特許第6335045号(P6335045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335045
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】送り出し腕型ミシン
(51)【国際特許分類】
   D05B 45/00 20060101AFI20180521BHJP
   D05B 73/02 20060101ALI20180521BHJP
   D05B 73/06 20060101ALI20180521BHJP
   D05B 1/10 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   D05B45/00 Z
   D05B73/02
   D05B73/06
   D05B1/10 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-130450(P2014-130450)
(22)【出願日】2014年6月25日
(65)【公開番号】特開2016-7431(P2016-7431A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113229
【氏名又は名称】ペガサスミシン製造株式会社
(72)【発明者】
【氏名】向井 裕親
(72)【発明者】
【氏名】板東 進
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02623484(US,A)
【文献】 米国特許第1928486(US,A)
【文献】 米国特許第3875877(US,A)
【文献】 実開昭58−040068(JP,U)
【文献】 特開平11−114253(JP,A)
【文献】 特開2015−023911(JP,A)
【文献】 特開2015−188668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00−97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドに基端が接続され布送り方向に延出するシリンダーと、
ベッドに基部が連結されシリンダーと交差する方向に水平延出するアームと、
アーム先端に連設されシリンダー先端の上方に配置される頭部を備える送り出し腕型ミシンにおいて、
前記ベッドは第1ベッド、第1連結部、第2ベッド、第2連結部で構成され、
前記シリンダーが接続される第1ベッドと、
前記第1ベッドの上部右側面に基部が接続されるとともに上方に延伸する第1連結部と、
前記第1連結部の上部先端に基部が接続されるとともに右方へ延伸する第2ベッドと、
前記第2ベッドの後面に接続されるとともに前記アームの基部に連結される第2連結部と、
前記アーム内に該アームの延伸方向に沿って配置されるとともに軸回りの回動可能に支持される上軸と、
前記第2ベッド内に該第2ベッドの延伸方向に沿って配置されるとともに軸回りの回動可能に支持され前記上軸に連動して回動する中間軸と、
前記第1ベッド上部から前記第1連結部にわたり布送り方向と直交して配置されるとともに軸回りの回動可能に支持され前記中間軸に連動して回動する下軸と、
前記第1ベッドから突出する前記下軸の一端または前記下軸に連動して回動し前記第1ベッドから突出する下糸繰り軸の一端に固定される下糸繰りカムを備えることを特徴とする、送り出し腕型ミシン。
【請求項2】
前記中間軸と交差する方向に延設され、一端が前記第2ベッドの後面から突出する上糸繰り軸と、
前記中間軸の回動を前記上糸繰り軸に伝動する動力伝動機構と、
前記上糸繰り軸の突出した一端に固定される上糸繰りカムを備えることを特徴とする、請求項1に記載の送り出し腕型ミシン。
【請求項3】
前記動力伝動機構は、
前記中間軸に固定されるウォームと、
前記上糸繰り軸に固定され前記ウォームに係合するウォームホイールを備えることを特徴とする、請求項2に記載の送り出し腕型ミシン。
【請求項4】
前記下軸の右側と前記中間軸の左側に担架される第1ベルトと、
前記上軸と前記中間軸の夫々右側に担架される第2ベルトを備えることを特徴とする、請求項1乃至3に記載の送り出し腕型ミシン。
【請求項5】
前記第1連結部は上方に行くにつれ後方に傾斜していることを特徴とする、請求項4に記載の送り出し腕型ミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送り出し腕型ミシンに関するもので、詳しくは、シリンダーの延出方向に生地を送る送り出し腕型ミシンのフレーム構造および糸繰り機構に関する。
本発明において、前後とは布送り方向における前後方向をいい、左右とはミシンを正面から見たときの左右方向をいう。また上下とはミシンの上下方向をいう。
【背景技術】
【0002】
この種の送り出し腕型ミシンとして、シリンダーとアームとが互いに交差する方向にベッドから延出したものが従来より知られている(例えば、特許文献1参照。)。図6乃至図8は特許文献1に開示されるような従来の送り出し腕型ミシンにおけるミシン本体11の外観を示したもので、図6は同ミシンの左側面図、図7は同ミシンの平面図、図8は同ミシンの正面図である。また、図9は特許文献1に開示される従来の送り出し腕型ミシンにおける糸繰り機構の拡大断面図である。
図6に示すように、シリンダー13はベッド12から布送り方向Fに延出している。アーム14は基部がベッド12に立脚するとともにシリンダー13と交差する方向に水平延伸している。アーム14の先端部は図7に示すようにシリンダー13の先端側に向かって屈折し、該アーム14の先端には頭部15が連設されている。頭部15はシリンダー13先端上面に設けられた針板16上方に配置されている。
頭部15の下面から図示しない針棒,押さえ棒が突出しており、針棒には複数の針が、押さえ棒には押さえ金17がそれぞれ固定されている。押さえ金17には図示しない上下メス,上飾りスプレッダなどが備えられている。また、シリンダー13内には図示しない送り歯,ルーパが備えられている。
【0003】
図7に示すように、アーム14内にはアーム14の延伸方向に沿って主軸10(上軸)が配置されている。主軸10の頭部15に近い一端はアーム14外に突出しており、該主軸10の一端にはハンドプーリ29(ハンドホイール)が取着されている。ハンドプーリ29は図示しないモータベルトが担架されて図示しないミシンの駆動源の動力を主軸10に伝えるとともに、ミシン停止時には作業者の手で操作されて主軸10を回動させる。
主軸10の頭部15側には図示しない針棒駆動機構,メス駆動機構,上飾り駆動機構などが連結されており、主軸10の回動によって前記針,メス,上飾りスプレッダなどが駆動する。また、主軸10のアーム14基部側には図示しない複数の偏心ロッドが連結されており、該偏心ロッドはベッド12に配置される図示しない送り歯駆動機構やルーパ駆動機構に接続されている。そして主軸10の回動によって送り歯やルーパが駆動する。
【0004】
さらに、この種の送り出し腕型ミシンには、図9に示すように、アーム14の延伸方向中途に糸繰りカム室30が上面を蓋体31に覆われて設けられている。この糸繰りカム室30には、下糸繰りカム32を備える下糸繰り機構と上糸繰りカム33を備える上糸繰り機構が配置されている。下糸繰り機構は下糸となるルーパ糸の繰り出しを制御する。また、上糸繰り機構は上糸となる上飾り糸の繰り出しを制御する。両糸繰りカム32,33はそれぞれアーム14内の糸繰りカム室30において主軸10の中途に固定されている。主軸10の回動に応じて両糸繰りカム32,33も回動する。
【0005】
上述のように構成された従来の送り出し腕型ミシンにおいて、シリンダー13上面に積載された生地は該シリンダー13の先端側すなわち布送り方向Fに送られ、上記針,ルーパおよび上飾りスプレッダ等々の各部材が協働して縫製が行われる。特許文献1に開示される送り出し腕型ミシンは、主に2枚の生地または筒状にした生地の左右一対の生地端を突き合せつつ一部を重ね合わせ、その重ね合わせ部分に、二重環縫い目あるいは偏平縫い目を形成するのに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−62273号公報(第1−2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、下糸繰りカム32は全回転する軸に固定されなければならず、従来の送り出し腕型ミシンにおいてはフレームの構造上、全回転する軸として主軸10しか存在しない。そして、主軸10の頭部15側やアーム14基部側には各駆動機構が連結されているため、下糸繰りカム32は主軸10の中途に固定されることになる。この構成上、下糸繰りカム32の外周面に通されるルーパ糸が偶発的に切れて主軸に巻き付いた際のルーパ糸を除去する場合や、下糸繰りカム32が破損し新しい下糸繰りカムに交換する場合などに、下糸繰りカム32の取付・取外し作業に困難を伴うという問題があった。
【0008】
さらに、従来の送り出し腕型ミシンにおいては、作業者がシリンダー13上面に積載された生地を操作する操作性やベッド12に立脚するアーム14の基部上方から針落ち付近を視認する視認性に支障を来さないように、下糸繰りカム32がアーム14の内部に配設されるのが一般的であり、ルーパ糸のルーパに対する糸供給量および張力の調整作業は蓋体31を開けアーム14上面から行うようにしてある。ところが、この構成においては、上述の調整作業に困難を伴うという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、作業者が生地を操作する操作性は維持しつつも、針落ちの視認性が高く、下糸繰りカムの取付・取外し作業や調整作業を容易に行うことができる送り出し腕型ミシンのフレーム構造と糸繰り機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
ベッドに基端が接続され布送り方向に延出するシリンダーと、
ベッドに基部が連結されシリンダーと交差する方向に水平延出するアームと、
アーム先端に連設されシリンダー先端の上方に配置される頭部を備える送り出し腕型ミシンにおいて、
前記ベッドは第1ベッド、第1連結部、第2ベッド、第2連結部で構成され、
前記シリンダーが接続される第1ベッドと、
前記第1ベッドの上部右側面に基部が接続されるとともに上方に延伸する第1連結部と、
前記第1連結部の上部先端に基部が接続されるとともに右方へ延伸する第2ベッドと、
前記第2ベッドの後面に接続されるとともに前記アームの基部に連結される第2連結部と、
前記アーム内に該アームの延伸方向に沿って配置されるとともに軸回りの回動可能に支持される上軸と、
前記第2ベッド内に該第2ベッドの延伸方向に沿って配置されるとともに軸回りの回動可能に支持され前記上軸に連動して回動する中間軸と、
前記第1ベッド上部から前記第1連結部にわたり布送り方向と直交して配置されるとともに軸回りの回動可能に支持され前記中間軸に連動して回動する下軸と、
前記第1ベッドから突出する前記下軸の一端または前記下軸に連動して回動し前記第1ベッドから突出する下糸繰り軸の一端に固定される下糸繰りカムを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の送り出し腕型ミシンにおいて、
前記中間軸と交差する方向に延設され、一端が前記第2ベッドの後面から突出する上糸繰り軸と、
前記中間軸の回動を前記上糸繰り軸に伝動する動力伝動機構と、
前記上糸繰り軸の突出した一端に固定される上糸繰りカムを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2の送り出し腕型ミシンにおいて、
前記動力伝動機構は、
前記中間軸に固定されるウォームと、
前記上糸繰り軸に固定され前記ウォームに係合するウォームホイールを備えることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の送り出し腕型ミシンにおいて、
前記下軸の右側と前記中間軸の左側に担架される第1ベルトと、
前記上軸と前記中間軸の夫々右側に担架される第2ベルトを備えることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項4の送り出し腕型ミシンにおいて、
前記第1連結部は上方に行くにつれ後方に傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ベッド上にアームが立脚していないので、針落ちに対する作業者の視認性が向上し、かつ第1ベッド右方の懐は十分に確保されているので、作業者の右手をシリンダー上面に差し入れるのに支障はなく、もって作業者が生地を操作する作業性を損ねることはない。
そして、以上のように作業者の操作性を維持しつつも視認性を向上させたミシンの本体の形状にあって、下糸繰りカムが第1ベッドから突出する軸の一端に固定されるので、下糸繰りカムの取付・取外し作業や調整作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の送り出し腕型ミシンのミシン本体を示す概略斜視図。
図2】同上ミシンのミシン本体を示す概略左側面図。
図3】同上ミシンのミシン本体を示す概略上面図。
図4】同上ミシンのミシン本体を正面やや上方から見た概略図。
図5】他の実施例の送り出し腕型ミシンのミシン本体を示す概略斜視図。
図6】従来の送り出し腕型ミシンのミシン本体を示す左側面図。
図7】同上ミシンのミシン本体を示す一部破断平面図。
図8】同上ミシンのミシン本体を示す正面図。
図9】同上ミシンの糸繰り機構を示す拡大断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態のミシン本体1について説明する。なお、ミシン本体1の外殻を形成する部位については、2点鎖線にて示してある。第1ベッド2の後面2d下部にはシリンダー3の基端が接続され、シリンダー3の先端は布送り方向Fに水平に延出している。シリンダー3先端部上面に針板9が備えられており、針板9には針落ち9aが設けられている。図2に示すように、第1ベッド2は左側方から見て5角形を呈しており、前面2bの上部は上に行くにつれて布送り方向Fつまり後方に向かって傾斜している。また、第1ベッド2の上面2aは布送り方向Fに向うにつれて下方つまり後ろ下がりに傾斜している。
【0018】
図1図3に示すように、第1ベッド2の上部右側面には第1連結部6の基部が接続されており、第1連結部6は該基部より後方に傾斜しつつ上方へ延伸している。第1連結部6の前記基部の下面はシリンダー3の上面よりも高く位置づけられている。第1連結部6の上部先端には第2ベッド7の基部が接続されており、第2ベッド7は該基部より右方へ水平に延伸している。第2ベッド7の延伸方向は、布送り方向Fと直交している。
【0019】
第2ベッド7の右側後面には第2連結部8の一端が接続されており、第2連結部8の他端はアーム4の基部前面に接続されている。アーム4はその基部から左方つまりシリンダー3側に向かって延伸し、その左端には頭部5が接続されている。頭部5はシリンダー3上面に設けられた針板9の上方に位置づけられている。頭部5やシリンダー3の内部には縫い目を形成するための各機構が設けられており、また頭部5の下方には図示しない複数の針や押さえ金が配置されているが、これらは従来既知のものであり、説明を省略する。アーム4の前面には、針糸の繰り出しを制御する天秤やこの糸の流れを案内する糸案内部材が設けられている。
【0020】
図1図3に示すように、アーム4の延伸方向も布送り方向Fと直交している。つまり、アーム4と第2ベッド7とは平行に配置されている。そして、アーム4,第2連結部8,第2ベッド7は上から見て”コ”の字状に連結されている。
【0021】
アーム4内には該アーム4の延伸方向に沿って上軸18が配置されている。上軸18は軸回りの回動可能にアーム4に支持され、右端がアーム4の右側面から右方に突出し、左端は頭部5内に突出している。アーム4の右側面にはミシン本体1の駆動源であるモータ23が取り付けられており、上軸18の右端はモータ23の図示しないモータ軸と連結されている。
第2ベッド7内には該第2ベッド7の延伸方向に沿って中間軸19が配置されている。中間軸19は軸回りの回動可能に第2ベッド7に支持され、右端が第2ベッド7の右側面から右方に突出し、該突出する右端にはハンドホイール24が取着されている。
第1ベッド2上部から第1連結部6下部にわたって、下軸20が左右方向に沿って配置されている。下軸20は軸回りの回動可能にされて、その右端は第1連結部6に、左端は第1ベッド2に夫々支持されている。図1乃至図4に示すように、上軸18,中間軸19,下軸20は互いに平行かつ布送り方向Fに直交して配置されている。また、上軸18と中間軸19とは同じ高さに位置づけられ、下軸20は上軸18および中間軸19よりも低い位置に配置されている。
【0022】
上軸18のアーム4内右端側にはプーリ25が固定されており、中間軸19の第2ベッド7内右端側にはプーリ26が固定されている。第2ベルト22は第2連結部8を通じてかつプーリ25,プーリ26を介して上軸18および中間軸19に担架されている。
中間軸19の左端側にはプーリ27が固定されており、下軸20の第1連結部6内右端側にはプーリ28が固定されている。第1ベルト21は第1連結部6の延伸方向に沿って配置されてかつプーリ27,プーリ28を介して中間軸19および下軸20に担架されている。
上軸18はアーム4内または頭部5内において図示しない針棒,メスおよび上飾りスプレッダ36などの各駆動機構に連結されている。また、下軸20は第1ベッド2内において図示しない複数の偏心ロッドを介して図示しない送り歯やルーパ37などの各駆動機構に連結されている。モータ23の駆動によって上軸18が回動すると、上軸18の回動は第2ベルト22,中間軸19,第1ベルト21を介して下軸20に伝達され、下軸20は上軸18に同調して回動する。上飾りスプレッダ36は上軸18に連動して針落ち9a近傍を揺動し、ルーパ37は下軸20に連動してシリンダー3内の針板9下方で揺動する。
【0023】
次に、下糸繰り機構について説明する。下軸20の左端は第1ベッド2の左側面2cから突出している。下糸繰りカム41は第1ベッド2の外側にて下軸20の左端に固定され、下軸20とともに回動する。下糸となるルーパ糸は、図示しない糸供給源から下糸繰りカム41を経て、下糸繰りカム41で繰り出しを制御されつつ、ルーパ37に供給される。
【0024】
次に、上糸繰り機構について説明する。第2ベッド7内には上糸繰り軸42が中間軸19の下方に配置され、かつ中間軸19と交差する方向に延設されている。上糸繰り軸42は軸回りの回動可能に第2ベッド7に支持され、後端が第2ベッド7の後面7aから突出している。上糸繰りカム45は第2ベッド7の外側にて上糸繰り軸42の後端に固定されている。中間軸19の中途にはウォーム43が固定されている。上糸繰り軸42の前端側には該ウォーム43に係合するウォームホイール44が固定されている。以上の構成により、上糸繰りカム45は中間軸19に連動して上糸繰り軸42とともに回動する。上糸となる上飾り糸は、図示しない糸供給源から上糸繰りカム45を経て、上糸繰りカム45で繰り出しを制御されつつ、上飾りスプレッダ36に供給される。本実施例では動力伝動機構としてウォーム43,ウォームホイール44を用いたが、これに限定されるものではない。
【0025】
以上のように構成されたミシン本体1を有する送り出し腕型ミシンにおいて、作業者が縫製作業を行うとき、作業者は第1ベッド2の前面2bに対峙し、作業者の目はアーム4上面とほぼ同じ高さか、あるいはアーム4上面の上方に位置することになる。このとき、図4に示すように、第1ベッド2の上方には従来の送り出し腕型ミシンのようにアームが立脚していないため、作業者はアーム4上面より低く位置づけられている第1ベッド2の上面2a越しに針板9の針落ち9a付近を容易に視認することができる。したがって、作業者は針落ち9aを注視するために体をミシン本体1に近づける必要がないため、作業者の体がミシン本体1の第1ベッド2などに接触し、もってミシン本体1から発生する熱や振動が作業者の体に伝わり作業者に悪影響を及ぼす恐れがない。
【0026】
また、図4に示すように、第1ベッド2の右側方には上部を除きアーム4と連結される部位が存在しておらず、第1連結部6の下部右側方にも連結される部位が存在しない。つまり第1ベッド2の右方の懐は十分に広く、ミシン本体1は作業者が右手をシリンダー3上面に差し入れて生地を針落ち9aに向かって送り出す際に、右腕の肘から先はもちろんのこと、二の腕もミシン本体1に当たり難い構造となっており、もって作業者の作業性を損ねないというものである。
【0027】
さらに、本実施例のように第1ベッド2の上面2aを後ろ下がりに傾斜する構造とすれば、作業者から見て針落ち9a手前側の視野が広がり、針落ち9a付近の視認性がいっそう向上することとなる。また、第1ベッド前面2bの上部や第1連結部6を上に行くにつれて後方へ傾斜する構造とすれば、作業者に対する圧迫感が減じられるとともに、作業者が針落ち9aに向けて顔を近づけても作業者の体がミシン本体1により当たり難くなる。
【0028】
また、上述の従来例において、ハンドホイール(ハンドプーリ29)はアーム14の頭部15側の主軸10先端、つまり作業者とはアーム14を挟んだ反対側に配置されており、作業者の操作しやすい位置にはなかった。一方、本実施例においては、ハンドホイール24は中間軸19の右端に取着されているので、ハンドホイール24は第2ベッド7の右側面と、作業者にとって操作し易くかつ安全な位置に配置されている。
【0029】
上述したように、本実施例のミシン本体1は縫製に対する作業者の操作性は維持されつつも、作業者の針落ちに対する視認性を向上させ、かつベッド内部や表面のスペースを大きく確保したものとなっている。このような形状のミシン本体1にあって、下糸繰りカム41が第1ベッド2の左側面2cから突出する下軸20の左端に固定されているので、作業者は下糸繰りカム41の取付・取外し作業や調整作業を容易に行うことができる。さらに、下軸20はアーム4に配置される上軸18よりも低い位置に配置されているため、下糸繰りカム41は、従来例すなわち上軸に固定されるものと比してルーパまでの距離が近い。つまり、ルーパ糸は下糸繰りカム41からルーパ37までの糸経路が短いので糸の伸縮特性による影響を受け難く、下糸繰りカム41はルーパ糸の繰り出しを正確に制御することができる。
【0030】
また、従来例すなわち上軸に糸繰りカムが固定されるものにおいては、上糸繰りカムに関しても下糸繰りカム同様、取付・取外し作業や調整作業に困難を伴うという問題があった。一方、本実施例においては、以上説明したような中間軸19,上糸繰り軸42,ウォーム43,ウォームホイール44,上糸繰りカム45の配置および連結によって、上糸繰りカム45が第2ベッド7の後面7aから突出する上糸繰り軸42の後端に固定されているので、上糸繰りカム45の取付・取外し作業や調整作業を容易に行うことができる。さらに、前述のようにアーム4と第2ベッド7を平行に配置し、両者の右側にて第2連結部8によってコの字に連結する構造としたので、第2ベッド7後面7aには上糸繰りカム45を配置するスペースが十分に確保されることとなる。
【0031】
以下、本発明の他の実施形態を図5に基づいて説明する。なお、本発明の他の実施形態において、図1乃至図4に示すミシンと共通する部分については同じ符号を用いて示し、詳細な説明は省略する。第1ベッド2内には下糸繰り軸51が下軸50の下方に配置され、かつ下軸50と交差する方向に延設されている。下糸繰り軸51は軸回りの回動可能に第1ベッド2に支持され、後端が第1ベッド2の後面2dから突出している。下糸繰りカム54は第1ベッド2の外側にて下糸繰り軸51の後端に固定されている。下軸50の中途にはウォーム52が固定されている。下糸繰り軸51の前端側にはウォーム52に係合するウォームホイール53が固定されている。以上の構成により、下糸繰りカム54は下軸50に連動して下糸繰り軸51とともに回動する。以上の構成により、本発明の他の実施形態においても上記実施例と同様の効果を奏するものである。
【0032】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、例えば、ミシン本体1の各部位を左右対称に配置した送り出し腕型ミシンも、本発明の趣旨を逸脱しないものであり、上記実施例と同様の効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0033】
1 ミシン本体
2 第1ベッド
2a 上面
2b 前面
2c 左側面
2d 後面
3 シリンダー
4 アーム
5 頭部
6 第1連結部
7 第2ベッド
8 第2連結部
9 針板
9a 針落ち
18 上軸
19 中間軸
20 下軸
21 第1ベルト
22 第2ベルト
36 上飾りスプレッダ
37 ルーパ
41 下糸繰りカム
42 上糸繰り軸
43 ウォーム
44 ウォームホイール
45 上糸繰りカム
F 布送り方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9