(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ベルトを上記トロイド状のベルト成形面に沿わせる際、ベルトの幅方向両端部をベルト成形面に向けて押圧する必要がある(上記特許第4881122号公報の
図3参照)。ベルトコードに、ケブラー等の高バネ定数且つ高弾性率の材料が用いられていると、上記押圧力によってベルトコードが破断するおそれがある。また、コード間のトッピングゴムの厚みが小さくなり、コードとトッピングゴムとの剥離が生じ、タイヤの耐久性に悪影響を及ぼすおそれがある。一方、耐久性を重視して、ベルトコードに低バネ定数の材料を用いると、操縦安定性が低下するおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、タイヤのユニフォミティを損なうことなく、耐久性及び操縦安定性の両立を可能にしたタイヤを実現するためのベルトを成形するベルト成形装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るベルト成形装置は、
円筒状に配列されることによって、ベルト成形面を構成しうる可撓性を有する複数のデッキプレートを備えており、
この複数のデッキプレートの、上記円筒の両端に相当する部位同士が互いに接近することにより、上記ベルト成形面が半径方向外方に凸となるように、各デッキプレートが湾曲しうるように構成されている。
【0009】
好ましくは、一対の側部フレームと、
この一対の側部フレーム同士を離間接近させる移動装置とを備えており、
上記複数のデッキプレートが、上記一対の側部フレーム間に掛け渡されており、
上記移動装置によって側部フレーム同士が互いに接近させられることにより、各デッキプレートが半径方向外方に凸となるように湾曲しうるように構成されている。
【0010】
好ましくは、ベルトが貼り付けられるときには、一対の側部フレーム同士が離間することにより、上記複数のデッキプレートが平坦な状態となってベルト成形面が円筒状となり、
ベルトが貼り付けられた後には、一対の側部フレーム同士が接近することにより、上記複数のデッキプレートが半径方向外方に凸となるように湾曲してベルト成形面がトロイド状となる。
【0011】
好ましくは、上記デッキプレートが矩形を呈しており、その周方向の配列数が、40枚以上60枚以下である。
【0012】
好ましくは、上記デッキプレートが矩形を呈しており、その周方向の幅が、25mm以上40mm以下である。
【0013】
好ましくは、上記デッキプレートの材質が、ゴム、合成樹脂、金属のいずれかである。
【0014】
好ましくは、上記デッキプレートの肉厚分布が、その長手方向に沿って均一か、又は、長手方向の中央位置に関して対称に変化している。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るベルト成形装置によれば、タイヤのユニフォミティを損なうことなく、耐久性及び操縦安定性の両立を可能としたタイヤが製造されうる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
図1には、本実施形態に係るベルト成形装置が用いられて製造される空気入りタイヤ2が示されている。
図1において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面に垂直な方向が周方向である。
図1に示された空気入りタイヤ2は、一点鎖線CLを中心線としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表す。
【0019】
このタイヤ2は、トレッド4、サイドウォール6、クリンチ8、ビード10、カーカス12、ベルト14及びチェーファー18を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、例えば、レース用四輪自動車に装着される。
【0020】
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、架橋ゴムからなる。トレッド4の半径方向外側面は、路面と接地するトレッド面22を構成する。このトレッド面22には、溝は刻まれていない。このタイヤ2は、スリックタイヤである。このトレッド面22に溝が刻まれて、トレッドパターンが形成されてもよい。
【0021】
サイドウォール6は、架橋ゴムからなる。サイドウォール6は、トレッド4の端部から半径方向略内向きに延びている。サイドウォール6は、軸方向において、カーカス12よりも外側に位置している。サイドウォール6は、カーカス12の損傷を防止する。
【0022】
クリンチ8は、サイドウォール6の半径方向略内側に位置している。クリンチ8は、ビード12及びカーカス14よりも軸方向外側に位置している。クリンチ8は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ8は、図示しないリムのフランジと当接する。
【0023】
ビード10は、サイドウォール6よりも半径方向内側に位置している。ビード10は、コア24と、このコア24から半径方向外向きに延びるエイペックス26とを備えている。コア24は、リング状である。エイペックス26は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0024】
カーカス12は、外側カーカスプライ28及び内側カーカスプライ30からなる。外側カーカスプライ28は、内側カーカスプライ30の半径方向外側に積層されている。両カーカスプライ28、30は、両側のビード10の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。両カーカスプライ28、30は、コア24の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。図示されないが、両カーカスプライ28、30は、いずれも並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。カーカス12は、単一のプライから構成されてもよく、三層以上のプライから構成されてもよい。
【0025】
ベルト14は、トレッド4よりも半径方向内側に位置している。ベルト14は、カーカス12よりも半径方向外側に位置している。ベルト14は、カーカス12に積層されている。ベルト14は、カーカス12を補強する。図示されていないが、ベルト14の半径方向外側には、バンドが積層されてもよい。バンドは、ベルト14を拘束し、ベルト14のリフティングを抑制しうる。
【0026】
図1に示されるように、ベルト14は、半径方向内側から外方に向けて順に積層された、第一層32、第二層34及び第三層36を備えている。半径方向最内のベルト層である第一層32は、その軸方向外端で半径方向外側に折り返されている。この折り返しにより、第一層32には、一方の軸方向外端から他方の軸方向外端まで延びる主部32aと、折り返されて軸方向外端から内側に延びる折り返し部32bとが形成されている。
【0027】
図示されていないが、この第一層32、第二層34及び第三層36のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。第一層32のコードの赤道面に対する傾斜方向は、第二層34のコードの赤道面に対する傾斜方向と逆である。第三層36のコードの赤道面に対する傾斜方向も、第二層34のコードの赤道面に対する傾斜方向と逆である。
【0028】
インナーライナー16は、カーカス12の内側に位置している。インナーライナー16は、架橋ゴムからなる。インナーライナー16には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー16は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0029】
チェーファー18は、ビード10の近傍に位置している。タイヤ2が図示しないリムに組み込まれると、このチェーファー18がリムに当接する。この当接により、ビード10の近傍が保護される。このチェーファー18は、布とこの布に含浸されたゴムとからなる。
【0030】
次いで、タイヤ2の製造方法が概説される。タイヤ2は、未加硫の生タイヤ(ローカバー)がモールド内で加硫されて成形されることにより、形成される。このローカバーは、
図2に示されたローカバー成形装置42により、生タイヤ基体(ローカバー基体)44とトレッドリング46とが貼着されることにより、得られる。ローカバー成形装置42には、ローカバー基体44のビード10の部分が取り付けられている。
図2(a)に示されるように、このローカバー基体44の半径方向外方に、予め形成されたトレッドリング46が取り付けられている。ローカバー基体44は、カーカスプライ、ビードコア、インナーライナー等が円筒状に一体化されたものである。トレッドリング46は、トレッドゴムとベルトプライ等とが巻き付けられたものである。
【0031】
図2(a)に示されるように、ローカバー成形装置42には、ローカバー基体44の半径方向内側に、シェーピングブラダ48が設置されている。
図2(b)に示されるように、このローカバー成形装置42では、シェーピングブラダ48への空気の充填とともに、シェーピングブラダ48の幅方向両端の固定部同士が接近させられる。これに伴い、ローカバー基体44の固定された両ビード部同士も接近する。この構成により、シェーピングブラダ48は、その内部に空気が充填されると、半径方向外方へ膨張しうる。その結果、ローカバー基体44が、シェーピングブラダ48によって外方へ押し出され、トレッドリング46の内面に押圧される(
図2(b))。これにより、ローカバー基体44とトレッドリング46とが貼着され、ローカバーが得られる。ここでは、トレッドリング46の成形方法及び成形装置に特徴がある。
【0032】
図3に示されるように、上記トレッドリング46の成形には、トレッドリング成形装置50が用いられる。トレッドリング成形装置50は、ベルト14を成形し、このベルト14にトレッドゴム4を貼着するものであるため、ベルト成形装置とも呼ぶ。このベルト成形装置50には、
図4に示されるような、ベルト14を成形するためのベルトドラム52が備えられている。このベルトドラム52の周方向外周面がベルト成形面(ベルトデッキ)54を構成している。このベルト成形面54に対し、ベルトプライ32、34、36が順に、周方向に一周巻きされる。
図4は、ベルトドラム52のベルト成形面54の形状変化を概念的に示すものであり、その内周面については図示が省略されている。
【0033】
このベルトドラム52は、可撓性を有する複数のデッキプレート56と、左右一対の側部フレーム58とを有している。各デッキプレート56は、一対の側部フレーム58間に掛け渡されている。本実施形態では、側部フレーム58はほぼ円盤状に形成されているが、かかる形状には限定されない。しかし、複数のデッキプレート56は、一対の側部フレーム58間を、円形の周方向に配列される。デッキプレート56は、その両端の後述する被支持部74を、側部フレーム58の外周面に形成された支持部60に、揺動可能に支持されている。側部フレーム58における支持部60の個数は、デッキプレート56の枚数と同数にされている。支持部60は、側部フレーム58の外周面に、円周上に配置されている。このベルトドラム52は、図示しない駆動装置により、その中心軸回りに回転駆動可能に構成されている。
【0034】
図3(a)及び
図4(a)に示されるように、複数のデッキプレート56は、円周方向に配列されることにより、円筒状のベルト成形面54を構成する。デッキプレート56は矩形を呈している。周方向に配列されるデッキプレート56の枚数は、40枚以上60枚以下とされるのが好ましい。ベルト成形面54の周方向分割数が少ないと、デッキプレート56の幅を広くせざるを得ない。この場合、ベルトを周方向に沿って均一に拡張(膨出)することが難しくなる。従って、デッキプレート56の配列枚数は40枚以上とされるのが好ましい。一方、ベルト成形面54の周方向分割数を一定以上多くしても、膨出の均一性の向上が頭打ちとなる。従って、デッキプレート56の配列枚数は60枚以下とされるのが好ましい。また、ベルト成形面54の周方向分割数を増やしすぎると、ベルトドラム52の構造が複雑となり、高コストを招来するおそれがある。かかる観点からは、デッキプレート56の配列枚数は、50枚以下であるのがさらに好ましい。以上の好ましいベルト成形面54の周方向分割数からすれば、デッキプレートの周方向の幅は、25mm以上40mm以下とされるのが好ましい。デッキプレート56は、ゴム、合成樹脂、金属等から形成される。金属の場合、可撓性の高いバネ鋼が好ましい。
【0035】
ベルト成形装置50は、一対の側部フレーム58同士を離間接近させるための、移動装置62を備えている。移動装置としては種々採用されうるが、本実施形態では送りねじ方式の移動装置62が採用されている。移動装置62のねじ棒64には、その長手方向一方側と他方側とに、互いに逆向きのねじが形成されている。一方が右ねじであり、他方が左ねじである。各側部フレーム58における、ベルトドラム52の中心に対応する位置には、上記ねじ棒64に螺合しうる雌ねじが形成されている。従って、ねじ棒64がモータ68等によって一方向に回転させられると、一対の側部フレーム58同士が接近し、ねじ棒64が他方向に回転させられると、一対の側部フレーム58同士が離間する。本実施形態では、このねじ棒64は、ベルトドラム52の中心軸に沿って延在している。モータ68等は使用されずに、手動によって側部フレーム58同士が離間接近させられてもよい。
【0036】
図3(b)に示されるように、一対の側部フレーム58同士が接近すると、全デッキプレートが半径方向外方に凸となるように湾曲する。その結果、ベルト成形面54は、
図4(b)に示されるような、半径方向外方に凸のトロイダル形状となる。このベルト成形装置50では、移動装置62の駆動により、そのベルトドラム52が、円筒状となる初期位置(
図3(a)、
図4(a))と、所定のトロイダル形状となる成形位置(
図3(b)、
図4(b))とに変位しうる。側部フレーム58同士の接近程度により、ベルト成形面54の湾曲の曲率が変化する。この側部フレーム58同士の接近程度を変更することにより、ベルト成形面54の湾曲の曲率を調整することが可能となる。所定のトロイダル形状とは、ベルトドラム52の周方向に垂直な断面(
図3(b))が、所定の曲率の円弧又は所定の曲率の円弧の組み合わせからなるトロイダル形状である。例えば、タイヤ2におけるベルト14のプロファイルに近い形状の上記断面を有するトロイダル形状である。
【0037】
図3(a)に示されるように、ベルトドラム52が、初期位置にあるとき、ベルトプライ32、34、36が順に、円筒状のベルト成形面54を周方向に一周巻きされる。次いで、ベルト14の第一層32の軸方向両端部が、第二層34及び第三層36の軸方向端部から半径方向外方及び軸方向内側へ折り返される。これにより、第一層32に、主部32aと折り返し部32bとが形成される。
【0038】
図3(b)に示されるように、移動装置62の駆動により、ベルトドラム52が成形位置に変位する。ベルト14も、ベルトドラム52と一体に、その幅方向中央部が半径方向外方へ凸のトロイダル形状に成形される。このとき、ベルト14は、その幅方向両端近傍が、従来の方法におけるように圧縮されたり曲げられたりすることがない。ついで、このベルト14の半径方向外面全周にわたって、トレッドゴム4が積層される。これにより、
図2に示されるトレッドリング46が形成される。
【0039】
図3に示されるように、側部フレーム58には、ガイド部66が形成されてもよい。このガイド部66は、側部フレーム58同士のスムーズな離間接近を案内するものである。本実施形態では、このガイド部66として、一対の側部フレーム58それぞれの対向面に突設される筒状部66a、66bが採用されている。一方の筒状部66aの横断面の内部形状は、他方の筒状部66bのそれとほぼ相似形を呈している。一方の筒状部66aは、他方の筒状部66bの内部にほぼ隙間無く進入可能である。この筒状部66a、66bは、角筒形であってもよい。しかし、本実施形態では、この筒状部66a、66bは円筒形を呈しており、その中心軸は、ベルトドラム52の中心軸と一致している。しかし、かかる構成には限定されない。
【0040】
図3に示されるように、側部フレーム58には、相互接近時にデッキプレート56が半径方向内側に向けて撓むことを阻止するためのストッパ70が形成されている。このストッパ70は、各側部フレーム58の軸方向内面に突設された円筒状の部材から構成されている。この円筒状ストッパ70の外周面70aが、デッキプレート56に近接している。ストッパ70の外周面70aは、デッキプレート56に接触しうる外径にされてもよい。側部フレーム58同士の接近時に、デッキプレート56が半径方向内側に向けて撓もうとしても、ストッパ70の外周面70aに当接し、阻止される。その結果、デッキプレート56はすぐに半径方向外側に向けて撓み始める。
【0041】
図3に示されるように、上記円筒状ストッパ70に代えて、又は円筒状ストッパ70と共に、他のストッパとして以下の鍔部72が形成されてもよい。この鍔部72は、大径側の上記筒状部66bの外周面に、円輪状に突設されている。鍔部72の外周面72aは、デッキプレート56に近接している。鍔部72の外周面72aが、デッキプレート56に接触していてもよい。側部フレーム58同士の接近時に、デッキプレート56が半径方向内側に向けて撓もうとしても、鍔部72に当接し、阻止される。その結果、デッキプレート56はすぐに半径方向外側に向けて撓み始める。
【0042】
図5に示されるように、上記円筒状ストッパ70及び鍔部72に代えて、又は、円筒状ストッパ70及び/又は鍔部72と共に、上記支持部60がストッパとして構成されてもよい。支持部60は、図示のごとく、デッキプレート56の長手方向の両端を支持する。デッキプレート56の両端には、幅方向に延びる円柱状の被支持部74が形成されている。支持部60は、この被支持部74の少なくとも半径方向内側半分と軸方向外側半分とを、回転可能に把持する。
【0043】
支持部60は、被支持部74の横断面における、下部から外方にかけて約250°の範囲を覆う。この支持部60は、ボルト等によって相互に着脱可能な半径方向外側部分60oと内側部分60iとから構成されている。外側部分60oには、軸方向に延びたデッキプレート56(実線)の半径方向内側面に当接しうる第一当接面61aが形成され、内側部分60iには、半径方向外方に延びたデッキプレート56(二点鎖線)の軸方向外側面と当接しうる第二当接面61bとが形成されている。従って、被支持部74から軸方向内側に延びるデッキプレート56は、軸方向から半径方向外方にかけて約90°近い揺動が可能となる。その結果、デッキプレート56が半径方向内側に向けて撓もうとしても、第二当接面61bに当接し、阻止される。その結果、デッキプレート56はすぐに半径方向外側に向けて撓み始める。
【0044】
デッキプレート56は、その端部が揺動不能な状態で側部フレーム58に支持されてもよい。その場合は、ストッパとしての上記円筒状ストッパ70及び/又は鍔部72が設けられるのが好ましい。
【0045】
図6に示されるように、デッキプレート56は、均一な肉厚を有するものであってもよく、肉厚が変化しているものであってもよい。デッキプレート56の肉厚を、長手方向に沿って変化させることにより、デッキプレート56の湾曲形状も変更することができる。この変更により、ベルト14を所望のプロファイルに調整することが可能となる。デッキプレート56の長手方向に沿って肉厚を変化させる場合は、その肉厚分布を長手方向の中央点に関して左右対称とするのが好ましい。
【0046】
図6(a)に示されるデッキプレート56aは、その長手方向に沿って肉厚が均一である。このデッキプレート56aの湾曲したときの縦断面形状は、一つの曲率の円弧を形成するであろう。
図6(b)に示されるデッキプレート56bは、その長手方向の中央領域CAの肉厚が、両端領域EAの肉厚より厚くされている。このデッキプレート56bは、長さの異なる二枚のプレートが、互いの中央位置を一致させられた状態で、溶接等で一体化されたものである。従って、肉厚分布は長手方向の中央位置に関して対称である。このデッキプレート56bの湾曲したときの縦断面形状は、複数の曲率の円弧の組み合わせを形成するであろう。
図6(c)に示されるデッキプレート56cは、その肉厚分布が三段階に変化している。長手方向の中央領域CAの肉厚が最も厚く、中央領域CAの両外方に連続する中間領域MAの肉厚は薄くされており、両端領域EAの肉厚はさらに薄くされている。このデッキプレート56cは、長さの異なる三枚のプレートが、互いの中央位置を一致させられた状態で、溶接等で一体化されたものである。従って、肉厚分布は長手方向の中央位置に関して対称である。このデッキプレート56cの湾曲したときの縦断面形状は、さらに多くの曲率の円弧の組み合わせを形成するであろう。
図6(b)及び
図6(c)は、複数枚のプレートが一体化される直前の状態を示している。
図6(a)、
図6(b)及び
図6(c)は、デッキプレートの長手方向に沿った肉厚分布の例示である。これらに限定されるものではない。デッキプレート56の肉厚分布と側部フレーム58同士の接近距離との組み合わせにより、ベルト成形面54の種々のプロファイルを得ることができる。
【0047】
図7には、ベルト成形面54の直径を調節する機構の一例が示されている。ベルト成形面54の直径は、デッキプレート56の半径方向の位置を変更することにより、調整されうる。本実施形態では、デッキプレート56は、これを支持している支持部60が、半径方向に移動することにより変位させられる。各支持部60は、駆動シリンダ、リンク機構を介したモータ駆動等の駆動装置76により、半径方向に同期して同一寸法だけ移動させられうる。このベルト成形面54の縮径拡径機構は、形成されたトレッドリングをベルト成形面54から取り外すときにも有用である。
【0048】
本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最高負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【実施例】
【0049】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0050】
[実施例1]
実施例1として、
図3に示されるベルト成形装置が用意された。このベルト成形装置には、
図6(a)に示される均一肉厚のデッキプレート56aが用いられている。このベルト成形装置によって成形されたトレッドリングを用いて、
図1に示されるタイヤが製造された。このタイヤも実施例1と呼ぶ。上記ベルト成形装置の仕様は表1に示されている。表1において、デッキ形状が「プロファイル」と記載されているのは、ベルト成形面の幅方向中央部(クラウン部)が半径方向に凸となるように湾曲し、その湾曲形状が完成タイヤのベルトプロファイルに近いことを表している。デッキの分割数とは、周方向に配列されたデッキプレートの枚数である。ベルトコードは、タイヤのベルトのコードである。タイヤのサイズは、175/70R13である。このタイヤに対し、後述する操縦安定性評価試験、ユニフォミティ評価試験及び耐久性評価試験が実施された。その結果は、表1に示されるとおりである。
【0051】
[実施例2、3]
表1に示された仕様の他は実施例1と同様にして、実施例2及び実施例3の各ベルト成形装置が用意された。これらのベルト成形装置によってトレッドリングが成形された。各トレッドリングを用いて、
図1に示されるタイヤが製造された。これらのタイヤも実施例2、3と呼ぶ。タイヤのサイズは、175/70R13である。これらのタイヤに対し、後述する操縦安定性評価試験、ユニフォミティ評価試験及び耐久性評価試験が実施された。その結果は、表1に示されるとおりである。
【0052】
[比較例1]
表1に示された仕様の他は実施例1と同様にして、比較例1のベルト成形装置が用意された。デッキのベルト成形面の形状はフラットであり、曲率ゼロに固定されている。このベルト成形装置によってトレッドリングが成形された。このトレッドリングを用いて、
図1に示されるタイヤが製造された。このタイヤも比較例1と呼ぶ。タイヤのサイズは、175/70R13である。この比較例1のタイヤに対して、後述する操縦安定性評価試験、ユニフォミティ評価試験及び耐久性評価試験が実施された。その結果は、表1に示されるとおりである。
【0053】
[比較例2、3]
表1に示された仕様の他は実施例1と同様にして、比較例2、3の各ベルト成形装置が用意された。このベルト成形装置によってトレッドリングが成形された。このトレッドリングを用いて、
図1に示されるタイヤが製造された。これらのタイヤも比較例2、3と呼ぶ。タイヤのサイズは、175/70R13である。比較例2のタイヤのベルトコードの材質はケブラーであり、比較例3のタイヤのベルトコードの材質はナイロンである。この比較例2、3のタイヤに対して、後述する操縦安定性評価試験、ユニフォミティ評価試験及び耐久性評価試験が実施された。その結果は、表1に示されるとおりである。
【0054】
[比較例4]
表1に示された仕様の他は実施例1と同様にして、比較例4のベルト成形装置が用意された。デッキのベルトドラム径が可変とされている。これは、デッキのベルト成形面がプロファイル形状(半径方向外方に凸)に固定された状態で、ベルト成形面の径が変更可能にされていることを意味する。ベルトが貼り付けられる際には、ベルト成形面が縮径され、貼り付け後に拡径されて、トレッドリングが成形される。このベルト成形装置によってトレッドリングが成形された。このトレッドリングを用いて、
図1に示されるタイヤが製造された。このタイヤも比較例4と呼ぶ。タイヤのサイズは、175/70R13である。この比較例4のタイヤに対して、後述する操縦安定性評価試験、ユニフォミティ評価試験及び耐久性評価試験が実施された。その結果は、表1に示されるとおりである。
【0055】
【表1】
【0056】
[操縦安定性の評価]
上記タイヤが、リムサイズが「13×5.00」の正規リムに組み込まれた。このタイヤに正規内圧となるように空気が充填された。このタイヤが、試験車両としての、エンジン排気量1600ccの競技用四輪車両の前後四輪に装着された。この試験車両は、クローズドコースを周回した。タイヤの操縦安定性は、試験車両のドライバーによって官能評価がなされた。評価結果は、比較例1を100とする指数として、下記の表1に示されている。この指数値が大きいほど操縦安定性に優れることを示している。
【0057】
[ユニフォミティの評価]
JASO C607:2000の「自動車用タイヤのユニフォミティ試験方法」の規定に準拠して、ラジアルフォースバリエーション(RFV)が評価された。試験条件は、以下の通りである。
リムサイズ:13×5.00
タイヤの回転速度:60rpm
空気圧:200kPa
縦荷重:361kN(設計荷重425kNの85%)
20本のタイヤの測定結果の平均値が、比較例1を100とする指数として、下記の表1に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0058】
[耐久性の評価]
上記タイヤが、リムサイズが「13×5.00」の正規リムに組み込まれた。このタイヤに正規内圧となるように空気が充填された。このタイヤが、ドラム試験機上において、正規荷重が負荷された状態で、200km/hの試験速度で連続走行させられた。タイヤの構造上の損傷の発生によって走行が不能となるまでの走行時間が測定された。この測定結果が、比較例1を100とする指数として、下記の表1に示されている。この指数は走行時間が長いほど大きくされている。数値が大きいほど耐久性に優れることを示している。
【0059】
表1に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。また、比較例2と比較例3との比較からも判るように、ベルトコードが、ケブラー等の高バネ定数の材質からなる場合、ナイロン等の低バネ定数の材質からなるタイヤよりも耐久性が低下している。しかし、実施例1、2、3のように成形されたトレッドリングが用いられると、その耐久性が向上することが推測できる。