(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記土壌を砂礫で覆う手法では、防草効果を上げるため砂礫の敷設層を厚くする(例えば30cm以上の層厚にする)と草が生え難くはなるが、その反面、植物周囲の土壌が過度に水はけが高まる結果、植物の根元の土壌が乾燥し過ぎてしまい植木に悪影響を及ぼし、その逆に砂礫の敷設層を薄くする(例えば3cm程度に薄くする)とその層の下部で雑草の種が発芽・成長するのを防止することができなくなってしまう。
又、上記特許文献1の如く樹木片で地面を覆う場合には、樹木の材質が軽いので水溜りによる浮き、風雨による吹き寄せ、清掃時の掃き寄せ等によって敷設層の厚みにムラが生じ易く、この結果、部分的に雑草が発生しやすい場所ができてしまうおそれがある。
又、上記特許文献2の如きシートを被覆する場合には、緑地の自然的景観が大きく損なわれ、紫外線などによって合成樹脂製のシート材自体の劣化で破損したり、又強風で捲れたり、又飛来物等による鉤裂きなどの破損が生じることがあり、その破損部分には雑草が発生してしまうおそれがある。更に一旦シートが破損された場合にはその破損箇所の修復が必要となるためその管理が面倒となる。
又、上記特許文献3は、外観が土に近いため植栽場所の土壌面と大きな違和感が生じない反面、その法面被覆材は法面の土壌の流失を防止することが主目的であるのでセメントによって骨材粒子同士を強く結合させて固めるものであるため、新たな樹木等の植え込みや移植の際に、植栽する部分の被覆面を破壊することが必要となる。そして、その工事は被覆面が硬いため樹木等の模様替えによる植物の植え替え作業が困難となってしまうという問題がある。
なお、上記特許文献4の発明は、単に、含まれる油性のアスファルトの成分が植物に対する忌避作用を有することに留意したものであって、そのアスファルト成分で雑草の繁茂の防止を可能とするものであるが、これは後述する粒子間の空隙と粒子表面の撥水性との関係に着眼して雑草に繁茂を防ごうとしたのものではない。
【0005】
上記問題に対し本発明者は鋭意研究を重ね、アスファルトの撥水性・粘性等の特性に着眼して本発明がなされたものであり、先に防草材についての特許出願(特願2014−086433)をしたが、それは6〜7号の粒度の砕石を対象とすることで、比較的粗目の砕石を利用しているが、背の低い草花等の周囲に生える雑草を対象としたときには、むしろより粒度の細かい砂の利用が好ましいことに着目して本発明に至ったものである。
そして、本発明は薄い層での被覆でありながら、植栽周囲の地面に雑草が生えるのを防止可能とすると共に、植物の生育にとって必要な雨水による水分の供給を確保し、植物の健全な成長と緑地の自然景観とを両立させ、施工時には敷設作業をするための適度な流動性を有し且つ施工後の維持管理が容易に行える粒状の防草材と、その防草材の製造方法及びその防草材を用いて行う防草施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、
本発明防草施工方法は、ふるい目5mmを通過する砂を対象とし、総重量割合1〜5wt%の範囲でアスファルトが前記砂の粒子をすべて被覆するまで混合し、前記砂の粒子の周囲にアスファルトの層を形成した防草材を用いた防草施工方法であって、植栽地との境の縁石に接した植栽地側の土壌を掘り下げ、その上に植栽地の平坦部の土壌面と共に透水性を有するシートを敷設し、前記平坦部の前記シートの上に前記防草材を雑草の種子が発芽しない層厚に敷設し、前記縁石に接した掘り下げ部分の前記シートの上には前記防草材を充填してその上面を前記平坦部と面一に前記防草材を敷設することを特徴とする。
【0007】
上記防草材に関する製造方法にあっては、ふるい目5mmを通過する砂を焼成して水分を除去し、溶かしたアスファルトを総重量割合1〜5wt%の配合量で前記砂の粒子の表面がアスファルトの層ですべて被覆されるまで攪拌混合し、冷却して前記アスファルトの層を固化させ防草材を得る
方法とすることができる。
【0008】
上記防草材を用いた防草施工方法にあっては、土壌の上に透水性を有するシートを敷設し、該シートの上に前記防草材を雑草の種子が発芽しない層厚に敷設する
方法とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
上記の如き構成とした本発明は以下の如き効果を奏する。
本発明に用いる防草材にあっては、該防草材がふるい目5mmを通過する砂の粒子が総重量割合1〜5wt%のアスファルトの撥水性を有する薄い層で被覆される。
そして、先に特許出願の発明に使用する6〜7号の砕石と比較すると、例えば7号砕石では2.5mm以下の粒子を含まないのに対し、本願はこれを含みがより細かくこの防草材を地面に敷設すると、その粒子間にはアスファルトの面で囲われて上下左右に連通した空隙が形成され、この空隙は6〜7号の砕石を用いた発明のものよりも小さいものとなり、その小さい空隙は撥水性を有する面で周囲全面が形成される。
上記6〜7号の砕石を用いた発明では、敷設層の上に降った雨水は、時間をかけずにそのまま層を突き抜けて土壌に落下して行くが、本発明では、敷設層の上に降った雨水は、降水量が少量の場合には、降り始めはアスファルトの撥水性により弾かれて表面張力で水玉状又は一定厚の層となって敷設層の上面に留まり、雨後の乾燥を抑制する。
そして、降水量が増えると、敷設層の上面が水で広く覆われ、水の自重で水圧が高まり、水が空隙に時間をかけて進入して行く。その後、その進入先端が敷設層を抜けて土壌に達すると、空隙部分に水の道ができて上面に溜まっていた水が速やかに層を突き抜けて土壌に落下して行く。
その際、水は空隙に入ってもアスファルトに包まれた砂の粒子内部にまで浸透して行くことはない。
この結果、水は敷設層の内部に長時間保持されることなく、アスファルトの撥水面に弾かれつつ速やかに敷設層の下へと通過して行く。
【0011】
又、層内の粒子に付着した一部の残留水は、撥水性のアスファルトで被覆された前記砂の粒子に浸透することができないので小さな水玉となってアスファルトの層の表面に保持され、その水玉は外部に通気した通気路から短時間で空気中に蒸発していく。
即ち、降水量が多い場合でも又少ない場合でも雨がやむと雨水は速やかに敷設層からなくなり、層内の乾燥状態が保持される。
【0012】
一方、前記防草材の敷設層の下面においては、アスファルトの撥水面に阻まれて土壌内の水分は砂の粒子を伝わって上昇して行くことができず、この結果、敷設層内には土壌内の水分が吸水されなくなる。
そして、前記防草材の敷設上に雑草の種子が飛来しても、種子の径より空隙の間口が小さいので空隙内には入り込めず、又アスファルトの粘性によって捕らえられ、前記防草材の表面に滞留する。この敷設層表面の種子は、雨水で一時的に短時間濡れることはあっても乾燥して充分な水分が得られないので発芽が困難となり、又たとえ一時的に発芽できたとしてもその植物は養分も得られないので成長ができずにやがて枯れてしまうこととなる。
【0013】
又、アスファルトの総重量割合は1〜5wt%と一般的な舗装用と比較して極めて少なく、その量で形成される前記防草材の被覆層の厚みは極めて薄い膜状となる。
このため、該防草材を地面に敷設すると5mm以下と小さい径の砂の粒子間に形成される空隙であるにも係らずアスファルトの材料でその空隙が全く目詰まりを起こすことなく上下に円滑に通水可能とした空隙が形成される。
そして、その上に水を流すと、少量の水はアスファルトの撥水面に弾かれて粒子表面に付着することで残留するが、多量の水が溜まると、水の自重による水圧が高まり空隙内に水が進入し、敷設層を上下貫通してできる雨水透水路から速やかに敷設層の下側まで落下して行く。
即ち、前記防草材の敷設層上に降った雨水は多いと速やかに下層の植栽の土壌に吸い込まれ、樹木や草花に自然の水が供給されることとなる。
【0014】
更に、砂の粒子表面は撥水性のアスファルト層で全て被覆されているため、砂の粒子そのものにまでは水分が入り込めず、雨水などで前記防草材の粒子の表面は一時的に水が付着したとしても内部の砂の粒子は全く濡れることなく粒子表面の乾燥状態が維持され、撥水性のアスファルトがその表面から剥離されるのが防止され、長期間安定的にアスファルトによる砂の粒子の全表面の被覆状態が保持される。
【0015】
又、前記防草材を地面に敷設すると、防草材同士が集合してアスファルト面同士で当接し合い、その際、アスファルトの層は固化されているので粒子同士は互いにくっ付き合うことはない。このため、防草材の表面を平坦にする「均し作業」や、防草材が偏って多く集まった場所から少ない場所へと移動させる「寄せ作業」等では、サラサラ感のある状態であるので作業に支障を来たすような塊りの抵抗を受けることなく容易にその作業を行うことが可能となる。
一方、敷設後はアスファルトの粘性により粒子の移動が抑制され、層の敷設時の状態が長期間維持される。即ち、風雨による粒子の移動や流出を抑え、その間敷設表面層に捕らえられた雑草の種子の土壌側への移動が起こらず、雑草の発芽、成長を有効に抑えることが可能となる。
即ち、本発明でいう「サラサラ感のある状態」とは、常温で多量のアスファルトによって互いがくっ付きあって塊状となることはなく、レイキ等による均し作業が可能な程度に互いの移動が可能な状態であるが、一方、アスファルト本来の若干の粘性は残され、敷設後に風によって飛ばされたり、雨による流出等が抑えられる状態をいう。
【0016】
又、原料の乾燥した砂の粒子は灰色等の石材色であっても、前記防草材はアスファルトの被覆で外観が黒色となり、培養土の黒土のように見えるので、植栽土壌として不自然さを与えることがない。
【0017】
上記防草材の製造方法にあっては、焼成工程で、焼成されたふるい目5mmを通過する砂の粒子の表面に含まれる水分が除去される。この際、高温で焼成すれば水分と同時に熱処理前の砂の粒子に付着した雑草の種子、雑草の成長に必要な養分、バクテリア等の有機物が焼却され、殆どが無機物から成る乾燥した砂が得られる。
そして、その乾燥した砂の粒子の表面には撥水性のアスファルトが良好に付着され、加熱して流動性を高めたアスファルトで薄く全ての砂の粒子に満遍なく被覆可能となる。
その際、アスファルトの混合量は、総重量割合を1〜5wt%の配合量とすることで、アスファルト層を砂の粒子表面の全周囲に薄く満遍なく付着でき、前記砂の粒子の全周囲に粘着し合うことがなく、且つ若干の粘性を残したアスファルトの層が形成される。そして、その粒子は水の中に入れても表面で水を弾き、内部の砂は濡れることがなくなる。
【0018】
上記防草材を用いた防草施工方法にあっては、土壌の上に透水性を有するシートを敷設することで、土壌上面の平坦さを安定的に保持して土壌上面に部分的に薄い層が発生するのを防止すると共に雨水を速やかに土壌内へ通過させ、防草材層内に水が保持されるのを防止可能となる。
施工に当たっては、該シートの上に前記防草材を一定の層厚に加圧せず敷き均すことで、粒子間に形成される空隙を壊さずに敷設層に高い透水性を有する広い空隙を長期間維持させることが可能となる。
【0019】
上記防草材を用いた本発明防草施工方法は、縁石との境の土壌部分に集まった雨水により、縁石との境の前記防草材の敷設層の一部が流されたとしても、その下の透水性の優れた厚い層により、雑草の種子はその境部分からも発芽できなくなる。
即ち、水や土埃が集まって平坦部よりも土埃に含まれた水分で雑草が生えやすい縁石際においても、雑草の発生を効果的に防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を以下説明する。
本発明の防草材は、砂の粒子をアスファルトの層で被覆したものであり、
図1に示すように、ふるい目5mmを通過する砂2と総重量割合1〜5wt%の配合量としたアスファルト3とを混合し、すべての砂2の粒子の表面をアスファルト3の層で被覆したものである。
該防草材1は、
図2に示すように、土壌5面に一定の層厚に敷設して使用する。
【0022】
原料の該砂2は、川砂や土を洗い流した山砂などの天延砂や砕石を砕いた砕砂等の「砂」であり、建設資材としてセメント用に使用される一般的な規格の「砂」を使用できるが、それ自体は撥水性がない。
「砂」については、日本工業規格院が下記の如きJIS規格でサイズを規定している。
本発明で呼ぶ「砂」とは、下記の如きJIS規格でサイズが規定されているように、粒径の異なる粒子が混合されている砂のことである。
【0023】
天然砂の粒度(JIS A 5308)
ふるい目を通るものの質量百分率
ふるいの呼び寸法
9.5mm 100%
4.75mm 90〜100%
2.36mm 80〜100%
1.18mm 50〜90%
0.600mm 25〜65%
0.300mm 10〜35%
0.150mm 2〜10%
【0024】
本発明では、上記如く含まれる粒子は大小異なる径のものが複合された規格の「砂」を用いることができる。
【0025】
又、前記アスファルトとは、天然又は石油残渣として瀝青(二硫化炭素に溶ける炭化水素の化合物)を主成分とする半固体或いは固体の粘着性物質をいう。
特に本発明で原料として使用するアスファルトはアスファルト以外の成分が殆ど混入されていないストレート・アスファルトが性能の一定している点で最適である。
そして例えば、下記コスモ石油(株)の製品名「60−80ストレート・アスファルト」の使用が可能である。
そのストレート・アスファルトの製品の物性は次の通りである。
【0026】
針入度(25°C) :69
軟化点 :49.5°C
伸度(15°C) :100+
密度(15℃)g/cm
3 :1.034
動粘度 120°C :931
同上 150°C :212
同上 180°C :71.3
【0027】
上記の如くストレート・アスファルトは、粘着性を有し、常温では固体となり、49.5°Cで軟化する。
そして、動粘度は120°Cで931、180°Cでは71.3であり、温度が高くなると流動性が高まる傾向がある。
【0028】
本発明では、前記アスファルト3を総重量割合1〜5wt%の配合量で使用するが、その量が1wt%より少ないと砂2の粒子への被覆が充分にはなされなくなるおそれが生じ、被覆されない部分が発生するとその部分から中の砂2の粒子に水が浸透する可能性があるので好ましくない。又、得られた粒子は表面にあまりに粘性が乏しくなり、地面に敷設したとき各粒子の相互間の結合性が弱くなることで、敷設層が崩壊し易くなってしまい好ましくない。
その逆に、その量が5wt%より多くなると、粒子相互のサラサラ感が失われ、ベタ付きが生じ敷き均し作業が困難となってしまうので好ましくない。
即ち、前記アスファルト3の最小配合量の限界は粒子の全てが被覆可能な最小量であり、最大配合量の限界は均し作業の困難性によって決めた量である。
【0029】
前記アスファルト3の総重量割合を1〜5wt%の範囲で使用した場合、
図2に示すように、得られた防草材1は土壌5上に、該防草材1を雑草の種子が発芽しない層厚Hに敷設すると、砂2の粒子表面のアスファルト3の粘性により粒子は相互にくっ付き合うことのない状態の接触をしてサラサラ感のある状態となり、製造工場から敷設現場までの運搬中の分配作業や敷設現場での均し作業などでは、前記防草材1をスコップ等で少ない抵抗で容易に掬ったり寄せたりすることができるようになる。
しかも、土壌5面に敷設後は粒子が風雨による移動を抑制され、一旦敷設した層の厚みが長期間保持可能となる。
このような、敷設後の粒子の安定性と、敷設作業の容易性を考慮すると、前記ストレート・アスファルトの総重量割合は3.0wt%の配合量とすることが最適である。
【0030】
本発明で使用する砂2は、ふるい目5mmを通過する砂2を使用する。
又、JIS規格では砂はふるい目4.75mmを通過するものを「砂」と規定しているが、本発明ではふるい目5mmを通過する砂を含み、それより径の大きい「砂利」や「砕石」類は含まない。
なお、前記砂2は自然のものなので運搬中に擦れ合って粉状となった粒子が混入することもあるが少量であれば支障となるものではない。
【0031】
次に本発明の防草材1の製造方法を説明する。
本発明の防草材1の製造は、
図3の(イ)〜(ハ)の工程の模式図及び
図5のフロー図に示すように、焼成工程、混合工程、冷却工程の工程順に進められる。
【0032】
前記焼成工程では、
図3の(イ)に示すように、焼成炉8に入れて砂2を焼成する。
炉内の焼成温度は水分を蒸発させて除去するため100°C以上とし、この工程で砂2の粒子が乾燥状態となる。
又、例えば、焼成炉8の中の温度を160〜180°Cに調節すれば、焼成された砂2の粒子の表面からは水分がなくなるだけではなく、該砂2の粒子に付着していた雑草の種子や植物の成長に必要な養分などの有機物が焼却される。
【0033】
次の、混合工程では、
図3の(ロ)に示すように、前記焼成し乾燥させたふるい目5mmを通過する砂2と、溶かした総重量割合1〜5wt%の配合量のストレート・アスファルト3を攪拌機9に入れ、該攪拌機9の中で砂2の粒子の表面がアスファルト3の層で被覆されるまで充分に攪拌混合する。
このときの攪拌機9内の温度は、アスファルト3の流動性を高めるため180°Cとすると、このときのストレート・アスファルトの動粘度は71.3であり、その高い流動性によって、総重量割合1〜5wt%と全体量からみれば少ない量ではあるがアスファルト3が本来撥水性のない砕石2の粒子の表面に薄く全体に万遍なく被覆され、表面に撥水性を備えた粒子となる。
そして、前記冷却工程では、アスファルト3の層で被覆された砂2を前記攪拌機9から容器内に移して、
図3の(ハ)に示すように、それを常温下に置くなどして冷却し、前記アスファルト3の層を固化させる。
【0034】
このように上記製造工程で得られた粒状の防草材1は、
図1及び
図2に示すように、砂2の粒子の表面が薄いアスファルト3の層で全体に満遍なく被覆され、全表面が撥水面となり全体が光沢のある黒色となる。
なお、原料のアスファルトには顔料を加えることで、容易に緑色や茶色など任意の色に着色するとも可能である。
【0035】
該防草材1を植栽間の土壌5面に敷設したときには、
図2に示すように、アスファルト3の層で表面を被覆された粒子間にできる空隙Sは、上下左右に連通して形成され、上下連通した雨水透水路6が形成されるが、しかし、敷設層の上に降った雨水は、降水量が少量の場合には、アスファルト3の撥水性により弾かれて表面張力で水玉状又は一定の厚みを有する層となって敷設層の上面に載って留まる。
即ち、本発明防草材の発明にあっては、該防草材がふるい目5mmを通過する砂の粒子が総重量割合1〜5wt%のアスファルトの撥水性を有する薄い層で被覆されるが、先に特許出願の発明に使用する6〜7号の砕石と比較すると、例えば7号砕石では2.5mm以下の粒子を含まないのに対し、本願はこれを含み、荒い粒子と細かい粒子の混合されたものとなる。
この防草材を地面に敷設すると、その粒子間にはアスファルトの面で囲われて上下左右に連通した空隙が形成されるが、この空隙は6〜7号の砕石を用いた発明のものよりも小さいものとなる。
その結果、上記6〜7号の砕石を用いた発明では、敷設層の上に降った雨水は、時間をかけずにそのまま層を突き抜けて土壌に落下して行くが、本発明では、敷設層の上に降った雨水は、降水量が少量の場合には、降り始めはアスファルトの撥水性により弾かれて表面張力で水玉状又は一定厚みの層となって一定時間敷設層の上面に留まることになる。
【0036】
そして、この表面に留まった水は、背の低い草花にとって、雨後の乾燥を抑制する働きをする。雨後の乾燥とは、雨が降った後に直射日光等を浴びると表面の土が乾燥に向かい、それを補うべく土中の水が移動して表面付近の土全体が水不足傾向に陥ることをいい、上記根の比較的浅い背の低い草花等にとっては土表面の水不足は成長を妨げる要因となる。しかし、上記敷設層の上面に留まった水は、この雨後の乾燥を抑えることができ、背の低い草花の成長を促すものとなる。
【0037】
一方、降水量が増えると、敷設層の上面が水で広く覆われ、水深が大きくなると水の自重で、水が空隙S内に押し入るように進入して行く。そしてさらにその進入先端が敷設層を抜け、土壌5に達すると、空隙S部分に雨水透水路6ができ、層の上面に溜まっていた水が一気に層を突き抜けて土壌5に落下して行く。
その際、水は空隙に入っても撥水性があるアスファルト3に包まれた砂2の粒子にまで浸透して行くことができず、この結果、水は敷設層の内部に長時間保持されることなく、アスファルト3の撥水面に弾かれつつ敷設層の下へと通過して行く。
このように、降水量が多い場合でも又少ない場合でも、上記表面での滞留が経過した後には、雨水は敷設層からなくなり、層内の乾燥状態が保持される。
【0038】
この層の表面に雑草の種子7が飛来した場合、
図2に示すように、空隙Sの開口部が狭いので層の内部に入れず、又アスファルト3の粘性によって種子が捕らえられ、層の下の土壌5にまでには落下して行くことはない。このため、雑草の種子7へは殆ど水が供給されない。
他方、敷設層の下側では土壌5からの水分が、アスファルト3の層の撥水面に弾かれて砂を伝った上昇ができず、水に含まれる養分も敷設層内には入り込まなくなるため、種子7の発芽および成長の条件である水と養分が敷設層内には保持されなくなる。
この結果、土壌5面に雑草が生えなくなり、たとえ生えたとしてもすぐ枯れてしまう。
【0039】
次に、本発明の防草材1を使用した土壌表面の防草施工方法を説明する。
施工対象場所は、人によって踏み固められる通路ではなく、公園の緑地や家庭園芸を行っている庭等の樹木や草花を栽培している場所の土壌5面である。
その施工は、
図6の防草施工方法(1)に示すように、土壌5面に透水性を有するシート4を敷設するシート敷設工程と、そのシート4上に防草材1を敷設する防草材敷設工程とで行われる。
その施工場所において、先ず、
図2に示すように、表面が平坦となるよう整地した土壌5の上に前記シート4が敷設される。
本発明で使用する透水性の有るシート4とは、雨水を速やかに透過させることが可能なシート4のことであり、合成樹脂製の布、不織布、合成樹脂製の網目シート等のことである。紙のように濡れて容易に破れてしまうシート状のものは濡れて表面の平坦性が損なわれる可能性があるので好ましくはない。
該シート4の上には前記防草材1を雑草の種子7が発芽しない層厚Hで平坦に敷設する。その際、上から加圧せず敷き均すことで、粒子間の空隙Sの圧壊が防がれ、粒子間に広い空隙Sが確保される。
【0040】
前記防草材1の「運搬移動作業」、「敷き均し作業」などの施工において、前記防草材1がサラサラ感のある状態であるので作業に支障を来たすような大きな粘り抵抗を受けることなく容易にその作業を実施することが可能となる。
【0041】
前記シート4を下に敷くのは、土壌5の上面の平坦さを保持し、安定化させるためのものであり、該シート4を敷設しないと、土壌5の上に載せる前記防草材1の粒子が柔らかい土壌内に埋もれ混じり合い、平坦さが損なわれ前記防草材1の層に部分的な薄い層ができるおそれがあるからである。
なお、前記防草材1の敷設する層厚は雑草の種子7が発芽しない層厚Hであり、最大径がふるい目5mmであるので、最小5mm層厚とし、防草効果が得られる最大の厚さは限定するものではなく、層厚は5cmであっても10cmであっても施工は可能なので、施工の上限は特に定めるものではないが、確実な防草効果が得られればそれ以上厚くする必要がなくなり、同時に、前記防草材1を多く使用すればその材料費や施工手間などの費用が増加するのでその経済性を考慮すると20mm以上、好ましくは30mm以上とするのが望ましい。
【0042】
又、小さい径の粒子を用いて3mm以下に層を薄くすると、たとえ層内に水分を保持していなくても、土壌中の水分が蒸発して、水分が前記シート4を抜けて上昇する影響で、表層にある雑草の種子に湿気を与え、種子の発芽の抑止力が低下し、発芽してしまう可能性が高くなるので好ましくない。
【0043】
又、道路に面した縁石部分の防草施工方法については、その施工は、
図7の防草施工方法(2)示すように、土壌5面に透水性を有するシート4を敷設するシート敷設工程と、そのシート4上に防草材1を敷設する防草材敷設工程とで行われるが、縁石10の近傍以外は上記防草施工方法(1)と同じである。
そして、
図4に示すように、縁石10との境ではそこの土壌5を50mmの深さで掘り下げ、その上に平坦部の土壌5面と共に前記シート4を敷設し、縁石10との境の掘り下げ部分11のシート4の上には前記防草材1を充填してその上面を雑草の種子7が発芽しない層厚Hとした前記平坦部と面一に敷設する。
前記平坦部の雑草の種子7が発芽しない層厚については、上記防草施工方法(1)と同様に15mmが最適である。
なお、
図4中に符号12は縁石10で隔てられた道路面舗装層12である。
この形態では、縁石10との境の土壌5部分に集まった雨水で、敷設された前記防草材1の表層の一部が流されたとしても、前記防草材1の厚い層により、雑草の種子7は発芽することができないので、平坦部はもとより雑草が生えやすい縁石10際においても雑草の発生を確実に防ぐことが可能となる。
【実施例】
【0044】
次に本発明の防草材1の実施例を示す。
本発明の製造では砂の原料は、JIS規格であるふるい目4.75mm以上の大きな粒子を除去した粗目砂を使用した。
その砂の比重等の性質は以下の通りである。
表乾比重 :2.604
かさ比重 :2.556
見かけ比重:2.686
吸水量 :1.9%
【0045】
又、アスファルト3は上記コスモ石油(株)製の60−80ストレート・アスファルトを使用し、該ストレート・アスファルト3の総重量割合を3.0wt%となるように計量して用いた。
【0046】
そして、上記砂2とアスファルト3を使用して防草材1を製造した。
製造に当たっては、
図5に示すように、焼成工程、混合工程、冷却工程の各工程を順に行った。
工程順を(イ)(ロ)(ハ)で示した模式図の
図3では、焼成炉8と攪拌機9とを使用する態様を示したが、本実施例では攪拌と焼成とが可能なバーナーを備えた焼成攪拌機を使用した。
そして焼成工程では、160°Cの温度に設定した焼成攪拌機の中で砂2を約15分間焼成した。この結果、吸水量1.9%であった砂2が、焼成されたその粒子には水分が殆ど含まれない程度に除去された。
次の、混合工程では、焼成攪拌機内の温度を160°Cに設定したまま、乾燥した砂2に対して、総重量割合3.0wt%の配合量となるように計量したストレート・アスファルト3を前記焼成攪拌機に入れた。
そして、その160°Cの温度のままで砂2の周囲がアスファルト3の層で被覆されるまで充分に攪拌混合した。攪拌時間は約7分であった。
その後、前記焼成攪拌機から中の粒子を取り出した。
粒子は、アスファルト3の層で砂2の全表面が水に濡らしたように黒くなり、砂2の粒子は薄く満遍なく被覆されていることが確認できた。
そして、次の冷却工程では、前記焼成攪拌機から取り出した粒子を一旦容器に移し入れて常温にて自然冷却させた。
この結果、表面を覆ったアスファルト3が固化され、黒い粒状の防草材1が得られた。
【0047】
次に得られた粒状の防草材1を使用して、
図6に示す防草施工方法(1)の工程で、庭の植木周囲の土壌5の上に敷設した。
その際、
図2に示すように、透水性のあるシート4として、厚さ0.3mmの合成繊維製の不織布を用いてこれを先に敷き、その上に前記防草材1を層厚30mmで該防草材1を加圧せずに敷き均した。
不織布等の透水性を有するシート4を敷くのは、土壌5の表面を平坦化し、その平坦性を安定的に保持させることと、土壌5中に含まれた水分や養分をシート面で遮断し、その上の前記防草材1の層へはできるだけ届かないようにするためのものである。
【0048】
確認のため、その層の上からホースで多量の散水を行ったところ、すぐに水は空隙Sに吸い込まれるように流れ落ち、表面に少量の水滴が残るもの表面に水溜まりはできず、殆ど透水して行った。このことから高い透水性があることが確認された。
【0049】
更に雑草の種子7を採取して前記防草材1敷設層の表面に撒いた。種子7は2mm大から1mm程度の大きさであった。
雑草の種子7は、
図2に示すように、空隙Sの上面開口部付近に留まり、敷設層を一部崩してみたところ、それらは空隙Sを敷設層内に入り込んだ種子はなかった。
数ヶ月間そのまま自然に放置しておいたところ、周囲の敷設していない部分の剥き出しの土壌には雑草が成長していたが、防草材1の敷設面にはほぼ雑草の発生が見られなかった。
【0050】
下記の要領で施工試験を行った。
ふるい目5mmを通過する砂及びアスファルトにストレートアスファルトを用い、それぞれふるい目5mmを通過する砂0.027m
3、ストレートアスファルトを11.25kgとし、上記実施例に示す製法に従って本発明防草材を製作した。
一方、培土として園芸用黒土を選択し、500×500×210mm(これを1桝)が4列に並ぶ木箱を3個用意し、底に培土を平らに敷設した。該培土の上に前記防草材をa)30mm、b)0mm(無処理)の厚みで平らに敷設した。
対象とする雑草としてメヒシバ、コセンダングサを選択し、それぞれ1枡に対し2グラムの量を混合させて播種した。播種の仕方は、メヒシバ、コセンダングサ、を対象としては、2グラムのうち1グラムづつを表面と下面に分けて播種した。その播種の状況の概略については
図8に示した通りである。
施工後1〜2ヶ月毎に発芽状況を観察してその経過を追った。
施工日は平成25年4月中旬に播種し、136日後に生育状況の最終確認をした。
その結果は、下表の通りであった。
【表1】
【0051】
この結果、ふるい目5mmを通過する砂30mm厚においては、メヒシバで左枠に1本、右枠に10本の発芽・生育が観察され、コセンダングサでは左枠に1本、右枠に6本の発芽・生育が観察されたが、無処理(培土のみ)にあってはメヒシバで23本、コセンダングサで16本の発芽及び生育が見られたのに比較すると、本発明に基づく施工の有効性が確認された。
尚、
図8における写真は、施工後約60日経過後の上記施工試験結果の状況を示したものである。