【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、サンドイッチ型複合床版を用いる場合、底鋼板と主桁との接合部にはシーリングを施しているが、経年劣化や水分、紫外線による劣化によって、シーリング材にひび割れや剥がれが生じる場合がある。
【0009】
シーリング材の劣化が進めば、施工当初の防水機能や伸縮機能を維持することは難しくなる。また、サンドイッチ型複合床版の底鋼板と主桁との接合部に隙間が生じることで、底鋼板に残った水分が底鋼板を伝って、床版コンクリート内部へ浸水してしまい、床版内部の劣化を引き起こすことになる。
【0010】
よって、サンドイッチ型複合床版を使用する場合、底鋼板と主桁との接合部に設けたシーリング材の劣化を防ぎ、隙間が生じるのを防ぐことができれば、水密性や気密性は完全に保持されることになる。
【0011】
本発明は、上述のような課題を図ったものであり、サンドイッチ型複合床版と主桁との接合部において、シーリング材の劣化や床版内部への浸水を防ぐサンドイッチ型複合床版の防水・防錆構造を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るサンドイッチ型複合床版の防水・防錆構造は、底鋼板と、底鋼板の上面に所要間隔で並列に配置した複数本の形鋼と、隣接する形鋼間に架け渡した上鋼板とで、底鋼板と上鋼板との間に形成した中空部にコンクリートを充填してなるサンドイッチ型複合床版と、サンドイッチ型複合床版を下方から支持する主桁との接合部において、接合部には、底鋼板と主桁の上フランジとの間に橋軸方向にシーリング材を設け、シーリング材の外側に、底鋼板の下面から主桁の上フランジの外側面にかけて重防食塗装を施して
、シーリング材を保護することによって、シーリング材の劣化を防ぎ、シーリング材の隙間からサンドイッチ型複合床版内部のコンクリートへ浸水するのを防ぐようにしたことを特徴とするものである。
【0013】
一般的にサンドイッチ型複合床版は、底鋼板の上面に所要の間隔をあけて並列に複数本の形鋼を配置し、隣接する形鋼どうしに上鋼板を架け渡して並べ、底鋼板と上鋼板との間に中空部を形成し、その中空部にコンクリートを充填することで構成されている場合が多い。
【0014】
主にサンドイッチ型複合床版を道路橋などに用いる場合は、主桁の上にサンドイッチ型複合床版を載置する構成とし、サンドイッチ型複合床版と主桁との接合部は、底鋼板と主桁の上フランジとの間に橋軸方向にシーリング材を設けている。
【0015】
シーリング材を設けることによって、底鋼板と主桁の上フランジとの隙間を埋め、底鋼板と主桁からの浸水を防いでいる。しかし、シーリング材の劣化などにより、底鋼板と主桁の上フランジとの間に隙間が生じ、その隙間から浸水し、床版コンクリート内部が劣化することがある。
【0016】
そこで、シーリング材の外側に、底鋼板の下面から上フランジの外側面にかけて重防食塗装を施して、シーリング材を保護することによって、シーリング材の劣化を防ぎ、シーリング材の隙間から床版内部のコンクリートへ浸水するのを防ぐ。
【0017】
シーリング材の劣化を防ぎ、底鋼板と主桁の上フランジとの間に生じる隙間を無くすことができるため、床版コンクリート内部に浸水することがなく、サンドイッチ型複合床版をほぼ完全に密閉することができる。
【0018】
重防食塗装は、主に鋼材などの腐食防止を目的とした塗装であり、例えば海岸沿いなど過酷な腐食性環境に建設される鋼構造物や鋼管杭などに用いられているものであるが、本発明はこれを、接合部付近の底鋼板から主桁にかけて用いることとしたものである。
【0019】
重防食塗装はもともと、防食性や耐候性に優れているため、底鋼板や主桁に対する高い防錆効果が得られるが、さらに、重防食塗装によりシーリング材への紫外線を遮断することができるため、シーリング材が紫外線によって劣化することなく、更なる延命化に繋がる。
【0020】
重防食塗装を施した場合は、補修として重防食塗装を再度行うだけで済むことになり、補修や管理の手間が容易で、安全性の高いサンドイッチ型複合床版を提供することが可能になる。
【0021】
本発明で施す重防食塗装は、シーリング材の耐久性を向上させるためには、底鋼板下面とシーリング材および上フランジ上面とシーリング材の隙間を完全に密閉するようにすることが好ましい。
【0022】
サンドイッチ型複合床版は、横殴りの雨などの荒れた天候下や橋面から跳ねる水分などによって、水分が底鋼板を伝って、底鋼板と主桁の上フランジとの隙間から浸水し、シーリング材を劣化させる場合があった。
【0023】
本発明では、シーリング材の外側に重防食塗装を施すことによって、底鋼板下面とシーリング材および上フランジ上面とシーリング材の隙間を無くし、サンドイッチ型複合床版を完全に密閉することができるため、底鋼板と主桁との接合部からの浸水を防ぎ、サンドイッチ型複合床版の耐久性を向上させることができる。
また、シーリング材は、底鋼板下面と上フランジの設置誤差を吸収し、かつ内部への浸水を防ぐ目的も有している。
【0024】
サンドイッチ型複合床版を道路橋に用いる場合、橋軸直角方向に主桁を所要の間隔で配設し、隣接する主桁の上フランジどうしに底鋼板を載置する。その際、底鋼板と主桁の上フランジとの間に設置誤差が生じる可能性がある。そこで、底鋼板と上フランジの重なる部分の橋軸方向にシーリング材を設けることで、底鋼板と上フランジの設置誤差を吸収させることができる。
また、シーリング材は、底鋼板と上フランジとの隙間からサンドイッチ型複合床版内部へ浸水するのを防ぐ働きがある。
【0025】
本発明において使用するシーリング材としては、合成樹脂製のシールパッキン、例えばクリヤマ株式会社の商品名モルトメール(登録商標)のようなものが適しているが、底鋼板と上フランジとの設置誤差を吸収することができ、耐久性や強度面において問題のないものであれば種類等は問わない。
【0026】
また、本発明に係るサンドイッチ型複合床版の防水・防錆構造は、底鋼板と、底鋼板の上面に所要間隔で並列に配置した複数本の形鋼と、隣接する前記形鋼間に架け渡した上鋼板とで、底鋼板と上鋼板との間に形成した中空部にコンクリートを充填してなるサンドイッチ型複合床版と、サンドイッチ型複合床版を下方から支持する主桁との接合部において、底鋼板と主桁の上フランジとの間に橋軸方向にシーリング材を設け、シーリング材の外側に、底鋼板の下面から上フランジの外側面にかけてカバープレートを設け、カバープレートの外側に、底鋼板の下面から主桁の上フランジの下面にかけて重防食塗装を施
して、シーリング材を保護することによって、シーリング材の劣化を防ぎ、シーリング材の隙間からサンドイッチ型複合床版内部のコンクリートへ浸水するのを防ぐような構成としてもよい。
【0027】
サンドイッチ型複合床版と主桁との接合部において、底鋼板と主桁の上フランジとの間に橋軸方向にシーリング材を設け、シーリング材の外側に鋼板などのカバープレートを設ける。カバープレートとシーリング材との間には、モルタルなどを充填すればよく、カバープレートは、例えばスタッドボルトなどで留めるとよい。
【0028】
カバープレートを設けることによって、シーリング材を保護することができるが、底鋼板とカバープレートとの間や主桁の上フランジとカバープレートとの間に隙間が生じる場合があるため、カバープレートの外側に、底鋼板の下面から主桁の上フランジの下面にかけて重防食塗装を施す。
【0029】
カバープレートの外側に、底鋼板の下面から主桁の上フランジの下面にかけて重防食塗装を施すことによって、底鋼板とカバープレートとの間や主桁の上フランジとカバープレートとの間を埋めることができる。
【0030】
また、底鋼板とカバープレートとの間や主桁の上フランジとカバープレートとの間から浸水することがなくなるため、シーリング材の劣化を防ぎ、シーリング材の隙間から床版内部のコンクリートへ浸水するのを防ぐことができる。
さらに、重防食塗装の防錆効果によって、カバープレートやアンカーボルトなどが錆びて劣化してしまうのを防ぎ、耐久性が向上する。
【0031】
以上より、本発明に係るサンドイッチ型複合床版は、底鋼板と主桁の上フランジとの接合部の外側に、底鋼板の下面から上フランジにかけて重防食塗装を施すことによって、シーリング材の劣化を防ぎ、床版コンクリート内部に水分が侵入することがなく、サンドイッチ型複合床版を完全に密閉することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果が得られる。
【0033】
(1) サンドイッチ型複合床版と主桁の接合部において、底鋼板と上フランジの間に設けたシーリング材の外側に、底鋼板の下面から上フランジの外側面にかけて重防食塗装を施すことによって、サンドイッチ型複合床版と主桁の接合部との間に生じる隙間を埋めるとともに、シーリング材を保護し、床版内部のコンクリートへの浸水を防ぎ、サンドイッチ型複合床版を完全に密閉することができる。
【0034】
(2) サンドイッチ型複合床版と主桁の接合部において、シーリング材の外側にカバープレートを設け、カバープレートの外側に底鋼板の下面から主桁の上フランジの下面にかけて重防食塗装を施すことによって、サンドイッチ型複合床版と主桁の接合部との間に生じる隙間を埋め、床版内部のコンクリートへの浸水を防ぎ、サンドイッチ型複合床版を完全に密閉することができる。
【0035】
(3) 底鋼板と上フランジの間に設けたシーリング材の外側に重防食塗装を施すことによって、シーリング材が水分によって劣化するのを防ぐことができる。
【0036】
(4) 重防食塗装は防食性に優れているため、サンドイッチ型複合床版と主桁との接合部付近の底鋼板や主桁、カバープレートなどが錆びるのを防ぎ、サンドイッチ型複合床版の耐久性を向上させることができる。
【0037】
(5) 重防食塗装は耐候性に優れているため、紫外線を遮断し、シーリング材が紫外線によって劣化するのを防ぐことができる。