特許第6335060号(P6335060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335060
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】車両用空気調和機
(51)【国際特許分類】
   B61D 27/00 20060101AFI20180521BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20180521BHJP
   F24F 1/00 20110101ALI20180521BHJP
【FI】
   B61D27/00 M
   B60H1/00 102S
   F24F1/00 321
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-151630(P2014-151630)
(22)【出願日】2014年7月25日
(65)【公開番号】特開2016-28915(P2016-28915A)
(43)【公開日】2016年3月3日
【審査請求日】2017年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 国博
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−22110(JP,U)
【文献】 実開昭62−171819(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B61D 27/00
F24F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターロータモータ内蔵の室内送風機に取り付けた取付板、この取付板の隅角部に突設された係止軸、前記室内送風機の吹出口部に通風可能に配設された出口板および前記係止軸に対し対角線方向にて前記出口板に配設された締結装置を有する室内送風機ユニットと、
車内の天井を形成する天井板の裏側に配設されて前記室内送風機ユニットを収容する筐体、前記室内送風機ユニットの近傍にて前記筐体に開閉可能に配設された開閉パネル、前記係止軸を係脱可能に係止させるフックおよび前記締結装置により着脱可能に締結されて前記出口板を固定する固定部を有する室内ユニットと、
を具備していることを特徴とする車両用空気調和機。
【請求項2】
前記係止軸は、隣り合う前記室内送風機ユニットの取付板同士を連結するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用空気調和機。
【請求項3】
前記室内ユニット筐体の上端部内面と前記出口板とに、締結具により互いに着脱可能に締結される取付部をそれぞれ配設したことを特徴とする請求項1または2記載の車両用空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、鉄道車両等の車両用空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、日本の地下鉄や海外向車両では、その進行方向(車両の長手方向)の車両両端部に、例えば1台当たり約20000〜25000Kcal/h程度のセミ集中式車両用空気調和機をそれぞれ配設したものが知られている。
【0003】
そして、この種の従来の車両用空気調和機では、客車内へと熱交換空気を吹き出す室内送風機として、両軸モータの両回転軸の端部に、左右一対の羽根車を装着した貫通軸式送風機を車両の車幅方向中間部に配設している。
【0004】
また、この貫通軸式室内送風機は、凸状のモータ架台を溶接により固着し、その両側に、ケーシングを固定するためのねじ座を有する強固なベース枠を設け、さらに、このベース枠に両軸モータとその軸先端に羽根車をねじ止め固定し、これをケーシングで覆うように構成している。
【0005】
そして、この室内送風機が横吹出しの場合は、左右一対の吹出口を、車幅方向の中心から車両長手方向へ延在する車幅中心線の両側に配設された左右一対の吹出ダクトにそれぞれ接続している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の車両用空気調和機では、室内送風機のメンテナンスが容易ではない、という課題がある。
【0007】
すなわち、貫通式室内送風機は、例えば30〜50kg程度の大重量であるうえに、両軸モータの軸長が長いので、メンテナンスのために室内送風機を、設置箇所の車両の天井裏から取り外し、車外へ搬出するときは、車両屋根側からクレーンにより、室内送風機を車外へ吊り出し、地上でメンテナンスを実施していた。
【0008】
このために、室内送風機を車両本体から取り外し、クレーン等により車外へ吊り出す作業の危険性が高く、作業効率が悪いという課題がある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、メンテナンスが容易で作業効率が良好な車両用空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の車両用空気調和機は、アウターロータモータ内蔵の室内送風機に取り付けた取付板、この取付板の隅角部に突設された係止軸、室内送風機の吹出口部に通風可能に配設された出口板および係止軸に対し対角線方向にて出口板に配設された締結装置を有する室内送風機ユニットを具備している。
【0011】
また、車内の天井を形成する天井板の裏側に配設されて室内送風機ユニットを収容する筐体、室内送風機ユニットの近傍にて筐体に開閉可能に配設された開閉パネル、係止軸を係脱可能に係止させるフックおよび締結装置により着脱可能に締結されて出口板を固定する固定部を有する室内ユニットと、を具備している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る車両用空気調和機の要部縦断面図。
図2図1で示す第1の実施形態に係る車両用空気調和機の要部とその周辺部の概略外観斜視図。
図3】第2の実施形態に係る車両用空気調和機の室内送風機ユニットの分解斜視図。
図4】第3の実施形態に係る車両用空気調和機による夏期時の空調温度制御方法を示す模式図。
図5】第4の実施形態に係る車両用空気調和機による冬期時の空調温度制御方法を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態に係る車両用空気調和機を、図面を参照して説明する。なお、複数の図面中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0014】
(第1の実施形態)
図2に示すように、第1の実施形態に係る車両用空気調和機1は、車両本体2の車内3の天井板4の裏側(天井裏)に、室内ユニット5を配設している。
【0015】
室内ユニット5は、車両本体2の長手方向(進行方向)の前後両端部にそれぞれ配設され、筺体の一例としての直方体状のユニット筺体6を具備している。室内ユニット5は、それぞれ同じ構造であり、車両本体2の長手方向に、左右対称に向き合うように配置されるものであるため、以下説明は、一方の室内ユニット5を代表として説明する。
【0016】
ユニット筺体6は、車両本体2の長手方向一端でほぼ垂直に立ち上がる前端壁6a(図1では左端壁)に、例えば複数の室内空気吸込口7,7を並設している。これら室内空気吸込口7,7には、エアフィルタ7a,7a,…がそれぞれ張設されており、下方の車内3内の室内空気をエアフィルタ7a,7a,…により浄化しつつ室内ユニット5内に吸い込む。
【0017】
また、ユニット筺体6は、その車幅方向の左右一対の側壁6b,6cに、室内空気吸込口7,7の近傍にて、外気吸込口8,8をそれぞれ設けている。各外気吸込口8は、その内部に、外気吸込ファン9をそれぞれ設けており、図示省略の外気導入ダクトを介して車両本体2の側面から外気をユニット筺体6内に吸い込み可能に構成されている。
【0018】
そして、図2に示すように室内ユニット5は、ユニット筺体6内の図中中央部に、複数、例えば4台の室内送風機ユニット10,10,…を収容している。これら室内送風機ユニット10,10,…は、車両本体2の車幅方向に所要のピッチで並設されている。
【0019】
また、室内ユニット5は、これら室内送風機ユニット10,10,…の吸込空気の上流側、すなわち、室内空気吸込口7,7側には、1つの横長で斜めに傾斜して立設された室内熱交換器11が設けられる。また、図2中、符号2aは車両本体2の屋根である。
【0020】
図1に示すように、各室内送風機ユニット10は、室内送風機13と外形が矩形平板状の取付板12と、出口板14と、ワンタッチ締結装置22等を備えている。
【0021】
すなわち、取付板12は、アウターロータモータ内蔵の多翼ファンよりなる室内送風機13の本体13aと、この室内送風機本体13aに連通可能に一体に連結された、例えば吐出渦巻管等の吐出ケーシング13bとの連結部外周に、外側方に突出するように突設されたフランジであり、ユニット筺体6内で垂直方向に起立した状態で立設される。
【0022】
室内送風機本体13aは、アウターロータモータとこれにより駆動される多翼ファンとを内蔵しており、多翼ファンの吐出口は吐出ケーシング13bの吸込口に連通している。また、送風機本体13aは、取付板12の一面側の側方に吸込口13cを開口させるベルマウス13dを備えている。
【0023】
図3にも示すように吐出ケーシング13bは、その角形の吐出口端部13e外周縁部に、矩形枠状の接続フランジ13fを形成しており、この接続フランジ13fには出口板14をねじ止め等により予め組み付けている。
【0024】
出口板14は、中央に通風口14dが開口する枠状板金板材でなり、ほぼ垂直に起立する前板14aの直状頂端部を、図中下向きに所要角度、例えば約15°程度傾斜した中央に通風口14eが開口した枠状板金板材からなる後板14bの倒立U字状の頂端部内に嵌入させて結合させることにより、側面形状がほぼ直角三角形に形成されている。このほぼ直角三角形の両側面開口には、側板14cがねじ止めにより取り付けられ、それぞれ閉塞されている。
【0025】
また、前板14aと後板14bとの間の図3中下面も板金部材により閉塞され、前板14aと後板14bとの間にダクトが形成される。
【0026】
そして、前板14aの前面(図1図3では左側面)には、吐出ケーシング13の接続フランジ13fの図中上端部と左右端部がねじ止めにより固定され、接続フランジ13fの図中下端部は下部押え板16により支持される。この下部押え板16は前板14aの前面にねじ止め等により固定される。
【0027】
後板14bは、その傾斜外周面に、スポンジゴム等の弾性体よりなるパッキン15が固着され、後板14bの外面全面を被覆している。これらパッキン15、後板14bおよび前板14aには、その板厚方向にそれぞれ貫通し、吐出ケーシング13bの吐出口13eとほぼ同形同大の通風口15aから通風口14dを経由して通風口14eに至るダクトが形成される。
【0028】
前板14aは、その前面(図1図3では左側面)の上部に、取付部として下部ステイ17を室内送風機13側へ突出するように設けている。この下部ステイ17には、その板厚方向(図中、上下方向)に貫通する挿通孔17aを形成している。
【0029】
下部ステイ17の上方には、ユニット筺体6の図1中上端内面6eに固着された上部ステイ18が取付部として配設されている。上部ステイ18は、その図中下底部に挿通孔を形成し、この挿通孔上端にナット18aを同心状に固着してねじ座を形成している。この上部ステイ18の挿通孔と、下部ステイ17の挿通孔17aとを一致させ、これら挿通孔内に、図中下方から締結具のボルト19の軸部を挿通させ、その挿通先端部をナット18aに堅くねじ結合させ、室内送風機ユニット10をユニット筺体6により吊持するようになっている。
【0030】
そして、取付板12は、その一面の一隅角部、すなわち、室内送風機本体13aを配設した一面であって、室内熱交換器11側の上端角部に、係止軸の一例である引掛けロッド20を突設している。この引掛けロッド20を係脱可能に受けるほぼU字状の受けフック21はユニット筺体6の上端内面6eに固着される。
【0031】
また、出口板14は、その前板14aの下角部、すなわち、上記引掛けロッド20の対角線方向角部に、ワンタッチ締結装置22を設けている。
【0032】
ワンタッチ締結装置22はファスナーロック装置とも称され、例えば操作ハンドル22aを手動によりロック方向へ所要角(例えば90°)回動させることにより、止め金板部22bに挟持された固定部の一例である、下向きコ字状の取付金具23の自由端に着脱可能に締結ロックされ、その締結位置を保持する。
【0033】
図1に示すように、上記コ字状取付金具23はその固定端部(図12では右端部)をユニット筺体6の後述する吹出口6d側の図1中、右端壁6fの内面に固定される。
【0034】
したがって、ワンタッチ締結装置22の操作ハンドル22aをロック方向の手動回動操作により、室内送風機ユニット10をユニット筺体6の取付金具23に簡単迅速に締結してロックし、固定できる。
【0035】
また、ワンタッチ締結装置22の操作ハンドル22aをロック方向と逆方向の解錠方向に手動回動操作すると、取付金具23と出口板14との締結ロック状態が解除される。このために、出口板14に予めねじ止めにより固着されている取付板12がユニット筺体6から取外し可能になる。
【0036】
そして、ユニット筺体6は、その右端壁6fに、各出口板14の通風口14d,14e,15aにそれぞれ連通する吹出口6dをそれぞれ形成し、これらの各吹出口6dには接続ダクト24a,24b,24c,24dをそれぞれ接続している。
【0037】
図2に示すように、これら接続ダクト24a〜24dは、車幅方向中心線に対して左側2台24a,24bを図中左側の吹出ダクト25aに接続し、右側2台24c,24dを図中右側の吹出ダクト25bに接続している。
【0038】
これら左右一対の吹出ダクト25a,25bは、例えば車両本体2の車幅方向左右にそれぞれ1本ずつ配設され、かつ車両本体2の長手方向(進行方向)一端から他端へ延在し、車内3側で開口する図3図4で示す吹出口25c,25dから冷風や暖風等の空調空気を車内3に吹き出し、車内3を冷暖房する。
【0039】
また、ユニット筺体6は、その底面6gに、室内送風機ユニット10の下方近傍にて開閉可能のアクセスハッチ26を設けている。アクセスハッチ26は、図示省略の作業員と室内送風機ユニット10が出入可能の形状と大きさに形成され、車内3の天井4に形成された開閉可能の化粧被せ(図示省略)と共に開扉されることにより、車内3から天井4の裏側にあるユニット筺体6内の室内送風機ユニット10へ作業員等がアクセスできる。
【0040】
なお、図1中、符号cは図示省略の電源線に接続された給電コネクタであり、室内送風機13の受電端子13gに着脱可能に接続され、室内送風機13に所要の電力を供給する。
【0041】
また、上記室内熱交換器11に冷媒配管を介して接続される図示省略の室外熱交換器、膨張弁、圧縮機等を具備した室外ユニットは車両本体2の底部(床)外面に配設される。
【0042】
次に、このように構成され、予めユニットとして出口板14と一体的に組み付けられている室内送風機ユニット10を、ユニット筺体6内に取り付ける方法と、その逆に、メンテナンス等のために取り外す方法について説明する。
【0043】
まず、ユニット筺体6に、室内送風機ユニット10を取り付ける場合は、車内3の図示省略の化粧被せを開け、次にユニット筺体6のアクセスハッチ26を開け、アクセスルートを形成し、確保する。
【0044】
次に、このアクセスルートを通して作業員は人力により室内送風機ユニット10を持ち上げて、ユニット筺体6内に搬入し、まず、引掛けロッド20を受けフック21に引っ掛ける。室内送風機ユニット10の室内送風機13はアウターロータモータ内蔵の室内送風機であるので、軽量であり、例えば1人の作業員により容易に持ち上げる等、容易に取り扱うことができる。
【0045】
これにより、図1中、破線で示すように室内送風機ユニット10は引掛けロッド20を頂端として受けフック21の下方でほぼ菱形状にぶら下がる。
【0046】
次に、この室内送風機ユニット10の取付板12のぶら下がり下端を出口板14側へ回転させ、ワンタッチ締結装置22の止め金板部22bに、下向きコ字状の取付金具23の自由端部を嵌合させる。次に、このワンタッチ締結装置22の操作ハンドル22aをロック方向に手動で所要角回動操作する。これにより、室内送風機ユニット10の出口板14が取付金具23を介してユニット筺体6の右端壁6fに堅く固定される。このワンタッチ締結装置22のロック操作は、ロック位置で堅く保持される。このワンタッチ締結装置22には蛍光塗料等により開閉状態を識別できるマーク等を塗装しており、天井裏の暗所でも開閉状態を識別できる。
【0047】
この後、上部ステイ18のナット18aのねじ孔と下部ステイ17の挿通孔とを一致させ、これら挿通孔内に、その下方からボルト19の軸部を挿通し、その軸挿通先端部を上部ステイ18のナット18aにねじ込み、仮固定する。この後、さらにボルト19の頭部をトルクラチェットレンチ等により真下から締め込み、堅くねじ結合させる。これにより、室内送風機ユニット10の上端部がユニット筺体6の上端内面6eに堅く固定される。
【0048】
したがって、この車両用空気調和機1によれば、室内送風機13の取付板12と出口板14とをねじ止めにより予め組付けてある室内送風機ユニット10の引掛けロッド20をユニット筺体6の受けフック21に引っ掛ける行程と、ワンタッチ締結装置22の操作ハンドル22aをロック方向に回動操作する行程と、上部ステイ18と下部ステイ17とをボルト19により締結する行程のほぼ3行程により、室内送風機ユニット10をユニット筺体6に簡単かつ迅速に取り付けることができる。なお、上記上部ステイ18と下部ステイ17とボルト19を省略してもよく、その場合は、上部,下部ステイ18,17同士をボルト19により締結する行程を省略して、残りの2行程により室内送風機ユニット10をユニット筺体6に取り付けることができる。
【0049】
一方、こうしてユニット筺体6に取り付けた室内送風機ユニット10を、再びユニット筺体6から取り外す場合は、上述の取付方法と逆の手順により簡単かつ迅速に取り外すことができる。
【0050】
すなわちまず、上記アクセスルートを確保した後、ボルト19を緩めて上部,下部ステイ18,17から取り外す。
【0051】
次に、作業員がワンタッチ締結装置22の操作ハンドル22aをロック解除方向に回動操作することにより、室内送風機ユニット10の出口板14と取付金具23との締結状態を解除し、送風機室内ユニット10をユニット筺体6の吹出口6d側の右端壁6fから取外し可能状態にする。
【0052】
すると、室内送風機ユニット10が引掛けロッド20を支点として振り子のように揺動し、受けフック21の下方で菱形状にぶら下がる。ユニット筺体6内には、この室内送風機ユニット10の揺動により室内熱交換器11に衝当しないための十分なスペースが確保されているが、室内送風機ユニット10の揺動を阻止するストッパや吊りロープ等を設けてもよい。
【0053】
次に、作業員はこの吊り下げ状態の室内送風機ユニット10の全体を上方へ若干持ち上げ、引掛けロッド20と受けフック21との係合状態を解除し、次に、ユニット筺体6から取り外す。
【0054】
取り外した室内送風機ユニット10を開扉中のアクセスハッチ26と化粧被せのアクセスルートを通して車内3内へ搬入し、所要のメンテナンスを行う。
【0055】
したがって、この車両用空気調和機1によれば、ユニット筺体6に室内送風機ユニット10を取り付ける場合と取り外す場合の両者の場合に、従来のように室内送風機ユニット10をクレーンにより車両屋根2a上へ吊り上げたり、車両屋根2aから地上等へ吊り降ろす必要がないので、室内送風機ユニット10の取付けと取外し作業の安全性と作業効率性の向上とを共に図ることができる。
【0056】
さらに、出口板14の後板14bを、その下方のアクセスハッチ26側に向けて傾斜させているので、アクセスハッチ26側からワンタッチ締結装置22の締込みやパッキン15の圧縮状況、劣化等を目視によりチェックし確認できる。さらに、ワンタッチ締結装置22の軸方向の必要なスペースを確保できる。
【0057】
また、出口板14の長手方向(図1では表裏方向)中間部に設けた下部ステイ17と、その上方の上部ステイ18とをボルト19により上下方向に締結したので、室内送風機ユニット10とユニット筺体6との締結強度の向上を図ることができ、耐震性の向上を図ることができる。
【0058】
そして、この車両用空気調和機1によれば、室内送風機ユニット10を複数台、例えば4台設けているので、万一、そのうちの1〜3台が故障しても、残りの3〜1台により空調運転を継続できる。
【0059】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る車両用空気調和機1Aの室内送風機ユニット10の分解斜視図である。図3に示すように、第2の実施形態に係る車両用空気調和機1Aは、隣り合う2台の室内送風機ユニット10,10同士を連結引掛けロッド27により連結すると共に、隣り合う2台の出口板14,14同士を一体に連成、または連結した点に主な特徴を有する。
【0060】
すなわち、連結引掛けロッド27は隣り合う室内送風機ユニット10,10の取付板12,12同士を所要の間隔を置いて連結するロッドであり、その軸方向中間部に丸棒状の丸棒部27aを形成し、その両側に六角棒状の六角棒部27b,27cを形成し、さらに、その両端部にねじ溝を形成したねじ部27d,27eをそれぞれ一体に連成している。また、丸棒部27aの軸方向両端部には、その中央部に向けて若干先細となるテーパがそれぞれ形成され、丸棒部27aが受けフック21に引っ掛けられたときに、その中央部に案内され、自動的に位置決めされるようになっている。
【0061】
一方、取付板12は、上記第1の実施形態に係る引掛けロッド20を固着する箇所にて、上記連結引掛けロッド27のねじ部27d,27eをそれぞれ貫通させる貫通孔12a,12aをそれぞれ形成している。
【0062】
したがって、連結引掛けロッド27は、その軸両端の一対のねじ部27d,27eを、図3中、左右で隣り合う取付板12,12の貫通孔12a,12a内にそれぞれ挿通し、その各挿通先端部に、ワッシャ28,28を介してナット29,29を締め付け固定する。そのナット28の締め付けの際には、連結引掛けロッド27の六角棒部27b,27cをスパナやレンチにより挟持して固定することにより、連結引掛けロッド27の軸心回りの回転を阻止しつつナット29を効率的に締め付けることができる。
【0063】
これにより、左右で隣り合う2台の室内送風機ユニット10,10同士が連結されるので、これら2台の室内送風機ユニット10,10同士のユニットとしての固定強度が向上する。また、これら左右一対の室内送風機ユニット10,10の左右一対の出口板14,14同士も横方向に一体に連成、または連結されている。
【0064】
そして、この連結された2台の室内送風機ユニット10,10の連結引掛けロッド27の丸棒部27aを受けフック21に引っ掛けることにより、2台の室内送風機ユニット10,10をほぼ同時に受けフック21に係止することができる。この後、上記第1実施形態と同様に、上部,下部ステイ18,17同士をボルト9により締結する行程と、ワンタッチ締結装置22により出口板14をユニット筺体6のコ字状取付金具23を締結する行程を、この順に順次実行することにより、2台の室内送風機ユニット10,10をユニット筺体6にほぼ同時に取り付けることができる。
【0065】
また、この連結引掛けロッド27を受けフック21から取り外し、上記第1の実施形態とほぼ同様の取外し行程により、2台の室内送風機ユニット10,10をユニット筺体6からほぼ同時に取り外すことができる。
【0066】
したがって、この実施形態によれば、2台の室内送風機ユニット10,10をユニット筺体6に1台ずつ取り付け、かつ取り外す上記第1の実施形態に比して、室内送風機ユニット10のユニット筺体6への取付け、取外しの作業効率の向上を図ることができる。
【0067】
また、連結引掛けロッド27は、その軸方向両端部で左右一対の室内送風機ユニット10,10を支持するので、両持ち梁状となる。このために、左右一対の室内送風機ユニット10,10の支持の安定性の向上を図ることができる。
【0068】
さらに、隣り合う2台の出口板14,14同士も一体に連結し、または連成しているので、これら出口板14,14の左右両端部とその中間部の3箇所にワンタッチ締結装置22を設ければよい。
【0069】
このために、上記第1の実施形態に係る出口板14のように、その1台毎に、その左右両下端部にワンタッチ締結装置22をそれぞれ設け、2台の出口板14で合計4台のワンタッチ締結装置22を設ける場合に比して、ワンタッチ締結装置22を1台節約することができる。このために、コスト低減と共に、ワンタッチ締結装置22の締付け、または緩め操作の操作回数も低減できるので、その分、室内送風機ユニット10の組立性やメンテナンス作業性の向上を図ることができる。
【0070】
なお、本実施形態においては、固定具としてワンタッチ締結装置を用いることで、着脱を容易にしたが、少し面倒になるが、出口板14と本体の取付金具23との固定をネジやボルトとナット等の一般的な締結装置を用いて固定するようにしても良い。
【0071】
なお、図3中、符号30は連結コネクタであり、これは、隣り合う2台の室内送風機ユニット10,10の取付板12,12の図中左下角部(すなわち、連結引掛けロッド27の下方の下端角部)同士を連結する連結フレーム30aを有する。この連結フレーム30aの軸方向中間部には、複数台、例えば2台給電用のコネクタ31に着脱可能に接続される2台用受電端子30bを設けている。この2台用受電端子30bには、隣り合う2台の室内送風機ユニット10,10の室内送風機13,13にそれぞれ電気的に接続されている図示省略のリード線が電気的に接続され、給電される。
【0072】
連結フレーム30aは、その軸方向(長手方向)両端部をほぼ直角に折曲し、これら両折曲端部30c,30dにねじ座を設け、これらねじ座に、左右一対の取付板12,12の図中左下端部に穿設された挿通孔を挿通するボルトの軸部を締め付けることにより、ねじ止めされて固定されている。
【0073】
このために、隣り合う2台の室内送風機ユニット10,10は、その取付板12,12の吹出口側と反対側の自由端部(図3では左端部)を、その上部と下部とにおいて、連結引掛けロッド27と連結フレーム30aとによりそれぞれ連結するので、ユニットとしての連結強度の向上を図ることができ、その分、1台のユニットとしての取扱いも容易になる。
【0074】
また、左右一対の室内送風機13,13の2台分のリード線を、連結フレーム30aの長手方向中間部に設けた1台分の2台用受電端子30bに接続するので、これら2台分のリード線同士の絡み合い等の干渉を抑制し、配線を一括処理できる。
【0075】
さらに、連結引掛けロッド27の丸棒部27aの両端部にテーパ部を形成したので、この連結引掛けロッド27を受けフック21に引っ掛けたときに、その引掛け位置を丸棒部27aの中央部に自動的に調整できる。
【0076】
(第3の実施形態)
一般に、車内3の空調負荷は、夏期等では日射しが強い片側や、冬期等でドアの開扉が片側で連続する場合には、車幅方向両側で著しく相違し、左右のバランスが乱れるときがある。このために、車幅方向両側での温度差を縮小するように制御することが望まれている。
【0077】
しかしながら、両軸モータの軸先端に左右一対の羽根車をそれぞれ装着した貫通軸式送風機を、室内送風機として用いた従来の車両用空気調和機では、左右の羽根車による吹出風量をそれぞれ個別に制御することは困難であった。
【0078】
そこで、本発明の第3の実施形態では、室内送付機13としてアウターロータモータ内蔵の多翼ファンを具備した上記第1,第2の実施形態1,1Aにより、車内3内へ吹き出される冷風や暖風の空調空気の吹出風量を、車幅方向両側でそれぞれ個別に制御し得るように構成した。
【0079】
すなわち、図4に示すように上記車両用空気調和機1,1Aは、車両本体2の左右外側面にそれぞれ配設された左右一対の日射センサ31a,31bと、これら日射センサ31a,31bにより受光した受光量に応じて、左右一対の吹出ダクト25a,25bの各吹出口25c,25dから車内3内へ吹き出される冷風の吹出風量を制御するマイクロコンピュータ等の制御装置(図示省略)と、を設けている。
【0080】
制御装置は、左右一対の日射センサ31a,31bの一方、例えば図4では左側の日射センサ31aにより受光した受光量の方が、その反対側(図4では右側)の日射センサ31bよりも受光した受光量が、所定量(例えば、1.5倍)を超えた状態で所定時間(例えば120秒間)超えたときに、日射受光量の多い(図4では左側の)吹出ダクト25aの吹出口25cから車内3内へ吹き出す冷風の吹出風量を所定量(例えば125%)に制御し、日射受光量の少ない日陰側(図4では右側の)吹出ダクト25bの吹出口25dから車内3へ吹き出す冷風の吹出風量を所定量(例えば75%)で所定時間(例えば180秒間)制御する機能を具備している。
【0081】
このような制御装置による吹出風量の制御は、例えば各室内送風機13の単位時間当りの回転数の制御により行われる。
【0082】
したがって、この車両用空気調和機1,1Aによれば、夏期等で日射受光量の多い側の冷風の吹出風量がその反対側の日陰側の吹出風量よりも多くなるので、車内3内の温度差を低減し、快適性の向上を図ることができる。
【0083】
(第4の実施形態)
図5は、上記制御装置により、冬期に吹出口25c,25dから車内3内へ吹き出される暖風の吹出風量を制御する制御方法の一例を示している。
【0084】
すなわち、制御装置は、車両本体2のドアを開扉させるドア開指令信号が同じ側のドアに複数回(例えば2回以上)与えられ、かつ車内3の車幅方向両側の温度差が所定温度(例えば15℃)以上あるときに、例えば2回目のドア開の所定時間(例えば5秒間)前からドア開側の吹出風量を所定風量(例えば125%)に制御し、反対側のドア閉側吹出量を所定風量(例えば75%)に制御する。ドア閉扉後は、この制御よりも前の元の運転に戻り、以下、上記制御を繰り返す。
【0085】
これにより、ドア開扉のために車内3の温度が低下するドア開側の温度低下を抑制することができるので、ドア開側の乗客の快適性の向上を図ることができる。
【0086】
そして、この実施形態によれば、上記吹出風量を室内送風機13の回転数制御により制御し、左右一対の吹出ダクト25a,25b等の吹出風路の図示省略のダンバの切替や開度制御を行わないので、ダンバ切替時の圧力変化音の発生も無く、簡単かつ迅速に吹出風量を制御できる。
【0087】
また、上記左右一対の外気吸込ファン9,9を、小型のアウターロータモータ型室内送風機により構成してもよい。これによれば、左右一対の外気吸込ファン9,9の回転数制御により車内3内へ取り入れられ、左側2台の室内送風機13,13と、右側2台の室内送風機13,13へ吸い込まれる新鮮な外気の吸込量の内分比を調整することにより、左側2台の室内送風機13,13と、右側2台の室内送風機13,13の吹出風量の制御と併せて2重に吹出風の温度を制御できる。
【0088】
以上、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
1,1A…車両用空気調和機、2…車両本体、4…天井板、5…室内ユニット、6…ユニット(筺体)、10…室内送風機ユニット、12…取付板、13…室内送風機、14…出口板、17…下部ステイ、18…上部ステイ、20…引掛けロッド(係止軸)、21…受けフック、22…ワンタッチ締結装置(締結装置)、23…取付金具(固定部)、25a,25b…吹出ダクト、26…アクセスハッチ(開閉パネル)、27…連結引掛けロッド(係止軸)、30…連結コネクタ、31a,31b…左右一対の日射センサ。
図1
図2
図3
図4
図5