特許第6335035号(P6335035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6335035熱板溶着用熱可塑性樹脂組成物及びランプハウジング成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335035
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】熱板溶着用熱可塑性樹脂組成物及びランプハウジング成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/04 20060101AFI20180521BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20180521BHJP
   B29C 65/20 20060101ALI20180521BHJP
   F21S 41/00 20180101ALI20180521BHJP
   F21S 43/00 20180101ALI20180521BHJP
   F21S 45/00 20180101ALI20180521BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20180521BHJP
   F21W 104/00 20180101ALN20180521BHJP
   F21W 105/00 20180101ALN20180521BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20180521BHJP
【FI】
   C08L51/04
   C08L23/26
   B29C65/20
   F21S8/10 140
   F21S8/10 340
   F21W101:10
   F21W101:12
   F21W101:14
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-125072(P2014-125072)
(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公開番号】特開2016-3294(P2016-3294A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池田 鷹
(72)【発明者】
【氏名】富田 一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 隆祥
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/136092(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/013817(WO,A1)
【文献】 特開2001−043706(JP,A)
【文献】 特開2004−300324(JP,A)
【文献】 特開2009−155421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 51/04
C08L 25/00−25/18
B29C 65/20
C08L 23/26
C08L 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム強化スチレン系樹脂100重量部に対して、共重合体のけん化樹脂(C)0.1〜10重量部配合することを特徴とする熱板溶着用熱可塑性樹脂組成物であって、該共重合体がオレフィン系単量体とエステル結合を有する単量体からなる共重合体であることを特徴とする熱板溶着用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
上記(C)が、エチレン・アクリル酸エステル共重合体のけん化樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の熱板溶着用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の熱板溶着用熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる車両用灯具のランプハウジング成形品。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種以上の樹脂材料を加熱された熱板を用いて溶融した後、溶融部分を圧着することにより結合させるいわゆる熱板溶着法に使用される熱板溶着用樹脂組成物及びランプハウジング成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂成形品の接合に際し、熱板により溶融後圧着するいわゆる熱板溶着法が環境問題の観点から採用されることが増えてきた。しかしながら、このような熱板溶着法では、熱可塑性樹脂が熱板より溶融された後、熱板を引き離す際に樹脂が糸状に引き伸ばされる(以下糸曳きと呼ぶ)。これが成形品の表面に付着することで外観不良が生じる問題がある。
【0003】
糸曳きを抑制する方法として、例えば、特開2001−002881号公報または特開2001−207000号公報には、α−メチルスチレン系共重合体を配合する方法が提案されている。しかしながら、糸曳き、成形品表面外観において十分満足の得られるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−002881号公報
【0005】
【特許文献2】特開2001−207000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、熱板溶着法における糸曳きが抑制され、成形品表面外観の良好な熱板溶着用熱可塑性樹脂組成物及びランプハウジング成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ゴム強化スチレン系樹脂に、オレフィン系単量体とエステル結合を有する単量体からなる共重合体のけん化樹脂を添加することで、糸曳きの抑制に効果があり、かつ成形品表面外観も良好であることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明はゴム強化スチレン系樹脂100重量部に対して、オレフィン系単量体とエステル結合を有する単量体からなる共重合体のけん化樹脂(C)0.1〜10重量部配合することを特徴とする熱板溶着用熱可塑性樹脂組成物及び当該樹脂組成物を成形して得られたランプハウジング成形品に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、熱板溶着法における糸曳きが抑制され、成形品表面外観の良好な熱板溶着用熱可塑性樹脂組成物及びランプハウジング成形品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0011】
本発明に使用するゴム強化スチレン系樹脂とは、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及びその他の共重合可能な単量体から構成される群より選ばれる、少なくとも1種の単量体をグラフト重合して得られるグラフト共重合体(A)、又は該グラフト共重合体(A)と上記単量体を(共)重合して得られる(共)重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物である。
【0012】
グラフト共重合体(A)に使用するゴム状重合体としては、特に制限はないが、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等の共役ジエン系ゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン(エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等)ゴム等のエチレン−プロピレン系ゴム、ポリブチルアクリレートゴム等のアクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、更にはこれらのゴムから選ばれた一種以上の複合ゴムなどが挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。特に、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブチルアクリレートゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、シリコーン系ゴムが好ましい。
【0013】
グラフト共重合体(A)に使用する芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0014】
グラフト共重合体(A)に使用するシアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。特にアクリロニトリルが好ましい。
【0015】
グラフト共重合体(A)に使用する(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸(ジ)ブロモフェニル、(メタ)アクリル酸クロルフェニル等を例示でき、1種又は2種以上用いることができる。特にメタクリル酸メチルが好ましい。
【0016】
グラフト共重合体(A)に使用するその他の共重合可能なビニル系単量体としては、マレイミド系単量体(例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等)、アミド系単量体(例えば、アクリルアミド及びメタクリルアミド等)及び不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等)等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
ゴム状重合体にグラフト重合する上記のビニル系単量体の組成比率に特に制限はないが、芳香族ビニル系単量体60〜90重量%とシアン化ビニル系単量体10〜40重量%とその他の共重合可能な単量体0〜30重量%の組成比率、芳香族ビニル系単量体30〜80重量%と(メタ)アクリル酸エステル系単量体20〜70重量%とその他の共重合可能な単量体0〜50重量%の組成比率、芳香族ビニル系単量体20〜70重量%と(メタ)アクリル酸エステル系単量体20〜70重量%とシアン化ビニル系単量体10〜60重量%とその他の共重合可能な単量体0〜50重量%の組成比率であることが好ましい。
【0018】
(共)重合体(B)は、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及びその他の共重合可能なビニル系単量体から構成される群より選ばれる、少なくとも1種を重合して得られる単独重合体又は共重合体である。これら使用可能な単量体としてはグラフト共重合体(A)に記載したものと同じものが挙げられる。また、(共)重合体(B)は組成比率の異なる複数の(共)重合体を目的に応じて適宜組み合わせて用いても良い。
【0019】
ゴム強化スチレン系樹脂中に占めるゴム状重合体の含有量は、物性バランスの観点から、好ましくは3〜50重量%である。ゴム強化スチレン系樹脂中に占めるゴム状重合体の含有量は、グラフト共重合体(A)製造時のゴム状重合体とビニル系単量体との比率、又はグラフト共重合体(A)と(共)重合体(B)の配合比率を適宜変更することにより可能である。
【0020】
グラフト共重合体(A)、及び、(共)重合体(B)の製造においては、従来より公知の重合方法、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法を採用することができる。
【0021】
オレフィン系単量体とエステル結合を有する単量体からなる共重合体に用いられるオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等が挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。
【0022】
オレフィン系単量体とエステル結合を有する単量体からなる共重合体に用いられるエステル結合を有する単量体としては、例えば不飽和和カルボン酸エステル、カルボン酸ビニルエステル等が挙げられる。
【0023】
不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、エタクリル酸アルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、フマル酸アルキルエステル、マレイン酸アルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、無水マレイン酸アルキルエステル、イタコン酸アルキルエステル及び無水イタコン酸アルキルエステル等が挙げられ、アルキルエステルのアルキル部位としては、炭素数1〜12のものが挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。
【0024】
カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等があげられ、1種又は2種以上用いることができる。
【0025】
本発明において、オレフィン系単量体とエステル結合を有する単量体からなる共重合体としては、エチレンと不飽和カルボン酸エステルの共重合体であることが好ましく、エチレンとアクリル酸アルキルエステルの共重合体であることがさらに好ましく、エチレンとアクリル酸エステルの共重合体であることが特に好ましい。
【0026】
本発明では、オレフィン系単量体とエステル結合を有する単量体からなる共重合体をけん化することでけん化樹脂(C)とする。けん化する方法としては、例えばアルカリけん化が挙げられ、アルカリケけん化に用いる苛性アルカリの金属イオン種としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられる。アルカリけん化は、公知の方法により行うことができ、例えば、オレフィン系単量体とエステル結合を有する単量体からなる共重合体と所定量の水酸化カリウム等の苛性アルカリとを押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練装置中で例えば100〜250℃の温度下で溶融混合するか、あるいはオレフィン系単量体とエステル結合を有する単量体からなる共重合体を上記混練装置で溶融均質化し、その後、所定量の水酸化カリウム等の苛性アルカリを加えることにより、共重合体のエステル部分と苛性アルカリを反応させてけん化物とする方法を例示することができる。
【0027】
本発明に使用するオレフィン系単量体とエステル結合を有する単量体からなる共重合体のけん化樹脂(C)は、ゴム強化スチレン系樹脂(すなわちグラフト共重合体(A)と(共)重合体(B)の合計)100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。0.1重量部未満では十分な糸曳きの抑制効果が得られず、また10重量部を超えると物性の低下及び成形品表面にシルバー、デラミ等が発生し成形品表面の外観が好ましくない。
【0028】
本発明の熱板溶着用熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)、(共)重合体(B)、及び、オレフィン系単量体とエステル結合を有する単量体からなる共重合体のけん化樹脂(C)を混合して得られる。混合方法に特に制限はなく、これらの構成成分の混合物を、一軸押出機、二軸押出機などの押出機、バンバリーミキサー、ニーダー・ルーダー、加圧ニーダー、加熱ロールなどを用いて混合することができる。
【0029】
本発明の熱板溶着用熱可塑性樹脂組成物は、その目的を損なわない範囲内において、他の熱可塑性樹脂と混合して使用することもできる。このような他の熱可塑性樹脂として、例えば、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂等を使用することができる。
【0030】
本発明の熱板溶着用熱可塑性樹脂組成物には、その目的を損なわない範囲内においてヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系、含リン有機化合物系等の酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系等の熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系の紫外線吸収剤、有機ニッケル系、高級脂肪酸アミド類等の滑剤、リン酸エステル類等の可塑剤、ポリブロモフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化、カポリカーボネートオリゴマー等の含ハロゲン系化合物、リン系化合物、三酸化アンチモン等の難燃剤・難燃助剤、臭気マスキング剤、カーボンブラック、酸化チタン、顔料、及び染料等を添加することもできる。更に、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、金属繊維等の補強剤や充填剤を添加することもできる。
【0031】
本発明の熱板溶着用熱可塑性樹脂組成物は、例えばヘッドランプ、ウィンカー、ストップランプ等の車両用灯具の用途に好適に使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
以下に本発明について実施例を挙げて詳細に説明する。尚、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。また、部および%は何れも重量基準で示した。
【0033】
小粒子径スチレン− ブタジエンゴムラテックスの製造方法
10リットルの耐圧容器の内部を窒素で置換後、1,3−ブタジエン95重量部、スチレン5重量部、n−ドデシルメルカプタン0.5重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、不均化ロジン酸ナトリウム1.8重量部、水酸化ナトリウム0.1重量部、脱イオン水145重量部を仕込み、攪拌しつつ70℃で8時間反応させた。その後、不均化ロジン酸ナトリウム0.2重量部、水酸化ナトリウム0.1重量部及び脱イオン水5重量部を添加した。さらに温度を70℃に維持しながら6時間攪拌を継続して反応を終了した。その後、減圧して残存している1,3−ブタジエンを除去し、スチレン−ブタジエンゴムラテックスを得た。得られたスチレン−ブタジエンゴムラテックスの重量平均粒子径は、100nmであった。
【0034】
凝集肥大化スチレン− ブタジエンゴムラテックスの製造
10リットルの耐圧容器に、上記で得られたスチレン−ブタジエンゴムラテックス270重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1重量部を添加して10分間攪拌混合した後、5%リン酸水溶液20重量部を10分間にわたり添加した。次いで10%水酸化カリウム水溶液10重量部を添加し、凝集肥大化したスチレン−ブタジエンゴムラテックスを得た。得られた凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムの重量平均粒子径は、330nmであった。
【0035】
架橋アクリル酸ブチルゴムラテックスの製造
窒素置換したガラスリアクターに、脱イオン水180重量部、アクリル酸ブチル15重量部、メタクリル酸アリル0.1重量部、アルケニルコハク酸ジカリウム0.06重量部(固形分換算) 、過硫酸カリウム0.15重量部を仕込み、65℃で1時間反応させた。その後、アクリル酸ブチル85重量部、メタクリル酸アリル0.53重量部の混合液およびアルケニルコハク酸ジカリウム0.54重量部(固形分換算)を脱イオン水20重量部に溶解した乳化剤水溶液を4時間かけて連続的に添加した。滴下後、1時間保持して、架橋アクリル酸ブチルゴムラテックスを得た。得られた架橋アクリル酸ブチルゴムラテックスの重量平均粒子径は、200nmであった。
【0036】
(A)成分
グラフト共重合体(A−1)の製造
ガラスリアクターに、凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックスを固形分換算で50重量部仕込み、窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し65℃に到達したところで、ラクトース0.2重量部、無水ピロリン酸ナトリウム0.1重量部及び硫酸第1鉄0.005重量部を脱イオン水10重量部に溶解した水溶液を添加した後に、70℃に昇温した。その後、アクリロニトリル15重量部、スチレン35重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.05部、クメンハイドロパーオキサイド0.3重量部の混合液及びオレイン酸カリウム1.0重量部を脱イオン水20重量部に溶解した乳化剤水溶液を4時間かけて連続的に滴下した。滴下後、3 時間保持してグラフト共重合体ラテックス(A−1)を得た。その後、塩析、脱水、乾燥し、グラフト重合体(A−1)のパウダーを得た。
【0037】
グラフト共重合体(A−2)の製造
凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックスから架橋アクリル酸ブチルゴムラテックスに変更した以外はグラフト共重合体(A−1)と同様に製造し、グラフト共重合体(A−2)を得た。その後、塩析、脱水、乾燥し、グラフト重合体(A−2)のパウダーを得た。
【0038】
グラフト共重合体(A−3)の製造
攪拌翼を備えた重合反応機に、純水300部、懸濁安定剤としてヒドロキシエチルセルロース0.3部を溶解した後、3mm角に裁断したエチレン− プロピレン− エチリデンノルボルネン共重合体ゴム(エチレン含有量55%、ムーニー粘度(ML1+4121℃)60)50部を仕込み懸濁させた。その後、スチレン37部、アクリロニトリル13部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレート3.0部および分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン0.1部を添加し、100℃にて1時間重合を行いグラフト共重合体(A−3)のスラリーを得た。その後、脱水、乾燥し、グラフト共重合体(A−3)のパウダーを得た。
【0039】
(B)成分
共重合体(B−1)の製造
窒素置換したガラスリアクターに、脱イオン水150重量部、スチレン7重量部、アクリロニトリル3重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0 .02重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部(固形分換算)及び過硫酸カリウム0.3重量部を仕込み、65℃で1時間重合した。その後、スチレン63重量部、アクリロニトリル27重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.18重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5重量部(固形分換算)を含む乳化剤水溶液30重量部を各々3時間かけて連続的に滴下した。滴下後2時間保持して、共重合体ラテックス(B−1)を得た。その後、塩析、脱水、乾燥し、共重合体(B−1)のパウダーを得た。
【0040】
共重合体(B−2)の製造
スチレンをα−メチルスチレンに変更した以外は、共重合体(B−1)と同様に製造し、共重合体(B−2)を得た。その後、塩析・脱水・乾燥し、共重合体(B−2)のパウダーを得た。
【0041】
共重合体(B−3)
スチレン・N−フェニルマレイミド・無水マレイン酸共重合体(デンカIP MS−NIP:電気化学工業(株)製)
【0042】
(C)成分
(C−1): エチレン・アクリル酸エステル共重合体のけん化樹脂(PJ−2:三井デュポン・ポリケミカル(株)製)
(C−2):ポリエーテルエステルアミドブロックコポリマー(ペレスタットNC6321:三洋化成工業(株)製)
(C−3):ステアリルジエタノールアミン モノステアレート(エレクトロストリッパーTS−6B:花王(株)製)
(C−4):アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(STN−401−2:竹本油脂(株)製)
【0043】
表1に示す割合にて、グラフト共重合体(A)及び共重合体(B)にオレフィン系単量体とエステル結合を有する単量体からなる共重合体のけん化樹脂(C)を混合し、東芝TEM−35B2軸押出し機を用い、シリンダー温度240℃で溶融混練しペレット化した。得られたペレットを用いて耐衝撃性、流動性、成形品外観、熱板溶着性の評価を行った。各試験の評価結果を表1に示す。
【0044】
(1)外観
各実施例及び比較例で得られたペレットを用い、シリンダー温度250℃、金型温度60℃の条件で90mm×150mm×3mmの平板を成形し、成形品表面の外観を目視にて判定した。
○:シルバー、デラミが発生しなかった
×:シルバー、デラミが発生した
【0045】
(2)熱板溶着性
各実施例及び比較例で得られたペレットを用い、シリンダー温度250℃、金型温度60℃の条件で射出成形して熱板溶着性評価用のASTM1号ダンベルを作成した。280℃に加熱したアルミ製の平板に、射出成形にて得られたASTM1号ダンベルを10kgf/cmの圧力で30秒間押しつけた後、このダンベルを500mm/minの速度で引き上げた時に溶着面に糸曳きが発生するかどうか判定した。
◎:糸曳きが全く見られなかった
○:糸曳きがほとんど見られなかった
×:糸曳きが明らかに見られた
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示すように、実施例1〜7は本発明に関わる熱可塑性樹脂組成物の例であり、成形品表面の外観にシルバー、デラミの発生が見られず、糸曳きが全く見られなかった(◎)又は、ほとんど見られなかった(○)と良好なものであった。
【0048】
表1に示すように、比較例1は、(C−1)の配合量が本願規定範囲の下限未満であり、糸曳きの抑制効果が十分に得られなかった。比較例2は、(C−1)の配合量が本願規定範囲の上限を超えており、糸曳きは抑制されるものの、成形品表面にシルバー、デラミが発生し、良好な成形品表面外観を得ることが出来なかった。比較例3〜5は、本願規定の(C)成分を用いていないため、糸曳きの抑制効果が十分に得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のとおり、本発明の熱板溶着用熱可塑性樹脂組成物は、糸曳きが抑制され、成形品表面外観の良好なものであるため、熱板溶着用途、特に車両用灯具のランプハウジング用として好適に使用できる。