(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、多層グラフェン、炭素数12〜30の炭化水素基とノニオン性基を有する重合体、およびケトン系有機溶媒を含んでなる、本発明の多層グラフェン分散液について、説明する。
【0016】
[多層グラフェン]
本発明において、多層グラフェンとは、グラフェンシートが比較的薄く積層したものであり、すなわち、グラフェンシートが層状に1〜300層積層した構造体をいい、そのため従来の黒鉛に比較して大きなファンデアワルス力を有する。グラフェンシートの積層数は、導電性や熱伝導性などの観点から、1〜100層であることが好ましく、1〜30層であることがより好ましく、1〜10層がさらに好ましく、1〜5層がよりさらに好ましい。なお、本発明において、「多層グラフェン」とは、便宜上、上述のとおり、1層からなるグラフェンシートをも含む意味である。グラフェンシートの積層数は、TEM(透過型電子顕微鏡)等を用いて確認できる。
【0017】
多層グラフェンの大きさは、導電性や熱伝導性などの観点から、径あるいは幅が好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは100μm以下であり、厚さは、導電性や熱伝導性などの観点から、好ましくは1層からなるグラフェンシートの厚みに相当する0.34nm以上であり、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは30nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下であり、3.5nm以下がよりさらに好ましい。多層グラフェンの大きさは、SEM(走査型電子顕微鏡)やTEM等を用いて確認できる。
【0018】
多層グラフェンの形状は、導電性や熱伝導性などの観点から、平板状であることが好ましい。但し、積層数が極めて少ない(例えば、厚さが0.34nm〜数nm)場合には、平板状の形態であっても、高い屈曲性を有していることから、常態において、該平板状のシートが変形した形態、例えば、波板状、皺状、筒状、らせん状、球状、碗状、折り重ね状などの形態をとり得るものである。
【0019】
本発明において、多層グラフェンは、前記用途に好適に使用するために、炭素純度90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上がよりさらに好ましい。炭素純度は従来公知の元素分析法で測定でき、本明細書においては、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を使用した。
【0020】
[多層グラフェンの製造方法]
本発明において、多層グラフェンは、従来公知のいかなる方法により製造したものでも差し支えないが、これを効率よく製造する方法としては、例えば、特許文献2に開示されている、熱間静水圧(または等方圧)加圧(すなわち、HIP処理)下での気相成長法(すなわち、CVD法)(以下、InALA法)が挙げられる。該方法によれば、本発明の多層グラフェンの原料となる「多層グラフェン集合体」を得ることができる。
【0021】
(InALA法)
InALA法とは、一般的には熱分解CVD装置、プラズマCVD装置などを使用して基板表面に反応気体を供給してなされるCVD反応を、HIP装置を利用して黒鉛坩堝容器内の仮焼原料周囲に発生する反応気体領域にて実施することを特徴とするものである。具体的には、特許文献2に記載されている方法を用いて、多層グラフェン集合体(多層グラフェン塊)を製造する。得られる多層グラフェン塊は、炭素純度として、少なくとも90質量%を上回るものである。
【0022】
[炭素数12〜30の炭化水素基とノニオン性基を有する重合体]
本発明の多層グラフェン分散液は、炭素数12〜30の炭化水素基とノニオン性基とを有する重合体を含む。本発明において、炭素数12〜30の炭化水素基とノニオン性基とを有する重合体は、多層グラフェンをケトン系有機溶媒に分散するための、分散剤として機能するものである。
【0023】
本発明に係る炭素数12〜30の炭化水素基とノニオン性基を有する重合体の具体的な態様としては、好ましくは、以下のものが挙げられる。
<態様>
前記重合体が下記構成単位(1)および下記構成単位(2)を含んでなるもの
構成単位(1):炭素数12〜30の炭化水素基を有する構成単位
構成単位(2):ノニオン性基を有する構成単位
より具体的には以下の態様1〜3のいずれかであることが好ましい。
<態様1>
前記重合体が下記構成単位(1−a)および構成単位(2−a)を含んでなるもの
構成単位(1−a):炭素数12〜30の炭化水素基を有する単量体由来の構成単位
構成単位(2−a):ノニオン性基を有する単量体由来の構成単位
<態様2>
前記重合体が下記構成単位(1−b)および構成単位(2−a)を含んでなるもの
構成単位(1−b):炭素数12〜30の炭化水素基を導入可能な反応性基を有する単量体由来の構成単位であって、重合反応後、該反応性基に炭素数12〜30の炭化水素基を導入した構成単位
構成単位(2−a):ノニオン性基を有する単量体由来の構成単位
<態様3>
前記重合体が構成単位(1−a)と構成単位(1−b)および構成単位(2−a)を含んでなるもの
構成単位(1−a):炭素数12〜30の炭化水素基を有する単量体由来の構成単位
構成単位(1−b):炭素数12〜30の炭化水素基を導入可能な反応性基を有する単量体由来の構成単位であって、重合反応後、該反応性基に炭素数12〜30の炭化水素基を導入した構成単位
構成単位(2−a):ノニオン性基を有する単量体由来の構成単位
【0024】
これらの態様の中でも、モノマーの入手容易性、本発明の重合体の製造容易性の観点から、態様1が好ましく、本発明の重合体の構造の多様化の観点からは態様2または態様3が好ましい。
【0025】
本発明において、「構成単位」とは、重合体を構成する部分構造であって、原料である単量体(原料モノマー)に対応する部分をいう。したがって、例えば、「炭素数12〜30の炭化水素基を有する構成単位」(上記構成単位(1))は、「炭素数12〜30の炭化水素基を有する単量体に由来するもの」であっても、あるいは、「炭素数12〜30の炭化水素基を導入可能な反応性基を有する単量体を重合後、該反応性基に炭素数12〜30の炭化水素基を導入したもの」のいずれでもよい。
【0026】
本発明に係る炭素数12〜30の炭化水素基とノニオン性基を有する重合体は、不飽和基を有する1種以上の原料モノマーを重合開始剤の存在下、重合することにより得られる。
【0027】
前記不飽和基を有する原料モノマーとしては、重合開始剤により不飽和基が活性化し、結合を形成しながら隣接する不飽和基と反応できる物質であれば限定されない。そのような原料モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ビニルエーテル、ビニルアミン、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルアミン、アリルエステル、スチレン類、オレフィン類、不飽和二塩基酸などが挙げられ、任意の組み合わせを選択することによって該重合体を得ることができる。
【0028】
炭素数12〜30の炭化水素基とノニオン性基を有する重合体が構成単位(1)を含むためには、原料モノマーがその分子構造中に予め炭素数12〜30の炭化水素基を有しているか、あるいは、原料モノマーが重合後に炭素数12〜30の炭化水素基が付与され得るよう予め所定の反応性基を有しているか、あるいは、これら両方(すなわち、「炭素数12〜30の炭化水素基」および「所定の反応性基」)を有していることが好ましい。
【0029】
本発明の炭素数12〜30の炭化水素基とノニオン性基を有する重合体の炭素数12〜30の炭化水素基を有する構成単位部分(構成単位(1))は、構成単位(1−a)または構成単位(1−b)であることが好ましい。本発明の炭素数12〜30の炭化水素基とノニオン性基を有する重合体が構成単位(1−a)を含むためには、炭素数12〜30の炭化水素基を有している原料モノマー(A1)を重合することが好ましく、構成単位(1−b)を含むためには、原料モノマー(A2)を重合した後、その所定の反応性基に、原料化合物(A3)を付加または縮合することが好ましい。
【0030】
前記原料モノマー(A1)とは、炭素数12〜30の炭化水素基を予め有している原料モノマーである。前記原料モノマー(A2)とは、原料モノマー重合後に炭素数12〜30の炭化水素基が付与され得るよう、所定の反応性基を有している原料モノマーである。前記原料化合物(A3)とは、所定の反応性基を有している原料モノマーの重合後、該反応性基に炭素数12〜30の炭化水素基を付与できる化合物である。すなわち、構成単位(1−b)の好ましい態様は、重合体中に原料モノマー(A2)由来の構成単位に含まれる反応性基の一部または全部に原料化合物(A3)を反応させたものである。
【0031】
分子構造に炭素数12〜30の炭化水素基を有している原料モノマー(A1)
分子構造に炭素数12〜30の炭化水素基を有している原料モノマー(A1)としては、例えば、C12〜30アルキル(メタ)アクリル酸エステル、C12〜30アルキル(メタ)アクリルアミド、C12〜30ジアルキル(メタ)アクリルアミド、C12〜30アルキルビニルエーテル、C12〜30アルキルアリルエーテル、C13〜31脂肪酸ビニル、C13〜31脂肪酸アリル、C14〜32のα−オレフィンなどが挙げられ、分散安定性と高濃度化の観点から、C12〜30アルキル(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートが好ましく、ステアリル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0032】
原料モノマー(A1)は2種以上を用いてもよい。
【0033】
モノマー重合後に炭素数12〜30の炭化水素基が付与され得るよう、所定の反応性基を有している原料モノマー(A2)
モノマー重合後に炭素数12〜30の炭化水素基が付与され得るよう、所定の反応性基を有している原料モノマー(A2)は、カルボン酸、スルホン酸などの酸性基を有するモノマーやそれらの酸ハロゲン化物および酸無水物、アミノ基などの塩基性基を有するモノマー、ハロゲン基を有するモノマー、水酸基を有するモノマー、グリシジル基を有するモノマー、イソシアネート基を有するモノマーなどが挙げられ、分散安定性と高濃度化の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびその無水物、ハロゲン化物、あるいは、アリルアミン、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジアリルアミン、あるいはヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸がより好ましい。
【0034】
原料モノマー(A2)は2種以上を用いてもよい。
【0035】
原料モノマー(A2)の重合後に炭素数12〜30の炭化水素基を付与できる原料化合物(A3)
前記原料モノマー(A2)の重合後に炭素数12〜30の炭化水素基を付与できる原料化合物(A3)としては、同一分子内に炭素数12〜30の炭化水素基を有し、かつ、(A2)と反応できる反応性基として、アミノ基などの塩基性基、カルボン酸、スルホン酸などの酸性基およびそれらの酸ハロゲン化物および酸無水物、ハロゲン基、水酸基、グリシジル基、イソシアネート基などを有する化合物が好ましい。
【0036】
原料化合物(A3)としては、分散安定性と高濃度化の観点から、C12〜30アルキルアミン、C12〜30アルケニルアミン、C12〜30ジアルキルアミン、C12〜30ジアルケニルアミン、C12〜30アルキルアルコール、C12〜30アルケニルアルコール、C12〜30脂肪酸が好ましく、ステアリルアミン、オレイルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ステアリン酸、オレイン酸が好ましい。
【0037】
原料化合物(A3)は2種以上を用いてもよい。
【0038】
原料モノマー(A2)と原料化合物(A3)の組み合わせ
前記原料モノマー(A2)と原料化合物(A3)の組み合わせとしては、分散安定性と高濃度化の観点から、カルボン酸を有するモノマーとアミン(反応後の結合基はアミド基またはイミド基)、カルボン酸無水物を有するモノマーとアミン(反応後の結合基はアミド基またはイミド基)、酸無水物を有するモノマーとアルコール(反応後の結合基はエステル基)、アミノ基を有するモノマーと脂肪酸(反応後の結合基はアミド基またはイミド基)などが好ましく、カルボン酸またはカルボン酸無水物を有するモノマーとアミンの組み合わせがより好ましい。
【0039】
具体的には、原料モノマー(A2)として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸および無水マレイン酸のいずれかと、原料化合物(A3)として、ステアリルアミン、オレイルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン、ステアリルアルコール、オレイルアルコールのいずれかとの組み合わせが好ましく、マレイン酸および無水マレイン酸のいずれかと、ステアリルアミン、オレイルアミン、ジステアリルアミンおよびジオレイルアミンのいずれかとの組み合わせがより好ましい。
【0040】
本発明の重合体の構成単位において、分子構造に炭素数12〜30の炭化水素基を有している構成単位(1)の含有率は、分散安定性と高濃度化の観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。また、分散安定性と高濃度化の観点から、90質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0041】
前記構成単位(1)の含有率は、原料モノマー(A2)の重合後に原料化合物(A3)を反応させる場合は、原料モノマー(A2)と原料化合物(A3)の反応後の構造をもとに求められる値である。
【0042】
一方、炭素数12〜30の炭化水素基とノニオン性基を有する重合体が構成単位(2)を含むためには、原料モノマーがその分子構造中に予めノニオン性基を有していることが好ましい。
【0043】
本発明の炭素数12〜30の炭化水素基とノニオン性基を有する重合体のノニオン性基を有する構成単位部分(構成単位(2))は、構成単位(2−a)であることが好ましい。本発明の炭素数12〜30の炭化水素基とノニオン性基を有する重合体が構成単位(2−a)を含むためには、ノニオン性基を有している原料モノマー(B)を重合することが好ましい。
【0044】
ノニオン性基とは、例えば、エーテル基、アミド基、水酸基、あるいは疎水性の低い炭素数1〜10の炭化水素基などであり、イオン結合を形成しない官能基である。
【0045】
分子構造にノニオン性基を有している原料モノマー(B)
分子構造にノニオン性基を有している原料モノマー(B)の具体例としては、例えば、後記の原料モノマー(B1)〜(B4)が挙げられる。
【0046】
該原料モノマー(B)としては、分散安定性と高濃度化の観点から、これら原料モノマー(B1)〜(B4)からなる群から選ばれる1種、または2種以上のモノマーが好ましい。
【0047】
原料モノマー(B1)
CH
2=C(R
1)COO(R
2O)
pR
3 (1)
(式中、R
1は水素原子またはメチル基を示し、R
2はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示し、R
3はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示し、pは平均付加モル数を示し、1〜100、好ましくは1〜60の数である。)
【0048】
一般式(1)で表される原料モノマー(B1)の例としては、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、エトキシポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0049】
原料モノマー(B2)
CH
2=C(R
4)CONR
5R
6 (2)
(式中、R
4は水素原子またはメチル基を示し、R
5とR
6はそれぞれが独立して水素原子、または酸素原子を有する置換基を有していてもよい炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示す。)
【0050】
一般式(2)で表される原料モノマー(B2)の例としては、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、3−メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0051】
原料モノマー(B3)
CH
2=C(R
7)COOR
8 (3)
(式中、R
7は水素原子またはメチル基を示し、R
8は炭素数1〜10の1価の炭化水素基または1つ以上の水酸基を有する炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示す。)
【0052】
一般式(3)で表される原料モノマー(B3)の例としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ジヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ボルニル、などが挙げられる。
【0053】
原料モノマー(B4)
CH
2=C(R
9)−X−R
10 (4)
(式中、R
9は水素原子またはメチル基を示し、XはO、S、CO、OCO、CH
2、フェニレンのいずれかであり、R
10は水素原子または炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示す。ただし、Xがフェニレンの場合は、R
10は水素原子または炭素数1〜4の1価の炭化水素基である。)
【0054】
一般式(4)で表される原料モノマー(B4)の例としては、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、酢酸ビニル、イソブチレン、ジイソブチレン、1−ブテン、1−オクテン、1−デセン、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0055】
モノマー(B1)〜(B4)の中でも、分散安定性と高濃度化の観点から、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、イソブチレン、ジイソブチレン、スチレンが好ましい。
【0056】
本発明の重合体の構成単位において、分子構造にノニオン性基を有している構成単位(2)の含有率は、分散安定性と高濃度化の観点から、10質量%以上であり、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。また、分散安定性と高濃度化の観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
【0057】
本発明の重合体を構成する構成単位としては、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(1)および構成単位(2)以外の構成単位(以下、「その他の構成単位」ということがある)として、下記原料モノマー(C)に由来する構成単位を含んでいてもよい。なお、前記原料モノマー(A2)は前記化合物(A3)が付加することによって構成単位(1)を形成するため、本発明においては、前記化合物(A3)を付加または縮合させない場合や、前記化合物(A3)の付加反応または縮合反応を行っても一部が未反応として残存したものについては、その他の構成単位として扱うものとし、その他の構成単位に供される原料モノマーもまた原料モノマー(C)として扱うものとする。
【0058】
その他の構成単位を形成する原料モノマー(C)
原料モノマー(C)としては、前記原料モノマー(A2)に挙げられる酸性基を有するモノマー、塩基性基を有するモノマー、ハロゲン基を有するモノマー(ただし、原料化合物(A3)の付加または縮合反応に供されないもの)の他、架橋性モノマー、マクロモノマー等が挙げられる。
【0059】
架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリル酸エステル、ビス(メタ)アクリルアミド、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0060】
マクロモノマーとしては、例えば、スチレンマクロマー、(メタ)アクリル酸エステルマクロマー、シリコンマクロマーなどが挙げられる。
【0061】
原料モノマー(C)としては、上記以外にも、例えば、ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0062】
本発明の重合体の構成単位において、構成単位(1)および構成単位(2)の含有率の合計は、本発明の重合体の構成単位総量中、分散安定性と高濃度化の観点から、30〜100質量%が好ましく、50〜100質量%がより好ましく、70〜100質量%がさらに好ましく、80〜100質量%がよりさらに好ましく、実質的に100質量%がよりさらに好ましく、100質量%がよりさらに好ましくい。
【0063】
本発明の重合体の構成単位において、原料モノマー(C)由来の構成単位の含有率の合計は、分散安定性と高濃度化の観点から、0〜70質量%が好ましく、0〜50質量%がより好ましく、0〜30質量%がさらに好ましく、0〜20質量%がよりさらに好ましい。
【0064】
本発明の重合体の好ましい態様の一つとして、構成単位(1)と構成単位(2)のみからなるものが挙げられる。
【0065】
本発明の重合体において、構成単位(1)と構成単位(2)の質量比(構成単位(1)の質量/構成単位(2)の質量)は、分散安定性と高濃度化の観点から、5/95以上が好ましく、10/90以上がより好ましく、20/80以上がさらに好ましく、90/10以下が好ましく、80/20以下がより好ましく、70/30以下がさらに好ましい。
【0066】
なお、本発明の重合体の各々の構成単位の含有率は、重合体製造時のモノマーの仕込み量より計算で求めることができ、また、重合体からは、1H−NMR、13C−NMRおよび熱分解GC−MSを用いた公知の分析方法から求めることができる。
【0067】
本発明の重合体の重量平均分子量は、分散安定性と高濃度化の観点から、1000以上が好ましく、3000以上がより好ましく、5000以上がさらに好ましい。分散安定性と高濃度化の観点から、300000以下が好ましく、200000以下がより好ましく、100000以下がさらに好ましく、70000以下がよりさらに好ましく、50000以下がよりさらに好ましい。重合体の重量平均分子量の測定方法は実施例記載の通りである。
【0068】
[重合体の製造]
本発明に用いる重合体は2種以上のモノマーを用いるが、重合形態はブロック重合型でもランダム重合型でも交互重合型でもよく、分散安定性と高濃度化の観点から、ランダム重合型および交互重合型が好ましい。
【0069】
前記重合体の製造は特に限定されないが、以下の方法で行うことが好ましい。すなわち、溶媒とモノマー混合物および必要に応じて開始剤等の成分を含有する液を加熱および攪拌しながら、前記液に重合開始剤および必要に応じてモノマー等の混合物を滴下して重合する溶液重合法が用いられる。
【0070】
重合の際に使用される重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を用いることができ、例えばアゾ系重合開始剤、ヒドロ過酸化物類、過酸化ジアルキル類、過酸化ジアシル類、ケトンぺルオキシド、無機過酸化物類等が挙げられる。重合開始剤量は、分散安定性と高濃度化の観点から、モノマー成分全質量に対し0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。分散安定性と高濃度化の観点から、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、4質量%以下がさらに好ましい。
【0071】
溶媒としては、この分野において通常使用するものをいずれも用いることができるが、例えば、後述するケトン系有機溶媒を用いることが好ましい。
【0072】
重合反応は、窒素気流下、30〜180℃の温度範囲で行うのが好ましく、反応時間は0.5〜24時間が好ましい。
【0073】
重合の際には、さらに連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤の具体例としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸等のメルカプタン類;チウラムジスルフィド類;不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。連鎖移動剤量は、分散安定性と高濃度化の観点から、モノマー成分全量に対し0〜5質量%が好ましく、0〜2質量%がより好ましく、0〜1質量%がさらに好ましい。
【0074】
[多層グラフェン分散剤組成物]
本発明の多層グラフェン分散剤組成物は、上記本発明の重合体を含んでなるものである。該重合体以外の構成成分としては、溶媒、重合禁止剤、安定化剤などを含むことができる。また、グラフェン分散液を調製する上でこの分野で通常使用される添加剤、例えば、増粘剤、粘性調整剤、樹脂、硬化剤、難燃剤、消泡剤、紫外線吸収剤などを含むことができる。溶媒としては、後記ケトン系有機溶媒を含むことが好ましく、後記ケトン系有機溶媒であることがより好ましい。樹脂としては、後述のものをいずれも好適に使用することができる。該本発明の多層グラフェン分散剤組成物は、これら構成成分を、常法により、適宜混合することにより、調製することができる。多層グラフェン分散剤組成物中に含まれる重合体量は、高濃度化の観点から、該分散剤組成物全量に対し0.2質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、5%以上がよりさらに好ましい。また、作業性の観点から、50質量%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。
【0075】
[ケトン系有機溶媒]
ケトン系有機溶媒は、分子構造内にカルボニル基の両端に炭素原子が結合した構造を含む化合物であり、好ましくは、下記一般式(5)で示される化合物である。
【0076】
【化1】
(式中、R
11、R
12はそれぞれ独立にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜8の炭化水素基であるか、または、R
11とR
12は環状に接続して、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数2〜10の炭化水素鎖を形成する。)
【0077】
上記一般式(5)において、R
11とR
12は、ヘテロ原子を含まないものであることが好ましい。
【0078】
実用性の観点から、ケトン系有機溶媒は、沸点が0〜300℃の化合物が好ましい。
【0079】
ケトン系有機溶媒の具体例としては、例えば、アセトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、4−オクタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルイソプロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルターシャリーブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルターシャリーアミルケトン等が挙げられる。中でも、分散安定性と高濃度化の観点から、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトンが好ましく、アセトン、2−ブタノンがより好ましく、2−ブタノンがよりさらに好ましい。
【0080】
ケトン系有機溶媒は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0081】
[多層グラフェン分散液]
本発明の多層グラフェン分散液は、前記多層グラフェンが前記ケトン系有機溶媒中で分散した状態のものであり、高濃度の分散液が得られるとともに、安定性にも優れている。安定性に優れた分散液とは、具体的には、沈降安定性および凝集安定性に優れた分散液である。
【0082】
本発明において、多層グラフェン分散液中の多層グラフェン濃度は、高濃度化の観点から、0.01mg/mL以上が好ましく、0.1mg/mL以上がより好ましく、0.5mg/mL以上がさらに好ましく、1mg/mL以上がよりさらに好ましい。また、分散安定性と高濃度化の観点から、250mg/mL以下が好ましく、200mg/mL以下がより好ましく、150mg/mL以下がさらに好ましく、100mg/mL以下がよりさらに好ましい。
【0083】
該分散液中の重合体の濃度は、分散安定性と高濃度化の観点から、0.001mg/mL以上が好ましく、0.01mg/mL以上がより好ましく、0.1mg/mL以上がさらに好ましく、0.5mg/mL以上がよりさらに好ましい。分散安定性と高濃度化の観点から、250mg/mL以下が好ましく、200mg/mL以下がより好ましく、100mg/mL以下がさらに好ましく、50mg/mL以下がよりさらに好ましい。
【0084】
該分散液中の多層グラフェン量と重合体量との比率は、重合体質量/多層グラフェン質量として、分散安定性と高濃度化の観点から、1/100以上が好ましく1/20以上がより好ましく、1/10以上がさらに好ましい。また、分散安定性と高濃度化の観点から、100/1以下が好ましく、20/1以下がより好ましく、10/1以下がさらに好ましい。
【0085】
多層グラフェン分散液の調製は、例えば、前記InALA法で得られた多層グラフェン塊を用いる場合には、これを粉砕してから重合体を含む溶媒に投入してもよいし、あるいは、多層グラフェン塊を該溶媒に投入してから粉砕してもよい。分散安定性と高濃度化の観点から、溶媒中で粉砕することが好ましい。また、こうして得られる多層グラフェン分散液は、所望により、遠心分離した後上澄みを採取することにより、粗大粒子や不純物が除去された、より高品質の多層グラフェン分散液とすることができる。
【0086】
粉砕方法としては、特に限定されることなく、この分野における常法をいずれも使用することができ、そのような粉砕方法としては、例えば、乾式、湿式の機械的粉砕装置、例えば、ミキサー、ディスパー、プラネタリーミキサー、ブレンダー、マイルダー、プラネタリーミル、ボールミル、ロッドミル、ロールミル、振動ミル、ビーズミル、超音波ミル、ジェットミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、超音波破砕機、乳鉢などによる物理的な破砕が挙げられる。
【0087】
分散安定性と高濃度化の観点から、湿式の粉砕装置が好ましく、ミキサー、ディスパー、プラネタリーミキサー、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、超音波ミル、ジェットミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、超音波破砕機などがより好ましい。これらの装置を2種以上併用してもよい。
【0088】
多層グラフェン表面に加圧媒体ガスや有機不純物が付着している場合は、熱処理(例えば100℃以上の温度)によって除去してから粉砕工程に供してもよい。
【0089】
超音波印加により破砕する方法として、超音波洗浄機を使用する場合は、分散安定性と高濃度化の観点から、超音波の周波数は、10〜100kHzの範囲であることが好ましく、印加する時間は、1〜60分が好ましい。また、ロッド式の超音波ホモジナイザーを使用する場合は、分散安定性と高濃度化の観点から、超音波の周波数は、10〜100kHzの範囲であることが好ましく、出力は、50〜2000Wの範囲であることが好ましく、印加する時間は、1〜60分が好ましい。
【0090】
遠心分離を行う場合には、分散安定性と高濃度化の観点から、加速度は100〜100000Gが好ましく、100〜10000Gがより好ましい。分離時間は1分〜24時間が好ましく、5分〜2時間がより好ましく、10分〜1時間がさらに好ましい。このように処理したのち、上澄みを採取する。
【0091】
多層グラフェン分散液は、所望により、増粘剤、粘性調整剤、樹脂、硬化剤、難燃剤、消泡剤、紫外線吸収剤などの添加剤を含有してもよく、これらを、常法により、適宜混合することにより、調製することができる。また、作業性、生産性、および用途上の理由から、溶媒として前記ケトン系有機溶媒のほかに、前記ケトン系有機溶媒以外の溶媒を少量含有してもよい。全溶媒中の前記ケトン系有機溶媒の割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上がよりさらに好ましく、実質的に前記ケトン系有機溶媒のみであることがよりさらに好ましい。
【0092】
添加する樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、天然樹脂、エチレン樹脂、SBR樹脂、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、PET樹脂、シリコン樹脂等が挙げられ、バインダー等で使用されるポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、SBR樹脂、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。
【0093】
多層グラフェン分散液は、基板等に接触させ乾燥することにより、多層グラフェン被覆基板を製造することに使用することができる。
【0094】
[沈降安定性]
多層グラフェン分散液の分散安定性の尺度である沈降安定性の測定は、ポリスポイトで1mL程度の分散液を蓋付ミクロバイアル((株)マルエム製OMV−1)に入れ、白い台上に静置し、所定の時間後におけるセル底部の沈降物を目視により確認する。実用性の観点から、評価開始から10分未満では沈降物が生じないこと(評価C)が好ましく、1時間未満では生じないこと(評価B)がより好ましく、1日未満では生じないこと(評価A)がさらに好ましい(10分未満で沈降を生じた場合は評価D)。
【0095】
[凝集安定性]
多層グラフェン分散液の分散安定性の尺度である凝集安定性の測定も同様に、ポリスポイトで1mL程度の分散液を蓋付ミクロバイアル((株)マルエム製OMV−1)に入れ、背景の白い場所に静置し、所定の時間後におけるセル内の凝集物を目視により確認する。直後の状態に比べて液の均一性が低下し、黒色がまだらな状態(フロキュレーションしている状態)も凝集とみなす。実用性の観点から、評価開始から10分未満では目視できる凝集粒子が生じないこと(評価C)が好ましく、1時間未満では生じないこと(評価B)がより好ましく、1日未満では生じないこと(評価A)がさらに好ましい(10分未満で凝集を生じた場合は評価D)。
【0096】
[吸光度]
分散液は、高濃度かつ低凝集性を有しているほど高い吸光度を示すので、多層グラフェン分散液の分散安定性と高濃度化の尺度として、遠心分離後の上澄みを採取して得た多層グラフェン分散液の相対吸光度を測定した。波長550nmにおける多層グラフェン分散液の吸光度をA、多層グラフェンを含まない点以外は全く同じ組成である溶媒の吸光度をA
Sとし、A−A
Sで表される値を相対吸光度とした。なお、吸光度AおよびA
Sはlog(I
0/I)で求められる値であり、ここで、I
0は波長550nmの入射光強度、Iは透過光強度である。相対吸光度は、1.01〜1.49の場合(B評価)が実用上使用可能なレベルであって好ましく、1.50以上の場合(A評価)が実用性に優れるレベルであってより好ましい(0〜1.00の場合はD評価)。なお、該相対吸光度は、小数点以下第3位を四捨五入して得られる値である。
【実施例】
【0097】
以下、本発明の製造例、実施例および比較例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0098】
以下の実施例に用いた原料の略号は次の通りである。
モノマー(A1)
・LMA:メタクリル酸ラウリル(三菱瓦斯化学(株)製、GE−410)
・SMA:メタクリル酸ステアリル(新中村化学工業(株)製、NK−エステルS)
モノマー(A2)
・MAH:無水マレイン酸(三井化学(株)製)
化合物(A3)
・OAmn:オレイルアミン(東京化成工業(株)製)
モノマー(B1)
・PEG(9)MA:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業(株)製、NK−エステル M−90G、エチレンオキサイドの平均付加モル数p:9)
・PEG(23)MA:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業(株)製、NK−エステル M−230G、エチレンオキサイドの平均付加モル数p:23)
モノマー(B2)
・DMAAm:ジメチルアクリルアミド(和光純薬工業(株)製)
モノマー(B3)
・HEMA:メタクリル酸ヒドロキシエチル(和光純薬工業(株)製)
モノマー(B4)
・St:スチレン(和光純薬工業(株)製)
・DIB:ジイソブチレン(丸善石油化学(株)製)
(C)A2との反応に供されない酸性モノマー
・AA:アクリル酸(和光純薬工業(株)製)
・MAA:メタクリル酸(和光純薬工業(株)製)
連鎖移動剤
・TG:3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(1−チオグリセロール)(東京化成工業(株)製)溶媒
・MEK:2−ブタノン(和光純薬工業(株)製)
・MIBK:メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)
重合開始剤
・V−65B:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製)
・LPO:過酸化ラウロイル(和光純薬工業(株)製)
【0099】
[分散剤組成物製造例1] 重合体1の合成と分散剤組成物1の調製
SMA 400g、PEG(9)MA 300g、AA 300g、TG 1gおよびMEK 700gを混合し、その混合溶液160gを、還流管、攪拌装置、温度計および窒素導入管を取り付けた5つ口セパラブルフラスコ(反応槽)に仕込み、槽内を撹拌しながら、反応槽内を窒素雰囲気とし、槽内温度(仕込原料の温度)65℃まで加熱した。
【0100】
前記混合溶液の残りを滴下モノマー液とし、V−65B 30gとMEK 200gからなる開始剤溶液と、反応槽の2か所から同時に滴下した。
【0101】
2時間かけて槽内に滴下したのち、30分間攪拌を続け、さらに槽内温度を75℃まで昇温して2時間攪拌を続けた。次いで槽内温度を40℃以下になるまで冷却し、液を別の容器に取り出した。こうして、該液中に、重合体1を得た。重合体1の重量平均分子量は30000であった。
【0102】
得られた液の不揮発分を下記の方法により測定したのち、不揮発分濃度が10%となるようにMEKを加え、分散剤組成物1を得た。
【0103】
[分散剤組成物製造例2〜11] 重合体2〜11の合成と分散剤組成物2〜11の調製
重合体1の合成条件を、表1記載の内容に従いそれぞれ変更した以外は、分散剤製造例1と同様に処理して、重合体2〜11および分散剤組成物2〜11を得た。
【0104】
[分散剤組成物製造例12] 重合体12の合成と分散剤組成物12の調製
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応容器に、MAH 66gおよびMIBK 61gを仕込み、窒素気流下で100℃に加熱後、この温度を維持しながら、85質量%DIBのMIBK溶液88g(DIBとして75g)および4質量%LPOのMIBK溶液125g(LPOとして5g)をそれぞれ別の滴下ロートから4時間かけて滴下し重合反応を行った。滴下終了後、100℃で10時間熟成し、重合反応を完結させた。重合反応終了後、冷却し、55℃に保持しながらOAmn(オレイルアミン)90gを滴下ロートから1時間かけて滴下しアミド化反応を行った。滴下終了後、55℃で1時間熟成し、反応を完結させ、無水マレイン酸/ジイソブチレン共重合体アミド化物(重合体12)を得た。本共重合体アミド化物のアミド化率は50%であった。また、本共重合体アミド化物の重量平均分子量は12000であった。
【0105】
得られた液の不揮発分を下記の方法により測定したのち、不揮発分濃度が10%となるようにMIBKを加え、分散剤組成物12を得た。
【0106】
[重合体の重量平均分子量測定]
重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、下記条件で測定した。重量平均分子量は、予め作成した検量線に基づき算出した。検量線の作成には、下記の標準試料を用いた。
【0107】
測定装置:HLC−8120GPC(東ソー(株)製)
カラム:TSK α−M + α−M(いずれも東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
検出器:RI
溶離液:H
3PO
4(60mmol/L)およびLiBr(50mmol/L)を加えたN,N−ジメチルホルムアミド溶液
流速:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%(固形分)
試料注入量:0.1mL
標準試料:東ソー(株)製ポリスチレン 5.26×10
2、1.02×10
5、8.42×10
6;西尾工業(株)製ポリスチレン 4.0×10
3、3.0×10
4、9.0×10
5(数字はそれぞれ分子量)
【0108】
[不揮発分の測定]
分散剤組成物製造例における、反応終了時の各液の不揮発分の測定は以下の方法で行った。シャーレに充分乾燥させた無水硫酸ナトリウム(乾燥助剤)を約10g入れ、長さ60mmのガラス棒と合わせて質量を正確に測定した。さらに、サンプル約1gをシャーレに入れ、シャーレ、乾燥助剤およびガラス棒と合せた全体の質量を精秤し、該全体の質量から、先に求めておいたシャーレ、乾燥助剤およびガラス棒の質量を差し引くことにより、乾燥前のサンプル質量(g)を求めた。シャーレ中のサンプルを、ガラス棒で乾燥助剤と十分に混合し、熱風循環型乾燥機((株)いすゞ製作所製 Hot Air Rapid Drying Oven Soyokaze)を用いて、ガラス棒とともに105℃で6時間乾燥させた後、デシケーター内で室温まで放冷し、乾燥後の全体の質量を精秤し、先に求めておいたシャーレ、乾燥助剤およびガラス棒の質量を差し引くことにより、乾燥後のサンプル質量(g)を求めた。以下の計算式により不揮発分濃度を求めた。
不揮発分濃度(%)=乾燥後のサンプル質量(g)/乾燥前のサンプル質量(g)×100
【0109】
[製造例1]多層グラフェン1の製造
ペレッ卜状のフェノールホルムアルデヒド樹脂(平均粒子20μm)を不活性ガス雰囲気中で600℃の最高到達温度で仮焼きした。仮焼き後の残留水素量は10000ppmであった。得られた仮焼原料を、嵩密度1.80、開気孔率10%の材質で構成されたねじ式(三角ねじ)の黒鉛坩堝に装填し、ねじ式の上蓋を旋回しながらねじを締め、仮焼き原料を密閉した。該黒鉛坩堝をHIP装置に装填した後に、加圧媒体としてアルゴンガスを使用して、600℃、120MPaの温度、圧力まで1時間で到達させ、その後500℃/時の昇温速度で昇温昇圧し、1800℃、190MPaの最高到達温度圧力にて1時間保持し、室温常圧まで降温降圧した。
【0110】
得られた多層グラフェンは真密度2.16g/cm
3、嵩密度0.63g/cm
3、気孔率71%、炭素純度99.9%であった。
【0111】
[実施例1−1]多層グラフェン分散液1−1の製造
製造例1の多層グラフェン0.1gおよびイソプロピルアルコール99.9gを混合した後、金属製のカッターを有する湿式ミキサーにより、回転数1000rpmで15分間、解砕処理をおこない、得られた混合液を、市販の超音波洗浄機(卓上型超音波洗浄機W−113、本多電子(株)製)で42kHz、100Wの出力で240分間、超音波印加した。得られた黒色分散液を、800Gで30分間、遠心分離機((株)佐久間製作所製、型式M201−IVD)で処理し、上澄み液を回収した。回収した上澄み液中の多層グラフェン量は0.12mg/mLであった。回収した上澄み液を減圧式のエバポレータで濃縮し、多層グラフェン量を0.5mg/mLに調整した。
【0112】
この上澄み液60mLと分散剤組成物製造例1で得られた分散剤組成物1 30mg(重合体1の添加質量として3mg)をスターラーで混合し、減圧乾燥機で溶媒を完全に除去し、MEK 6mLを添加して、前記超音波洗浄機で同様に30分間、超音波印加し、多層グラフェン分散液1−1を得た。
【0113】
[実施例1−2〜1−12、比較例1−13〜1−16] 多層グラフェン分散液1−2〜1−16の製造
実施例1−1の条件を、表2記載の内容に従って変更した以外は、実施例1−1と同様に処理して、多層グラフェン分散液1−2〜1−16を得た。
【0114】
[分散性の測定1](沈降安定性、凝集安定性の評価)
超音波印加した直後の多層グラフェン分散液1−1〜1−16を、遠心分離機(Hsiangtai Machinery Industry社製、型式:CN−2060、ローター:RA−1508、1000rpm、5分)にかけ、上層から3mLの分散液を採取した。採取した分散液について、前記記載の方法により沈降安定性、凝集安定性の評価を行った。結果は表2の通りであった。
【0115】
[実施例2−1]多層グラフェン分散液2−1の製造
製造例1の多層グラフェン0.15g、分散剤組成物2 0.15g(重合体2の添加質量として15mg)およびMEK 69.7gを配合した後、金属製のカッターを有する湿式ミキサーにより、回転数1000rpmで15分間、解砕処理をおこない、得られた混合液を、市販の超音波洗浄機(卓上型超音波洗浄機W−113、本多電子(株)製)で42kHz、100Wの出力で60分間、超音波印加した。得られた黒色液を、800Gで30分間、遠心分離機で処理し、上澄み液を回収し、多層グラフェン分散液2−1を得た。TEM観察の結果、得られた多層グラフェン分散液中の多層グラフェンのグラフェンシート積層数は平均7層程度であった(厚さ約2nm)。
【0116】
[実施例2−2〜2−5、比較例2−6〜2−8]多層グラフェン分散液2−2〜2−8の製造
実施例2−1の条件を表3記載の内容に変更した以外は、実施例2−1に従って調製した。
【0117】
[分散性の測定2](吸光度評価)
超音波印加した直後の多層グラフェン分散液2−1〜2−8を、遠心分離機(Hsiangtai Machinery Industry社製、型式:CN−2060、ローター:RA−1508、1000rpm、5分)にかけ、上層から3mLの分散液を採取した。採取した分散液について、前記記載の方法により吸光度の評価を行った。結果は表3の通りであった。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
[実施例3]多層グラフェン分散液3の製造
製造例1の多層グラフェン2.5g、分散剤組成物12 1.85g(重合体12の添加質量として185mg)およびMEK 1150mLを配合した後、金属製のカッターを有する湿式ミキサーにより、回転数1000rpmで15分間、解砕処理をおこない、得られた混合液を、市販の超音波洗浄機(卓上型超音波洗浄機W−113、本多電子(株)製)で42kHz、100Wの出力で300分間、超音波印加した。得られた黒色液を、800Gで30分間、遠心分離機で処理し、上澄み液を回収し、多層グラフェン分散液3を得た。
【0122】
得られた多層グラフェン分散液3 50mLを表面がアルマイト処理された軽量アルミカップに採取した。また分散剤組成物12 0.185gおよびMEK 115mL混合した溶液50mLを、多層グラフェン分散液と同様に表面をアルマイト処理した軽量アルミカップに採取した。これらの溶液で満たされた軽量アルミカップを、80℃に設定されたホットプレート上に設置し24時間保持した後に、蒸発乾固残渣を含むアルミカップ質量を測定した。測定した各質量により、下記の計算式で多層グラフェン分散液中の多層グラフェン分散量を計算したところ0.15mg/mLであった。
【0123】
多層グラフェン分散量(mg/mL)=((A2−A1)−(B2−B1))/50
A1:多層グラフェン分散液3を入れる前の空の軽量アルミカップ質量
A2:多層グラフェン分散液3を入れ、蒸発乾固させた軽量アルミカップ質量
B1:分散剤組成物とMEKの混合溶液を入れる前の空の軽量アルミカップ質量
B2:分散剤組成物とMEKの混合溶液を入れ、蒸発乾固させた軽量アルミカップ質量
【0124】
[蒸発乾固残渣の様子]
多層グラフェン分散液の蒸発乾固残渣を銅製の試料ホルダーに固定し、日本エフイー・アイ(株)製の電界放射型走査電子顕微鏡 Sirionを使用して、加速電圧15kVにて表面を観察したところ、多層グラフェンが凝集することなく分散剤と一体化している様子が確認できた。観察した写真の一例を
図1に示した。