特許第6334974号(P6334974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334974
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】光出射装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20180521BHJP
   F21S 41/00 20180101ALI20180521BHJP
   F21S 43/00 20180101ALI20180521BHJP
   F21S 45/00 20180101ALI20180521BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20180521BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20180521BHJP
   F21W 104/00 20180101ALN20180521BHJP
   F21W 105/00 20180101ALN20180521BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180521BHJP
【FI】
   F21S2/00 310
   F21S8/10 380
   F21S8/10 382
   F21V7/00 320
   F21Y115:10
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-56284(P2014-56284)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-179603(P2015-179603A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2017年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 敬四郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141302
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 伸一
(72)【発明者】
【氏名】都甲 康夫
【審査官】 津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−094332(JP,A)
【文献】 特開2010−002573(JP,A)
【文献】 特開平10−133236(JP,A)
【文献】 特開2011−253772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21S 43/00
F21V 7/00
G02F 1/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸上に光線を出射する光源と、
前記光軸に対して傾斜して配置された少なくとも1つのミラー素子と、を有し、
前記ミラー素子は、
対向配置された第1、第2の透明基板と、
第1、第2の透明基板の対向面上方に形成された第1、第2の透明電極と、
前記第1、第2の透明電極間に配置され、金属イオンを含有するエレクトロデポジション材料を含む電解液と、
前記ミラー素子の少なくとも一つにおいて、前記第1の透明基板の対向面上に形成されたマイクロプリズムと、
を含み、
さらに前記ミラー素子の第1、第2の透明電極間に電圧を印加する制御回路と、
を有し、
前記第1の透明電極は、前記マイクロプリズムの表面に形成されていることを特徴とする、
光出射装置。
【請求項2】
前記ミラー素子は2つ以上であり、前記光源の光軸に対する傾斜角が同角度である、請求項記載の光出射装置。
【請求項3】
前記ミラー素子は2つ以上であり、前記光源の光軸に対する傾斜角は、それぞれの前記ミラー素子で異なる、請求項記載の光出射装置。
【請求項4】
前記ミラー素子が配置された前記光軸の延長線上に反射板を有する請求項1からのいずれか1項記載の光出射装置。
【請求項5】
第2の透明基板の対向面は前記第1の透明基板の対向面とは異なる面形状に形成されており、
前記制御回路は印加する極性を切り替える機能を有する請求項1から4のいずれか1項記載の光出射装置。
【請求項6】
前記第1、第2の透明電極は、少なくとも一方の透明電極が2つ以上の電極パターンを有し、前記制御回路は各電極パターンに別途電圧を印加する機能を有する請求項1から5のいずれか1項記載の光出射装置。
【請求項7】
光軸上に光線を出射する光源を収容できる光源収容部と、
前記光軸に対して傾斜して配置された少なくとも1つのミラー素子と、を有し、
前記ミラー素子は、
対向配置された第1、第2の透明基板と、
第1、第2の透明基板の対向面上方に形成された第1、第2の透明電極と、
前記第1、第2の透明電極間に配置された金属イオンを含有するエレクトロデポジション材料を含む電解液と、
前記ミラー素子の少なくとも一つにおいて、前記第1の透明基板の対向面上に形成されたマイクロプリズムと、
を含み、
さらに前記ミラー素子の第1、第2の透明電極間に電圧を印加する制御回路と、
を有し、
前記第1の透明電極は、前記マイクロプリズムの表面に形成されていることを特徴とする、
光出射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具や各種照明具等の光出射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光出射装置、例えば自動車のテールランプやウインカーにおいて、複数の発光領域を連続して順次点灯させることで、単一発光領域を点灯させた場合より、後続車の運転者の視認性を向上させることが可能となる。マトリクス状に多数配置した発光ダイオードを制御装置から入力した信号に合わせて順次点灯させるテールランプが提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
銀イオンを含むエレクトロデポジション材料を含む電解液を、対向電極を有するセルに収容し、対向電極間に電圧印加すると、負電位側の電極表面に還元反応によって銀が析出、堆積し、鏡面を形成することができる。また、メディエータとして銅(II)イオンの塩を電解液に加えることで電圧無印加時の銀の酸化反応を促進し、析出した銀を溶解させることができる(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6−51453
【特許文献2】特開2012−181389
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新規な光出射装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、光軸上に光線を出射する光源と、前記光軸に対して傾斜して配置された少なくとも1つのミラー素子と、を有し、前記ミラー素子は、対向配置された第1、第2の透明基板と、第1、第2の透明基板の対向面上方に形成された第1、第2の透明電極と、前記第1、第2の透明電極間に配置され、金属イオンを含有するエレクトロデポジション材料を含む電解液と、前記ミラー素子の少なくとも一つにおいて、前記第1の透明基板の対向面上に形成されたマイクロプリズムと、を含み、さらに前記ミラー素子の第1、第2の透明電極間に電圧を印加する制御回路と、を有し、前記第1の透明電極は、前記マイクロプリズムの表面に形成されていることを特徴とする、光出射装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1Aは透過状態におけるミラー素子のセル構造を示した断面図、図1Bは反射状態におけるミラー素子のセル構造を示した断面図である。
図2図2Aはミラー素子の反射率、透過率を測定する測定系の概略図、図2B,2C、2Dはミラー素子の透過率、反射率、透過率スペクトルを示すグラフである。
図3-1】および
図3-2】図3Aは光源と4つのミラー素子を備えた光出射装置の構造を示す断面図、図3B図3F図3Aの光出射装置の動作を示す断面図である。
図4-1】および
図4-2】図4Aは光出射装置のミラー素子の光軸に対する傾斜角をミラー素子ごとに異なる角度に設定した光出射装置を示す断面図、図4B図4F図4Aの光出射装置の動作を示す断面図である。
図5図5Aは第1の透明電極を4分割し、各分割電極表面に銀薄膜を形成できるミラー素子と制御回路の間の配線を示す断面図、図5B図5Cは選択的に反射状態としたミラー素子による光の出射制御を示した断面図である。
図6図6Aは光源と、光軸上に配置した1つのミラー素子によって構成された光出射装置の動作を示す断面図、図6Bは光軸上にミラー素子を複数個配置した光出射装置の動作を示す断面図である。
図7図7Aは反射状態となるミラー素子を選択制御できる照明装置を示した断面図、図7B図7Aの照明装置の歩行者用照明動作を示すダイアグラムである。
図8-1】、
図8-2】、
図8-3】および
図8-4】図8Aは透明基板上に形成したマイクロプリズムを示す斜視図、図8B図8Fは透明基板上にマイクロプリズム、マイクロプリズム上に透明電極を形成する工程を示す断面図、図8Gは(マイクロプリズム付き)ミラー素子のセル構造を示す断面図、図8Hは金属電極付きマイクロプリズム反射板を示す断面図、図8Iはマイクロプリズム電極表面を反射状態としたミラー素子の構造を示す断面図、図8J図8Iのミラー素子に法線方向から光が入射した場合の反射光の方向を示す断面図、図8Kはミラー素子の平坦透明電極表面を反射状態としたミラー素子の構造を示す断面図、図8L図8Kのミラー素子に法線方向から光が入射した場合の反射光の方向を示す断面図、図8Mはミラー素子と、反射板を図7Aの照明装置に採用した照明装置を示す断面図、図8N図8Mの照明装置が出射可能な光の方向を示す断面図である。
【符号の説明】
【0008】
3・・・電解液、7・・・銀薄膜、11・・・第1の透明基板、12・・・第1の透明電極、12a・・・第1分割電極、12b・・・第2分割電極、12c・・・第3分割電極、12d・・・第4分割電極、13・・・マイクロプリズム、13a・・・マイクロプリズム材料樹脂、14・・・シール材料、15・・・直流電源、16・・・ギャップコントロール剤、17・・・SUSマスク、18・・・石英板、19・・・マイクロプリズム金型、21・・・第2の透明基板、22・・・第2の透明電極、32・・・金属電極、40・・・リアウインドウ、41・・・制御回路、42・・・光源、43・・・ミラー素子、43a・・・第1ミラー素子、43b・・・第2ミラー素子、43c・・・第3ミラー素子、43d・・・第4ミラー素子、45・・・鏡もしくは光吸収板、46・・・透明板、47・・・鏡、48・・・金属電極付きマイクロプリズム反射板、60・・・平坦面上のミラーによる反射光の方向、61・・・マイクロプリズム電極上のミラーによる反射光の方向、62・・・平坦面上の金属ミラーによる反射光の方向、S・・・人センサ、S1・・・第1人センサ、S2・・・第2人センサ、S3・・・第3人センサ、S4・・・第4人センサ、S5・・・第5人センサ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1Aは透過状態におけるミラー素子43のセル構造を示した断面図である。なお、図中に示す各構成の相対的なサイズは、実際のものとは異なる。
【0011】
表面に第1、第2の透明電極12、22を有する第1、第2の透明基板11、21を準備する。第1、第2の透明基板11、21にはガラスなどが用いられる。第1、第2の透明電極12、22には酸化インジウムスズ(ITO)などが用いられる。なお、第1、第2の透明基板11、21表面にスパッタ、化学気相成長法(CVD)、もしくは蒸着などの方法で第1、第2の透明電極12、22を形成してもよい。必要に応じて第1、第2の透明電極12、22にパターニングをしてもよい。
【0012】
第1、第2の透明電極12、22が対向するように第1の透明基板11および第2の透明基板21を対向配置する。対向配置された第1、第2の透明基板11、21間のギャップを制御するため、ギャップコントロール剤を用いる。ギャップの大きさは、20ミクロンから数百ミクロン(例えば、100ミクロン)である。例では1−3個/mm2となるようにギャップコントロール剤を散布したが、ギャップの径に合わせて表示に影響が出にくい散布量とするのが望ましい。本例の場合、多少のギャップムラがあっても、表示への影響は少ないため、散布量はそれほど重要ではない。
【0013】
本例ではギャップコントロール剤によるギャップコントロールを行ったが、リブなどの突起によってギャップコントロールを行ってもよい。また、小型のセルの場合、シール部分に所定の厚さを有するフィルム上のスペーサを用いてギャップ制御してもよい。
【0014】
一方の透明基板上に紫外線(UV)及び熱硬化型のシール材14を塗布し、一方の透明基板上に銀イオンを含有するエレクトロデポジション材料を含む電解液3を滴下し、両基板を重ね合わせた。紫外線を照射してシール材14を硬化させた。
【0015】
シール材14は、光硬化タイプ、熱硬化タイプを用いても良い。電解液に耐えるシール材料(腐食されないシール材料)が好ましい。
【0016】
電解液3は、例えばAgNO3などのエレクトロデポジション材料である銀を含む化合物、例えばテトラブチルアンモニウムブロミド(TBABr)などの電解質、例えばCuCl2などのメディエータ、例えばLiBrなどの電解質の浄化剤(支持電解質)、ジメチルスルホキサイド(DMSO)などの溶媒、等により構成される。なお、電解質は銀イオンとなる銀の化合物に限らず、Cu、Mg、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Alなどの金属イオンとなる金属化合物であっても構わない。
【0017】
溶媒であるDMSO の中に、AgNO3を50mMエレクトロクロミック剤として添加し、LiBrを250mM支持電解質として加え、CuCl2を10mMメディエータとして加える。この電解質にPVBを10wt%ホストポリマーとして加えてもよいが、本例ではゲル化しない電解液を用いた。
【0018】
支持電解質は、発色材料の酸化還元反応等を促進するものであれば限定されず、たとえばリチウム塩(LiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4等)、カリウム塩(KCl、KBr、KI等)、ナトリウム塩(NaCl、NaBr、NaI等)を好適に用いることができる。支持電解質の濃度は、たとえば10mM以上1M以下であることが好ましいが、これも特に限定されるものではない。
【0019】
溶媒は、発色材料等を安定的に保持することができるものであれば限定されない。水や炭酸プロピレン等の極性溶媒、極性のない有機溶媒、更には、イオン性液体、イオン導電性高分子、高分子電解質等を使用することが可能である。具体的には、炭酸プロピレン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸等を用いることができる。
【0020】
電解液3を第1の透明基板11、第2の透明基板21いずれかの表面に適量滴下する工程にはワンドロップフィリング(ODF)工程を用いた。滴下方法としてはディスペンサやインクジェットを含む各種印刷方式が適用できる。
【0021】
真空中(もしくは大気中、もしくは窒素雰囲気中)で両透明基板の重ね合せを行った。その後、紫外線をシール部に照射(例えば6J/cm2)してシール材14を硬化した。なお、シール部のみに光が当たるようステンレス鋼(SUS)マスク等を用いた。
【0022】
作製したミラー素子43のセルはほぼ透明であった。わずかに黄色がかっていたが、メディエータであるCuCl2の色が出ているためと考えられる。メディエータの材料変更、もしくはセル厚を薄くすることにより、改善可能であると思われる。本例のセルは薄いセル厚で作製したため、黄色みは薄かった。また、応答性も比較的速かった。
【0023】
図1Bはミラー素子43の第1、第2の透明電極12、22間に直流電源15から直流電圧を印加して負極となった第1の透明電極12表面に銀薄膜7を析出させ、反射状態としたミラー素子を示した断面図である。
【0024】
第1の透明電極12を負電極、第2の透明電極22を正電極とすると、負電極となった第1の透明電極12表面で電解液3中に含まれる銀イオンの還元反応が生じ、銀薄膜7が析出する。形成された銀薄膜7によって、反射状態のミラー素子に入射した光は反射される。
【0025】
なお、第2の透明電極22側から入射した光は第1、第2の透明電極12、22間に収容された電解液3を通過する際に一部減衰する。後述する光出射装置を構成する反射状態のミラー素子の負電極は光源側の透明電極に設定するとよい。
【0026】
なお、印加する直流電圧の大きさは1.5V〜8V程度が好ましいが、電極の大きさや材料により異なる。
【0027】
電圧をオフにするか、逆極性の電圧を印加すると、銀薄膜7は電解液3に溶解し、透明状態に戻る。応答性としては、逆極性の電圧を印加した方が速い。
【0028】
以上の通り製造工程を説明したミラー素子43を以降の各実施例における光出射装置に用いる。
【0029】
ミラー素子の透過率、反射率を測定した。ハロゲン光源から反射プローブに光を入射し、反射光を分光器で観測することによって、透過状態、反射状態のミラー素子の透過率、反射率を分光測定した。ミラー素子の第1、第2の透明電極12、22間に2.5Vの直流電圧を印加して測定を行った。図2Aに示すように光入射側の透明電極上に銀薄膜7が形成されるように直流電源15から直流電圧を印加した。
【0030】
図2B,2Cは透過状態のミラー素子および2.5Vの直流電圧を印加して銀薄膜を析出させた反射状態のミラー素子の、透過率変化および反射率変化を示したグラフである。横軸が波長を単位(nm)で示し、縦軸が透過率T,反射率Rを単位(%)で示す。実線が銀薄膜溶解(透過)状態、破線が銀薄膜析出(反射)状態を示す。反射状態の反射スペクトルは、近紫外領域以外でほぼ鏡面反射を示している。電解液3中の銀イオンが負電極である透明電極付近で還元されて金属銀に変化して析出、堆積したためである。電圧印加を止める(0Vもしくは開放状態)ことで反射状態のミラー素子は透過状態のミラー素子に戻る。逆バイアス電圧(例えば−1V)を印加してもよい。逆バイアス電圧を印加することによって、電圧印加を止めた場合よりも早く反射状態のミラー素子を透明状態のミラー素子に戻すことができる。
【0031】
図2Bの透過率スペクトルは、少し波長依存性がある。ミラー素子43のセルは黄色味がかっていた。これはメディエータであるCuCl2の色と思われる。本例ではセル厚100ミクロンのセルを使っており、セル厚を薄くすることで改善は可能と思われる。
【0032】
図2Dは溶媒にDMF材を用いた透過状態のミラー素子(ここでのセル厚は50ミクロン)の透過率スペクトルを示したグラフである。波長依存性を示したDMSOを溶媒に用いた透過状態のミラー素子の透過率スペクトルを示した図2Bのグラフと比較して、短波長の光でも高い透過率を示している。DMF材料を溶媒に用いることで光の波長による透過率ムラを減らすことが可能となると考えられる。
【0033】

(実施例1)
以下、複数の領域を連続して点灯させるシーケンシャルターンシグナルとして用いる光出射装置について説明する。
【0034】
図3Aは、光軸上に光を出射する光源42と、光軸上に光軸方向に対して傾斜して配置した4セル(第1、第2、第3、第4セル)のミラー素子43a、43b、43c、43dとを有する光出射装置を示す。制御装置41は、各ミラー素子の第1、第2の透明電極12、22間に電圧を印加することができる。
【0035】
ターンシグナルの光源42は少なくともアンバーの発光が可能な光源である。赤、白などその他の色の光源でも良い。光源42の光はリフレクターやレンズなどを使ってある程度コリメートされていても良い。第1、第2、第3、第4ミラー素子43a、43b、43c、43dは光源42から出射する光の光軸に対し、一定角度(例えば45度)傾斜するように配置されている。各ミラー素子の第1、第2の透明電極12、22はそれぞれ制御回路41と電気的に接続されており、各ミラー素子の第1、第2の透明電極間に直流電圧を印加し、光源42側の透明電極を負電極とすることによって光源42側の透明電極表面に銀薄膜7が形成される。この銀薄膜7によって光源42から出射された光は反射して、外部に出射する。
【0036】
配置された各ミラー素子の光軸延長線上に各ミラー素子と同角度に傾斜した鏡(固定鏡)47が配置されていても良い。これは万が一、全てのミラー素子(可変鏡)が故障したとしてもこの鏡47によって光源42から出射した光が反射され、光出射装置の外に出射されるためウインカーとしての機能を果たすことができるためであり、フェイルセーフ上望ましい。
【0037】
反射光が通過する光出射装置の光出射側には透明板46を配置した。この透明板46には光散乱機能やレンズカットにより配光をある程度制御する機能を付与しても良い。光出射装置の裏側に、鏡もしくは光吸収板45を配置しても良い。 図3B〜3Fは光出射装置の動作を示す断面図である。なお、図3Aで記載した各ミラー素子の第1、第2透明電極12、22と制御回路41を結ぶ2本の配線は以降の図面では簡略化して1本で示す。
【0038】
光源42から出射した光は、透過状態のミラー素子は通過し、最初の反射状態のミラー素子で反射され、光出射装置の外に出射する。すべてのミラー素子が透過状態である場合は図3Fに示すように光源42から出射した光は、透過状態であるすべてのミラー素子43を通過し、その後方に配置された鏡47で反射されて、光出射装置の外部に出射する。
【0039】
図3Bは、第1ミラー素子の第1、第2の透明電極12、22間に直流電圧を印加し、第1ミラー素子43aを反射状態とした場合の光出射装置の動作を示す断面図である。光源42から出射した光は反射状態とした第1ミラー素子43aで反射され、光出射装置の外部に出射する。第2〜第4ミラー素子が透過状態のミラー素子である旨表示されているが、反射状態としても動作に相異は生じない。反射状態のミラー素子の後方には光が到達しないので、配光には影響しない。
【0040】
図3Cは、第2ミラー素子の第1、第2の透明電極12、22間に直流電圧を印加し、第2ミラー素子43bを反射状態とした場合の光出射装置の動作を示す断面図である。第1ミラー素子は透過状態である。光源42から出射した光は第1ミラー素子43aを透過して、反射状態とした第2ミラー素子43bで反射され、光出射装置の外部に出射する。
【0041】
図3Dは、第3ミラー素子の第1、第2の透明電極間12、22間に直流電圧を印加し、第3ミラー素子43cを反射状態とした場合の光出射装置の動作を示す断面図である。第1、第2ミラー素子は透過状態である。光源42から出射した光は第1、第2ミラー素子43a、43bを透過して、反射状態とした第3ミラー素子43cで反射され、光出射装置の外部に出射する。
【0042】
図3Eは、第4ミラー素子の第1、第2の透明電極12、22間に直流電圧を印加し、第4ミラー素子43dを反射状態とした場合の光出射装置の動作を示す断面図である。第1、第2、第3ミラー素子は透過状態である。光源42から出射した光は第1、第2、第3ミラー素子43a、43b、43cを透過して、反射状態とした第4ミラー素子43dで反射して光出射装置の外部に出射する。
【0043】
図3Fは、第1、第2、第3、第4ミラー素子43a、43b、43c、43dが透過状態である場合の光出射装置の動作を示す断面図である。光源42から出射した光は第1、第2、第3、第4ミラー素子43a、43b、43c、43dを透過して、各ミラー素子の後方の光軸上に配置された鏡47で反射され、光出射装置の外部に出射する。
【0044】
この光出射装置は、発光部分の位置をシーケンシャル(連続的)に移動させるシーケンシャルターンシグナルを構成することが可能であり、複数の光源、もしくは光源を機械的に移動させる機械的構造が必要だった従来のシーケンシャルターンシグナルと比較して、一つの光源と光軸上に配置された複数の電気的に制御可能なミラー素子でシーケンシャルターンシグナルを実現することができる。
(変形例1)
図4Aは、図3Aで示した光出射装置を構成する各々の透過状態の第1、第2、第3、第4ミラー素子43a、43b、43c、43dの光軸に対する傾斜角をすべて同一とせず、異なる角度とした変形例を示す断面図である。広い範囲に出射光を配光するには、光軸に対するミラー素子の傾斜角度を徐々に増加ないし減少させることが好ましいであろう。但し、複数のミラー素子の傾斜角度を1つずつ変化させる場合に限らず、同じ傾斜角度のミラー素子が2つ以上連続させることも可能であろう。
【0045】
例えば第1ミラー素子43aはその法線と光軸のなす角が30°、第2ミラー素子43bはその法線と光軸のなす角度が37.5°、第3ミラー素子43cはその法線と光軸のなす角度が45°、第4ミラー素子43dはその法線と光軸のなす角度が52.5°、末端の鏡47はその法線と光軸のなす角度が60°、等としても良い。角度を順次減少させてもよい。角度は用途によって変更することが可能である。各ミラー素子の第1、第2の透明電極間に選択的に直流電圧を印加して各ミラー素子を反射状態とすることによって、図4Bから図4Fで示す光出射装置の状態を実現できる。傾斜角度を変化させたことにより、広い範囲への配光が実現する。配光範囲を同じとした場合、配置するミラー素子の数を減らすことも可能であろう。
【0046】
本変形例は、前照灯の補助光源に用いた場合のコーナリングランプなどへの応用か考えられる。ハンドルの切り角に応じて図4Bから図4Fまでに示すように照射する部分を変化させることで安全なコーナリングランプが実現できると考える。
(変形例2)
図5Aは、下側に示す透明電極12を第1、第2、第3、第4分割電極12a、12b、12c、12dに4分割し、上側に示す透明電極22は共通(コモン)電極として、ミラー素子43の各透明電極と制御回路41を5本の配線で接続した構成を示す断面図である。分割電極12a、12b、12c、12dとコモン透明電極22間に制御回路41から、分割電極を負電極とする直流電圧を印加することにより、分割電極表面に銀薄膜7を形成し、反射状態とすることができる。
【0047】
図5Aの分割電極の4ドットパターンは、例えば電極幅30mm、電極間距離50ミクロンのパターンで試作した。個数、幅、間隔は、これらに限らない。例えば、ウインカーとして後続車などの運転手が認識可能な程度の大きさであればよい。
【0048】
図5B、5Cは図5Aで示した分割電極を有するミラー素子を4つ光軸上に配列し、その後方の光軸上に鏡(固定鏡)47を配置した構成の動作を説明する断面図である。図5Bは、第1ミラー素子43aの第2、第3、第4分割電極12b、12c、12dとコモン透明電極22間、および第2ミラー素子43bの第1分割電極12aとコモン透明電極22間にそれぞれ、各分割電極を負電極とする直流電圧を印加し、電圧印加した分割電極上に銀薄膜を析出した場合の配光を示す。第1ミラー素子43aの第2分割電極上から、第2ミラー素子43bの第1分割電極までの領域が反射領域を構成し、出射光を図中下方に向かわせる。
【0049】
図5Cは、第1ミラー素子43aの第3、第4分割電極12c、12dとコモン透明電極22間、及び第2ミラー素子43bの第1、第2分割電極12a、12bとコモン透明電極22間に、それぞれ分割電極を負極とする直流電圧を印加し、電圧印加した分割電極上に銀薄膜を析出した場合の配光を示す。第1ミラー素子43aの第3分割電極上から、第2ミラー素子43bの第2分割電極までの領域が反射領域を構成し、出射光を図中下方に向かわせる。図5Bの状態の後、図5Cの状態が表示されると、図中下方に位置する観察者には、光出射領域が右方向に移動するように見えるであろう。
【0050】
なお、図5Bおよび図5Cでは、図5Aで示したミラー素子43と制御回路41間の配線は簡略化して表示している。各ミラー素子43a、43b、43c、43dは、光出射側から見て、各ミラー素子が隣接して見えるように配置されるのが好ましいであろう。
【0051】
このようにミラー素子の一方の透明電極を複数のドット電極に分割し、ドット電極を負極として各ドット電極に選択的に直流電圧を印加して銀薄膜を析出できるようにすることにより、分割電極を単位としたミラー形成に代え、分割電極をさらに分割したドット電極単位でミラー領域を設定可能となり、より細かい光の出射制御を実現できる。なお、ドット電極に合わせて、コモン電極も分割してもよい。配線数は増加するが、リーク電流の低減に有効である可能性がある。
【0052】
ハザードランプに用いる場合は、左右反対側のターンシグナルと同期させてそれぞれの配光が内側に流れるように点灯させても良い。もしくは第1ミラー素子43aの第1分割電極12a、第2ミラー素子43bの第2分割電極12b、第3ミラー素子43cの第3分割電極12c、第4ミラー素子43dの第4分割電極12dと各ミラー素子の第2の透明電極22間に電圧を印加し、各分割電極をそれぞれ負電極として、各ミラー素子を部分的に反射状態とし、光源42を点滅させるハザード表示をしても良い。
【0053】
ここではターンシグナルの場合について示したが、ストップランプやバックランプの配光に用いても良い。ストップランプの配光はドライバーのブレーキの踏み具合で変化させても良い。そのような配光をすべきかについては法規によるが、後続車のドライバーに注意を喚起する配光制御が望ましい。
【0054】
ここで用いたミラー素子43のミラー形成応答性は通常の駆動でも0.5秒、パルス波形を印加するとさらに高速にスイッチングした。従って自動車のターンシグナルや前照灯の配光制御には十分適用可能であろう。
【0055】
なお、ミラー素子の透明電極の分割パターン数を4とした場合について述べたが、分割パターンの数はこれに限られない。また、対向透明電極を分割しても良い。
(実施例2)
図6Aは、自動車のリアウインドウ40に設置された、光軸上に光ビームを供給する光源42と、光軸に対して斜めに配置されたミラー素子43と、電圧を印加する制御回路41で構成された光出射装置の動作を示す断面図である。なお、ミラー素子の第1、第2の透明電極12、22と制御回路41を結ぶ2本の配線は以降の図面では簡略化して1本で示す。光源42には例えば赤色光源が用いられる。光出射装置の光出射側および反対側に透明板46を取り付けてもよい。透明板46は無くてもよい。光源42の周囲には鏡もしくは光吸収板45を取り付けてもよい。また、光源42の光はなるべく平行光に近い形で出射されるよう光源42付近の反射板や光源光軸上に配置するレンズを工夫することが望ましい。
【0056】
制御回路41は、光源42同様リアウインドウ40の透明部分では無い所に配置されている。ミラー素子43は電圧無印加時では透過状態である。従ってドライバーはこれらのデバイスが配置されていても良好な後方視界を得ることができる。
【0057】
ドライバーがブレーキを踏むとそれに同期して光源42が点灯する。すると光源42から出射した光は透過状態であるミラー素子43に照射される。この時ブレーキに同期して、制御回路41よりミラー素子43の第1、第2の透明電極12、22間に、光源側の透明電極を負電極とする電圧を印加することによって、ミラー素子43は反射状態となる。図6Aに示すように反射状態となったミラー素子43によって光源42から出射された光が反射され、進行方向が変わり、リアウインドウ40側に出射される。それにより後続車にブレーキランプが認識される。
【0058】
ミラー素子の応答速度は0.1−0.5秒程度であり、発光ダイオードの点灯速度よりも遅い。従ってブレーキを踏んだ瞬間、光源42から出射した光は透過状態のミラー素子43を透過することになるが、光源42の光の照射位置(角度)を例えば車内の天井など、ドライバーにとって運転の妨げにならない部分に当たるようにすれば安全上問題無い。またリアウインドウ40側の透明板46に弱い光散乱機能をつけても良い。
【0059】
ミラー素子を1個用いた場合について述べたが、図6Bで示すようにミラー素子を光軸上に複数個並べてもよい。
【0060】
図6Bの構成では、4個のミラー素子43a〜43dが光軸上に配置されている。第1、第2ミラー素子が透過状態で、第3ミラー素子43cが反射状態であり、光源42から出射された光を反射して、リアウインドウ40から外部後方へブレーキランプの光が出射している状態の断面図である。光源42から出射する光を(最初に)反射するミラー素子を変化(走査)させることにより、光の出射位置を変化できる。
【0061】
さらに、第1、第2、第3、第4ミラー素子43a、43b、43c、43dは印加電圧により、光の透過率と反射率がそれぞれ所定の範囲内になるハーフミラー化することができる。従って図6Bの各ミラー素子をハーフミラー化する(一部透過/一部反射状態にする)ことにより、各ミラー素子のそれぞれの位置から出射する光量を作り出すことが可能である。また後続車の車高や距離などに応じて複数のミラー素子43a、43b、43c、43dから一部を反射状態とすることにより、ブレーキランプの点灯する高さが変化し、より後続車に認識させやすくすることも可能である。具体的には後方を監視するセンサなど(リアモニタと連動など)により後続車の高さをセンシングし、その情報を制御回路41に送ることでミラー化するミラーデバイスを選択することができる。
【0062】
さらにドライバーがブレーキを踏む強さなどに応じて、各ミラー素子の対向透明電極間に所定パターンの直流電圧を印加して、反射状態とすることにより、ブレーキランプの出射光強度や点灯位置を時間的に変化させたりして、後続車のドライバーにより認識させ易くすることも可能である。
【0063】
図6Bでは各ミラー素子の、光軸に対する傾斜角が異なるように示されているが、各ミラー素子の傾斜角は同じとしてもよい。車のリアウインドウ40を例にとって説明したが、建築物などの窓に同様の素子を配置しても良い。その場合光源42の色は昼白色や電球色などでもよい。
(実施例3)
光出射装置を長い廊下の照明などの一般照明に適用した場合を説明する。図7Aはシンプルな構造で高機能かつ低消費電力の照明装置の構成を示す断面図である。図7B図7Aの照明装置の歩行者照明用動作を示す断面図である。
【0064】
図7Aの照明装置の構成は、基本的には図3Aの光出射装置と同様である。なお、例として作成したミラー素子43のセルの厚さは500ミクロンとした。基板上の電極は細かくパターニングしていないベタ電極を用いた。
【0065】
光源42には例えば白色光源が用いられる。各ミラー素子および鏡の近傍には人センサSが設置されており、人などの有無を検知することができる。例えば第2ミラー素子43bの下を人が歩いている場合、対応する第2人センサS2が姿を検知し、光源42を点灯させるとともに第2ミラー素子43bの対向透明電極12、22間に電圧を印加して反射状態とする。照明装置は、図7Bのように、第2ミラー素子43bで光を反射し、人の位置近傍のみを照らすことができる。
【0066】
人が移動すれば、それに応じて反射状態となるミラー素子が代わる。このようにして非常にシンプルな構造で高機能かつ低消費電力の照明装置を実現できる。
(変形例)
ミラー素子43の一方の透明電極が透明基板上に形成されたマイクロプリズム13上に形成された、マイクロプリズム付きミラー素子43のセル構造を用いることもできる。
【0067】
図8Aは第1の透明基板11上に形成するマイクロプリズム13を示す斜視図である。以下、透明基板11上に、マイクロプリズム13とマイクロプリズム13表面に透明電極12を形成する製造工程について説明する。
【0068】
図8B図8Fに示すように第1の透明基板11上にマイクロプリズム13を形成する。 マイクロプリズム13の形状は、例えば、断面形状のピッチが20ミクロン、高さは5ミクロン、頂角75度程度、底角が15度と90度ずつであり、上面から見るとスリット形状を有する。
【0069】
図8Bに示すように、第1の透明基板11を用意する。図8Cに示すように、第1の透明基板11上に所定量のアクリル系UV硬化性樹脂13aを滴下する。図8Dに示すように、樹脂13a上にマイクロプリズム13の形状を有する金型19を所定の位置に置き、厚手の石英18などを第1の透明基板11の裏側に配置して補強した状態でプレスを行う。図8Eに示すように、プレス後1分以上放置し、UV硬化性樹脂13aを十分広げた後、第1の透明基板11側から紫外線を照射し、UV硬化性樹脂13aを硬化させる。例えば、照射量は20J/cm2照射したが、樹脂13aが硬化すればよいので照射量はあまり重要ではない。
【0070】
マイクロプリズム13を形成した第1の透明基板11を洗浄機により洗浄する。洗浄方法はアルカリ洗剤を用いたブラシ洗浄、純水洗浄、エアーブロー、紫外線(UV)照射、赤外線(IR)乾燥の順に行ったが、洗浄方法はこれに限らない。高圧スプレー洗浄やプラズマ洗浄などを行っても良い。
【0071】
図8Fに示すように、マイクロプリズム13表面にITO膜を用いた第1の透明電極12をマグネトロンスパッタリングで成膜する。所定の形状に穴が開いているSUSマスクを用いてITO膜をパターン形成してもよい。ITO膜を形成後、フォトリソグラフィ工程でパターニングしてもよい。
【0072】
ITO等の第2の透明電極22が形成された、第2の透明基板21を用意する。第2の透明電極22はスパッタリング、CVDもしくは蒸着などにより形成された透明電極であり、平坦な基板表面に形成された平滑性のある電極膜である。
【0073】
マイクロプリズム上に透明電極を形成した基板と、平坦面上に透明電極を形成した基板とを対向配置したミラー素子を形成する。例としてセル厚500ミクロンのセルを作製した。平坦透明電極は細かくパターニングしていないベタ電極を用いた。以上の工程により図8Gに示すマイクロプリズム付きミラー素子43を作製した。
【0074】
図8Hで示すように第2の透明電極22の代わりにアルミまたは銀などの金属電極32を用いて同様の製造工程でセル構造を作製し、ミラー素子43が配置された光軸上に設置する金属電極付きマイクロプリズム反射板(図3,4,5参照)としてもよい。
【0075】
図8Iは、マイクロプリズム付きミラー素子43の第1、第2の透明電極12、22間に、第1の透明電極12を負電極として、直流電源15から直流電圧を印加し、マイクロプリズム電極側に銀薄膜7が析出した状態のミラー素子43を示す断面図である。
【0076】
図8Jは8Iで示したミラー素子のマイクロプリズム電極上の銀薄膜7に、基板法線方向の上方から光が入射した場合の反射方向を示す断面図である。上方から下方に進行した入射光は、反射して右斜め上方に向う反射光となる。
【0077】
このようにマイクロプリズムを利用することでミラー素子43の設置位置に対し、反射光の向きの自由度を向上させることが可能となる。
【0078】
また、さらに対向する第2の透明電極22を反射面として使い分けることも可能である。
【0079】
図8Kは、マイクロプリズム付きミラー素子43の第1、第2の透明電極12、22間に、直流電源15から第2の透明電極22を負電極とする直流電圧を印加し、平坦面である透明電極22上に銀薄膜7が析出した状態のミラー素子43を示す断面図である。
【0080】
図8Lは、8Kで示したミラー素子の平坦面上に形成される銀薄膜7に、ミラー素子の基板法線方向から光が入射し、平坦面上の銀薄膜7で反射する状態を示す断面図であり、入射光は法線方向(逆方向)に反射される。
【0081】
マイクロプリズム付きミラー素子43は印加する直流電圧の極性を変更することによって、反射光の反射方向を二方向のいずれかに設定できる。
【0082】
図8Mは、マイクロプリズム付きミラー素子43a,43b,43c,43dおよび金属電極付きマイクロプリズム反射板48を、光軸上に配列した一般照明装置を示す断面図である。各ミラー素子およびマイクロプリズム反射板48が反射可能な方向を図8Nに示す。マイクロプリズム付きミラー素子43a、43b、43c、43dは両透明電極間に印加する電圧の極性を切り替えることで、マイクロプリズム電極上のミラーによる反射光の方向61および平坦面上のミラーによる反射光の方向60を選択できる。同様に、マイクロプリズム反射板48は、マイクロプリズム電極上のミラーによる反射光の方向61および平坦面上の金属ミラーによる反射光の方向62のいずれかが設定される。各ミラー素子および反射板は二方向に光を出射することができる。よって、より多くの方向に光を照射できるようになる。
【0083】
なお、第2の透明電極22は平坦な電極として設けたが、これに限らず第1の透明電極12とは異なるマイクロプリズムを設けてもよい。銀薄膜を析出させた時に第1の透明電極12とは異なる方向に反射するよう第2の透明基板の対向面を異なる形状に形成されていれば、電圧の切り替えにより反射光の向きを変えることができる。
【0084】
なお、照明装置の構成はこれらに限られるものではない。例えば照明装置にレンズやプリズム、拡大・縮小反射板等を設置してもよい。
【0085】
その他諸々の変更、置き換え、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者にとって自明であろう。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】