特許第6334988号(P6334988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6334988樹脂組成物および該樹脂組成物からなる架橋成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334988
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】樹脂組成物および該樹脂組成物からなる架橋成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20180521BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C08L23/16
   C08L23/08
【請求項の数】6
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-68585(P2014-68585)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-189871(P2015-189871A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】神谷 希美
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄二
(72)【発明者】
【氏名】猪股 清秀
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−214582(JP,A)
【文献】 特開昭61−246215(JP,A)
【文献】 米国特許第05093418(US,A)
【文献】 特開2005−029654(JP,A)
【文献】 特開2000−239465(JP,A)
【文献】 特開2013−224377(JP,A)
【文献】 特開平02−060950(JP,A)
【文献】 米国特許第05276081(US,A)
【文献】 特開平09−012793(JP,A)
【文献】 特開2001−106846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00−23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の要件(a−1)〜(a−5)を満たすエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部と、
下記の要件(b−1)〜(b−6)を満たす液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)1〜150量部と
を含有することを特徴とする樹脂組成物。
(a−1)エチレンから導かれる構造単位と、炭素数が3〜20のα−オレフィンから導かれる構造単位と、非共役ポリエンから導かれる構造単位とを有する。
(a−2)エチレンから導かれる構造単位と、α−オレフィンから導かれる構造単位との合計100モル%中において、エチレンから導かれる構造単位の含有率(Eaモル%)が40〜90モル%である。
(a−3)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.6〜5.0dl/gである。
(a−4)ヨウ素価が2〜50である。
(a−5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5〜50である。
(b−1)エチレンから導かれる構造単位と、炭素数が3〜20のα−オレフィンから導かれる構造単位とを有する。
(b−2)エチレンから導かれる構造単位の含有率が30〜90モル%(ただし、エチレンから導かれる構造単位の含有率とα−オレフィンから導かれる構造単位の含有率との合計を100モル%とする)である。
(b−3)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜0.10dl/gである。
(b−4)100℃における動粘度が10〜300mm2/sである。
(b−5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.0〜3.0である。
(b−6)示差走査熱量測定(DSC)により求められるガラス転移温度(Tg)が−90〜−65℃である。
【請求項2】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)のエチレンから導かれる構造単位の含有率(Eaモル%)と、
前記液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のエチレンから導かれる構造単位の含有率(Ebモル%)(ただし、エチレンから導かれる構造単位とα−オレフィンから導かれる構造単位との合計を100モル%とする)とが、下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
−10≦Ea−Eb≦10 …(1)
【請求項3】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)のエチレンから導かれる構造単位の含有率(Eaモル%)が、エチレンから導かれる構造単位と炭素数が3〜20のα−オレフィンから導かれる構造単位との合計100モル%中、40〜65モル%であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)がさらに下記要件(b−7)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
(b−7)13C−NMRスペクトルおよび下記一般式(1)から求められるB値が1.06以上である。
B値=[POE]/(2・[PE][PO]) …(1)
(式中、[PE]は共重合体中のエチレンから導かれる構造単位の含有モル分率であり、[PO]は共重合体中のα−オレフィンから導かれる構造単位の含有モル分率であり、[POE]は共重合体中の全ダイアド(dyad)連鎖に対するエチレン・α−オレフィン連鎖数の割合である。)
【請求項5】
架橋剤(C)をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物を架橋させて得られる架橋成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含む樹脂組成物および該樹脂組成物からなる架橋成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンとプロピレンとのランダム共重合体であるエチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)、あるいはさらにジエン成分としてエチリデンノルボルネンなどの非共役ジエンを含むエチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)などの架橋性エチレン・α−オレフィン系ゴムは、ポリマー主鎖中に不飽和結合のない分子構造を有しており、汎用の共役ジエン系ゴムに比べて耐熱性、耐候性に優れているため、自動車用部品、電線用材料、建築土木資材、工業材部品などの用途に広く利用されている。
【0003】
このようなエチレン・α−オレフィン系ゴムは通常、加硫(架橋)して用いられるが、架橋ゴム(加硫ゴム)の特性はエチレン成分含量、分子量、ヨウ素価などによって変化するので、それぞれの用途に応じてこれら値の異なるものが用いられている。
【0004】
たとえばエチレン成分含量の高いエチレン・プロピレンゴム(EPM)またはEPDMを用いると、耐熱性に優れた加硫物が得られ、また、エチレン成分含量の低いEPMまたはEPDMを用いると、低温柔軟性に優れた加硫物が得られることが知られている。
【0005】
ところでEPDMは、混練加工性や押出し成形性を改良したり、加硫ゴムの硬さを調整したりするために、ナフテン系やパラフィン系の鉱油系軟化剤を添加して用いるのが通常である。ところが鉱油系軟化剤をEPDMに配合すると、鉱油中に含まれるろう分の影響で流動点が高く、加硫ゴムの低温柔軟性を悪化させる結果となったり、多量に配合すると、ろう分がブリードアウトし製品外観を損なっていた。今後益々、より過酷な条件下での使用や、制振ゴムとしての性能の更なる向上への要求の高まりに対して、低温柔軟性の更なる改良が求められている。
【0006】
このような問題を解決する方法として、製法を改良し高度な脱硫・脱ろうを行った高度精製油を、流動点の低い軟化剤として使用することが知られているが、高度な脱硫・脱ろうは技術的・経済的に困難なばかりでなく、無理に対応した場合は、生成された鉱油の分子量が低下し、オイルのブリードアウトに起因する不具合や、外観の悪化、および耐熱老化性の悪化がおこることがあり、また低温柔軟性の点でも充分満足し得るものではなかった。
【0007】
EPDM組成物を用いる際に、鉱油の代わりに、結晶性が低く流動性が高いエチレン・α−オレフィン共重合体やPAO(ポリα−オレフィン;デセン等高級α−オレフィンの重合体)などの合成油を軟化剤として用いる例も知られている。例えば、エチレン・α−オレフィン共重合体を使用する例として、EPDMと、特定のエチレン・α−オレフィン共重合体とからなるエチレン・α−オレフィン・ジエン系ゴムが、加工性および加硫成形時における形状保持性に優れることが示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、特定の分子量以下のエチレン・α−オレフィン共重合体を配合して低温特性が劇的に改善されるような例は示されていない。
【0008】
また特許文献2には、EPDMと、特定のPAO(ポリα−オレフィン)と、特定のエチレン・α−オレフィン共重合体とからなる共重合体組成物が、低温柔軟性と高いダンピング特性を示し、制振ゴム材料としての要求特性を満足する材料が得られることが示されている。しかし、PAOはエチレン・α−オレフィン共重合体と比較してEPDMとの相溶性に劣るため、低温特性の改良効果が充分満足し得るものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平04−309544号公報
【特許文献2】特開2005−029654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述のような問題を生じることなく、低温柔軟性などの低温特性に優れた成形体を製造し得る、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含む樹脂組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、次の〔1〕〜〔6〕の事項に関する。
〔1〕下記の要件(a−1)〜(a−5)を満たすエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部と、
下記の要件(b−1)〜(b−6)を満たす液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)1〜150量部と
を含有することを特徴とする樹脂組成物。
(a−1)エチレンから導かれる構造単位と、炭素数が3〜20のα−オレフィンから導かれる構造単位と、非共役ポリエンから導かれる構造単位とを有する。
(a−2)エチレンから導かれる構造単位と、α−オレフィンから導かれる構造単位との合計100モル%中において、エチレンから導かれる構造単位の含有率(Eaモル%)が40〜90モル%である。
(a−3)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.6〜5.0dl/gである。
(a−4)ヨウ素価が2〜50である。
(a−5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5〜50である。
(b−1)エチレンから導かれる構造単位と、炭素数が3〜20のα−オレフィンから導かれる構造単位とを有する。
(b−2)エチレンから導かれる構造単位の含有率が30〜90モル%(ただし、エチレンから導かれる構造単位の含有率とα−オレフィンから導かれる構造単位の含有率との合計を100モル%とする)である。
(b−3)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜0.10dl/gである。
(b−4)100℃における動粘度が10〜300mm2/sである。
(b−5)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.0〜3.0である。
(b−6)示差走査熱量測定(DSC)により求められるガラス転移温度(Tg)が−90〜−65℃である。
【0012】
〔2〕前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)のエチレンから導かれる構造単位の含有率(Eaモル%)と、
前記液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のエチレンから導かれる構造単位の含有率(Ebモル%)(ただし、エチレンから導かれる構造単位とα−オレフィンから導かれる構造単位との合計を100モル%とする)とが、下記式(1)を満たすことを特徴とする前記〔1〕に記載の樹脂組成物。
−10≦Ea−Eb≦10 …(1)
【0013】
〔3〕前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)のエチレンから導かれる構造単位の含有率(Eaモル%)が、エチレンから導かれる構造単位と炭素数が3〜20のα−オレフィンから導かれる構造単位との合計100モル%中、40〜65モル%であることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕前記液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)がさらに下記要件(b−7)を満たすことを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
(b−7)13C−NMRスペクトルおよび下記一般式(1)から求められるB値が1.06以上である。
B値=[POE]/(2・[PE][PO]) …(1)
(式中、[PE]は共重合体中のエチレンから導かれる構造単位の含有モル分率であり、[PO]は共重合体中のα−オレフィンから導かれる構造単位の含有モル分率であり、[POE]は共重合体中の全ダイアド(dyad)連鎖に対するエチレン・α−オレフィン連鎖数の割合である。)
【0014】
〔5〕架橋剤(C)をさらに含むことを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔6〕前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の樹脂組成物を架橋させて得られる架橋成形体。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ブリードアウトなどの問題を生じることなく、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含有し、低温柔軟性に優れた架橋成形体を製造し得る樹脂組成物、ならびに低温柔軟性などの低温特性に優れた架橋成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本明細書の製造例で得た、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B成分に相当)の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]と、ガラス転移温度(Tg)との関係を示すグラフである。白(◇)は本発明の(B)成分に適合する液状エチレン・α−オレフィン共重合体、黒(◆)は(b−3)の要件を満たさず、極限粘度[η]が0.10dl/gを超えるエチレン・α−オレフィン共重合体を示す。
図2図2は、本明細書の製造例で得た、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B成分に相当)の、100℃による動粘度(KV)と、ガラス転移温度(Tg)との関係を示すグラフである。白(◇)は本発明の(b−4)の要件を満たし、100℃における動粘度が10〜300mm2/sの範囲にある液状エチレン・α−オレフィン共重合体、黒(◆)は(b−4)の要件を満たさず、100℃における動粘度が300mm2/sを超えるエチレン・α−オレフィン共重合体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について具体的に説明する。
なお、以下の説明において、N1以上N2以下(N1およびN2は、それぞれ数値範囲の下限値および上限値を示す)を、単に「N1〜N2」と記載することもある。例えば、炭素数3以上20以下のα−オレフィンを、「炭素数3〜20のα−オレフィン」と記載することもある。
【0018】
本発明に係る樹脂組成物は、特定の物性を有するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部と、特定の物性を有する液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)1〜150重量部とを含有する。
【0019】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンと、非共役ポリエンとからなるオレフィン系の共重合体である。
【0020】
炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチルデセン-1、11-メチルドデセン-1、12-エチルテトラデセン-1などが挙げられる。中でも、プロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、とりわけプロピレンが好ましい。これらのα−オレフィンは、単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
【0021】
非共役ポリエンとしては、具体的には、1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-イソブテニル-2-ノルボルネン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ナノジエン等のトリエンなどが挙げられる。中でも、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、シクロペンタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ナノジエンが好ましい。
【0022】
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、エチレンから導かれる構造単位と、炭素数が3〜20のα−オレフィンから導かれる構造単位との合計100モル%中において、エチレンから導かれる構造単位の含有率(Eaモル%)が40〜90モル%、好ましくは40〜80モル%、より好ましくは45〜70モル%であり、さらに好ましくは50〜60モル%であり、炭素数が3〜20のα−オレフィンから導かれる構造単位の含有率が60〜10モル%、好ましくは60〜20モル%、より好ましくは55〜30モル%、さらに好ましくは50〜40モル%である。
【0023】
エチレンから導かれる構造単位の含有率と、炭素数が3〜20のα−オレフィンから導かれる構造単位の含有率とが上記範囲にあると、耐熱老化性、強度特性、ゴム弾性、耐寒性及び加工性に優れた架橋成形体を提供できるゴム組成物を得られるという点で優れている。エチレンから導かれる構造単位の含有率が90モル%以下、炭素数が3〜20のαオレフィンから導かれる構造単位の含有率が10モル%以上であると、柔軟性に優れるため特に好ましい。エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)のエチレン構造単位含有率、およびα−オレフィン構造単位含有率は、13C−NMR法で測定することができ、例えば後述する方法および「高分子分析ハンドブック」(朝倉書店 発行 P163〜170)に記載の方法に従ってピークの同定と定量とを行うことができる。
【0024】
本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、通常0.6〜5.0dl/g、好ましくは0.8〜4.0dl/g、より好ましくは0.9〜3.5dl/gであることが望ましい。135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]がこの範囲にあると、強度特性、耐圧縮永久歪性及び加工性のバランス優れた架橋成形体を提供できる樹脂組成物が得られるという点で優れている。
【0025】
本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)のヨウ素価は、通常2〜50g/100g、好ましくは5〜40g/100g、より好ましくは7〜30g/100gであることが望ましい。ヨウ素価がこの範囲を下回ると、架橋効率が低下し、ゴム弾性、強度特性、耐圧縮永久歪が低下し、かつコスト的にも不利となる。ヨウ素価がこの範囲を上回ると、架橋密度が高くなりすぎて耐熱性・伸びが低下し、物性バランスが悪化する場合がある。
【0026】
本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)が、通常1.5〜50であり、好ましくは1.8〜30であり、より好ましくは2.0〜6である。
【0027】
本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)のムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は、好ましくは15〜150である。ムーニー粘度がこの範囲にあると、製造加工性の容易なゴムが得られやすい。
【0028】
本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、DSCで測定した融解熱量が、60J/g以下であることが好ましく、40J/g以下であることがより好ましく、20J/g以下であることが特に好ましい。
【0029】
上記のようなエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、「ポリマー製造プロセス((株)工業調査会、発行p.309〜330)」もしくは本願出願人の出願に係る特開平9−71617号公報、特開平9−71618号公報、特開平9−208615号公報、特開平10−67823号公報、特開平10−67824号公報、特開平10−110054号公報、WO2009/081792号パンフレット、WO2009/081794号パンフレットなどに記載されているような従来公知の方法により製造することができる。
【0030】
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の製造の際に好ましく用いられるオレフィン重合用触媒としては、たとえば、
バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)等の遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物(有機アルミニウムオキシ化合物)とからなる公知のチーグラー触媒;
元素の周期律表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とからなる公知のメタロセン触媒、例えば特開平9−40586号公報に記載されているメタロセン触媒;
特定の遷移金属化合物と、ホウ素化合物等の共触媒とからなる公知のメタロセン触媒、例えばWO2009/072553号パンフレットに記載されているメタロセン触媒;
特定の遷移金属化合物と、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物または該遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物とからなる遷移金属化合物触媒、例えば特開2011−52231号公報に記載されている遷移金属化合物触媒;
が挙げられる。特にメタロセン触媒を用いると、ジエンの分布が均一となってジエンの導入が少なくても高い架橋効率を得ることができ、また触媒活性が高いため触媒由来の塩素含量を低減できるため特に好ましい。
【0031】
液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)
本発明で用いられる液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなる共重合体であって、共重合成分にポリエンを含まない。ここで、「液状」とは、常温(25℃)で液体であることを意味する。液状であるためには、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のエチレンから導かれる構造単位の含有率、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]、および100℃における動粘度が後述する好ましい範囲内であるとよい。
【0032】
炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチルデセン-1、11- メチルドデセン-1、12- エチルテトラデセン-1などが挙げられる。中でも、低温での流動性、耐熱安定性のバランスの点で、プロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。これらのα−オレフィンは、単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
【0033】
本発明に係る液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、エチレンから導かれる構造単位の含有率が30〜90モル%、好ましくは40〜80モル%、より好ましくは45〜75モル%であり、α−オレフィンから導かれる構造単位の含有率が10〜70モル%、好ましくは50〜20モル%、より好ましくは55〜25モル%である。ただし、エチレンから導かれる構造単位の含有率とα−オレフィンから導かれる構造単位の含有率の合計を100モル%とする。エチレン含量が上記の範囲より多すぎる、または少なすぎると結晶性が高くなり、低温特性が顕著に悪化する場合があるほか、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と混合した際の柔軟化効果も低下する場合があるため好ましくない。
【0034】
本発明に係る液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のエチレンから導かれる構造単位の含有率およびα−オレフィンから導かれる構造単位の含有率は、13C−NMR法で測定することができ、例えば後述する方法および「高分子分析ハンドブック」(朝倉書店 発行 P163〜170)に記載の方法に従ってピークの同定と定量とを行うことができる。
【0035】
本発明に係る液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜0.10dl/g、好ましくは0.02〜0.10dl/g、さらに好ましくは0.03〜0.08dl/gである。
【0036】
今回鋭意検討を行った結果、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.10dl/g以下、好ましくは0.10dl/g未満であると、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)が135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]に依存して大きく低下するようになり、得られる樹脂組成物のガラス転移温度を低温化し得ることを見出した。液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.10dl/gを上回ると、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)が上昇し、樹脂組成物のガラス転移温度を低温化する効果が低下するため好ましくない。また、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01dl/gを下回ると、揮発しやすい低分子量成分が多くなり、成形時の物性低下や樹脂組成物の耐熱性の低下を引き起こすため好ましくない。
【0037】
本発明に係る液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、100℃における動粘度が10〜300mm2/sであり、好ましくは15〜250mm2/s、より好ましくは20〜200mm2/sである。
【0038】
今回鋭意検討を行った結果、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の135℃デカリン中で測定した100℃における動粘度が300mm2/s以下、好ましくは300mm2/s未満であると、100℃における動粘度が低いことに依存して、ガラス転移温度(Tg)が大きく低下するようになり、得られる樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を低温化し得ることを見出した。液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の100℃における動粘度が300mm2/sを上回ると、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のガラス転移温度が上昇し、得られる樹脂組成物のガラス転移温度を低温化する効果が低下するため好ましくない。また、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の100℃における動粘度が10mm2/sを下回ると揮発しやすい低分子量成分が多くなり、成形時の物性低下や樹脂組成物の耐熱性の低下を引き起こすため好ましくない。
【0039】
本発明に係る液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.0〜3.0、好ましくは1.4〜2.5である。分子量分布が広く(Mw/Mnが大きく)なると、滲み出しの起こりやすい低分子量成分や、柔軟化効果および加工性改良効果を低下させる場合のある高分子量成分を多く含むことになるため好ましくない。なお、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比として求められる。
【0040】
本発明に係る液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、示差走査型熱量測定(DSC)によって測定されるガラス転移温度(Tg)が、通常−65〜−90℃であり、より好ましくは−65〜−80℃の範囲にある。示差走査型熱量測定(DSC)によって測定されるガラス転移温度(Tg)が−65℃を上回ると、得られる樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を低温化する効果が低下するため好ましくない。示差走査型熱量測定(DSC)によって測定されるガラス転移温度(Tg)が−90℃である液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)を用いると、得られる樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を低温化する効果は実用上十分であり、一方ガラス転移温度(Tg)が−90℃よりもさらに低い場合には、分子量の低下を引き起こし揮発性が増加するので好ましくない。
【0041】
本発明において、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、示差走査型熱量測定(DSC)により以下の方法で測定される:
サンプルパンをDSCセルに配置し、DSCセルを窒素雰囲気下にて30℃(室温)から、150℃まで10℃/分で昇温し、次いで、150℃で5分間保持した後、10℃/分で降温し、DSCセルを−100℃まで冷却する(降温過程)。次いで、100℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温し、昇温過程で得られるエンタルピー曲線の変曲点での接線の交点をガラス転移温度(Tg)とする。ガラス転移温度の(Tg)の求め方はJIS K7121 9.3に基づいて行った。
【0042】
また本発明に係る液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、特に限定されるものではないが、13C−NMRスペクトルおよび下記一般式(1)から求められるB値が、通常1.06以上、好ましくは1.06〜1.50、より好ましくは1.10〜1.4、さらに好ましくは1.15〜1.30である。
B値=[POE]/(2・[PE][PO]) …(1)
(式中、[PE]は共重合体中のエチレンから導かれる構造単位の含有モル分率であり、[PO]は共重合体中のα−オレフィンから導かれる構造単位の含有モル分率であり、[POE]は共重合体中の全ダイアド(dyad)連鎖に対するエチレン・α−オレフィン連鎖数の割合である。)
【0043】
このB値は、エチレン・α−オレフィン共重合体中のエチレンとα−オレフィンとの分布状態を表す指標であり、J.C.Randall (Macromolecules, 15, 353(1982)) 、J.Ray (Macromolecules, 10, 773(1977)) らの報告に基づいて求めることができる。
【0044】
上記B値が大きいほど、エチレンまたはα−オレフィンのブロック的連鎖が短くなり、エチレンおよびα−オレフィンの分布が一様であり、共重合体の組成分布が狭いことを示している。
【0045】
本発明に係る液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のB値が1.06よりも小さくなると、結晶性が高くなり、低温特性が顕著に悪化するほか、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と混合した際の柔軟化効果も低下するため好ましくない。
【0046】
本発明に係る液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、公知の方法を制限なく用いて製造することができる。例えば、バナジウム、ジルコニウム、チタニウムなどの遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物(有機アルミニウムオキシ化合物)および/またはイオン化イオン性化合物とからなる触媒の存在下に、エチレンとα−オレフィンとを共重合させる方法が挙げられる。このような方法は、例えば国際公開00/34420号パンフレット、特開昭62−121710号公報に記載されている。
【0047】
本発明に係る液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)全体として、エチレンから導かれる構造単位の含有率が30〜90モル%であり、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜0.10dl/gであり、100℃における動粘度が10〜300mm2/sであり、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.0であり、かつ、示差走査熱量測定(DSC)により求められるガラス転移温度(Tg)が−90〜−65℃を満たす範囲内において、性状が異なる2種以上のエチレン・α−オレフィン共重合体を併用して調製してもよい。
【0048】
樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、上述したエチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体(A)と液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)とを必須成分として含有する組成物であって、エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)を1〜150重量部含有することが好ましく、10〜120重量部含有することがより好ましく、20〜100重量部含有することがさらに好ましく、30〜80重量部含有することが特に好ましい。液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の含有量が1重量部未満の場合、得られる樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を低温化する効果が十分に発現しないほか、樹脂組成物が軟化せず、混練や押出し等の加工性が充分に向上しない。また、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の含有量が150重量部を越えると、樹脂組成物中において、エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体(A)に対する液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の割合が大きくなり過ぎ、可塑化効果が大きくなりすぎてべたつきが生じるほか、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)が樹脂組成物、樹脂組成物を用いて得た成形体あるいは架橋成形体の表面へ析出(ブリード)し、滲み出してしまう場合がある。
【0049】
本発明の樹脂組成物においては、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)のエチレンから導かれる構造単位の含有率(Eaモル%)(ただし、エチレンから導かれる構造単位の含有率と、α−オレフィンから導かれる構造単位の含有率の合計を100モル%とした場合の値である)が40〜90モル%であり、軟化剤として作用する液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のエチレンから導かれる構造単位の含有率(Ebモル%)が30〜90モル%であって、その組成が近接していることにより、両者の相容性が改善されるため、得られる樹脂組成物のガラス転移点(Tg)を低温化する効果が大きくなり、また液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の滲み出しが顕著に抑制される。
【0050】
本発明の樹脂組成物においては、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)のエチレンから導かれる構造単位の含有率(Eaモル%)(ただし、エチレンから導かれる構造単位の含有率と、α−オレフィンから導かれる構造単位の含有率の合計を100モル%とした場合の値である)と、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のエチレンから導かれる構造単位の含有率(Ebモル%)とが、次の関係式を満たすことが好ましい。
−10≦Ea−Eb≦10
次の関係式を満たすことがさらに好ましい。
−5≦Ea−Eb≦5
EaとEbが上記の関係を満たすと、エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体(A)と、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)とが特に高い親和性を示すため、樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を低温化する効果が大きくなり、また樹脂組成物から液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)成分が滲み出すブリードアウト等がより発生しにくくなるため好ましい。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、動的粘弾性測定によって得られるガラス転移温度(Tg)が、−70〜−30℃であることが好ましく、−60〜−40℃であることがより好ましく、−55〜−45℃であることがさらに好ましい。動的粘弾性測定によって得られる樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)が−30℃を上回ると、低温特性が顕著に悪化するため好ましくない。
【0052】
本発明の樹脂組成物において、動的粘弾性測定によって得られるガラス転移温度(Tg)は、−70℃を上回れば実用上は十分である。
本発明において、樹脂組成物の動的粘弾性測定によるガラス転移点(Tg)は、以下の方法によって測定される:
動的粘弾性測定装置を用いて、1Hzの周波数で捻り方向の変形を1%加えながら、−60〜150℃まで、昇温速度3℃/分の速度で昇温しながら動的粘弾性の温度依存性を測定し、ガラス転移温度に起因する損失正接(tanδ)が極大値をとる温度をガラス転移点とした。
【0053】
なお一般的に、高級α−オレフィンをオリゴメリゼーションしたものが合成潤滑油基材として工業的に使用されており、ゴム組成物の低硬度化への適用も考えられるが、このような高級ポリ−α−オレフィンは連続したメチレン鎖を持たないため、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)とは構造が類似していない。このため高級ポリ−α−オレフィンは、本発明に係る液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)よりもエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)との親和性が低く、樹脂組成物の成分として用いた場合には樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を低温化する効果が小さく、ブリードアウト等の滲み出しがより発生し易いと考えられる。上記のような高級ポリ−α−オレフィンは、米国特許第3,780,128号公報、米国特許第4,032,591号公報、特開平1−163136号公報に記載のように酸触媒によるオリゴメリゼーションにより得ることがきる。また、メタロセン化合物を含む触媒系を用いる方法等によっても得ることができる。かかる高級ポリ−α−オレフィンは市販されており、エクソンモービルケミカル社「Spectrasyn」「Spectrasyn Plus」「Spectrasyn Elite」「Spectrasyn Ultra」、Ineos社「Durasyn」、Chemtura社「Synton」などがある。
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、架橋剤(C)およびその他の成分を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0054】
架橋剤(C)
本発明の樹脂組成物は、架橋(加硫)を行う用途に用いられることも好ましく、本発明の樹脂組成物には架橋剤(C)が配合されていることも好ましい。架橋剤(C)としては、有機過酸化物や、イオウおよびイオウ化合物を用いることができる。
【0055】
・有機過酸化物
有機過酸化物としては、通常ゴムの過酸化物架橋に使用される化合物を特に制限なく用いることができる。
【0056】
具体的には、たとえば、ジクミルパーオキサイド、ジ-t- ブチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシン)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-モノ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキサン、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類;
t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシビバレート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシフタレート等のパーオキシエステル類;
ジシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0057】
これらの中でも、半減期1分を与える温度が130℃〜200℃の範囲にある有機過酸化物が好ましく、特に、ジクミルパーオキサイド、ジ-t- ブチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイドなどの有機過酸化物が好ましい。これらの有機過酸化物は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
【0058】
本発明の樹脂組成物中において、有機過酸化物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100gに対して、通常0.0003〜0.05mol、好ましくは0.001〜0.03molの割合で使用されるが、要求される物性に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0059】
架橋剤(C)として有機過酸化物を使用するときは、架橋助剤を併用することが好ましい。架橋助剤としては、具体的には、イオウ;p−キノンジオキシム等のキノンジオキシム系化合物;ポリエチレングリコールジメタクリレート等のメタクリレート系化合物;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等のアリル系化合物;その他マレイミド系化合物;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。このような架橋助剤は、使用する有機過酸化物1モルに対して、0.5〜2モル、好ましくは、およそ等モルの量で用いられる。
【0060】
・イオウおよびイオウ化合物
イオウとしては、具体的には、粉末イオウ、沈降イオウ、コロイドイオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ等が挙げられる。イオウ化合物としては、具体的には、塩化イオウ、二塩化イオウ、高分子多硫化物、及び架橋(加硫)温度で活性イオウを放出して架橋するイオウ化合物、例えばモルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン等が挙げられる。これらの中ではイオウが好ましい。
【0061】
これらのイオウまたはイオウ化合物は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
本発明の樹脂組成物中において、イオウまたはイオウ化合物は、前記エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の割合で用いられるが、要求される物性に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0062】
イオウまたはイオウ化合物は、有機過酸化物と比較して、酸素雰囲気下でも架橋工程を実施することができるため、設備面で加工が容易であり好ましい。
また、架橋剤(C)としてイオウまたはイオウ化合物を使用するときは、架橋促進剤(加硫促進剤)を併用することが好ましい。イオウまたはイオウ化合物とともに用いる架橋促進剤としては、具体的には、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(OBS)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系化合物;2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(4−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系化合物;ジフェニルグアニジン(DPG)、トリフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン(DOTG)、オルソトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレ−ト等のグアニジン系化合物;アセトアルデヒド−アニリン縮合物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン(H)、アセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアミン又はアルデヒド−アンモニア系化合物;2−メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;チオカルバニリド、ジエチルチオウレア(EUR)、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレア等のチオウレア系化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(TRA)等のチウラム系化合物;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオカルバミン酸塩;ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のキサントゲン酸塩;亜鉛華(酸化亜鉛)等の化合物が挙げられる。これらの架橋促進剤は、前記エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部の割合で用いられる。
【0063】
その他の成分
本発明の樹脂組成物は、所望の性能等に応じて、一般のゴム組成物に配合される公知の各種配合剤などのその他の成分を、本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。配合剤としては、例えば、軟化剤、加硫助剤、老化防止剤、加工助剤、アルコキシシラン化合物、架橋剤、架橋助剤、無機フィラー、活性剤、反応抑制剤、着色剤、分散剤、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、防カビ剤、素練促進剤、粘着付与剤、分散染料や酸性染料を代表例とする各種染料、無機・有機顔料、界面活性剤、および塗料などの配合剤、また必要に応じて、発泡剤、発泡助剤などの発泡のための化合物、脱泡剤を挙げることができ、これらを本発明の目的を損なわない範囲で適宜選定し、適切な配合量で配合することができる。
【0064】
・軟化剤
軟化剤としては、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)に加えて、滲み出しが損なわれない範囲で通常ゴムに使用される軟化剤を併用することができる。具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;トール油;サブ;蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸および脂肪酸塩;石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質などを挙げることができる。中でも石油系軟化剤が好ましく用いられ、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。これらの軟化剤の種類および配合量は、樹脂組成物から製造されるゴムローラーの所望の性能等により適宜選択できるが、その配合量は通常、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、150重量部以下、好ましくは最大130重量部以下である。
【0065】
・老化防止剤
老化防止剤を使用すれば、さらに材料寿命を長くすることが可能である。このことは、通常のゴムの場合と同様である。
【0066】
本発明の樹脂組成物に含まれてもよい老化防止剤としては、具体的には、フェニルナフチルアミン、4,4'−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N'−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等の芳香族第二アミン系安定剤;2,6−ジ−t− ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス− [メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のフェノール系安定剤;ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系安定剤;2−メルカプトベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系安定剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系安定剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系安定剤などが挙げられる。これらの老化防止剤は、単独あるいは2種以上が併用して用いられる。このような老化防止剤は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0067】
・加工助剤
加工助剤としては、一般のゴム組成物に配合される化合物を特に問題なく使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸塩、リシノール酸エステル、ステアリン酸エステル、パルチミン酸エステル、ラウリン酸エステル等の高級脂肪酸エステル類などが挙げられる。本発明のゴムローラー用樹脂組成物において、このような加工助剤は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0068】
・無機フィラー
本発明の樹脂組成物には、任意成分として、本発明の目的を損なわない範囲で、ゴム補強剤や無機充填剤などの公知の無機フィラーが含まれていてもよい。
【0069】
ゴム補強剤は、架橋ゴムの引張強度、引き裂き強度、耐摩耗性などの機械的性質を高める効果がある。このようなゴム補強剤としては、特に限定されないが、たとえば、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラック、グラファイト、シランカップリング剤などにより表面処理が施されているこれらのカーボンブラック、微粉ケイ酸、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化カルシウムなどの酸化物系フィラー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物系フィラー、珪藻土、石灰岩などの堆積岩系フィラー、カオリナイト、モンモリオナイトなどの粘土鉱物系フィラー、フェライト、鉄、コバルトなどの磁性系フィラー、銀、金、銅、合金などの導電性フィラーなどが挙げられる。
【0070】
シリカとしては、煙霧質シリカ、沈降性シリカなどが挙げられる。これらのシリカは、ヘキサメチルジシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の反応性シランあるいは低分子量のシロキサン等で表面処理されていてもよい。また、シリカの比表面積(BET法)は、特に限定されないが、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは100〜400m2/gである。
【0071】
ゴム補強剤の種類および配合量は、その用途により適宜選択できるが、通常、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、最大で300重量部、好ましくは200重量部以下である。
【0072】
また、無機充填剤としては、特に限定されないが、たとえば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレーなどが挙げられる。
無機充填剤の種類および配合量は、その用途により適宜選択できるが、通常、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜10,000重量部である。
これらの無機フィラーは、目的に応じて、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0073】
・発泡剤および発泡助剤
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、通常ゴムに使用される発泡剤および発泡助剤が配合されていていてもよく、本発明に係る架橋成形体は、発泡剤および発泡助剤を含有する樹脂組成物を用いて、成形、発泡、架橋を行うことで得ることもできる。
【0074】
発泡剤としては、具体的には、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミド、N,N'− ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホルニルアジド等のアジド化合物などが挙げられる。これらの発泡剤は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、0.5〜30重量部、好ましくは1〜20重量部の割合で用いられる。
【0075】
必要に応じて、発泡剤と併用される発泡助剤は、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの作用をする。このような発泡助剤としては、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、しゅう酸などの有機酸、尿素またはその誘導体などが挙げられる。これらの発泡助剤は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0076】
・脱泡剤
樹脂組成物を架橋する場合、内包する水分により気泡ができたり、発泡度が異なったりすることがある。本発明の樹脂組成物には、これらを防止するために、酸化カルシウム等の脱泡剤が添加されていてもよい。脱泡剤は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、通常20重量部以下、好ましくは10重量部以下の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0077】
樹脂組成物および架橋成形体の調製
本発明の樹脂組成物は、上述したエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)、および必要に応じてその他の成分を、公知の方法で配合することにより調製することができる。
【0078】
本発明の樹脂組成物の調製と、成形体、架橋成形体製造用の予備成形体、あるいは本発明の架橋成形体の製造は、連続して行ってもよく、また、樹脂組成物を調製した後、該樹脂組成物を用いて別途、成形、架橋を行ってもよい。
【0079】
本発明に係る樹脂組成物から架橋物を製造する場合には、通常一般のゴムを架橋するときと同様に、未加硫の樹脂組成物(配合ゴム)を一度調製し、次いで、この配合ゴムを意図する形状に成形した後に架橋を行なえばよい。
【0080】
本発明に係る樹脂組成物は、たとえば次のような方法で調製することができる。すなわち、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類により、上述したエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)と、必要に応じて配合剤等を、80〜170℃の温度で3〜10分間混練した後、オープンロールのようなロール類、あるいはニーダーを使用して、所望により架橋剤(C)、さらに必要に応じて架橋促進剤または架橋助剤、発泡剤等を追加混合し、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。
【0081】
また、インターナルミキサー類での混練温度が低い場合には、上記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)、液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)、必要に応じて配合される、軟化剤などの配合剤、架橋剤(C)、加硫促進剤または加硫助剤、発泡剤、着色剤、分散剤、難燃剤などを同時に混練してもよい。
【0082】
上記のようにして調製された架橋可能な本発明に係る樹脂組成物は、押出成形機、カレンダーロール、プレス、インジェクション成形機、トランスファー成形機など種々の成形法より、意図する形状に成形され、成形と同時にまたは成型物を架橋槽内に導入し、架橋することができる。
【0083】
架橋は通常、120〜270℃の温度で1〜30分間加熱することにより行うことができる。このように熱による架橋で架橋成形体を得る場合には、樹脂組成物が架橋剤(C)を含有していることが好ましい。また架橋は、必要に応じて成形した未架橋の樹脂組成物に、放射線を所定量照射して行うこともできる。放射線としてはα線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線などが用いられる。このうちコバルト-60のγ線、電子線が好ましく用いられる。架橋を電子線などの放射線の照射により行う場合には、樹脂組成物は架橋剤(C)を必ずしも含有していなくてもよい。
【0084】
このような架橋の段階は金型を用いてもよいし、また金型を用いないで架橋を実施してもよい。金型を用いない場合は成形、架橋の工程は通常連続的に実施される。架橋槽における加熱方法としては、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチーム、LCM(熱溶融塩槽)などの加熱槽を用いることができる。
【0085】
架橋成形体
本発明の架橋成形体は、上述した本発明の樹脂組成物を架橋させて得られる。本発明の架橋成形体は、上述した本発明の樹脂組成物から形成されることにより、成形性に優れるとともに、低温特性に優れ、しかもブリードアウトなどを生じにくい。
【実施例】
【0086】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、各物性は、以下の方法により測定あるいは評価した。
【0087】
[エチレン含量、プロピレン含量、ブロックネス(B値)]
製造例で得たエチレン・プロピレン共重合体中のエチレンから導かれる構造単位の含有率(エチレン含量)、プロピレンから導かれる構造単位の含有率(プロピレン含量)およびブロックネス(B値)は、13C−NMRにより以下の装置および条件により測定した。
【0088】
日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒,試料濃度55mg/0.6mL、測定温度120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅は4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。
【0089】
B値は、共重合モノマー連鎖分布のランダム性を示すパラメータであり、下式により算出することができる。
B値=POE/(2PO・PE)
(式中、PEおよびPOは、それぞれエチレン・α−オレフィンランダム共重合体中に含有される、エチレン成分のモル分率およびα−オレフィン成分のモル分率であり、POEは、全ダイアド(dyad)連鎖数に対するエチレン・α−オレフィン交互連鎖数の割合である。)
【0090】
エチレン含量、プロピレン含量、PE、POおよびPOE値は、上記のようにして測定された13C−NMRスペクトルから、G.J.Ray(Macromolecules,10,773(1977))、J.C.Randall(Macro−molecules,15,353(1982))、K.Kimura(Polymer,25,4418(1984))らの報告に基づいて求めることができる。
【0091】
[動粘度]
ASTM D 445に基づき、キャノン社製全自動粘度計CAV−4を用いて測定を行った。
【0092】
[分子量(Mw、Mn)および分子量分布(Mw/Mn)]
(A法):エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)における測定
分子量は、液体クロマトグラフ:Waters製ALC/GPC150−C plus型(示唆屈折計検出器一体型)を用い、カラムとして東ソー株式会社製GMH6−HT×2本およびGMH6−HTL×2本を直列接続し、移動相媒体としてo−ジクロロベンゼンを用い、流速1.0ml/分、140℃で測定した。
得られたクロマトグラムを、公知の方法によって、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析することで、Mw/Mn値を算出した。1サンプル当たりの測定時間は60分であった。
(B法):液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)における測定
下記の液体クロマトグラフィー用ポンプ、サンプリング装置、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)用カラム、示差屈折率検出器(RI検出器)を連結し、GPC測定を行い決定した。
液体クロマトグラフィー装置:Waters社製515 HPLC Pump
サンプリング装置:Waters社製717plus Autosampler装置
移動相:THF(安定剤含有、液体クロマトグラフィー用グレード)
カラム:PL社製MIXED-D 1本とPL社製500Å 1本とを直列連結した。
サンプル濃度:5mg/mL
移動相流速:1.0mL/分
測定温度:常温
検量線用標準サンプル:PL社製EasiCal PS-1
【0093】
[ヨウ素価]
ヨウ素価はJIS K0070に準じて測定した。
【0094】
[135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]]
極限粘度[η]〔dl/g〕は、離合社製の全自動極限粘度計を用いて、温度:135℃、測定溶媒:デカリンにて測定した。
【0095】
[融解熱量]
Perkin Elmer社製のDSC測定装置を用い、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温して200℃で5分間保持したのち、10℃/分で-150℃まで降温し次いで10℃/分で昇温する際の発熱・吸熱曲線より求めた。
【0096】
〔ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]〕
ムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、JIS K6300に準拠して、100℃の条件下、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型)を用いて測定した。
【0097】
[ガラス転移温度(Tg)]
・A法:示差走査熱量測定(DSC)によるTg(液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)における測定)
セイコーインスツルメント社X−DSC−7000を用い、 簡易密閉できるアルミサンプルパンに約8mg液状エチレン・α−オレフィン共重合体(B)入れてをDSCセルに配置し、DSCセルを窒素雰囲気下にて室温から、150℃まで10℃/分で昇温し、次いで、150℃で5分間保持した後、10℃/分で降温し、DSCセルを−100℃まで冷却した(降温過程)。次いで、100℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温し、昇温過程で得られるエンタルピー曲線の変曲点での接線の交点をガラス転移温度(Tg)とした。ガラス転移温度(Tg)の求め方はJIS K7121 9.3に基づいて行った。なお、この測定法をDSC法ということもある。
【0098】
・B法:動的粘弾性測定によるTg(樹脂組成物、架橋成形体における測定)
プレス成形によって得た厚さ2mmのプレスシート用い、さらに動的粘弾性測定に必要な5mm幅の短冊片を切り出した。TAインスツルメント社製ARES−G3を用いて、1Hzの周波数で捻り方向の変形1%加えながら−60〜100℃まで、昇温速度3℃/分の速度で昇温しながら動的粘弾性の温度依存性を測定し、ガラス転移温度損失正接(tanδ)が極大値をとる温度をガラス転移温度とした。なお、この測定法をtanδ法ということもある。
【0099】
[圧縮永久歪]
厚さ12.5mmt、直径30mmφの円柱状の加硫ブロックを架橋成形体サンプルとして用い、JIS K6262に準じて、−40℃で25%圧縮し22時間保持後、荷重を取り除き30分後に残留歪を測定した。
以下の実施例および比較例において、樹脂成分としては次のものを用いた。
【0100】
<エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)>
[製造例1](エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(a−1)の製造)
容積300LのSUS製攪拌機つき反応器を用いて、温度を80℃に保ち、液レベルを100Lとして、ヘキサンを26.8kg/h、エチレン(C2)を3.9kg/h、プロピレン(C3)を5.4kg/h、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)を1.1kg/hの速度で、水素を44NL/hの速度で、主触媒として[N−(1,1−ジメチルエチル)−1,1−ジメチル−1−[(1,2,3,3A,8A−η)−1,5,6,7−テトラヒドロ−2−メチル−S−インダセン−1−yl]シランアミネート(2−)−κN][(1,2,3,4−η)−1,3−ペンタジエン]−チタニウムを0.07mmol/h、共触媒として(C653CB(C654を0.28mmol/h、有機アルミニウム化合物としてTIBAを1.8mmol/hの速度で連続的に反応器へ供給し、エチレンとプロピレンと5−エチリデン−2−ノルボルネンとの三元共重合体(a−1)の重合液を得た。
【0101】
重合圧力は2.1MPa(ゲージ圧)とした。
得られた重合液をフラッシュ乾燥により脱溶媒し、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(a−1)を得た。得られたポリマーの物性は以下の物性を示した。エチレン由来の構造単位の含有率57モル%、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]=1.64dl/g、ヨウ素価=16、Mw/Mn=2.4、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]=45。
【0102】
[製造例2](エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(a−2)の製造)
製造例1のエチレン・プロピレン・ジエン共重合体(a―1)と同様の方法で共重合体を製造するに当たり、エチレン、プロピレン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、水素の流量を適宜調整することで、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(a−2)を得た。得られたポリマーの物性は以下の物性を示した。エチレン由来の構造単位の含有率75モル%、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]=3.2dl/g、ヨウ素価=25、Mw/Mn=2.6、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]=20。
【0103】
<液状エチレン−プロピレン共重合体(B)>
[製造例3](液状エチレン・プロピレン共重合体(b−2)の製造)
充分窒素置換した容量2リットルの攪拌翼付連続重合反応器に、脱水精製したヘキサン1リットルを張り、96mmol/Lに調整した、エチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C251.5・Cl1.5)のヘキサン溶液を500ml/hの量で連続的に1時間供給した後、更に触媒として16mmol/lに調整したVO(OC25)Cl2のヘキサン溶液を500ml/hの量で、ヘキサンを500ml/hの量で連続的に供給した。一方重合器上部から、重合液器内の重合液が常に1リットルになるように重合液を連続的に抜き出した。次にバブリング管を用いてエチレンガスを35L/hの量で、プロピレンガスを35L/hの量で、水素ガスを80L/hの量で供給した。共重合反応は、重合器外部に取り付けられたジャケットに冷媒を循環させることにより35℃で行った。
【0104】
これにより、エチレン・プロピレン共重合体を含む重合溶液が得られた。得られた重合溶液は、塩酸で脱灰した後に、大量のメタノールに投入して、エチレン・プロピレン共重合体を析出させた後、130℃で24時間減圧乾燥を行い、液状エチレン・プロピレン共重合体(b−2)を得た。得られた液状エチレン・プロピレン共重合体(b−2)の分析結果を表1に示す。
【0105】
[製造例4〜12]
製造例3において、エチレンガスの供給量、プロピレンガスの供給量、水素ガスの供給量を適宜調整することにより、表1および表2に記載のエチレン・プロピレン共重合体(b−1)および(b−3)〜(b’−10)を得た。得られた各エチレン・プロピレン共重合体の分析結果を表1および表2に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
[実施例1]
東洋精機社製ラボプラストミル(2軸バッチ式溶融混繊装置)を用いて、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(a−1)100重量部に対して、軟化剤として液状エチレン・プロピレン共重合体(b−1)を50重量部添加し、設定温度120℃で、樹脂仕込み量50g(装置バッチ容積=60cm3)、50rpm、15分間の条件下で溶融混練した。得られた樹脂組成物を、予熱200℃、5分間、加圧200℃、3分間、冷却10℃、5分間の条件でプレス成形し、シート状の樹脂組成物を得た。
【0109】
得られた樹脂組成物について、上記B法(動的粘弾性測定)によりガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表3に示す。また、後述する比較例1とのガラス転移温度の差を表3に併せて示す。
【0110】
[比較例1]
軟化剤を添加しないこと以外は実施例1と同条件で樹脂組成物を調製し、実施例1と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0111】
[実施例2、比較例2〜4]
表3に示すとおりに軟化剤の種類を変更し、それ以外は実施例1と同条件で樹脂組成物を調製し、実施例1と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0112】
【表3】
【0113】
軟化剤を添加していない比較例1とのガラス転移温度差ΔT(℃)は、軟化剤によるガラス転移温度の変化を示すものであって、表3に示す結果より、本発明で定義する所定の極限粘度[η]および100℃における動粘度を満たす液状エチレン・プロピレン共重合体(B)を軟化剤として用いた実施例1および2ではこの値の絶対値が大きく、所定の極限粘度[η]および100℃における動粘度を示さない軟化剤を用いた比較例2〜4では小さいものとなっている。これより、実施例1および2では、樹脂組成物のガラス転移温度の軟化剤による低温化効果が比較例と比較してはるかに大きいことがわかる。
【0114】
[実施例3]
実施例1において、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(a−1)に代えて、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(a−2)を軟化剤として用いたこと以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。結果を表4に示す。また、後述する比較例5とのガラス転移温度の差を表4に併せて示す。
【0115】
[比較例5]
軟化剤を添加しないこと以外は実施例3と同条件で樹脂組成物を調製し、実施例3と同様に評価した。評価結果を表4に示す。
【0116】
[実施例4〜9、比較例6〜10]
表4および表5に示すとおりに軟化剤の種類を変更し、それ以外は実施例3と同条件で樹脂組成物を調製し、実施例3と同様に評価した。評価結果を表4および表5に示す。
【0117】
[比較例11]
表5に示すとおりに軟化剤をパラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製、ダイアナプロセスオイルPW−380,100℃動粘度=30mm2/s、40℃動粘度=380mm2/s)に変更し、それ以外は実施例3と同条件で樹脂組成物を調製し、実施例3と同様に評価した。評価結果を表5に示す。
【0118】
【表4】
【0119】
【表5】
【0120】
軟化剤を添加していない比較例5とのガラス転移温度差ΔT(℃)は、軟化剤によるガラス転移温度の変化を示すものであって、表4および表5に示す結果より、本発明で定義する所定の極限粘度[η]および100℃における動粘度を満たす液状エチレン・プロピレン共重合体(B)を軟化剤として用いた実施例4〜9では、この差がいずれも5℃以上と大きく、所定の極限粘度[η]および100℃における動粘度を示さない軟化剤を用いた比較例5〜10ではいずれも差が4℃以下と小さいものとなっている。これより、実施例4〜9では、樹脂組成物のガラス転移温度の軟化剤による低温化効果が比較例と比較し大きいことがわかる。また、比較例11より、一般に軟化剤として用いられるプロセスオイルでは、樹脂組成物のガラス転移温度の低温化効果が小さいことがわかる。これは、プロセスオイル自体が低温で結晶化するろう分を含むためと考えられる。
【0121】
[実施例10]
MIXTRON BB MIXER(神戸製鋼所社製、BB−4型、容積2.95L、ローター4WH)を用いて、上述のエチレン・プロピレン・ジエン共重合体(a−1)100重量部に対して、軟化剤として液状エチレン・プロピレン共重合体(b−2)を40重量部、加硫助剤として亜鉛華「META−Z102」(商品名;井上石灰工業株式会社製)を5重量部、加工助剤としてステアリン酸を1重量部、補強剤としてカーボンブラック「旭#70」(商品名;旭カーボン株式会社製)50重量部添加し、混練した。混練条件は、ローター回転数が50rpm、フローティングウェイト圧力が3kg/cm2、混練時間が5分間で行った。
【0122】
得られた組成物に、加硫促進剤として2-メルカプトベンゾチアゾール「サンセラーTT」(商品名;三新化学工業(株)製)を1重量部、テトラメチルチウラムジスルフィド「サンセラーTT」(商品名;三新化学工業(株)製)を1重量部、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド「サンセラーTRA」(商品名;三新化学工業(株)製)を1重量部、加硫剤として硫黄を1重量部添加し、6インチオープンロール(前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)で混練しシート状に分出し後、加熱プレスを用い170℃で10分間加熱し加硫することで、架橋成形体として、厚さ12.5mmt、直径30mmφの円柱状の加硫ブロック、および厚さ2.0mmtの加硫シートを得た。
この加硫ブロックを用いて上記の通り圧縮永久歪の測定を、加硫シートを用いてガラス転移温度の測定をそれぞれ実施した。結果を表6に示す。
【0123】
[実施例11、比較例12および13]
実施例10において、液状エチレン・プロピレン共重合体(b−2)に代えて、表6に示す種類の軟化剤を用いたことの他は、実施例10と同条件で、樹脂組成物、架橋成形体である加硫ブロックおよび加硫シートを調製し、実施例10と同様に各性状を測定した。結果を表6に示す。
【0124】
[比較例14]
実施例10において、液状エチレン・プロピレン共重合体(b−2)に代えて、表6に示すとおり、高級ポリα−オレフィン(PAO)(エクソンモービルケミカル製、Spectra Syn(商標)100、100℃動粘度=100mm2/s)を軟化剤として用いたことの他は、実施例10と同条件で樹脂組成物、架橋成形体である加硫ブロックおよび加硫シートを調製し、実施例10と同様に各性状を測定した。結果を表6に示す。
【0125】
[比較例15]
実施例10において、液状エチレン・プロピレン共重合体(b−2)に代えて、表6に示すとおり、パラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製、ダイアナプロセスオイルPW−380,100℃動粘度=30mm2/s、40℃動粘度=380mm2/s)を軟化剤として用いたことの他は、実施例10と同条件で樹脂組成物、架橋成形体である加硫ブロックおよび加硫シートを調製し、実施例10と同様に各性状を測定した。結果を表6に示す。
【0126】
【表6】
【0127】
表6に示す結果より、本発明で定義する要件を満たすエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と軟化剤とを含む樹脂組成物から架橋成形体を製造する場合において、本発明で定義する要件を満たす液状エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を軟化剤として用いた実施例10および11では、架橋成形体のガラス転移温度が、軟化剤として本発明で定義する所定の極限粘度[η]および100℃における動粘度を満たさない液状エチレン・α-オレフィン共重合体を用いた比較例12,13、高級ポリα−オレフィン(PAO)を用いた比較例14、およびプロセスオイルを用いた比較例15と比較して低く、架橋成形体が低温柔軟性に優れるものであることがわかる。これより、本発明で定義する要件をすべて満たす液状エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を軟化剤として含む本発明の樹脂組成物を用いた場合には、架橋成形体を得た場合においても、ガラス転移温度の低下が大きく、ガラス転移温度の低温化効果を十分に発揮していることが示されている。また本発明で定義する所定の極限粘度[η]および100℃における動粘度を満たさない液状エチレン・α-オレフィン共重合体、高級ポリα−オレフィン(PAO)あるいはプロセスオイルを軟化剤とした場合には、架橋成形体のガラス転移温度の低温化効果が小さいことが示されている。さらに、実施例10および11では、架橋成形体の−40℃圧縮永久歪が小さく、架橋成形体が低温特性に優れることが示されている。
【0128】
[実施例12および13、比較例16および17]
実施例10において、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(EPDM)としてエチレン・プロピレン・ジエン共重合体(a−1)に代えてエチレン・プロピレン・ジエン共重合体(a−2)を用い、軟化剤の種類を表7に示すとおりとしたことの他は、実施例10と同条件で樹脂組成物および架橋成形体である加硫シートを調製し、得られた加硫シートを用いて実施例10と同様にガラス転移温度を測定した。結果を表7に示す。
【0129】
[比較例18]
実施例10において、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(EPDM)としてエチレン・プロピレン・ジエン共重合体(a−1)に代えてエチレン・プロピレン・ジエン共重合体(a−2)を用い、軟化剤として液状エチレン・プロピレン共重合体(b−2)に代えて高級ポリα−オレフィン(PAO)(エクソンモービルケミカル製、Spectra Syn(商標)100、100℃動粘度=100mm2/s)を用いたことの他は実施例10と同条件で樹脂組成物および架橋成形体である加硫シートを調製し、得られた加硫シートを用いて実施例10と同様にガラス転移温度を測定した。結果を表7に示す。
【0130】
[比較例19]、
実施例10において、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(EPDM)としてエチレン・プロピレン・ジエン共重合体(a−1)に代えてエチレン・プロピレン・ジエン共重合体(a−2)を用い、軟化剤として液状エチレン・プロピレン共重合体(b−2)に代えてパラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製、ダイアナプロセスオイルPW−380,100℃動粘度=30mm2/s、40℃動粘度=380mm2/s)を用いたことの他は実施例10と同条件で樹脂組成物および架橋成形体である加硫シートを調製し、得られた加硫シートを用いて実施例10と同様にガラス転移温度を測定した。結果を表7に示す。
【0131】
【表7】
【0132】
上記表7より、本発明で定義する要件を満たすエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)に対して、軟化剤を種々変更して添加した樹脂組成物から架橋成形体を製造した場合、軟化剤として本発明で定義する要件を満たす液状エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を用いた実施例12および13では、架橋成形体のガラス転移温度が、軟化剤として本発明で定義する所定の極限粘度[η]および100℃における動粘度を満たさない液状エチレン・α-オレフィン共重合体を用いた比較例16,17、高級ポリα−オレフィン(PAO)を用いた比較例18、およびプロセスオイルを用いた比較例19と比較して低く、架橋成形体が低温柔軟性に優れるものであることがわかる。
【0133】
上記表6および表7より、本発明で定義する要件を満たすエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と軟化剤とを含む樹脂組成物から架橋成形体を製造する場合において、本発明で定義する要件を満たす範囲で共重合体(A)の種類を変更しても、本発明で定義する要件をすべて満たす液状エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を軟化剤とすると、架橋成形体のガラス転移温度が充分に低いものとなり、軟化剤による架橋成形体のガラス転移温度の低温化効果が大きく、低温柔軟性を向上させていることがわかる。一方、高級ポリα−オレフィン(PAO)あるいはプロセスオイルを軟化剤とした場合には、架橋成形体のガラス転移温度の低温化効果が小さいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の樹脂組成物およびこれを用いた架橋成形体は、耐候性、耐熱老化性、耐ブリードアウト性、低温柔軟性が必要とされる分野で好適に使用する事が出来る。例えば、各種ダンパープーリー、グラスランチャンネル、ウェザーストリップスポンジ、ドアオープニングトリムなどの自動車用部品、船舶用部品、土木建築用部品、医療用部品、電気・電子用部品、シール製品、シート、シューズ、タイヤサイドウォール、タイヤチューブ、被覆電線、電気絶縁部品、家庭用ゴム製品、レジャー用部品、コーティング材または接着剤が挙げられる。
図1
図2