(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335070
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】噴射計測装置及び噴射計測方法
(51)【国際特許分類】
F02M 65/00 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
F02M65/00 302
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-171986(P2014-171986)
(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公開番号】特開2016-44661(P2016-44661A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】鎌子 隆史
(72)【発明者】
【氏名】渡部 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐野 元洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 剛生
(72)【発明者】
【氏名】山口 輝夫
【審査官】
櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−080899(JP,A)
【文献】
特表2006−504038(JP,A)
【文献】
特開昭61−001861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定圧力で液体を内部空間に充填した密閉容器と、
前記密閉容器の内部空間に向かって液体を噴射するノズルと、
前記密閉容器の内部空間内の液体の圧力を検出する圧力センサと、
前記密閉容器内の液体の圧力が前記所定圧力となるように排出する排出手段と、
前記排出手段により排出された液体の質量を計測する排出質量計測手段と、
係数を設定する係数設定手段と、
前記係数設定手段によって設定された係数を用いて液体の噴射量を計測する計測手段とを有し、
前記係数設定手段は、前記ノズルから液体を噴射させ、当該液体の噴射による圧力の変動を前記圧力センサを用いて計測した後、前記排出手段に液体を排出させて前記排出質量計測手段に排出された液体の質量を計測させると共に、計測した圧力の変動が表す圧力振動の周波数と、計測した圧力の上昇量とを算定し、算定した周波数をfd、算定した上昇量をΔPd、前記排出質量計測手段によって計測された液体の質量をNdとして、係数Mを
M = Nd×fd2/ΔPd
により設定し、
前記計測手段は、前記ノズルから液体を噴射させ、当該液体の噴射による圧力の変動を前記圧力センサを用いて計測すると共に、計測した圧力の変動が表す圧力振動の周波数と、計測した圧力の上昇量とを算定し、算定した周波数をf、算定した上昇量をΔPとして、液体の噴射量Iqを、前記係数設定手段によって設定された係数Mを用いて、
Iq = M×(ΔP/f2)
により算出することを特徴とする噴射計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の噴射計測装置であって、
前記密閉容器の内部空間は球形状を有し、
前記ノズルは、前記密閉容器の前記内部空間の球形状の球面に対して凹凸を形成しないように配置されており、
前記圧力センサは、前記密閉容器の前記内部空間の球形状の球面に対して凹凸を形成しないように配置されてことを特徴とする噴射計測装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の噴射計測装置であって、
前記液体は燃料であることを特徴とする噴射計測装置。
【請求項4】
所定圧力で液体を内部空間に充填した密閉容器と、
前記密閉容器の内部空間に向かって液体を噴射するノズルと、
前記密閉容器の内部空間内の液体の圧力を検出する圧力センサと、
前記密閉容器内の液体の圧力が前記所定圧力となるように排出する排出手段とを備えた噴射計測装置において、前記ノズルにより噴射された液体の噴射量を計測する噴射計測方法であって、
前記ノズルから液体を噴射させ、当該液体の噴射による圧力の変動を前記圧力センサを用いて計測した後、前記排出手段に液体を排出させて、排出された液体の質量を計測すると共に、計測した圧力の変動が表す圧力振動の周波数と、計測した圧力の上昇量とを算定し、算定した周波数をfd、算定した上昇量をΔPd、計測された液体の質量をNdとして、係数Mを
M = Nd×fd2/ΔPd
により設定するステップと、
前記ノズルから液体を噴射させ、当該液体の噴射による圧力の変動を前記圧力センサを用いて計測すると共に、計測した圧力の変動が表す圧力振動の周波数と、計測した圧力の上昇量とを算定し、算定した周波数をf、算定した上昇量をΔPとして、液体の噴射量Iqを、設定された係数Mを用いて、
Iq = M×(ΔP/f2)
により算出するステップを有することを特徴とする噴射計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射計測装置における計測精度向上の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
噴射計測装置としては、
図4に示すように、検査液体を充填したシリンダ形状の測定容器100と、測定容器100内に検査液体を噴射するノズル(弁ニードル)101と、測定容器100内の検査液体の測定容器100の長手方向の軸に沿って振動する第1圧力固有振動102の節に配置した圧力センサ103とを備えた噴射計測装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
ここで、この噴射計測装置においては、測定容器100内へのノズル101からの検査液体の噴射に伴う圧力変動を圧力センサ103で検出し、検出した圧力変動を周波数分析して、第1圧力固有振動102の第1高調波の周波数と、測定容器100の長手方向の距離より推定した第1高調波の波長である推定波長とより音速を求める。そして、求めた音速と、測定容器100の容積と、圧力センサ103で検出した測定容器100内の検査液体の圧力上昇量とから、ノズル101から測定容器100内へ噴射された検査液体の噴射量を算出する。
【0004】
このような噴射計測装置によれば、測定容器100内の検査液体の測定容器100の長手方向の軸に沿って振動する第1圧力固有振動102の節に圧力センサ103を配置しているので、圧力センサ103への第1圧力固有振動の影響は抑制される。よって、圧力変動の検出の際に、第1圧力固有振動の周波数成分をノイズとしてフィルタによって除去する必要が無くなり、当該第1圧力固有振動の周波数成分を含む広い周波数範囲において検査液体の圧力変動を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4130823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、圧力固有振動の周波数と圧力固有振動の推定波長より求まる音速と、測定容器の容積とより検査液体の噴射量を測定する噴射計測装置によれば、次のような問題がある。
【0007】
すなわち、まず、計測に用いるノズル101の種類等によって、測定容器100の容積が変化することがあるため、適正な計測を行うために、計測に用いるノズル101の交換の際に、測定容器100の容積を計測し直して設定する煩雑な作業が必要となる。
【0008】
また、上述のような、圧力固有振動の周波数と圧力固有振動の推定波長より音速を測定し、測定した音速を用いて検査液体の噴射量を測定する噴射計測装置によれば、推定波長の圧力固有振動の実際の波長に対する相違による誤差等、個々の噴射装置の特性等に応じた誤差が発生してしまうことがある。
【0009】
そこで、本発明は、圧力固有振動の周波数と圧力固有振動の推定波長と測定容器の容積より検査液体の噴射量を測定する噴射計測装置において、煩雑な作業を必要とすることなく適正な計測を行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題達成のために、本発明は、所定圧力で液体を内部空間に充填した密閉容器と、前記密閉容器の内部空間に向かって液体を噴射するノズルと、前記密閉容器の内部空間内の液体の圧力を検出する圧力センサと、前記密閉容器内の液体の圧力が前記所定圧力となるように排出する排出手段と、前記排出手段により排出された液体の質量を計測する排出質量計測手段と、係数を設定する係数設定手段と、前記係数設定手段によって設定された係数を用いて液体の噴射量を計測する計測手段とを備えた噴射計測装置を提供する。ここで、前記係数設定手段は、前記ノズルから液体を噴射させ、当該液体の噴射による圧力の変動を前記圧力センサを用いて計測した後、前記排出手段に液体を排出させて前記排出質量計測手段に排出された液体の質量を計測させると共に、計測した圧力の変動が表す圧力振動の周波数と、計測した圧力の上昇量とを算定し、算定した周波数をf
d、算定した上昇量をΔP
d、前記排出質量計測手段によって計測された液体の質量をN
dとして、係数Mを
M = N
d×f
d2/ΔP
d
により設定するものであり、前記計測手段は、前記ノズルから液体を噴射させ、当該液体の噴射による圧力の変動を前記圧力センサを用いて計測すると共に、計測した圧力の変動が表す圧力振動の周波数と、計測した圧力の上昇量とを算定し、算定した周波数をf、算定した上昇量をΔPとして、液体の噴射量Iqを、前記係数設定手段によって設定された係数Mを用いて、
Iq = M×(ΔP/f
2)
により算出するものである。
【0011】
ここで、このような噴射計測装置は、前記密閉容器の内部空間を球形状とし、前記ノズルを、前記密閉容器の前記内部空間の球形状の球面に対して凹凸を形成しないように配置し、前記圧力センサを、前記密閉容器の前記内部空間の球形状の球面に対して凹凸を形成しないように配置することが好ましい。
【0012】
このようにすることにより、液体の噴射によって発生する振動を乱れのない単一のモードの振動とすることができ、精度よく液体の振動の周波数を算出することができるようになる。また、この結果、液体の噴射量または噴射率を良好に測定できるようになる。
【0013】
また、このような噴射計測装置が噴射量を計測する液体は、自動車エンジンやその他の燃料であってよい。
以上のような噴射計測装置によれば、ノズルの交換時など計測条件が変化したときに、係数設定手段に係数Mを設定させる簡易な作業を行うだけで、以降は、排出質量計測手段を用いずに、圧力センサを用いた高速かつ適正な噴射量の計測を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、圧力固有振動の周波数と圧力固有振動の推定波長と測定容器の容積とより検査液体の噴射量を測定する噴射計測装置において、煩雑な作業を必要とすることなく適正な計測を行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る噴射計測装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る圧力センサの配置例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る噴射計測装置の測定部の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に本実施形態に係る噴射計測装置の構成を示す。
図示するように、噴射計測装置は、燃料で満たされた密閉容器1、密閉容器1内に燃料を噴射するインジェクションノズル2、インジェクションノズル2に噴射する燃料を供給するインジェクションポンプ3、密閉容器1内の燃料の圧力を検出する圧力センサ4、連結管を介して密閉容器1に連結された排出バルブ5、排出バルブ5に連結され排出バルブ5が開状態にある期間中、密閉容器1内の燃料の圧力が規定背圧Pbとなるまで密閉容器1内の燃料を排出するリリーフバルブ6、リリーフバルブ6から排出された燃料の質量を計測する質量流量計7、測定制御装置8を備えている。
【0017】
次に、測定制御装置8は、測定シーケンスの制御を行うシーケンス制御部81と、測定シーケンスに従って燃料の噴射量や噴射率の測定を行う測定部82を備えている。
次に、
図2aに、密閉容器1の形状と、密閉容器1に対するインジェクションノズル2と圧力センサ4の配置を示す。
図示するように、密閉容器1は、球形状の内部空間11と、内部空間11に連結する排出流路12が設けられており、内部空間11、排出流路12には、燃料が満たされている。そして、
図1に示すように、排出流路12には、連結管を介して上述した排出バルブ5が連結されている。
【0018】
また、密閉容器1には、インジェクションノズル2が、先端の噴射口が内部空間11の球形状の球面に対して凹凸なく位置するように固定されており、インジェクションノズル2から燃料が内部空間11の球形状の中心に向けて噴射される。
【0019】
そして、圧力センサ4は、先端の測定子が内部空間11の球形状の球面に対して凹凸なく位置するように固定されている。ここで、
図2aに示した例では、圧力センサ4は、内部空間11の中心からインジェクションノズル2の先端の噴射口に向かう方向と、内部空間11の中心から圧力センサ4の先端の測定子に向かう方向との間の角度θの絶対値が135度となるように配置している。
【0020】
ここで、以上のように本実施形態では、密閉容器1の燃料が充填される内部空間11の形状を球形状とし、インジェクションノズル2の先端と圧力センサ4の先端を内部空間11の球形状の球面の一部を形成するように配置している。よって、密閉容器1の内部空間11の球形状の内部には燃料以外の異物は存在せず、インジェクションノズル2から燃料を内部空間11内に噴射すると、単一のモードの固有振動が、球形状の内部空間11内の異物によって乱されない形態で発生する。よって、圧力センサ4で固有振動を他の振動に妨げられない形態で良好に検出することができる。
【0021】
なお、このように内部空間11の球形状の単一のモードの固有振動が発生するので、圧力センサ4は、先端が内部空間11の球形状の球面上に位置する位置であれば、任意の位置に配置することができる。
【0022】
すなわち、
図2aに示したように、圧力センサ4の先端が密閉容器1の内部空間11の中心の斜め下方向に位置するように圧力センサ4を配置することができる他、たとえば、
図2b、c、dに示すように、圧力センサ4の先端が密閉容器1の内部空間11の中心の斜め上方向や、横方向や、下方向に位置するように、圧力センサ4を配置することもできる。
【0023】
次に、
図3に、測定制御装置8の測定部82の機能構成を示す。
図示するように、測定制御装置8の測定部82は、FFT処理部821、ピーク周波数算出部822、フィルタ823、上昇圧力算出部824、噴射測定部825、係数設定部826を備えている。
【0024】
以下、このような噴射計測装置の、燃料の噴射量(質量)の測定原理について説明する。
密閉容器1の容積をVとし、Kを燃料の体積弾性係数とすると、燃料を体積ΔVだけ密閉容器1内に噴射したときの密閉容器1内の燃料の圧力上昇ΔPは、式(1)で表される。
【0025】
ΔP=(K×ΔV)/V …(1)
一方、液体中の音速cは、ρを燃料の密度として、式(2)によって表される。
c = ( K/ρ )
1/2 …(2)
よって、式(1)と式(2)とより、燃料の噴射量Iqは、式(3)で示される。
Iq = ΔV×ρ =(ΔP×V) / c
2 …(3)
ここで、密閉容器1の球形状の内部空間11の燃料中の音速cは、λを内部空間11の燃料の基本振動の波長、fを内部空間11の燃料の基本振動の周波数として式(4)によって表される。
【0026】
c = f×λ…(4)
そして、式(4)を式(3)に代入すると、式(5)が得られる。
Iq =(ΔP×V) / (f
2×λ
2 )…(5)
いま、係数Mを、式(6)のように定めると、
M =V/λ
2 …(6)
式(5)は、式(7)によって表すことができる。
【0027】
Iq = M×(ΔP/f
2) …(7)
ここで、密閉容器1の容積V、基本振動の波長λは、温度などによって変化する燃料の体積弾性係数や密度や噴射量に依存せずに、固定的に定まる定数であるため、係数Mも噴射量によらない定数となる。したがって、式(7)より、予め係数Mを求めて設定しておけば、液体の噴射量Iqは、燃料の基本振動の周波数fと、液体の圧力上昇ΔPより適正に算出することができる。
【0028】
また、噴射量Iqを時間微分することにより、燃料の噴射率(質量)を算出することもできる。
以下、噴射計測装置において、以上のような式(6)、(7)を利用して燃料の噴射量を計測する動作について説明する。
噴射量の算出は、燃料の噴射量の計測動作の実行前に行う係数Mを設定するためのキャリブレーション動作と、係数Mの設定後に行う燃料の噴射量の計測動作とより実現される。
【0029】
まず、キャリブレーション動作について説明する。
キャリブレーション動作において、測定制御装置8のシーケンス制御部81は、インジェクションポンプ3を駆動し、インジェクションノズル2から密閉容器1内に燃料を噴射し、排出バルブ5の開閉の制御を行い、密閉容器1内の燃料の圧力を規定背圧に復帰させると共に、質量流量計7で排出された燃料の質量を計測させる処理を一度もしくは繰返し行う。
【0030】
一方、測定制御装置8の測定部82は、キャリブレーション動作において、シーケンス制御部81の制御下で、以下のように係数Mを設定する。
すなわち、FFT処理部821は、圧力センサ4から出力される、密閉容器1内の燃料の圧力変動を表す圧力信号をFFT処理し、燃料の圧力振動の各周波数成分の大きさを算出する。ピーク周波数算出部822は、FFT処理部821が算出した燃料の圧力振動の各周波数成分の大きさがピーク(最大)となる周波数を、燃料の基本振動の周波数f
dとして算出する。
【0031】
また、フィルタ823は、圧力センサ4から出力される圧力信号の高周波領域のノイズを除去し、上昇圧力算出部824はフィルタ823がノイズを除去した圧力信号から、密閉容器1内の燃料の圧力上昇ΔP
dを算出する。
【0032】
そして、係数設定部826は、質量流量計7から、密閉容器1内の燃料の圧力を規定背圧に復帰させるために排出された燃料の質量N
dを取得する。そして、取得した質量N
dと、ピーク周波数算出部822が算出した燃料の基本振動の周波数f
dと、上昇圧力算出部824が算出した圧力上昇ΔP
dとより以下のように係数Mを算出し、噴射測定部825に設定する。
【0033】
すなわち、係数設定部826は、式(7)によって、
N
d =Iq = M×(ΔP
d/f
d2)
の関係が成り立つので、
M = N
d×f
d2/ΔP
d
として、係数Mを算出する。
【0034】
次に、このようにしてキャリブレーション動作によって係数Mを設定したならば、以降は、以下のように燃料の噴射量の計測動作を行う。
すなわち、測定制御装置8のシーケンス制御部81は、インジェクションポンプ3を駆動し、インジェクションノズル2から密閉容器1内に燃料を噴射し、排出バルブ5の開閉の制御を行い、密閉容器1内の燃料の圧力を規定背圧に復帰させる処理を一度もしくは繰返し行う。
【0035】
一方、測定制御装置8の測定部82は、シーケンス制御部81の制御下で、以下のように密閉容器1内への燃料の噴射の度に燃料の噴射量Iqを測定する。
すなわち、FFT処理部821は、圧力センサ4から出力される、密閉容器1内の燃料の圧力変動を表す圧力信号をFFT処理し、燃料の圧力振動の各周波数成分の大きさを算出する。ピーク周波数算出部822は、FFT処理部821が算出した燃料の圧力振動の各周波数成分の大きさがピーク(最大)となる周波数を、燃料の基本振動の周波数fとして算出する。
【0036】
一方、フィルタ823は、圧力センサ4から出力される圧力信号の高周波領域のノイズを除去し、上昇圧力算出部824はフィルタ823がノイズを除去した圧力信号から、密閉容器1内の燃料の圧力上昇ΔPを算出する。
【0037】
そして、噴射測定部825は、キャリブレーション動作で設定された係数Mと、ピーク周波数算出部822が算出した燃料の基本振動の周波数fと、上昇圧力算出部824が算出した圧力上昇ΔPとから、式(7)に従って燃料の噴射量Iqを算出する。なお、噴射測定部825において、さらに、燃料の噴射量Iqを時間微分して燃料の噴射率(質量)を算出するようにしてもよい。
【0038】
ここまで、噴射計測装置において燃料の噴射量Iqを算出する動作について説明した。
ところで、上述したキャリブレーション動作は、インジェクションノズル2の交換時など計測条件が変化したときのみに行えば良く、計測動作を行う度に行う必要はない。また、キャリブレーション動作が完了したならば、質量流量計7は、これを取り外すようにしてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0039】
なお、以上の実施形態では、質量流量計7を用いて、密閉容器1内の燃料の圧力を規定背圧に復帰させるために排出された燃料の質量N
dを計測するようにしたが、質量流量計7に代えて、排出された燃料の質量Nを計測する質量計を用いるようにしてもよい。または、質量流量計7に代えて、排出された燃料の体積流量を計測する流量計と、排出された燃料の温度を計測する温度計を用い、燃料の温度より求まる燃料の密度と流量計が計測した体積流量とより、排出された燃料の質量N
dを計測するようにしてもよい。
【0040】
また、本実施形態は、燃料以外の任意の液体の噴射量や噴射率の計測にも同様に適用することができる。
以上のように本実施形態によれば、インジェクションノズル2の交換時など計測条件が変化したときのみに質量流量計7を用いてキャリブレーション動作を行えば、以降は、圧力センサ4のみを用いて、高速かつ適正に噴射量等の計測を行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0041】
1…密閉容器、2…インジェクションノズル、3…インジェクションポンプ、4…圧力センサ、5…排出バルブ、6…リリーフバルブ、7…質量流量計、8…測定制御装置、11…内部空間、12…排出流路、81…シーケンス制御部、82…測定部、821…FFT処理部、822…ピーク周波数算出部、823…フィルタ、824…上昇圧力算出部、825…噴射測定部、826…係数設定部。