特許第6334964号(P6334964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6334964新規シアニン化合物、光学フィルターおよび光学フィルターを用いた装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334964
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】新規シアニン化合物、光学フィルターおよび光学フィルターを用いた装置
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/60 20060101AFI20180521BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20180521BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20180521BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20180521BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20180521BHJP
   C08K 5/3417 20060101ALI20180521BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C07D209/60CSP
   C07F5/02 A
   G02B5/22
   G02B5/26
   H01L27/146 D
   C08L101/00
   C08K5/3417
   G02B5/28
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-47517(P2014-47517)
(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2015-172004(P2015-172004A)
(43)【公開日】2015年10月1日
【審査請求日】2017年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】中島 満
(72)【発明者】
【氏名】大月 敏敬
(72)【発明者】
【氏名】船曳 一正
【審査官】 伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/119114(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/054864(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/002864(WO,A1)
【文献】 特表2008−528706(JP,A)
【文献】 特表2008−531828(JP,A)
【文献】 KIYOSE, K. et al.,Chemistry: A European Journal,2009年,Vol. 15,pp. 9191-9200
【文献】 SAMANTA, A. et al.,Chemical Communications,2010年,Vol. 46,pp. 7406-7408
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07F
C08K
C08L
G02B
H01L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオンとカチオンとからなる対イオン結合体であり、該カチオンが下記一般式(I−2)で表されること、かつ、該アニオンが下記一般式(II)で表わされることを特徴とするシアニン化合物。
【化1】
式(I−2)中、
複数あるDは、独立に炭素原子、窒素原子、酸素原子または硫黄原子を表し、
複数あるRa、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、RhおよびRiは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、−L1、−S−L2、−SS−L2、−SO2−L3または−N=N−L4表し、
前記アミノ基、アミド基、イミド基およびシリル基は、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜14の脂環式炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基および炭素数3〜14の複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基Lを有してもよく、
1は、下記La〜Leのいずれかを表し、
2は、水素原子または下記La〜Leのいずれかを表し、
3は、水酸基または下記La〜Leのいずれかを表し、
4は、下記La〜Leのいずれかを表し、
(La)前記置換基Lを有してもよい炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基
(Lb)前記置換基Lを有してもよい炭素数1〜12のハロゲン置換アルキル基
(Lc)前記置換基Lを有してもよい炭素数3〜14の脂環式炭化水素基
(Ld)前記置換基Lを有してもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基
(Le)前記置換基Lを有してもよい炭素数3〜14の複素環基
1はアセチル基を表し、Q2は下記一般式(q1)で表される構造を表す。
−Cm2m+1 (q1
式(q1)中、mは1〜5の整数を表す
【化4】
[式(II)中、Y1〜Y20は、全てフッ素原子であるか、またはY2、Y4、Y7、Y9、Y12、Y14、Y17、Y19がトリフルオロメチル基であり、残りのYが水素原子である。]
【請求項2】
請求項1に記載のシアニン化合物を含有する透明樹脂製基板と、前記基板の少なくとも一方の面上に形成された近赤外線反射膜とを有することを特徴とする光学フィルター。
【請求項3】
前記透明樹脂製基板を構成する透明樹脂が、環状オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂およびシルセスキオキサン系紫外線硬化樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である請求項に記載の光学フィルター。
【請求項4】
前記近赤外線反射膜が、前記基板の両面上に形成されている請求項またはに記載の光学フィルター。
【請求項5】
固体撮像装置用である請求項のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【請求項6】
請求項のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する固体撮像装置。
【請求項7】
請求項のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備するカメラモジュール。
【請求項8】
請求項1に記載のシアニン化合物と、環状オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂およびシルセスキオキサン系紫外線硬化樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂とを含有する樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規シアニン化合物、光学フィルターおよび光学フィルターを用いた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などの固体撮像装置にはカラー画像の固体撮像素子であるCCDやCMOSイメージセンサーが使用されているが、これら固体撮像素子は、その受光部において人間の目では感知できない近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードが使用されている。これらの固体撮像素子では、人間の目で見て自然な色合いにさせる視感度補正を行うことが必要であり、特定の波長領域の光線を選択的に透過もしくはカットする光学フィルター(例えば近赤外線カットフィルター)を用いることが多い。
【0003】
このような近赤外線カットフィルターとしては、従来から、各種方法で製造されたものが使用されている。例えば、特開平6−200113号公報(特許文献1)には、基材として透明樹脂を用い、透明樹脂中に近赤外線吸収色素を含有させた近赤外線カットフィルターが記載されている。特に、近赤外線吸収色素としてシアニン系化合物を用いた近赤外線カットフィルターが広く知られている(例えば特許文献2および特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、シアニン系化合物は一般的に光に対する安定性が低く、固体撮像素子用途に求められる耐光性を達成できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−200113号公報
【特許文献2】特開2007−219114号公報
【特許文献3】特開2010−072575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来の近赤外線カットフィルター等の光学フィルターが有していた欠点を改良し、耐光性に優れる光学フィルターを提供可能なシアニン系化合物、該シアニン系化合物を用いた光学フィルターおよび該光学フィルターを用いた装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、特定のシアニン系化合物を適用することにより、耐光性に優れた光学フィルターが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本願発明の態様の例を以下に示す。
【0008】
[1] アニオンとカチオンとからなる対イオン結合体であり、該カチオンが下記一般式(I−1)もしくは(I−2)で表されることを特徴とするシアニン化合物。
【0009】
【化1】
式(I−1)および(I−2)中、
複数あるDは、独立に炭素原子、窒素原子、酸素原子または硫黄原子を表し、
複数あるRa、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、RhおよびRiは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、−L1、−S−L2、−SS−L2、−SO2−L3、−N=N−L4、または、RbとRc、RdとRe、ReとRf、RfとRg、RgとRhおよびRhとRiのうち少なくとも1つの組み合わせが結合した、下記式(A)〜(H)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、
前記アミノ基、アミド基、イミド基およびシリル基は、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜14の脂環式炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基および炭素数3〜14の複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基Lを有してもよく、
1は、下記La〜Leのいずれかを表し、
2は、水素原子または下記La〜Leのいずれかを表し、
3は、水酸基または下記La〜Leのいずれかを表し、
4は、下記La〜Leのいずれかを表し、
(La)前記置換基Lを有してもよい炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基
(Lb)前記置換基Lを有してもよい炭素数1〜12のハロゲン置換アルキル基
(Lc)前記置換基Lを有してもよい炭素数3〜14の脂環式炭化水素基
(Ld)前記置換基Lを有してもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基
(Le)前記置換基Lを有してもよい炭素数3〜14の複素環基
1はアセチル基を表し、Q2は下記一般式(q1)〜(q3)のいずれかで表される構造を表す。
【0010】
【化2】
式(A)〜(H)中、RxとRyの組み合わせは、RbとRc、RdとRe、ReとRf、RfとRg、RgとRhおよびRhとRiの組み合わせであり、
複数あるRA〜RLは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、−L1、−S−L2、−SS−L2、−SO2−L3または−N=N−L4(L1〜L4は、前記式(I−1)〜(I−2)において定義したL1〜L4と同義である。)を表し、前記アミノ基、アミド基、イミド基およびシリル基は、前記置換基Lを有してもよい。
【0011】
−Cm2m+1 (q1)
−Ca2a−OCb2b+1 (q2)
式(q1)中、mは1〜5の整数を表し、式(q2)中、a及びbはそれぞれ1〜5の整数を表す。
【0012】
【化3】
式(q3)中、nは1〜5の整数を表し、T1〜T5はそれぞれ独立して水素原子もしくは−OCp2p+1(pは1〜5の整数を表す)を表す。
【0013】
[2] 前記アニオンが下記一般式(II)で表わされることを特徴とする項[1]に記載のシアニン化合物。
【0014】
【化4】
式(II)中、Y1〜Y20は、全てフッ素原子であるか、またはY2、Y4、Y7、Y9、Y12、Y14、Y17、Y19がトリフルオロメチル基であり、残りのYが水素原子である。
【0015】
[3] 項[1]または[2]に記載のシアニン化合物を含有する透明樹脂製基板と、前記基板の少なくとも一方の面上に形成された近赤外線反射膜とを有することを特徴とする光学フィルター。
【0016】
[4] 前記透明樹脂製基板を構成する透明樹脂が、環状オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂およびシルセスキオキサン系紫外線硬化樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である[項]3に記載の光学フィルター。
【0017】
[5] 前記近赤外線反射膜が、前記基板の両面上に形成されている項[3]または[4]に記載の光学フィルター。
[6] 固体撮像装置用である項[3]〜[5]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【0018】
[7] 項[3]〜[6]のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する固体撮像装置。
[8] 項[3]〜[6]のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備するカメラモジュール。
【0019】
[9] 項[1]または[2]に記載のシアニン化合物と、環状オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂およびシルセスキオキサン系紫外線硬化樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂とを含有する樹脂組成物。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐光性に優れた光学フィルターを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係る光学フィルターは、後述する本発明のシアニン化合物(以下「シアニン化合物(A)」または「化合物(A)」ともいう。)を含有する透明樹脂製基板と、前記基板の少なくとも一方の面上に形成された近赤外線反射膜とを有する。
【0022】
[透明樹脂製基板]
本発明の光学フィルターを構成する透明樹脂製基板(以下「樹脂製基板」ともいう。)は、単層であっても多層(多層の場合、例えば、ベースとなる樹脂基板上に硬化樹脂からなるオーバーコート層などが積層された構成)であってもよく、近赤外線吸収色素として少なくとも化合物(A)を1種以上含有しており、吸収極大が波長700〜800nm、より好ましくは705〜750nmの範囲にあり、吸収極大波長における透過率が好ましくは10%以下、さらに好ましくは8%以下である。基板の吸収極大波長や吸収極大波長における透過率がこのような範囲にあれば、該基板は近赤外線を選択的に効率よくカットすることができるとともに、透明樹脂基板の面上に近赤外線反射膜を製膜した際、可視波長〜近赤外波長域付近の光学特性の入射角依存性を低減することができる。
【0023】
カメラモジュールなどの用途によっては、波長400〜700nmのいわゆる可視光領域において、化合物(A)を含有した樹脂製基板の厚みを100μmとした時の該基板の平均透過率が50%以上、好ましくは65%以上であることが必要な場合もある。
【0024】
前記樹脂製基板の厚みは、所望の用途に応じて適宜選択することができ、特に制限されないが、該基板が前記のような入射角依存改良性を有するように調整することが好ましく、より好ましくは30〜250μm、さらに好ましくは40〜200μm、特に好ましくは50〜150μmである。
【0025】
樹脂製基板の厚みが前記範囲にあると、該基板を用いた光学フィルターを小型化および軽量化することができ、固体撮像装置等の様々な用途に好適に用いることができる。特に、前記樹脂性基板をカメラモジュール等のレンズユニットに用いた場合には、レンズユニットの低背化を実現することができるため好ましい。
【0026】
前記樹脂製基板は、化合物(A)に加え、さらに、スクアリリウム系化合物、化合物(A)以外のシアニン系化合物およびフタロシアニン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の近赤外線吸収色素(X)を含有することができる。このような樹脂製基板を用いることにより、可視波長域〜近赤外波長域での入射角依存性をさらに小さくすることができる上、吸収帯の波形をさらにシャープにでき、視野角が広い光学フィルターを得ることができる。
【0027】
前記化合物(A)と前記近赤外線吸収色素(X)は、同一の層に含まれていても別々の層に含まれていてもよい。同一の層に含まれる場合は、例えば、化合物(A)と近赤外線吸収色素(X)がともに同一の樹脂製基板中に含まれる形態を挙げることができ、別々の層に含まれる場合は、例えば、化合物(A)が含まれる樹脂製基板上に前記近赤外線吸収色素(X)が含まれる層が積層されている形態を挙げることができる。
【0028】
化合物(A)と近赤外線吸収色素(X)は、同一の層に含まれている方がより好ましく、このような場合、別々の層に含まれる場合よりも化合物(A)と近赤外線吸収色素(X)の含有量比率を制御することがより容易となる。
【0029】
[シアニン化合物(A)]
本発明のシアニン化合物(A)は、下記一般式(I−1)もしくは(I−2)で表わされるカチオン(以下、これらをまとめて「カチオン(I)」ともいう。)とアニオン(以下「アニオン(II)」ともいう。)とからなる対イオン結合体である。
【0030】
≪カチオン(I)≫
【0031】
【化5】
式(I−1)および(I−2)中、
複数あるDは、独立に炭素原子、窒素原子、酸素原子または硫黄原子を表し、
複数あるRa、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、RhおよびRiは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、−L1、−S−L2、−SS−L2、−SO2−L3、−N=N−L4、または、RbとRc、RdとRe、ReとRf、RfとRg、RgとRhおよびRhとRiのうち少なくとも1つの組み合わせが結合した、下記式(A)〜(H)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、
前記アミノ基、アミド基、イミド基およびシリル基は、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜14の脂環式炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基および炭素数3〜14の複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基Lを有してもよく、
1は、下記La〜Leのいずれかを表し、
2は、水素原子または下記La〜Leのいずれかを表し、
3は、水酸基または下記La〜Leのいずれかを表し、
4は、下記La〜Leのいずれかを表し、
(La)前記置換基Lを有してもよい炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基
(Lb)前記置換基Lを有してもよい炭素数1〜12のハロゲン置換アルキル基
(Lc)前記置換基Lを有してもよい炭素数3〜14の脂環式炭化水素基
(Ld)前記置換基Lを有してもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基
(Le)前記置換基Lを有してもよい炭素数3〜14の複素環基
1はアセチル基を表し、Q2は下記一般式(q1)〜(q3)のいずれかで表される構造を表す。
【0032】
【化6】
式(A)〜(H)中、RxとRyの組み合わせは、RbとRc、RdとRe、ReとRf、RfとRg、RgとRhおよびRhとRiの組み合わせであり、
複数あるRA〜RLは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、−L1、−S−L2、−SS−L2、−SO2−L3または−N=N−L4(L1〜L4は、前記式(I−1)〜(I−2)において定義したL1〜L4と同義である。)を表し、前記アミノ基、アミド基、イミド基およびシリル基は、前記置換基Lを有してもよい。
【0033】
−Cm2m+1 (q1)
−Ca2a−OCb2b+1 (q2)
【0034】
【化7】
式(q1)中、mは1〜5の整数を表す。式(q2)中、a及びbはそれぞれ1〜5の整数を表す。式(q3)中、nは1〜5の整数を表し、T1〜T5はそれぞれ独立して水素原子もしくは−OCp2p+1(pは1〜5の整数を表す)を表す。
【0035】
前記La〜Leは、置換基を含めた炭素数の合計が、それぞれ50以下であることが好ましく、炭素数40以下であることが更に好ましく、炭素数30以下であることが特に好ましい。炭素数がこの範囲よりも多いと、色素の合成が困難となる場合があるとともに、単位重量あたりの吸収強度が小さくなってしまう傾向がある。
【0036】
前記LaおよびLにおける炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基(Me)、エチル基(Et)、n−プロピル基(n−Pr)、イソプロピル基(i−Pr)、n−ブチル基(n−Bu)、sec−ブチル基(s−Bu)、tert−ブチル基(t−Bu)、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基およびドデシル基等のアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−ペンテニル基、ヘキセニル基およびオクテニル基等のアルケニル基;ならびに、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、2−メチル−1−プロピニル基、ヘキシニル基およびオクチニル基等のアルキニル基を挙げることができる。
【0037】
前記LbおよびLにおける炭素数1〜12のハロゲン置換アルキル基としては、例えば、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1−ジクロロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタクロロプロピル基およびヘプタフルオロプロピル基を挙げることができる。
【0038】
前記LcおよびLにおける炭素数3〜14の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびシクロオクチル基等のシクロアルキル基;ノルボルナン基およびアダマンタン基等の多環脂環式基を挙げることができる。
【0039】
前記LdおよびLにおける炭素数6〜14の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、アセナフチル基、フェナレニル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基およびビフェニリル基を挙げることができる。
【0040】
前記LeおよびLにおける炭素数3〜14の複素環基としては、例えば、フラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、インドール、インドリン、インドレニン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、モルホリンおよびフェナジン等の複素環からなる基を挙げることができる。
【0041】
前記Laとしては、上述した「炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基」、および当該脂肪族炭化水素基が前記置換基Lをさらに有するものが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、4−フェニルブチル基、2−シクロヘキシルエチルであり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基である。
【0042】
前記Lbとしては、上述した「炭素数1〜12のハロゲン置換アルキル基」、および当該ハロゲン置換アルキル基が前記置換基Lをさらに有するものが挙げられ、好ましくはトリクロロメチル基、ペンタクロロエチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、5−シクロヘキシル−2,2,3,3−テトラフルオロペンチル基であり、より好ましくはトリクロロメチル基、ペンタクロロエチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基である。
【0043】
前記Lcとしては、上述した「炭素数3〜14の脂環式炭化水素基」、および当該脂環式炭化水素基が前記置換基Lをさらに有するものが挙げられ、好ましくはシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基、4−フェニルシクロヘプチル基であり、より好ましくはシクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基である。
【0044】
前記Ldとしては、上述した「炭素数6〜14の芳香族炭化水素基」、および当該芳香族炭化水素基が前記置換基Lをさらに有するものが挙げられ、好ましくはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、4−シクロペンチルフェニル基、2,3,6−トリフェニルフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフェニルフェニル基であり、より好ましくはフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、2,3,4,5,6−ペンタフェニルフェニル基である。
【0045】
前記Leとしては、上述した「炭素数3〜14の複素環基」、および当該複素環基が前記置換基Lをさらに有するものが挙げられ、好ましくはフラン、チオフェン、ピロール、インドール、インドリン、インドレニン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、モルホリンからなる基であり、より好ましくはフラン、チオフェン、ピロール、モルホリンからなる基である。
【0046】
前記La〜Leは、さらに、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を有していてもよい。このような例としては、4−スルホブチル基、4−シアノブチル基、5−カルボキシペンチル基、5−アミノペンチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ホスホリルエチル基、6−アミノ−2,2−ジクロロヘキシル基、2−クロロ−4−ヒドロキシブチル基、2−シアノシクロブチル基、3−ヒドロキシシクロペンチル基、3−カルボキシシクロペンチル基、4−アミノシクロヘキシル基、4−ヒドロキシシクロヘキシル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−ヒドロキシナフチル基、4−アミノフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、4−ニトロフェニル基、3−メチルピロールからなる基、2−ヒドロキシエトキシ基、3−シアノプロポキシ基、4−フルオロベンゾイル基、2−ヒドロキシエトキシカルボニル基、4−シアノブトキシカルボニル基を挙げることができる。
【0047】
前記Ra〜Riにおいて、置換基Lを有してもよいアミノ基としては、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などが挙げられる。
【0048】
前記Ra〜Riにおいて、置換基Lを有してもよいアミド基としては、アミド基、メチルアミド基、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジプロピルアミド基、ジイソプロピルアミド基、ジブチルアミド基、α−ラクタム基、β−ラクタム基、γ−ラクタム基、δ−ラクタム基などが挙げられる。
【0049】
前記Ra〜Riにおいて、置換基Lを有してもよいイミド基としては、イミド基、メチルイミド基、エチルイミド基、ジエチルイミド基、ジプロピルイミド基、ジイソプロピルイミド基、ジブチルイミド基などが挙げられる。
【0050】
前記Ra〜Riにおいて、置換基Lを有してもよいシリル基としては、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられる。
【0051】
前記Ra〜Riにおいて、−S−L2としては、チオール基、メチルスルフィド基、エチルスルフィド基、プロピルスルフィド基、ブチルスルフィド基、イソブチルスルフィド基、sec-ブチルスルフィド基、tert-ブチルスルフィド基、フェニルスルフィド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルスルフィド基、2,6−ジフェニルフェニルスルフィド基、4−クミルフェニルフルフィド基などが挙げられる。
【0052】
前記Ra〜Riにおいて、−SS−L2としては、ジスルフィド基、メチルジスルフィド基、エチルジスルフィド基、プロピルジスルフィド基、ブチルジスルフィド基、イソブチルジスルフィド基、sec-ブチルジスルフィド基、tert-ブチルジスルフィド基、フェニルジスルフィド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルジスルフィド基、2,6−ジフェニルフェニルジスルフィド基、4−クミルフェニルジスルフィド基などが挙げられる。
【0053】
前記Ra〜Riにおいて、−SO2−L3としては、スルホキシル基、メシル基、エチルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、p−トルエンスルホニル基などが挙げられる。
前記Ra〜Riにおいて、−N=N−L4としては、メチルアゾ基、フェニルアゾ基、p−メチルフェニルアゾ基、p−ジメチルアミノフェニルアゾ基などが挙げられる。
【0054】
≪アニオン(II)≫
前記アニオン(II)は、シアニン系化合物のアニオン体であれば、特に限定されないが、シアニン化合物の耐光性向上の観点から、例えば、下記一般式(II)で表されるアニオンが挙げられる。
【0055】
【化8】
式(II)中、Y1〜Y20は、全てフッ素原子であるか、またはY2、Y4、Y7、Y9、Y12、Y14、Y17、Y19がトリフルオロメチル基であり、残りのYが水素原子である。
【0056】
<近赤外線吸収色素(X)>
前記近赤外線吸収色素(X)は、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物および前記化合物(A)以外のシアニン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、スクアリリウム系化合物を含むことが特に好ましい。近赤外線吸収色素(X)の吸収極大波長は、好ましくは620nm以上、さらに好ましくは650nm以上、特に好ましくは670nm以上であり、かつ、好ましくは800nm未満、さらに好ましくは750nm以下、特に好ましくは730nm以下であり、且つ、同時に含まれる化合物(A)の吸収極大波長よりも短波長側に吸収極大を有することが望ましい。吸収極大波長がこのような波長範囲にあると、吸収帯の波形をさらにシャープにできる上、近赤外吸収色素による吸収帯を十分に広げることができ、さらに優れた入射角依存改良性能やゴースト低減効果を達成することができる。
【0057】
樹脂製基板において、近赤外線吸収色素(X)の含有量は、樹脂製基板製造時に用いる透明樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜5.0重量部、より好ましくは0.02〜3.5重量部、特に好ましくは0.03〜2.5重量部である。近赤外線吸収色素(X)の含有量が前記範囲内にあると、良好な近赤外線吸収特性と高い可視光透過率とを両立させることができる。
【0058】
《スクアリリウム系化合物》
スクアリリウム系化合物としては、式(III−1)で表されるスクアリリウム系化合物および式(III−2)で表されるスクアリリウム系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0059】
【化9】
式(III−1)中、Ra、RbおよびYは、下記(i)または(ii)の条件を満たす。
【0060】
条件(i)
複数あるRaは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、−L1または−NRef基を表す。ReおよびRfは、それぞれ独立に水素原子、−La、−Lb、−Lc、−Ldまたは−Leを表す。
【0061】
複数あるRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、−L1または−NRgh基を表す。RgおよびRhは、それぞれ独立に水素原子、−La、−Lb、−Lc、−Ld、−Leまたは−C(O)Ri基(Riは、−La、−Lb、−Lc、−Ldまたは−Leを表す。)を表す。
【0062】
複数あるYは、それぞれ独立に−NRjk基を表す。RjおよびRkは、それぞれ独立に水素原子、−La、−Lb、−Lc、−Ldまたは−Leを表す。
前記L1、La、Lb、Lc、Ld、Leは、それぞれ独立に前記式(I−1)〜(I−2)にて定義したL1、La、Lb、Lc、Ld、Leと同義である。
【0063】
条件(ii)
1つのベンゼン環上の2つのRaのうちの少なくとも1つが、同じベンゼン環上のYと相互に結合して、窒素原子を少なくとも1つ含む構成原子数5または6の複素環を形成し、前記複素環は置換基を有していてもよく、Rbおよび前記複素環の形成に関与しないRaは、それぞれ独立に前記(i)のRbおよびRaと同義である。
【0064】
【化10】
式(III−2)中、Xは、O、S、Se、N−RcまたはC−Rddを表し;複数あるRcは、それぞれ独立に水素原子、−La、−Lb、−Lc、−Ldまたは−Leを表し;複数あるRdは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、−L1または−NRef基を表し、隣り合うRd同士は連結して置換基を有していてもよい環を形成してもよく;La〜Le、L1は前記式(I−1)〜(I−2)にて定義したLa〜Leと同義であり、ReおよびRfは、前記(i)のReおよびRfと同義である。
【0065】
前記スクアリリウム系化合物の中央の四員環に結合している左右の置換基は同一であっても異なっていてもよいが、同一であった方が合成上容易であるため好ましい。
前記スクアリリウム系化合物は、一般的に知られている方法で合成すればよく、例えば、特開平1−228960号公報、特開2001−40234号公報、特許第3196383号公報等に記載されている方法等を参照して合成することができる。
【0066】
《フタロシアニン系化合物》
フタロシアニン系化合物としては、一般的に知られている任意の構造のものを用いることができ、たとえば特許第4081149号公報や「フタロシアニン −化学と機能―」(アイピーシー、1997年)に記載されている方法で合成することができる。
【0067】
《シアニン系化合物》
シアニン系化合物としては、化合物(A)以外で一般的に知られている任意の構造のものを用いることができ、たとえば特開2009−108267号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0068】
<透明樹脂>
樹脂製基板は、透明樹脂を用いて形成することができる。
透明樹脂としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されないが、例えば、熱安定性およびフィルムへの成形性を確保し、かつ、100℃以上の蒸着温度で行う高温蒸着により誘電体多層膜を形成しうるフィルムとするため、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110〜380℃、より好ましくは110〜370℃、さらに好ましくは120〜360℃である樹脂が挙げられる。また、前記樹脂のガラス転移温度が140℃以上であると、誘電体多層膜をより高温で蒸着形成しえるフィルムが得られるため、特に好ましい。
【0069】
透明樹脂としては、当該樹脂からなる厚さ0.1mmの樹脂板を形成した場合に、この樹脂板の全光線透過率(JIS K7105)が、好ましくは75〜95%、さらに好ましくは78〜95%、特に好ましくは80〜95%となる樹脂を用いることができる。全光線透過率がこのような範囲となる樹脂を用いれば、得られる基板は光学フィルムとして良好な透明性を示す。
【0070】
透明樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常15,000〜350,000、好ましくは30,000〜250,000であり、数平均分子量(Mn)は、通常10,000〜150,000、好ましくは20,000〜100,000である。
【0071】
透明樹脂としては、例えば、環状オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(アラミド)系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂およびシルセスキオキサン系紫外線硬化樹脂を挙げることができる。
【0072】
≪環状オレフィン系樹脂≫
環状オレフィン系樹脂としては、下記式(X0)で表される単量体および下記式(Y0)で表される単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体から得られる樹脂、および当該樹脂を水素添加することで得られる樹脂が好ましい。
【0073】
【化11】
式(X0)中、Rx1〜Rx4は、それぞれ独立に下記(i’)〜(ix’)より選ばれる原子または基を表し、kx、mxおよびpxは、それぞれ独立に0または正の整数を表す。
(i’)水素原子
(ii’)ハロゲン原子
(iii’)トリアルキルシリル基
(iv’)酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有する、
置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(v’)置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(vi’)極性基(但し、(iv’)を除く。)
(vii’)Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成されたアルキリデン基(但し、前記結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i’)〜(vi’)より選ばれる原子または基を表す。)
(viii’)Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の炭化水素環または複素環(但し、前記結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i’)〜(vi’)より選ばれる原子または基を表す。)
(ix’)Rx2とRx3とが、相互に結合して形成された単環の炭化水素環または複素環(但し、前記結合に関与しないRx1とRx4は、それぞれ独立に前記(i’)〜(vi’)より選ばれる原子または基を表す。)
【0074】
【化12】
式(Y0)中、Ry1およびRy2は、それぞれ独立に前記(i’)〜(vi’)より選ばれる原子または基を表すか、Ry1とRy2とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の脂環式炭化水素、芳香族炭化水素または複素環を表し、kyおよびpyは、それぞれ独立に0または正の整数を表す。
【0075】
≪芳香族ポリエーテル系樹脂≫
芳香族ポリエーテル系樹脂は、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。
【0076】
【化13】
式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。
【0077】
【化14】
式(2)中、R1〜R4およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1〜R4およびa〜dと同義であり、Yは、単結合、−SO2−または>C=Oを示し、R7およびR8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、mは0または1を示す。但し、mが0のとき、R7はシアノ基ではない。
【0078】
また、前記芳香族ポリエーテル系樹脂は、さらに下記式(3)で表される構造単位および下記式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。
【0079】
【化15】
式(3)中、R5およびR6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、eおよびfは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは0または1を示す。
【0080】
【化16】
式(4)中、R7、R8、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(2)中のR7、R8、Y、m、gおよびhと同義であり、R5、R6、Z、n、eおよびfは、それぞれ独立に前記式(3)中のR5、R6、Z、n、eおよびfと同義である。
【0081】
≪ポリイミド系樹脂≫
ポリイミド系樹脂としては、特に制限されず、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子化合物であればよく、例えば特開2006−199945号公報や特開2008−163107号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0082】
≪フルオレンポリカーボネート系樹脂≫
フルオレンポリカーボネート系樹脂としては、特に制限されず、フルオレン部位を含むポリカーボネート樹脂であればよく、例えば特開2008−163194号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0083】
≪フルオレンポリエステル系樹脂≫
フルオレンポリエステル系樹脂としては、特に制限されず、フルオレン部位を含むポリエステル樹脂であればよく、例えば特開2010−285505号公報や特開2011−197450号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0084】
≪フッ素化芳香族ポリマー系樹脂≫
フッ素化芳香族ポリマー系樹脂としては、特に制限されないが、少なくとも1つのフッ素を有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合およびエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも1つの結合を含む繰り返し単位とを含有するポリマーであればよく、例えば特開2008−181121号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0085】
≪市販品≫
透明樹脂の市販品としては、以下の市販品等を挙げることができる。環状オレフィン系樹脂の市販品としては、JSR株式会社製アートン、日本ゼオン株式会社製ゼオノア、三井化学株式会社製APEL、ポリプラスチックス株式会社製TOPASなどを挙げることができる。ポリエーテルサルホン系樹脂の市販品としては、住友化学株式会社製スミカエクセルPESなどを挙げることができる。ポリイミド系樹脂の市販品としては、三菱ガス化学株式会社製ネオプリムLなどを挙げることができる。ポリカーボネート系樹脂の市販品としては、帝人株式会社製ピュアエースなどを挙げることができる。フルオレンポリカーボネート系樹脂の市販品としては、三菱ガス化学株式会社製ユピゼータEP−5000などを挙げることができる。フルオレンポリエステル系樹脂の市販品としては、大阪ガスケミカル株式会社製OKP4HTなどを挙げることができる。アクリル系樹脂の市販品としては、株式会社日本触媒製アクリビュアなどを挙げることができる。シルセスキオキサン系紫外線硬化樹脂の市販品としては、新日鐵化学株式会社製シルプラスなどを挙げることができる。
【0086】
<その他成分>
前記樹脂製基板は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに、酸化防止剤、近紫外線吸収剤、近赤外線を吸収する色素、蛍光消光剤、および金属錯体系化合物等の添加剤を含有してもよい。また、後述するキャスト成形により樹脂製基板を製造する場合には、レベリング剤や消泡剤を添加することで樹脂製基板の製造を容易にすることができる。これらその他成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
前記近紫外線吸収剤としては、例えばアゾメチン系化合物、インドール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。
前記酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、およびテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。
【0088】
前記近赤外線を吸収する色素としては、例えばジチオール系色素 、ジイモニウム系色素、ポルフィリン系色素、クロコニウム系色素などが挙げられる。これら色素の構造は特に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわないものであれば一般的に知られているものを使用することができる。
【0089】
なお、これら添加剤は、樹脂製基板を製造する際に、樹脂などとともに混合してもよいし、樹脂を製造する際に添加してもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるものであるが、樹脂100重量部に対して、通常0.01〜5.0重量部、好ましくは0.05〜2.0重量部である。
【0090】
<樹脂製基板の製造方法>
前記樹脂製基板は、例えば、溶融成形またはキャスト成形により形成することができ、必要により、成形後に、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤をコーティングする方法により製造することができる。
【0091】
≪溶融成形≫
前記樹脂製基板は、樹脂と近赤外線吸収色素とを溶融混練りして得られたペレットを溶融成形する方法;樹脂と近赤外線吸収色素とを含有する樹脂組成物を溶融成形する方法;または、近赤外線吸収色素、樹脂および溶剤を含む樹脂組成物から溶剤を除去して得られたペレットを溶融成形する方法などにより製造することができる。溶融成形方法としては、例えば、射出成形、溶融押出成形またはブロー成形などを挙げることができる。
【0092】
≪キャスト成形≫
前記樹脂製基板は、近赤外線吸収色素、樹脂および溶剤を含む樹脂組成物を適当な基材の上にキャスティングして溶剤を除去する方法;反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤と、近赤外線吸収色素と、樹脂とを含む樹脂組成物を適当な基材の上にキャスティングする方法;または、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤と、近赤外線吸収色素と、樹脂とを含む硬化性組成物を適当な基材の上にキャスティングして硬化および乾燥させる方法などにより製造することもできる。
【0093】
前記基材としては、例えば、ガラス板、スチールベルト、スチールドラムおよび透明樹脂(例えば、ポリエステルフィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム)が挙げられる。
前記樹脂製基板は、基材から剥離することにより得ることができ、また、本発明の効果を損なわない限り、基材から剥離せずに基材と塗膜との積層体を前記樹脂製基板としてもよい。
【0094】
さらに、ガラス板、石英または透明プラスチック製等の光学部品に、前記樹脂組成物をコーティングして溶剤を乾燥させる方法、または、前記硬化性組成物をコーティングして硬化および乾燥させる方法などにより、光学部品上に直接樹脂製基板を形成することもできる。
【0095】
前記方法で得られた樹脂製基板中の残留溶剤量は可能な限り少ない方がよい。具体的には、前記残留溶剤量は、樹脂基板の重さに対して、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。残留溶剤量が前記範囲にあると、変形や特性が変化しにくい、所望の機能を容易に発揮できる樹脂製基板が得られる。
【0096】
[近赤外線反射膜]
本発明の光学フィルターを構成する近赤外線反射膜は、近赤外線を反射する能力を有する膜である。本発明では、近赤外線反射膜は樹脂製基板の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面に設ける場合、製造コストや製造容易性に優れ、両面に設ける場合、高い強度を有し、反りの生じにくい光学フィルターを得ることができる。光学フィルターを固体撮像素子用途に適用する場合、光学フィルターの反りが小さい方が好ましいことから、近赤外線反射膜を樹脂製基板の両面に設けることが好ましい。
【0097】
近赤外線反射膜としては、例えば、アルミ蒸着膜、貴金属薄膜、酸化インジウムを主成分とし酸化錫を少量含有させた金属酸化物微粒子を分散させた樹脂膜、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜が挙げられる。近赤外線反射膜の中では、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜がより好ましい。
【0098】
高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率が通常は1.7〜2.5の材料が選択される。このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、または、酸化インジウム等を主成分とし、酸化チタン、酸化錫および/または酸化セリウム等を少量(例えば、主成分に対して0〜10重量%)含有させたものが挙げられる。
【0099】
低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率が通常は1.2〜1.6の材料が選択される。このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムが挙げられる。
【0100】
高屈折率材料層と低屈折率材料層とを積層する方法については、これらの材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はない。例えば、樹脂製基板上に、直接、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法またはイオンプレーティング法等により、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することができる。
【0101】
高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さは、通常、遮断しようとする近赤外線波長をλ(nm)とすると、0.1λ〜0.5λの厚さが好ましい。λ(nm)の値としては、例えば700〜1400nm、好ましくは750〜1300nmである。厚さがこの範囲であると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さとがほぼ同じ値となって、反射・屈折の光学的特性の関係から、特定波長の遮断・透過を容易にコントロールできる傾向にある。
【0102】
誘電体多層膜における高屈折率材料層と低屈折率材料層との合計の積層数は、光学フィルター全体として5〜60層であることが好ましく、10〜50層であることがより好ましい。
【0103】
さらに、誘電体多層膜を形成した際に樹脂製基板に反りが生じてしまう場合には、これを解消するために、樹脂製基板両面に誘電体多層膜を形成したり、樹脂製基板の誘電体多層膜を形成した面に紫外線等の電磁波を照射したりする方法等をとることができる。なお、電磁波を照射する場合、誘電体多層膜の形成中に照射してもよいし、形成後別途照射してもよい。
【0104】
[その他の機能膜]
本発明の光学フィルターは、本発明の効果を損なわない範囲において、樹脂製基板と誘電体多層膜等の近赤外線反射膜との間、樹脂製基板の近赤外線反射膜が設けられた面と反対側の面、または近赤外線反射膜の樹脂製基板が設けられた面と反対側の面に、樹脂製基板や近赤外線反射膜の表面硬度の向上、耐薬品性の向上、帯電防止および傷消しなどの目的で、反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を適宜設けることができる。
【0105】
本発明の光学フィルターは、前記機能膜からなる層を1層含んでもよく、2層以上含んでもよい。本発明の光学フィルターが前記機能膜からなる層を2層以上含む場合には、同様の層を2層以上含んでもよいし、異なる層を2層以上含んでもよい。
【0106】
機能膜を積層する方法としては、特に制限されないが、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤などを樹脂製基板または近赤外線反射膜上に、前記と同様に溶融成形またはキャスト成形する方法等を挙げることができる。
【0107】
また、前記コーティング剤などを含む硬化性組成物をバーコーター等で樹脂製基板または赤外線反射膜上に塗布した後、紫外線照射等により硬化することによっても製造することができる。
【0108】
前記コーティング剤としては、紫外線(UV)/電子線(EB)硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などが挙げられ、具体的には、ビニル化合物類や、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系樹脂などが挙げられる。これらのコーティング剤を含む前記硬化性組成物としては、ビニル系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系硬化性組成物などが挙げられる。
【0109】
また、前記硬化性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。前記重合開始剤としては、公知の光重合開始剤または熱重合開始剤を用いることができ、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0110】
前記硬化性組成物中、重合開始剤の配合割合は、硬化性組成物の全量を100重量%とした場合、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%である。重合開始剤の配合割合が前記範囲にあると、硬化性組成物の硬化特性および取り扱い性が優れ、所望の硬度を有する反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を得ることができる。
【0111】
さらに、前記硬化性組成物には溶剤として有機溶剤を加えてもよく、有機溶剤としては、公知のものを使用することができる。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。これら溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0112】
前記機能膜の厚さは、好ましくは0.1μm〜20μm、さらに好ましくは0.5μm〜10μm、特に好ましくは0.7μm〜5μmである。
また、樹脂製基板と機能膜および/または近赤外線反射膜との密着性や、機能膜と近赤外線反射膜との密着性を上げる目的で、樹脂製基板や機能膜の表面にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理をしてもよい。
【0113】
[光学フィルターの特性等]
本発明の光学フィルターは、前記樹脂製基板を有する。このため、本発明の光学フィルターは、透過率特性に優れ、使用する際に制約を受けない。また、樹脂製基板に含まれる化合物(A)は、波長700〜800nmに吸収極大を有するため近赤外光を効率的に吸収することができ、上記近赤外線反射膜と組み合わせることにより、入射角依存性の少ない光学フィルターを得ることができる。
【0114】
前記光学フィルターを固体撮像素子用に使用する場合、可視光透過率が高い方が好ましい。特に近年、カメラモジュールにおいても高画質化の要求が強くなっており、撮像感度や色再現性を向上させるために、波長430〜460nmの短波長側の透過率を高くする必要が有る。具体的には、波長430〜460nmの平均透過率は、好ましくは81%以上、より好ましくは83%以上、特に好ましくは85%以上である。また、波長461〜580nmの平均透過率も同様に高い方が好ましく、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、特に好ましくは90%以上である。それぞれの波長域において平均透過率がこの範囲にあると、固体撮像素子用途として使用した場合、優れた撮像感度と色再現性を達成することができる。
【0115】
前記光学フィルターを固体撮像素子用に使用する場合、近赤外波長域の透過率が低い方が好ましい。特に、波長800〜1000nmの領域は固体撮像素子の受光感度が比較的高いことが知られており、この波長域の透過率を低減させることにより、カメラ画像と人間の目の視感度補正を効果的に行うことができ、優れた色再現性を達成することができる。波長800〜1000nmの平均透過率は、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下である。波長800〜1000nmの平均透過率がこの範囲にあると、近赤外線を十分にカットすることができ、優れた色再現性を達成できるため好ましい。
【0116】
[光学フィルターの用途]
本発明の光学フィルターは、視野角が広く、優れた近赤外線カット能等を有する。したがって、カメラモジュールのCCDやCMOSイメージセンサーなどの固体撮像素子の視感度補正用として有用である。特に、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、テレビ、カーナビ、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー等に有用である。さらに、自動車や建物などのガラス等に装着される熱線カットフィルターなどとしても有用である。
【0117】
[固体撮像装置]
本発明の固体撮像装置は、本発明の光学フィルターを具備する。ここで、固体撮像装置とは、CCDやCMOSイメージセンサー等といった固体撮像素子を備えたイメージセンサーであり、具体的にはデジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ等の用途に用いることができる。例えば、本発明のカメラモジュールは、本発明の光学フィルターを具備する。
【実施例】
【0118】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、「部」は、特に断りのない限り「重量部」を意味する。また、各物性値の測定方法および物性の評価方法は以下のとおりである。
【0119】
<分子量>
樹脂の分子量は、各樹脂の溶剤への溶解性等を考慮し、下記の(a)または(b)の方法にて測定を行った。
(a)ウオターズ(WATERS)社製のゲルパーミエ−ションクロマトグラフィー(GPC)装置(150C型、カラム:東ソー社製Hタイプカラム、展開溶剤:o−ジクロロベンゼン)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
(b)東ソー社製GPC装置(HLC−8220型、カラム:TSKgelα‐M、展開溶剤:THF)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
【0120】
<ガラス転移温度(Tg)>
エスアイアイ・ナノテクノロジーズ株式会社製の示差走査熱量計(DSC6200)を用いて、昇温速度:毎分20℃、窒素気流下で測定した。
【0121】
<分光透過率>
吸収極大、各波長域における透過率は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計(U−4100)を用いて測定した。
【0122】
<シアニン化合物の耐光性評価>
樹脂製基板を室内蛍光灯に500時間曝露させ、樹脂中に含まれる近赤外線吸収色素の耐光性(環境光耐性)を評価した。耐光性は、樹脂製基板の最も吸収強度が高い波長(以下「λa」と称する。樹脂製基板が複数の吸収極大を有する場合、λaはこのうち最も吸収強度が高い波長である。)における蛍光灯曝露前後の吸光度変化から色素残存率(%)を算出して評価した。蛍光灯で500時間曝露後の色素残存率は、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
【0123】
[合成例]
下記実施例で用いた化合物(A)、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物および化合物(A)以外のシアニン系化合物は、一般的に知られている方法で合成することができ、例えば、特許第3366697号公報、特許第2846091号公報、特許第2864475号公報、特許第3703869号公報、特開昭60−228448号公報、特開平1−146846号公報、特開平1−228960号公報、特許第4081149号公報、特開昭63−124054号公報、「フタロシアニン −化学と機能―」(アイピーシー、1997年)、特開2007−169315号公報、特開2009−108267号公報、特開2010−241873号公報、特許第3699464号公報、特許第4740631号公報などに記載されている方法を参照して合成することができる。
【0124】
<樹脂合成例1>
下記式(a)で表される8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以下「DNM」ともいう。)100部、1−ヘキセン(分子量調節剤)18部およびトルエン(開環重合反応用溶媒)300部を、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/リットル)0.2部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0125】
【化17】
このようにして得られた開環重合体溶液1,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533を0.12部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下「樹脂A」ともいう。)を得た。得られた樹脂Aは、数平均分子量(Mn)が32,000、重量平均分子量(Mw)が137,000であり、ガラス転移温度(Tg)が165℃であった。
【0126】
<シアニン化合物合成例1>
(1)本合成例における第1段階の反応スキームを以下に示す。
【0127】
【化18】
窒素置換したジメチルホルムアミド(DMF)に、上記反応スキームに示した化合物a(2.9mmol)および化合物b(5.8mmol)を添加し、120℃で3時間撹拌して反応させた。生成物をジエチルエーテルで抽出し、シリカゲルカラムにて精製を行い、化合物cを得た。化合物cの収率は51%であった。また、NMR測定の結果を以下に示す。
1H NMR(DMSO-d6) d 1.33 (t, J = 7.0 Hz, 6H), 1.87 (brs, 2H), 1.91(s, 12H), 2.73 (t, J = 5.9 Hz, 4H), 4.36(q, J = 7.0 Hz, 4H), 6.32 (d, J = 14.3 Hz, 2H), 7.49 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 7.63 (t, J = 7.6 Hz, 2H ), 7.76 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 8.03 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 8.06 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 8.25 (d, 8.5 Hz 2H), 8.32 (d, J = 14.3 Hz) 。
【0128】
(2)次に、本合成例における第2段階の反応スキームを以下に示す。
【0129】
【化19】
得られた化合物c(30mmol)を窒素置換したアセトニトリルに溶解させ、エチルアミン(120mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(60mmol)を加え、1時間加熱還流を行った。その後、減圧濃縮により溶媒を除去した。得られた化合物を窒素置換したジクロロメタンに溶解させ、0℃で塩化アセチル(750mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(150mmol)を加え反応させた。得られた化合物dの収率は5.0%であった。また、NMR測定の結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3) d 0.83 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.31 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 1.49 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.90 (m, 12H), 1.96 (s, 3H), 2.66 (m, 2H), 2.87 (m, 2H), 3.81 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 4.36 (q, J = 7.2 Hz, 4H), 6.25 (d, J = 13.9 Hz, 2H), 7.46 (m, 4H), 7.57 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.69 (d, J = 14.4 Hz, 2H), 7.92 (t, J = 8.3 Hz, 4H), 8.05 (d, J = 8.5 Hz, 2H)。
【0130】
(3)次に、本合成例における第3段階の反応スキームを以下に示す。
【0131】
【化20】
得られた化合物dをアセトンに溶解させ、対応する金属ホウ素塩を加え、室温で塩交換を行うことで化合物e(以下「シアニン化合物1」ともいう。)を得た。化合物eの収率は67%であった。また、NMR測定の結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3) d 0.87 (t, J = 6.7 Hz, 3H), 1.36 (m,2H), 1.47 (t, J = 7.0, 6H), 1.95 (m, 12H), 2.16 (s, 3H), 2.50 (m, 2H), 2.71 (m, 2H), 3.85 (q, J=7.2 Hz, 2H ), 4.14 (q, J = 7.0 Hz, 4H), 6.11 (d, J = 14.4 Hz, 2H), 7.34 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.50 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 7.63 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 7.78 (d, J = 14.4 Hz, 2H), 7.95 (d, J = 8.5 Hz, 4H), 8.10 (d, J = 8.5 Hz, 2H)。
【0132】
<シアニン化合物合成例2>
シアニン化合物合成例1の第2段階において、エチルアミンをベンジルアミンに変更したこと以外は、シアニン化合物合成例1と同様の方法で、下記式で表わされるシアニン化合物2を得た。
【0133】
【化21】
【0134】
<シアニン化合物合成例3>
シアニン化合物合成例1の第2段階において、エチルアミンを2−(2−アミノエチル)ピリジンに変更したこと以外は、シアニン化合物合成例1と同様の方法で、下記式で表わされるシアニン化合物3を得た。
【0135】
【化22】
【0136】
[実施例1]
容器に、樹脂合成例1で得られた樹脂A(100重量部)、シアニン化合物合成例1で得られたシアニン化合物1(0.08重量部)、および塩化メチレンを加えて樹脂濃度が20重量%の溶液を得た。次いで、得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥して塗膜を形成した後、ガラス板から塗膜を剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。この基板の分光透過率を測定し、樹脂製基板のλaを求めたところ828nmであった。また、この基板について耐光性評価を行ったところ、色素残存率は93.1%であった。結果を表1に示す。
【0137】
実施例2および[比較例
実施例1において、表1に示すシアニン化合物を採用したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ0.1mmの光学フィルターを製造した。評価結果を表1に示す。
【0138】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の光学フィルターは、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、テレビ、カーナビ、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー等に好適に用いることができる。さらに、自動車や建物などのガラス等に装着される熱線カットフィルターなどとしても好適に用いることができる。