特許第6335003号(P6335003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トップの特許一覧

<>
  • 特許6335003-胃瘻チューブ用挿入補助具 図000002
  • 特許6335003-胃瘻チューブ用挿入補助具 図000003
  • 特許6335003-胃瘻チューブ用挿入補助具 図000004
  • 特許6335003-胃瘻チューブ用挿入補助具 図000005
  • 特許6335003-胃瘻チューブ用挿入補助具 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335003
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】胃瘻チューブ用挿入補助具
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/02 20060101AFI20180521BHJP
   A61J 15/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61M25/02 504
   A61J15/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-80555(P2014-80555)
(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公開番号】特開2015-198847(P2015-198847A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 大輔
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−040293(JP,A)
【文献】 特開2009−254578(JP,A)
【文献】 特表2007−537795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00−25/02
A61J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃瘻チューブを保持して胃瘻に挿入する胃瘻チューブ用挿入補助具であって、胃瘻チューブに設けられた可撓性を有する椀状のバンパー部を前方端部に保持する棒状の保持ロッドを備えるものにおいて、
前記保持ロッドの一側には、その前端から所定距離を存した位置に固定された連結部材を介して前記バンパー部よりも前方に延出する延出ロッドが連結され、
前記保持ロッドと前記延出ロッドとの間には、前記バンパー部の周壁部の一部が入り込む所定の空隙が設けられていることを特徴とする胃瘻チューブ用挿入補助具。
【請求項2】
前記延出ロッドは、前記保持ロッドよりも柔軟に形成されていることを特徴とする請求項1記載の胃瘻チューブ用挿入補助具。
【請求項3】
前記延出ロッドは、中空に形成されてその内部が線状の案内部材を案内する案内通路とされると共に、前記案内部材よりも曲げ強さが大となるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の胃瘻チューブ用挿入補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃内に栄養物を送り込むための胃瘻チューブを胃瘻に挿入する際に使用する胃瘻チューブ用挿入補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
胃瘻チューブは、胃瘻を介して先端が胃内に挿入されるチューブ本体と、胃内に留置される椀状のバンパー部とを備えている。このような胃瘻チューブを胃瘻を介して胃内に挿入するときには、一般に、胃瘻チューブ用挿入補助具が用いられる。
【0003】
この種の胃瘻チューブ用挿入補助具として、ステンレス製の保持ロッドと、その先端部に装着された合成樹脂製の係止部材とを備えており、更に、係止部材が保持ロッドから前方に延出された延出部と、延出部よりも大径に形成された段差部とを備えるものが提案されている(下記特許文献1参照)。
【0004】
この胃瘻チューブ用挿入補助具を用いるときには、先ず、胃瘻チューブのバンパー部の周方向1箇所に保持ロッドの先端部を係止させ、次いで、チューブ本体を基端部方向に引っ張ることによりバンパー部を細長い形状に変形させる。そして、この状態を維持して保持ロッドと共に胃瘻チューブを胃瘻に挿入する。その後、バンパー部が胃内に入ったところで保持ロッドを抜き取れば、胃内においてバンパー部が椀状に復元し、胃内からの胃瘻チューブの抜出しが規制される。
【0005】
特許文献1に示された胃瘻チューブ用挿入補助具では、更に、バンパー部に形成した貫通孔に係止部材の延出部を挿通させ、係止部材の段差部でバンパー部の貫通孔の周縁部を係止する。こうすることにより、例えば、保持ロッド及び係止部材を中空に形成し、その内部にガイドワイヤ等の線状の案内部材を通すことができ、案内部材を用いた胃瘻チューブの挿入操作を円滑に行うことも可能となる。
【0006】
また、バンパー部の貫通孔に係止部材の延出部を挿通させた状態で、チューブ本体が後方に強く引っ張られた場合、貫通孔が大きく拡開して係止部材の段差部を乗り越えてしまい、バンパー部の保持状態が維持できなくなるおそれがある。そこで、特許文献1においては、バンパー部の貫通孔に硬質の合成樹脂や金属製の中空の補強部材を設けて貫通孔の拡開を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−254578号公報(図2図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1のものでは、胃瘻チューブ用挿入補助具専用の胃瘻チューブとして、バンパー部の貫通孔に補強部材を設けているため、胃瘻チューブの部品点数や加工工数が増加して、コスト高となる不都合がある。しかも、上記特許文献1のものでは、バンパー部の貫通孔に設けた補強部材がバンパー部から不用意に外れて胃内に落下するおそれがある。
【0009】
上記の点に鑑み、本発明は、バンパー部に補強部材を設けることなくバンパー部の良好な保持状態を確実に維持することができ、しかも、胃瘻チューブの胃瘻への挿入操作を極めて円滑に行うことができる胃瘻チューブ用挿入補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、胃瘻チューブを保持して胃瘻に挿入する胃瘻チューブ用挿入補助具であって、胃瘻チューブに設けられた可撓性を有する椀状のバンパー部を前方端部に保持する棒状の保持ロッドを備えるものにおいて、前記保持ロッドの一側には、その前端から所定距離を存した位置に固定された連結部材を介して前記バンパー部よりも前方に延出する延出ロッドが連結され、前記保持ロッドと前記延出ロッドとの間には、前記バンパー部の周壁部の一部が入り込む所定の空隙が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明における延出ロッドは、連結部材によって保持ロッドの一側に連結されている。これにより、保持ロッドの前方端部に保持した胃瘻チューブのバンパー部を貫通させることなく、延出部をバンパー部よりも前方に延出させることができる。従って、バンパー部に貫通孔を形成する必要がなく、従来のような補強部材を設ける必要もないので、胃瘻チューブのコスト増加が防止できる。
【0012】
ところで、胃瘻は腹壁と胃壁とを貫通するが、腹壁の瘻孔と胃壁の瘻孔とが位置ずれしていると、胃瘻チューブを胃瘻に挿入しようとしても、腹壁の瘻孔を通過した胃瘻チューブの前端部が胃壁の瘻孔以外の箇所に当接してしまい、円滑な胃瘻チューブの挿入が行えない。このとき、本発明によれば、バンパー部の胃瘻への挿入に先立って、バンパー部より前方に延出する延出ロッドによって胃壁の瘻孔を確認することができ、更に、胃壁の瘻孔に延出ロッドを挿入してバンパー部を胃瘻に沿って案内することができる。よって、胃瘻チューブの胃瘻への挿入操作も極めて円滑に行うことができる。
【0013】
また、本発明において、前記延出ロッドは、前記延出ロッドは、前記保持ロッドよりも柔軟に形成されていることが好ましい。これによれば、延出ロッドによる胃瘻の損傷を防止して患者の負担を軽減することができる。
【0014】
また、本発明において、前記延出ロッドは、中空に形成されてその内部が線状の案内部材を案内する案内通路とされると共に、前記案内部材よりも曲げ強さが大となるように形成されていることを特徴とする。
【0015】
前記延出ロッドは、前記案内通路を備えることにより内部に前記案内部材が挿通可能となっている。これにより、胃瘻チューブを胃瘻に挿入する場合には、胃瘻に前記案内部材を留置させ、保持ロッドの前方端部にバンパー部を保持した状態で、案内部材を延出ロッドの内部に挿通させることができる。しかも、延出ロッドは案内部材よりも曲げ強さが大となるように形成されているので、案内部材の弛み等を除去しながら案内部材に沿った挿入が精度よく行える。従って、本発明によれば、案内部材を用いて延出ロッド及びバンパー部を確実に胃瘻に挿入することができ、胃瘻チューブを一層円滑に胃瘻に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の胃瘻チューブ用挿入補助具を示す側面図。
図2】胃瘻チューブの要部の説明的斜視図。
図3】胃瘻チューブの要部の断面図。
図4】胃瘻チューブを保持した状態の胃瘻チューブ用挿入補助具を示す側面図。
図5】保持ロッドの前方端部を示す説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の胃瘻チューブ用挿入補助具1(以下単に「挿入補助具1」という。)は、図1に示すように、ステンレス等の金属製の保持ロッド2と、保持ロッド2の後端部に設けられた合成樹脂製の柄部3と、後述のチューブ本体10(図2参照)を係止するチューブ係止部4とを備えている。
【0018】
更に、保持ロッド2には、その先端(前端)から所定距離を存した位置に固定された合成樹脂製の連結部材5を介して延出ロッド6が連結されている。
【0019】
延出ロッド6は、保持ロッド2と同等の長さを有し、保持ロッド2の一側から保持ロッド2の軸線に平行となる姿勢で、保持ロッド2の前端よりも更に前方に延出している。保持ロッド2と延出ロッド6との間には、連結部材5によって所定の空隙が設けられている。延出ロッド6は、中空棒状に形成されており、その内部が、ガイドワイヤ等の線状の案内部材7(図4及び図5参照)を挿通させる案内通路8となっている。更に、延出ロッド6は、保持ロッド2よりも柔軟で且つ案内部材7よりも曲げ強さが大となるように形成されている。
【0020】
柄部3は、側面視で角度のついたL字状に形成され、術者が把持しやすいように形成されている。
【0021】
本実施形態の挿入補助具1により胃瘻に挿入される胃瘻チューブ9は、周知のものであるが、その一例としての構成を説明すると、図2及び図3に示すように、内部に栄養物等を流すチューブ本体10と、チューブ本体10の先端に設けられた椀状のバンパー部11とを備えている。チューブ本体10とバンパー部11とは可撓性を有する合成樹脂(シリコーン樹脂)によって一体に形成されている。バンパー部11の周壁部の周方向一側の内面には径方向内方に突出する突出部12が形成され、突出部12にはバンパー部11の径方向内方に開口する穴部13が形成されている。
【0022】
バンパー部11の外径は、チューブ本体10の外径よりも大きく形成されている。またバンパー部11の中央部には、チューブ本体10と連通する連通口14が形成されている。バンパー部11の周壁部の穴部13と対向する位置には、切欠部15が形成されている。
【0023】
上記構成の挿入補助具1に胃瘻チューブ9を保持させるときには、図4及び図5を参照して、先ず、バンパー部11の内面の突出部12に形成された穴部13に挿入補助具1の保持ロッド2の前端を挿入する。次いで、チューブ本体10を保持ロッド2に沿って後方に引っ張る。そして、チューブ本体10を挿入補助具1のチューブ係止部4に係止させる。これにより、図4に示すように、バンパー部11が保持ロッド2に掛止された状態で細長い形状に変形すると共に、チューブ本体10が保持ロッド2の長手方向に沿う姿勢となって胃瘻チューブ9が挿入補助具1に保持される。
【0024】
挿入補助具1に保持された胃瘻チューブ9は、図5に示すように、連結部材5によって保持ロッド2と延出ロッド6との間に形成された空隙にバンパー部11の周壁部の一部が入り込むことにより強固に掛止される。これにより、保持ロッド2の前方端部にバンパー部11を掛止させた状態でチューブ本体が後方に強く引っ張られても、バンパー部11の掛止状態が解除されることはなく、胃瘻チューブ9を良好に保持した状態を確実に維持することができる。
【0025】
更に、図4に示すように、胃瘻チューブ9が挿入補助具1に保持されると、細長く変形したバンパー部11が保持ロッド2の外周の連結部材5を包み込んで連結部材5の段差が滑らかに覆われるので、胃瘻に挿入する際の抵抗を小とすることができる。
【0026】
胃瘻チューブ9を胃瘻に挿入するときには、図示しないが、先ず、胃内から胃瘻を介して患者の体外に引き出されているガイドワイヤ等の案内部材7を、挿入補助具1の延出ロッド6の案内通路8に挿通させる。このとき、延出ロッド6が案内部材7よりも曲げ強さが大であることにより、延出ロッド6の案内通路8に案内部材7を通す作業が容易に行える。
【0027】
次いで、案内部材7に沿って延出ロッド6を胃瘻に挿入する。このとき、延出ロッド6が保持ロッド2よりも柔軟であることにより、胃瘻を損傷させることなく胃瘻に挿入することができる。
【0028】
また、胃瘻チューブ9に先立って延出ロッド6を胃瘻に挿入するので、胃瘻を形成している腹壁の瘻孔と胃壁の瘻孔とが互いに位置ずれしていた場合に胃壁の瘻孔を容易に確認することができる。しかも、延出ロッド6が案内部材7よりも曲げ強さが大であることにより、案内部材7の弛み等を除去しつつ挿入することができるだけでなく、延出ロッド6が胃壁の瘻孔に触れた際の感触が確実に施術者に伝わるので、胃瘻チューブ9の胃瘻への挿入操作が容易となる。
【0029】
続いて、案内部材7に沿って保持ロッド2を胃瘻に挿入する。このとき、既に、延出ロッド6によって胃瘻の形状が整えられているので、保持ロッド2に保持されたバンパー部11を円滑に以内に挿入することができ、患者への負担が少ない。
【0030】
次いで、チューブ本体10をチューブ係止部4から取り外し、案内部材7を胃瘻から抜去した後、挿入補助具1の保持ロッド2及び延出ロッド6を胃瘻から抜去する。以上の手技により、案内部材7及び挿入補助具1を利用して胃瘻チューブ9を確実に胃瘻に挿入することができる。
【0031】
そして、本実施形態の挿入補助具1において保持することができる胃瘻チューブ9は、挿入補助具1の保持ロッド2の前端を挿着する穴部13をバンパー部11に形成した周知のものを使用することができ、従来のような補強部材や貫通孔をバンパー部に設ける必要がない。よって、胃瘻チューブ9の製造コストの増加を防止することができる。
【0032】
なお、上記の説明においては、胃瘻チューブ9を胃瘻に挿入する際に案内部材7を用いた例を示したが、本実施形態の挿入補助具1は、胃瘻チューブ9に先立って延出ロッド6を胃瘻に挿入することができて挿入操作が容易であるので、案内部材7を用いなくても胃瘻チューブ9の挿入操作を円滑に行うことができる。
【0033】
また、案内部材7を用いない場合には、本実施形態の挿入補助具1において、延出ロッド6を中空でなく、中実棒状に形成して設けてもよい。
【0034】
また、本実施形態においては、略L字状に形成された柄部3を備える挿入補助具1を示したが、柄部の形状はこれに限らず、例えば、保持ロッド2の軸線方向に直線状に延びる形状であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…胃瘻チューブ用挿入補助具、5…連結部材、7…案内部材、6…延出ロッド、8…案内通路、9…胃瘻チューブ、11…バンパー部、12…保持ロッド。
図1
図2
図3
図4
図5