特許第6335071号(P6335071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6335071蒸着材料、蒸着材料の製造方法、光学素子の製造方法およびガスバリアフィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335071
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】蒸着材料、蒸着材料の製造方法、光学素子の製造方法およびガスバリアフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20180521BHJP
   C23C 14/10 20060101ALI20180521BHJP
   G02B 1/10 20150101ALN20180521BHJP
【FI】
   C23C14/24 E
   C23C14/10
   !G02B1/10
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-176280(P2014-176280)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-50339(P2016-50339A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】591111112
【氏名又は名称】キヤノンオプトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】上嶌 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡会 孝典
(72)【発明者】
【氏名】堀江 幸弘
【審査官】 神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−132979(JP,A)
【文献】 特開2010−18445(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/025195(WO,A1)
【文献】 特開2010−235966(JP,A)
【文献】 特開2008−133157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
C23C 14/10
G02B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ケイ素の粒子で構成されている無機粉体を有する蒸着材料であって、
上記酸化ケイ素の粒子は、SiO(xはケイ素原子数に対する酸素原子数の割合)で上記xが異なる値を持つ複数種類の酸化ケイ素を含み、
上記酸化ケイ素の粒子は、その内部に、上記xの値が0.81乃至1.14の酸化ケイ素で構成された第1の領域を有し、当該第1の領域の周囲に、上記xの値が1.95乃至2.02の酸化ケイ素で構成された第2の領域を有していることを特徴とする蒸着材料。
【請求項2】
上記無機粉体は、目開きが0.600mm以下である篩をパスし、目開きが0.212mm以上である篩にオンする粒径を有する酸化ケイ素の粒子で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の蒸着材料。
【請求項3】
上記第2の領域における酸化ケイ素の上記xの値1.95乃至2.02は、上記粒子の表面から深さ11nm乃至135nmの範囲のいずれかの位置で検出されることを特徴とする請求項1または2に記載の蒸着材料。
【請求項4】
上記第2の領域の酸化ケイ素は、Si−O結合に対するSi−Si結合の割合が3%以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の蒸着材料。
【請求項5】
上記酸化ケイ素の粒子は、その内部に上記第1の領域として、上記xの値が0.81乃至1.14の酸化ケイ素で構成されたコアを有し、当該コアと接する周囲の上記第2の領域として、上記xの値が1.95乃至2.00の酸化ケイ素で構成されたシェルを有していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の蒸着材料。
【請求項6】
ペレット形状で構成されたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の蒸着材料。
【請求項7】
Si粉末とSiO粉末とを混合して混合物を得る工程と、
上記混合物を造粒して造粒物を調製する工程と、
上記造粒物を容器に入れ、当該造粒物を真空中で加熱することにより、当該造粒物からSiOを昇華して析出用基体に固体状のSiOを析出させる工程と、
上記固体状のSiOを回収し、回収した固体状のSiOを粉砕してSiOの粒子を調製する工程と、
上記SiOの粒子を容器に入れ、上記SiOの粒子が入っている容器を大気と連通している加熱装置に入れて温度700℃乃至1000℃で2時間乃至72時間保持することにより、酸化ケイ素の粒子で構成されている無機粉体を有する蒸着材料を調製する工程とを有し、
上記無機粉体を有する蒸着材料は、SiO(xはケイ素原子数に対する酸素原子数の割合)で上記xが異なる値を持つ複数種類の酸化ケイ素を含み、
上記酸化ケイ素の粒子は、その内部に、上記xの値が0.81乃至1.14の酸化ケイ素で構成された第1の領域を有し、当該第1の領域の周囲に、上記xの値が1.95乃至2.02の酸化ケイ素で構成された第2の領域を有していることを特徴とする蒸着材料の製造方法。
【請求項8】
光学部品の表面に酸化ケイ素の蒸着膜を形成して光学素子を製造する光学素子の製造方法であって、
真空蒸着装置内で、酸化ケイ素の粒子で構成されている無機粉体を有する蒸着材料を加熱してSiとOからなるガスを発生させ、上記光学部品の表面に上記酸化ケイ素の蒸着膜を形成する工程を有し、
上記無機粉体を有する蒸着材料は、SiO(xはケイ素原子数に対する酸素原子数の割合)で上記xが異なる値を持つ複数種類の酸化ケイ素を含み、
上記酸化ケイ素の粒子は、その内部に、上記xの値が0.81乃至1.14の酸化ケイ素で構成された第1の領域を有し、当該第1の領域の周囲に、上記xの値が1.95乃至2.02の酸化ケイ素で構成された第2の領域を有していることを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項9】
フィルムに酸化ケイ素の蒸着膜を形成してガスバリアフィルムを製造するガスバリアフィルムの製造方法であって、
真空蒸着装置内で、酸化ケイ素の粒子で構成されている無機粉体を有する蒸着材料を加熱してSiとOからなるガスを発生させ、上記フィルムの表面に上記酸化ケイ素の蒸着膜を形成する工程を有し、
上記無機粉体を有する蒸着材料は、SiO(xはケイ素原子数に対する酸素原子数の割合)で上記xが異なる値を持つ複数種類の酸化ケイ素を含み、
上記酸化ケイ素の粒子は、その内部に、上記xの値が0.81乃至1.14の酸化ケイ素で構成された第1の領域を有し、当該第1の領域の周囲に、上記xの値が1.95乃至2.02の酸化ケイ素で構成された第2の領域を有していることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着材料、蒸着材料の製造方法、光学素子の製造方法およびガスバリアフィルムの製造方法に関し、特に、酸化ケイ素を主成分として含む蒸着材料およびその製造方法、さらに、当該蒸着材料を用いた光学素子の製造方法およびガスバリアフィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡レンズ、カメラレンズ、望遠鏡レンズ、ディスプレイの反射防止膜、光学ドライブ装置のミラーやピックアップレンズ、ダイクロイックプリズム、カラーコピー機のフィルターやミラーのような光学素子に対し、光学的機能や保護機能を付与するための層として、酸化ケイ素で形成された薄膜が適用されている。
【0003】
酸化ケイ素は、ナノオーダーのアモルファスSi相とアモルファスSiO相とが混在した物質であり、SiOという式で表すことができる。これは、Si相とSiO相とがそれぞれ混在している比率によってxの値が変わり、その比率が連続的な幅を持った組成を持つ物質であることを意味する。例えばSiOは、このSiとSiOとが同程度の比率で混在している物質を示している。
【0004】
酸化ケイ素の薄膜は、一般に真空蒸着法やスパッタリング法で形成される。実際には成膜速度やコストの面で有利なことから、真空蒸着法が選択されることが多い。真空蒸着法は、10-4〜10-2Pa程度の真空中で酸化ケイ素の蒸着材料を加熱して昇華・蒸発させ、気体分子となった蒸着材料を基材の表面上に堆積させることにより、酸化ケイ素の薄膜を形成する方法である。
【0005】
酸化ケイ素は比較的低温で蒸発するため、熱に弱い樹脂部材への成膜に適している。また、蒸着によって得られる薄膜は、透明性と樹脂部材に対する高い密着性および保護性とを有している。このため、酸化ケイ素で形成された蒸着材料は、樹脂製光学部品に対して薄膜を形成する際に多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2006/025195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、酸化ケイ素で形成された蒸着材料を用いて基材に蒸着膜を成膜する際に、スプラッシュが発生することがある。スプラッシュとは、蒸着材料を加熱したときに、昇華により発生したSiとOからなるガスと共に蒸着材料の一部が微細な固体または微細な液体として飛散する現象である。
【0008】
飛散した微細な固体または微細な液体が基材まで到達し、基材上に異物として付着する場合がある。また、その異物が取れると、そこにピンホールが生じてしまう。例えば、高感度の光学機器の部品を成膜する場合、膜に異物やピンホール等の欠陥があると、光学機器の性能が著しく落ちてしまうという問題を生じる。そのため、スプラッシュの起きにくい蒸着材料の開発が待望されている。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、酸化ケイ素で形成された蒸着材料を用いて真空蒸着を行う際におけるスプラッシュの発生を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明の蒸着材料は、酸化ケイ素の粒子で構成されている無機粉体を有する蒸着材料であって、酸化ケイ素の粒子は、SiO(xはケイ素原子数に対する酸素原子数の割合)でxが異なる値を持つ複数種類の酸化ケイ素を含み、酸化ケイ素の粒子は、その内部に、xの値が0.81乃至1.14の酸化ケイ素で構成された第1の領域を有し、当該第1の領域の周囲に、xの値が1.95乃至2.02の酸化ケイ素で構成された第2の領域を有している。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明によれば、SiOでxの値が比較的小さい酸化ケイ素で構成された第1の領域11の周囲に、xの値が比較的大きく融点の高い酸化ケイ素で構成された第2の領域12が存在することにより、酸化ケイ素で形成された蒸着材料を用いて真空蒸着を行う際におけるスプラッシュの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態による蒸着材料の構造例を示す図である。
図2】実施例に係る蒸着材料および比較例に係る蒸着材料を用いて蒸着を行った際に発生したスプラッシュの数の測定結果を示す図である。
図3】実施例1に係る酸化ケイ素の粒子をHAADF―STEMを用いて観察した結果を示す図である。
図4】実施例2に係る酸化ケイ素の粒子をHAADF―STEMを用いて観察した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による蒸着材料の構造例を示す図である。本実施形態の蒸着材料は、酸化ケイ素の粒子で構成されている無機粉体を有する蒸着材料である。
【0014】
スプラッシュが発生する要因の1つに、蒸着材料のバルク(粒子)表面での融点の違いがある。酸化ケイ素の粒子で構成されている蒸着材料の場合、蒸着材料を構成している粒子の内部でSiとSiOとが混在してSiO(xはケイ素原子数に対する酸素原子数の割合)が形成されている。そして、融点の低いSiが揮発するときに、融点の高いSiOを弾き飛ばすことでスプラッシュが発生すると推察される。
【0015】
本実施形態の蒸着材料を構成する粒子は、図1に模式的に示すように、その内部に、SiOでxの値が比較的小さい第1の酸化ケイ素で構成された第1の領域11を有するとともに、当該第1の領域11の周囲に、xの値が比較的大きい第2の酸化ケイ素で構成された第2の領域12を有している。xの値が比較的大きく融点の高い第2の酸化ケイ素で構成された第2の領域12が第1の領域11の周囲に存在することによって、スプラッシュの発生を減少させることが可能である。
【0016】
本実施形態における酸化ケイ素の粒子の「領域」とは、粒子の表面から所定深さまでの組成を測定し、SiOのxの値の違いで定めたものである。高角度散乱暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF−STEM)を用いて観察すると、SiOでxの値が異なる酸化ケイ素は、xの値に応じて濃度の異なる画像が得られる。すなわち、xの値が比較的小さい第1の酸化ケイ素が存在する部分と、xの値が比較的大きい第2の酸化ケイ素が存在する部分とが濃淡の差をもって観察される。よって、この濃淡の差によって、内側の第1の領域11とその周囲の第2の領域12とを定めることが可能である。
【0017】
顆粒形状の蒸着材料は、使用目的によって、粒径が0.1mm乃至5mmに調整される。蒸着装置によって色々な粒径の蒸着材料が使用される。使用される蒸着装置には、連続式とバッチ式とがある。バッチ式の蒸着装置を用いた酸化ケイ素の蒸着の場合、目開きが4mm以下の篩をパスし、目開き2mm以上の篩にオンする粒径の粒子(以下、「2−4mmの大径粒子」という)で構成される蒸着材料が好ましく用いられる。このような蒸着材料を用いた場合、スプラッシュの発生は比較的少ない。
【0018】
一方、蒸着材料を連続して蒸着装置へ導入する場合、粒径が0.1mm乃至1mmの粒子で構成される蒸着材料を使用し、蒸着材料の継ぎ足しを自動で行う。連続式の蒸着装置による蒸着の場合、粒径が大きい粒子で構成される蒸着材料を用いると補給経路で詰まりを起こし、継ぎ足しができなくなって蒸着が止まってしまうことがある。そこで、連続式の蒸着装置を用いた蒸着の場合、目開きが0.6mm以下の篩をパスし、目開きが0.212mm以上の篩にオンする粒径の粒子(以下、「0.212−0.6mmの小径粒子」という)で構成される蒸着材料を使用するのが好ましい。
【0019】
このように粒径の小さい粒子から構成された蒸着材料を用いる場合、自動補給のための補給経路での詰まりは発生しにくくなる。しかしながら、粒径の小さい粒子から構成される蒸着材料は、粒径の大きな粒子から構成される蒸着材料と比べて、スプラッシュが発生しやすくなる傾向にある。これに対し、本実施形態では、連続式の蒸着装置で用いられるような粒径の小さい酸化ケイ素の粒子で構成される蒸着材料においても、スプラッシュの発生を抑制することが可能である。
【0020】
以下に、本実施形態の蒸着材料およびその製造方法について詳しく説明する。
【0021】
まず、Si粉末とSiO粉末とを混合して混合物を得て、得られた混合物を造粒して造粒物を調製する。次に、調製した造粒物を容器に入れ、当該造粒物を真空中で昇温して加熱することにより、当該造粒物からSiOを昇華して析出基体に固体状のSiOを析出させる。次に、析出したSiOを回収して粉砕する。ここでは、粉砕機を使用して、粉砕や剪断や研磨を行うことにより、SiOの粒子の大きさおよび形状を整える。
【0022】
ここで、SiOの粒子は、蒸着材料の使用目的によって、目開きが5mm以下の篩をパスし、目開きが0.1mm以上の篩にオンする粒径、すなわち、0.1mm乃至5mmの粒径に調製することが好ましい。特に、連続式の蒸着装置で使用する蒸着材料を製造する場合には、目開きが0.6mm以下の篩をパスし、目開きが0.212mm以上の篩にオンする粒径すなわち、0.212mm乃至0.6mmの粒径に調製することが好ましい。
【0023】
次に、粒度が調整されたSiOの粒子を箱型の容器に入れ、当該容器を大気と連通している加熱装置内に入れて、加熱装置を昇温する。これにより、SiOの粒子を所定時間の間、所定の温度で加熱し、加熱後に放冷する。この加熱酸化処理によってSiOの粒子の表面改質を施し、SiOの粒子の表面部分に酸化物層を形成する。このとき、後述の実施例に示すように、第2の領域12における第1の酸化ケイ素のSi−Si結合の存在割合を、Si−O結合の存在割合に対して3%以下にすることが好ましい。なお、Si−Si結合およびSi−O結合の測定は、例えば、EELS(電子エネルギー損失分光法)を用いて測定することが可能である。
【0024】
加熱酸化処理に用いる加熱装置は、大気と連通しているマッフル炉のような加熱装置が好ましい。本実施形態では特に、箱型の容器に入れたSiOの粒子を、加熱装置内で室温から700℃乃至1000℃に昇温して2時間乃至72時間保持し、加熱後に加熱装置内で箱型の容器内の粒子を室温まで放冷する。このようにすると、粒子内部の第1の領域11に第1の酸化ケイ素を有し、その周囲の第2の領域12にSiOの酸化物である第2の酸化ケイ素を有する構造から成る蒸着材料が得られる。
【0025】
以上のように、本実施形態による蒸着材料の製造方法では、周囲に酸化物を有していないSiOの粒子を粉砕して加熱することにより、SiOでxの値が比較的小さい第1の酸化ケイ素により構成された第1の領域11を内部に有するとともに、当該第1の領域11の周囲に、xの値が比較的大きい第2の酸化ケイ素により構成された第2の領域12を有する酸化ケイ素の粒子を形成することができる。
【0026】
上述のように、高角度散乱暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF―STEM)を使用することにより、内部における第1の領域111とその周囲における第2の領域12とを確認することが可能である。すなわち、内部における第1の領域11とその周囲における第2の領域12との有無は、高角度散乱暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF―STEM)を用いて、倍率500000倍で確認することが可能である。
【0027】
また、第1の領域11および第2の領域12におけるケイ素原子数および酸素原子数(すなわち、ケイ素原子数100に対する酸素原子数の割合=SiOにおけるxの値)は、STEM−EDXを用いて測定することが可能である。本実施形態では、粒子の内部における第1の領域11については、粒子表面からの深さが0.1mm乃至0.3mmの範囲で測定を行った。また、周囲における第2の領域12については、粒子表面からの深さが11nm乃至135nmの範囲で測定を行った。
【実施例】
【0028】
以下に、以上のように構成した本実施形態による蒸着材料の具体的な実施例、および実施例におけるスプラッシュの発生回数を、比較例とともに詳しく説明する。図2は、実施例に係る蒸着材料および比較例に係る蒸着材料を用いて蒸着を行った際に発生したスプラッシュの数の測定結果を示す図である。
【0029】
本実施形態では、0.212−0.6mmの小径粒子によるSiOと、2−4mmの大径粒子によるSiOとを準備した。さらに、準備した各粒子の所定量を所定の容器に入れ、容器を蒸着装置内にセットして、40Å/sの成膜レートまたは100Å/sの成膜レートで抵抗加熱による蒸着を行った。なお、2−4mmの大径粒子については、100Å/sの成膜レートでEB加熱による蒸着も行った。そして、それぞれの蒸着時にスプラッシュの発生回数を測定した。
【0030】
スプラッシュの発生回数は、ビデオカメラを用いて蒸着中の蒸着材料表面の様子を30コマ/sで撮影し、録画した動画のうち成膜中の60秒間の動画を1コマずつ再生して、目視計数することで測定した。
【0031】
<実施例1>
まず、Si含有量98%で粒径が60μm〜80μmの金属Si粉(Si粉末に相当)と、SiO含有量99%で粒径が250μm〜400μmのけい砂(SiO粉末に相当)とを等しいモル数で混合した粉末を原料として用い、これを造粒して造粒物を調製した上で、加熱装置を用いて造粒物を真空中で加熱することにより、造粒物からの昇華によってSiOの製造を行った。このときの加熱温度は1500℃で、炉内圧力は0.01気圧とした。
【0032】
次に、昇華させて析出基体に析出させた生成物を粉砕機で粉砕することにより、SiOの粒子を生成し、篩を用いて粒度を調整した。すなわち、目開きが0.6mmの篩をパスしたSiOの粒子を、目開きが0.212mmの篩にかけ、目開きが0.212mmの篩にオンしたSiOの粒子を収集した。
【0033】
さらに、粒度を調整されたSiOの粒子の100gを、150mm×150mm×50mmの箱型の形状のアルミナ製の容器に入れ、大気と連通している加熱装置に容器を入れて加熱装置内を昇温し、温度810℃±20℃で6時間保持することで、熱処理によるSiOの粒子の表面の酸化を行った。この酸化処理後、加熱装置を冷却し、冷却後に容器を加熱装置から取り出した。なお、温度については700℃〜1000℃で、時間については2時間〜72時間でそれぞれ実施したところ、以下に示す特性と同等の特性を有する材料が得られた(以下の各実施例において同様)。
【0034】
以上の一連の工程によって得られた酸化ケイ素の粒子は、HAADF―STEMを用いて観察したところ、図3に示すように、内部の第1の領域11に第1の酸化ケイ素が形成され、その周囲の第2の領域12に第2の酸化ケイ素が形成されていた。そして、第2の領域12の厚さは202nmであった。この実施例1では、第1の領域11と第2の領域12との境界が見ために分かりやすい。このような粒子の場合、第1の領域11は特許請求の範囲のコアに相当し、第2の領域12は特許請求の範囲のシェルに相当する。また、EELS(電子エネルギー損失分光法)を用いた測定の結果、第2の領域12中にSi−Si結合は検出されなかった。
【0035】
さらに、得られた酸化ケイ素の粒子について、STEM−EDXを用いてケイ素原子数100に対する酸素原子数の割合を測定した。第1の領域11については、粒子表面からの深さが0.1mm乃至0.3mmの範囲で測定を行ったところ、ケイ素原子数100に対して酸素原子数が114.22の割合である第1の酸化ケイ素SiO(x=1.1422)で構成されていた。また、第2の領域12については、粒子表面からの深さが70nm乃至135nmの範囲で測定を行ったところ、ケイ素原子数100に対して酸素原子数が195.42の割合である第2の酸化ケイ素SiO(x=1.9542)で構成されていた。
【0036】
以上のようにして得られた酸化ケイ素の粒子を蒸着材料として使用して、蒸着装置において成膜レート40Å/sで抵抗加熱による真空蒸着を実施した。このとき、蒸着材料からSiOが蒸発する様子を、ビデオカメラを用いて30コマ/sで撮影し、録画した動画のうち成膜中の60秒間の部分について1コマずつ画像を目視確認することで、スプラッシュの発生回数を計数した。スプラッシュの発生回数は0.2回/sであった。
【0037】
また、上記と同様にして製造したSiOの粒子を、目開きが4mmの篩をパスし、目開きが2mmの篩にオンする粒度に調製した。さらに、調整したSiOの粒子の100gを、大気と連通している加熱装置に入れて加熱装置内を昇温し、温度810℃±20℃で6時間保持することで、熱処理によるSiOの粒子の表面の酸化を行った。
【0038】
そして、このようにして製造した蒸着材料を用いて、蒸着装置において成膜レート40Å/sで抵抗加熱による真空蒸着を実施した。このとき、蒸着材料からSiOが蒸発する様子を、ビデオカメラを用いて30コマ/sで撮影し、録画した動画のうち成膜中の60秒間の部分について1コマずつ画像を目視確認することで、スプラッシュの発生回数を計数した。スプラッシュの発生回数は0.1個/sであった。
【0039】
さらに、0.212−0.6mmの小径粒子と2−4mmの大径粒子とをそれぞれ上述と同じ条件で加熱処理することよって表面酸化を行い、これによって得られた蒸着材料を使用して、蒸着装置において成膜レート100Å/sで抵抗加熱による真空蒸着を実施した。この場合、0.212−0.6mmの小径粒子による蒸着材料を用いた場合のスプラッシュの発生回数は0.9個/sであり、2−4mmの大径粒子による蒸着材料を用いた場合のスプラッシュの発生回数は0.3個/sであった。2−4mmの大径粒子についてはEB加熱による真空蒸着も実施した。この場合のスプラッシュの発生回数は0.4個/sであった。
【0040】
<実施例2>
まず、目開きが0.212mmと0.6mmの篩、および目開きが2mmと4mmの篩を用いて分級されたCERAC社製の材料Silicon mono oxideを、アルミナ乳鉢を用いて細かく粉砕した後、目開きが0.6mmの篩をパスしたSiOの粒子を、目開きが0.212mmの篩にかけ、目開きが0.212mmの篩にオンしたSiOの粒子を収集した。
【0041】
次に、粒度を調整されたSiOの粒子の100gを、150mm×150mm×50mmの箱型の形状のアルミナ製の容器に入れ、大気と連通している加熱装置に容器を入れて加熱装置内を昇温し、温度810℃±20℃で6時間保持することで、熱処理によるSiOの粒子の表面の酸化を行った。この酸化処理後、加熱装置を冷却し、冷却後に容器を加熱装置から取り出した。
【0042】
これによって得られた酸化ケイ素の粒子は、HAADF―STEMを用いて観察したところ、内部の第1の領域11に第1の酸化ケイ素が形成され、その周囲の第2の領域12に第2の酸化ケイ素が形成されていた。ただし、図4に示すように、第1の領域11と第2の領域12との境界は不鮮明であった。境界が不鮮明というのは、その不鮮明な部分において、第1の酸化ケイ素と第2の酸化ケイ素とが混在していることが原因であると推察される。このように、内側の第1の領域11から周囲の第2の領域12へ、SiとSiOとの存在割合が変化している特性を有する酸化ケイ素の粒子も、本発明の範囲に含まれる。
【0043】
また、得られた酸化ケイ素の粒子について、STEM−EDXを用いてケイ素原子数100に対する酸素原子数の割合を測定した。第1の領域11については、粒子表面からの深さが0.1mm乃至0.3mmの範囲で測定を行ったところ、ケイ素原子数100に対して酸素原子数が103.00の割合である第1の酸化ケイ素SiO(x=1.0300)で構成されていた。また、第2の領域12については、粒子表面からの深さが11nm乃至65nmの範囲で測定を行ったところ、ケイ素原子数100に対して酸素原子数が201.20の割合である第2の酸化ケイ素SiO(x=2.0120)で構成されていた。さらに、EELS(電子エネルギー損失分光法)を用いた測定の結果、第2の領域12中にSi−Si結合は観察されなかった。
【0044】
以上のようにして得られた酸化ケイ素の粒子を蒸着材料として使用して、蒸着装置において成膜レート40Å/sで抵抗加熱による真空蒸着を実施した。このとき、蒸着材料からSiOが蒸発する様子を、ビデオカメラを用いて30コマ/sで撮影し、録画した動画のうち成膜中の60秒間の部分について1コマずつ画像を目視確認することで、スプラッシュの発生回数を計数した。スプラッシュの発生回数は0.7個/sであった。
【0045】
<実施例3>
まず、Si含有量98%で粒径が60μm〜80μmの金属Si粉と、SiO含有量99%で粒径が250μm〜400μmのけい砂とを等しいモル数で混合した粉末を原料として用い、これを造粒して造粒物を調製した上で、加熱装置を用いて造粒物を真空中で加熱することにより、造粒物からの昇華によってSiOの製造を行った。このときの加熱温度は1500℃で、炉内圧力は0.01気圧とした。
【0046】
次に、昇華させて析出基体に析出させた生成物を、粉砕せずに篩を用いて粒度を調整した。ここでは、目開きが0.6mmの篩をパスしたSiOの粒子を、目開きが0.212mmの篩にかけ、目開きが0.212mmの篩にオンしたSiOの粒子を収集した。
【0047】
さらに、粒度を調整されたSiOの粒子の100gを、150mm×150mm×50mmの箱型の形状のアルミナ製の容器に入れ、大気と連通している加熱装置に容器を入れて加熱装置内を昇温し、温度810℃±20℃で6時間保持することで、熱処理によるSiOの粒子の表面の酸化を行った。この酸化処理後、加熱装置を冷却し、冷却後に容器を加熱装置から取り出した。
【0048】
以上の一連の工程によって得られた酸化ケイ素の粒子は、HAADF―STEMを用いて観察したところ、内部の第1の領域11に第1の酸化ケイ素が形成され、その周囲の第2の領域12に第2の酸化ケイ素が形成されていた。そして、第2の領域12の厚さは205nmであった。この実施例3に係る粒子も、第1の領域11は特許請求の範囲のコアに相当し、第2の領域12は特許請求の範囲のシェルに相当する。また、EELS(電子エネルギー損失分光法)を用いた測定の結果、第2の領域12中におけるSi−Si結合の比率は2.1%であった。
【0049】
さらに、得られた酸化ケイ素の粒子について、STEM−EDXを用いてケイ素原子数100に対する酸素原子数の割合を測定した。第1の領域11については、粒子表面からの深さが0.1mm乃至0.3mmの範囲で測定を行ったところ、ケイ素原子数100に対して酸素原子数が81.42の割合である第1の酸化ケイ素SiO(x=0.8142)で構成されていた。また、第2の領域12については、粒子表面からの深さが70nm乃至135nmの範囲で測定を行ったところ、ケイ素原子数100に対して酸素原子数が198.86の割合である第2の酸化ケイ素SiO(x=1.9886)で構成されていた。
【0050】
以上のようにして得られた酸化ケイ素の粒子を蒸着材料として使用して、蒸着装置において成膜レート40Å/sで抵抗加熱による真空蒸着を実施した。このとき、蒸着材料からSiOが蒸発する様子を、ビデオカメラを用いて30コマ/sで撮影し、録画した動画のうち成膜中の60秒間の部分について1コマずつ画像を目視確認することで、スプラッシュの発生回数を計数した。スプラッシュの発生回数は6.0個/sであった。
【0051】
<比較例1>
目開きが0.212mmと0.6mmの篩、および目開きが2mmと4mmの篩を用いて分級されたCERAC社製の材料Silicon mono oxideを、アルミナ乳鉢を用いて細かく粉砕し、これを蒸着材料として使用した。この蒸着材料は、SiOでxの値が1.95乃至2.02の酸化ケイ素を持たず、表面からの深さ17nm乃至78nmの位置で測定したケイ素原子数100に対する酸素原子数の割合は95.77であり、内部におけるケイ素原子数100に対する酸素原子数の割合97.43とほぼ同じ値を示した。また、Si−O結合に対するSi−Si結合の比率は60.2%であった。
【0052】
この蒸着材料を使用して、蒸着装置において成膜レート40Å/sおよび100Å/sで抵抗加熱およびEB加熱による真空蒸着を実施した。このとき、実施例1と同じ方法でスプラッシュの発生回数を計数したところ、スプラッシュの発生回数は以下の通りであった。
・抵抗加熱の成膜レートが40Å/sで、目開きが0.212mmと0.6mmの条件では152.0個/s
・抵抗加熱の成膜レートが100Å/sで、目開きが0.212mmと0.6mmの条件では84.0個/s
・抵抗加熱の成膜レートが40Å/sで、目開きが2mmと4mmの条件では0.2個/s
・抵抗加熱の成膜レートが100Å/sで、目開きが2mmと4mmの条件では1.5個/s
・EB加熱の成膜レートが100Å/sで、目開きが2mmと4mmの条件では3.8個/s
【0053】
<比較例2>
目開きが0.212mmと0.6mmの篩を用いて分級されたCERAC社製の材料Silicon mono oxideを、一切の処理を行なわずそのまま蒸着材料として使用した。この蒸着材料は、保管中に酸化還元反応が進んだ結果、表面に厚さ100nmの酸化層を持ち、表層のケイ素原子数100に対する酸素原子数の割合は171.15であった。また、内部におけるケイ素原子数100に対する酸素原子数の割合は95.01であった。また、Si−O結合に対するSi−Si結合の比率は13.2%であった。
【0054】
この蒸着材料を使用して、蒸着装置において成膜レート40Å/sで抵抗加熱による真空蒸着を実施した。このとき、実施例1と同じ方法でスプラッシュの発生回数を計数したところ、スプラッシュの発生回数は172.0個/sであった。
【0055】
通常、加熱によって蒸着材料から蒸発したSiOが基材に蒸着する際に発生するスプラッシュの数は、酸化ケイ素の粒径を大きくすることで、より良好に抑制することが可能である。一方、酸化ケイ素の粒径を小さくすると、スプラッシュが発生しやすくなる傾向にある。
【0056】
ここで、粒径の大きい蒸着材料を用いて蒸着を行った場合のスプラッシュの発生回数を比較すると、比較例1の蒸着材料では、抵抗加熱の成膜レートが40Å/sの条件でスプラッシュの発生回数は0.2回である。また、実施例1の蒸着材料では、抵抗加熱の成膜レートが40Å/sの条件でスプラッシュの発生回数は0.1回であり、比較例1と比べてスプラッシュの発生回数に差は殆どない。
【0057】
一方、粒径の小さい蒸着材料を用いて蒸着を行った場合のスプラッシュの発生回数を比較すると、比較例1,2の蒸着材料では、抵抗加熱の成膜レートが40Å/sの条件でスプラッシュの発生回数が6個/sを大きく超え、150個/s以上発生する。これに対し、本実施形態の蒸着材料では、実施例1〜3に示すように、小径粒子で構成されている場合であってもスプラッシュの発生回数を6個/s以下とすることが可能である。
【0058】
このように、粒径の小さい蒸着材料の場合、実施例1〜3で示される本実施形態の蒸着材料では、比較例1,2で示される従来の蒸着材料と比較して、スプラッシュの発生回数が非常に抑制されている。このことから、本実施形態における蒸着材料は、粒子が小さい粒径から構成される場合に特にスプラッシュの抑制効果が大きいと言える。
【0059】
比較例1の蒸着材料は、内部の領域も周囲の領域も、ケイ素原子数に対する酸素原子数の割合がほぼ同じ値を示しており、領域による差がみられない。また、Si−O結合に対するSi−Si結合の比率は13.2であり、実施例1〜3に示す本実施形態の蒸着材料と比べ高い値を示している。
【0060】
比較例2の蒸着材料は、表面に層が観察されるが、表面組成はケイ素原子数100に対して酸素原子数の割合が171.15であり、実施例1〜3に示す本実施形態の蒸着材料よりも低い値を示している。また、Si−Si結合の存在比率は60.4であり、実施例1〜3に示す本実施形態の蒸着材料よりも高い値を示している。
【0061】
以上のことから、スプラッシュの発生を抑制するための構成として、第1の領域11を構成する第1の酸化ケイ素はxの値が0.81乃至1.14であり、第2の領域12を構成する第2の酸化ケイ素はxの値が1.95乃至2.02であることが好ましい。また、第2の領域における第2の酸化ケイ素は、Si−O結合に対するSi−Si結合の割合が3%以下であることが好ましい。
【0062】
なお、図2に示す実験結果において、ケイ素原子数に対する酸素原子数の割合は、第1の領域11内における特定の深さの位置、第2の領域12内における特定の深さの位置において測定したものであって、その割合の酸化ケイ素が領域内に唯一存在することを意味するものではない。
【0063】
例えば、実施例1の場合、第2の領域12について粒子表面からの深さが70nm乃至135nmの範囲で測定を行った結果、xの値が1.9542であったことを示している。しかし、これは、第2の領域12内の全ての位置において、SiO(x=1.9542)の酸化ケイ素のみが存在することを示すものではない。すなわち、第2の領域12には、x=1.9542に近い値から成る酸化ケイ素も含まれ得る。他の実施例2,3についても同様である。
【0064】
つまり、xが0.81乃至1.14の何れかの値から成る第1の酸化ケイ素(異なるxの値からなるものが複数種類混在していてもよい)によって第1の領域11が構成されるともに、xが1.95乃至2.02の何れかの値から成る第2の酸化ケイ素(異なるxの値からなるものが複数種類混在していてもよい)によって第2の領域12が構成された蒸着材料は、何れも本発明の範囲に含まれる趣旨である。
【0065】
なお、顆粒形状ではなくペレット形状の蒸着材料についても、スプラッシュの発生が同様の要因であれば、本発明を適用することが可能である。すなわち、本実施形態の蒸着材料を使用してペレット形状のものを作成するか、あるいは、酸化ケイ素の粉末をペレット形状にした後、上述の酸化加熱処理によって第1の領域11と第2の領域12とを形成することで、スプラッシュの発生を抑制する効果が得られる。
【0066】
以下に、蒸着材料を用いた蒸着による光学素子の製造について、実施例4および比較例3を用いて説明する。
【0067】
<実施例4>
実施例1で製造された0.212−0.6mmの小径粒子による蒸着材料を用いて、抵抗加熱によりSiとOからなるガスを発生させて、φ40.2mmのCaF2基板(光学素子の一例)の表面に成膜レート100Å/sで成膜を行った。そして、成膜によりCaF2基板上に発生した欠陥の数を、ビデオマイクロスコープを用いた自動計数により測定した。その結果、10μm以上の大きさの欠陥個所の個数は1.6(pcs/cm)であった。
【0068】
<比較例3>
比較例1で使用した0.212−0.6mmの小径粒子による蒸着材料を用いて、φ40.2mmのCaF2基板表面に、抵抗加熱により成膜レート100Å/sで成膜を行った。そして、成膜によりCaF2基板上に発生した欠陥の数を、ビデオマイクロスコープを用いた自動計数により測定した。その結果、10μm以上の大きさの欠陥個所の個数は11.4(pcs/cm)であった。
【0069】
このように、蒸着の際に発生するスプラッシュを抑制したことで、光学素子の膜の損傷を減らすことができる。
【0070】
以下に、蒸着材料を用いた蒸着によるガスバリアフィルムの製造について、実施例5および比較例4を用いて説明する。
【0071】
<実施例5>
実施例1で製造した0.212−0.6mmの小径粒子による蒸着材料を用いて、EB加熱によりSiとOからなるガスを発生させて、成膜レート100Å/sで、高分子フィルム上に成膜を行った。そして、成膜の際に高分子フィルム上に発生した欠陥の数を、ビデオマイクロスコープを用いた自動計数により測定した。その結果、10μm以上の大きさの欠陥個所の個数は0.8(pcs/cm)であった。
【0072】
<比較例4>
比較例1で用いた0.212−0.6mmの小径粒子の蒸着材料を用いて、EBにより成膜レート100Å/sで、高分子フィルム上に成膜を行った。そして、成膜の際に高分子フィルム上に発生した欠陥の数を、ビデオマイクロスコープを用いた自動計数により測定した。その結果、10μm以上の大きさの欠陥個所の個数は9.4(pcs/cm)であった。
【0073】
このように、蒸着の際に発生するスプラッシュを抑制したことで、ガスバリアフィルムの膜の損傷を減らすことができ、ガス透過性の抑制効果が向上する。
【0074】
なお、上記実施例では、目開きが0.600mmである篩をパスし、目開きが0.212mmである篩にオンする粒径で酸化ケイ素の粒子を構成する例について説明したが、これは一例に過ぎない。すなわち、目開きが0.600mm以下である篩をパスし、目開きが0.212mm以上である篩にオンする粒径に酸化ケイ素の粒子を調製するようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、粒子の組成をSTEM−EDXを用いて測定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線光電子分光分析法)、ラマン分光を用いた分析法、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry:二次イオン質量分析法)などで測定するようにしてもよい。
【0076】
その他、上記実施形態および実施例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0077】
11 第1の領域
12 第2の領域
図1
図2
図3
図4