特許第6335088号(P6335088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335088
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】可動片及びブレーカー
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/54 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   H01H37/54 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-202555(P2014-202555)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-72164(P2016-72164A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025140
【氏名又は名称】ボーンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩司
【審査官】 太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−186953(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0049355(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/00−37/56
B21D 22/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属で板状に形成された本体と、
前記本体上に設けられており、熱応動素子の変形状態に応じて固定接点に対して接離する可動接点と、
前記熱応動素子と点接触する頂点を具備し、前記本体上において前記可動接点から所定距離離間して前記頂点が位置するように前記本体の一部を突出させて形成された凸部とを備え、
前記凸部を当該凸部の突出方向から見た場合に、前記頂点と前記凸部の外縁において前記可動接点に最も近い点である近接点との間の寸法である内側寸法が、前記頂点と前記凸部の外縁において当該頂点から最も遠い点である最遠点との間の寸法である外側寸法よりも小さくなるように前記凸部が形成されていることを特徴とする可動片。
【請求項2】
前記凸部の外縁が、前記近接点を含む接点側外縁部と、前記最遠点を含む反接点側外縁部とからなり、
前記凸部を当該凸部の突出方向から見た場合に、前記反接点側外縁部が前記頂点を中心とする部分円状に形成されており、前記接点側外縁部が前記反接点側外縁部よりも前記頂点側に近づけて形成されている請求項1記載の可動片。
【請求項3】
前記接点側外縁部が、前記反接点側外縁部の2つの端点を結ぶ直線として形成されている請求項2記載の可動片。
【請求項4】
前記凸部が、前記可動接点に対して対向するとともに前記本体に対して起立する起立平面部と、前記起立平面に対して前記可動接点とは反対側に形成された部分球状部とからなる請求項1乃至3いずれかに記載の可動片。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載の可動片と、
前記熱応動素子と、前記固定接点とを具備するブレーカー。
【請求項6】
前記熱応動素子、前記固定接点、前記可動片の少なくとも前記可動接点及び前記凸部が内部に収容されるケースをさらに具備し、
前記ケースが、縦4mm以下、横6mm以下、高さ1.5mm以下である請求項5記載のブレーカー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器内に設けられるブレーカー及びブレーカーに用いられる可動片に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気機器内に設けられる小型のブレーカー1Aは、図5に示すように固定接点23Aが形成された固定片2Aと、バイメタルで形成された熱応動素子5Aと、前記熱応動素子5Aの変形により先端部に形成された可動接点43Aが固定接点23Aに対して接離される可動片4Aとを備えている(特許文献1及び2を参照)。
【0003】
より具体的には、前記可動片4Aは、銅で形成された板状の本体4BAと、前記本体4BAの先端に設けられた銀で形成された可動接点43Aと、前記可動接点43Aの近傍と前記本体4BAの基端側とに形成された2つの凸部44A、45Aを備えたものである。これらの凸部44A、45Aは部分球状に突出したものであり、前記熱応動素子5Aの外縁部と点接触するように取り付けられる。
【0004】
また、図6(a)に示すように前記可動片4Aを形成するための母材Mは、帯状の銅板M1と、前記銅板M1の片端部に一本の直線状の銀線M2が取り付けられたものであり、図6(b)に示すようにこの母材Mを打ち抜き加工して帯状の銅板M1部分が前記本体4BAとして形成され、前記銀線M2が可動接点43Aとなる。さらに、前記本体4BAに対して先端が球面状のピンを具備する金型により前記本体4BAを押し出し加工することで、前記凸部44Aが本体4BAから突出させて形成される。
【0005】
ところで、前記ブレーカー1A全体を小型化しつつ、所定の温度条件で迅速に動作する当該ブレーカー1Aとしての温度特性を従来と略同じに保とうとすると、前記熱応動素子5Aの大きさや前記可動片4Aの各凸部44A、45A間の離間寸法を小さくするのには限界がある。このため、小型化に対応するために前記可動片4Aが小さく形成されるようになると、前記可動接点43Aと当該可動接点43A側の凸部44Aとの間の距離は小さくなっていくことになる。
【0006】
しかしながら、前記母材Mの銀線M2は製造上の誤差により蛇行しているので、前記可動接点43Aと前記凸部44Aとの離間距離が小さくなると、前記本体4BAにおいて前記凸部44Aが形成される位置に銀線M2の一部が掛かってしまうことがある。このような状態で前記凸部44Aを形成するための押し出し加工が行われると、凸部44Aを形成するピンが可動接点43Aを踏んでしまうことがある。このようなピンの接点踏みが発生すると、可動接点43Aはピンを曲げ得る硬い金属であるとともに、凸部44Aを小さくするためにピンの直径も小さく形成されているので、ピンが欠けてしまい、金型の交換等の段取り替えが発生し、可動片4Aの生産性が大きく損なわれてしまう。また、仮にピンに損傷がなかったとしても、凸部44Aが明瞭な球状に形成されていないことがあり、可動片4Aと熱応動素子5Aの接触状態が設計値からずれてしまい、所望の温度特性を実現できない虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2011/105175号公報
【特許文献2】特許3413167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、小型化により凸部と可動接点との離間寸法が小さくなったとしても、凸部の形成時においてピンによる接点踏みが発生するのを防ぐことができる可動片を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の可動片は、金属で板状に形成された本体と、前記本体上に設けられており、熱応動素子の変形状態に応じて固定接点に対して接離する可動接点と、前記熱応動素子と点接触する頂点を具備し、前記本体上において前記可動接点から所定距離離間して前記頂点が位置するように前記本体の一部を突出させて形成された凸部とを備え、前記凸部を当該凸部の突出方向から見た場合に、前記頂点と前記凸部の外縁において前記可動接点に最も近い点である近接点との間の寸法である内側寸法が、前記頂点と前記凸部の外縁において当該頂点から最も遠い点である最遠点との間の寸法である外側寸法よりも小さくなるように前記凸部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、前記凸部を当該凸部の突出方向から見た場合に、前記頂点と前記凸部の外縁において前記可動接点に最も近い点である近接点との間の寸法である内側寸法が、前記頂点と前記凸部の外縁において当該頂点から最も遠い点である最遠点との間の寸法である外側寸法よりも小さくなるように前記凸部が形成されているので、前記可動接点と前記凸部の頂点を近接させて前記本体の一部を突出させて前記凸部を形成したとしても、前記凸部の外縁をできる限り前記可動接点から離して形成することができる。
【0011】
したがって、製造誤差によって前記本体における前記可動接点の位置がずれてしまったとしても、前記凸部を前記本体から突出させる例えば金型を用いた押し出し加工を行う際に前記凸部を押し出すための金型のピンが可動接点を踏んでしまうのを防ぎやすい。
【0012】
このことから前記凸部の寸法が小さいために前記ピンの径も小さく割れやすいものであったとしても、可動接点を踏んで割れてしまうことを防ぎ、金型の耐久性と前記可動片の生産性を高いものにすることができる。
【0013】
また、前記本体における前記凸部の頂点の位置については、従来のものと同じ位置に設定することができるので、前記可動片と熱応動素子との接触状態については従来のものと比較してほとんど変わっておらず、ひいては、ブレーカーとして構成された場合の温度特性も従来と略同等のものにすることができる。
【0014】
前記凸部を押し出す加工を行うための金型のピンを例えば旋盤により加工容易な円筒形状、球面形状等の基本的な形状からわずかに加工するだけで、前記凸部の押し出し加工に必要な形状を作れるようにし、金型の製作コスト下げつつ、その精度と強度を高いものにできるようにするには、前記凸部の外縁が、前記近接点を含む接点側外縁部と、前記最遠点を含む反接点側外縁部とからなり、前記凸部を当該凸部の突出方向から見た場合に、前記反接点側外縁部が前記頂点を中心とする部分円状に形成されており、前記接点側外縁部が前記反接点側外縁部よりも前記頂点側に近づけて形成されていればよい。
【0015】
前記可動接点と前記凸部の外縁との離間距離をできるだけ大きくしつつ、当該凸部を押し出す加工をするためのピンの形状を簡単にして、高精度で高強度なものにできるようにするには、前記接点側外縁部が、前記反接点側外縁部の2つの端点を結ぶ直線として形成されているものであればよい。
【0016】
前記凸部の頂点を明確に形成して、例えばブレーカーとして用いられる際の温度特性が所望のものとなりやすいようにしつつ、前記凸部の外縁と前記可動接点との離間距離を大きくし、ピンが可動接点を踏むのを避けられるようにするには、前記凸部が、前記可動接点に対して対向するとともに前記本体に対して起立する起立平面部と、前記起立平面に対して前記可動接点とは反対側に形成された部分球状部とからなるものであればよい。
【0017】
本発明の可動片と、前記熱応動素子と、前記固定接点とを具備するブレーカーであれば、小型であり、かつ、好ましい温度特性を有しつつ、高い生産性を実現することができる。
【0018】
本発明の可動片によって理想的な温度特性を有しつつ、小型かつ生産性の高いブレーカーを実現できるようにするには、前記熱応動素子、前記固定接点、前記可動片の少なくとも前記可動接点及び前記凸部が内部に収容されるケースをさらに具備し、前記ケースが、縦4mm以下、横6mm以下、高さ1.5mm以下であればよい。
【発明の効果】
【0019】
このように本発明の可動片であれば、従来のように部分球状ではなく、前記凸部を当該凸部の突出方向から見た場合に、前記頂点と前記凸部の外縁において前記可動接点に最も近い点である近接点との間の寸法である内側寸法が、前記頂点と前記凸部の外縁において当該頂点から最も遠い点である最遠点との間の寸法である外側寸法よりも小さくなるように前記凸部が形成されているので、前記凸部の前記可動接点側の外縁をできる限り前記可動接点から遠ざけることができる。したがって、前記凸部の頂点と前記可動接点の離間距離が小さくても凸部を押し出し加工するための金型のピンが前記可動接点を踏んでしまい、破損したり、凸部の形状が不明瞭になりブレーカーとしての温度特性に誤差が生じたりすることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る可動片及び当該可動片を用いたブレーカーを示す模式的斜視図。
図2】同実施形態におけるブレーカーの動作及び内部構造を示す模式的断面図。
図3】同実施形態における可動片と従来の可動片との模式的比較図。
図4】本発明の別の実施形態に係る可動片を示す模式図。
図5】従来のブレーカー及び可動片を示す模式的断面図。
図6】可動片を形成するための母材及び打ち抜き加工後の母材を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係る可動片及び当該可動片を用いたブレーカーについて各図を参照しながら説明する。
【0022】
本発明の一実施形態に係るスイッチについて各図を参照しながら説明する。本実施形態のスイッチは、熱応動素子5を用いたブレーカー1であって、例えばモバイルパソコン、タブレット端末、スマートフォン等の小型の電気機器に用いられる二次電池(バッテリー)において温度上昇が発生した場合や過度の電流が流れた場合にその温度変化に基づいて電流を遮断するように構成したものである。また、このブレーカー1の保護対象は上述した各電気機器に限られるものではなく、例えば小型モータ等の保護回路としても用いられる。
【0023】
図1及び図2に示すように、本実施形態のブレーカー1は、概略扁平直方体形状のケース7内に所定条件時に電流を遮断するためのスイッチング機構Sを収容したものである。前記スイッチング機構Sと他の電気素子や回路と接続するための2つの端子は、ケース7のそれぞれ対向する面から外部へと露出させてある。
【0024】
加えて、このケース7は、縦4mm以下、横6mm以下、高さ1.5mm以下となるように形成してある。すなわち、このケース7に収容されるスイッチング機構Sを構成する各部品についてもその外形寸法はこれらの寸法よりも小さく形成されることになる。
【0025】
図1の分解斜視図及び図2の断面図に示すように、前記ケース7は概略箱状に形成されたベース71と、前記ベース71の開口の蓋をする板状のカバー72とから構成してある。前記ベース71と前記カバー72との間には前記スイッチング機構Sを構成する先端部21に固定接点23が形成された固定片2、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタ6、バイメタルで形成された温度変化に伴って変形する熱応動素子5、先端側に可動接点43が形成された可動片4が順番に収容してある。
【0026】
前記固定片2は、固定接点23が形成された先端部21が前記ケース7内で前記ベース71に固定され、基端部22が前記ケース7外に露出する金属片である。本実施形態では、前記固定片2の先端部21の下面及び周囲を覆うようにインサート成型により前記ベース71が形成されて一体化してある。
【0027】
前記可動片4は、板状の金属を概略弓状に湾曲させた本体4Bと、前記本体4Bの先端側に形成された可動接点43と、を具備するものであり、前記本体4Bは、可動接点43が設けられており、前記ケース7内に収容される可動部41と、前記ケース7外に露出される端子部42と、からなる。また、前記固定片2の基端部22と前記可動片4の端子部42はそれぞれが前記ケース7の対向面から外部へ露出するように配置してある。この基端部22又は端子部42は、例えば他の電気素子や回路基板の端子、電池のタブリードと溶接等により接続される。
【0028】
さらに、前記可動片4は可動部41において前記可動接点43の近傍に配置された第1の凸部44と、ベース71の内壁近傍に配置される第2の凸部45とを備えている。前記第1の凸部44及び前記第2の凸部45はそれぞれ前記本体4Bを押し出し加工により、前記可動接点43が設けられている側へと弓状隆起に又は半抜き状に押し出して形成したものである。前記第1の凸部44及び前記第2の凸部45はそれぞれの頂点で前記熱応動素子5の先端側及び基端側の外縁部とブレーカー1の動作時に点接触するように設けてある。より具体的には、前記第1の凸部44と前記第2の凸部45は前記熱応動素子5上において端同士に最も離れて配置されるようにしてあり、前記熱応動素子5の動作時の変形による前記可動接点43の持ち上げ量ができる限り大きくなるようにしてある。この第1の凸部44の形状に関する特徴については後述する。
【0029】
図2(a)は通常の通電時におけるブレーカー1を示すものであって、前記熱応動素子5は初期形状を維持し、前記カバー72側へ凸となるように湾曲した形状となっている。この状態では、前記固定片2の先端部21に形成された固定接点23と、前記可動片4の先端側の可動部41に形成された可動接点43とが接触して前記可動片4から前記固定片2を通ってほとんどの電流が流れることになる。
【0030】
一方、図2(b)は過電流状態や異常時におけるブレーカー1を示すものである。過電流又は高温状態となると動作温度に達した前記熱応動素子5は逆反りして前記ベース71側へ凸となるように湾曲した形状へ変形する。この状態では固定接点23と可動接点43は離間した状態となり、電流は前記可動片4から前記固定片2へと直接流れないように遮断される。すなわち、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスタ6、固定片2を介して微小な漏れ電流しか流れず、実質的に電流が遮断されることになる。漏れ電流は、PTCサーミスタ6の発熱、続いて熱応動素子5への熱移動及び反転動作の継続を引き起こし、自己保持回路が構成される。このようにPTCサーミスタ6によって、実質的な電流の遮断状態が形成されていないと、電流が遮断された後、熱応動素子5が冷却されて元の順反りの形状に戻り、電流が再開されると再び過熱によって逆反りの形状になるといった動作が際限なく繰り返されてしまう。すなわち、本実施形態では前記PTCサーミスタ6が設けてあるので、過熱と冷却が際限なく繰り返されるのを防ぐことができる。
【0031】
このように、前記ケース7の内部に収容されている前記固定片2の先端部21、前記PTCサーミスタ6、前記熱応動素子5、前記可動片4の可動部41によってスイッチング機構Sを構成してある。
【0032】
次に前記可動片4における前記第1の凸部44の形状に関する特徴について詳述する。
【0033】
図1及び図2に示すように前記第2の凸部45は前記本体4Bから部分球状に押し出して形成してあるのに対して、前記第1の凸部44は、部分球の可動接点43側の一部が切り欠かれた形状をなしている。すなわち、前記第1の凸部44は、前記可動接点43に対して対向するとともに前記本体4Bに対して起立する起立平面部UFと、前記起立平面部UFに対して前記可動接点43とは反対側に形成された部分球状部SSとを具備している。
【0034】
より具体的には、前記可動接点43の近傍の拡大図である図3(a)に示すように前記第1の凸部44は、前記熱応動素子5と点接触する頂点TPを有しており、この頂点TPは前記可動接点43から所定距離離間した位置に配置されるようにしてある。ここで、前記第1の凸部44の頂点TPとは前記本体4Bの表面から見て当該第1の凸部44で最も高い点のことを言う。
【0035】
そして、前記第1の凸部44を当該第1の凸部44の突出方向から見た場合に、前記第1の凸部44の外縁Eは、前記第1の凸部44の頂点TPを中心とする真円の一部が切り欠かれ、弦が前記可動接点43側に向いた形状にしてある。言い換えると、前記頂点TPと前記第1の凸部44の外縁Eにおいて前記可動接点43に最も近い点である近接点NPとの間の寸法である内側寸法ISが、前記頂点TPと前記第1の凸部44の外縁Eにおいて当該頂点TPから最も遠い点である最遠点FPとの間の寸法である外側寸法OSよりも小さくなるように前記第1の凸部44を形成している。なお、第1の凸部44の外縁Eとは、前記本体4Bの表面と部分球状部SS及び起立平面部UFとが境界をなす部分のことを言う。
【0036】
さらに前記第1の凸部44の形状について別の表現をすると、前記第1の凸部44を当該第1の凸部44の突出方向から見た場合に、前記最遠点FPを含む反接点側外縁部OEが前記頂点TPを中心とする部分円状に形成されており、前記近接点NPを含む接点側外縁部IEが前記反接点側外縁部OEよりも前記頂点TP側に近づけて形成してある。本実施形態では、前記接点側外縁部IEは、前記反接点側外縁部OEの2つの端点を結ぶ直線として形成してあり、前記可動接点43に対して平行となるように形成してある。
【0037】
このように前記第1の凸部44が部分球状ではなく、前記可動接点43側が切り欠かれた形状を有していることによる効果について、従来の部分球状に形成された凸部と比較しながら説明する。
【0038】
図3(b)では、本実施形態の可動片4と、本実施形態における第1の凸部44の頂点TPと同じ位置を中心として凸部44Aが形成された従来の可動片4Aとを比較しており、いずれの可動片4、4Aにおいても可動接点43、43Aが製造上の誤差により設計上の位置から凸部44、44A側へと同じ距離でずれて配置された場合を示している。
【0039】
本実施形態の可動片4では、前記第1の凸部44の接点側外縁部IEは頂点TP側へと逃げているので、前記可動接点43の位置がずれたとしても前記第1の凸部44が形成される位置に当該可動接点43が到達せず、前記第1の凸部44を押し出し加工する際に可動片4を挟持する金型のピンが前記可動接点43を踏むことはない。
【0040】
一方、従来の可動片4Aの場合、凸部44Aが半球状に形成されているので、可動接点43Aの位置がずれてしまった場合、可動接点43Aが凸部44Aの接点側外縁部が形成される位置にかかってしまう。したがって、凸部44Aが形成される際に金型のピンが可動接点43Aを踏んでしまい、ピンが損傷してしまう可能性がある。
【0041】
以上の比較から分かるように、本実施形態における可動片4の第1の凸部44は、前記頂点TPを前記可動接点43側に近づけて、可動片4及びブレーカー1全体を小型化しているが、前記可動接点43側の外縁Eの一部が切り欠かれるように形成してあるので、前記可動接点43の位置ずれによる金型のピンの接点踏みが生じにくい。したがって、押し出し加工時において金型の損傷が従来よりも生じにくく、可動片4及びブレーカー1の生産性を高めることができる。
【0042】
逆に言うと、生産性を考慮した場合でも公差を大きくとって前記第1の凸部44の頂点TPを前記可動接点43側へとぎりぎりまで近づけることが可能となるので、前記可動片4及び前記ブレーカー1の小型化を従来よりもさらに実現しやすい。
【0043】
また、前記第1の凸部44は前記可動接点43側において頂点TP以外の部分が切り欠かれているだけであるので、前記第1の凸部44の頂点TPは従来の球状の凸部と略同様に形成できる。したがって、前記第1の凸部44のような形状に形成しても、前記可動片4の前記熱応動素子5に対する接触状態は従来と比較してほとんど変化がなく、ブレーカー1としての温度特性も従来と略同等のものにできる。
【0044】
さらに、前記第1の凸部44は前記可動接点43側を前記起立平面部UFとし、その反対側が前記部分球状部SSにしてあるので、前記第1の凸部44を押し出し成型するためのピンについても複雑な形状にする必要がなく、例えば旋盤により加工容易な円筒形状等の基本的な形状からわずかに加工するだけで作成することができる。より具体的には、ピンの先端部を半球状に加工した後にピンを軸方向に一部切り欠き、前記起立平面部UFを形成するための平面を形成するだけでよい。このため、前記第1の凸部44を形成する箇所を形成するためにわずかな加工を施すだけで良いので、ピンを細くする必要がなく、ピンとしての強度を保つことができるように所定直径以上のものにすることができる。すなわち、前記第1の凸部44を形成するための金型は安価に作成することができ、その構造が単純形状であるため金型の寿命も長いものとできる。このことも前記可動片4及びブレーカー1の生産性を向上させるのに寄与している。
【0045】
本発明のその他の実施形態について説明する。なお、前記実施形態に対応する部材については同じ符号を付すこととする。
【0046】
前記第1の凸部44の形状については、当該第1の凸部44の外縁Eを見た場合に球状に形成された凸部と比較して前記可動接点43側が切り欠かれている形状であればよく、前記実施形態に示したものに限られない。例えば、図4(a)に示すように第1の凸部44の外縁Eを概略半円状に形成してもよい。この場合でもピンによる接点踏みを回避しつつ前記第1の凸部44に頂点TPを形成して所望の温度特性を有したブレーカー1を構成することができる。また、図4(b)に示すように第1の凸部44の接点側外縁部IEについては直線で形成されたものに限られず曲線で形成しても構わない。例えば反接点側外縁部OEの曲率半径よりも接点側外縁部IEの曲率半径を大きく設定することで、接点側外縁部IEを頂点TP側へと近づけることができ、ピンにより接点踏みを回避しやすくする効果を得られる。加えて、図4(c)に示すように反接点側外縁部OEについても切り欠きを形成して外縁Eを概略トラック状に形成しても構わない。
【0047】
図3及び図4に示した各実施形態では最遠点FP、近接点NP、頂点TPは前記第1の凸部44の突出している方向から見た場合に一直線上に並んでいるが、図3及び図4に示した形状以外の凸部を形成して、最遠点FPが近接点NPと頂点TPを結ぶ直線上に乗らないように構成してもよい。
【0048】
また、前記第1の凸部44の頂点TPについては、当該第1の凸部44と熱応動素子5と点接触する高さを決める前記本体4Bにおける場所、その所望の高さが保証される範囲内であれば、前記第1の凸部44の頂部(頂点)は点状に限定されず、線状又は面状に設計しても構わない。また、前記第1の凸部44の全体形状についても、前記実施形態に示した概略部分球面に限られず、例えば概略切頭円錐状にしても構わない。これらのような場合には、頂点TPは前記第1の凸部44における線又は面において前記熱応動素子5と点接触させるように設計された点と考えることができ、この設計上の頂点TPを基準として最遠点FP及び近接点NPを定め、内側寸法ISが外側寸法OSよりも小さくなるように外縁Eの形状を定めればよい。
【0049】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0050】
1 ・・・ブレーカー
2 ・・・固定片
21 ・・・先端部
22 ・・・基端部
23 ・・・固定接点
4 ・・・可動片
41 ・・・可動部
42 ・・・端子部
43 ・・・可動接点
44 ・・・第1の凸部
45 ・・・第2の凸部
4B ・・・本体
E ・・・外縁
IE ・・・接点側外縁部
OE ・・・反接点側外縁部
TP ・・・頂点
FP ・・・最遠点
NP ・・・近接点
IS ・・・内側寸法
OS ・・・外側寸法
UF ・・・起立平面部
SS ・・・部分球状部
5 ・・・熱応動素子
6 ・・・PTCサーミスタ
7 ・・・ケース
71 ・・・ベース



図1
図2
図3
図4
図5
図6