺動可能に連結される。そして後脚ブラケット16の上端部および下端部を上下に反転回動させて折り畳まれるよう構成される。これにより背対面切替式乳母車の不使用時には折り畳んで縮小することができる。
【0037】
また本実施形態によれば、前脚11の上端部および後脚13の上端部は、互いに受け入れるよう切り欠かれて形成されて、図4図5図10、および図11に示すように前脚11の上下方向中央領域の車幅方向位置が、後脚13の上下方向中央領域の車幅方向位置と重なる。これにより対面切替式乳母車の操作者が押棒17を押し引きしても、押棒17の力が車幅方向に延びる部材を介することなく後脚13の上端部を経て前脚11に入力され、従来技術で問題となっていた押棒や車体フレームのガタツキを益々軽減することができる。
【0038】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明になる対面切替式乳母車は、育児器具において有利に利用される。
【符号の説明】
【0040】
11 前脚、 13 後脚、 13s 支持部、 15 手摺部材、
16 後脚ブラケット、 17 押棒、 19 座部支持棒、
21 前脚結合部材、 23 後脚結合部材、 24 回動軸、
26 揺動軸、 27 ハンドル、 28 背もたれ支持棒、
29 座部結合部材、 30 支持棒、 31 軸。
図1
図2
図3
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図5
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図12