(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335017
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ケーブル保持装置とそれを備えた自動車搬送装置
(51)【国際特許分類】
F16G 13/16 20060101AFI20180521BHJP
H02G 11/00 20060101ALI20180521BHJP
B65G 1/04 20060101ALI20180521BHJP
E04H 6/18 20060101ALI20180521BHJP
E04H 6/24 20060101ALI20180521BHJP
E04H 6/22 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
F16G13/16
H02G11/00 C
B65G1/04 531D
E04H6/18 609
E04H6/24 C
E04H6/22 A
E04H6/18 601H
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-101194(P2014-101194)
(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公開番号】特開2015-218771(P2015-218771A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年10月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】大塚 康平
(72)【発明者】
【氏名】信藤 経雄
【審査官】
高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−182463(JP,A)
【文献】
実開昭53−121495(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3035213(JP,U)
【文献】
特開平06−002449(JP,A)
【文献】
特開2001−301915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 13/16
B65G 1/04
E04H 6/18
E04H 6/22
E04H 6/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを挿通させる内部空間を有する保持部と、前記保持部の左右位置から前記ケーブルの配線方向に突出し所定位置に穴部を有する支持部と、を有するケーブル保持部材を複数備え、
前記ケーブル保持部材は、隣り合う二つの支持部が重ねられ、該重ねられた支持部の前記穴部に軸部材が挿通されることによって、全ての前記ケーブル保持部材が配線方向に連なるように連結され、
前記穴部から両側方に突出する前記軸部材に前記ケーブル保持部材の上下方向寸法よりも大径のローラを有し、
全ての前記ケーブル保持部材のうちの少なくとも一部の前記ケーブル保持部材が第1ケーブル保持部材であり、
前記第1ケーブル保持部材は全てが同一形状であり、
ケーブル保持装置の全長のうちの少なくとも一部区間は、前記第1ケーブル保持部材が連結されることにより構成され、
前記一部区間においては、前記第1ケーブル保持部材が左右の向きを交互に反転させながら連結されており、かつ、各々の前記第1ケーブル保持部材の支持部はその両隣りの前記第1ケーブル保持部材の支持部に対して、左右方向における同じ方向から重ねて連結されていることを特徴とするケーブル保持装置。
【請求項2】
ケーブルを挿通させる内部空間を有する保持部と、前記保持部の左右位置から前記ケーブルの配線方向に突出し所定位置に穴部を有する支持部と、を有するケーブル保持部材を複数備え、
前記ケーブル保持部材は、隣り合う二つの支持部が重ねられ、該重ねられた支持部の前記穴部に軸部材が挿通されることによって、全ての前記ケーブル保持部材が配線方向に連なるように連結され、
前記穴部から両側方に突出する前記軸部材に前記ケーブル保持部材の上下方向寸法よりも大径のローラを有し、
前記ケーブル保持部材は、周囲の一部に、少なくともケーブルを内部空間に入れることができる開口部を有し、
ケーブル保持装置の全長のうちの少なくとも一部区間においては、前記ケーブル保持部材の前記開口部が上下で交互に位置するように連結されていることを特徴とするケーブル保持装置。
【請求項3】
前記穴部と前記軸部材との間に摺動部材が設けられている請求項1又は2に記載のケーブル保持装置。
【請求項4】
前記ローラは、外面中央部に凹部を備え、
前記軸部材は、前記凹部に端部が位置する長さに設定されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のケーブル保持装置。
【請求項5】
自動車を載置面から持上げた状態で搬送する自動車搬送装置であって、
自動車を載置面から持上げて走行する台車を有し、
前記台車は、動力源の供給を受けて駆動される動力機器を有し、
前記台車と固定側との間に、前記動力機器に対して動力源を供給するための前記ケーブルと、請求項1〜4のいずれか1項に記載のケーブル保持装置とを備え、前記ケーブル保持装置によって前記ケーブルが保持されていることを特徴とする自動車搬送装置。
【請求項6】
前記台車は、前記ケーブル保持装置の固定側に対して対向する両方向への走行が可能なように構成されている請求項5に記載の自動車搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力配線等のケーブルを保持して案内するケーブル保持装置と、それを備えた自動車搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気駆動機、油圧駆動機などで駆動される機械等には、電気配線、油圧ホース、エアホース等の動力配線(この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、総称して「ケーブル」という)を引き摺りながら移動するものがある。そのため、移動によるケーブルの損傷を防ぐために、固定側と移動側との間にケーブルを保持した状態で移動するケーブル保持装置を用いる場合がある。
【0003】
例えば、この種の先行技術として、リンク結合部に液体圧ホース及び電線の通路を形成し、両外側にローラを設けたチェーンを有する可撓体がある。この可撓体は、通路に液体圧ホース等を通し、リンクの屈曲とローラの回転とによって液体圧ホース等を保持して案内するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他の先行技術として、一対のレールの対向する面に、長手方向に蟻溝を形成し、その蟻溝に係合して長手方向に移動可能な軸支持部材に軸支されたローラを複数個配設したガイドレールがある。このガイドレールでは、ケーブル保護案内装置の横ぶれ防止と磨耗低減を図ろうとしている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−182463号公報
【特許文献2】特開2010−53961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の場合、リンク結合部を貫通するように通路を確保しているため、製作精度が必要な上に、ローラとリンク結合部が一体となって回ると、ケーブルを損傷するおそれがある。また、通路の寸法はケーブルの端末部を通すことができる大きな通路が必要になり、多くのケーブルを保持する場合には構成全体が大きくなり、大幅な重量増加となる。
【0007】
また、上記特許文献2の場合、長いケーブルを保持してローラを軸支した軸支持部材をレールの蟻溝に沿って移動させるためには、ケーブル保持部の両外側に長いガイドレールが必要となり、装置が大型化してしまう。
【0008】
さらに、この種のケーブル保持装置の場合、使用条件によっては、案内面(走行面)に多少の隙間や段差等がある場所があるが、このような場所で使用した場合にローラが案内面の隙間や段差に引っ掛からないようにする必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、コンパクトに形成でき、案内面の隙間、段差などに影響を受けにくいケーブル保持装置と、それを備えた自動車搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るケーブル保持装置は、ケーブルを挿通させる内部空間を有する保持部と、前記保持部の左右位置からケーブルの配線方向に突出し所定位置に穴部を有する支持部と、を有するケーブル保持部材を複数備え、前記ケーブル保持部材は、隣り合う二つの支持部が重ねられ、該重ねられた支持部の穴部に軸部材が挿通されることによって、全てのケーブル保持部材が配線方向に連なるように連結され、前記穴部から両側方に突出する前記軸部材に前記ケーブル保持部材の上下方向寸法よりも大径のローラを有している。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「配線方向」は、ケーブルの延びる方向をいう。
【0011】
この構成により、複数のケーブル保持部材の支持部を軸部材でリンク状に連結して、その配線方向に連なるリンク結合した連結部に大径のローラを有しているので、ローラが案内面に接した状態でケーブル保持部材が屈曲しながら走行でき、走行抵抗が小さくコンパクトなケーブル保持装置を構成することができる。しかも、案内面にガイドなどは必要なく、案内面に多少の隙間、段差等があっても、配線方向に設けられたローラによってスムーズに走行することができる。その上、一方又は対向する方向の両方向に屈曲できる。
【0012】
また、前記軸部材は、左位置の支持部から右位置の支持部までを貫通するように設けられていてもよい。
【0013】
このように構成すれば、ケーブル保持部材の左位置の支持部から右位置の支持部までを貫通するように設けた軸部材により、ケーブル保持部材の内部空間を上下2段で使用することができる。しかも、軸部材の上下に通したケーブルは、屈曲時に発生するケーブル同士の摩擦も低減できる。
【0014】
また、前記ケーブル保持部材は、周囲の一部に、少なくともケーブルを内部空間に入れることができる開口部を有していてもよい。
【0015】
このように構成すれば、開口部からケーブル保持部材の内部にケーブルを入れることができるので、ケーブルの末端寸法に制約を受けずに内部空間にケーブルを入れることができる。しかも、ケーブル保持部材の軽量化も図れる。
【0016】
また、全ての前記ケーブル保持部材のうちの少なくとも一部のケーブル保持部材が第1ケーブル保持部材であり、前記第1ケーブル保持部材は全てが同一形状であり、ケーブル保持装置の全長のうちの少なくとも一部区間は、前記第1ケーブル保持部材が連結されることにより構成され、前記一部区間においては、第1ケーブル保持部材が左右の向きを交互に反転させながら連結されており、かつ、各々の第1ケーブル保持部材の支持部はその両隣りの第1ケーブル保持部材の支持部に対して、左右方向における同じ方向から重ねて連結されていてもよい。
【0017】
このように構成すれば、ケーブル保持部材を同一形状の第1ケーブル保持部材として製作し、その第1ケーブル保持部材の製作時に左右位置の穴部にピッチ寸法差があったとしても、交互に反転させて連結することでそのピッチ寸法差の影響を受けないように連結することができ、製作誤差の影響を受けにくくできる。
【0018】
また、前記穴部と軸部材との間に摺動部材が設けられていてもよい。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「摺動部材」は、例えば、樹脂製ブッシュなど、摩擦抵抗を低減させる部材をいう。
【0019】
このように構成すれば、摺動部材で軸部材と穴部との間における摩擦抵抗を小さくでき、耐久性を向上させることができる。
【0020】
また、前記ローラは、外面中央部に凹部を備え、前記軸部材は、前記凹部に端部が位置する長さに設定されていてもよい。
【0021】
このように構成すれば、ケーブル保持部材の両側部外側に設けられるローラの外面に軸部材の端部を位置させて、軸部材がローラの外面から側方に突出するのを抑えることができる。
【0022】
一方、本発明に係る自動車搬送装置は、自動車を載置面から持上げた状態で搬送する自動車搬送装置であって、自動車を載置面から持上げて走行する台車を有し、前記台車は、動力源の供給を受けて駆動される動力機器を有し、前記台車と固定側との間に、前記動力機器に対して動力源を供給するためのケーブルと、前記いずれかのケーブル保持装置とを備え、前記ケーブル保持装置によって前記ケーブルが保持されている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「動力源」は、電気、油、水、空気などを含む。
【0023】
この構成により、台車で自動車を載置面から持上げて所定の位置まで走行するときに、ケーブル保持装置で保持したケーブルによって動力機器の動力源を安定して供給しながら、ケーブルを適切に保持した状態を保つことができる自動車搬送装置を構成することができる。
【0024】
また、前記台車は、前記ケーブル保持装置の固定側に対して対向する両方向への走行が可能なように構成されていてもよい。
【0025】
このように構成すれば、ケーブル保持装置の固定側に対して、台車が一方向と、その対向する方向に走行したとしても、ケーブル保持装置はいずれの方向にも適切に屈曲できるので、保持されたケーブルはいずれの方向でも適切に保持できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ケーブル保持装置をコンパクトな構成にできるとともに、配線方向に設けられた大径のローラによって案内面に多少の隙間、段差があっても安定して走行することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係るケーブル保持装置を示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は
図1に示すケーブル保持装置の連結した状態の斜視図である。
【
図3】
図3は
図2に示すケーブル保持装置のIII−III矢視の断面図である。
【
図4】
図4は
図3に示すケーブル保持装置の右部を示す拡大図である。
【
図5】
図5(a),(b) は
図1に示すケーブル保持装置の使用状態を示す側面図である。
【
図6】
図6は
図1に示すケーブル保持装置を備えた自動車搬送装置による自動車搬送前の状態を示す側面図である。
【
図8】
図8は
図7に示す状態から自動車搬送装置により自動車を持上げた状態を示す平面図である。
【
図9】
図9は
図8に示す状態から自動車搬送装置により自動車を搬送する状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、複数本のケーブル50を上下2段で保持できるようにしたケーブル保持装置20を例に説明する。なお、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における前後左右方向の概念は、
図2に示すケーブル保持装置20を配線方向Cから見た状態における上下左右方向の概念と一致するものとする。
【0029】
図1に示すように、この実施形態のケーブル保持装置20には、ケーブル50の配線方向Cから見て矩形の枠状に形成された保持部22と、この保持部22の左右位置から配線方向Cの前後に向けて突出する支持部23とを有するケーブル保持部材21が備えられている。ケーブル保持部材21の保持部22には、上下面の片面に開口部24が設けられている。この実施形態の開口部24は、片面の中央部に設けられており、この開口部24は保持部22内にケーブル50を挿入できる大きさになっている。この実施形態では、開口部24を、幅方向の中央部に設けているが、左右方向に片寄って設けてもよい。開口部24を設けることで、後述するようにケーブル50を入れることができる他、ケーブル保持装置20の軽量化を図ることができる。また、枠状に形成された保持部22の内部が、ケーブル50を挿通する内部空間27である。このケーブル保持部材21は、板材の曲げ加工で形成できる。
【0030】
さらに、上記支持部23には、所定位置に穴部25,26が設けられている。この実施形態では、配線方向Cの前後方向一方(図の右側)には大径穴部25が設けられ、他方(図の左側)には小径穴部26が設けられている。
【0031】
そして、上記ケーブル保持部材21は、隣り合う二つのケーブル保持部材21の支持部23が重ねられ、この重ねられた支持部23の穴部25,26に軸部材30が挿通されて、複数のケーブル保持部材21が配線方向Cに連なるように連結されている。しかも、この実施形態では、全てのケーブル保持部材21のうちの少なくとも一部(この例では、図示する全て)のケーブル保持部材21が、全て同一形状の第1ケーブル保持部材21(同一の部材であり、同一の符号を付す)となっている。そして、ケーブル保持装置20の全長のうちの少なくとも一部区間(この例では、図示する全ての区間)は、この第1ケーブル保持部材21が連結されることにより構成されている。このように、一部区間において、第1ケーブル保持部材21が左右の向きを交互に反転させながら連結され、かつ、各々の第1ケーブル保持部材21の支持部23はその両隣りの第1ケーブル保持部材21の支持部23に対して、左右方向における同じ方向から重ねて、穴部25,26が軸部材30で連結されている。
【0032】
このようにすれば、全て同一形状の第1ケーブル保持部材21を製作し、それらを交互に反転させて組み付けることで、第1ケーブル保持部材21の左右位置における大径穴部25と小径穴部26とのピッチPに製作誤差があったとしても、その誤差が交互に逆となった状態で第1ケーブル保持部材21を真っ直ぐに連ねることができる。つまり、左右位置における製作誤差による寸法差をキャンセルして、ケーブル保持部材21が側方に曲がらないように真っ直ぐに連結でき、製作誤差の影響を受けにくくできる。なお、このような構成は、全区間であってもよい。
【0033】
また、この実施形態では、ケーブル保持部材21の左右位置に設けられた支持部23の穴部25,26を貫通するように軸部材30が設けられている。これにより、軸部材30の上部でもケーブル50を保持することができ、ケーブル保持部材21の内部空間27にケーブル50を2段で保持できるようにしている。
【0034】
さらに、支持部23を貫通する軸部材30には、ケーブル保持部材21の高さ(上下方向寸法)よりも大径のローラ40が設けられている。このローラ40は、中央部に設けられた軸穴42に大径穴部25又は小径穴部26から側方に突出する軸部材30が貫通するように設けられている。
【0035】
上記ケーブル保持部材21は、支持部23に設けられた穴部25,26のピッチPと、保持部22の配線方向Cの寸法CSと、ローラ40の直径Dとが、ケーブル保持部材21がリンク状に連結されてケーブル保持装置20となった状態で、その屈曲させる最小半径に応じて決定される。
【0036】
例えば、電気配線の場合、種類や用途に応じて最小屈曲半径の推奨値が定められ、ケーブル50の直径に対して5倍〜12倍以上の半径で屈曲させるように設計されるため、保持するケーブル50の直径に応じてケーブル保持部材21の高さが設定され、その保持部22の配線方向Cの寸法CSと穴部25,26のピッチPが設定される。すなわち、これらの設定としては、リンク状に連結されたケーブル保持部材21が屈曲して、隣接するケーブル保持部材21の保持部22が当接した状態が最小の屈曲半径となるように設定される。
【0037】
また、上記ケーブル保持部材21の支持部23が重なる位置の大径穴部25には、摺動部材たるブッシュ31が設けられている。この実施形態のブッシュ31は、上記大径穴部25に挿入される挿入部32と、その一端に設けられて挿入部32よりも大径の鍔部33とを有している。このブッシュ31の挿入部32を大径穴部25に挿入することにより、軸部材30と支持部23との間に摺動部材を配置して、摩擦抵抗を小さくするとともに、鍔部33によって連結する支持部23同士の間に所定の軸方向隙間を設けている。しかも、大径穴部25と軸部材30との間にブッシュ31を設けることにより、耐久性の向上も図ることができる。
【0038】
なお、小径穴部26と軸部材30との間にはブッシュ31が設けられていないが、ケーブル保持部材21の連結される支持部23は、ブッシュ31が設けられた大径穴部25と小径穴部26とが軸部材30によって連結されるため、小径穴部26と軸部材30との接触による摩耗を抑制できる。
【0039】
さらに、ケーブル保持部材21とローラ40との間にはワッシャ34が設けられている。このワッシャ34により、ケーブル保持部材21とローラ40との間に軸方向隙間を設けている。この隙間を設けることにより、連結されたケーブル保持部材21が広い面で接触しないようにしている。
【0040】
また、上記軸部材30には、端部に止め輪(Cリング)36が設けられている。後述するように、軸部材30の長さは組み付けられた状態でローラ40の凹部41から突出しない程度の長さで形成されており(
図4)、軸部材30の端部に設けられた溝部35に止め輪36が設けられている。これにより、止め輪36はローラ40の凹部41に位置している。止め輪36が凹部41に位置するようにすれば、幅方向の最外部に位置するローラ40の外面から側方に軸部材30が突出するのを抑えることができる。
【0041】
図2は、ケーブル保持装置20の組立状態を示す斜視図であり、所定長さで切断して示している。図示するように、上記したケーブル保持部材21は、支持部23の穴部25,26が軸部材30でリンク状に連結され、全体としてコンパクトで屈曲可能な配線方向Cに延びるケーブル保持装置20となっている。このケーブル保持装置20は、保持部22でケーブル50を保持し、その両側部に設けられたローラ40によって案内面60の上を小さな抵抗で移動することができる。
【0042】
しかも、ローラ40は所定のピッチPで設けられているため、案内面60に多少の隙間や段差があったとしても、配線方向Cに設けられた複数のローラ40によって隙間や段差を乗り越えてスムーズに移動することができる。
【0043】
また、この実施形態では、上記ケーブル保持部材21を上下が交互に逆向きとなるようにして開口部24が上下で交互に位置するようにしている。これにより、保持部22内に挿入されたケーブル50は保持部22の開口部24の無い部分によって保持されている。
【0044】
その上、保持部22に開口部24を設けたことで、ケーブル50の末端寸法(金具寸法など)に制約を受けずに開口部24から内部空間27にケーブル50を入れることができる。さらに、一部のケーブル保持部材21が損傷した場合でも、開口部24を利用して、連続しているケーブル50の途中部分に、被せるようにケーブル保持部材21を挿入することができ、容易に交換して復旧することが可能である。そのため、ケーブル損傷時における保守管理等に要する費用と時間を大幅に減らすことができる。
【0045】
図3は、ケーブル保持装置20のIII−III矢視の断面図である。図示するように、上記軸部材30は、ケーブル保持部材21の両側部に設けられた支持部23を貫通するように設けられている。このように軸部材30が両側部の支持部23を貫通するように設けることで、軸部材30の上部でもケーブル50を保持することができ、ケーブル保持部材21の内部空間27に上下2段でケーブル50を保持することができる。
【0046】
図4は、上記
図3に示すケーブル保持装置20における右部の拡大図である。図示するように、上記軸部材30で連結される支持部23は、一方が大径穴部25で他方が小径穴部26であるため、上記ブッシュ31の挿入部32を大径穴部25の一方向から挿入することで、小径穴部26が設けられた支持部23との間に鍔部33で所定の軸方向隙間が設けられている。上記ブッシュ31は、鍔部33と挿入部32とが一体的に形成されたものであり、図の位置では外側に位置する支持部23の大径穴部25に内側から挿入部32が挿入されている。これにより、鍔部33で内側に位置する支持部23との間に軸方向隙間が設けられている。
【0047】
また、外方の支持部23とローラ40との間には、ワッシャ34が設けられている。このワッシャ34により、外方の支持部23とローラ40との間に軸方向隙間が設けられている。
【0048】
さらに、ローラ40の中心部に設けられた軸穴42に挿通された軸部材30は、ローラ40の凹部41から側方に突出しない程度の長さに形成されており、この凹部41に位置する部分に溝部35が設けられている。この溝部35に、止め輪36が設けられている。このように止め輪36でローラ40の外方への移動を規制することにより、左右のローラ40の間に設けられたケーブル保持部材21は、各支持部23とブッシュ31の鍔部33、ワッシャ34との間にある軸方向隙間により左右方向への多少の移動が許容された状態で連結されている。なお、軸部材30は、上記軸方向隙間によって多少移動してローラ40の外面から端部が突出する場合もあるが、その突出量は小さい。
【0049】
図5(a),(b) は、上記ケーブル保持装置20によって保持したケーブル50を、対向する方向に屈曲させた例を示す側面図である。
図5(a) に示すように、上記したようにケーブル保持部材21が連結されたケーブル保持装置20によれば、ローラ40が案内面60に沿うようにケーブル保持部材21が軸部材30を中心に屈曲する。そして、この状態で配線方向Cに引く力が作用すると、ローラ40が案内面60を転動しながら、ケーブル保持部材21は軸部材30を中心に屈曲し、全体として案内面60に沿うように屈曲しながら移動することができる。このケーブル保持装置20の移動は、ローラ40が回転することによって行われるため、小さい摩擦抵抗でスムーズに行うことができる。
【0050】
また、
図5(b) に示すように、ケーブル保持装置20が上記
図5(a) とは対向する方向に屈曲させられたとしても、ケーブル50を保持した状態で軸部材30を中心にケーブル保持部材21が逆方向に屈曲して案内面60に沿って移動することができる。
【0051】
さらに、上記いずれの例も、案内面60の曲げ半径は大きく形成されているので、ケーブル50は緩やかに屈曲した状態で隣接するケーブル保持部材21の保持部22が当接することなく移動しているが、仮に、曲げ半径が小さい場合には、隣接するケーブル保持部材21の保持部22が互いに当接して、曲げ半径がケーブル50に適さない小さな半径になるのを防止することができる。
【0052】
以上のように、上記ケーブル保持装置20によれば、ケーブル保持部材21の屈曲は対向する両方向に対して自在に行われるため、一方向に屈曲させた後、反対方向に屈曲させるような、両方向に屈曲させる用途の場合でも、スムーズな移動が可能である。しかも、長く重いケーブル50であっても抵抗の小さいころがり摩擦で引張ることができ、スムーズな移動ができる。
【0053】
また、ケーブル保持装置20は、上記したように複数の部品を組合わせて構成されているため、ケーブル保持部材21やローラ40などの一部の部品が破損した場合でも容易に交換して復旧することが可能である。
【0054】
次に、
図6〜
図9に基づいて、上記ケーブル保持装置20を備えた自動車搬送装置1の使用例を説明する。この例は、自動車搬送装置1に備えられたタイヤ挟持装置10への給電に使用するケーブル保持装置20を例にしている。また、これらの図では、2組の台車11よりなる自動車搬送装置1によって自動車Vの前タイヤTF及び後タイヤTRを持上げて搬送する例を説明する。なお、タイヤ挟持装置10は、タイヤ挟持アーム(以下、単に「アーム」ともいう)15,16のみを図示して説明する。
【0055】
図6,7に示すように、自動車搬送装置1を載せた搬器3を、格納部2に格納された自動車Vの前方に移動させて停止させる。この状態の自動車搬送装置1は、台車11に設けられたアーム15,16が前後方向Mに開いており、台車11の幅方向から突出しないようになっている。
【0056】
そして、
図8に示すように、台車11を、搬器3から格納部2に位置する自動車Vの前タイヤTFと後タイヤTRとの間に移動させる。この時、ケーブル保持装置20は、複数のローラ40によって載置面4(案内面60)をスムーズに移動することができるので、台車11の安定した走行が可能である。この状態で、一対のアーム15,16を水平方向に回転させる。これにより、一対の第1アーム15及び第2アーム16が左右のタイヤTF,TRを前後から挟み、両アーム15,16を所定の位置まで回転(閉じる)させることで、これらの第1アーム15及び第2アーム16によってタイヤTF,TRが格納部2の載置面4から持上げられた状態で挟持される。
【0057】
その後、
図9に示すように、台車11を搬器3の方向に移動させる。この時も、搬器3から台車11に延びるケーブル保持装置20は、ケーブル保持部材21の支持部23を連結する軸部材30の位置で屈曲しながら複数のローラ40によって載置面4をスムーズに移動することができるため、台車11の安定した走行が可能である。これにより、第1アーム15及び第2アーム16によって載置面4からタイヤTF,TRを浮かされた自動車Vが台車11と一体的に搬器3の上部へ移動させられる。なお、この例では図示する右方に移動する例を説明したが、固定側である搬器3に対して対向する左方に移動することも可能である。この時も、ケーブル保持装置20は、ケーブル保持部材21の支持部23を連結する軸部材30の位置で屈曲しながら複数のローラ40によって載置面4をスムーズに移動することができる。
【0058】
このようにして搬器3に載せられた自動車Vは、搬器3によって所望の場所に移動させられる。例えば、入出庫口に移動させられた場合、台車11が搬器3から入出庫口に移動することで、この台車11に設けられた第1アーム15及び第2アーム16によって挟持されている自動車Vも入出庫口(図示略)に移動させられる。この時も、ケーブル保持装置20は、ケーブル保持部材21の支持部23を連結する軸部材30の位置で屈曲しながら複数のローラ40によって載置面4をスムーズに移動することができる。
【0059】
そして、所望の場所で一対のアーム15,16の先端が開く方向に回転させられ、タイヤTF,TRが載置面に載置されて自動車Vの移送が完了する。その後、移送が完了した自動車搬送装置1は、搬器3に載せられて所望の位置に移動させられる。
【0060】
このように、上記ケーブル保持装置20を備えさせた自動車搬送装置1によれば、台車11が搬器3と格納部2との間で移動するときに、ケーブル保持装置20は小さい走行抵抗でスムーズに引き出され又は引き込まれるので、自動車Vを搬送するときに台車11を安定して走行させることが可能となる。しかも、搬器3と格納部2との間に隙間や段差があったとしても、配線方向Cに設けられた複数のローラ40によって安定した移動が可能である。
【0061】
なお、上記した実施形態では、平面往復式の駐車装置における自動車搬送装置1の動作を例に説明したが、他の形式の駐車装置、工作機械、移動式クレーン等、駆動機器の移動に追従してケーブル50を移動させたい場合の機器においても利用でき、ケーブル保持装置20の適用例は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0062】
また、上記した実施形態では、同一のケーブル保持部材21を連ねた例を示したが、形状の異なるケーブル保持部材を連ねるようにしてもよく、ケーブル保持部材の構成は上記実施形態に限定されるものではない。
【0063】
さらに、上記した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係るケーブル保持装置は、自動車搬送装置の他、工作機械、移動式クレーン等、動力配線等のケーブルを引き摺りながら移動するような機械において利用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 自動車搬送装置
3 搬器(固定側)
10 タイヤ挟持装置
11 台車
20 ケーブル保持装置
21 ケーブル保持部材(第1ケーブル保持部材)
22 保持部
23 支持部
24 開口部
25 穴部(大径穴部)
26 穴部(小径穴部)
27 内部空間
30 軸部材
31 ブッシュ
32 挿入部
33 鍔部
34 ワッシャ
35 溝部
36 止め輪(Cリング)
40 ローラ
41 凹部
42 軸穴
50 ケーブル
60 案内面
P ピッチ
C 配線方向
CS 寸法
M 前後方向
V 自動車