特許第6335005号(P6335005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6335005サンドイッチ型複合床版の防水・防錆構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335005
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】サンドイッチ型複合床版の防水・防錆構造
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20180521BHJP
   E01D 2/02 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   E01D19/12
   E01D2/02
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-80923(P2014-80923)
(22)【出願日】2014年4月10日
(65)【公開番号】特開2015-200157(P2015-200157A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】509200613
【氏名又は名称】株式会社横河住金ブリッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】中川 敏之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 大輔
(72)【発明者】
【氏名】上條 崇
(72)【発明者】
【氏名】湯川 雅之
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−297410(JP,A)
【文献】 特開平07−090970(JP,A)
【文献】 特開2003−147726(JP,A)
【文献】 実開平04−097915(JP,U)
【文献】 特開2001−089880(JP,A)
【文献】 米国特許第04604841(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00〜 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底鋼板と、前記底鋼板の上面に所要間隔で並列に配置した複数本の形鋼と、隣接する前記形鋼間に架け渡した上鋼板とで、前記底鋼板と上鋼板との間に形成した中空部にコンクリートを充填してなるサンドイッチ型複合床版と、前記サンドイッチ型複合床版を下方から支持する主桁との接合部において、前記接合部は、前記底鋼板と前記主桁の上フランジとの間に橋軸方向にシーリング材を設け、前記シーリング材の外側に、前記底鋼板の下面から前記主桁の上フランジの外側面にかけて重防食塗装を施して、前記シーリング材を保護することによって、前記シーリング材の劣化を防ぎ、前記シーリング材の隙間から前記サンドイッチ型複合床版内部のコンクリートへ浸水するのを防ぐようにしたことを特徴とするサンドイッチ型複合床版の防水・防錆構造。
【請求項2】
前記重防食塗装により、底鋼板下面とシーリング材および上フランジ上面とシーリング
材の隙間を完全に密閉することを特徴とする請求項1記載のサンドイッチ型複合床版の防
水・防錆構造。
【請求項3】
底鋼板と、前記底鋼板の上面に所要間隔で並列に配置した複数本の形鋼と、隣接する前
記形鋼間に架け渡した上鋼板とで、前記底鋼板と上鋼板との間に形成した中空部にコンク
リートを充填してなるサンドイッチ型複合床版と、前記サンドイッチ型複合床版を下方か
ら支持する主桁との接合部において、前記接合部は、前記底鋼板と前記主桁の上フランジ
との間に橋軸方向にシーリング材を設け、前記シーリング材の外側に、前記底鋼板の下面
から前記上フランジの外側面にかけてカバープレートを設け、前記カバープレートの外側
に、前記底鋼板の下面から前記主桁の上フランジの下面にかけて重防食塗装を施して、前記シーリング材を保護することによって、前記シーリング材の劣化を防ぎ、前記シーリング材の隙間から前記サンドイッチ型複合床版内部のコンクリートへ浸水するのを防ぐようにしたことを特徴とするサンドイッチ型複合床版の防水・防錆構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路橋などに用いられるサンドイッチ型複合床版の防水・防錆構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明でいうサンドイッチ型複合床版は、底鋼板と、底鋼板の上面に所要間隔で並列に配置した複数本の形鋼と、隣接する形鋼間に架け渡した上鋼板とで、底鋼板と上鋼板との間に中空部を有する鋼殻を形成し、その鋼殻内にコンクリートを充填してなるものであり、例えば道路橋などに多用されている。サンドイッチ型複合床版に関する発明として、例えば本出願人による特許文献1〜3がある。
【0003】
従来の合成床版を使用した場合は、床版上面から床版コンクリート内部に浸水してしまうことによって底鋼板上へ滞水したり、床版コンクリート内部が劣化したりすることがあった。
【0004】
一方、サンドイッチ型複合床版を使用した場合は、上鋼板を設けていることにより床版コンクリート内部への浸水を防ぐことができ、床版内部が劣化しにくいという利点がある。
【0005】
床版上面(上鋼板上面)の滞水に対しては、スラブドレーンや導水管による橋面排水、上鋼板上面の防錆処理などの対策を実施して、床版上面(上鋼板上面)から床版コンクリート内部への浸水を防いでいる。
【0006】
しかし、横殴りの雨などの荒れた天候下や橋面から跳ねる水分などによって、水分が底鋼板を伝って、底鋼板と主桁の上フランジとの隙間から床版コンクリート内部へ水分が侵入する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3346264号公報
【特許文献2】特開2000−297410号公報
【特許文献3】特開平10−306410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、サンドイッチ型複合床版を用いる場合、底鋼板と主桁との接合部にはシーリングを施しているが、経年劣化や水分、紫外線による劣化によって、シーリング材にひび割れや剥がれが生じる場合がある。
【0009】
シーリング材の劣化が進めば、施工当初の防水機能や伸縮機能を維持することは難しくなる。また、サンドイッチ型複合床版の底鋼板と主桁との接合部に隙間が生じることで、底鋼板に残った水分が底鋼板を伝って、床版コンクリート内部へ浸水してしまい、床版内部の劣化を引き起こすことになる。
【0010】
よって、サンドイッチ型複合床版を使用する場合、底鋼板と主桁との接合部に設けたシーリング材の劣化を防ぎ、隙間が生じるのを防ぐことができれば、水密性や気密性は完全に保持されることになる。
【0011】
本発明は、上述のような課題を図ったものであり、サンドイッチ型複合床版と主桁との接合部において、シーリング材の劣化や床版内部への浸水を防ぐサンドイッチ型複合床版の防水・防錆構造を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るサンドイッチ型複合床版の防水・防錆構造は、底鋼板と、底鋼板の上面に所要間隔で並列に配置した複数本の形鋼と、隣接する形鋼間に架け渡した上鋼板とで、底鋼板と上鋼板との間に形成した中空部にコンクリートを充填してなるサンドイッチ型複合床版と、サンドイッチ型複合床版を下方から支持する主桁との接合部において、接合部には、底鋼板と主桁の上フランジとの間に橋軸方向にシーリング材を設け、シーリング材の外側に、底鋼板の下面から主桁の上フランジの外側面にかけて重防食塗装を施して、シーリング材を保護することによって、シーリング材の劣化を防ぎ、シーリング材の隙間からサンドイッチ型複合床版内部のコンクリートへ浸水するのを防ぐようにしたことを特徴とするものである。
【0013】
一般的にサンドイッチ型複合床版は、底鋼板の上面に所要の間隔をあけて並列に複数本の形鋼を配置し、隣接する形鋼どうしに上鋼板を架け渡して並べ、底鋼板と上鋼板との間に中空部を形成し、その中空部にコンクリートを充填することで構成されている場合が多い。
【0014】
主にサンドイッチ型複合床版を道路橋などに用いる場合は、主桁の上にサンドイッチ型複合床版を載置する構成とし、サンドイッチ型複合床版と主桁との接合部は、底鋼板と主桁の上フランジとの間に橋軸方向にシーリング材を設けている。
【0015】
シーリング材を設けることによって、底鋼板と主桁の上フランジとの隙間を埋め、底鋼板と主桁からの浸水を防いでいる。しかし、シーリング材の劣化などにより、底鋼板と主桁の上フランジとの間に隙間が生じ、その隙間から浸水し、床版コンクリート内部が劣化することがある。
【0016】
そこで、シーリング材の外側に、底鋼板の下面から上フランジの外側面にかけて重防食塗装を施して、シーリング材を保護することによって、シーリング材の劣化を防ぎ、シーリング材の隙間から床版内部のコンクリートへ浸水するのを防ぐ。
【0017】
シーリング材の劣化を防ぎ、底鋼板と主桁の上フランジとの間に生じる隙間を無くすことができるため、床版コンクリート内部に浸水することがなく、サンドイッチ型複合床版をほぼ完全に密閉することができる。
【0018】
重防食塗装は、主に鋼材などの腐食防止を目的とした塗装であり、例えば海岸沿いなど過酷な腐食性環境に建設される鋼構造物や鋼管杭などに用いられているものであるが、本発明はこれを、接合部付近の底鋼板から主桁にかけて用いることとしたものである。
【0019】
重防食塗装はもともと、防食性や耐候性に優れているため、底鋼板や主桁に対する高い防錆効果が得られるが、さらに、重防食塗装によりシーリング材への紫外線を遮断することができるため、シーリング材が紫外線によって劣化することなく、更なる延命化に繋がる。
【0020】
重防食塗装を施した場合は、補修として重防食塗装を再度行うだけで済むことになり、補修や管理の手間が容易で、安全性の高いサンドイッチ型複合床版を提供することが可能になる。
【0021】
本発明で施す重防食塗装は、シーリング材の耐久性を向上させるためには、底鋼板下面とシーリング材および上フランジ上面とシーリング材の隙間を完全に密閉するようにすることが好ましい。
【0022】
サンドイッチ型複合床版は、横殴りの雨などの荒れた天候下や橋面から跳ねる水分などによって、水分が底鋼板を伝って、底鋼板と主桁の上フランジとの隙間から浸水し、シーリング材を劣化させる場合があった。
【0023】
本発明では、シーリング材の外側に重防食塗装を施すことによって、底鋼板下面とシーリング材および上フランジ上面とシーリング材の隙間を無くし、サンドイッチ型複合床版を完全に密閉することができるため、底鋼板と主桁との接合部からの浸水を防ぎ、サンドイッチ型複合床版の耐久性を向上させることができる。
また、シーリング材は、底鋼板下面と上フランジの設置誤差を吸収し、かつ内部への浸水を防ぐ目的も有している。
【0024】
サンドイッチ型複合床版を道路橋に用いる場合、橋軸直角方向に主桁を所要の間隔で配設し、隣接する主桁の上フランジどうしに底鋼板を載置する。その際、底鋼板と主桁の上フランジとの間に設置誤差が生じる可能性がある。そこで、底鋼板と上フランジの重なる部分の橋軸方向にシーリング材を設けることで、底鋼板と上フランジの設置誤差を吸収させることができる。
また、シーリング材は、底鋼板と上フランジとの隙間からサンドイッチ型複合床版内部へ浸水するのを防ぐ働きがある。
【0025】
本発明において使用するシーリング材としては、合成樹脂製のシールパッキン、例えばクリヤマ株式会社の商品名モルトメール(登録商標)のようなものが適しているが、底鋼板と上フランジとの設置誤差を吸収することができ、耐久性や強度面において問題のないものであれば種類等は問わない。
【0026】
また、本発明に係るサンドイッチ型複合床版の防水・防錆構造は、底鋼板と、底鋼板の上面に所要間隔で並列に配置した複数本の形鋼と、隣接する前記形鋼間に架け渡した上鋼板とで、底鋼板と上鋼板との間に形成した中空部にコンクリートを充填してなるサンドイッチ型複合床版と、サンドイッチ型複合床版を下方から支持する主桁との接合部において、底鋼板と主桁の上フランジとの間に橋軸方向にシーリング材を設け、シーリング材の外側に、底鋼板の下面から上フランジの外側面にかけてカバープレートを設け、カバープレートの外側に、底鋼板の下面から主桁の上フランジの下面にかけて重防食塗装を施して、シーリング材を保護することによって、シーリング材の劣化を防ぎ、シーリング材の隙間からサンドイッチ型複合床版内部のコンクリートへ浸水するのを防ぐような構成としてもよい。
【0027】
サンドイッチ型複合床版と主桁との接合部において、底鋼板と主桁の上フランジとの間に橋軸方向にシーリング材を設け、シーリング材の外側に鋼板などのカバープレートを設ける。カバープレートとシーリング材との間には、モルタルなどを充填すればよく、カバープレートは、例えばスタッドボルトなどで留めるとよい。
【0028】
カバープレートを設けることによって、シーリング材を保護することができるが、底鋼板とカバープレートとの間や主桁の上フランジとカバープレートとの間に隙間が生じる場合があるため、カバープレートの外側に、底鋼板の下面から主桁の上フランジの下面にかけて重防食塗装を施す。
【0029】
カバープレートの外側に、底鋼板の下面から主桁の上フランジの下面にかけて重防食塗装を施すことによって、底鋼板とカバープレートとの間や主桁の上フランジとカバープレートとの間を埋めることができる。
【0030】
また、底鋼板とカバープレートとの間や主桁の上フランジとカバープレートとの間から浸水することがなくなるため、シーリング材の劣化を防ぎ、シーリング材の隙間から床版内部のコンクリートへ浸水するのを防ぐことができる。
さらに、重防食塗装の防錆効果によって、カバープレートやアンカーボルトなどが錆びて劣化してしまうのを防ぎ、耐久性が向上する。
【0031】
以上より、本発明に係るサンドイッチ型複合床版は、底鋼板と主桁の上フランジとの接合部の外側に、底鋼板の下面から上フランジにかけて重防食塗装を施すことによって、シーリング材の劣化を防ぎ、床版コンクリート内部に水分が侵入することがなく、サンドイッチ型複合床版を完全に密閉することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果が得られる。
【0033】
(1) サンドイッチ型複合床版と主桁の接合部において、底鋼板と上フランジの間に設けたシーリング材の外側に、底鋼板の下面から上フランジの外側面にかけて重防食塗装を施すことによって、サンドイッチ型複合床版と主桁の接合部との間に生じる隙間を埋めるとともに、シーリング材を保護し、床版内部のコンクリートへの浸水を防ぎ、サンドイッチ型複合床版を完全に密閉することができる。
【0034】
(2) サンドイッチ型複合床版と主桁の接合部において、シーリング材の外側にカバープレートを設け、カバープレートの外側に底鋼板の下面から主桁の上フランジの下面にかけて重防食塗装を施すことによって、サンドイッチ型複合床版と主桁の接合部との間に生じる隙間を埋め、床版内部のコンクリートへの浸水を防ぎ、サンドイッチ型複合床版を完全に密閉することができる。
【0035】
(3) 底鋼板と上フランジの間に設けたシーリング材の外側に重防食塗装を施すことによって、シーリング材が水分によって劣化するのを防ぐことができる。
【0036】
(4) 重防食塗装は防食性に優れているため、サンドイッチ型複合床版と主桁との接合部付近の底鋼板や主桁、カバープレートなどが錆びるのを防ぎ、サンドイッチ型複合床版の耐久性を向上させることができる。
【0037】
(5) 重防食塗装は耐候性に優れているため、紫外線を遮断し、シーリング材が紫外線によって劣化するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明に係るサンドイッチ型複合床版の一実施形態を示した概略斜視図である。
図2】本発明に係るサンドイッチ型複合床版の一実施形態を示したもので、橋軸直角方向に対する拡大断面図である。
図3図2の実施形態におけるX−X′断面図である。
図4】本発明に係るサンドイッチ型複合床版において、カバープレートを用いた場合の一実施形態を示したもので、橋軸直角方向に対する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の具体的な実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下に示される実施形態に限定されるものではない。
【0040】
図1に、本発明に係るサンドイッチ型複合床版21の一実施形態を概略斜視図で示した。サンドイッチ型複合床版21を道路橋などに用いる場合、図1に示したようにサンドイッチ型複合床版21は下方から主桁7に支持される。サンドイッチ型複合床版21の上鋼板1の上には防水層22を設け、防水層22の上に舗装23を施す。
【0041】
サンドイッチ型複合床版21は、床版上面(上鋼板1上面)に滞水する場合があるため、スラブドレーンや導水管による橋面排水、上鋼板1上面の防錆処理などの対策を実施しているため、上鋼板1から床版コンクリート内部へ水分が侵入することはない。
【0042】
しかし、横殴りの雨などの荒れた天候下や橋面から跳ねる水分などによって、水分が底鋼板2を伝って、底鋼板2と主桁7の上フランジ7aとの隙間から床版コンクリート内部へ浸水する場合があるため、本発明では、サンドイッチ型複合床版21と主桁7の接合部に重防食塗装4を行なう。
【0043】
図2、3は、図1のような実施形態における拡大断面図を示したものであり、図2は橋軸直角方向に対する断面図、図3は橋軸方向に対する断面図である。
【0044】
サンドイッチ型複合床版21は、底鋼板2の上面に所要間隔で複数本のH形鋼11を並列に配置し、隣接するH形鋼11の間に上鋼板1を架け渡している。上鋼板1と底鋼板2との間に中空部を有する鋼殻が形成され、その鋼殻内にコンクリート9を充填してコンクリート床版を形成する。
【0045】
サンドイッチ型複合床版21を下方から支持する主桁7との接合部は、底鋼板2と主桁7の上フランジ7aとの間に橋軸方向にシーリング材5を設ける。
また、主桁7の上フランジ7aの上面に、鉛直方向にスタッドボルト3を設けることによって、床版内部のコンクリートと主桁7の上フランジ7aとの付着を強め、一体化させている。
【0046】
シーリング材5を設けることによって、底鋼板2と主桁7の上フランジ7aとの隙間を埋め、底鋼板と主桁からの浸水を防ぐとともに、底鋼板2下面と上フランジ7aとの設置誤差を吸収させる。
【0047】
しかし、シーリング材5の劣化などにより、底鋼板2と主桁7の上フランジ7aとの間に隙間が生じ、その隙間から浸水し、床版コンクリート内部が劣化する場合があるため、シーリング材5の外側に、底鋼板2の下面から上フランジ7aの外側面にかけて、重防食塗装4を施して、シーリング材5を保護する。
【0048】
重防食塗装は、主に鋼材などの腐食防止を目的とした塗装であり、従来、例えば海岸沿いなど過酷な腐食性環境に建設される鋼構造物や鋼管杭などに用いられている。また、重防食塗装は、上塗塗膜、中塗塗膜、下塗塗膜、防食下地から構成されており、重防食塗装5に用いられる塗料および材料の例を表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
シーリング材5の外側に、底鋼板2の下面から上フランジ7aの外側面にかけて重防食塗装4を施すことによって、シーリング材5のひび割れや剥がれなどの劣化を防ぎ、底鋼板2と主桁7の上フランジ7aとの間に隙間が生じないようにして、シーリング材5の隙間から床版内部のコンクリート9へ浸水するのを防ぐ。
【0051】
また、重防食塗装4は防食性や耐候性に優れているため、接合部付近の底鋼板2や主桁7に対して防錆効果を図ることができる。
さらに、重防食塗装4はシーリング材5への紫外線を遮断するため、シーリング材5が紫外線によって劣化することなく、更なる延命化を図ることもできる。
【0052】
よって、シーリング材5が水分や紫外線などによって劣化することがなく、床版コンクリート内部に水分が侵入しないため、サンドイッチ型複合床版21をほぼ完全に密閉することができ、サンドイッチ型複合床版21の耐久性を向上させる。
【0053】
図4には、本発明に係るサンドイッチ型複合床版21において、底鋼板2と主桁7の上フランジ7aとの接合部にカバープレート6を用いた場合の拡大断面図を示した。
【0054】
なお、橋軸方向の断面図は、図3の実施形態とほぼ同様であり、サンドイッチ型複合床版21は、底鋼板2の上面に所要間隔で複数本のH形鋼11を並列に配置し、隣接するH形鋼11の間に上鋼板1を架け渡している。
上鋼板1と底鋼板2との間に中空部を有する鋼殻を形成し、その鋼殻内にコンクリート9を充填してコンクリート床版を形成する。
【0055】
サンドイッチ型複合床版21を下方から支持する主桁7との接合部は、底鋼板2と主桁7の上フランジ7aとの間に橋軸方向にシーリング材5を設け、シーリング材5の外側にカバープレート6をスタッドボルト10で留めている。シーリング材5とカバープレート6との間には、モルタル8などを充填する。
【0056】
カバープレート6の外側に、底鋼板2の下面から主桁7の上フランジ7aの外側面にかけて、重防食塗装4を施して、カバープレート6と底鋼板2との隙間、カバープレート6と上フランジ7aとの隙間をなくし、床版内部のコンクリート9へ水分が侵入しないようにする。
【0057】
また、カバープレート6の外側に、底鋼板2の下面から上フランジ7aの外側面にかけて重防食塗装4を施すことによって、カバープレート6を保護し、カバープレート6の錆などによる劣化を防ぐことができる。
【0058】
よって、サンドイッチ型複合床版21の底鋼板2と主桁7の上フランジ7aとの接合部に重防食塗装を施した場合、底鋼板2と主桁7の上フランジ7aとの接合部の隙間を塞ぐとともに、シーリング材5やカバープレート6などの劣化を防ぎ、隙間が生じることもないため、サンドイッチ型複合床版21をほぼ完全に密閉することができ、サンドイッチ型複合床版21の耐久性を向上させることができる。
【0059】
サンドイッチ型複合床版21に重防食塗装を施した場合、補修は重防食塗装をするだけで済むようになり、補修や管理の手間が容易で、安全性の高いサンドイッチ型複合床版21を提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0060】
1…上鋼板(デッキプレート)、
2…底鋼板、
3…スタッドボルト、
4…重防食塗装、
5…シーリング材、
6…カバープレート、
7…主桁、7a…上フランジ、7b…ウェブ、
8…モルタル、
9…コンクリート、
10…スタッドボルト、
11…H形鋼、
21…サンドイッチ型複合床版、
22…防水層、
23…舗装
図1
図2
図3
図4