特許第6334959号(P6334959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝電機サービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6334959-生物脱臭装置及び生物脱臭方法 図000002
  • 特許6334959-生物脱臭装置及び生物脱臭方法 図000003
  • 特許6334959-生物脱臭装置及び生物脱臭方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334959
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】生物脱臭装置及び生物脱臭方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/38 20060101AFI20180521BHJP
   B01D 53/34 20060101ALI20180521BHJP
   B01D 53/77 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B01D53/38 120
   B01D53/34ZAB
   B01D53/77
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-41964(P2014-41964)
(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2015-167870(P2015-167870A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】時本 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】小原 卓巳
(72)【発明者】
【氏名】永森 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】足利 伸行
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−194028(JP,A)
【文献】 特開2000−233114(JP,A)
【文献】 特開平09−313872(JP,A)
【文献】 特表2004−533916(JP,A)
【文献】 特開2011−251250(JP,A)
【文献】 特開2008−284547(JP,A)
【文献】 特開平02−119918(JP,A)
【文献】 特開2012−255155(JP,A)
【文献】 特開2000−176238(JP,A)
【文献】 特開2007−260559(JP,A)
【文献】 特開平03−242222(JP,A)
【文献】 特開平04−371213(JP,A)
【文献】 特開平06−099021(JP,A)
【文献】 特開2001−029735(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気成分を含有するガスが導入される生物反応塔と、
前記生物反応塔の内部に設けられ、微生物が保持された担体を有する充填層と、
前記生物反応塔の内部に設けられ、前記充填層より下方において微生物を含む水を貯留しこの微生物を濃縮する微生物濃縮部を有する微生物貯留槽と、
前記微生物濃縮部から引き抜いた微生物を前記充填層に供給可能な微生物供給機構と、
前記生物反応塔における前記臭気成分の処理能力の不足を検知する検知部と、
前記検知部によって前記臭気成分の処理能力の不足が検知された場合に前記微生物供給機構に対して、前記微生物貯留槽から微生物を引き抜かせて前記充填層に供給させる指令を発する制御部と、を備え、
前記生物反応塔には、前記臭気成分が処理されたガスを排出するガス排出部が設けられ、
前記検知部が、ガス排出部を通過するガスに含まれる臭気成分の濃度を検出する臭気成分濃度検出計であり、
前記ガス排出部には、ガスを排出する流動経路を形成するファンが設けられ、
前記制御部は、前記微生物供給機構、前記検知部および前記ファンと接続され、これらの動作を制御するとともに、これらが正常に作動しているか監視し、異常を検知した場合に警告を発してこれら全体の運転を停止し、
前記制御部は、再稼働時に、前記微生物供給機構に対して、前記微生物貯留槽から微生物を引き抜かせて前記充填層に供給させる指令を発する、
生物脱臭装置。
【請求項2】
前記臭気成分を含有するガスを前記生物反応塔内に導入するガス導入部が、前記充填層より下方に設けられている請求項1に記載の生物脱臭装置。
【請求項3】
前記臭気成分を含有するガスを前記生物反応塔内に導入するガス導入部が、前記微生物貯留槽の底部に設けられ、前記臭気成分を含有するガスが前記微生物濃縮部を通過するように構成されている請求項1又は2に記載の生物脱臭装置。
【請求項4】
前記微生物貯留槽に前記水とともに活性汚泥が貯留されている請求項1〜3の何れか一項に記載の生物脱臭装置。
【請求項5】
前記微生物貯留槽の前記水のpHを調整するpH調整部が備えられている請求項1〜4の何れか一項に記載の生物脱臭装置。
【請求項6】
前記微生物貯留槽から引き抜いた前記水を前記充填層に散水する散水部が備えられている請求項1〜5の何れか一項に記載の生物脱臭装置。
【請求項7】
微生物が保持された担体を有する充填層と、この充填層の下方に配置され水と前記充填層から脱落した微生物を貯留する微生物貯留槽と、を備えた生物反応塔を用い、
前記生物反応塔に臭気成分を含有するガスを導入し、前記充填層を通過させることで前記臭気成分を分解し、
前記微生物貯留槽の下方において前記微生物を濃縮する微生物濃縮部を形成し、前記充填層の微生物が不足した場合に微生物濃縮部から微生物を引き出し、前記充填層に供給し、
前記生物反応塔における脱臭能力の不足を検知する検知部を設け、前記検知部により前記臭気成分の処理能力の不足を検知した場合、
又は、前記生物反応塔の運転を停止させたのちに、再稼働させる場合に、
前記微生物濃縮部から微生物を引き出し、前記充填層に供給し、
前記検知部は、前記生物反応塔からガスを排出する経路においてガスに含まれる臭気成分の濃度を検出し、
前記微生物濃縮部から微生物を引き出し、前記充填層に供給する微生物供給機構と、前記臭気成分の処理能力の不足を検知する検知部と、前記生物反応槽から臭気成分が処理されたガスを排出するためのファンと、が正常に動作しているか監視し、異常を検知した場合に警告を発してこれら全体の運転を停止する、
生物脱臭方法。
【請求項8】
前記臭気成分を含有するガスを前記生物反応塔の底部から導入し前記微生物濃縮部に通過させる請求項7に記載の生物脱臭方法。
【請求項9】
前記微生物貯留槽に、前記水とともに活性汚泥を予め貯留しておく請求項7又は8の何れか一項に記載の生物脱臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、生物脱臭装置及び生物脱臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場等の臭気を発生する設備では臭気対策として排出ガスの脱臭処理が行われている。脱臭処理の技術として環境負荷が低く低コストであることから、充填塔式の生物脱臭法が採用されている。この脱臭法は、充填塔内の充填層に充填した担体へ微生物を高密度に保持して、微生物により臭気物質を酸化分解し無臭化する手法である。この脱臭法では、装置の停止後に再稼働させる場合に、処理能力を回復させるために長い時間を要するという問題がある。また、臭気物質の濃度が高まり処理能力が不足した場合などに、即座に微生物の処理能力(脱臭能力)を高めることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−255155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、脱臭能力を短時間で高めることができる生物脱臭装置及び生物脱臭方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の生物脱臭装置は、生物反応塔と、充填層と、微生物貯留槽と、微生物供給機構と、検知部と、制御部と、を持つ。生物反応塔には、臭気成分を含有するガスが導入される。生物反応塔には、臭気成分が処理されたガスを排出するガス排出部が設けられる。充填層は、生物反応塔の内部に設けられている。また、充填層は、微生物が保持された担体を持つ。微生物貯留槽は、生物反応塔の内部に設けられている。また、微生物貯留槽は、充填層より下方において微生物を含む水を貯留する。また、微生物貯留槽は、微生物を濃縮する微生物濃縮部を持つ。微生物供給機構は、微生物濃縮部から引き抜いた微生物を充填層に供給可能である。検知部は、生物反応塔における臭気成分の処理能力の不足を検知する。検知部は、ガス排出部を通過するガスに含まれる臭気成分の濃度を検出する臭気成分濃度検出計である。制御部は、検知部によって臭気成分の処理能力の不足が検知された場合に微生物供給機構に対して、微生物貯留槽から微生物を引き抜かせて充填層に供給させる指令を発する。ガス排出部には、ファンが設けられる。ファンは、ガスを排出する流動経路を形成する。制御部は、微生物供給機構、前記検知部および前記ファンと接続される。制御部は、微生物供給機構、前記検知部および前記ファンの動作を制御する。制御部は、微生物供給機構、前記検知部および前記ファンが正常に作動しているか監視する。制御部は、微生物供給機構、前記検知部および前記ファンに異常を検知した場合に警告を発して微生物供給機構、前記検知部および前記ファンの運転を停止する。制御部は、再稼働時に、微生物供給機構に対して、微生物貯留槽から微生物を引き抜かせて充填層に供給させる指令を発する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態の生物脱臭装置の全体構成を示す図。
図2】第2の実施形態の生物脱臭装置の全体構成を示す図。
図3】第3の実施形態の生物脱臭装置の全体構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の生物脱臭装置及び生物脱臭方法を、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1に第1の実施形態の生物脱臭装置1の全体構成を示す。生物脱臭装置1は、生物反応塔2と、この生物反応塔2に接続された微生物供給機構8と、ガス導入管3(ガス導入部)と、ガス排出管4(ガス排出部)と、pH調整部5と、散水部6と、制御部9とを有している。
生物反応塔2の内部には、担体11が充填された充填層10が配置されている。また、生物反応塔2の内部において充填層10の下方には、微生物貯留槽15が配置されている。
【0009】
充填層10に充填された担体11には、生物反応塔2に導入されるガスが含む臭気成分を酸化分解可能な微生物が付着している。
担体11に付着させる微生物は、予め対象とする臭気成分に対して分解可能なものを選んで付着させておくことができる。また、充填層10を様々な微生物が生息する活性汚泥中に浸漬させ多様な微生物を付着させておいてもよい。この場合は、生物脱臭装置1の稼働によって、対象とする臭気成分を分解する微生物が増加し、次第にこの微生物が充填層10の内部で支配的になる。
【0010】
生物反応塔2の側部であって充填層10より下方には、ガス導入管3が接続されている。また、生物反応塔2の頂部であって、充填層10の上方には、ガス排出管4が設けられている。ガス排出管4の経路中には、臭気成分濃度検出計4b(検知部)とファン4aが設けられている。
【0011】
ガス導入管3は、下水処理設備等と接続されており、臭気成分を含むガスが導入される。このガスは、例えば硫黄系化合物、窒素系化合物、脂肪酸系化合物、トルエン、キシレン等の臭気成分を含んでいる。
ガス排出管4に設けられたファン4aを稼働させることで、生物反応塔2の内部が負圧となり、ガス導入管3から生物反応塔2を介してガス排出管4に向かうガスの流動経路が形成される。ガス導入管3から導入されたガスは、生物反応塔2の内部において充填層10を通過する。充填層10を通過する過程で、ガスに含まれる臭気成分が微生物によって酸化分解される。
なお、ガス導入管3とガス排出管4位置関係は、ガスの流動経路中にガスが充填層10を通過するように構成されていれば、図1に示す形態に限定されるものではない。例えば、ガス導入管3が生物反応塔2の頂部に接続され、ガス排出管4が生物反応塔2の側部であって、充填層10の下方に接続されていてもよい。
【0012】
ガス排出管4に設けられた臭気成分濃度検出計4bは、ガス排出管4を通過するガスに含まれる臭気成分の濃度を検出可能に構成されている。臭気成分濃度検出計4bによる検出結果から、ガス中の臭気成分が十分に酸化処理されているかを継続的に測定できる。即ち、臭気成分濃度検出計4bは、生物反応塔2の脱臭能力を検出できる。
【0013】
ガス排出管4に設けられた臭気成分濃度検出計4bとともに、ガス導入管3にも別途臭気成分濃度検出計を設け、生物反応塔2への導入前後の濃度を検出してもよい。この場合は、検出結果の差分をとることで、生物反応塔2の処理性能(脱臭能力)を正確に測定できる。
なお、臭気成分濃度検出計4bは、生物反応塔2における脱臭能力の不足を検知する検知手段であれば、設けられる場所や測定方法が限定されるものではない。
【0014】
生物反応塔2の内部において充填層10の下方に配置された微生物貯留槽15には水16が満たされており、充填層10から脱落した微生物がこの水中に貯留される。なお、充填層10の微生物は、増殖に伴い自然に落下するか、または散水部6による散水により落下する。
また、微生物貯留槽15は、微生物を含む水16が貯留される微生物貯留部13とその下方で微生物を濃縮する微生物濃縮部14とを有する。微生物貯留槽15の底部には、下方に向かって窄んだ形状を備えた狭窄部15aが形成されていている。この狭窄部15aに微生物濃縮部14が形成され、充填層10から脱落した微生物は、微生物貯留槽15の内部で水中を沈み微生物濃縮部14で濃縮される。
【0015】
散水部6は、散水用配管6aと散水用ポンプ6bと散水用シャワーノズル6cとを備えている。散水用配管6aは、微生物貯留槽15の微生物貯留部13から生物反応塔2の外部を経由して、充填層10の上方に延びて配管されている。散水用ポンプ6bは、散水用配管6aの経路中に設けられ、水16を散水用配管6aの下方から上方に流すことができる。散水用シャワーノズル6cは、充填層10の上方に延びる散水用配管6aに設けられており、充填層10の全体に散水可能に構成されている。
【0016】
散水部6は、散水用ポンプ6bにより微生物貯留部13から水16を引き抜き、散水用配管6a及び散水用シャワーノズル6cを介して充填層10に散水することができる。充填層10への散水は、散水用ポンプ6bを継続的に稼働し、途切れることなく行っても、間欠的に行ってもよい。
微生物による臭気物質の酸化分解には酸素と水分が必要である。酸素はガス導入管3から導入されるガス中に含まれている。また、水分は、散水部6による充填層10への散水により微生物に供給される。
【0017】
充填層10における微生物の増殖が進むと、担体11同士の隙間が微生物により埋め尽くされて、充填層10に詰まりが生じる。充填層10に詰まりが生じると、臭気成分を含有するガスが生物反応塔2の内部に流れにくくなる。散水部6による散水は、充填層10の詰まりを抑制する役割も果たしている。即ち、散水部6の散水によって、担体11に付着して増殖した微生物の一部を担体11から洗い流し、充填層10の下方に設定された微生物貯留槽15に脱落させることができる。
【0018】
微生物貯留槽15には、pH測定計7が設けられている。
また、微生物貯留槽15には、外部から生物反応塔2に接続されたpH調整部5が設けられている。pH調整部5は、pH調整剤が貯留されたpH調整剤槽5cと、pH調整剤槽5cから微生物貯留槽15に延びるpH調整用配管5aと、pH調整用配管5aの経路中に設けられたpH調整用ポンプ5bとを有している。
【0019】
臭気成分を分解する微生物は、その分解過程の副産物として酸性又はアルカリ性の物質を生成することがある。酸性又はアルカリ性の物質が生成されると、水16が酸性又はアルカリ性となり、微生物の増殖が妨げられる虞がある。一例として、ガスに硫黄系の臭気成分が含まれる場合には、充填層10の微生物の分解処理の副産物として硫酸が生成され、微生物の増殖が妨げられる。したがって、充填層10に散水される水16のpHは中性域とすることが好ましい。
pH調整部5は、pH測定計7の測定結果に基づいて、pH調整剤を微生物貯留槽15に導入して微生物貯留槽15のpHを調整することができる。pH調整部5によって、微生物貯留槽15のpHを調整することで、散水部6により散水される微生物貯留槽15のpHを中性域とし、充填層10のpHの偏りを抑制できる。
【0020】
また、微生物貯留槽15には、充填層10から脱落した微生物が貯留されている。微生物貯留槽15のpHを中性域とすることで、微生物貯留槽15に貯留された微生物の活性を保つことができる。
加えて、微生物貯留槽15の水16を中性域とすることで、生物反応塔2の躯体の腐食を抑制できる。
【0021】
なお、対象とする臭気成分によって、生成される副産物が酸性であるとあらかじめ分かっている場合には、pHを測定するpH測定計7の代わりにアルカリ度を測定する測定計を配置してもよい。また、pH調整剤槽5cには、例えばNaOHなどのアルカリ剤を貯留しておくことができる。
【0022】
微生物貯留槽15において、充填層10から脱落した微生物を濃縮する微生物濃縮部14には、微生物供給機構8の供給用配管8aが接続されている。
微生物供給機構8は、供給用配管8aと供給用ポンプ8bと供給用シャワーノズル8cとを備えている。供給用配管8aは、微生物貯留槽15の微生物濃縮部14から、生物反応塔2の外部を経由して、充填層10の上方に延びて配管されている。微生物濃縮部14は、微生物貯留槽15の底部の狭窄部15aに形成されており、供給用配管8aは、この狭窄部15aの最下端に接続されている。供給用ポンプ8bは、供給用配管8aの経路中に設けられ、濃縮された微生物を含む水を供給用配管8aの下方から上方に流すことができる。供給用シャワーノズル8cは、充填層10の上方に延びる供給用配管8aに設けられており、充填層10の全体に濃縮された微生物を吹き付けることができる。
【0023】
微生物供給機構8は、供給用ポンプ8bにより微生物濃縮部14から濃縮された微生物を引き抜き、供給用配管8a及び供給用シャワーノズル8cを介して充填層10に供給することができる。
【0024】
制御部9は、ファン4a、臭気成分濃度検出計4b、pH調整用ポンプ5b、pH測定計7、散水用ポンプ6b、供給用ポンプ8bと接続されている。
制御部9は、動作部を有するファン4a、pH調整用ポンプ5b、散水用ポンプ6b、供給用ポンプ8bの動作を制御できる。また、これらの動作部が正常に作動しているか監視することができる。
【0025】
また、制御部9は、pH測定計7の測定結果に基づき、pH調整用ポンプ5bを動作させて、pH調整剤槽5cから微生物貯留槽15にpH調整剤を導入させることができる。
また、制御部9は、臭気成分濃度検出計4bによる検出結果から、生物脱臭装置1の処理能力の低下を判断することができる。加えて、制御部9は、生物脱臭装置1の処理能力が不足していると判断した場合に、供給用ポンプ8bを動作させることができる。
【0026】
次に第1の実施形態の生物脱臭装置1による、臭気ガスの分解処理方法について説明する。
ガス排出管4の配管経路中に設けられたファン4aの働きにより臭気成分を含むガスが、ガス導入管3から生物反応塔2に導入される。このガスは、充填層10を通過しガス排出管4から生物反応塔2の外部に排出される。ガスが充填層10を通過する過程で、充填層10に充填された担体11に付着した微生物の働きにより、臭気成分が分解除去される。
また、ガス排出管4に設けられた臭気成分濃度検出計4bは、ガス排出管4を通過するガス中の濃度を検出する。
【0027】
ガス導入管3から生物反応塔2に導入されるガスに含まれる臭気成分の濃度が高まった場合には、生物反応塔2の脱臭能力が不足する場合がある。即ち、充填層10の微生物の量が、導入される臭気成分の濃度に対し不十分である場合ある。この場合には、ガス排出管4を通過するガス中に臭気成分の濃度が高くなり、臭気成分濃度検出計4bがそれを検知することができる。制御部9は、ガス排出管4に設けられた臭気成分濃度検出計4bによる検出結果を基に供給用ポンプ8bを動作させる。
供給用ポンプ8bが動作すると、微生物濃縮部14に濃縮された微生物が、供給用配管8aを通過して、供給用シャワーノズル8cを介し、充填層10に供給される。これにより、充填層10の微生物の量が増加させ、生物反応塔2の脱臭能力を向上させることができる。
【0028】
充填層10の担体11に付着した微生物は、臭気成分の分解を行うことによって増殖する。充填層10は、散水部6により継続的、又は間欠的に水16が供給されることで、一部の微生物を微生物貯留槽15に脱落させ、充填層10が閉塞することを防いでいる。
しかしながら、微生物の増殖が急速である場合は、充填層10の担体11同士の隙間を微生物が覆い閉塞する。このような場合は、充填層10を作業者の手作業などによって、洗浄する必要が生じる。洗浄後の充填層10は、微生物の量が著しく少ない状態となる。したがって、洗浄後に生物脱臭装置1の運転を再開する際には、供給用ポンプ8bを動作させ、充填層10に微生物を供給する。これにより、洗浄後の生物反応塔2の脱臭能力を即座に高い状態とすることができる。
なお、運転再開後の充填層10への微生物供給は、再稼働時に制御部9が微生物供給機構8へ指令を発することにより自動的に行わせることができる。
【0029】
生物脱臭装置1において、動作部を有するファン4a、pH調整用ポンプ5b、散水用ポンプ6b、供給用ポンプ8bは、制御部9によって正常に動作しているか監視されている。これらが何らかの異常で停止した場合には、制御部9により警告が発せられ、生物脱臭装置1の運転が停止される。
作業者は、運転停止の原因を特定して、対象の機構の修理又は交換を行う。この間、生物脱臭装置1は運転を停止しているため、充填層10の微生物の活動が停止し、充填層中の微生物が著しく減少、又は活性が低下することがある。したがって、運転再開にあたっては、供給用ポンプ8bを動作させ、充填層10に微生物を供給する。これにより、運転再開後の生物反応塔2の脱臭能力を即座に高い状態とすることができる。
なお、運転再開後の充填層10への微生物供給は、再稼働時に制御部9が微生物供給機構8へ指令を発することにより自動的に行わせることができる。
【0030】
第1の実施形態の生物脱臭装置1の変形例として、ガス排出管4に臭気成分濃度検出計4bが設けられていない場合が挙げられる。臭気成分濃度検出計4bを備えていない場合には、生物脱臭装置1の処理能力を定常的に監視することがない。そのような場合には、装置の定期点検の際に、ガス排出管4から排出されるガスをサンプリングして、臭気成分濃度を測定する。この測定結果から、生物脱臭装置1の処理能力が不足していると判断された場合には、供給用ポンプ8bを作動させ、充填層10に微生物を供給する。これにより、充填層10の微生物の量が増加させ、生物反応塔2の脱臭能力を向上させることができる。
【0031】
第1の実施形態の生物脱臭装置1は、充填層10の下方に充填層10から脱落した微生物を貯留する微生物貯留槽15が配置され水16が満たされている。また、この微生物貯留槽15の下部には狭窄部15aが形成されている。狭窄部15aが形成されていることによって、微生物貯留槽15の内部の微生物を一か所に集めて濃縮することができる(微生物濃縮部14を形成することができる)。
【0032】
また、生物脱臭装置1には、微生物濃縮部14に濃縮された微生物を、充填層10に供給するための微生物供給機構8が設けられている。これによって、充填層10の微生物の脱臭能力が不足した場合などに、充填層10に微生物を補充することができる。
【0033】
生物脱臭装置1には、生物反応塔2を通過したガスに含まれる臭気成分の濃度を測定する臭気成分濃度検出計4bが設けられている。この臭気成分濃度検出計4bは、生物反応塔2の脱臭能力の不足を検知することができる。また、臭気成分濃度検出計4bは、制御部9と接続されている。制御部9は、生物反応塔2の脱臭能力が低下した際に、供給用ポンプ8bを動作させて、充填層10に微生物を補充することができる。充填層10に微生物を補充することで、生物反応塔2の脱臭能力が向上する。したがって、生物反応塔2に導入されるガスに含まれる臭気成分の濃度に対し、処理能力が不足している場合に、即座に処理能力を向上させ、臭気成分の残留を抑制できる。
【0034】
また、何らかの理由で生物脱臭装置1の運転を停止し、再度運転を開始する場合にも、供給用ポンプ8bを動作させることができる。運転が停止している状態では、充填層10の微生物が著しく減少している場合がある。運転再開にあたって供給用ポンプ8bを動作させ、充填層10に微生物を供給することで、再稼働直後から処理能力を高めて運転することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
図2に第2の実施形態の生物脱臭装置20の全体構成を示す。生物脱臭装置20は、第1の実施形態の生物脱臭装置1と比較して、ガス導入管23とガス排出管24の構成が異なる。なお、上述の第1の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付しその説明を省略する。
【0036】
生物脱臭装置20のガス導入管23は、生物反応塔2の底部に設けられている。生物反応塔2の下部には、微生物貯留槽15が配置されており、ガス導入管23は、この微生物貯留槽15の底部(狭窄部15a)に接続されている。
【0037】
微生物貯留槽15は、微生物を含む水16が貯留される微生物貯留部13とその下方で微生物を濃縮する微生物濃縮部14とを有する。微生物貯留槽15の底部には、狭窄部15aが形成されていており、この狭窄部15aに微生物濃縮部14が形成され微生物が濃縮されている。ガス導入管23は、この狭窄部15aに接続されている。即ち、生物反応塔2に導入されるガスは、微生物濃縮部14を通過する。
【0038】
ガス導入管23には、ファン23aが設けられている。これにより臭気成分を含むガスを強制的に生物反応塔2に導入することができる。
ガス導入管23から生物反応塔2に導入された臭気成分を含むガスは、生物反応塔2を下方から上方に向かって通過する。さらに生物反応塔2の頂部に接続されたガス排出管24から排出される。ガス導入管23に設けられたファン23aの働きにより、生物反応塔2の内部の圧力は高くなるため、ガス排出管24を介し生物反応塔2からガスが排出される。
【0039】
ガス導入管23から生物反応塔2に導入された臭気成分を含むガスは、微生物貯留槽15の微生物濃縮部14、微生物貯留部13を順に通過する。さらにこのガスは、上昇して充填層10を通過し、頂部に接続されたガス排出管24から排出される。
微生物濃縮部14には微生物が濃縮されているため、ガスに含まれる臭気成分が濃縮された微生物によって一部分解される。さらに、充填層10においても、担体11に付着した微生物によって臭気成分が分解される。
【0040】
第2の実施形態の生物脱臭装置20は、第1の実施形態の生物脱臭装置1と同様の効果を奏することができる。加えて、臭気成分を含むガスが、微生物濃縮部14と充填層10を通過し、微生物濃縮部14でも臭気成分が分解されるため、充填層10のみを通過する場合と比較して、臭気成分の分解効率を高めることができる。また、臭気成分を含むガスを微生物濃縮部14に通過させることで、微生物濃縮部14に貯留された微生物の増殖を助け、微生物濃縮部14の微生物を増加させることができる。さらに、微生物濃縮部14の微生物の活性を高く保つことができる。したがって、充填層10の処理能力が不足した場合、又は生物脱臭装置20の再稼働時に、より多くの微生物を充填層10に供給することが可能となる。また、活性の高い微生物を充填層10に供給することができる。したがって、充填層10の処理能力をより効果的にまた確実に向上させることができる。
【0041】
(第3の実施形態)
図3に第3の実施形態の生物脱臭装置30の全体構成を示す。生物脱臭装置30は、第2の実施形態の生物脱臭装置20と比較して、微生物貯留槽35の微生物貯留部33に水に加えて予め活性汚泥39が貯留されている点が異なる。活性汚泥39は、有機性排水を処理する活性汚泥法において用いられている汚泥である。
なお、第1の実施形態、又は第2の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付しその説明を省略する。
【0042】
生物脱臭装置30のガス導入管23は、生物反応塔2の底部に設けられている。生物反応塔2の下部には、微生物貯留槽35が配置されており、ガス導入管23は、この微生物貯留槽35の底部に接続されている。
微生物貯留槽35は、活性汚泥39が貯留される微生物貯留部33と、その下方で微生物を濃縮する微生物濃縮部34とを有する。微生物貯留槽35の底部の狭窄部35aが形成されていており、ガス導入管23は、狭窄部35aに接続されている。即ち、生物反応塔2に導入されるガスは、微生物濃縮部34と活性汚泥39が貯留された微生物貯留部33を通過する。
【0043】
ガス導入管23から生物反応塔2に導入された臭気成分を含むガスは、微生物貯留槽35の微生物濃縮部34、微生物貯留部33を順に通過する。さらにこのガスは、上昇して充填層10を通過し、頂部に接続されたガス排出管24から排出される。
微生物濃縮部34には微生物が濃縮されているため、ガスに含まれる臭気成分が濃縮された微生物によって一部分解される。次いで、微生物貯留部33に貯留された活性汚泥39により、臭気成分の一部がさらに分解される。さらに、充填層10においても、担体11に付着した微生物によって臭気成分が分解される。
【0044】
第3の実施形態の生物脱臭装置30は、第1の実施形態の生物脱臭装置1と同様の効果を奏することができる。加えて、臭気成分を含むガスが、微生物濃縮部34と微生物貯留部33と充填層10とを順次通過し、微生物濃縮部34及び微生物貯留部33でも臭気成分が分解されるため、充填層10のみを通過する場合と比較して、臭気成分の分解効率を高めることができる。
また、臭気成分が微生物貯留槽35(微生物濃縮部34及び微生物貯留部33)を通過することで、微生物貯留槽35に貯留された微生物の増殖を助け、さらに微生物の活性を高めることができる。これにより、微生物濃縮部34の微生物を増加させ、活性を高めることができる。充填層10の処理能力が不足した場合、又は生物脱臭装置30の再稼働時に、より多くの微生物を充填層10に供給することが可能となる。また、活性の高い微生物を充填層10に供給することができる。したがって、充填層10の処理能力をより効果的にまた確実に向上させることができる。
【0045】
さらに、微生物貯留槽35に、水に加えて予め活性汚泥39を貯留しておくことで、装置全体に微生物が不足することがない。例えば、生物脱臭装置30を長期間停止させたのちの再稼働させる場合などには、充填層10の微生物が不足することが考えられる。しかしながら、この生物脱臭装置30の微生物貯留槽35には活性汚泥として微生物が貯留しているために、微生物供給機構8を動作させることで、装置を復帰させることができる。
【0046】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、充填層10の下方に充填層10から脱落した微生物を貯留しこれを濃縮する微生物濃縮部14、34と、この微生物濃縮部14、34から濃縮された微生物を引き抜き充填層10に供給可能な微生物供給機構8を持つことにより、脱臭能力を短時間で高めることができる生物脱臭装置及び生物脱臭方法を提供することができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0048】
1、20、30…生物脱臭装置、2…生物反応塔、3、23…ガス導入管(ガス導入部)、4、24…ガス排出管(ガス排出部)、4a、23a…ファン、4b…臭気成分濃度検出計(検知部)、5…pH調整部、5a…pH調整用配管、5b…pH調整用ポンプ、5c…pH調整剤槽、6…散水部、6a…散水用配管、6b…散水用ポンプ、6c…散水用シャワーノズル、7…pH測定計、8…微生物供給機構、8a…供給用配管、8b…供給用ポンプ、8c…供給用シャワーノズル、9…制御部、10…充填層、11…担体、13、33…微生物貯留部、14、34…微生物濃縮部、15、35…微生物貯留槽、15a、35a…狭窄部(底部)、16…水、39…活性汚泥
図1
図2
図3