特許第6335036号(P6335036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6335036硬化性組成物および半導体発光装置、半導体発光装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335036
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】硬化性組成物および半導体発光装置、半導体発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20180521BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20180521BHJP
   C08G 77/38 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 33/52 20100101ALI20180521BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08L83/04
   C08G77/38
   H01L33/52
【請求項の数】21
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-125678(P2014-125678)
(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公開番号】特開2016-3311(P2016-3311A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷川 智子
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
(72)【発明者】
【氏名】一柳 典克
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 貴雄
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−209565(JP,A)
【文献】 特開2010−090196(JP,A)
【文献】 特開2012−180513(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/017888(WO,A1)
【文献】 特開平03−224255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00−83/16
C08G 77/00−77/62
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a1)ヒドロシリル基を有する化合物(a2)多面体構造ポリシロキサン変性体(a)、1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物(b)多面体構造ポリシロキサン変性体(A)と硬化剤(B)を有するLED封止剤(計100重量部)と、(C)炭素−炭素二重結合またはヒドロシリル基を有し、分子量が1000〜50000であるポリジメチルシロキサン(0.01〜重量部)からなる硬化性組成物。
【請求項2】
前記(b)成分の重量平均分子量が1000未満であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記(b)成分が、式C2(n−x)(nは4〜20の整数、xは1〜5の整数)で表されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記(a)成分が、アリール基を含有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
多面体構造ポリシロキサン変性体(A)が、温度20℃において、液状であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
ヒドロシリル基を有する化合物(a2)が、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンおよび/または直鎖状シロキサンであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a1)が、式[ARSiO−SiO3/2]a[RSiO−SiO3/2(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aは、アルケニル基;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
多面体構造ポリシロキサン変性体(A)が、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a1)のアルケニル基1個あたりSi原子に直結した水素原子が2.5〜20個になる範囲で、ヒドロシリル基を有する化合物(a2)を過剰量加えて変性し、未反応のヒドロシリル基を有する化合物(a2)を留去して得られることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法
【請求項9】
多面体構造ポリシロキサン変性体(A)が、分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
多面体構造ポリシロキサン(a)成分が、[XRSiO−SiO3/2[RSiO−SiO3/2(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基、Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【化1】
【化2】
(lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子である;Rは、アルキル基、もしくはアリール基であり、同一であっても異なっていてもよい。)を構成単位とすることを特徴とする請求項1〜7、9のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
(B)成分が、1分子中にアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン(B−1)であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
(B)成分が、下記一般式(1)で表される有機化合物(B−2)
【化3】
(式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基または水素原子を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
(B−1)成分が、アリール基を含有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
(B−2)成分が、1分子中にアルケニル基を2個以上含有していることを特徴とする請求項12に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
有機化合物(B−2)が、数平均分子量900未満であることを特徴とする請求項12または14のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
(C)成分が、末端に少なくともひとつの炭素−炭素二重結合またはヒドロシリル基をもつポリジメチルシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項17】
ヒドロシリル化触媒を含有することを特徴とする請求項1〜7、9〜16のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項18】
硬化遅延剤を含有することを特徴とする請求項1〜7、9〜16のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項19】
分散剤を含有することを特徴とする請求項1〜7、9〜16のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項20】
請求項19の硬化性組成物より得られた硬化物。
【請求項21】
請求項20硬化物より得られた半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多面体構造ポリシロキサン化合物に対して相溶性の低いポリジメチルシロキサンを添加した硬化性組成物を封止剤として用いることでLEDの発光効率を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光装置は、長寿命、低消費電力、耐衝撃性、高速応答性、軽薄短小化の実現等の特徴を有し、液晶ディスプレイ、携帯電話、情報端末等のバックライト、車載照明、屋内外広告、屋内外照明等、多方面への展開が飛躍的に進んでいる。
【0003】
多面体構造ポリシロキサン化合物は優れた透明性、ガスバリア性、化学的安定性、低誘電性等を示すことが知られており、半導体からなる発光素子(以下、適宣、LED)上に塗布する硬化性組成物(以下、適宣、LED封止剤)として、良好な性質を有する。
【0004】
しかしながら、LEDは照明・車載用途などにおいて発光効率が求められているため、さらに光取り出し効率の高い材料の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−102514号公報
【特許文献2】特開2006−294821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非相溶性の樹脂を組み合わせることで海島構造を形成することで散乱特性を発現させ、光取り出し効率に優れた半導体発光装置の製造方法、それに用いられる硬化性組成物、硬化物および半導体発光装置を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a1)に対してヒドロシリル基を有する化合物(a2)を変性して得られた多面体構造ポリシロキサン変性体(a)に、1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物(b)を反応させて得られる多面体構造ポリシロキサン(A)と硬化剤(B)を有するLED封止剤(計100重量部)と、(C)ポリジメチルシロキサン(0.01〜30重量部)からなる硬化性組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
(1). アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a1)に対してヒドロシリル基を有する化合物(a2)を変性して得られた多面体構造ポリシロキサン変性体(a)に、1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物(b)を反応して得られる多面体構造ポリシロキサン変性体(A)と硬化剤(B)を有するLED封止剤(計100重量部)と、(C)ポリジメチルシロキサン(0.01〜30重量部)からなる硬化性組成物。
【0009】
(2).前記(b)成分の重量平均分子量が1000未満であることを特徴とする1)に記載の硬化性組成物。
【0010】
(3).前記(b)成分が、式C2(n−x)(nは4〜20の整数、xは1〜5の整数)で表されることを特徴とする1)または2)に記載の硬化性組成物。
【0011】
(4).前記(a)成分が、アリール基を含有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする1)〜3)のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0012】
(5).多面体構造ポリシロキサン変性体(A)が、温度20℃において、液状であることを特徴とする、1)〜4)のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0013】
(6).ヒドロシリル基を有する化合物(a2)が、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンおよび/または直鎖状シロキサンであることを特徴とする、1)〜5)のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0014】
(7).アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a1)が、式[AR1SiO−SiO3/2]a[RSiO−SiO3/2](a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aは、アルケニル基;R1は、アルキル基またはアリール基;R2は、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを特徴とする、1)〜6)のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0015】
(8).多面体構造ポリシロキサン変性体(A)が、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a1)のアルケニル基1個あたりSi原子に直結した水素原子が2.5〜20個になる範囲で、ヒドロシリル基を有する化合物(a2)を過剰量加えて変性し、未反応のヒドロシリル基を有する化合物(a2)を留去して得られることを特徴とする、1)〜7)のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0016】
(9).多面体構造ポリシロキサン変性体(A)が、分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0017】
(10).多面体構造ポリシロキサン(a)成分が、[XRSiO−SiO3/2]a[RSiO−SiO3/2](a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基、Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
(lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子である;Rは、アルキル基、もしくはアリール基であり、同一であっても異なっていてもよい。)を構成単位とすることを特徴とする1)〜8)のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0021】
(11).(B)成分が、1分子中にアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン(B−1)であることを特徴とする1)に記載の硬化性組成物。
【0022】
(12).(B)成分が、下記一般式(1)で表される有機化合物(B−2)
【0023】
【化3】
【0024】
(式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基または水素原子を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)であることを特徴とする1)に記載の硬化性組成物。
【0025】
(13).(B−1)成分が、アリール基を含有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする11)に記載の硬化性組成物。
【0026】
(14).(B−2)成分が、1分子中にアルケニル基を2個以上含有していることを特徴とする12)に記載の硬化性組成物。
【0027】
(15).有機化合物(B−2)が、数平均分子量900未満であることを特徴とする12)または14)のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0028】
(16).(C)成分が、末端に少なくともひとつの有機基をもつポリジメチルシロキサンであることを特徴とする1)に記載の硬化性組成物。
【0029】
(17).(C)成分のポリジメチルシロキサンの分子量が1000以上であるであることを特徴とする1)に記載の硬化性組成物。
【0030】
(18).ヒドロシリル化触媒を含有することを特徴とする1)〜17)のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0031】
(19).硬化遅延剤を含有することを特徴とする1)〜18)のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0032】
(20).分散剤を含有することを特徴とする1)〜19)のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0033】
(21).20)の硬化性組成物より得られた硬化物。
【0034】
(22).21)の硬化性組成物より得られた半導体発光装置。
【発明の効果】
【0035】
非相溶性の樹脂を組み合わせることで海島構造を形成することで散乱特性を発現させ、光取り出し効率に優れた半導体発光装置の製造方法、それに用いられる硬化性組成物、硬化物および半導体発光装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0037】
<半導体発光装置>
本発明の半導体発光装置は、半導体からなる発光素子をアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a1)に対して、ヒドロシリル基を有する化合物(a2)を変性して得られた多面体構造ポリシロキサン変性体(a)、1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物からなる(b)多面体構造ポリシロキサン変性体(A)と硬化剤(B)を有するLED封止剤(計100重量部)と、ポリジメチルシロキサン(C)(0.01〜30重量部)からなる硬化性組成物で封止して得られる。このとき、後述の蛍光体を添加してもかまわない。発光素子を硬化性組成物で封止する方法としては、特に限定されないが、例えば、LED用パッケージに発光素子を実装し、硬化性組成物を注入・硬化して封止してもよいし、LED用パッケージを用いずに、プレス成形・トランスファー成形などの手法により、LED用基盤に実装したLEDを硬化性組成物で直接封止してもよい。ここで、LED用パッケージやLED用基盤としては、特に限定されず、汎用されているもの等を用いることができる。
【0038】
<半導体からなる発光素子>
本発明の半導体発光装置に用いられる半導体からなる発光素子としては、特に限定されず、半導体発光装置のLEDとして汎用されているもの等を用いることができる。例えば、放射した光により蛍光体を励起して可視光を発光させるものであり、青色発光タイプのLEDや紫外発光タイプのLEDなどが挙げられる。本発明の半導体発光装置においては、1つの半導体発光装置あたりに複数個の同一または異なる種類のLEDを実装してもよい。
【0039】
<蛍光体>
本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物は蛍光体を含有することも可能であり、その際は、蛍光体層を形成する。蛍光体は上記発光素子の発する光を吸収して異なる波長の光を発生するものであり、本発明の半導体発光装置に用いられる蛍光体としては、特に限定されず、一般的に公知の無機蛍光体や有機蛍光体を用いることができ、本発明の半導体発光装置が必要とする発光色を得るために任意のものを選択することができる。具体的に、例えば、YAG系蛍光体、LuAG系蛍光体、TAG系蛍光体、BOS系蛍光体、オルトシリケートアルカリ土類系蛍光体、α−サイアロン系蛍光体、β−サイアロン系蛍光体、CASN系蛍光体、SCASN系蛍光体、ニトリドおよびオキシニトリド系蛍光体などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これら蛍光体は1種または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
【0040】
本発明に用いる蛍光体の粒径には特に制限はないが、中央粒径(D50)が、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。中央粒径(D50)が小さいと、組成物中で蛍光体が凝集してしまう場合があり、中央粒径(D50)が大きいと、蛍光体の塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる場合がある。また蛍光体の粒度分布(QD)は、組成物中での粒子の分散状態をそろえるために小さい方が好ましいが、小さくするためには分級収率が下がってコストアップにつながるので、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.07以上あり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下である。また、蛍光体の形状は、特に限定されず、任意の形状のものを用いることが可能である。
【0041】
本発明における蛍光体の使用量には特に制限は無く、半導体発光装置が必要とする発光色を得るために任意の量を使用することができる。
【0042】
<アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a1)>
本発明におけるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a1)は、分子中にアルケニル基を含有する、多面体骨格を有するポリシロキサンであれば、特に限定はない。具体的に、例えば、以下の式[RSiO3/2]x[RSiO3/2]y(x+yは6〜24の整数;xは1以上の整数、yは0または1以上の整数;Rはアルケニル基、または、アルケニル基を有する基;Rは、任意の有機基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物を好適に用いることができ、さらには、式[ARSiO−SiO3/2]a[RSiO−SiO3/2]b(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aは、アルケニル基;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物が好ましいものとして例示される。
【0043】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0044】
は、アルキル基またはアリール基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるRとしては、耐熱性・耐光性の観点から、メチル基が好ましい。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるRとしては、耐熱性・耐光性の観点から、メチル基が好ましい。aは1以上の整数であれば、特に制限はないが、化合物の取り扱い性や得られる硬化物の物性から、2以上、さらには3以上が好ましい。また、bは、0または1以上の整数であれば、特に制限はない。
【0045】
aとbの和(=a+b)は、6〜24の整数であるが、化合物の安定性、得られる硬化物の安定性の観点から、6〜12、さらには、6〜10であることが好ましい。アルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて合成することができる。合成方法としては、例えば、RSiXa3(式中Rは、上述のR、Rを表し、Xaは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)のシラン化合物の加水分解縮合反応によって、得られる。または、RSiXa3の加水分解縮合反応によって分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成したのち、さらに、同一もしくは異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより閉環し、多面体構造ポリシロキサンを合成する方法も知られている。
【0046】
その他にも、例えば、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下で加水分解縮合させる方法が挙げられる。本合成方法においては、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、多面体構造を有するケイ酸塩が得られ、さらに得られたケイ酸塩をアルケニル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより、多面体構造を形成するSi原子とアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合した多面体構造ポリシロキサンを得ることが可能となる。本発明においては、テトラアルコキシランの替わりに、シリカや稲籾殻等のシリカを含有する物質からも、同様の多面体構造ポリシロキサンを得ることが可能である。
【0047】
<ヒドロシリル基を有する化合物(a2)>
本発明で用いるヒドロシリル基を有する化合物は、分子中に1個以上のヒドロシリル基を有していれば特に制限はないが、得られる多面体構造ポリシロキサン変性体の透明性、耐熱性、耐光性の観点から、ヒドロシリル基を有するシロキサン化合物であることが好ましく、さらには、ヒドロシリル基を有する環状シロキサンまたは直鎖状ポリシロキサンであることが好ましい。これらヒドロシリル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
ヒドロシリル基を含有する直鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサンなどが例示される。特に、ヒドロシリル基を含有する直鎖状ポリシロキサンとしては、変性させる際の反応性や得られる硬化物の耐熱性、耐光性等の観点から、ジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封鎖されたポリシロキサン、さらにはジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封鎖されたポリジメチルシロキサンを好適に用いることができ、具体的に例えば、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサンなどが、好ましい例として例示される。
【0049】
ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−1,3,5−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。本発明における環状シロキサンとしては、工業的入手性および変性させる場合の反応性、あるいは、得られる硬化物の耐熱性、耐光性、強度等の観点から、具体的に例えば、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを好適に用いることができる。
【0050】
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
【0051】
<多面体構造ポリシロキサン変性体(a)>
多面体構造ポリシロキサン変性体(a)は、ヒドロシリル化触媒の存在下、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン化合物(a1)とヒドロシリル基を有する化合物(a2)とのヒドロシリル化反応により合成することができる。この際、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン化合物(a1)のアルケニル基は、すべて反応する必要はなく、一部残存していてもよい。ヒドロシリル基を有する化合物(a2)の添加量は、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a1)のアルケニル基の個数1個あたり、Si原子に直結した水素原子の数が2.5〜20個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、架橋反応によりゲル化が進行するため、多面体構造ポリシロキサン変性体(a)のハンドリング性が劣り、多すぎると、硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。また、多面体構造ポリシロキサン変性体(a)の合成時には、過剰量のヒドロシリル基を有する化合物(a2)を存在させるため、例えば減圧・加熱条件下にて、未反応のヒドロシリル基を有する化合物(a2)を取り除くことが好ましい。
【0052】
多面体構造ポリシロキサン変性体(a)の合成時に用いるヒドロシリル化触媒の添加量としては特に制限はないが、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a1)のアルケニル基1モルに対して10−1〜10−10モルの範囲で用いるのがよい。
好ましくは10−4〜10−8モルの範囲で用いるのがよい。ヒドロシリル化触媒が多すぎると、ヒドロシリル化触媒の種類によっては、短波長の光に吸収を示すため、着色原因になったり、得られる硬化物の耐光性が低下する恐れがあり、また、硬化物が発泡する恐れもある。また、ヒドロシリル化触媒が少なすぎると、反応が進まず、目的物が得られない恐れがある。 ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、45〜140℃である。温度が低すぎると反応が十分に進行せず、温度が高すぎると、ゲル化が生じ、ハンドリング性が悪化する恐れがある。
【0053】
このようにして得られた多面体構造ポリシロキサン変性体(a)は、各種化合物、特にはシロキサン系化合物との相溶性を確保でき、さらに、分子内にヒドロシリル基が導入されていることから、各種アルケニルを有する化合物と反応させることにより、硬化物を得ることができる。この際、多面体構造ポリシロキサン変性体(a)におけるヒドロシリル基は、分子中に少なくとも3個含有することが好ましい。ヒドロシリル基が3個未満である場合、得られる硬化物の強度が不十分となる恐れがある。
【0054】
また、本発明における多面体構造ポリシロキサン変性体(a)は、温度20℃において液状とすることも可能である。このような液状の多面体構造ポリシロキサン変性体(a)は、例えば、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a1)に、ヒドロシリル基を有する環状シロキサンまたは直鎖状ポリシロキサンで変性することで得ることができる。多面体構造ポリシロキサン変性体(a)を液状とすることで、ハンドリング性に優れることから好ましい。
【0055】
本発明における多面体構造ポリシロキサン変性体(a)成分としては、
[XRSiO−SiO3/2]a[RSiO−SiO3/2]
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基、Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【0056】
【化4】
【0057】
【化5】
【0058】
(lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子である;Rは、アルキル基、もしくはアリール基であり、同一であっても異なっていてもよい。)を構成単位とすることが、耐熱性、耐光性、あるいは、得られる硬化物の強度の観点から、好ましい例として挙げられる。
【0059】
<(b)1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物>
本発明における1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物(b)は、前記(a)成分のヒドロシリル基と反応する。本発明における(b)成分を用いることで、硬化物の弾性率を低下することができ、さらに、耐冷熱衝撃性、破壊強度、ガスバリア性、光取り出し効率性等を向上することができる。
本発明における(b)成分は、1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物であればよく、この炭素−炭素2重結合は、ビニレン基、ビニリデン基、アルケニル基のいずれであってもよい。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。本発明における(b)成分は、平均分子量が1000以下であればよいが、さらに好ましい例としては、下記式C2(n−x)(nは4〜20の整数、xは1〜5の整数)で表される環状オレフィン化合物が、(a2)成分との反応性の観点から好ましい例として挙げられる。
【0060】
このような環状オレフィン化合物として、脂肪族環状オレフィン化合物、置換脂肪族環状オレフィン化合物等が挙げられる。脂肪族環状オレフィン化合物として、具体的に例えば、シクロへキセン、シクロへプテン、シクロオクテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン、アリルシクロヘキサン、アリルシクロヘプタン、アリルシクロオクタン、メチレンシクロヘキサン等が挙げられる。
【0061】
置換脂肪族環状オレフィン化合物として、具体的に例えば、ノルボルネン、1−メチルノルボルネン、2−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、2−ビニルノルボルナン、7−ビニルノルボルナン、2−アリルノルボルナン、7−アリルノルボルナン、2−メチレンノルボルナン、7−メチレンノルボルナン、カンフェン、ビニルノルカンフェン、6−メチル−5−ビニル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、3−メチル−2−メチレン−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、α−ピネン、β−ピネン、6、6−ジメチル−ビシクロ〔3,1,1〕−2−ヘプタエン、ロンギフォーレン、2−ビニルアダマンタン、2−メチレンアダマンタン等が挙げられる。
【0062】
中でも入手性の観点から、シクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン、カンフェン、ピネンが好ましい例として挙げられる。
【0063】
これら、1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物(b)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物(b)の添加量は、前述のヒドロシリル基を有する化合物(a2)のヒドロシリル基1個あたり、(b)成分の炭素−炭素2重結合の数が、0.01〜0.5個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、得られる硬化物の耐冷熱衝撃性が低下する場合があり、添加量が多いと、得られる硬化物に硬化不良が生じる場合がある。
【0065】
<多面体構造ポリシロキサン変性体(A)の合成>
本発明の半導体発光装置に用いられる多面体構造ポリシロキサンを得る方法としては、特に限定されず種々設定できるが、予め(a1)成分と(a2)成分を反応させた後に(b)成分を反応させても良いし、予め(a2)成分と(b)成分を反応させた後に(a1)成分を反応させても良いし、(a1)成分と(a2)成分を共存させて(b)成分と反応させても良い。各反応の終了後に、例えば減圧・加熱条件下にて、揮発性の未反応成分を留去し、目的物あるいは次のステップへの中間体として用いても良い。(a2)成分と(b)成分のみが反応し、(a1)成分を含まない化合物の生成を抑制するためには、(a1)成分と(a2)成分を反応させ、未反応の(a2)成分を留去した後、(b)成分を反応させる方法が好ましい。(b)成分と(a2)成分のみが反応し、(a1)成分を含まない化合物の生成の抑制は耐熱性の観点から好ましい。
【0066】
こうして得られた多面体構造ポリシロキサンは、反応に用いた(a1)成分のアルケニル基が一部残存してもよい。
【0067】
(a2)成分の添加量は、(a1)成分が有するアルケニル基個に対し、ヒドロシリル化反応する(a2)成分のヒドロシリル基の数が2.5〜20個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、架橋反応によりゲル化が進行するため、多面体構造ポリシロキサンのハンドリング性が劣る場合があり、添加量が多いと、硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0068】
(b)成分の添加量は、(a2)成分が有するヒドロシリル基1個に対し、ヒドロシリル化反応する(b)成分のアルケニル基の数が0.1〜1個になるように用いることが好ましい。 多面体構造ポリシロキサン変性体(A)の合成時に用いるヒドロシリル化触媒の添加量としては特に制限はないが、反応に用いる(a1)成分、(b)成分のアルケニル基1モルに対して10−1〜10−10モルの範囲で用いるのがよい。好ましくは10−4〜10−8モルの範囲で用いるのがよい。ヒドロシリル化触媒が多いと、ヒドロシリル化触媒の種類によっては、短波長の光に吸収を示すため、着色原因になったり、得られる硬化物の耐光性が低下する場合があり、また、硬化物が発泡する場合がある。また、ヒドロシリル化触媒が少ないと、反応が進まず、目的物が得られない場合がある。ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、45〜140℃である。温度が低すぎると反応が十分に進行せず、温度が高すぎると、ゲル化が生じ、ハンドリング性が悪化する場合がある。
【0069】
本発明の半導体発光装置に用いられる多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、式
[XRSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
[a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基、Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【0070】
【化6】
【0071】
【化7】
【0072】
{lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子であり、少なくとも1つは下記一般式(3)の構造を有する。
−[CH]−R (3)
(lは0以上の整数;R6は環状オレフィン化合物を含有する基);Rは、アルキル基またはアリール基}]で表されるシロキサン単位から構成されることを特徴とする多面体構造ポリシロキサン変性体である。
【0073】
本発明における(b)成分は、1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物であればよく、この炭素−炭素2重結合は、ビニレン基、ビニリデン基、アルケニル基のいずれであってもよい。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0074】
<(B)硬化剤>
本発明における硬化剤(B)は、本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)と硬化するための材料であり特に限定されるものでないが、1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物が好ましく、中でも、1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン(B−1)、有機化合物(B−2)が、得られる硬化物のガスバリア性や、耐冷熱衝撃性の観点からさらに好ましい。
【0075】
<(B−1)アリール基を有し、1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン>
本発明におけるアリール基を有し、1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンのシロキサンのユニット数は、特に限定されないが、2つ以上が好ましく、さらに好ましくは、2〜10個である。1分子中のシロキサンのユニット数が少ないと、組成物から揮発しやすくなり、硬化後に所望の物性が得られないことがある。また、シロキサンのユニット数が多いと、得られた硬化物のガスバリア性が低下する場合がある。
【0076】
本発明におけるアリール基を有し、1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンは、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上に直接アリール基が結合していることが好ましい。また、アリール基は分子の側鎖または末端いずれにあってもよく、このようなアリール基含有ポリシロキサンの分子構造は限定されず、例えば直鎖状、分岐鎖状、一部分岐鎖状を有する直鎖状の他に、環状構造を有してもよい。
【0077】
このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、3−プロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、3−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、3−イソブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、3−tブチルフェニル基、4−tブチルフェニル基、3−ペンチルフェニル基、4−ペンチルフェニル基、3−ヘキシルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、3−シクロヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,3−ジエチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、2,5−ジエチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、3,4−ジエチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、ビフェニル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、3−エポキシフェニル基、4−エポキシフェニル基、3−グリシジルフェニル基、4−グリシジルフェニル基等が挙げられる。中でも、耐熱・耐光性の観点から、フェニル基が好ましい例として挙げられる。これらは、単独で用いても良く、2種以上併用して用いてもよい。
【0078】
アリール基を有し、1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンの添加量は種々設定できるが、アルケニル基1個あたり、多面体構造ポリシロキサン変性体である多面体構造ポリシロキサン系変性体に含まれるSi原子に直結した水素原子が0.3〜5個、好ましくは、0.5〜3個となる割合で添加されることが望ましい。アルケニル基の割合が少ないと、発泡等による外観不良が生じやすくなり、また、アルケニル基の割合が多いと、硬化後の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0079】
本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)のヒドロシリル基とアリール基を有し、1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンのアルケニル基をヒドロシリル化反応させることにより、硬化物となすことができる。ヒドロシリル化反応に際してはヒドロシリル化触媒を用いることが好ましい。この反応に用いることができるヒドロシリル化触媒としては、後述のものを用いることができる。多面体構造ポリシロキサン変性体とアリール基を有し、1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンのヒドロシリル化反応の際には、多面体構造ポリシロキサン変性体の合成の際に用いたヒドロシリル化触媒が多面体構造ポリシロキサン変性体とともに持ち込まれるので、ヒドロシリル化触媒を別途用いなくても構わない。
【0080】
<(B−2)有機化合物>
本発明における(B−2)成分は、具体的に例えば、(A)成分の架橋剤としての役割を果たし、耐熱性、耐光性、ガスバリア性を有する硬化物を与えることが可能となる。
本発明における有機化合物(B−2)は、下記一般式(1)で表される有機化合物であれば特に限定はされない。
【0081】
【化8】
【0082】
(式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基または水素原子を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)
本発明における(B−2)成分は、得られる硬化物の強度やガスバリア性、耐熱性、耐光性等の観点から、1分子中にアルケニル基を平均して2個以上含有していることが好ましく、より好ましくは2個含有することが好ましい。また、ガスバリア性の観点から、数平均分子量900未満であることが好ましい。
【0083】
(B−2)成分の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、等が例示され、これらは単独で使用しても2種類以上を併用しても構わない。
【0084】
上記具体例のうち、例えば組成物を基材と硬化させた場合の基材との接着性の観点からイソシアヌル酸誘導体を用いることが好ましく、さらに、耐熱性・耐光性のバランスの観点から、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートを用いることがより好ましく、例えば、耐冷熱衝撃性の観点からジアリルモノメチルイソシアヌレートがさらに好ましい。
【0085】
また、(B−2)成分の骨格中にアルケニル基以外の官能基を有していても構わないが、(A)成分との相溶性との観点から、メチル基、エチル基、プロピル基等の直鎖上の脂肪族炭化水素系基をはじめとする極性の低い官能基であるほうが好ましく、耐熱性、耐光性の観点から、特にメチル基が好ましい。
【0086】
(B−2)成分の添加量は種々設定できるが、(B−2)成分に含まれるアルケニル基1個あたり、前述の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)に含まれるヒドロシリル基が0.3〜5個、好ましくは、0.5〜3個となる割合で添加されることが望ましい。アルケニル基の割合が少なすぎると、発泡等による外観不良が生じやすくなり、また、多すぎると、硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0087】
<ポリジメチルシロキサン(C)>
本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物は末端に少なくともひとつの有機基をもつポリジメチルシロキサンを含有するLED封止剤である。有機基の種類としては特に限定はなく、アミノ基、エポキシ基、ヒドロシリル基、カルビノール基、メタクリル基、ポリエーテル基、メルカプト基、カルボキシル基、シラノール基、アクリル基、ビニル基などが挙げられるが、特にシラノール基やビニル基が望ましい。メチルシロキサン単位は直鎖状でも分岐していてもよい。ポリジメチルシロキサンの種類としては特に限定されないが、例えば、前述の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)との相溶性を低下させ、海島構造を作りやすくするため分子量が高いものが好ましい。
【0088】
(C)成分の分子量は特に指定はないが、本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)と混合して封止剤として用いた際に、輝度上昇の効果が高いことから、1000以上50000以下、好ましくは6000〜30000である。上記の特徴を満たすポリジメチルシロキサンとしてジェレスト製のMVD8MV、DMSV21、DMSV22、DMSV25、DMSV31、DMSV35、DMSS21などが挙げられる。
【0089】
(C)成分の硬化反応としては、得られる硬化物の耐熱性、耐光性が優れる観点から炭素−炭素二重結合基を有する化合物とヒドロシリル基を有する化合物のヒドロシリル化反応が好ましい。
【0090】
(C)成分の含有量は、(A)成分100重量部に対して、0.01重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がより好ましく、1.0重量部以上がさらに好ましい。0.01重量部未満の場合、浮島構造の形成が充分でないため、光散乱性の効果が得られない。一方、30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましく、15重量部以下がさらにより好ましい。30重量部を超えると分離や、硬化物の発泡が観察される。
【0091】
<ヒドロシリル化触媒>
本発明で用いることができるヒドロシリル化触媒としては、通常ヒドロシリル化触媒として公知のものを選択でき、特に制限はない。
【0092】
具体的に例示すれば、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体、例えば、Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt〔(MeViSiO)4m;白金−ホスフィン錯体、例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34;白金−ホスファイト錯体、例えば、Pt〔P(OPh)34、Pt〔P(OBu)34(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0093】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2等が好ましい。
【0094】
<硬化遅延剤>
硬化遅延剤は、本発明で用いられる硬化性組成物の保存安定性の改良あるいは、硬化過程でのヒドロシリル化反応性を調整するために用いることができる成分である。本発明においては、硬化遅延剤としては、ヒドロシリル化触媒による付加型硬化性組成物で用いられている公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもよい。
【0095】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、具体的には3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示できる。
【0096】
有機リン化合物としては、具体的にはトリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示できる。
【0097】
有機イオウ化合物としては、具体的にはオルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示できる。
【0098】
窒素含有化合物としては、具体的にはN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジン等が例示できる。
【0099】
スズ系化合物としては、具体的にはハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示できる。
【0100】
有機過酸化物としては、具体的にはジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。これらのうち、マレイン酸ジメチル、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが、特に好ましい硬化遅延剤として例示できる。
【0101】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10−1〜10モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜100モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0102】
<硬化性組成物>
本発明の半導体発光装置に用いられる有機変性された多面体構造ポリシロキサンを含有する硬化性組成物は、蛍光体、必要に応じて、ヒドロシリル化触媒、硬化遅延剤等を混合することにより得ることができる。
蛍光体を硬化性組成物に混合・分散する方法としては、蛍光体の結晶構造に損傷を与えず蛍光体を均一に分散することが可能な方法であれば特に制限はなく、例えばミキサー、高速ディスパー、ホモジナイザー、3本ロール、2本ロール、ニーダー、ビーズミル等、従来公知の方法を用いることが出来る。上記の中でも特に、遊星攪拌ミキサー、3本ロール、2本ロール、など分散にあたり発熱の少ないものや混合機由来の金属磨耗粒子の混入が少ないものが好ましく、なかでも遊星攪拌ミキサーが蛍光体の損傷少なく脱泡しながら混合・分散できるので好ましい。これらの混合・分散方法は、一種のみ行ってもよく、また二種以上を組み合わせて行ってもよい。
【0103】
本発明に用いられる硬化性組成物の粘度は、特に制限はないが、温度23℃において0.2Pa・s〜300Pa・sであることが好ましく、さらに好ましくは0.5Pa・s〜200Pa・sである。硬化性組成物の粘度が低いと、蛍光体が凝集してしまう恐れがあり、粘度が高いと、硬化性組成物のハンドリング性が悪化する恐れがある。
【0104】
硬化性組成物を硬化させる際に温度を加える場合は、好ましくは、30〜400℃、さらに好ましくは50〜250℃である。硬化温度が高いと、得られる硬化物に外観不良が生じる傾向があり、低いと硬化が不十分となる。また、2段階以上の温度条件を組み合わせて硬化させてもよい。具体的には例えば、70℃、120℃、150℃の様に段階的に硬化温度を引き上げていくことで、良好な硬化物を得ることができ好ましい。
【0105】
硬化時間は硬化温度、用いるヒドロシリル化触媒の量及び反応性基の量、その他、硬化性組成物の配合物の組み合わせにより適宜選択することができるが、あえて例示すれば、1分〜12時間、好ましくは10分〜8時間行うことにより、良好な硬化物を得ることができる。
【0106】
本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物には、必要に応じて接着性付与剤を添加することができる。
【0107】
接着性付与剤は、例えば、本発明におけるポリシロキサン系組成物と基材との接着性を向上する目的で用いるものであり、その様な効果があるものであれば特に制限はないが、シランカップリング剤が好ましい例として例示できる。
【0108】
シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0109】
好ましいシランカップリング剤としては、具体的には3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0110】
シランカップリング剤の添加量としては、硬化性組成物100重量部に対して、0.05〜30重量部であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0111】
また、接着性付与剤の効果を高めるために、公知の接着性促進剤を用いることもできる。接着性促進剤としては、エポキシ含有化合物、エポキシ樹脂、ボロン酸エステル化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0112】
<分散剤>
本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物には、必要に応じて分散剤として、無機フィラーを添加することができる。無機フィラーを用いることにより、硬化性組成物の流動性を改善することができる。また得られる成形体の強度、硬度、弾性率、熱膨張率、熱伝導率、放熱性、電気的特性、光の反射率、難燃性、耐火性、およびガスバリア性等の諸物性を改善することができる。
【0113】
無機フィラーは、無機物もしくは無機物を含む化合物であれば特に限定されないが、具体的に例えば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機フィラー、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、ガラスフレーク、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン、銀粉等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0114】
無機フィラーは、適宜表面処理をほどこしてもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、シランカップリング剤による処理等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0115】
無機フィラーの形状としては、破砕状、片状、球状、棒状等、各種用いることができる。無機フィラーの平均粒径や粒径分布は、特に限定されるものではないが、ガスバリア性の観点から、平均粒径が0.005〜50μmであることが好ましく、さらには0.01〜20μmであることがより好ましい。同様に、BET比表面積についても、特に限定されるものでないが、ガスバリア性の観点から、70m/g以上であることが好ましく、100m/g以上であることがより好ましく、さらに200m/g以上であることが特に好ましい。
【0116】
無機フィラーの添加量は特に限定されないが、硬化性組成物100重量部に対して、0.1〜1000重量部、よりこの好ましくは、0.5〜500重量部、さらに好ましくは、1〜100重量部である。無機フィラーの添加量が多いと、流動性が悪くなる場合があり、無機フィラーの添加量が少ないと、所望の物性が得られない場合がある。
【0117】
無機フィラーを混合する手段としては、特に限定されるものではないが、具体的に例えば、2本ロールあるいは3本ロール、遊星式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサー等の撹拌機、プラストミル等の溶融混練機等が挙げられる。無機フィラーの混合は、常温で行ってもよいし加熱して行ってもよく、また、常圧下で行ってもよいし減圧状態で行ってもよい。混合する際の温度が高いと、成型する前に組成物が硬化する場合がある。
【0118】
また、本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物には、必要に応じて着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0119】
本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物は、上記した成分をロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ真空処理、加熱処理を施したりしてもよい。
【0120】
本発明の光半導体装置は従来公知の各種の用途に用いることができる。具体的に、例えば、受発光デバイス液晶表示装置等のバックライト、照明、センサー光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト等を挙げることができる。
【実施例】
【0121】
次に本発明の組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0122】
<重量平均分子量>
合成した反応物の重量平均分子量は、東ソー製 HLC−8220GPC(カラム:TSKgel SuperHZM−N(4本)+同HZ1000(1本) 内径4.6mm×15cm、溶媒:トルエン、流速:0.35ml/min)を用い、標準ポリスチレン換算法により測定した。
【0123】
<多面体構造ポリシロキサン単位の分析>
(A)成分の多面体構造ポリシロキサン単位の分析は、VARIAN社製INOVA AS600を使用し、29Si−NMRにより測定した。多面体構造ポリシロキサン単位を含有する場合はシャープなピークが見られる。
【0124】
(製造例1)
48%コリン水溶液(トリメチル−2ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)1803gにテトラエトキシシラン1459gを加え、室温で2時間激しく撹拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、撹拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール1400mLを加え、均一溶液とした。
【0125】
ジメチルビニルクロロシラン1149g、トリメチルシリクロリド830gおよびヘキサン1400mLの溶液を激しく攪拌しながら、メタノール溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をメタノール中で激しく攪拌することにより洗浄し、ろ別することにより、Si原子16個と、ビニル基を4個有するアルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサンであるテトラキス(ビニルジメチルシロキシ)テトラキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(Fw=1175.8)を白色固体として760g得た。
上記アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサンであるテトラキス(ビニルジメチルシロキシ)テトラキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン20.0g、カンフェン10.4gをトルエン40.0gに溶解させ、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)7.46μLを加えた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン14.3g、トルエン14.3gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させた。反応終了後、エチニルシクロヘキサノール14.3μl、マレイン酸ジメチル3.31μlを加え、トルエンと未反応成分を留去することにより、液状の有機基を有する多面体構造ポリシロキサン変性体(A)を40.1g得た。
【0126】
<輝度の測定>
ジェネライツ社製12mil×13mil角 青色LEDチップ(品番:B1213AAA0 S46B/C−19/20)と、金ワイヤーと、信越化学社製ダイボンド剤KER−3000を、エノモト社製LEDパッケージ(品番:TOP LED 1−IN−1)に実装した。このLEDを大塚電子社製全光束測定(φ300mm)システム(品番:HM−0930)を用いて、温度25℃、電流30mA、待機時間30秒の条件で通電して発光させ、その全光束を測定し、測定したサンプル100個の平均値を求めた。
測定後、このLEDに、封止剤を0.1g注入し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×5時間熱硬化させた。封止したLEDを、さらに大塚電子社製全光束測定(φ300mm)システム(品番:HM−0930)を用いて、温度25℃、電流30mA、待機時間30秒の条件で通電して発光させ、その全光束を測定し、測定したサンプル100個の平均値を求めた。
【0127】
光取り出し効率の計算方法として、以下の式を用いた。
光取り出し効率(%)=(封止後LEDの全光束/封止前LEDの全光束)×100
比較例1の数値を規格値(100%)とし、105%以上のものを○、105%未満、100%を超えるものを△、100%以下のものを×とした。
【0128】
【表1】
【0129】
表1の実施例1〜4では、製造例2で得られた多面体構造ポリシロキサンを有する(A)成分と硬化剤(B)からなるLED封止剤に対し、分子量6000〜49500のポリジメチルシロキサン(C)を2部添加した例を示している。
【0130】
(実施例1)
製造例2で得られた変性体(A)10.00gに1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(B)3.8g、DMS−V21(Gelest社製ポリジメチルシロキサン(C)((A)成分と(B)成分100部に対して、2.0部)を加えて均一に攪拌し、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られた組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0131】
(実施例2)
製造例2で得られた変性体(A)10.00gに1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(B)3.8g、DMS−V22(Gelest社製ポリジメチルシロキサン(C)((A)成分と(B)成分100部に対して、2.0部)を加えて均一に攪拌し、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られた組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0132】
(実施例3)
製造例2で得られた変性体(A)10.00gに1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(B)3.8g、DMS−V25(Gelest社製ポリジメチルシロキサン(C)((A)成分と(B)成分100部に対して、2.0部)を加えて均一に攪拌し、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られた組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0133】
(実施例4)
製造例2で得られた変性体(A)10.00gに1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(B)3.8g、DMS−V35(Gelest社製ポリジメチルシロキサン(C)((A)成分と(B)成分100部に対して、2.0部)を加えて均一に攪拌し、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られた組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0134】
(実施例5)
製造例2で得られた変性体(A)10.00gに1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(B)3.8g、DMS−V25(Gelest社製ポリジメチルシロキサン(C)((A)成分と(B)成分100部に対して、0.2部)を加えて均一に攪拌し、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られた組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表2に記載した。
【0135】
(実施例6)
製造例2で得られた変性体(A)10.00gに1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(B)3.8g、DMS−V25(Gelest社製ポリジメチルシロキサン(C)((A)成分と(B)成分100部に対して、0.5部)を加えて均一に攪拌し、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られた組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表2に記載した。
【0136】
(実施例7)
製造例2で得られた変性体(A)10.00gに1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(B)3.8g、DMS−V25(Gelest社製ポリジメチルシロキサン(C)((A)成分と(B)成分100部に対して、1.0部)を加えて均一に攪拌し、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られた組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表2に記載した。
【0137】
(実施例8)
製造例2で得られた変性体(A)10.00gに1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(B)3.8g、DMS−V25(Gelest社製ポリジメチルシロキサン(C)((A)成分と(B)成分100部に対して、1.5部)を加えて均一に攪拌し、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られた組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表2に記載した。
【0138】
(実施例9)
製造例2で得られた変性体(A)10.00gに1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(B)3.8g、DMS−V25(Gelest社製ポリジメチルシロキサン(C)((A)成分と(B)成分100部に対して、5.0部)を加えて均一に攪拌し、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られた組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表2に記載した。
【0139】
(比較例1)
製造例2で得られた変性体(A)10.00gに1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(B)3.8gを加えて均一に攪拌し、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られた組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0140】
(比較例2)
製造例2で得られた変性体(A)10.00gに1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(B)3.8g、MVD8MV(Gelest社製ポリジメチルシロキサン(C)((A)成分と(B)成分100部に対して、2.0部)を加えて均一に攪拌し、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られた組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0141】
硬化前外観・硬化後外観ともに白濁し、海島構造を形成している実施例2・3は、ポリジメチルシロキサン(C)を含まない比較例1に対して、輝度が高い傾向があった。
ポリジメチルシロキサン(C)を添加していても、硬化物で海島構造を形成していない実施例1・4はポリジメチルシロキサン(C)を添加しないものと同程度であった。また、ポリジメチルシロキサン(C)の分子量が1000以下の比較例2は硬化前、硬化後も外観が透明であり、ポリジメチルシロキサン(C)を添加しないものと同様の結果を示した。
海島構造の形成には1000〜50000程度の分子量をもつポリジメチルシロキサン(C)を添加することが望ましい。
【0142】
【表2】
【0143】
表2は分子量17200のポリジメチルシロキサン(C)の添加量を0.2〜5部に設定したものである。
実施例3・7・8・9に示されるように、ポリジメチルシロキサン(C)を1部以上添加すると添加の効果が顕著に現れる。