特許第6335072号(P6335072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335072
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】フットカバー
(51)【国際特許分類】
   A41B 11/10 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   A41B11/10 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-177167(P2014-177167)
(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公開番号】特開2016-50373(P2016-50373A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】下野 央子
(72)【発明者】
【氏名】河合 孝
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3168211(JP,U)
【文献】 米国特許第04615188(US,A)
【文献】 登録実用新案第3170949(JP,U)
【文献】 特開平10−292206(JP,A)
【文献】 特開2011−026716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/00 − 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、
伸縮性編地で編成された、足底部、側辺部、踵部および前記爪先を覆う爪先部で形成され、
前記足底部に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部を設け、
前記爪先部が他の部分よりも強くなるように、前記爪先部に補強部が設けられ
前記補強部を形成する補強生地は、前記爪先の足甲側から足指裏側にかけて前記爪先を上下方向に包み込み左右方向に包み込まないように設けられていることを特徴とするフットカバー。
【請求項2】
前記補強生地は、左右方向に形成される前記爪先部と前記側辺部との縫着線を避けて設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のフットカバー。
【請求項3】
前記補強生地の前記足甲側の端部は前記開口部を形成する爪先部の端部とともに縫着されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のフットカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用するとパンプス(履き口である甲部分が大きく開いている主として婦人用の靴)等の靴の内側に隠れて見えなくなるフットカバーに関し、特に、歩行等の動作によっても脱げたり位置ずれすることが少ない、履き心地の良いフットカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
素足にパンプス等の靴を履くことが、ファッションとして定着している。この場合、パンプスと足裏とが直接接していると、足に発生した汗により靴の中が蒸れてしまい不快感がある。
そこで、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、着用時にパンプスから露出することのないよう履き口が大きくカットされた薄手のフットカバーが提案されている。このフットカバーを着用してパンプスを履けば、外観上、素足にパンプスを履いているように見え、足裏とパンプスとの間にはフットカバーが介しているため、汗によって靴の中が蒸れてしまうことを防止することができる。
【0003】
なお、このような足装着具を、本明細書ではフットカバーと記載するが、ソックスカバー、インナーソックス、ヌードソックス、カバーソックス等と記載される場合もある。
このようなフットカバーはパンプスから露出しないよう履き口が大きくカットされているため、歩行中の摩擦等によって履き位置がずれたり、脱げたりすすることがある。一方、履き口を小さくしてしまうとパンプスから露出してしまう。このような問題点に鑑みて開発されたフットカバーが、以下の先行技術文献に開示されている。
【0004】
特開平10−292206号公報(特許文献1)は、歩行時におけるパンプスとフットカバーとの摩擦によってフットカバーが素足から脱げてしまったり、パンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを防止するために、踵当接部内面に摩擦付与体を取り付けたフットカバーを開示する。
実用新案登録第3165733号公報(特許文献2)は、特許文献1に開示されたフットカバーの開口部の周縁に沿ってゴム紐を設けたのでは、ゴム紐が足に食い込むため、足にゴム紐の型が付いてしまったり、痛みを感じたり、履き心地が良くないという問題があったことに鑑み、開口部の周縁に沿って平ゴムを設けて一面が足に接するようにした帯状伸縮部を形成したフットカバーを開示する。
【0005】
これらの特許文献1に開示されたフットカバーおよび特許文献2に開示されたフットカバーを含めて、多くのフットカバーにおいては、本体部をパンティストッキング等の生地(ナイロンおよび/またはポリウレタンからなる生地)により構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−292206号公報
【特許文献2】実用新案登録第3165733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなフットカバーの本体部をパンティストッキング等の生地ではなく、さらに履き心地の向上を求めて肌触りの好ましい他の生地であるが強度が劣る生地(たとえば綿およびナイロンからなる生地または絹およびナイロンからなる生地等)で構成する場合もあり得る。しかしながら、綿および絹は化学繊維であるナイロン等に比較して強度が劣るので、特に、爪先部において生地が破れてしまうという問題がある。すなわち、爪先部には足指の爪先端(尖っている場合もある)が直接フットカバーに当接するために、強度の弱い生地ではそこから破れることもあり得るためである。
【0008】
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、綿や絹等を含む生地を用いたことによる履き心地が良いフットカバーであって、爪先部から破れることもなく、さらに、製造工数が大幅に増えることもないために安価に製造できる、フットカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るフットカバーは以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係るフットカバーは、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、伸縮性編地で編成された、足底部、側辺部、踵部および前記爪先を覆う爪先部で形成され、前記足底部に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部を設け、前記爪先部が他の部分よりも強くなるように、前記爪先部に補強部が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフットカバーによれば、綿や絹等を含む生地を用いたことによる履き心地が良いフットカバーであって、爪先部から破れることもなく、さらに、製造工数が大幅に増えることもないために安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係るフットカバーの全体斜視図である。
図2図1の爪先部拡大図である。
図3図1のフットカバーを裏返した斜視図である。
図4図3の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るフットカバーを、図面に基づき詳しく説明する。なお、フットカバーの構造には様々なものがあり、本発明は特定の構造に限定されるものではなく、後述する特徴を備えたものであれば、どのようなフットカバーの構造であっても、フットカバーを構成する生地の種類、生地の型紙およびその縫製がどのようなものであっても構わない。そのため、以下に示すフットカバーの構造自体は単なる例示でしかない。なお、このフットカバーは1以上の生地片(パーツ)から形成され、いずれの生地も伸縮性を備えた編地である。
【0013】
図1図4に本発明の実施の形態に係るフットカバー100を示す。図1はフットカバー100を着用した場合の全体斜視図であって、図2図1の爪先部の拡大図であつて、図3はフットカバー100を裏返した斜視図であって、図4図3の側面図である。図3および図4は着用者の足Fにフットカバー100を着用している状態(ただし裏返し)を想定している。すなわち、本発明の実施の形態に係るフットカバー100は、伸縮性生地で形成されているために、このように想定して図示しない場合には縮んだ状態となり、形状を理解することが困難なため、上述のように想定している。
【0014】
このフットカバー100は、着用者の足Fの爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーである。このフットカバー100は、補強部としての補強生地120(詳しくは後述する)を除いてまたは含めて、薄手の伸縮性生地(後述するように綿およびナイロンからなる生地または絹およびナイロンからなる生地等)で形成されている。また、このフットカバー100は、着用時にパンプスから露出することのないよう履き口である開口部が大きくカットされて形成されている。
【0015】
このフットカバー100は、爪先部102、足底部104、側辺部106および踵部108で形成されている。そして、足底部104に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部が設けられている。開口部は、爪先部102の上部、側辺部106の上部および踵部108の上部で形成されることになる。このフットカバー100は、たとえば、1枚の生地を、縫着線112で縫い合わせて爪先部102を立体的に形成し、縫着線118で縫い合わせて踵部108を立体的に形成し、側辺部106の上部と踵部108の上部と爪先部102の上部とを縫着線116で縫製して一体化している。
【0016】
縫着線112および縫着線118は、その生地端部が解けてこないように端部処理され、端部処理が裏側(肌側)に出るように縫着される。縫着線116は、その生地端部が解けてこないように、生地端部が縫着線116の内部に巻き込まれるようにヘム処理されている。
このように、このフットカバー100においては、足底部104に対して上下反対側に
足を出し入れするための開口部が、爪先部102の上部、側辺部106の上部および踵部108の上部に形成された縫着線116により形成されている。
【0017】
この開口部を形成する縫着線116は、たとえば、ゴム糸を挿入してダブルウエルトに編成され、それに続いて一体的に編成される縫着線116以外の部分(爪先部102、側辺部106および踵部108の上方部以外)は、この縫着線116よりも伸縮性が弱い編地(編糸および編み組織)で形成されており、縫着線116は、他の部分よりも伸縮性が強く、締め付ける力が強い。
【0018】
このように伸縮性を変化させて、かつ、一体的に編成することは、編み糸および/または編地を変化させることにより実現することができる。また、このように、編糸および/または編み組織を変化させることにより、爪先部102、側辺部106および踵部108において、上方部である縫着線116とそれ以外の部分との伸縮性を変化させて(伸縮性(緊締力)が上方部で強くそれ以外で弱く)一体として編成しているが、平ゴム等の伸縮性細幅生地を、フットカバー100の開口部の生地に、熱プレス装置で接合するようにしても構わない。
【0019】
いずれにしても、伸縮性の高い開口部を形成することにより、履きやすく脱げにくいフットカバー100を実現することができる。
そして、このフットカバー100において特徴的であるのは、爪先部102が他の部分よりも強くなるように、補強部として補強生地120を設けることにより爪先部102が補強されていることである。なお、この補強生地120を除いてまたは含めて、このフットカバー100は、履き心地の良さの観点から、綿およびナイロンからなる生地または絹およびナイロンからなる生地等で構成されている。補強生地120は、ナイロン製の生地であったり(この場合は異なる生地の二重構造となる)、このフットカバー100と同じ生地(綿およびナイロンからなる生地、絹およびナイロンからなる生地等)であったりする(この場合は同じ生地の二重構造となる)。
【0020】
詳しくは、図2図4に示すように、補強生地120の上側生地120Aで爪先の上側(爪側、足甲側)を覆い、補強生地120の下側生地120Bで爪先の下側(足指裏側)を覆っている。すなわち、爪先の上側(爪側、足甲側)から下側(足指裏側)を爪先を包み込むように、所定の形状(縫着線を避けるような形状であることが好ましい)を備えた1枚の生地である補強生地120を爪先部102に設けている。
【0021】
そして、補強生地120の上側生地120Aの生地端部は縫着線116で爪先部102とともに縫い付けられ、補強生地120のその他の部分は、このフットカバー100の生地と熱プレス装置で接合されている。このように、この補強生地120を設けるための製造工数が大幅に増えることもないために、このフットカバー100を安価に製造することができる。
【0022】
なお、本実施の形態に係るフットカバー100においては、爪先の上側(爪側、足甲側)から下側(足指裏側)を爪先を包み込むように補強生地120を爪先部102に設けているが、本発明は、爪先の上側(爪側、足甲側)および下側(足指裏側)の少なくともいずれかに設けられていれば構わない。
さらに、本実施の形態に係るフットカバー100においては、補強生地120と同じ種類の生地であって、所定の形状(縫着線を避けるような形状であることが好ましい)を備えた1枚の踵補強生地130が足F側(内側)に設けられることにより、踵部108も補強されている。
【0023】
さらに、図示しないが、踵部108における上方部の足F側(内側)には、シリコーン等の薄いシートで形成された踵部滑り止めを設けることも好ましい。これにより、足Fの踵との密着性を高めてフットカバー100が足Fからずれることを防止できる。
さらに、図示しないが、足底部104において、足Fが接する側と反対側(パンプスを履いたときにパンプスの内底に接する側)には、シリコーン等の薄いシートで形成され、足底部滑り止めを設けることも好ましい。これにより、パンプスの内底との密着性を高めてパンプス内におけるフットカバー100の位置がずれることを防止できる。なお、この足底部滑り止めを、花柄模様等で形成することも好ましい。
【0024】
以上のようにして、本実施の形態に係るフットカバーによると、生地の強度が弱い綿や絹を含む生地で形成して履き心地を向上させる際に、少なくとも爪先部を補強したので爪先部が破けることを抑制することができ、履き心地が良く、製造工数が大幅に増えることもないために安価に製造できる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
たとえば、このような変更の一例として、上述した実施の形態においては補強部を補強生地で実現しているが、補強部として補強生地を設けるのではなく、シリコーン等を爪先部102を構成する生地に塗布するようにしても構わない。より具体的には、補強生地120に替えて、補強生地120が設けられる領域に対応する生地の部分にシリコーン等を塗布したり、爪先の上側(爪側、足甲側)および下側(足指裏側)の少なくともいずれかの生地の部分にシリコーン等を塗布したりするものである。さらに、踵補強生地130の領域に対応する生地の部分に、このようなシリコーン等を塗布することにより、踵補強部を設けるようにしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、素足で履くフットカバーに好適であり、履き心地がよく爪先が破れることもなく、製造工数が大幅に増えることもないために安価に製造できる点で、特に好ましい。
【符号の説明】
【0027】
100 フットカバー
102 爪先部
104 足底部
106 側辺部
108 踵部
112、116、118 縫着線
120 補強生地
130 踵補強生地
F 足
図1
図2
図3
図4