(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コア本体の軸方向から見たときの前記巻胴部の幅方向両側面のうちの少なくとも一方の側面に、前記規制部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアーマチュアコア。
前記規制部は、前記巻胴部の前記延在方向の中央、または前記延在方向の中央よりも前記延在方向内方側に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアーマチュアコア。
前記規制部は、前記1層目のコイルの巻付面の前記延在方向外方側の端部に設けられた段差によって構成されており、該段差を境に、前記延在方向内方側の前記1層目のコイルの巻付面が、前記延在方向外方側の巻付面よりも高さが低く設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のアーマチュアコア。
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のアーマチュアコアの各ティースの巻胴部に、複数のコイルが集中巻方式で順番に巻回されており、前記巻胴部の巻付面に最下側の巻線が密着するように1層目のコイルが巻回された上に、2層目以降のコイルが、その少なくとも一部が前記1層目のコイルの上に重なるように巻回されていることを特徴とするアーマチュア。
請求項7に記載のアーマチュアと、該アーマチュアにより形成される磁界に対し、磁気的な吸引力や反発力を生じさせるマグネットと、を備えたことを特徴とする電動モータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上側に巻かれるコイルにより下側に巻かれるコイルが滑りを生じることにより、下側のコイルに弛みが生じ巻崩れが起こることがある。
図14はその例を示している。
この
図14においては、ティース1012の巻胴部1012bの巻付面に第1のコイル1091を巻回し、その上に第2のコイル1092を巻回し、その上に第3のコイル1093を巻回しているが、第1のコイル1091の最下側に弛み(
図14中Aで示す箇所)が生じることにより、コイル全体に巻崩れが起こっている。このような巻崩れが起きると、スロット1013内の巻線スペースが減少し、巻線可能なコイル占積率が低下する。また、各ティース1012上における各コイルの配置が不均一になることにより、アーマチュア1080のバランスが悪化する等の問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮し、複数のコイルをティースに巻回する場合のコイルの巻崩れを防止することのできるアーマチュアコア、そのアーマチュアコアを用いたアーマチュア、そのアーマチュアを用いた電動モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係るアーマチュアコアは、円環状のコア本体の外周に径方向外方に向けて放射状に延在する複数のティース
と、前記各ティースの巻胴部に
、集中巻方式で巻回された巻線により形成されたコイルと
、前記コイルが接続され、かつブラシが摺接されるセグメントと、を備え、nを2および3の何れかの整数としたとき、前記ティースの数と前記セグメントの数との比を、1:nに設定し、前記コイルは、1つの前記ティースにつきn層を形成し、少なくとも1層目のコイルの最下側の巻線が、前記巻胴部の基端側の巻付面に密着して巻回されると共に、後から巻回される
次の層
のコイルが、その少なくとも一部を
直前の層
のコイルの上に重ねて巻回されるアーマチュアコアにおいて、
各前記層の前記コイルの巻き始め端が接続される前記セグメントと、各前記層の前記コイルの巻き終わり端が接続される前記セグメントとの組み合わせが、前記層ごとに異なるように結線され、前記巻胴部の外周の前記1層目のコイルの巻付面の少なくとも一部に、前記1層目のコイルの最下側の巻線の、前記ティースの延在方向における位置ずれを規制する規制部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
このアーマチュアコアによれば、1層目のコイルの最下側の巻線の、ティースの延在方向における位置ずれを規制部によって規制することができる。従って、1層目のコイルの上側に巻かれる2層目のコイルによって、先に下側に巻かれた1層目のコイルに滑りが生じ、その結果、1層目のコイルが弛んで巻崩れが起こるのを防止することができる。従って、アーマチュアコアのスロット内の巻線スペースの増加を図ることができ、コイル占積率の向上が可能になる。また、コイルの巻崩れ防止により、各ティースにおける各コイルの配置の均等化を図ることができ、アーマチュアのバランスの改善が可能となる。
【0011】
本発明に係るアーマチュアコアは、前記コア本体の軸方向から見たときの前記巻胴部の幅方向両側面のうちの少なくとも一方の側面に、前記規制部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、アーマチュアコアを複数の同形状のコアプレートの積層体として構成した場合に、各コアプレートの該当箇所に規制部となる形状を付加しておくだけで、積層体として構成した状態で規制部を設けることができ、簡単に実現することができる。
【0013】
本発明に係るアーマチュアコアにおける前記規制部は、前記巻胴部の前記延在方向の中央、または前記延在方向の中央よりも前記延在方向内方側に設けられていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、段差の位置により、1層目のコイルの最下側の巻線が確実に適正位置に保持される。
【0015】
本発明に係るアーマチュアコアにおける前記規制部は、前記1層目のコイルの巻付面の前記延在方向外方側の端部に設けられた段差によって構成されており、該段差を境に、前記延在方向内方側の前記1層目のコイルの巻付面が、前記延在方向外方側の巻付面よりも高さが低く設定されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、径方向内方側の1層目のコイルの巻付面に密着して巻回された1層目のコイルの最下側の巻線のうち、段差に当たる巻線が、その段差によって巻胴部の延在方向外方側へ移動しないように位置規制されるので、他の最下側の巻線が位置ずれを起こさなくなる。従って、最下側の巻線の上側に巻回される巻線も位置ずれを起こさなくなり、結果として、1層目のコイルが弛んだり巻き崩れを起こしたりせずに2層目以降のコイルを巻回でき、コイルの巻き付け状態が安定する。
【0017】
本発明に係るアーマチュアコアは、前記段差の高低差が、前記コイルを構成する巻線の半径以上に設定されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、アーマチュアコアによれば、段差の高さにより、1層目のコイルの最下側の巻線が確実に適正位置に保持される。
【0019】
本発明に係るアーマチュアコアにおける前記規制部は、前記1層目のコイルの巻付面の前記延在方向外方側の端部に形成され、前記コイルを構成する巻線の嵌まる凹部であり、
前記凹部の深さは、前記巻線の半径以下に設定されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、巻付面上に形成された凹部に巻線が嵌まることで、巻線自体が段差の役割をなすことになって、1層目のコイルの最下側の巻線の位置ずれを防止することができる。
【0021】
本発明に係るアーマチュアは、上記に記載のアーマチュアコアの各ティースの巻胴部に、複数のコイルが集中巻方式で順番に巻回されており、前記巻胴部の巻付面に最下側の巻線が密着するように1層目のコイルが巻回された上に、2層目以降のコイルが、その少なくとも一部が前記1層目のコイルの上に重なるように巻回されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、上記のアーマチュアコアを備えるため、コイルの巻崩れを有効に防止することができる。従って、コイル占積率の向上とバランスの改善を図ることができる。
【0023】
本発明に係る電動モータは、上記に記載のアーマチュアと、該アーマチュアにより形成される磁界に対し、磁気的な吸引力や反発力を生じさせるマグネットと、を備えたことを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、コイル占積率の高い高品質な電動モータを提供できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数のコイルを各ティースに巻回する場合のコイルの巻崩れを防止することができる。従って、アーマチュアにおけるコイル占積率の向上とバランスの改善を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
(減速機付モータ)
次に、この発明の第1実施形態を
図1〜
図6に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るアーマチュアコアを備える電動モータが適用された減速機付モータの外観側面図、
図2は、その縦断面図である。
【0028】
図1および
図2に示すように、減速機付モータ1は、例えば、自動車のワイパ駆動用に用いるものであって、電動モータ2と、電動モータ2の回転軸3に連結された減速機構4とを備えている。電動モータ2は、有底筒状のモータハウジングを兼ねたヨーク5と、ヨーク5内に回転自在に設けられたアーマチュア6とを有している。
【0029】
ヨーク5の筒部53は略円筒状に形成されており、この筒部53の内周面には、4つのセグメント型のマグネット7が配設されている。なお、マグネット7は、セグメント型に限られるものではなく、リング型のものを使用してもよい。
【0030】
ヨーク5の底壁(エンド部)51には、径方向中央に軸方向外側に向かって突出する軸受ハウジング19が形成され、ここに回転軸3の一端を回転自在に軸支するための滑り軸受18が設けられている。この滑り軸受18は、回転軸3の調心機能を有している。
【0031】
筒部53の開口部には外フランジ部52が設けられ、その外フランジ部52に減速機構4のギヤハウジング23の端部が固定されることで、電動モータ2と減速機構4とが一体に結合されている。
【0032】
(アーマチュア)
図3は、アーマチュアの外観側面図である。
図2および
図3に示すように、アーマチュア6は、回転軸3に外嵌固定されたアーマチュア本体80と、回転軸3の他端側(減速機構4側)に配置されたコンミテータ10とを備えている。
【0033】
アーマチュア本体80は、アーマチュアコア8と、アーマチュアコア8に巻回されたアーマチュアコイル9とを有している。アーマチュアコア8は、プレス加工等によって打ち抜かれた磁性材料のコアプレートを軸方向に積層することで形成された積層コアよりなる。なお、アーマチュアコア8として、軟磁性粉を加圧成形した圧粉コアを使用することも可能である。
【0034】
(アーマチュアコア)
図4(a)は、アーマチュアコアを軸方向から見た図であって、1枚のコアプレートの平面形状を示す図でもある。
図4(b)は、
図4(a)のB部の巻線を一緒に描いた拡大図である。また、
図5は、巻線を巻いたアーマチュアコアの部分拡大断面図である。
【0035】
ここで、以下に使う方向についての用語を定義する。まず、「軸方向」とは、アーマチュア6の軸方向つまり回転軸3の軸方向のことである。「径方向」とは、アーマチュア6の径方向のことである。「径方向内方」とは、アーマチュア6の径方向における回転軸3に向かう方向のこと、「径方向外方」とは、その反対の方向のことである。また、「周方向」とは、アーマチュア6の周方向であり、回転軸3の周方向のことである。
また、以下に説明するアーマチュアコアは、細かい形状の違いに拘りなく述べる場合は、共通符号「8」で示し、実施形態ごとに僅かに形状が違うことで区別して述べる場合は、共通符号「8」に大文字アルファベットを追加して示す。
【0036】
(アーマチュアコア)
図4(a)に示すように、この第1実施形態におけるアーマチュアコア8A(8)は、円環状のコア本体11を有している。コア本体11の中心には、回転軸3を圧入するための貫通孔11aが形成されている。また、コア本体11の外周部には、周方向に等間隔にティース12が放射状に6つ設けられている。各ティース12は、軸方向平面視略T字型に形成されたものであって、コア本体11から径方向に沿って放射状に突出する巻胴部12aと、巻胴部12aの先端から周方向に沿って延び、アーマチュアコア8Aの外周を構成する鍔部12bとにより構成されている。
【0037】
このような構成により、隣接するティース12間にはスロット13が6つ形成されている。そして、
図5に示すように、これらスロット13にエナメル被覆の巻線14を通し、ティース12の巻胴部12aの外周に巻線14を集中巻方式で巻回することで、アーマチュアコイル9が形成されている(アーマチュアコイル9の形成方法の詳細は後述する)。
【0038】
(アーマチュアコイル)
この場合、
図5に示すように、各ティース12の巻胴部12aの外周には、アーマチュアコイル9を構成する3つのコイル91、92、93が順番に集中巻方式で巻回されている。まず、第1コイル91を構成する巻線14が1層目としてティース12に巻回されている。次にその上から第2コイル92を構成する巻線14が2層目としてティース12に巻回されている。そして、最後に第3コイル93を構成する巻線14が3層目としてティース12に巻回されている。なお、コイル91、92、93の巻回に先立って、アーマチュアコア8Aの各コアプレートには、エポキシ樹脂等の粉末塗装が施されて表面に絶縁膜が形成されているものとする。よって、別部品である樹脂成形品のインシュレータは使用していない。
【0039】
(3つのコイル)
前述した1層目のコイル91は、各ティース12の巻胴部12aの径方向(延在方向)内方側の巻付面に巻線14を巻回することで形成されている。また、2層目のコイル92は、その上から、より径方向外方寄りの位置に、先に巻いた1層目のコイル91に一部が重なるように巻線14を巻回することで形成されている。また、3層目のコイル93は、更にその上から、より径方向外方寄りの位置に、先に巻いた2層目のコイル92に一部が重なるように巻線14を巻回することで形成されている。ここで、1層目のコイル91は、最下側の巻線14が、巻胴部12aの基端側の巻付面上に密着する状態で巻回されている。
【0040】
このように、各コイル91、92、92を構成する巻線14の巻き付けが順番に行われて行くと、前述したように、1層目のコイル91の巻線14が、その上に巻かれる2層目のコイル92の巻き付け時の力により、巻胴部12a上で滑りを生じ、弛みを起こして、コイル全体に巻崩れが発生するおそれがある。
【0041】
(規制部)
そこで、この実施形態のアーマチュアコア8Aでは、
図4(a)および
図5に示すように、巻胴部12aの外周の1層目のコイル91の巻付面の少なくとも一部に、規制部12a1が設けられている。規制部12a1は、1層目のコイル91の最下側の巻線14の径方向における位置ずれを規制するものである。ティース12の巻胴部12aは、断面矩形であるから、断面矩形の少なくとも1辺に相当する巻付面(4つの巻付面のうちの1つ)に規制部12a1があればよい。しかし、ここでは、アーマチュアコア8Aが積層コアであることを考慮して、矩形断面の4辺に相当する4つの巻付面のうちの軸方向から見て巻胴部12aの幅方向両側面に規制部12a1が設けられている。なお、規制部12a1は、軸方向に連続して設けられている。
【0042】
(規制部としての段差)
この実施形態のアーマチュアコア8Aにおける規制部12a1は、1層目のコイル91の巻付面の径方向外方側の端部に設けられた段差12a1(規制部と同符号で示す)によって構成されている。そして、その段差12a1を境に、径方向内方側の1層目のコイル91の巻付面が、径方向外方側のそれ以外のコイル92、93の巻付面よりも高さが低く設定されている。つまり、ティース12の幅寸法の変化によって、段差12a1が形成されている。
【0043】
図4(a)に示すように、段差12a1が設けられた1層目のコイル91の巻付面のティース12(巻胴部12a)の延在方向における長さL2は、ティース12の延在方向における全巻付面の長さL1の半分以下に設定されている。換言すれば、段差12a1は、ティース12(巻胴部12a)の延在方向の中央、またはこの中央よりも延在方向内方側に形成されている。
また、
図4(b)に示すように、段差12a1の高さ(高低差)Hは、コイル91を構成する巻線14の半径h以上に設定されている。
【0044】
(段差による効果)
このようにアーマチュアコア8Aが構成されているので、このアーマチュアコア8Aの各ティース12の巻胴部12aに、第1コイル91の巻線14と、第2コイル92の巻線14と、第3コイル93の巻線14とを順番に巻回することにより、巻崩れのない3つのコイル91、92、93からなるアーマチュアコイル9を構成することができる。
【0045】
すなわち、
図5に示すように、ティース12の巻胴部12aの径方向内方側の巻付面に密着させて、1層目の第1コイル91の巻線14を巻回する。そうすると、1層目のコイル91の最下側の巻線14のうち、段差12a1に直接当たる巻線14が、その段差12a1によって径方向外方側へ移動しないように位置規制される。そして、他の最下側の巻線14も、それに倣って同様に位置規制される。
【0046】
次いで、1層目のコイル91を巻いた後に、2層目、3層目のコイル92、93を順番に、一部を下側のコイルに重ねながら巻き付けることで、アーマチュアコイル9を完成させる。その際、2層目のコイル92や3層目のコイル93を巻回するときにも、1層目のコイル91の最下側の巻線14が段差12a1によって位置規制されている。このため、巻線14が滑りによって弛むことがなく、コイル全体の巻崩れが起こらなくなり、コイル91、92、93の巻き付け状態が安定する。その結果、アーマチュアコア8Aのスロット13内の巻線スペースの増加が図られ、コイル占積率が向上する。また、コイル91、92、93の巻崩れ防止により、各ティース12における各コイル91、92、93の配置の均等化が図られるので、アーマチュア6のバランスの改善が可能となる。
【0047】
また、各ティース12の幅方向両側面に規制部としての段差12a1を設ける場合は、アーマチュアコア8Aを構成する各コアプレートの該当箇所に規制部となる段差12a1を付加しておくだけで、簡単に実現することができる。また、段差12a1を設けたの位置(寸法L2で規制される位置)や高低差Hの設定により、1層目のコイル91の最下側の巻線14を確実に適正位置に保持することができる、つまり、1層目のコイル91の最下側の巻線14が段差12a1を乗り上げてしまうことを防止できる。このため、コイル91、92、93の巻崩れを確実に防ぐことができる。
【0048】
(コンミテータ)
次に、アーマチュアの他の構成について述べる。
図2および
図3に示すように、回転軸3のアーマチュアコア8よりも他端側(減速機構4側)に外嵌固定されたコンミテータ10には、外周面に導電材で形成されたセグメント15が18枚取り付けられている。セグメント15は軸方向に長い板状の金属片からなり、互いに絶縁された状態で周方向に沿って等間隔に並列に固定されている。このように、電動モータ2は、磁極数が4極、スロット13の個数が6つ、セグメント15の枚数が18枚に設定されたいわゆる4極6スロット18セグメントの電動モータとして構成されている。
【0049】
また、各セグメント15のアーマチュアコア8側の端部には、外径側に折り返す形で折り曲げられたライザ16が一体成形されている。ライザ16には、アーマチュアコイル9の端末部が掛け回わされ、ヒュージングなどにより固定されている。これにより、セグメント15と、これに対応するアーマチュアコイル9とが導通される。
【0050】
さらに、同電位となるセグメント15に対応するライザ16には、それぞれ接続線17(後述)が掛け回され、この接続線17がヒュージングによりライザ16に固定されている。接続線17は、同電位となるセグメント15同士を短絡するためのものであって、コンミテータ10とアーマチュアコア8との間に引き回される。
【0051】
このように構成されたコンミテータ10は、
図1に示すように、減速機構4のギヤハウジング23に臨まされた状態になっている。ギヤハウジング23には、減速機構4の歯車群41が収納されている。また、ギヤハウジング23の電動モータ2側には、ブラシ収納部22が一体成形され、ここに電動モータ2のコンミテータ10が臨まされている。
【0052】
ブラシ収納部22の内側には、ホルダステーやブラシホルダ(不図示)を介してブラシ21が出没自在に収納されている。ブラシ21は、コンミテータ10に外部電源(例えば、自動車に搭載されるバッテリ等)からの電力を給電するためのものである。ブラシ21は、不図示のスプリングによってコンミテータ10側に向かって付勢されており、その先端がセグメント15に摺接している。
【0053】
(アーマチュアコイルの形成方法)
次に、
図6に基づいて、アーマチュアコイル9の形成方法の一例について説明する。
図6は、アーマチュアの展開図であり、隣接するティース間の空隙がスロットに相当している。なお、以下の
図6においては、各セグメント15、各ティース12、および、形成されたアーマチュアコイル9にそれぞれ符号を付して説明する。
【0054】
同図に示すように、各ティース12は、それぞれU相、V相、W相が周方向にこの順で割り当てられている。つまり、1番、4番ティース12がU相、2番、5番ティース12がV相、3番、6番ティース12がW相になっている。ここで、セグメント15に付した番号のうち、1番に相当する位置は、1番ティース12に対応する位置とする。
【0055】
なお、
図6において、各ティース12への巻線14の巻回方向が時計回りであるときを順方向と称し、反時計回りであるときを逆方向と称して説明する。
【0056】
まず、例えば、巻線14の巻き始め端14aを1番セグメント15より巻き始める場合、この後、巻線14を1番セグメント15近傍に存在する1−6番ティース12の間のスロット13に引き込む。そして、各ティース12に巻線14を、それぞれn(nは自然数であって、3の倍数)回巻回するものとした場合、1番ティース12にn/3回順方向に集中巻方式にて巻回する。
【0057】
続いて、1−2番ティース12の間のスロット13から巻線14を引き出し、1番セグメント15に隣接する2番セグメント15のライザ16に掛け回す。そして、2番セグメント15に巻き終わり端14bを接続する。これにより、1−2番セグメント15間には、1番ティース12に順方向に巻回されたU相の第1コイル91が形成される。
【0058】
また、5番セグメント15のライザ16に巻き始め端14aを掛け回した巻線14を、1−2番ティース12の間のスロット13に引き込む。そして、1番ティース12にn/3回逆方向に集中巻方式にて巻回する。
続いて、1−6番ティース12の間のスロット13から巻線14を引き出し、5番セグメント15に隣接する6番セグメント15のライザ16に掛け回す。そして、6番セグメント15に巻き終わり端14bを接続する。これにより、5−6番セグメント15間には、1番ティース12に逆方向に巻回された「−U」相の第2コイル92が形成される。
【0059】
さらに、6番セグメント15のライザ16に巻き始め端14aを掛け回した巻線14を、1−2番ティース12の間のスロット13に引き込む。そして、1番ティース12にn/3回逆方向に集中巻方式にて巻回する。
【0060】
続いて、1−6番ティース12の間のスロット13から巻線14を引き出し、6番セグメント15に隣接する7番セグメント15のライザ16に掛け回す。そして、7番セグメント15に巻き終わり端14bを接続する。これにより、6−7番セグメント15間には、1番ティース12に逆方向に巻回された「−U」相の第3コイル93が形成される。
【0061】
したがって、U相に相当する1番ティース12には、巻線14が順方向にn/3回巻回されて形成されるU相の第1コイル91、巻線14が逆方向にn/3回巻回されて形成される「−U」相の第2コイル92および「−U」相の第3コイル93で構成されるn回巻きのアーマチュアコイル9が形成される。
【0062】
そして、これを各相に対応するセグメント15間で順次行うことにより、アーマチュアコア8には第1コイル91、第2コイル92および第3コイル93を備えた3相構造のアーマチュアコイル9が形成され、隣接するセグメント15間にU、「−W」、「−W」、V、「−U」、「−U」、W、「−V」、「−V」相のコイル91〜93がこの順で電気的に順次接続される。
【0063】
なお、各相のコイル91〜93を形成する巻線14の巻き始め端14aおよび巻き終わり端14bのセグメント15への接続箇所は、隣接するセグメント15間にU、「−W」、「−W」、V、「−U」、「−U」、W、「−V」、「−V」相のコイル91〜93がこの順で電気的に順次接続されていればよい。
【0064】
(電動モータの動作)
次に、
図6に基づいて、電動モータ2の動作について説明する。
電動モータ2の動作説明にあたり、例えば、
図6に示すように、1−2番セグメント15間にブラシ21が配置されると共に、6番セグメント15にブラシ21が配置され、これら2つのブラシ21の間に電圧が印加された場合について説明する。
【0065】
このような場合、U相の第1コイル91は、短絡された状態になる。そして、「−U」相の第2コイル92に逆方向(
図6における反時計回り方向)の電流が流れ、「−U」相の第3コイル93に順方向(
図6における時計回り方向)の電流が流れる。すなわち、第2コイル92および第3コイル93には、互いに逆向きの電流が流れるので磁界が相殺され、マグネット7との間にトルクが発生しない。
【0066】
これに対し、V相の第1コイル91、「−V」相の第2コイル92および「−V」相の第3コイル93には、それぞれ順方向に電流が流れる。また、「−W」相の第1コイル91、「−W」相の第2コイル92および「−W」相の第3コイル93には、それぞれ逆方向に電流が流れる。
【0067】
すると、2、3、5、6番ティース12にそれぞれ磁界が形成される。これらの磁界の向きは、周回り方向に順番になる。このため、各ティース12に形成される磁界とマグネット7との間に、磁気的な吸引力や反発力が回転軸3を中心にして点対称位置で同じ方向に作用する。そして、これによって回転軸3が回転する。
なお、例えば、上述の電動モータ2の動作の説明において、1−2番セグメント15間に配置されたブラシ21を進角させ、回転軸3を高速回転させることも可能である。
【0068】
(第1変形例)
図7は、第1実施形態の第1変形例におけるアーマチュアの展開図である。
同図に示すように、第1実施形態とこの第1変形例との相違点は、第1実施形態のコンミテータ10には、セグメント15が18枚取り付けられているのに対し、この第1変形例のコンミテータ210には、セグメント15が12枚(ティース12の数の2倍の枚数)取り付けられている点にある。すなわち、この変形例の電動モータ202は、磁極数が4極、スロット13の個数が6つ、セグメント15の枚数が12枚に設定されたいわゆる4極6スロット12セグメントの電動モータとして構成されている。
【0069】
また、第1実施形態のアーマチュアを構成するアーマチュアコア8には、第1コイル91、第2コイル92および第3コイル93の3つのコイル91〜93を備えた3相構造のアーマチュアコイル9が形成されているのに対し、この第1変形例のアーマチュアを構成するアーマチュアコア8には、第1コイル91および第2コイル92の2つのコイルを備えた3相構造のアーマチュアコイル209が形成されている点が異なる。
【0070】
(アーマチュアコイルの形成方法)
図7に基づいて、アーマチュアコイル209の形成方法の一例について説明する。
【0071】
図7に示すように、各ティース12は、それぞれU相、V相、W相が周方向にこの順で割り当てられている。つまり、1番、4番ティース12がU相、2番、5番ティース12がV相、3番、6番ティース12がW相になっている。ここで、セグメント15に付した番号のうち、1番に相当する位置は、1番ティース12に対応する位置とする。また、接続線17によって、同電位となるセグメント15同士が短絡されている。なお、
図7において、各ティース12への巻線14の巻回方向が時計回りであるときを順方向と称し、反時計回りであるときを逆方向と称して説明する。
【0072】
まず、例えば、巻線14の巻き始め端14aを1番セグメント15より巻き始める場合、この後、巻線14を1番セグメント15近傍に存在する1−6番ティース12の間のスロット13に引き込む。そして、各ティース12に巻線14を、それぞれn(nは自然数であって、2の倍数)回巻回するものとした場合、1番ティース12にn/2回順方向に集中巻方式にて巻回する。
【0073】
続いて、1−2番ティース12の間のスロット13から巻線14を引き出し、1番セグメント15に隣接する2番セグメント15のライザ16に掛け回す。そして、2番セグメント15に巻き終わり端14bを接続する。これにより、1−2番セグメント15間には、1番ティース12に順方向に巻回されたU相の第1コイル291が形成される。
【0074】
また、4番セグメント15のライザ16に巻き始め端14aを掛け回した巻線14を、1−2番ティース12の間のスロット13に引き込む。そして、1番ティース12にn/2回逆方向に集中巻方式にて巻回する。
【0075】
続いて、1−6番ティース12の間のスロット13から巻線14を引き出し、4番セグメント15に隣接する5番セグメント15のライザ16に掛け回す。そして、5番セグメント15に巻き終わり端14bを接続する。これにより、4−5番セグメント15間には、1番ティース12に逆方向に巻回された「−U」相の第2コイル292が形成される。
【0076】
したがって、U相に相当する1番ティース12には、巻線14が順方向にn/2回巻回されて形成されるU相の第1コイル91と、巻線14が逆方向にn/2回巻回されて形成される「−U」相の第2コイル92とで構成されるn回巻きのアーマチュアコイル209が形成される。
【0077】
そして、これを各相に対応するセグメント15間で順次行うことにより、アーマチュアコア8には第1コイル91および第コイル292を備えた3相構造のアーマチュアコイル209が形成され、隣接するセグメント15間にU、「−W」、V、「−U」、W、「−V」相のコイル91、92がこの順で電気的に順次接続される。
【0078】
なお、各相のコイル91、92を形成する巻線14の巻き始め端14aおよび巻き終わり端14bのセグメント15への接続箇所は、隣接するセグメント15間にU、「−W」、V、「−U」、W、「−V」相のコイル91、92がこの順で電気的に順次接続されていればよい。
【0079】
(第2変形例)
図8は、第1実施形態の第2変形例におけるアーマチュアの展開図である。
同図に示すように、第1変形例と第2変形例との相違点は、第1変形例では磁極数が4極(磁極対数2)になっていたが、第2変形例では磁極数が6極(磁極対数3)になっている点、また、アーマチュアコア8のティース12の数が6個であったのが9個になっている点、コンミテータ310のセグメント15の個数が、12枚であったのが18枚になっている点である。各ティース12には、第1コイル91と第2コイル92がこの順番で巻回されている。
【0080】
また、第2変形例では、同相のティース12に巻線14が連続して巻回されている点が、前述の第1変形例および第2変形例と異なる。すなわち、第2変形例では、1つのティース12に巻回された巻線14が、一旦セグメント15に接続されることなく、同相のティース12(例えば、1番ティース12と、4番ティース12と、7番ティース12)に巻回され、同相のティース12全てに巻線14を巻回してコイル91,92を形成した後、巻線14の巻き終わり端が所定のセグメント15に接続される。
【0081】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態におけるアーマチュアコアの軸方向から見た図である。
同図に示すように、このアーマチュアコア8Bでは、各ティース12の巻胴部12aの幅方向の両側面に、規制部として凸部12a2が設けられている。この凸部12a2も、第1実施形態の段差12a1と同じ働きをする。
【0082】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態におけるアーマチュアコアの説明図であって、(a)はアーマチュアコアの軸方向から見た図、(a)のC部の拡大図である。
図10(a)に示すように、このアーマチュアコア8Cでは、各ティース12の巻胴部12aの幅方向の両側面に、規制部として、1層目のコイル91を構成する巻線14の嵌まる凹部12a3が設けられている。
【0083】
そして、
図10(b)に示すように、その凹部12a3の深さdが、巻線14の半径h以下に設定されている。このアーマチュアコア8Cによれば、巻付面上に形成された凹部12a3に巻線14(14C)が嵌まることで、この巻線14C自体が第1実施形態と同様の段差の役割をなすことになって、1層目のコイルの最下側の巻線の位置ずれを防止することができる。
【0084】
(第4実施形態)
図11は、第4実施形態におけるアーマチュアコアの軸方向から見た図である。
同図に示すように、このアーマチュアコア8Dでは、各ティース12の巻胴部12aの幅方向の両側に、規制部として、1段目の段差12a4と2段目の段差12a5が径方向内方から外方に位置をずらして2段に設けられている。この場合、1段目の段差12a4は、1層面のコイル91のずれ防止用、2段目の段差12a5は2層目のコイル92のずれ防止用として機能する。
【0085】
(第5実施形態)
図12は、第5実施形態におけるアーマチュアコアの軸方向から見た図である。
同図に示すように、このアーマチュアコア8Eでは、各ティース12の巻胴部12aの幅方向の両側面に、規制部として、巻線14(
図5参照)の嵌まる大きさの凹部12a6が連続して多数設けられている。このように、多数の凹部12a6を設けることにより、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0086】
(第6実施形態)
図13は、第6実施形態におけるアーマチュアコアの軸方向から見た図である。
図13に示すように、このアーマチュアコア8Fでは、各ティース12の巻胴部12aの幅方向の両側面に、規制部として、巻線14(
図5参照)と同じ径の線材12a7が溶接、接着等の手段で固着されている。この線材12a7も、第1実施形態の段差12a1と同じ働きをする。
【0087】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、自動車のワイパ駆動用に用いる減速機付モータ1のアーマチュアコア8,8A〜8Fに、巻線14の巻崩れを防止するためのさまざまな規制部を設けた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざまな電動モータのアーマチュアコアに、上述の実施形態の規制部を適用することができる。