特許第6335078号(P6335078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6335078コークス炉炉蓋及びコークス炉炉蓋のプラグ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335078
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】コークス炉炉蓋及びコークス炉炉蓋のプラグ
(51)【国際特許分類】
   C10B 25/06 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   C10B25/06
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-187588(P2014-187588)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-60768(P2016-60768A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小脇 幸男
(72)【発明者】
【氏名】浦田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】横手 孝輔
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−041462(JP,A)
【文献】 特開昭64−033183(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201420064(CN,Y)
【文献】 特開2005−195207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を乾留してコークスを製造するコークス炉のコークス炉炉蓋であって、
断熱ボックスの炉内側に炉高方向に複数個取り付けられるプラグには、上面部及び下面部に炉内側から該プラグの内部方向へ上向きの斜面が形成され、
上記プラグは、炉高方向に隣接するプラグの斜面が重なりを持ちながら隙間を有するとともに、U字状をなし、上記断熱ボックスの側面位置にボルトで取り付けられることを特徴とするコークス炉炉蓋。
【請求項2】
上記プラグは、炉内ガスを取込む炉内側から該プラグの内部方向へ上向きの斜面からなるスリット部を有することを特徴とする請求項1に記載のコークス炉炉蓋。
【請求項3】
上記プラグの先端部には、上記ボルトの頭が埋め込まれるザグリ部が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のコークス炉炉蓋。
【請求項4】
石炭を乾留してコークスを製造するコークス炉のコークス炉炉蓋のプラグであって、
断熱ボックスの炉内側に炉高方向に複数個取り付けられ、上面部及び下面部に炉内側から当該プラグの内部方向へ上向きの斜面が形成され、炉高方向に隣接するプラグの斜面が重なりを持ちながら隙間を有するとともに、U字状をなし、上記断熱ボックスの側面位置にボルトで取り付けられることを特徴とするコークス炉炉蓋のプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭を乾留してコークスを製造するコークス炉に取り付けられるコークス炉炉蓋及びコークス炉炉蓋のプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉は、石炭を乾留してコークスを製造する設備であって、例えば、石炭を装入して乾留する炭化室と、石炭の乾留に要する熱エネルギーを発生する燃焼室を有し、炉団長方向に炭化室と燃焼室が炉壁を介し交互に配置されている。更に、炭化室は、コークス炉の上面部に石炭を装入する装入口が形成され、炉団長方向と直交する炉長方向の端部にそれぞれ開口部が形成され、これらの開口部にそれぞれ炉蓋が取り付けられている。
【0003】
このようなコークス炉は、炉蓋によって端部の開口部が閉塞された状態で装入口から炭化室に石炭が装入された後に、燃焼室によって間接的に加熱して炭化室内の石炭を乾留することでコークスを製造する。そして、コークス炉は、両側の炉蓋を開けて、押出機等によって炭化室内のコークスを一方の開口部から他方の開口部に向けて押し出すことで、コークスを炭化室から外部に取り出す。以上のようにして、コークス炉は、コークスを製造する。
【0004】
また、図11に示すように、コークス炉に用いられる炉蓋110は、例えば、長尺な板状の蓋本体111と、この蓋本体111の炉内側に取り付けられる長尺な筒状の断熱ボックス112と、この断熱ボックス112の炉内側の主面に炉高方向に複数個取り付けられるプラグ113とを備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
蓋本体111は、図示しない開閉駆動機構によって駆動されてコークス炉の端部の開口部を開閉する。断熱ボックス112は、内部に断熱材等を収容することで、炭化室内の熱が外部に放出することを低減する。プラグ113は、内側に折り曲げられた先端の取付片113aが断熱ボックス112の炉内側の主面にボルト115で固定されることで、断熱ボックス112に取り付けられている。更に、プラグ113は、炉高方向に隣接するプラグ113,113間に通気隙間G2が形成されるように、断熱ボックス112に取り付けられている。
【0006】
このような構成を有する炉蓋110は、コークス炉内で発生した炉内ガスが開口部から外部に漏れることを防止することに加え、プラグ113,113間の通気隙間G2を介して、コークス炉内で発生した炉内ガスをプラグ113内に取り込む。これにより、コークス炉は、炉蓋110に作用するガス圧力を低減させることができる。更に、炉蓋110は、例えば、プラグ113内に取り込んだ炉内ガスを外気(空気)と混合させて燃焼することで、炭化室に熱を与える。これにより、炭化室は、炉蓋110付近であっても充分な乾留温度が得られ、良好なコークスを製造することができる。
【0007】
しかしながら、炉蓋110のプラグ113は、通気隙間G2を有するように断熱ボックス112に取り付けられているので、例えば、炭化室の装入口から石炭が装入される際に、通気隙間G2からプラグ113内に石炭が入り込み、炉蓋110の下部に堆積してしまう。すると、炉蓋110は、堆積した石炭によって、プラグ113内に取り込んだ炉内ガスと外気(空気)との反応が妨げられて、プラグ113内での炉内ガスの燃焼効率が低下する虞がある。
【0008】
特許文献1の炉蓋110では、石炭によって通気隙間G2が閉塞しないように、プラグ113の上面を傾斜形状に形成して通気隙間G2を拡張している。しかしながら、特許文献1の炉蓋110では、プラグ113の上面を傾斜形状に形成して通気隙間G2を拡張しているので、石炭によって通気隙間G2が閉塞しないが、プラグ113内に石炭がより侵入し易くなり、炉蓋110の下部に堆積し易くなっている。また、現在国内のコークス炉で多く用いられている調湿炭は、石炭からコークスになるまでに必要なエネルギーを抑制するために、予め水分量が少なくなっており、流動性が大きくなっているため、プラグ113内に石炭がより侵入し易く、炉蓋110の下部に堆積し易くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−28465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、プラグ内への石炭の侵入を防止して、プラグ内での炉内ガスの燃焼効率の向上を図ることが可能なコークス炉炉蓋及びコークス炉炉蓋のプラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るコークス炉炉蓋は、石炭を乾留してコークスを製造するコークス炉のコークス炉炉蓋であって、断熱ボックスの炉内側に炉高方向に複数個取り付けられるプラグには、上面部及び下面部に炉内側から該プラグの内部方向へ上向きの斜面が形成され、上記プラグは、炉高方向に隣接するプラグの斜面が重なりを持ちながら隙間を有するとともに、U字状をなし、上記断熱ボックスの側面位置にボルトで取り付けられることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るコークス炉炉蓋のプラグは、石炭を乾留してコークスを製造するコークス炉のコークス炉炉蓋のプラグであって、断熱ボックスの炉内側に炉高方向に複数個取り付けられ、上面部及び下面部に炉内側から当該プラグの内部方向へ上向きの斜面が形成され、炉高方向に隣接するプラグの斜面が重なりを持ちながら隙間を有するとともに、U字状をなし、上記断熱ボックスの側面位置にボルトで取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、プラグの上面部及び下面部に炉内側からプラグの内部方向へ上向きの斜面が形成され、このようなプラグが、炉高方向に隣接するプラグの斜面が所定の重なりを持ちながら所定の隙間を有するとともに、U字状をなし、断熱ボックスの炉内側の側面位置に、ボルトで炉高方向に複数個取り付けられている。したがって、本発明によれば、コークス炉内で発生した炉内ガスをプラグ内に取り込みつつも、プラグ内への石炭の侵入を防止することができ、プラグ内での炉内ガスの燃焼効率の向上を図ることができる。また、プラグ内での炉内ガスの燃焼効率が向上してプラグへの熱負荷が増し、プラグがより熱変形し易くなっても、ボルトの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】コークス炉を示した要部側面断面図である。
図2】コークス炉を示した要部平面断面図である。
図3】コークス炉炉蓋を示した斜視図である。
図4】プラグを示した上方斜視図である。
図5】プラグを示した下方斜視図である。
図6】プラグを示した側面断面図である。
図7】プラグを示した背面断面図である。
図8】コークス炉炉蓋を示した側面断面図である。
図9】コークス炉炉蓋のプラグ間を示した要部拡大側面断面図である。
図10】プラグの変形例を示した側面図である。
図11】従来のコークス炉炉蓋を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用したコークス炉炉蓋及びコークス炉炉蓋のプラグについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
【0016】
先ず、本発明を適用したコークス炉炉蓋が用いられるコークス炉について説明する。なお、以下、コークス炉炉蓋について、単に、炉蓋とも言う。
【0017】
図1及び図2に示すように、コークス炉1は、石炭を乾留してコークスを製造する設備であって、例えば、石炭を装入して乾留する炭化室2と、石炭の乾留に要する熱エネルギーを発生する燃焼室(不図示)とを有し、炉団長方向に炭化室2と燃焼室とが炉壁を介し交互に配置されている。更に、炭化室2は、上面部2aに石炭を装入する装入口2bが形成され、炉団長方向と直交する炉長方向の端部にそれぞれ開口部2cが形成され、これらの開口部2cにそれぞれ炉蓋10が取り付けられている。
【0018】
このようなコークス炉1は、炉蓋10によって端部の開口部2cが閉塞された状態で装入口2bから炭化室2に石炭が装入された後に、燃焼室によって間接的に加熱して炭化室2内の石炭を乾留することでコークスを製造する。そして、コークス炉1は、両側の炉蓋10を開けて、押出機等によって炭化室2内のコークスを一方の開口部2cから他方の開口部2cに向けて押し出すことで、コークスを炭化室2から外部に取り出す。以上のようにして、コークス炉1は、コークスを製造する。
【0019】
炉蓋10は、図2及び図3に示すように、例えば、長尺な板状の蓋本体11と、蓋本体11の炉内側に取り付けられた長尺な筒状の断熱ボックス12と、断熱ボックス12の炉内側に炉高方向に複数個取り付けられた平面視略U字状のプラグ13とを備えている。この炉蓋10は、断熱ボックス12とプラグ13との間に中空構造を有し、中空構造のプラグ13内にコークス炉1内で発生した炉内ガスを取り込み、プラグ13内に取り込んだ炉内ガスと外気(空気)と混合させて燃焼させることが可能な中空燃焼式の炉蓋である。
【0020】
蓋本体11は、図2及び図3に示すように、例えば、コークス炉1の開口部2cと略同じ形状でやや大きな長尺な板部材で構成されている。更に、蓋本体11は、シール部材21(図3参照)を介して開口部2cを閉塞することで、炭化室2内で発生した炉内ガス等が開口部2cから外部に漏れることを防止する。更に、蓋本体11は、図示しない開閉駆動機構によって駆動されて、コークス炉1の開口部2cを開閉する。
【0021】
断熱ボックス12は、図2及び図3に示すように、長尺な筒部材で構成されている。更に、断熱ボックス12は、蓋本体11の炉内側の主面に炉高方向に向けて直線状に並べて複数個取り付けられている。更に、断熱ボックス12は、内部にグラスウール等の断熱材(不図示)を収容することで、炭化室2内の熱が外部に放出することを低減する。
【0022】
また、断熱ボックス12の側面部には、図2及び図3に示すように、プラグ13が取り付けられる凹状の取付凹部14が形成されている。この取付凹部14は、プラグ13が側面部に取り付けられた際に断熱ボックス12の側面部とプラグ13とが面一となるように設けられている。更に、取付凹部14には、プラグ13を断熱ボックス12に固定するためのボルト15が螺合されるネジ孔16が形成されている。
【0023】
一例として、断熱ボックス12は、蓋本体11の炉内側の主面に炉高方向に向けて直線状に並べて7個取り付けられている。更に、断熱ボックス12の側面部には、平面視略U字状のプラグ13がそれぞれ炉高方向に7個ずつ取り付けられている。なお、上述した断熱ボックス12の個数、隙間の大きさ及び1つの断熱ボックス12に取り付けられるプラグ13の個数等は一例であって、これに限定されるものではなく、適宜変更可能である。更に、長さが異なる断熱ボックス12を蓋本体11に取り付けるようにしても良い。
【0024】
プラグ13は、図4に示すように、平面視略U字状の板部材で構成されており、一対の取付片13a,13aとこれらの一対の取付片13a,13aを連結する連結部13bとを有している。更に、プラグ13は、例えば耐熱鋳鋼製の金物で製作されている。
【0025】
また、プラグ13の上面には、図4図6及び図7に示すように、第1の斜面部17が形成されている。この第1の斜面部17は、プラグ13の上面の石炭等と接する炉内側(外面側)に形成されている。更に、第1の斜面部17は、炉外側の面(内面)となす角が鋭角となるように形成されている。また、図5図7に示すように、プラグ13の下面には、第2の斜面部18が形成されている。この第2の斜面部18は、プラグ13の下面の炉外側(内面側)に形成されている。更に、第2の斜面部18は、炉内側の面(外面)となす角が鋭角となるように形成されている。更に、第2の斜面部18は、第1の斜面部17と略平行となるように形成されている。
【0026】
一例として、第1の斜面部17及び第2の斜面部18は、鋳物で製作可能であって、現在国内のコークス炉で多く用いられている水分量が2%〜6%の石炭が堆積せずに落ちる安息角以上の20度〜50度程度傾斜するように形成されている。なお、上述した角度は、一例であってこれに限定されるものではなく、コークス炉1の操業条件等に応じて適宜変更可能である。
【0027】
また、図2図4に示すように、プラグ13の取付片13aの先端近傍の外面部には、ザグリ部19が形成されている。このザグリ部19には、プラグ13を断熱ボックス12に固定するボルト15が挿入されると共にボルト15の頭がプラグ13から突出しないように埋め込まれる。一例として、ザグリ部19は、1つの取付片13aにそれぞれ2個形成されている。なお、上述したザグリ部19の個数は、一例であってこれに限定されるものではなく、プラグ13の大きさ等によって適宜変更可能である。
【0028】
また、図4及び図6に示すように、プラグ13の取付片13aには、スリット部20が形成されている。このスリット部20は、例えば、長孔形状の貫通口である。更に、スリット部20は、図6及び図7に示すように、プラグ13の外面から内面に向かうに連れてプラグ13の上面に近接するように、外面(内面)の垂直(面直)方向に対してプラグ13の上面側に傾斜して形成されている。更に、スリット部20は、側面視した際に外部からプラグ13内が見えないように、プラグ13の上面側の傾斜面と下面側の傾斜面とが重なり代を有するように形成されている。このようなスリット部20は、図2に示すように、プラグ13が断熱ボックス12と共に炭化室2の炉壁2dと近接させて形成されているので、コークス炉1内で発生した炉内ガスだけをプラグ13内に取り込むことができる。また、スリット部20は、傾斜して形成されているので、スリット部20からプラグ13内に石炭が侵入することを防止できる。なお、スリット部20は、長孔形状に限定されるものではなく、コークス炉1内で発生した炉内ガスをプラグ13内に取り込むことができれば良く、矩形状又は多角形状等、如何なる形状であっても良い。更に、スリット部20は、コークス炉1内で発生した炉内ガスをプラグ13内に取り込むことができれば良く、プラグ13の上面側の傾斜面と下面側の傾斜面とが重ならないように形成されるようにしても良く、外面(内面)の垂直(面直)方向に対して平行に形成されるようにしても良い。
【0029】
このようなプラグ13は、図3及び図8に示すように、断熱ボックス12の炉内側に炉高方向に向けて複数個取り付けられている。この際、プラグ13は、図2に示すように、取付片13aが断熱ボックス12の側面部の取付凹部14に収納されてこの取付凹部14に外側からボルトで固定されることで、断熱ボックス12に取り付けられている。更に、プラグ13は、図9に示すように、炉高方向に隣接するプラグ13,13の第1の斜面部17と第2の斜面部18とが所定の重なり代Lを持ちながら所定の通気隙間G1を有するように、断熱ボックス12に取り付けられている。すなわち、プラグ13は、第1の斜面部17と第2の斜面部18とが重なっているので、正面視又は側面視した際に、外部からプラグ13内が見えないように設けられている。
【0030】
一例として、通気隙間G1は、3mm〜10mm度程に設けられる。通気隙間G1が3mm未満の場合には、石炭がプラグ13内に侵入し難くなるが、燃焼に必要な炉内ガスも同時に侵入し難くなる。その一方で、通気隙間G1が10mmを超えた場合には、石炭と炉内ガス共にプラグ13内に侵入し易くなる。なお、上述した隙間の大きさは、一例であってこれに限定されるものではなく、コークス炉1の操業条件等に応じて適宜変更可能である。
【0031】
以上のように、炉蓋10は、図9に示すように、上面部に第1の斜面部17が形成されて下面部に第2の斜面部18が形成されたプラグ13が、炉高方向に隣接するプラグ13,13の第1の斜面部17と第2の斜面部18とが所定の重なり代Lを持ちながら通気隙間G1を有するように、断熱ボックス12に取り付けられている。したがって、炉蓋10は、石炭やコークス炉1内で発生した炉内ガス等が開口部2cから外部に漏れることを防止できることに加え、例えば炭化室2の装入口2bから石炭が装入される際などに、プラグ13内に石炭が入り込み、石炭が炉蓋10の下部に堆積することを防止できる。更に、炉蓋10は、プラグ13の第1の斜面部17と第2の斜面部18との間の通気隙間G1を介して、コークス炉1内で発生した炉内ガスをプラグ13内に取り込み、炉蓋10に作用するガス圧力を低減させることができる。
【0032】
また、炉蓋10は、プラグ13の第1の斜面部17と第2の斜面部18との間の通気隙間G1を介して、コークス炉1内で発生した炉内ガスをプラグ13内に取り込むことができるので、プラグ13内に取り込んだ炉内ガスを外気(空気)と混合させて燃焼することで、炭化室2の幅方向(炉蓋10側)からも炭化室2に熱を与えることができる。したがって、炭化室2は、炉蓋10付近であっても充分な乾留温度が得られる。よって、コークス炉1は、均一且つ良好なコークスを製造することができる。
【0033】
また、炉蓋10は、プラグ13内の石炭の侵入を防止することができるので、炉蓋10の下部に堆積した石炭が燃焼して、プラグ13内に取り込んだ炉内ガスと外気(空気)との燃焼の妨げとなり、プラグ13内での炉内ガスの燃焼効率が低下することを防止することができ、プラグ13内での炉内ガスの燃焼効率の向上を図ることができる。更に、炉蓋10は、プラグ13内に石炭が入り込み、石炭が炉蓋10の下部に堆積することを防止することができるので、プラグ13内に取り込んだ炉内ガスと外気(空気)との炉高方向の燃焼をより均一化することができ、コークスの品質を向上させることができる。
【0034】
また、図11に示すように、従来の炉蓋110では、内側に折り曲げられた先端の取付片113aが断熱ボックス112の炉内側の主面にボルト115で固定されてプラグ113が断面ボックス112に取り付けられているので、プラグ113が熱膨張して図11中の矢印W2のようにプラグ113の先端が外側に開いた場合、ボルト115にせん断力が作用する。これに対して、炉蓋10では、図2に示すように、U字状のプラグ13が断熱ボックスの側面位置に外側からボルトで取り付けられているので、プラグ13が熱膨張して図2中の矢印W1のようにプラグ13の取付片13aが外側に開いた場合、ボルト15に引張力が作用する。一般的にボルトは、せん断力よりも引張力に強い。したがって、炉蓋10は、プラグ13内の石炭の侵入を防止することでプラグ13内での炉内ガスの燃焼効率が向上してプラグ13への熱負荷が増してプラグ13がより熱変形し易くなっても、ボルト15の破損を防止することができる。更に、炉蓋10は、図11に示すように、従来のプラグ113のようにボルト115がプラグ113内に配置されるのではなく、図2に示すように、プラグ13外に配置されるので、燃焼時にボルト15が火炎にさらされることがなく、ボルト15の破損を防止することができる。
【0035】
また、炉蓋10は、図2に示すように、プラグ13にボルト15の頭を埋め込むザグリ部19が形成され、ボルト15の頭がプラグ13から突出せずにザグリ部19内に埋め込まれるので、U字状のプラグ13を断熱ボックス12の側面位置に外側からボルト15で取り付けても、ボルト15と炉壁2dとの干渉を防止することができ、デッドゾーンを少なくすることができる。
【0036】
更に、炉蓋10は、ボルト15の頭がザグリ部19内に埋め込まれるので、プラグ13を断熱ボックス12の側面位置に外側からボルト15で取り付けるものであっても、断熱ボックス12及びプラグ13を炉壁2dに近接させて設けることができる。一例として、断熱ボックス12及びプラグ13は、炉壁2dとの間に20mm〜30mm程度の隙間を有するように、近接させて設けることができる。したがって、炉蓋10は、石炭装入時にプラグ13と炉壁2dの間に流れ込む石炭量を低減することができ、炉蓋開時にコークスが崩れることを防ぐことができる。
【0037】
また、炉蓋10は、図2に示すように、断熱ボックス12の側面部に取付凹部14が形成され、断熱ボックス12の側面部とプラグ13とが面一となるように設けられているので、単にプラグ13を断熱ボックス12の側面位置に取り付けるものよりも、断熱ボックス12及びプラグ13をより炉壁2dに近接させて設けることができる。したがって、炉蓋10は、石炭装入時にプラグ13と炉壁2dの間に流れ込む石炭量を低減することができ、炉蓋開時にコークスが崩れることを防ぐことができる。
【0038】
なお、炉蓋10は、1つのザグリ部19に1つのボルト15が埋め込まれることに限定されるものではなく、図10に示すように、例えば、複数個のボルト15がまとめて埋め込まれるようにしても良く、少なくとも1つのボルト15が埋め込み可能なザグリ部19を、1つの取付片13aに少なくとも1つ形成するようにする。一例としては、2つのボルト15が埋め込み可能なザグリ部19を、1つの取付片13aに1つ形成する。
【0039】
また、炉蓋10は、図10に示すように、プラグ13の取付片13aにスリット部20を形成しないようにしても良い。これにより、炉蓋10は、プラグ13内の石炭の侵入をより確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 コークス炉、2 炭化室、2a 上面部、2b 装入口、2c 開口部、2d 炉壁、10 炉蓋、11 蓋本体、12 断熱ボックス、13 プラグ、13a 取付片、13b 連結部、14 取付凹部、15 ボルト、16 ネジ孔、17 第1の斜面部、18 第2の斜面部、19 ザグリ部、20 スリット部、21 シール部材、110 炉蓋、111 蓋本体、112 断熱ボックス、113 プラグ、113a 取付片、115 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11