(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1〜12を参照して、本発明の燃料タンク用弁装置の一実施形態について説明する。
【0019】
図1,2に示すように、この燃料タンク用弁装置10(以下、「弁装置10」という)は、第1フロート弁30が収容される第1ケーシング20及びその下方に装着される第1キャップ25と、第2フロート弁50が収容される第2ケーシング40及びその下方に装着される第2キャップ55と、前記第1ケーシング20及び第2ケーシング40の上方に装着され両者を連結するカバー60と、該カバー60の上方に装着される天井壁80とから構成されるハウジング15を有している。
【0020】
まず、第1ケーシング20、第2ケーシング40、及び、それらに収容される第1フロート弁30、第2フロート弁50等について説明する。
【0021】
第1ケーシング20は、下方が開口した円筒状の周壁21を有している。また、第1ケーシング20の上方には、第1開口23が形成された第1仕切壁22が設けられている。この第1仕切壁22の上面であって、第1開口23の外周には、環状壁22aが突設されている。また、第1ケーシング20の周壁21の外周所定箇所には、取付ブラケット27が複数設けられており、該取付ブラケット27を介して、燃料タンク1(
図8〜10参照)に第1ケーシング20が取付けられるようになっている。また、第1ケーシング20の周壁21には、通孔21aが形成されている。
【0022】
上記第1ケーシング20の下方開口部には、第1キャップ25が装着されており、それによって、第1仕切壁22の下方に、第1フロート弁30が収容される第1弁室V1が画成されている(
図8参照)。なお、第1キャップ25の底面には、通孔25aが形成されている。この通孔25a及び前記通孔21aによって、第1弁室V1は、燃料タンク内に連通している。
【0023】
第1弁室V1内には、第1キャップ25との間に第1スプリングS1を介在させて、第1フロート弁30が昇降可能に収容されている。また、この第1フロート弁30の上方には、揺動可能な弁頭32が装着されている(
図8参照)。
【0024】
一方、第2ケーシング40は、下方部分が拡径し上方部分がそれよりも縮径した円筒状の周壁41を有している。この第2ケーシング40の縮径した上方部分の外周には、シールリング45が装着されている。
【0025】
また、第2ケーシング40の上方には、第2開口43が形成された第2仕切壁42が設けられている。
図8に示すように、この第2仕切壁42は、前記第1仕切壁22よりも高い位置に形成されている。また、この第2ケーシング40は、第1ケーシング20よりも小径で長さも短く形成されている。なお、第2開口43は、第2仕切壁42の上面から筒状に突出した部分を有しており、これに図示しない切欠きが形成されており、後述するチェック弁56が当接した状態において(
図8及び
図9参照)、第2開口43が完全には閉塞しないようになっている。
【0026】
上記第2ケーシング40の下方開口部には、第2キャップ55が装着されており、それによって、第2仕切壁42の下方に、第2フロート弁50が収容される第2弁室V2が画成されるようになっている(
図8参照)。なお、第2キャップ55の底面には、通孔55aが形成されている。
【0027】
また、第2ケーシング40の周壁41の外周には、複数の係合爪44が突設されている。更に、第2ケーシング40の周壁41には、第2弁室V2に連通する通孔41aが形成されている。
【0028】
第2弁室V2内には、第2キャップ55との間に第2スプリングS2を介在させて、第2フロート弁50が昇降可能に収容されている。また、第2フロート弁50の上方には、弁頭52が設けられている。
【0029】
そして、
図8に示すように、第1フロート弁30又は第2フロート弁50は、燃料が浸漬していない状態では、その自重により各スプリングS1,S2を圧縮して、各キャップ25,55上に載置され、第1開口23や第2開口43が開いた状態に保持される。
【0030】
なお、以下の説明において、「燃料」とは、液体の燃料(燃料の飛沫も含む)を意味し、「燃料蒸気」とは、蒸発した燃料を意味するものとする。
【0031】
上記状態で、燃料タンク内の燃料液面が上昇し、各フロート弁30,50が燃料に浸漬されると、各スプリングS1,S2の付勢力及び各フロート弁30,50自体の浮力により、各フロート弁30,50が上昇するようになっている(
図9及び
図10参照)。
【0032】
そして、第1フロート弁30は、燃料タンク内の液面が設定された満タン液面に達すると、第1開口23を閉塞して、それ以上の過給油を防止する満タン規制弁をなし、第2フロート弁50は、燃料の揺動等によって燃料タンク内の液面が異常に上昇したときに、第2開口43を閉塞して、燃料の外部漏出を防ぐ燃料流出防止弁をなしている。
【0033】
また、前記第2ケーシング40の周壁41の縮径した上方部分には、複数の通孔58aを有する蓋体58が装着されており、その内側であって第2仕切壁42の上方には、円盤状をなし、複数の通孔56aを設けたチェック弁56が収容されている。
【0034】
このチェック弁56は、第1フロート弁30によって第1開口23が閉塞された状態で、燃料タンク内の圧力低下時に、蓋体58の通孔58a、チェック弁56の通孔56a、第2開口43の図示しない切欠きを通じて、空気を燃料タンク内に流入する一方、燃料タンク内の圧力増大時に上昇して第2開口43を開いて、燃料蒸気を燃料タンク外に排出するものである。
【0035】
なお、この実施形態においては、上述した部材のうち、第1ケーシング20、第1キャップ25、第2ケーシング40、第2キャップ55、蓋体58が、本発明におけるハウジングの「本体部」をなしている。
【0036】
次に、上記第1ケーシング20及び第2ケーシング40の上方に装着されて、両者を互いに連結して一体化させるカバー60、及び、その上方に装着される天井壁80について説明する。
【0037】
図3に示すように、カバー60は、略円筒状をなす第1筒部61と、同じく略円筒状をなす第2筒部62と、第1筒部61及び第2筒部62の間に配置され両筒部61,62どうしを接続する棚状壁部63とを有している。なお、第1筒部61の方が第2筒部62よりも拡径しており、更に第1筒部61の方が第2筒部62よりも下方に向けて長く伸びている。
【0038】
前記第2筒部62の内部には、前記第2ケーシング40の周壁41の縮径した上方部分が挿入されて、その上端側内周に第2開口43を有する第2仕切壁42が配置されるようになっている(
図8参照)。
【0039】
一方、第1筒部61の下方には、前記第1ケーシング20の周壁21の上方部分が装着されて、第1筒部61の下端開口部に、第1開口23を有する第1仕切壁22が配置されるようになっており、この第1開口23の周縁に、前記棚状壁部63よりも低く形成された凹部64が設けられている(
図8参照)。すなわち、この凹部64は通気室の一部を画成すると共に、該凹部64の底部に第1開口23が形成され、該第1開口23は棚状壁部63よりも低くなっている。
【0040】
また、前記棚状壁部63は、第2筒部62側の第2仕切壁42に設けた第2開口43の周縁から、第1筒部61側の第1仕切壁22の第1開口23周縁に設けた前記凹部64内周に至るように伸びている(
図5及び
図6参照)。更に、棚状壁部63と、カバー60の上方に装着される天井壁80との間には、隙間R3が形成されるようになっている(
図9参照)。なお、両筒部61,62の上部外周及び棚状壁部63の外周には、溶着溝65が形成されている(
図3(a)参照)。
【0041】
図3(a)に示すように、前記第1筒部61の下端外周縁からは、フランジ部66が延設され、その裏側周縁には、環状の溶着突部66aが突設されている(
図3(b)参照)。このフランジ部66を第1ケーシング20の周壁21の上方に配置すると共に、溶着突部66aを第1仕切壁22の環状壁22aの外周に配置し、溶着突部66aを第1仕切壁22の上面に溶着させることで、第1ケーシング20がカバー60に連結される(
図8参照)。
【0042】
一方、第2筒部62の外周からは、係合孔68aを有する係合片68が、下方に向けて複数延出している。この第2筒部62内に、第2ケーシング40の周壁41の縮径した上方部分を挿入し、各係合爪44を係合片68の各係合孔68aに係合させることで、第2ケーシング40が、シールリング45を介して気密的にカバー60に連結される(
図8参照)。
【0043】
なお、各ケーシング20,40のカバー60への連結方法は、上記態様に限定されるものではない。
【0044】
前記カバー60は、上記のように各ケーシング20,40が連結されることで、各筒部61,62の下方開口が各仕切壁22,42により覆われ、上方に天井壁80が装着されることで、各筒部61,62の上方開口が覆われると共に、前記棚状壁部63の上方が覆われる。
【0045】
それによって、第1筒部61内に設けられ前記第1弁室V1の上方に配置された第1通気室R1と、第2筒部62内に設けられ前記第2弁室V2の上方に配置された第2通気室R2と、第1通気室R1と第2通気室R2とに連通する前記隙間R3とからなる、本発明における「通気室」が画成される。なお、本実施形態においては、
図8に示すように、第1弁室V1及び第2弁室V2が水平方向に並んで(横並びに)配置されている。
【0046】
また、上記のようにカバー60に各ケーシング20,40が装着されることによって、
図6に示すように、第1ケーシング20の第1仕切壁22と、第2ケーシング40の第2仕切壁42との間に、両仕切壁22,42を連設する前記棚状壁部63が配置される。この実施形態では、これらの第1仕切壁22、第2仕切壁42及び棚状壁部63が、本発明における「仕切壁」をなしている。
【0047】
更に、
図3(a)、
図5及び
図6に示すように、棚状壁部63の上面には、第2仕切壁42の第2開口43側から、第1開口23の凹部64内周に連通するように伸びる溝部70が形成されている。この溝部70は、一端部が前記第1通気室R1に連通し、他端部が前記第2通気室R2に連通し、更に上方が前記隙間R3に連通するようになっている。
【0048】
図6に示すように、この溝部70は、弁装置10を平面的に見たときに、第2開口43側から第1開口23側に向かう経路L(第2開口43の中心から第1開口23の中心へと向かう経路)に対して、後述する燃料蒸気排出口71と反対側に位置して、経路Lとほぼ平行となるように直線状に形成されている。
【0049】
ところで、燃料タンク内に燃料が所定量貯留され、満タン規制弁たる第1フロート弁30が上昇して第1開口23が閉塞した状態では、燃料タンク内の燃料蒸気や空気等は、主として、第2弁室V2、第2開口43、第2通気室R2、溝部70や隙間R3を順次通過して、第1通気室R1へと流動するようになっており、この流路をエバポラインとする。前記溝部70は、このエバポラインの一部を構成するものとなっている。
【0050】
また、
図6〜8に示すように、第1通気室R1が形成された第1筒部61内であって、前記凹部64の内周の所定位置には、第1通気室R1に連通する燃料蒸気排出口71(以下、「排出口71」という)が形成されている。この実施形態における排出口71は、前記経路Lに対して前記溝部70とは反対側に形成されている(
図6参照)。
【0051】
更に、上記排出口71及び第1通気室R1に連通するように、燃料蒸気配管73(以下、「配管73」という)が、前記経路Lに対して鋭角状をなすように第1筒部61の外周に接続されている。なお、配管73の接続位置は、前記経路Lに対して直角に設けたりしてもよく、特に限定はされない。
【0052】
また、
図3(a)、
図6、
図7及び
図8に示すように、前記第1筒部61の内周であって、前記排出口71の周縁からは、同排出口71を囲む筒状壁74が、第1通気室R1内に向けて所定長さで延出されている。この実施形態における筒状壁74は、天井壁80の内面に対してほぼ平行となるように延出しているが、天井壁80の内面に対して、筒状壁74の延出方向先端側が離れるように、所定角度で傾斜していてもよい。なお、筒状壁74は、排出口71を囲むように突設されていればよく、排出口71の周縁から突設しなくてもよい。
【0053】
図8〜10に示すように、上記筒状壁74は、棚状壁部63よりも低く、かつ、第1仕切壁22よりも高い位置に形成され、また、天井壁80の内面に接触しないように設けられている。また、前述したエバポラインに関連して説明すると、この筒状壁74は、エバポラインの一部を構成する前記溝部70よりも、低い位置に形成されている(
図7参照)。
【0054】
更に
図6に示すように、この筒状壁74は、弁装置10を平面的に見たときに(仕切壁に対向する方向から見たときに)、第1通気室R1内への突出方向先端部が、第1通気室R1の内周に沿うように湾曲した形状をなしている。また、
図8に示すように、筒状壁74は、溝部70側の周方向一端部74aが拡径し、周方向他端部74bに向けて次第に幅狭となるように形成されている。更に、筒状壁74の周方向他端部74bは、第1通気室R1の内周に対して隙間C2を有するように顎状をなし(
図6参照)、かつ、その端部が第1通気室R1の上下方向に沿って直線状にカットされた形状をなしている(
図3(a)及び
図8参照)。
【0055】
そして、
図7〜12に示すように、上記の筒状壁74の、少なくとも延出方向途中から延出方向先端に至る部分の外周面と、第1通気室R1の上方を覆う天井壁80の内面との間には、空隙C1が形成されている。すなわち、本実施形態のように、筒状壁74が、天井壁80の内面に対して、常に空隙C1を形成しながら延出しているのみならず、延出方向途中までは空隙C1を有さず、延出方向途中から天井壁80の内面に対して、筒状壁74の延出方向先端側が離れるように傾斜して、筒状壁54の外周面と天井壁80の内面との間に空隙C1が形成されるようしてもよい。
【0056】
また、
図3(a)及び
図5〜7に示すように、前記棚状壁部63の上面であって、前記溝部70と前記排出口71との間には、リブ挿入溝75が形成されている。このリブ挿入溝75は、その上方が前記隙間R3に連通し、一端部が第1通気室R1と連通し、かつ、前記溝部70に対して所定角度で斜めに形成されている(
図5及び
図6参照)。
【0057】
更に
図3(a)及び
図5〜8に示すように、前記第1筒部61の内周であって、前記筒状壁74の周方向両側には、第1通気室R1の上下方向に沿って伸びる一対のリブ76,76が設けられている。
【0058】
図7及び
図8に示すように、この実施形態における各リブ76は、カバー60上方に天井壁80が装着された状態で、天井壁80の内面に近接する長さで、第1通気室R1の内周に沿って上方に伸びている。なお、各リブ76は、天井壁80の内面に当接するように伸びていてもよい。
【0059】
また、各リブ76は、その下端部76aが、第1通気室R1の内径方向に向けてL字状に延出した形状をなし(
図5及び
図8参照)、それらの先端が第1仕切壁22の第1開口23の内周縁よりも内径側に突出するように伸びている(
図6参照)。
【0060】
更に、
図3(b)及び
図6に示すように、第1筒部61の下端内周からは、前記リブ76,76に対して均等な間隔をあけて、もう一つのリブ77が第1通気室R1の内径方向に向けて延出しており、その先端は第1開口23の内周縁よりも内径側に突出している。
【0061】
以上説明したカバー60の上方に装着される天井壁80は、
図1及び
図4に示すように、前記カバー60の上面開口部に適合する長板状をなしている。この天井壁80の内面周縁からは、環状の溶着突部81が突設されており、該溶着突部81を前記カバー60の上面の溶着溝65に挿入して溶着させることで、カバー60の上方に天井壁80が装着される。なお、天井壁80のカバー60への装着方法は、上記態様に限定されるものではない。
【0062】
また、天井壁80の内面であって、第2ケーシング40側の一端部には、第2ケーシング40上方に装着される蓋体58との干渉を防ぐ、円形状の凹部82が形成されている。
【0063】
そして、前記第1通気室R1上に配置される天井壁80の内面には、
図5に示すように、第2開口43側から第1開口23側に向かい、かつ、排出口71から離れるように伸びる流入規制リブ83が設けられている。
【0064】
図4〜6に示すように、この流入規制リブ83は、第1リブ84と第2リブ85とを有している。前記第1リブ84は、基端側が低く、それ以外の部分が高く立設した略L字形の板状をなし(
図4参照)、他の部分よりも低く形成された基端84aが前記リブ挿入溝75に挿入され、先端84bが排出口71から離れるようにR状に屈曲した形状となっている。一方、第2リブ85は、前記第1リブ84に対してほぼ直交して直線状に伸びている。また、前記第2リブ85の基端側からは、前記排出口71側に向けて、同一幅の延長リブ87が延長線上に伸びている。更に、この延長リブ87から所定隙間を空けた位置であって、前記第1リブ84に対して所定角度傾斜した位置には、前記筒状壁74の開口部側に配置される、長板状のカバー壁89が垂設されている。
【0065】
そして、カバー60の上方に天井壁80が装着された状態で、
図5及び
図6に示すように、流入規制リブ83は、溝部70と排出口71との間を通るように、かつ、溝部70の第1通気室R1側の開口をカバーするように配置されると共に、前記カバー壁89が、前記筒状壁74の開口部側に配置されるようになっている。
【0066】
なお、上記各リブ83、87及びカバー壁89の形状は、特に限定されるものではない。
【0067】
ところで、燃料タンク内への給油時に燃料タンク外へと排出される、燃料タンク内の空気や燃料蒸気は、主として、第1弁室V1、第1開口23を通過して、第1通気室R1に流入し、更に排出口71から配管73へと流入して、配管73に接続されたキャニスタ等へ排出されるようになっており、この流路をベントラインとする。
【0068】
なお、以上説明したカバー60及び天井壁80が、本発明における本体部の上部に組み付けられる「カバー部」をなしている。
【0069】
また、本実施形態における弁装置10は、2つのフロート弁30,50を備えるものであるが、フロート弁が1つの弁装置に適用してもよい。
【0070】
次に、上記構成からなる本発明の弁装置10の作用効果について説明する。
【0071】
図8に示すように、燃料タンク内への燃料が十分に給油されておらず、第1フロート弁30又は第2フロート弁50が燃料に浸漬していない状態では、第1開口23や第2開口43が開いている。
【0072】
この状態で燃料タンク内に燃料が給油されると、前記ベントライン(第1弁室V1、第1開口23、第1通気室R1、排出口71、配管73)を通って、燃料タンク内の空気や燃料蒸気が燃料タンク外のキャニスタ等に排出される。
【0073】
そして、燃料タンク内に燃料が給油されて、燃料タンク内の燃料液面が上昇すると、燃料が、第1キャップ25の通孔25aや第1ケーシング20の通孔21aを通って第1弁室V1内に流入し、第1フロート弁30に燃料が所定高さ以上浸漬すると、第1スプリングS1及び第1フロート弁30自体の浮力により、第1フロート弁30が浮き上がり、
図9に示すように、弁頭32が第1仕切壁22の第1開口23を閉塞するので、燃料タンク内の空気や燃料蒸気の排出量が低下して、それ以上の燃料給油を防止することができる。
【0074】
また、車両が旋回したり大きく傾いたりして、燃料タンク内の燃料液面が上昇すると、燃料が、第2キャップ55の通孔55aや第2ケーシング40の通孔41aを通って第2弁室V2内に流入し、第2フロート弁50に燃料が所定高さ以上浸漬すると、第2スプリングS2及び第2フロート弁50自体の浮力により、第2フロート弁50が浮き上がり、
図10に示すように、弁頭52が第2仕切壁42の第2開口43を閉塞するので、燃料が第1開口43を通って第2通気室R2内に流入することが阻止されて、燃料タンク外への燃料漏れを防止することができる。
【0075】
ところで、車両が悪路を走行して上下に振動したり左右に揺動したり、或いは、急旋回したりした場合、第2フロート弁50の上昇による第2開口43の閉塞が間に合わずに、燃料や燃料の飛沫が、第2開口43から第2通気室R2内に勢いよく流入することがある。第2通気室R2内に流入した燃料は、棚状壁部63上の隙間R3を通って、第1通気室R1に入り込む。
【0076】
この実施形態においては、棚状壁部63上に溝部70が形成されているので、燃料は、溝部70を集中的に流れて第1通気室R1に入り込んだ後、流入規制リブ83によって、排出口71から離れた方向へ流れるように案内されると共に、同流入規制リブ83をつたって落下する(
図6及び
図9参照)。その後、燃料は、第1開口23を通過して第1弁室V1内に流入し、第1ケーシング20の通孔25a等を通じて燃料タンク内に戻されるため、第1通気室R1に流入した燃料を、排出口71に流入しにくくすることができる。
【0077】
このとき、通気室内に流入する燃料の勢いが大きい場合や、上記のような流入規制リブ83がない場合は、排出口71に燃料が直接的に入り込むおそれがある。しかし、この弁装置10においては、第1通気室R1の内周に、排出口71を囲む筒状壁74が突設されているので、燃料が排出口71に流入するのを抑制することができる。
【0078】
特にこの実施形態では、第1フロート弁30及び第2フロート弁50を備え、仕切壁が、第1仕切壁22、第2仕切壁42及び棚状壁部63からなり、かつ、筒状壁74は、第2仕切壁42よりも低く、かつ、第1仕切壁22よりも高い位置に形成された構造となっている。
【0079】
そのため、上記のように、車両の揺動等によって、第2開口43から通気室側に入り込んだ燃料は、第2仕切壁42から棚状壁部63上を通って第1仕切壁22の第1開口23に流入し、第1弁室V1を通って燃料タンク1内に戻されるが、その途中で排出口71付近を流れても、排出口71を囲む筒状壁74の外周(特に上方の壁部)にぶつかって、排出口71内に流入することを抑制することができる。
【0080】
なお、この実施形態では、天井壁80側に設けた流入規制リブ83に連設したカバー壁89が、筒状壁74の開口部側に配置されているので、排出口71への燃料の流入をより効果的に抑制することができる。
【0081】
また、この実施形態においては、第1通気室R1の内周であって、筒状壁74の周方向両側に一対のリブ76,76が設けられているので、第2開口43を通して第1通気室R1側に漏れた燃料が、第1通気室R1の内周を流下するときに、上記リブ76,76によって筒状壁74内に流入するのが抑制され、燃料が排出口71に流入するのをより効果的に抑制することができる。
【0082】
更に、この実施形態においては、上記一対のリブ76,76は、天井壁80の内面に近接するように伸びているので、第1通気室R1内に流入した燃料が、その表面張力によって天井壁80の内面に沿って流動したときに、各リブ76をつたって落下させやすくして、第1開口23から燃料タンク1内に燃料を戻しやすくすることができる。なお、リブ76が天井壁80の内面に当接した場合も、同様の効果が得られる。
【0083】
また、この実施形態においては、ハウジング15は、第1ケーシング20、第1キャップ25、第2ケーシング40、第2キャップ55、蓋体58からなる本体部と、同本体部の上部に組み付けられる、カバー60及び天井壁80からなるカバー部とで構成されていると共に、
図6に示すように、前記リブ76の下端部76aが、第1開口23の内周縁よりも内径側に突出するように伸びている。
【0084】
このように、各リブ76の下端部76aが、第1開口23の内周縁よりも内側に突出しているので、第1通気室R1内に流入して各リブ76をつたって落下する燃料を、第1開口23に確実に導くことができる。また、ハウジング15は、上記のように、本体部と、その上部に組付けられるカバー部とを有し、リブ76はカバー部の内側壁、すなわち、カバー60の第1筒部61の内周に形成されているので、仕切壁に直接リブが形成されている場合と比べて、射出成形時におけるヒケ等の発生を抑制して、仕切壁に形成される開口の面精度を向上させることができる。
【0085】
ところで、車両自体が反転したり横転したりした場合には、燃料タンク1内の燃料は、燃料タンク1の天井面側に集まることとなる。
図11には、車両が反転した場合が示されており、
図12には、車両が所定角度で横転した場合が示されている。
【0086】
このとき、この弁装置10においては、上述したように、筒状壁74の、少なくとも延出方向途中から延出方向先端に至る部分の外周面と、天井壁80の内面との間に、空隙C1が形成され、筒状壁74が天井壁80よりも低い位置に形成されているので、車両が反転したり横転したりしても、
図11及び
図12に示すように前記空隙C1に燃料が溜まるため、排出口71に燃料が流入することを抑制することができる。
【0087】
図13及び
図14には、本発明の燃料タンク用弁装置の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0088】
この実施形態の燃料タンク用弁装置10a(以下、「弁装置10a」という)は、前記実施形態に対して配管73の接続角度が異なっている。すなわち、
図13(a)に示すように、弁装置10aを平面的に見たときに、第2開口43側から第1開口23側に向かう経路Lの延長線上となるように、カバー60の第1筒部61の外周に配管73が接続されている。
【0089】
また、この実施形態では、前記実施形態のようなチェック弁56を備えず、第2開口43が形成された第2仕切壁42が、棚状壁部63と同一高さとなるように配置されており、第2仕切壁42及び棚状壁部63と、天井壁80との間隔が前記実施形態よりも大きく、容積の大きい第2通気室R2が画成されている。
【0090】
更に、第2開口43側から第1開口23側に向かう経路Lの途中に形成されるリブ83aは、天井壁80の幅方向に沿って直線状に伸びる長板状をなしており、このリブ83aが、第1開口23周縁の凹部64側の天井壁80の内面から、前記経路Lに対して直交する向きとなるように配置されている。また、リブ83aは、棚状壁部63の縦壁63aに、近接した位置に配設されている(
図13(b)参照)。なお、このリブは、例えば、
図14に示すように、円弧状に湾曲した長板状のリブ83bとしてもよく、特に限定はされない。
【0091】
そして、この実施形態では、第2開口43から第2通気室R2内に流入し、第1開口23側へ流れる燃料を、リブ83aによって排出口71側に向かうことを遮って、凹部64側に落下させて排出口71に流入しにくくすることができると共に、車両が反転等した場合に、筒状壁74の外周面と天井壁80の内面との間に形成された空隙C1に燃料が溜まり、排出口71に燃料が流入することを抑制することができる。
【0092】
図15には、本発明の燃料タンク用弁装置の、更に他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0093】
この実施形態の燃料タンク用弁装置10b(以下、「弁装置10b」という)は、第1仕切壁22、第2仕切壁42、及び、第1仕切壁22と第2仕切壁42との間の壁部63bが、同一高さとなるように配置され、それによって第1開口23と第2開口43とが同一の高さに配設されている。また、長板状のリブ83aは、第2開口43及び第1開口23のほぼ中間に、前記経路Lに対して直交する向きで配置されている。なお、このリブは、
図14に示すようなリブ83bとしてもよく、特に限定はない。
【0094】
この実施形態においても、第2開口43から第2通気室R2内に流入し、第1開口23側へ流れる燃料を、リブ83aによって排出口71側に向かうことを遮って、排出口71に流入しにくくすることができると共に、車両が反転等した場合に、筒状壁74の外周面と天井壁80の内面との間に形成された空隙C1に燃料が溜まり、排出口71に燃料が流入することを抑制することができる。