【実施例】
【0022】
以下,実施例等を用いて,本発明を詳述するが,当然のことながら,本発明を実施例の内容に限定して解釈すべきでないことは言うまでもない。
【0023】
<<実施例1,たもぎ茸を原料として用いた枯草菌等の複合菌発酵液の製造>>
1.枯草菌等の複合菌を吸着させた菌床(
図1)に,たもぎ茸を加え,撹拌することにより発酵を行った。発酵は,室温が20℃を超える場合は室温で行い,室温が20℃を超えない場合は加温して,20から30℃の温度に調整して行った。
2.発酵物の蒸気を冷却することにより,枯草菌等の複合菌発酵液を得た(
図2)。
3.枯草菌等の複合菌発酵液については,黄色味がかった透明であり,若干においのするものであった。
【0024】
<<実験例1,枯草菌発酵液による殺菌性試験>>
たもぎ茸を用いた場合の枯草菌等の複合菌発酵液が,どのような殺菌作用を有するかを調べることを目的として行った。
【0025】
<方法>
1.各菌株の培養液5μLに,抽出液を500μL加え,30℃で保温した。比較例として,枯草菌等の複合菌発酵液の代わりに滅菌水を用いたものについても同様の作業を行った。
2.この混合溶液について,混合後30分,24時間,48時間に10μL採取し,平板寒天培地に塗布し,培養を行った。
【0026】
<結果>
1.特に実施例2と実施例3においては,混合後30分には菌の発生が抑制され,混合液中の菌が死滅しており,その効果が顕著であることが分かった(
図3,4)。
2.実施例4においては,混合後30分にはいくらかの菌は見られるが,24時間後には菌の発生が抑制され,混合液中の菌が死滅していることが分かった(
図5)。
3.実施例5においては,実施例2から4と比較すると,その効果は弱く,菌を死滅させるまでには至っていなかった。しかしながら,いずれの時間点においても,比較例と比較すると,菌の増殖が抑制されていることが分かった。
【0027】
<<実験例2,枯草菌等の複合菌発酵液による菌増殖抑制試験>>
たもぎ茸を用い場合の枯草菌等の複合菌発酵液が,どのような菌増殖抑制作用を有するかを調べることを目的として行った。
【0028】
<方法>
各菌株の培養液を塗布した平板寒天培地に枯草菌等の複合菌発酵液を10μL滴下し,培養を行い,菌の様子について観察を行った。
【0029】
<結果>
1.結果を
図7に示す。実施例6および実施例7では,枯草菌等の複合菌発酵液を滴下したポイントでは菌の増殖が全く見られなかった。
2.実施例8では,僅かではあるが,菌の増殖が抑制されていた。
3.実施例9では,菌の増殖抑制効果はあまり見られなかった。
【0030】
<<実験例3,枯草菌等の複合菌発酵液による温度特異性試験>>
たもぎ茸を用い場合の枯草菌等の複合菌発酵液が,温度によってその殺菌作用がどのように変化するかを調べることを目的として行った。
【0031】
<方法>
1.各菌株の培養液5μLに,抽出液を500μL加え,4℃又は30℃で保温した。比較例として,枯草菌等の複合菌発酵液の代わりに滅菌水を用いたものについても同様の作業を行った。
2.この混合溶液について,混合後30分,24時間,48時間に10μL採取し,平板寒天培地に塗布し,培養を行った。
3.なお,混合溶液のpHは,塩酸を用いて3.2に調整した。
【0032】
<結果>
1.実施例10において,枯草菌等の複合菌発酵液は,30℃では混合後30分から速やかな殺菌作用を示した(
図8)。
一方,4℃では,混合後30分では死滅させるには至らなかったが,比較例と比べると十分な殺菌作用を示し,混合後24時間にはほとんどの菌が死滅していた。
2.実施例11において,枯草菌等の複合菌発酵液は,30℃では混合後30分から速やかな殺菌作用を示した(
図9)。
一方,4℃では,混合後30分,24時間では死滅させるには至らなかったが啓示的に菌は減っていき,比較例と比べても十分な殺菌作用を示していた。そして,混合後48時間にはほとんどの菌が死滅していた。
3.実施例12において,枯草菌等の複合菌発酵液は,30℃では混合後30分で死滅させるには至らなかったが比較例と比べると十分な殺菌作用を示し,24時間には死滅させるに至った(
図10)。
一方,4℃では,混合後30分では死滅させるには至らなかったが,比較例と比べると十分な殺菌作用を示し,混合後24時間にはほとんどの菌が死滅していた。しかしながら,混合後48時間には,菌の増殖が始まっていて,混合後24時間において完全に菌が死滅していないと考えられた。
【0033】
<<試験例1,ヒト尋常性乾癬患者における治療効果の検討>>
ヒト尋常性乾癬患者において,枯草菌等の複合菌発酵液が,どのような治療効果を示すかを調べることを目的に行った。
【0034】
<方法>
1.被験者のインフォームドコンセントを得たうえで,検討を行った。
2.1日3回,病変部位に枯草菌等の複合菌発酵液を塗布し,病変部位の経時的推移を観察した。
【0035】
<結果>
1.
図11と
図12に結果を示す。
2.被験者は,頭部や体幹部に数多くの病変部位を有しているが,枯草菌等の複合菌発酵液塗布から約20日後,赤かった病変部位の多くはその色が減弱しており,乾癬症状が緩和されていることが確認された。
【0036】
<<試験例2,アトピー性皮膚炎における治療効果の検討>>
アトピー性皮膚炎において,枯草菌等の複合菌発酵液が,どのような治療効果を示すかを調べることを目的に行った。
<方法>
1.被験者のインフォームドコンセントを得たうえで,検討を行った。
2.アトピー性皮膚炎の病変部位に枯草菌等の複合菌発酵液を塗布し,病変部位の経時的推移を観察した。
【0037】
<結果>
1.
図13に結果を示す。
2.被験者は,首の後ろ部分にアトピー性皮膚炎の病変部位を有するが,枯草菌等の複合菌発酵液を塗布して速やかに湿り気を有しジクジクした病変部位が,乾燥状態に変化し,赤みも緩和された。
3.翌朝(約12時間後)には,病変部位の赤みがほとんど分からない状態となり,病変部位が消失していることが確認された。
【0038】
<<試験例3,虫さされにおける治療効果の検討>>
虫さされにおいて,枯草菌等の複合菌発酵液が,どのような治療効果を示すかを調べることを目的に行った。
<方法>
1.被験者のインフォームドコンセントを得たうえで,検討を行った。
2.虫にさされ病変が生じた部位に枯草菌等の複合菌発酵液を塗布し,病変部位の経時的推移を観察した。
【0039】
<結果>
1.
図14に結果を示す。
2.被験者は,右足後ろを虫に刺されており,刺された部分が赤く腫れているが,就寝前に枯草菌等の複合菌発酵液を塗布し,翌朝(約12時間後)には,腫れが消失していることが確認された。加えて,痛みもない状態となった。
【0040】
<<実験例4,クリップを用いた抗酸化力の比較>>
これまで検討を行った枯草菌等の複合菌発酵液の効果がどのようなメカニズムに基づくものかを調べるため,その可能性の一つとして抗酸化力に関する検討を行った。
【0041】
<方法>
鉄製クリップを,枯草菌等の複合菌発酵液中に漬けて,その外観の変化を経時的に観察することにより検討を行った。
【0042】
1.結果を
図15,
図16に示す。
2.実施例12はクリップを漬けてから約5カ月後の様子を示すが,枯草菌等の複合菌発酵液は若干黄色味がかった透明のままであり,クリップも錆びていない状態であった。
一方,比較例(水道水中に漬けたもの)では,クリップが錆びて,水道水自体が,錆びを示す赤茶色を示していた。
3.実施例13はクリップを付けてから約9カ月後の様子を示す。実施例12と同様,枯草菌等の複合菌発酵液は黄色味がかった透明のままであり,クリップも錆びていない状態であった。
4.また,しいたけおよびしめじ茸を用いて製造を行った枯草菌等の複合菌発酵液についても,同様の結果が得られ,これらについても同様の抗酸化力を有することが分かった。
5.加えて,しいたけおよびしめじ茸の成分分析を行ったところ,たもぎ茸と類似の分析結果を示し,pHについても,4.0±1.0の範囲にあり,たもぎ茸を用いて作製した発酵液と比べ,大きな差異がないことが確認された。