(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の技術を実施するための形態(以下、「実施形態」と記述する)について図面を用いて詳細に説明する。本開示の技術は実施形態に限定されるものではなく、実施形態における種々の数値、材料などは例示である。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。尚、説明は以下の順序で行う。
1.本開示の表示装置、表示装置の製造方法、及び、電子機器、全般に関する説明
2.実施形態に係るアクティブマトリクス型表示装置
3.電子機器(テレビジョンセットの例)
【0013】
<本開示の表示装置、表示装置の製造方法、及び、電子機器、全般に関する説明>
本開示の表示装置、表示装置の製造方法、及び、電子機器にあっては、薄膜トランジスタの第1電極層がゲート電極の層である構成とすることができる。また、第1電極層について積層構造を有する構成とすることができる。
【0014】
上述した好ましい構成を含む本開示の表示装置、表示装置の製造方法、及び、電子機器にあっては、薄膜トランジスタの第1電極層及び第2電極層について、それぞれ同じ金属を含む構成とすることができる。このとき、第1電極層について、チタンとアルミニウム、又は、アルミニウム合金の層を含む積層膜から成り、第2電極層について、アルミニウム合金、又は、アルミニウム合金を含む積層膜から成る構成とすることができる。
【0015】
上述した好ましい構成を含む本開示の表示装置、表示装置の製造方法、及び、電子機器にあっては、画素について、複数の発光素子を有し、結合部について、複数の発光素子の各々と駆動回路とを互いに接続する構成とすることができる。
【0016】
また、上述した好ましい構成を含む本開示の表示装置、表示装置の製造方法、及び、電子機器にあっては、発光素子の反射電極の層と、薄膜トランジスタの第2電極層とが共通化されている構成とすることができる。また、結合部のシルエットの少なくとも一部が外部から視認されるのを防止する遮光層を備える構成とすることができる。
【0017】
<実施形態に係るアクティブマトリクス型表示装置>
[システム構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る表示装置、例えば、アクティブマトリクス型表示装置の基本的な構成の概略を示すシステム構成図である。
【0018】
アクティブマトリクス型表示装置(以下、「表示装置」と記述する場合もある)は、発光素子(発光部)の発光輝度を、当該発光素子と同じ画素回路内に設けた能動素子、例えば、絶縁ゲート型電界効果トランジスタによって制御する表示装置である。絶縁ゲート型電界効果トランジスタとしては、典型的には、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)を用いることができる。以下では、「画素回路」を単に「画素」と記述する場合もある。
【0019】
本実施形態に係る表示装置1は、表示パネル10と、外部から入力された映像信号及び同期信号に基づいて表示パネル10を駆動する周辺駆動部20とを備えている。周辺駆動部20は、例えば、タイミング生成回路21、映像信号処理回路22、信号線駆動回路23、走査線駆動回路24、及び、電源線駆動回路25を有している。
【0020】
(表示パネル)
表示パネル10は、複数の画素11が表示領域の全面に亘って行列状に2次元配置されて成る画素アレイ部10Aを有する。画素11は、表示パネル10上の画面を構成する最小単位の点に対応するものである。表示パネル10は、周辺駆動部20によって各画素11がアクティブマトリクス駆動されることにより、外部から入力された映像信号に基づく画像を表示する。
【0021】
ここで、表示パネル10がカラー表示対応の場合は、カラー画像を形成する単位となる1つの画素(単位画素/ピクセル)は複数の副画素(サブピクセル)から構成される。このとき、副画素の各々が
図1の画素11に相当することになる。より具体的には、カラー表示対応の表示装置では、1つの画素は、例えば、赤色(Red:R)光を発光する発光部を含む副画素、緑色(Green:G)光を発光する発光部を含む副画素、青色(Blue:B)光を発光する発光部を含む副画素の3つの副画素から構成される。
【0022】
但し、1つの画素としては、RGBの3原色の副画素の組み合わせに限られるものではなく、3原色の副画素に更に1色あるいは複数色の副画素を加えて1つの画素を構成することも可能である。より具体的には、例えば、輝度向上のために白色(White;W)光を発光する発光部を含む副画素を加えて1つの画素を構成したり、色再現範囲を拡大するために補色光を発光する発光部を含む少なくとも1つの副画素を加えて1つの画素を構成したりすることも可能である
【0023】
表示パネル10は、行方向に延在する複数の走査線WSLと、列方向に延在する複数の信号線DTLと、行方向に延在する複数の電源線DSLとを有している。複数の走査線WSLは、画素行毎に配線されている。複数の走査線WSLは各一端が、走査線駆動回路24の各行に対応する出力端に接続されており、各画素11の選択に用いられる。複数の信号線DTLは、画素列毎に配線されている。複数の信号線DTLは各一端が、信号線駆動回路23の各列に対応する出力端に接続されており、映像信号に応じた信号電圧の、信号線駆動回路23から各画素11への供給に用いられる。複数の電源線DSLは、画素行毎に配線されている。複数の電源線DSLは各一端が、電源線駆動回路25の各行に対応する出力端に接続されており、各画素11への駆動電流の供給に用いられる。複数の信号線DTLと複数の走査線WSLとの交差点近傍には、画素11が設けられている。
【0024】
表示パネル10は更に、有機EL素子13のカソード電極が接続されるグラウンド線GNDを有している(
図2参照)。グラウンド線GNDは、グラウンド電位となっている外部回路(図示せず)と電気的に接続されている。グラウンド線GNDは、例えば、画素アレイ部10Aの全体に亘って形成されたシート状の電極である。尚、グラウンド線GNDは、画素行又は画素列に対応して短冊状に形成された帯状の電極であってもよい。表示パネル10は更に、例えば、画素アレイ部10Aの周縁に、映像を表示しないフレーム領域を有している。フレーム領域は、例えば、遮光部材によって覆われている。
【0025】
(画素回路)
図2は、画素(画素回路)11の具体的な回路構成の一例を示す回路図である。ここでは、画素11の発光素子として、例えば、有機EL素子を用いるアクティブマトリクス型有機EL表示装置の場合を例に挙げて説明するものとする。有機EL素子は、自発光素子であり、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子である。
【0026】
画素11は、互いに並列接続された複数の有機EL素子13と、各有機EL素子13を駆動する1つの駆動回路12と、個々の有機EL素子13と駆動回路12とを互いに直接に接続する複数の配線14とを有している。具体的には、画素11は、互いに並列接続された2つの有機EL素子13と、各有機EL素子13を駆動する1つの駆動回路12と、個々の有機EL素子13と駆動回路12とを互いに直接に接続する2つの配線14とを有している。ここで、複数(例えば、2つ)の配線14は、有機EL素子13と駆動回路12とを互いに接続する結合部の一例である。
【0027】
有機EL素子13は、例えば、アノード電極13Aとカソード電極13Bとの間に、後述する有機層13C(
図4参照)が挟まれた構成を有している。カソード電極13Bは、有機層13Cで発生した光に対して透明な材料であって、且つ、導電性を有する材料によって構成された透明電極である。そのような材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウムスズ)、SnO(酸化スズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)などを例示することができる。
【0028】
有機層13Cは、例えば、図示しないが、カソード電極13B側から順に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、及び、電子輸送層を積層して成る積層構造を有している。尚、有機層13Cは、必要に応じて、上で例示した層以外の層を含んでいてもよいし、正孔輸送層及び電子輸送層のいずれか、あるいは、両方を含んでいなくてもよい。ここで、正孔注入層は、正孔注入効率を高めるためのものである。正孔輸送層は、発光層への正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層は、カソード電極13Bとアノード電極13Aとの間に発生する電界によって電子と正孔との再結合を起こさせ、光を発生させるためものである。電子輸送層は、発光層への電子輸送効率を高めるためのものである。
【0029】
図3は、有機EL素子13のアノード電極13A及び配線14のレイアウトの一例を示すレイアウト図である。
図4Aに、
図3のA−A線に沿った矢視断面図を示し、
図4Bに、
図3のB−B線に沿った矢視断面図を示す。配線14は、有機EL素子13と駆動回路12とを互いに接続する結合部を構成している。
【0030】
アノード電極13Aは、有機層13Cで発生した光を高反射率で反射する反射電極である。配線14は、アノード電極13A及びソース/ドレイン電極170と同一面内に形成されている部分14A(以下、「配線14A」と記述する)と、ゲート電極140と同一面内に形成されている部分14B(以下、「配線14B」と記述する)とで構成されている。
【0031】
配線14Aは、アノード電極13A及びソース/ドレイン電極170と同一の層構造となっており、また、アノード電極13A及びソース/ドレイン電極170と共に一括して形成されたものであり、アノード電極13Aと一体に形成されている。配線14Bは、後述する第1のゲート電極140Aと同一の層構造となっている。また、配線14Bは保護層150及び層間絶縁層160の開口部Yの内側の領域に形成されている。一方、配線14Aと配線14Bは、保護層150及び層間絶縁層160の開口を介して電気的に接続されており、効率よく画素回路を形成するためには開口部Yで接続されていることが望ましい。配線14は、アノード電極13Aと、駆動回路12(具体的には、後述するソース電極170A)とを接続する帯状の形状となっている。
【0032】
駆動回路12は、例えば、駆動トランジスタTr
1、書込トランジスタTr
2、及び、保持容量C
sによって構成されており、2つのトランジスタ(Tr)及び1つの容量素子(C)から成る2Tr1Cの回路構成となっている。書込トランジスタTr
2は、後述する信号線DTLの電圧をサンプリングし、画素11内に書き込む。保持容量C
sは、書込トランジスタTr
2によって書き込まれた電圧を保持する。駆動トランジスタTr
1は、保持容量C
sに保持された電圧の大きさに応じて有機EL素子13に流れる電流を制御する。尚、駆動回路12は、上述の2Tr1Cの回路構成とは異なる回路構成となっていてもよい。
【0033】
駆動トランジスタTr
1及び書込トランジスタTr
2は、例えば、NチャネルMOS型のTFT(薄膜トランジスタ)により形成されている。尚、TFTの種類は特に限定されるものではなく、例えば、逆スタガー構造(所謂、ボトムゲート型)であってもよいし、スタガー構造(所謂、トップゲート型)であってもよい。また、駆動トランジスタ
1及び書込トランジスタTr
2は、PチャネルMOS型のTFTにより形成されていてもよいし、NチャネルMOS型のTFTとPチャネルMOS型のTFTとの組み合わせにより形成されていてもよい。
【0034】
書込トランジスタTr
2のゲート電極は、走査線WSLに接続されている。書込トランジスタTr
2の一方のソース/ドレイン電極は信号線DTLに接続され、書込トランジスタTr
2の他方のソース/ドレイン電極は駆動トランジスタTr
1のゲート電極に接続されている。駆動トランジスタTr
1の一方のソース/ドレイン電極は電源線DSLに接続され、駆動トランジスタTr
1の他方のソース/ドレイン電極は有機EL素子13のアノード電極に接続されている。保持容量C
sの一端は駆動トランジスタTr
1のゲート電極に接続され、保持容量C
sの他端は駆動トランジスタTr
1の他方のソース/ドレイン電極に接続されている。尚、有機EL素子13は、素子容量(等価容量)C
oledを有している。
【0035】
(結合部の配線及びその近傍の断面構成)
次に、
図4A及び
図4Bを参照しつつ、表示パネル10における結合部を構成する配線14及びその近傍の断面構成について説明する。配線14は、有機EL素子13と駆動回路12とを互いに接続する結合部を構成している。
【0036】
表示パネル10は、例えば、配線14及びその近傍において、透明基板110上に当該基板110側から順に積層された、半導体層120、ゲート絶縁膜130、ゲート電極140、保護層150、及び、層間絶縁層160を有している。保護層150及び層間絶縁層160は、複数の開口を有している。表示パネル10は、例えば、保護層150及び層間絶縁層160の開口を充填するようにして設けられたソース電極170A及びドレイン電極170Bを有している。
【0037】
表示パネル10は更に、例えば、ソース電極170A及びドレイン電極170Bと同一平面上に導電層170Cと、導電層170Cの上面の一部が露出する開口が設けられた埋込層180とを有している。導電層170Cは、ソース電極170A及びドレイン電極170Bと同じ材料で構成されている。導電層170Cのうち、埋込層180の開口内に露出している部分が、有機EL素子13のアノード電極13Aに対応している。導電層170Cのうち、ソース電極170Aの上面に接する部分(
図2の接続部X)が、各配線14が互いに接続されるとともに、駆動回路12に接続されている箇所に対応している。表示パネル10は更に、例えば、埋込層180の開口内に露出している導電層170Cの上面に接する有機層13Cと、埋込層180及び有機層13Cの上面全体に接するカソード電極13Bと、カソード電極13Bを保護する保護膜190とを有している。
【0038】
ここで、表示パネル10は、各配線14Bと透明基板110との間に、配線14Bの下面に対してレーザ光を照射する際にレーザ光を遮るような部材を何も備えていない。一方で、表示パネル10は、例えば、
図5A、
図5Bに示すように、各配線14と保護膜190との間に、結合部を構成する各配線14のシルエットの少なくとも一部が外部から視認されるのを防止する遮光層210を備えている。遮光層210は、遮光性の部材(例えば、ブラックマトリクス)で構成されており、少なくともアノード電極13Aの直上に対応する箇所に開口を有している。尚、
図5Aには、2つのアノード電極13Aに対して1つの開口210Aが遮光層210に設けられている場合が例示されている。
図5Bには、2つのアノード電極13A毎に1つずつ開口210A
_1,210A
_2が遮光層210に設けられている場合が例示されている。
【0039】
(周辺駆動部)
次に、表示パネル10を駆動する周辺駆動部20について説明する。
先述したように、周辺駆動部20は、例えば、タイミング生成回路21、映像信号処理回路22、信号線駆動回路23、走査線駆動回路24、及び、電源線駆動回路25を有する構成となっている。
【0040】
タイミング生成回路21は、周辺駆動部20内の各回路が連動して動作するように制御するためのタイミング制御信号を生成する。具体的には、タイミング生成回路21は、例えば、外部から入力された同期信号に応じて(同期して)、上述した各回路21〜25に対してタイミング制御信号を出力する。
【0041】
映像信号処理回路22は、例えば、外部から入力されたデジタルの映像信号に対して所定の補正処理を行い、当該補正処理後の映像信号を信号線駆動回路23に出力する。ここで、所定の補正処理としては、例えば、ガンマ補正や、オーバードライブ補正などを例示することができる。
【0042】
信号線駆動回路23は、例えば、タイミング生成回路21からのタイミング制御信号の入力に応じて(同期して)、映像信号処理回路22から入力された映像信号に対応するアナログの信号電圧を、各信号線DTLに印加する。信号線駆動回路23は、例えば、2種類の電圧V
ofs、V
sigを出力可能となっている。具体的には、信号線駆動回路23は、走査線駆動回路24により選択された画素11へ、信号線DTLを介して2種類の電圧V
ofs、V
sigを選択的に供給するようになっている。ここで、V
sigは、映像信号に対応する電圧値となっている。V
ofsは、映像信号の基準となる一定電圧である。V
sigの最小電圧はV
ofsよりも低い電圧値となっており、V
sigの最大電圧はV
ofsよりも高い電圧値となっている。
【0043】
走査線駆動回路24は、例えば、タイミング生成回路21からのタイミング制御信号の入力に応じて(同期して)、複数の走査線WSLを所定の単位毎に順次選択する。走査線駆動回路24は、例えば、2種類の電圧V
on、V
offを出力可能となっている。具体的には、走査線駆動回路24は、駆動対象の画素11へ、走査線WSLを介して2種類の電圧V
on、V
offを選択的に供給し、書込トランジスタTr
2のオン/オフ制御を行うようになっている。ここで、V
onは、書込トランジスタTr
2のオン電圧以上の値となっている。V
offは、書込トランジスタTr
2のオン電圧よりも低い値で、且つ、V
onよりも低い値となっている。
【0044】
電源線駆動回路25は、例えば、タイミング生成回路21からのタイミング制御信号の入力に応じて(同期して)、複数の電源線DSLを所定の単位ごとに順次選択する。電源線駆動回路25は、例えば、2種類の電圧V
cc、V
ssを選択的に出力可能となっている。ここで、V
ssは、有機EL素子13の閾値電圧V
elと、有機EL素子13のカソード電圧V
cathとを足し合わせた電圧(V
el+V
cath)よりも低い電圧値である。V
ccは、(V
el+V
cath)以上の電圧値である。
【0045】
[回路動作]
次に、以上説明した構成の本実施形態に係る表示装置1の回路動作の一例について説明する。
図1に示す表示装置1において、信号線駆動回路23は、映像信号に対応する信号電圧V
sigを各信号線DTLに対して出力する。一方、走査線駆動回路24は、タイミング生成回路21から与えられるタイミング制御信号に同期して、複数の走査線WSLに対して行単位で順次選択パルスを出力する。また、電源線駆動回路25は、タイミング生成回路21から与えられるタイミング制御信号に同期して、複数の電源線DSLに対して行単位で順次電圧V
cc/V
ssを選択的に出力する。
【0046】
この走査線駆動回路24及び電源線駆動回路25による駆動の下に、画素アレイ部10Aの各画素11に対する列方向(垂直方向)の走査が行われ、画素アレイ部10Aの各画素11が行単位で選択される。これにより、選択された画素行の各画素11において、駆動回路12がオン/オフ制御される。そして、各画素11の2つの有機EL素子13に駆動電流が注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こり、その光が外部に取り出される。その結果、表示パネル10の表示領域である画素アレイ部10Aにおいて画像が表示される。
【0047】
[作製プロセス]
図6は、本開示の実施例に係る薄膜トランジスタ100(駆動トランジスタTr
1及び書込トランジスタTr
2)、結合部を構成する配線14A,14B、及び、アノード電極13Aの断面構造を示す断面図である。
【0048】
薄膜トランジスタ100は、有機EL表示装置における駆動素子として用いられるものであり、例えば、トップゲート型の構成を有し、透明基板110上に形成されている。具体的には、薄膜トランジスタ100は、半導体層120及びその層における低抵抗化領域121、ゲート絶縁膜130、第1電極層であるゲート電極140(140A,140B)、保護層150、層間絶縁層160、及び、第2電極層であるソース/ドレイン電極170(170A,170B)がこの順に積層されている。この際に同時に形成される配線14は、ゲート電極140及びソース/ドレイン電極170により形成される。
【0049】
透明基板110は、例えば、ガラス基板やプラスチックフィルムなどにより構成されている。プラスチック材料としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)などを例示することができる。半導体層120として後述する酸化物半導体を用いる場合、スパッタ法において、透明基板110を加熱することなく半導体層120を成膜するため、安価なプラスチックフィルムを用いることができる。
【0050】
半導体層120は、透明基板110上に、ゲート電極140及びその近傍を含む島状に設けられ、薄膜トランジスタ100の活性層としての機能を有する。半導体層120は、例えば、厚みが50nm程度であり、酸化物半導体やシリコンなどで構成されている。ここで、酸化物半導体とは、インジウム、ガリウム、亜鉛、スズ等の元素と、酸素とを含む化合物である。具体的には、非晶質の酸化物半導体としては、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)などを例示することができる。結晶性の酸化物半導体としては、酸化亜鉛(ZnO),酸化インジウム亜鉛(IZO(登録商標))、酸化インジウムガリウム(IGO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム(InO)などを例示することができる。
【0051】
また、半導体層120は、ゲート電極140に対向する領域がチャネル領域となる。チャネル領域上には、ゲート絶縁膜130及びゲート電極140がこの順に同一形状で設けられており、チャネル領域の両側には低抵抗化領域121が設けられており、ソース領域/ドレイン領域として用いられる。
【0052】
半導体層120が酸化物半導体により構成されている場合、低抵抗化領域121は、上面から深さ方向における一部もしくはその全てがチャネル領域と比較して低抵抗化している。低抵抗化領域121は、半導体層120が酸化物半導体の場合、例えば、アルミニウム(Al)等の金属を反応させることにより、酸化物半導体中に拡散させて低抵抗化されている。これにより、この薄膜トランジスタ100は、セルフアライン(自己整合)構造を有するとともに、特性を安定させることが可能となっている。また、低抵抗化領域21は、イオンドーピングやプラズマ処理などにより形成しても良い。
【0053】
ゲート絶縁膜130は、例えば、厚みが300nm程度であり、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、又は、酸化アルミニウム膜などの単層膜または積層膜により構成されている。
【0054】
ゲート電極140は、薄膜トランジスタ100にゲート電圧を印加し、このゲート電圧により半導体層120中の電子密度を制御する役割を有する。ゲート電極140は、後述するソース/ドレイン電極170をエッチングする際の薬液もしくはガスで、エッチングされない第1のゲート電極140Aとエッチングされる第2のゲート電極140Bで構成されている。
【0055】
ゲート電極140は、透明基板110上の選択的な領域に設けられており、第1のゲート電極140Aと第2のゲート電極140Bとの積層構造となっている。第1のゲート電極140Aは、例えば、厚みが10nm〜150nm、より具体的には、50nm程度であり、チタン(Ti)や酸化インジウムガリウム(IGO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウムスズ(ITZO)などで構成されている。第2のゲート電極140Bは、例えば、厚みが500nm程度であり、モリブデン(Mo)とアルミニウム(Al)、ネオジウムを含むアルミニウム(AnNd)、銅(Cu)などの積層膜により構成されている。
【0056】
保護層150は、層間絶縁層160と、半導体層120、ゲート絶縁膜130、及び、ゲート電極140との間に設けられている。半導体層120に酸化物半導体を用いる場合には、保護層150は、低抵抗化領域121に拡散される金属の供給源としての金属膜が酸化されて形成された絶縁膜、あるいは、その酸化されて形成された絶縁膜と引き続きスパッタリング法や原子層成膜法等により形成された絶縁膜である。この保護層150は、例えば、酸化アルミニウム、あるいは、酸化チタン、酸化インジウムまたは酸化スズと酸化アルミニウムとの積層膜により構成されている。
【0057】
酸化アルミニウム等の絶縁膜で形成される保護層150は、外気に対して良好なバリア性を有し、半導体層120の電気的特性を変化させる酸素や水分の影響を低減することが可能である。よって、保護層150を設けることにより、薄膜トランジスタ100の電気特性を安定化させることが可能となり、層間絶縁層160の効果をより高めることが可能となる。保護層150の厚みは、例えば、50nm程度である。
【0058】
層間絶縁層160は、保護層150の上部に形成されており、アクリルやポリイミドやシロキサン等の有機材料やシリコン酸化膜やシリコン窒化膜やシリコン酸窒化膜、あるいは、酸化アルミニウムやそれらの積層膜を用いて形成されている。有機膜を層間絶縁層160に用いた場合には膜厚を容易に厚くすることが可能である。従って、ゲート電極の加工後に形成される段差についても十分に絶縁することが可能となる。層間絶縁層160の厚みは、例えば、2um程度である。
【0059】
そして、ソース/ドレイン電極170と、半導体層120の低抵抗化領域121やゲート電極140と同一平面上に形成された配線140Cとを接続する接続孔を層間絶縁層160及び保護層150に形成する。また、
図3及び
図6に示すように、配線14の上部にも開口部Yを形成する。
【0060】
ソース/ドレイン電極170は、厚みが150nmから1um程度であり、例えば、モリブデン(Mo)とアルミニウム(Al)、及び、有機EL素子13のアノード電極13Aとなるネオジウムを含むアルミニウムにより構成されている。また、ソース/ドレイン電極170は、ゲート電極140と同様に、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)などの低抵抗金属を含む構成となっていることが好ましい。更に、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)より成る低抵抗層と、チタン(Ti)又はモリブデン(Mo)よりなるバリア層とを組み合わせた積層膜も好ましい。このような積層膜を用いることにより、配線遅延の少ない駆動が可能となる。
【0061】
また、ソース/ドレイン電極170の最上部には、ネオジウムを含むアルミニウムや酸化インジウムスズなどを用い、有機EL素子13におけるアノード電極13Aとして用いる構成とする。更に、ソース/ドレイン電極170のパターニング時のオーバーエッチングで開口部Yで露出された第2のゲート電極140Bの層をエッチングすることで、
図6における開口部Yの断面構造が実現される。
【0062】
有機EL素子13は、層間絶縁層160上に設けられている。具体的には、
図4Aに示すように、有機EL素子13は、層間絶縁層160側から順に積層された、アノード電極13A、埋込層180、有機層13C、及び、カソード電極13Bを有しており、保護膜190により封止されている。保護膜190上には、熱硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂から成る接着層(図示せず)を間にして封止用基板(図示せず)が貼り合わされる。
【0063】
埋込層180は、アノード電極13Aとカソード電極13Bとの間の絶縁性を確保するとともに、各素子の発光領域を区画分離するためのものであり、各素子の発光領域に対向して開口を有している。この埋込層180は、例えば、ポリイミド,アクリル樹脂又はノボラック系樹脂などの感光性樹脂により構成されている。
【0064】
有機層13Cは、埋込層180の開口を覆うように設けられている。この有機層13Cは、有機電界発光層(有機EL層)を含み、駆動電流が流れることによって発光する。有機層13Cは、例えば、透明基板110(アノード電極13A)側から順に積層された、正孔注入層、正孔輸送層、有機EL層、及び、電子輸送層を有しており、電子と正孔との再結合が有機EL層で生じて光が発生する。
【0065】
有機EL層の構成材料は、一般的な低分子又は高分子の有機材料であればよく、特に限定されない。例えば、赤、緑、及び、青色を発光する有機EL層が素子毎に塗り分けられていてもよく、あるいは、白色を発光する有機EL層(例えば、赤、緑、及び、青色の有機EL層を積層したもの)が透明基板110の全面に亘って設けられていてもよい。正孔注入層は、正孔注入効率を高めるとともに、リークを防止するためのものである。正孔輸送層は、有機EL層への正孔輸送効率を高めるためのものである。正孔注入層、正孔輸送層、あるいは、電子輸送層等の有機EL層以外の層は、必要に応じて設けるようにすればよい。
【0066】
カソード電極13Bは、ITOやIZOなどの透明導電膜から成る金属導電膜により構成されている。このカソード電極13Bは、アノード電極13Aと絶縁された状態で、例えば、各素子に共通して設けられている。
【0067】
保護膜190は、絶縁性材料又は導電性材料のいずれにより構成されていてもよい。絶縁性材料としては、例えば、アモルファスシリコン(a−Si),アモルファス炭化シリコン(a−SiC),アモルファス窒化シリコン(a−Si(1−X)NX)、又は、アモルファスカーボン(a−C)などを例示することができる。
【0068】
保護膜190上に接着層200を介して貼り合わされる、先述した封止用基板は、薄膜トランジスタ100及び有機EL素子13を間にして透明基板110と対向するように配置される。この封止用基板には、透明基板110と同様の材料を用いることができる。封止用基板に透明材料を用い、封止用基板側にカラーフィルタや遮光膜を設けるようにしてもよい。
【0069】
[製造方法]
次に、本開示の表示装置の製造方法、より具体的には、薄膜トランジスタ100及び配線14の製造方法について、
図7の工程図を用いて説明する。
図7は、薄膜トランジスタ100及び配線14の製造方法を工程順に示す工程図である。
図7において、
図7A〜
図7Fはそれぞれ、工程1〜工程6を示している。
【0070】
先ず、
図7Aの工程1では、透明基板110の全面に、例えば、スパッタリング法により、酸化物半導体を50nm程度の厚みで形成する。その際、ターゲットとしては、形成しようとする酸化物と同一組成のセラミックターゲットを用いる。また、酸化物半導体中のキャリア濃度はスパッタリングの際の酸素分圧に大きく依存するので、所望のトランジスタ特性が得られるように酸素分圧を制御する。
【0071】
そして、例えば、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、酸化物半導体を島状に成形し、半導体層120を形成する。この際、リン酸と硝酸と酢酸との混合液を用いたウエットエッチングにより加工することが好ましい。リン酸と硝酸と酢酸との混合液は、下地との選択比を十分に大きくすることが可能であり、比較的容易に加工が可能となる。
【0072】
次いで、
図7Bの工程2では、透明基板110及び半導体層120の上部全面に、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法等により、シリコン酸化膜又は酸化アルミニウム膜などのゲート絶縁膜130を、200nm程度の厚みで形成する。シリコン酸化膜は、プラズマCVD法のほか、反応性スパッタリング法により形成することが可能である。また、酸化アルミニウム膜は、反応性スパッタリング法、CVD法、又は、原子層成膜法により形成することが可能である。
【0073】
工程2では更に、ゲート絶縁膜130の全面に、例えば、スパッタリング法により、チタン(Ti)から成る第1のゲート電極140Aを50nm程度の厚みで形成する。更に、第1のゲート電極140Aの上にアルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)の積層膜から成る第2のゲート電極140Bを500nm程度の厚みで形成する。
【0074】
次に、
図7Cの工程3では、例えば、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、ゲート電極140を所望の形状に加工し、更に、ゲート電極140をマスクとしてゲート絶縁膜130をエッチングすることで、ゲート絶縁膜130をゲート電極140と同様の形状で加工する。このとき、酸化物半導体層120をZnO、IZO、IGO等の結晶化材料により構成した場合には、ゲート絶縁膜130をエッチングする際に、フッ酸等の薬液を用いて非常に大きなエッチング選択比を維持して容易に加工することが可能となる。これにより、半導体層120のチャネル領域上に、ゲート絶縁膜130及びゲート電極140がこの順に同一形状で形成される。
【0075】
次いで、
図7Dの工程4では、半導体層120、ゲート絶縁膜130、及び、ゲート電極140の表面に、例えば、スパッタリング法や原子層成膜法により、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、又は、スズ(Sn)等の酸素と比較的低温で酸化物半導体と反応する金属から成る金属膜を、例えば、5nm以上10nm以下の厚みで形成する。その後引き続き、例えば、スパッタリング法や原子層成膜法等を用いて酸化アルミニウム膜等のバリア性の高い絶縁膜を50nm程度の厚みで形成する。
【0076】
金属膜及び酸化アルミニウム等の絶縁膜を形成した後、酸素を含む雰囲気中において熱処理を行うことにより、金属膜が酸化されて形成された金属酸化膜と酸化アルミニウム等の絶縁膜から成る保護層150が形成される。この際に同時に、薄膜トランジスタ100におけるソース/ドレイン領域となる半導体層120における低抵抗化領域121が形成される。この金属膜の酸化反応には、半導体層120に含まれる酸素の一部が利用される。そのため、金属膜の酸化の進行に伴って、半導体層120における金属膜と直接接する上面側から酸素濃度が低下していく。同時に、金属膜からアルミニウム等の金属が酸化物半導体中に拡散してドーパントとして機能することにより、金属膜と接触する酸化物半導体層120の領域が低抵抗化し、低抵抗化領域121が形成される。この低抵抗化領域121は薄膜トランジスタ100におけるソース/ドレイン領域として用いられる。
【0077】
金属膜の熱処理としては、例えば、上述したように、200℃程度の温度で酸素を含む雰囲気中において熱処理することが好ましい。その際、酸素等を含む酸化性のガス雰囲気でアニールを行うことで、低抵抗化領域121の酸素濃度が低くなり過ぎるのを抑え、半導体層120に十分な酸素を供給することが可能となる。よって、後工程で行うアニール工程を削減することが可能となり、工程の簡略化が可能となる。
【0078】
また、例えば、
図7Dの工程4、即ち、金属膜を形成する工程では、透明基板110の温度を200℃程度と比較的高い温度とすることにより、熱処理を行わずに低抵抗化領域121を形成することも可能である。この場合には、酸化物半導体から成る半導体層120のキャリア濃度をトランジスタとして必要なレベルに低減することが可能である。
【0079】
金属膜は、上述したように、10nm以下の厚みで形成することが好ましい。これは、金属膜の厚みを10nm以下とすれば、熱処理により金属膜を完全に酸化することが可能となるからである。金属膜が完全に酸化されていない場合には、金属膜をエッチングにより除去する工程が必要となる。金属膜が完全に酸化されて高抵抗の絶縁膜となっている場合には、エッチングして除去する工程は不要となり、製造工程の簡略化が可能となる。金属膜を10nm以下の厚みで形成した場合、金属が酸化反応した金属酸化物の厚みは、結果として、20nm以下となる。
【0080】
その際、金属膜を酸化させる方法としては、熱処理のほか、水蒸気雰囲気での酸化、又は、プラズマ酸化などを例示することができる。これらの方法により、酸化を促進させることも可能である。特にプラズマ酸化は、後工程で層間絶縁層160をプラズマCVD法により形成する直前に実施することが可能であり、特に工程を増やす必要がないという利点がある。プラズマ酸化では、例えば、透明基板110の温度を200℃〜400℃程度にして、酸素や亜酸化窒素等の酸素を含むガス雰囲気中でプラズマを発生させて処理することが望ましい。これにより、上述したような外気に対して良好なバリア性を有する保護層150を形成することが可能となるからである。
【0081】
また、十分な保護膜機能を実現するためには、金属膜を形成した後に引き続き、酸化アルミニウム等のバリア性の高い絶縁膜を保護膜として形成することが望ましい。例えば、50nm程度の膜厚の酸化アルミニウム膜を金属膜の上に連続して形成することで、十分な保護膜機能を有する保護層150を形成することが可能となる。
【0082】
次に、
図7Eの工程5では、アクリルやポリイミドやシロキサン等の有機膜により層間絶縁層160を形成する。有機膜は塗布することで容易に2um程度の膜厚の絶縁膜を形成することが可能である。同時に、露光、現像工程を行うことで、所定の箇所に接続孔を開けることができる。この際、層間絶縁層160を積層構造として、シリコン酸化膜と有機層間膜の積層膜を用いることも可能である。
【0083】
次に、
図7Fの工程6では、その後、層間絶縁層160の上に、スパッタリング法により、例えば、アルミニウム(Al)とモリブデン(Mo)の積層膜を500nm程度の厚みで形成し、フォトリソグラフィ及びエッチングを行うことにより、所定の位置にソース/ドレイン電極170(170A,170B)を形成する。この際に、ソース/ドレイン電極170の最表面にITOやネオジウムを含むアルミニウム等の有機EL素子に対して、アノード電極として用いるのに適した電極を形成する。また、ソース/ドレイン電極170のパターニング時のオーバーエッチングで開口部Yで露出されたゲート電極層のうち第2のゲート電極140Bの層を選択的にエッチングする。また、ソース/ドレイン電極170は、酸化物半導体層120における低抵抗化領域121に接続する。
【0084】
このようにして、薄膜トランジスタ100及び配線14A,14Bを形成した後、層間絶縁層160及びソース/ドレイン電極170を覆うように、導電層170C上に開口を有する埋込層180を形成する。そして、例えば真空蒸着法により、有機層13Cを成膜する。続いて、有機層13C上に、上述した材料から成るカソード電極13Bを、例えば、スパッタリング法により形成する。次いで、このカソード電極13B上に、例えばCVD法により、保護膜190を成膜した後、この保護膜190上に、接着層を用いて封止用基板(図示せず)を貼り合わせる。以上の工程により、
図1に示した表示装置1が完成する。
【0085】
[滅点不良の改善]
次に、本実施形態の表示装置1における滅点不良(滅点などの点欠陥)の改善方法、即ち、滅点不良となっていた画素を回復させる方法について説明する。
【0086】
図8は、画素11が滅点不良となっている様子の一例を示す回路図である。
図8において、低抵抗R
dが、有機EL素子13を形成する工程で混入した異物に対応するものである。異物の混入により、互いに並列接続された2つの有機EL素子13のうち、一方の有機EL素子13において電極間ショートが引き起こされている。そのため、低抵抗R
d及び駆動トランジスタTr
1には、電極間ショートが無い通常よりも大きな電流が流れている。これにより、2つの有機EL素子13には、電極間ショートが無い通常よりも極めて小さな電流しか流れていない。その結果、2つの有機EL素子13は発光せず、画素11が滅点不良となっている。
【0087】
これに対して、本実施形態では、例えば、
図9に示すように、異物の混入により形成された低抵抗R
dを流れる電流のパスを、駆動トランジスタTr
1のドレイン−ソース間を流れる電流のパスから切り離す。具体的には、
図10に示すように、低抵抗R
dと直列に接続された配線14Bの下面に対してレーザ光Lを照射する。レーザ光Lの照射により、第1のゲート電極140Aが除去される。その結果、配線14が切断され、低抵抗R
dを流れる電流のパスが駆動トランジスタTr
1のドレイン−ソース間を流れる電流のパスから切り離されるので、滅点不良となっていた画素11が回復する。
【0088】
[比較例]
本開示の技術を適用していない、従来の薄膜トランジスタ101及び配線14の断面構造を
図11に示す。従来の薄膜トランジスタ101及び配線14から成る画素構造にあっては、配線14の膜厚が厚いために、レーザ光Lの照射による配線14の切断が困難となる。このことについて、以下により具体的に説明する。
【0089】
ここでは、一例として、露光工程の削減のために、画素11を構成している薄膜トランジスタ100のソース/ドレイン電極170(170A,170B)の層と、反射電極であるアノード電極13Aの層とを共通層化した場合を考える。この場合、配線14の低抵抗化のために、配線14を数百nm以上まで厚膜化することになる。すると、溶融した電極材料が移動するスペースを確保できなく、しかも、配線14の膜厚が厚いために、表示パネル10の完成後にレーザ光Lの照射により配線14を断線するのは困難となる。
【0090】
[変形例]
尚、上記の実施形態では、画素11が互いに並列接続された複数の有機EL素子13を有し、いずれかの有機EL素子13が異物の混入等に起因する電極間ショート等で欠陥化した際に、当該有機EL素子13に対応する配線14を切断し、画素11を回復させる場合を例に挙げたが、これに限られるものではない。具体的には、画素11が有機EL素子13を1つ有する構成の表示装置に対しても、本開示の技術を適用することができる。この場合には、電極間ショート等で欠陥化した画素11については、配線14を切断することによって表示に寄与させない無効画素とする(即ち、当該画素を滅点化する)ことになる。
【0091】
[実施形態の作用、効果]
以上説明した本実施形態に係る表示装置にあっては、露光工程の削減を目的として、薄膜トランジスタ100のソース/ドレイン電極170(170A,170B)の層と、反射電極であるアノード電極13Aの層とが共通化されている。露光工程の削減により、製造工程数を削減できるため、表示パネル10、ひいては、表示装置1のコストを低減できる。そして、ソース/ドレイン電極170とアノード電極13Aの層の共通化を図った上で、駆動回路12と有機EL素子13とを互いに接続する(電気的に結合する)結合部を構成する配線14の一部が薄膜化されている。すなわち、結合部を構成する配線14は、薄膜トランジスタ101におけるゲート電極140及びソース/ドレイン電極170よりも薄い金属層を含んでいる。
【0092】
このように、配線14の一部が薄膜化されていることにより、例えば、2つの有機EL素子13のいずれかが異物の混入等に起因する電極間ショート等で欠陥化し、画素11が滅点不良となった場合であっても、配線14の薄膜化された領域をレーザ照射などによって切断できる。これにより、滅点不良となっていた画素11を回復させることができるため、滅点などの点欠陥を改善することができる。
【0093】
また、特に大型の表示パネルにあっては、駆動回路12と有機EL素子13とを互いに接続する配線14の低抵抗化が求められるため、配線14を厚膜化することになる。このように配線14を厚膜化せざる得ない大型の表示パネルにあっても、本開示の技術を適用することで、滅点不良となっていた画素11を回復させることができるため、滅点などの点欠陥を改善することができる。換言すれば、特に大型の表示パネルに対して、本開示の技術を適用することで、配線14の厚膜化を許容でき、配線14の低抵抗化を図ることができるため、画質(表示品質)を向上できる。
【0094】
<電子機器>
以上説明した本開示の表示装置は、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示部(表示装置)に適用できる。として用いることができる。一例として、例えば、テレビジョンセット、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話機等の携帯端末装置、ビデオカメラ等の表示部として用いることができる。
【0095】
このように、あらゆる分野の電子機器の表示部として本開示の表示装置を用いることにより、各種の電子機器の表示品位を高めることができる。すなわち、先述した実施形態の説明から明らかなように、本開示の表示装置によれば、
・製造工程数を削減できるため、表示装置のコストを低減できる。
・滅点不良となっていた画素を回復させることができるため、滅点などの点欠陥を改善することができる。
・発光素子とその駆動回路とを接続する結合部の低抵抗化を図ることができるため、画質を向上できる。
と言った作用、効果を得ることができる。その結果、各種の電子機器において、その表示部として本開示の表示装置を用いることにより、表示装置の低コスト化を図ることができるとともに、表示品質の高い、良好な表示画像を得ることができる。
【0096】
本開示の表示装置は、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。一例として、画素アレイ部に透明なガラス等の対向部が貼り付けられて形成された表示モジュールが該当する。尚、表示モジュールには、外部から画素アレイ部への信号等を入出力するための回路部やフレキシブルプリントサーキット(FPC)などが設けられていてもよい。以下に、本開示の表示装置を用いる電子機器の具体例として、テレビジョンセットを例示する。但し、ここで例示する具体例は一例に過ぎず、これに限られるものではない。
【0097】
[具体例]
図12は、本開示の電子機器の一例であるテレビジョンセットの外観を示す斜視図である。テレビジョンセットは、フロントパネル102やフィルターガラス103等から構成される映像表示画面部101を有している。このテレビジョンセットにおいて、その映像表示画面部101として本開示の表示装置を用いることができる。すなわち、本例に係るテレビジョンセットは、その映像表示画面部101として本開示の表示装置を用いることによって作製される。
【0098】
尚、本開示は以下のような構成をとることもできる。
[1]複数の画素を備え、
画素は、発光素子、発光素子を駆動する薄膜トランジスタを含む駆動回路、及び、発光素子と駆動回路とを互いに接続する結合部を有し、
発光素子は、透明電極と反射電極との間に、発光層を含む有機層が挟まれた構成を有し、
薄膜トランジスタは、半導体層、絶縁層、第1電極層、及び、第2電極層を含む構成を有し、
結合部はその一部に、薄膜トランジスタにおける第1電極層及び第2電極層よりも薄い金属層を含む、
表示装置。
[2]薄膜トランジスタの第1電極層はゲート電極の層である、
上記[1]に記載の表示装置。
[3]薄膜トランジスタの第1電極層は積層構造を有する、
上記[1]又は上記[2]に記載の表示装置。
[4]薄膜トランジスタの第1電極層及び第2電極層はそれぞれ同じ金属を含む、
上記[1]から上記[3]のいずれかに記載の表示装置。
[5]第1電極層は、チタンとアルミニウム、又は、アルミニウム合金の層を含む積層膜から成り、
第2電極層は、アルミニウム合金、又は、アルミニウム合金を含む積層膜から成る、
上記[4]に記載の表示装置。
[6]画素は、複数の発光素子を有し、
結合部は、複数の発光素子の各々と駆動回路とを互いに接続する、
上記[1]から上記[5]のいずれかに記載の表示装置。
[7]発光素子の反射電極の層と、薄膜トランジスタの第2電極層とが共通化されている、
上記[1]から上記[6]のいずれかに記載の表示装置。
[8]結合部のシルエットの少なくとも一部が外部から視認されるのを防止する遮光層を備える、
上記[1]から上記[7]のいずれかに記載の表示装置。
[9]複数の画素を備え、
画素は、発光素子、発光素子を駆動する薄膜トランジスタを含む駆動回路、及び、発光素子と駆動回路とを互いに接続する結合部を有し、
発光素子は、透明電極と反射電極との間に、発光層を含む有機層が挟まれた構成を有し、
薄膜トランジスタは、半導体層、絶縁層、第1電極層、及び、第2電極層を含む構成を有し、
結合部はその一部に、薄膜トランジスタにおける第1電極層及び第2電極層よりも薄い金属層を含む、
表示装置を製造するに当たって、
透明基板上に第1電極層を含む結合部を形成する工程と、
結合部上に層間絶縁層を形成し、層間絶縁層の所定の箇所に開口部を形成した後、層間絶縁層の所定の位置に第2電極層をパターニングする工程と、
第2電極層のパターニング時のオーバーエッチングで開口部を介して結合部の一部を除去する工程と、
の各工程の処理を実行する表示装置の製造方法。
[10]複数の画素を備え、
画素は、発光素子、発光素子を駆動する薄膜トランジスタを含む駆動回路、及び、発光素子と駆動回路とを互いに接続する結合部を有し、
発光素子は、透明電極と反射電極との間に、発光層を含む有機層が挟まれた構成を有し、
薄膜トランジスタは、半導体層、絶縁層、第1電極層、及び、第2電極層を含む構成を有し、
結合部はその一部に、薄膜トランジスタにおける第1電極層及び第2電極層よりも薄い金属層を含む、
表示装置を有する電子機器。