特許第6335021号(P6335021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335021
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】たもぎ茸等のきのこ類を用いた菌発酵液
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/07 20060101AFI20180521BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20180521BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20180521BHJP
   A01N 63/00 20060101ALI20180521BHJP
   C12P 1/04 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61K36/07
   A61K35/742
   A61P31/04
   A61P17/00
   A61P37/08
   A61P39/06
   A61P17/00 101
   A61P31/10
   A61P17/18
   A01N63/00 D
   C12P1/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-107321(P2014-107321)
(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2015-177780(P2015-177780A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2017年4月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-153975(P2013-153975)
(32)【優先日】2013年7月5日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-39951(P2014-39951)
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504401857
【氏名又は名称】後藤 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100174791
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 敬義
(72)【発明者】
【氏名】後藤 富士男
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−069972(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0057790(KR,A)
【文献】 特開2002−335907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A61K 35/00−35/768
A61P 17/00
A61P 17/18
A61P 31/04
A61P 31/10
A61P 37/08
A61P 39/06
C12P 1/04
A01N 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たもぎ茸を原料として枯草菌により発酵を行う発酵工程と,
発酵工程後の発酵残渣物から水溶液成分を抽出する水溶液抽出工程とを経て製造され,殺菌に用いられることを特徴とする殺菌用枯草菌発酵液製造方法
【請求項2】
たもぎ茸を原料として枯草菌により発酵を行う発酵工程と,
発酵工程後の発酵残渣物から水溶液成分を抽出する水溶液抽出工程とを経て製造され,乾癬治療に用いられることを特徴とする乾癬治療用枯草菌発酵液製造方法


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,たもぎ茸等のきのこ類を用いた菌発酵液に関する。さらに詳しくは,きのこ類を原料として,枯草菌等の複合菌を用いて発酵を行い,その発酵残渣から抽出された発酵液,およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
きのこ類は,学術的に厳密な定義付けはされていないが,菌類のうちで比較的大型の子実体を形成するもの,あるいはその子実体そのものとして定義される。
きのこ類は毒性を持ち人体に有害なものもあるが,その多くは食用として用いられ,日本人にとってもなじみ深いものも多い。また,きのこ類は,食用のほか,漢方など医療用ないし医療用成分として用いられるものもある。
【0003】
医療用に用いられるきのこ類として例えば,椎茸が挙げられる。椎茸は,日本において最も有名なきのこ類の一つであるが,古来,明の時代には,医療用として用いられていた記録が残っており,現在でも漢方の生薬成分として用いられている。その他,たもぎ茸やカワハラタケ,アギダケ,オオヒラダケなど,様々なきのこ類が食用,ないし医療用として用いられている。
【0004】
一方,枯草菌(Bacillus subtilis)は,自然界に普遍的に存在する真正細菌の一種である。枯草菌は,土壌中や,空気中に飛散している常在細菌(空中雑菌)の一つでもある。
枯草菌を用いた発酵技術として,例えば,納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)として納豆の製造に用いられるほか,大豆粕の製造に用いられるなど,代表的な有用微生物の一つに挙げられる(特許文献1,特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−136959
【特許文献2】特開2011−055831
【特許文献3】特開2006−104426
【特許文献4】特開2006−249016
【特許文献5】特開2008−174438
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者は,枯草菌等を用いた様々な研究を行っており,その中で,枯草菌等を用いて,生ゴミ等の有機性残渣を発酵させ,発酵物から処理水を得る技術を開示している(特許文献3から5)。
上記事情を背景として本発明では,枯草菌等の複合菌を用いた新たな有用技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は,驚くべきことに,きのこ類を枯草菌等の複合菌の発酵原料として用いて,その発酵残渣から発酵液を得ることに着想した。このきのこ類を枯草菌等の複合菌の発酵原料として用いるという着想は,容易に想到できるものではない。
【0008】
すなわち,従来技術は,有機性残渣を発酵させ,その残渣物から処理水を得る技術であり,有機性残渣としては生ゴミ等が用いられていた。つまり従来技術は,あくまで廃棄することを前提とした有機性残渣を原料とするものであり,有機性残渣の適切な処理ないしリサイクルの観点から見出された技術である。そもそも,有機性残渣を,菌等の発酵により無臭化ないし無菌化する技術は多数開示され実用化もされており,従来技術はその技術の潮流上にあるといえる。
一方,本願着想は,廃棄を前提とした有機性残渣ではなく,廃棄を前提としていない有用物を原料として発酵に用いるものであり,従来技術の潮流とは相反するものである。ましてや,廃棄を前提とせず,発酵が可能な有用物は,何千何万と無限にある中で,きのこ類を原料として見出すことは,極めて困難なことであり,容易に想到できるものではない。
【0009】
発明者は,きのこ類を枯草菌等の複合菌の発酵原料として発酵液を製造するとともに,この発酵液の有用性を確認したところ,この発酵液が予測をはるかに超えた様々な有用性を示すことを見出し,本発明を完成させたものである。
【0010】
本発明は,以下の構成からなる。
本発明の第一の構成は,きのこ類を原料として枯草菌等の複合菌により発酵を行う発酵工程と,発酵工程後の発酵残渣物から水溶液成分を抽出する水溶液抽出工程とを経て製造されることを特徴とする枯草菌等の複合菌発酵液製造方法である。
本発明の第二の構成は,水溶液抽出工程が,発酵残渣物を加温する加温工程と,加温後の蒸留水分を冷却する冷却工程とからなることを特徴とする第一の構成に記載の枯草菌等の複合菌発酵液製造方法である。
【0011】
本発明の第三の構成は,きのこ類が,椎茸,カワハラタケ,アギダケ,オオヒラダケ,カバノアナタケ,カワラタケ,シロキクラギ,コフキサルノコシカケ,チョレイマイタケ,ハナビラタケ,マイタケ,松茸,ムラサキシメジ,メシマコブ,ヤマブシタケ,マンネンタケ,たもぎ茸のいずれか又は複数から選択されることを特徴とする第一又は第二の構成に記載の枯草菌等の複合菌発酵液製造方法である。
【0012】
本発明の第四の構成は,第一ないし第三の構成に記載の枯草菌等の複合菌発酵液製造方法により得られる枯草菌等の複合菌発酵液である。
本発明の第五の構成は,殺菌に用いられることを特徴とする第四の構成に記載の枯草菌等の複合菌発酵液である。
本発明の第六の構成は,乾癬治療に用いられることを特徴とする第四の構成に記載の枯草菌等の複合菌発酵液である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により,枯草菌等の複合菌を用いた新たな有用技術の提供が可能となった。すなわち,きのこ類を原料として,枯草菌等の複合菌による発酵を行い製造される発酵液は,抗菌作用や乾癬治療などの有用な効能を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】枯草菌等の複合菌菌床ときのこ類を混ぜ合わせた様子を示した図
図2】枯草菌等の複合菌発酵液を抽出している様子を示した図
図3】緑濃菌における枯草菌等の複合菌発酵液の殺菌力を示した図
図4】黄色ブドウ球菌における枯草菌等の複合菌発酵液の殺菌力を示した図
図5】大腸菌における枯草菌等の複合菌発酵液の殺菌力を示した図
図6】真菌における枯草菌等の複合菌発酵液の殺菌力を示した図
図7】各菌における枯草菌等の複合菌発酵液の菌増殖抑制能を示した図
図8】緑濃菌における枯草菌等の複合菌発酵液の殺菌力のpH比較を示した図
図9】黄色ブドウ球菌における枯草菌等の複合菌発酵液の殺菌力のpH比較を示した図
図10】大腸菌における枯草菌等の複合菌発酵液の殺菌力のpH比較を示した図
図11】尋常性乾癬被験者の治療効果を示した図
図12】尋常性乾癬被験者の治療効果を示した図
図13】アトピー性皮膚炎被験者の治療効果を示した図
図14】虫さされ被験者の治療効果を示した図
図15】クリップを漬けた枯草菌等の複合菌発酵液の経時的変化を検討した図
図16】クリップを漬けた枯草菌等の複合菌発酵液の経時的変化を検討した図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,本発明について,図面を例にとり説明を行う。
【0016】
<<I.枯草菌等の複合菌発酵液の製造方法>>
1.本発明の枯草菌等の複合菌発酵液の製造方法について説明を行う。
2.まず,きのこ類と枯草菌等の複合菌を混ぜ合わせ,発酵させる(発酵工程)。
(1) 発酵工程は,枯草菌等の複合菌によるきのこ類の発酵が可能な限り特に限定する必要はなく,種々の手法を用いることができる。例えば,枯草菌等の複合菌として,おがくずなどの多孔質素材に吸着させたもの(以下,「枯草菌等の複合菌菌床」)を用いて,きのこ類と混ぜ合わせるなどすればよい。
(2) 図1を例にとり説明を行う。図1は,枯草菌等の複合菌菌床ときのこ類を混ぜ合わせた様子を示した図であり,この装置の中に設置されたローラー(不図示)が回転することにより,継続的にきのこ類が枯草菌等の複合菌に接触し,発酵が行われる。
(3) 発酵工程において,20から40℃で発酵を行うことが好ましい。これにより,きのこ類の発酵が促進され,枯草菌等の複合菌発酵液の製造効率を向上させる効果を有する。
【0017】
3.次に,発酵残渣物から水溶液成分の抽出を行う(水溶液抽出工程)。
(1) 水溶液抽出工程は,発酵残渣物からの水溶液成分の抽出が可能な限り特に限定する必要はなく,種々の水溶液抽出方法を採用することができる。水溶液抽出方法として,例えば,遠心分離法や蒸留法などが挙げられる。
(2) 水溶液抽出工程において,発酵残渣物を加温する加温工程と,加温後の蒸留水分を冷却する冷却工程を設けて,蒸留法により水溶液を抽出することが好ましい。これにより,発酵完了時に限定されず,発酵工程を行いながら水溶液の抽出が可能となるため,枯草菌等の複合菌発酵液の製造効率を向上させる効果を有する。
【0018】
4.本発明において用いる枯草菌は,通常,入手可能な枯草菌を用いればよい。枯草菌は,購入することもできるし,常在菌であることから自然界から調整・増殖して用いることもできる。また,枯草菌以外の複合菌としては,生物学的毒性を有さず,発酵能が期待できる種々の菌を用いることができ,例えば,放線菌,糸状菌などを用いることができる。
【0019】
5.本発明において用いるきのこ類は,人体に対する毒性を有さない限り特に限定する必要はなく,種々のきのこ類を用いることができる。
(1) きのこ類を原料として用いる際は,1種類のみ用いてもよいし,複数種のきのこ類を組み合わせて用いてもよい。
(2) きのこ類は,医療用として用いられるきのこ類を用いることが好ましい。これにより,枯草菌等の複合菌発酵液の医療効果をより高める効果が期待できる。
(3) 医療用として用いられるきのこ類としては,生薬成分に用いられるきのこ類を用いることができる。このようなきのこ類として,椎茸,カワハラタケ,アギダケ,オオヒラダケ,カバノアナタケ,カワラタケ,シロキクラギ,コフキサルノコシカケ,チョレイマイタケ,ハナビラタケ,マイタケ,松茸,ムラサキシメジ,メシマコブ,ヤマブシタケ,マンネンタケ,たもぎ茸などが挙げられる。
【0020】
<<II.枯草菌等の複合菌発酵液の使用方法>>
1.本発明の枯草菌等の複合菌発酵液の使用方法について説明を行う。
2.枯草菌等の複合菌発酵液は,抗菌剤として用いることができる。
(1) この場合,前述の製造方法で得られた枯草菌等の複合菌発酵液をそのまま用いることができるし,必要に応じて希釈して用いたり,液体石鹸等に混ぜ合わせて用いるなどすることもできる。
(2) 用いる場合は,適当な剤形に調整した枯草菌等の複合菌発酵液を,例えば,汚染部位に噴霧したり,枯草菌等の複合菌発酵液中で手を洗うなどして用いればよい。
(3) また,枯草菌等の複合菌発酵液は,抗菌作用に付随した作用として,脱臭作用を有することから,糞・尿の跡やペットそのものに噴霧するなどして用いることもできる。
【0021】
3.枯草菌等の複合菌発酵液は,乾癬,アトピー性皮膚炎,虫刺され,水虫等の皮膚治療に用いることができる。
(1) この場合,病変部位に,枯草菌等の複合菌発酵液を噴霧する,もしくは枯草菌等の複合菌発酵液を含む綿などで拭くなどすることにより,乾癬治療を行うことができる。
(2) 噴霧量等については,病変部位の重症度や枯草菌等の複合菌発酵液の濃度などに応じて,適宜,増減を行えばよい。例えば,図11図12に示す乾癬患者の場合,病変部位としては重症であるが,1日3回,病変部位に枯草菌等の複合菌発酵液(原液濃度)を塗布することにより,治療を行い,治療効果が得られている。
【実施例】
【0022】
以下,実施例等を用いて,本発明を詳述するが,当然のことながら,本発明を実施例の内容に限定して解釈すべきでないことは言うまでもない。
【0023】
<<実施例1,たもぎ茸を原料として用いた枯草菌等の複合菌発酵液の製造>>
1.枯草菌等の複合菌を吸着させた菌床(図1)に,たもぎ茸を加え,撹拌することにより発酵を行った。発酵は,室温が20℃を超える場合は室温で行い,室温が20℃を超えない場合は加温して,20から30℃の温度に調整して行った。
2.発酵物の蒸気を冷却することにより,枯草菌等の複合菌発酵液を得た(図2)。
3.枯草菌等の複合菌発酵液については,黄色味がかった透明であり,若干においのするものであった。
【0024】
<<実験例1,枯草菌発酵液による殺菌性試験>>
たもぎ茸を用いた場合の枯草菌等の複合菌発酵液が,どのような殺菌作用を有するかを調べることを目的として行った。
【0025】
<方法>
1.各菌株の培養液5μLに,抽出液を500μL加え,30℃で保温した。比較例として,枯草菌等の複合菌発酵液の代わりに滅菌水を用いたものについても同様の作業を行った。
2.この混合溶液について,混合後30分,24時間,48時間に10μL採取し,平板寒天培地に塗布し,培養を行った。
【0026】
<結果>
1.特に実施例2と実施例3においては,混合後30分には菌の発生が抑制され,混合液中の菌が死滅しており,その効果が顕著であることが分かった(図3,4)。
2.実施例4においては,混合後30分にはいくらかの菌は見られるが,24時間後には菌の発生が抑制され,混合液中の菌が死滅していることが分かった(図5)。
3.実施例5においては,実施例2から4と比較すると,その効果は弱く,菌を死滅させるまでには至っていなかった。しかしながら,いずれの時間点においても,比較例と比較すると,菌の増殖が抑制されていることが分かった。
【0027】
<<実験例2,枯草菌等の複合菌発酵液による菌増殖抑制試験>>
たもぎ茸を用い場合の枯草菌等の複合菌発酵液が,どのような菌増殖抑制作用を有するかを調べることを目的として行った。
【0028】
<方法>
各菌株の培養液を塗布した平板寒天培地に枯草菌等の複合菌発酵液を10μL滴下し,培養を行い,菌の様子について観察を行った。
【0029】
<結果>
1.結果を図7に示す。実施例6および実施例7では,枯草菌等の複合菌発酵液を滴下したポイントでは菌の増殖が全く見られなかった。
2.実施例8では,僅かではあるが,菌の増殖が抑制されていた。
3.実施例9では,菌の増殖抑制効果はあまり見られなかった。
【0030】
<<実験例3,枯草菌等の複合菌発酵液による温度特異性試験>>
たもぎ茸を用い場合の枯草菌等の複合菌発酵液が,温度によってその殺菌作用がどのように変化するかを調べることを目的として行った。
【0031】
<方法>
1.各菌株の培養液5μLに,抽出液を500μL加え,4℃又は30℃で保温した。比較例として,枯草菌等の複合菌発酵液の代わりに滅菌水を用いたものについても同様の作業を行った。
2.この混合溶液について,混合後30分,24時間,48時間に10μL採取し,平板寒天培地に塗布し,培養を行った。
3.なお,混合溶液のpHは,塩酸を用いて3.2に調整した。
【0032】
<結果>
1.実施例10において,枯草菌等の複合菌発酵液は,30℃では混合後30分から速やかな殺菌作用を示した(図8)。
一方,4℃では,混合後30分では死滅させるには至らなかったが,比較例と比べると十分な殺菌作用を示し,混合後24時間にはほとんどの菌が死滅していた。
2.実施例11において,枯草菌等の複合菌発酵液は,30℃では混合後30分から速やかな殺菌作用を示した(図9)。
一方,4℃では,混合後30分,24時間では死滅させるには至らなかったが啓示的に菌は減っていき,比較例と比べても十分な殺菌作用を示していた。そして,混合後48時間にはほとんどの菌が死滅していた。
3.実施例12において,枯草菌等の複合菌発酵液は,30℃では混合後30分で死滅させるには至らなかったが比較例と比べると十分な殺菌作用を示し,24時間には死滅させるに至った(図10)。
一方,4℃では,混合後30分では死滅させるには至らなかったが,比較例と比べると十分な殺菌作用を示し,混合後24時間にはほとんどの菌が死滅していた。しかしながら,混合後48時間には,菌の増殖が始まっていて,混合後24時間において完全に菌が死滅していないと考えられた。
【0033】
<<試験例1,ヒト尋常性乾癬患者における治療効果の検討>>
ヒト尋常性乾癬患者において,枯草菌等の複合菌発酵液が,どのような治療効果を示すかを調べることを目的に行った。
【0034】
<方法>
1.被験者のインフォームドコンセントを得たうえで,検討を行った。
2.1日3回,病変部位に枯草菌等の複合菌発酵液を塗布し,病変部位の経時的推移を観察した。
【0035】
<結果>
1.図11図12に結果を示す。
2.被験者は,頭部や体幹部に数多くの病変部位を有しているが,枯草菌等の複合菌発酵液塗布から約20日後,赤かった病変部位の多くはその色が減弱しており,乾癬症状が緩和されていることが確認された。
【0036】
<<試験例2,アトピー性皮膚炎における治療効果の検討>>
アトピー性皮膚炎において,枯草菌等の複合菌発酵液が,どのような治療効果を示すかを調べることを目的に行った。
<方法>
1.被験者のインフォームドコンセントを得たうえで,検討を行った。
2.アトピー性皮膚炎の病変部位に枯草菌等の複合菌発酵液を塗布し,病変部位の経時的推移を観察した。
【0037】
<結果>
1.図13に結果を示す。
2.被験者は,首の後ろ部分にアトピー性皮膚炎の病変部位を有するが,枯草菌等の複合菌発酵液を塗布して速やかに湿り気を有しジクジクした病変部位が,乾燥状態に変化し,赤みも緩和された。
3.翌朝(約12時間後)には,病変部位の赤みがほとんど分からない状態となり,病変部位が消失していることが確認された。
【0038】
<<試験例3,虫さされにおける治療効果の検討>>
虫さされにおいて,枯草菌等の複合菌発酵液が,どのような治療効果を示すかを調べることを目的に行った。
<方法>
1.被験者のインフォームドコンセントを得たうえで,検討を行った。
2.虫にさされ病変が生じた部位に枯草菌等の複合菌発酵液を塗布し,病変部位の経時的推移を観察した。
【0039】
<結果>
1.図14に結果を示す。
2.被験者は,右足後ろを虫に刺されており,刺された部分が赤く腫れているが,就寝前に枯草菌等の複合菌発酵液を塗布し,翌朝(約12時間後)には,腫れが消失していることが確認された。加えて,痛みもない状態となった。
【0040】
<<実験例4,クリップを用いた抗酸化力の比較>>
これまで検討を行った枯草菌等の複合菌発酵液の効果がどのようなメカニズムに基づくものかを調べるため,その可能性の一つとして抗酸化力に関する検討を行った。
【0041】
<方法>
鉄製クリップを,枯草菌等の複合菌発酵液中に漬けて,その外観の変化を経時的に観察することにより検討を行った。
【0042】
1.結果を図15図16に示す。
2.実施例12はクリップを漬けてから約5カ月後の様子を示すが,枯草菌等の複合菌発酵液は若干黄色味がかった透明のままであり,クリップも錆びていない状態であった。
一方,比較例(水道水中に漬けたもの)では,クリップが錆びて,水道水自体が,錆びを示す赤茶色を示していた。
3.実施例13はクリップを付けてから約9カ月後の様子を示す。実施例12と同様,枯草菌等の複合菌発酵液は黄色味がかった透明のままであり,クリップも錆びていない状態であった。
4.また,しいたけおよびしめじ茸を用いて製造を行った枯草菌等の複合菌発酵液についても,同様の結果が得られ,これらについても同様の抗酸化力を有することが分かった。
5.加えて,しいたけおよびしめじ茸の成分分析を行ったところ,たもぎ茸と類似の分析結果を示し,pHについても,4.0±1.0の範囲にあり,たもぎ茸を用いて作製した発酵液と比べ,大きな差異がないことが確認された。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16