(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)炭化珪素からなる第1導電型の基板の主面上に、前記第1導電型のドリフト層、前記第1導電型の第1の層、前記第1導電型と異なる第2導電型のボディー層および前記第1導電型のソース層が順次積層された構造を形成する工程、
(b)前記ソース層上に、所定の領域に開口部を有するマスクを形成する工程、
(c)前記マスクを用いて、前記ソース層、前記ボディー層および前記第1の層を加工して、前記ソース層、前記ボディー層および前記第1の層を貫通し、前記ドリフト層に達するトレンチを形成する工程、
(d)前記基板の主面の法線方向に対して第1角度を有する方向から、前記第2導電型の不純物をイオン注入して、前記トレンチの側面に露出する前記ボディー層に、前記トレンチの側面に沿って前記第2導電型のチャネル層を形成し、前記トレンチの底面に露出する前記ドリフト層に、前記トレンチの底面に沿って前記第2導電型の第2の層を形成する工程、
(e)前記トレンチの前記側面および前記底面を覆うようにゲート絶縁膜を形成する工程、
(f)前記トレンチの内部に前記ゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程、
を含む、半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0015】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0016】
また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0017】
また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0018】
また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
なお、ここで使用する「+」および「−」は、導電型がn型またはp型の相対的な不純物濃度を表記した符号であり、例えば「n
−」、「n」、「n
+」の順にn型不純物の不純物濃度が高くなることを意味し、「p
−」、「p」、「p
+」の順にp型不純物の不純物濃度が高くなることを意味する。
【0020】
(課題の詳細な説明)
まず、本実施の形態によるトレンチ型MOSゲート構造を備える炭化珪素半導体装置の構成およびその製造方法がより明確となると思われるため、本発明者らによって見出されたトレンチ型MOSゲート構造を備える炭化珪素半導体装置における解決しようとする課題について、
図13を用いて以下に説明する。
図13は、本発明者らが検討したトレンチ型MOSゲート構造を備える炭化珪素半導体装置の要部断面図である。
【0021】
炭化珪素半導体装置は、n型の導電性を示す基板SBの主面上に、n型の導電性を示すn
−型ドリフト層NEa、p型の導電性を示すp
−型ボディー層PB、およびn
+型ソース層NSが順次形成されている。基板SBは、ドレイン層として機能し、p
−型ボディー層PBは、チャネル領域として機能する。基板SBの不純物濃度は、例えば1×10
18cm
−3以上、n
−型ドリフト層NEaの不純物濃度は、例えば8×10
15cm
−3程度であり、p
−型ボディー層PBの不純物濃度は、例えば1×10
16cm
−3程度であり、n
+型ソース層NSの不純物濃度は、例えば1×10
19cm
−3以上である。
【0022】
さらに、n
+型ソース層NSおよびp
−型ボディー層PBを貫通して、n
−型ドリフト層NEaに達するトレンチTRが形成されており、トレンチTRの側面および底面を含む内壁に沿ってゲート絶縁膜GIが形成されており、トレンチTRの内部を埋め込むように第1ゲート電極GE1が形成されている。従って、トレンチTRの側壁部のn
+型ソース層NSとn
−型ドリフト層NEaとに挟まれたp
−型ボディー層PBの露出面が、チャネル表面となる。
【0023】
近年、炭化珪素半導体装置では、価格競争力を高めるため、チャネル領域となるp
−型ボディー層PBをこれまでのエピタキシャル成長法に代えて、イオン注入法により形成している。しかし、炭化珪素(SiC)中は不純物が拡散しないため、p
−型ボディー層PBは、注入条件(例えば注入エネルギーやドーズ量)が互いに異なるイオン注入を複数回行うことにより形成される。例えば注入エネルギーが互いに異なるイオン注入を2回以上(例えば10回程度)行うことにより形成される。このため、p
−型ボディー層PBは、トレンチTRの側面に沿って深さ方向に不純物濃度の濃淡が交互に繰り返された不純物濃度分布を有する。
【0024】
ところで、炭化珪素半導体装置では、p
−型ボディー層PBにトレンチTRが形成され、トレンチTRの側壁部のp
−型ボディー層PBの露出面がチャネル表面となる。しかし、前述したように、p
−型ボディー層PBには、トレンチTRの側面に沿って深さ方向に不純物濃度の濃淡が生じており、この状態のままでは、チャネル表面の不純物濃度が不均一となる。そこで、p
−型ボディー層PBにトレンチTRを形成した後、トレンチTRの側面に露出するp
−型ボディー層PBに対してp型不純物を斜めイオン注入することにより、p型層PRを形成している。これにより、チャネル表面の不純物濃度を均一としている。
【0025】
しかし、斜めイオン注入では、トレンチTRの底部のn
−型ドリフト層NEaにもp型不純物が導入される。n
−型ドリフト層NEaの不純物濃度は、例えば8×10
15cm
−3であり、p型層PRの不純物濃度は、例えば2×10
17cm
−3であるため、トレンチTRの側壁部だけでなく、底部にもp型層PRが形成される。このため、チャネル長の制御が困難となり、炭化珪素半導体装置の動作特性がばらつくという問題がある。
【0026】
(実施の形態)
≪炭化珪素半導体装置≫
本実施の形態による炭化珪素半導体装置の構成を、
図1を用いて説明する。ここでは、トレンチ型MOSゲート構造を備える炭化珪素半導体装置であるトレンチゲート型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の構成について説明する。
図1は、トレンチ型MOSゲート構造を備える炭化珪素半導体装置(トレンチゲート型MOSFET)の要部断面図である。
【0027】
本実施の形態による炭化珪素半導体装置は、n型の導電性を示す炭化珪素(SiC)からなる基板SBを備えている。その主面上には、n
−型ドリフト層NEa、n型層NI、p
−型ボディー層PB、n
+型ソース層NS、p
+型コンタクト層PC、トレンチTR、p型チャネル層CH、p型層PI、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極(第1ゲート電極GE1および第2ゲート電極GE2)、およびソース電極SEを備えている。また、その主面と反対側の裏面上には、ドレイン電極DEを備えている。
【0028】
基板SBは、ドレイン層として機能し、例えば4Hのポリタイプを有するn型の導電性を示す炭化珪素(SiC)からなる。基板SBの厚さは、例えば350μm程度であり、その不純物濃度は、例えば1×10
18cm
−3以上である。
【0029】
n
−型ドリフト層NEaは、耐圧を保持する機能を有し、基板SBの主面上に形成されたn型の導電性を示す炭化珪素(SiC)からなる。n
−型ドリフト層NEaは、例えばエピタキシャル成長法によって形成される。n
−型ドリフト層NEaの厚さは、例えば10〜13μm程度であり、その不純物濃度は、例えば8×10
15cm
−3程度である。
【0030】
n型層NIは、n
−型ドリフト層NEaの上面(基板SBと接する面と反対側の面)上に形成され、チャネル長を規定する層として機能する。n型層NIは、例えば基板SBの主面上に形成されたn型の導電性を示す炭化珪素(SiC)にn型不純物を導入することによって形成される。n型層NIの厚さは、例えば0.2〜0.4μm程度であり、その不純物濃度は、例えば1×10
18cm
−3程度である。
【0031】
p
−型ボディー層PBは、n型層NIの上面(n
−型ドリフト層NEaと接する面と反対側の面)上に形成され、チャネル領域として機能する。p
−型ボディー層PBは、例えば基板SBの主面上に形成されたn型の導電性を示す炭化珪素(SiC)にp型不純物を導入することによって形成される。p
−型ボディー層PBの厚さは、例えば0.5μm程度であり、その不純物濃度は、例えば1×10
16cm
−3程度である。
【0032】
p
−型ボディー層PBは、炭化珪素(SiC)に、注入エネルギーが互いに異なるイオン注入を2回以上(例えば10回程度)行うことにより形成されるため、トレンチの側面に沿って深さ方向に不純物濃度の濃淡が交互に繰り返された不純物濃度分布を有する。
【0033】
n
+型ソース層NSは、p
−型ボディー層PBの上面(n型層NIと接する面と反対側の面)上に形成される。n
+型ソース層NSは、例えば基板SBの主面上に形成されたn型の導電性を示す炭化珪素(SiC)にn型不純物を導入することによって形成される。n
+型ソース層NSの厚さは、例えば0.3μm程度であり、その不純物濃度は、例えば1×10
19cm
−3以上である。
【0034】
p
+型コンタクト層PCは、p
−型ボディー層PBの上面(n型層NIと接する面と反対側の面)上のn
+型ソース層NSが形成されている領域とは異なる領域に形成され、p
−型ボディー層PBと電気的に接続される。p
+型コンタクト層PCは、例えば基板SBの主面上に形成されたn型の導電性を示す炭化珪素(SiC)にp型不純物を導入することによって形成される。p
+型コンタクト層PCの不純物濃度は、例えば1×10
21cm
−3以上である。
【0035】
トレンチTRは、n
+型ソース層NS、p
−型ボディー層PBおよびn型層NIを深さ方向に貫通するように形成されており、その底部がn
−型ドリフト層NEaに達するように形成されている。トレンチTRは、トレンチ型MOSゲート構造を実現するために形成されている。なお、本実施の形態では、後述するように、トレンチTRの側壁部に位置するp
−型ボディー層PBにはp型チャネル層CHが形成され、トレンチTRの底部に位置するn
−型ドリフト層NEaにはp型層PIが形成される。このため、トレンチTRの側面にはn
+型ソース層NS、p型チャネル層CHおよびn型層NIが露出し、その底面にはp型層PIが露出する。トレンチTRの底面から基板SBとn
−型ドリフト層NEaとの界面までの距離は、例えば10〜12μm程度である。
【0036】
p型チャネル層CHは、トレンチの側面に露出するp
−型ボディー層PBに形成され、チャネル領域として機能する。p型チャネル層CHは、トレンチTRの側面に露出するp
−型ボディー層PBに対してp型不純物を斜めイオン注入することにより形成されることから、トレンチTRの側面に沿って深さ方向に均一の不純物濃度分布を有する。p型チャネル層CHの不純物濃度は、例えば2×10
17cm
−3程度であり、p
−型ボディー層PBの不純物濃度(例えば1×10
16cm
−3程度)よりも10倍以上高く設定される。
【0037】
p
−型ボディー層PBおよびp型チャネル層CHはともにチャネル領域として機能する。ところで、チャネル表面となるトレンチTRの側面にp
−型ボディー層PBが露出する場合は、p
−型ボディー層PBは、トレンチの側面に沿って深さ方向に不純物濃度の濃淡が交互に繰り返された不純物濃度分布を有するため、この不純物濃度分布に起因した炭化珪素半導体装置の動作特性のばらつきが生じてしまう。これに対し、チャネル表面となるトレンチTRの側面にp型チャネル層CHが露出する場合は、p型チャネル層CHは、トレンチの側面に沿って深さ方向に均一な不純物濃度分布を有するため、炭化珪素半導体装置の動作特性のばらつきを抑制することができる。そこで、本実施の形態では、チャネル表面となるトレンチTRの側面に、深さ方向に均一な不純物濃度分布を有するp型チャネル層CHを形成している。
【0038】
p型層PIは、トレンチの底面に露出するn
−型ドリフト層NEaに形成される。p型層PIは、トレンチTRの底面に露出するn
−型ドリフト層NEaに対してp型不純物を斜めイオン注入することにより形成され、p型チャネル層CHと同時に形成される。従って、p型層PIの不純物濃度は、p型チャネル層CHの不純物濃度と同じであり、例えば2×10
17cm
−3程度である。p型層PIをトレンチTRの底面に露出するn
−型ドリフト層NEaに形成することにより、炭化珪素半導体装置のオフ性能を高めることができる。
【0039】
ゲート絶縁膜GIは、トレンチTRの側面および底面を含む内壁に沿って形成される。ゲート絶縁膜GIは、例えば酸化膜からなる。ゲート絶縁膜GIの厚さは、例えば30〜100nm程度である。
【0040】
ゲート電極(第1ゲート電極GE1および第2ゲート電極GE2)は、トレンチTRの内部を埋め込むようにゲート絶縁膜GIを介して形成された多結晶シリコン膜からなる第1ゲート電極GE1と、第1ゲート電極GE1と電気的に接続され、金属膜からなる第2ゲート電極GE2とから構成される。第1ゲート電極GE1を構成する多結晶シリコン膜の不純物濃度は、例えば1×10
20cm
−3程度である。第2ゲート電極GE2は、例えばチタン(Ti)膜、窒化チタン(TiN)膜およびアルミニウム(Al)膜を順次積層した多層膜からなる。チタン(Ti)膜の厚さは、例えば30nm程度、窒化チタン(TiN)膜の厚さは、例えば100nm程度、アルミニウム(Al)膜の厚さは、例えば5μm程度であり、チタン(Ti)膜および窒化チタン(TiN)膜は、アルミニウム(Al)の拡散を防止するバリア層として機能する。
【0041】
層間絶縁膜ILは、第1ゲート電極GE1およびゲート絶縁膜GIを覆うように、第1ゲート電極GE1、n
+型ソース層NSおよびp
+型コンタクト層PCの上面に形成される。層間絶縁膜ILには、第1ゲート電極GE1の上面の一部を露出する開口部(接続孔CT2)、並びにn
+型ソース層NSおよびp
+型コンタクト層PCの上面の一部を露出する開口部(接続孔CT1)が形成されている。第1ゲート電極GE1の上面の一部を露出する開口部(接続孔CT2)を通じて、第2ゲート電極GE2が形成されている。
【0042】
ソース電極SEは、層間絶縁膜ILに形成された開口部(接続孔CT1)を通じて、n
+型ソース層NSおよびp
+型コンタクト層PCの上面の一部と電気的に接続する。ソース電極SEは、第2ゲート電極GE2と同じ金属膜からなり、例えばチタン(Ti)膜、窒化チタン(TiN)膜およびアルミニウム(Al)膜を順次積層した多層膜からなる。接触抵抗を低減するために、n
+型ソース層NSおよびp
+型コンタクト層PCの上面の一部とソース電極SEとの界面に、シリサイド層SL、例えばニッケル(Ni)シリサイド層を形成してもよい。
【0043】
ドレイン電極DEは、基板SBの主面と反対側の裏面上に形成され、例えばニッケル(Ni)シリサイド層、チタン(Ti)膜、窒化チタン(TiN)膜および金(Au)膜を順次積層した多層膜からなる。
【0044】
本実施の形態による炭化珪素半導体装置では、前述したように、p
−型ボディー層PBは、炭化珪素(SiC)に、注入条件(例えば注入エネルギーやドーズ量)が互いに異なるイオン注入を複数回行うことにより形成される。例えば注入エネルギーが互いに異なるイオン注入を2回以上(例えば10回程度)行うことにより形成される。このため、p
−型ボディー層PBは、トレンチTRの側面に沿って深さ方向に不純物濃度の濃淡が交互に繰り返された不純物濃度分布を有する。そこで、p
−型ボディー層PBにトレンチTRを形成した後、トレンチTRの側面に露出するp
−型ボディー層PBに対してp型不純物を斜めイオン注入することにより、トレンチTRの側面に沿って深さ方向に均一の不純物濃度分布を有し、p
−型ボディー層PBよりも不純物濃度が10倍以上高いp型チャネル層CHをトレンチTRの側壁部に形成している。これにより、炭化珪素半導体装置の動作特性のばらつきを抑制することができる。
【0045】
さらに、p
−型ボディー層PBとn
−型ドリフト層NEaとの間に、p型チャネル層CH(2×10
17cm
−3)、p
−型ボディー層PB(1×10
16cm
−3)およびn
−型ドリフト層NEa(8×10
15cm
−3)よりも不純物濃度の高いn型層NI(1×10
18cm
−3)を形成している。斜めイオン注入によりp
−型ボディー層PBを形成する際には、トレンチTRの底部のn
−型ドリフト層NEaにもp型不純物が導入されるが、n型層NI(1×10
18cm
−3)を形成することにより、炭化珪素半導体装置のチャネル長の制御が容易となる。具体的には、n
+型ソース層NSとn型層NIとに挟まれたp型チャネル層CHおよびp
−型ボディー層PBがチャネル領域となり、n
+型ソース層NSとn型層NIとの間の距離(p
−型ボディー層PBの厚さ)がチャネル長となる。従って、n型層NIを形成することにより、p
−型ボディー層PBの厚さが制御されて、チャネル長を規定することができるので、炭化珪素半導体装置の動作特性のばらつきを抑制することができる。
【0046】
≪炭化珪素半導体装置の製造方法≫
次に、本実施の形態による炭化珪素半導体装置の製造方法を、
図2〜
図12を用いて工程順に説明する。ここでは、トレンチ型MOSゲート構造を備える炭化珪素半導体装置であるトレンチゲート型MOSFETの製造方法について説明する。
図2〜
図12は、トレンチ型MOSゲート構造を備える炭化珪素半導体装置(トレンチゲート型MOSFET)の要部断面図である。
【0047】
<ドレイン層およびn
−型ドリフト層>
まず、
図2に示すように、n型の導電性を示す炭化珪素(SiC)からなる基板SBと、この基板SBの主面上にエピタキシャル成長法によって形成されたn型の導電性を示す炭化珪素(SiC)からなるn
−型層NEとから構成されるウエハを用意する。基板SBは、ドレイン層として機能する。基板SBの厚さは、例えば350μm程度であり、その不純物濃度は、例えば1×10
18cm
−3以上である。また、n
−型層NEの厚さは、例えば10〜13μm程度であり、その不純物濃度は、例えば8×10
15cm
−3程度である。
【0048】
次に、
図3に示すように、n
−型層NEに、n型不純物、例えば窒素(N)をイオン注入法により導入して、n型層NIを形成する。n型層NIは、例えばn
−型層NEの上面(基板SBと接する面と反対側の面)から深さ方向に0.8μm(0.8μmを含んでもよい)の位置から、n
−型層NEの上面から深さ方向に1.0μm(1.0μmを含んでもよい)の位置にわたって形成され、チャネル長を規定する層として機能する。n型層NIの不純物濃度は、n
−型層NEの不純物濃度よりも高く、例えば1×10
18cm
−3程度である。
【0049】
n型層NIをn
−型層NEに形成することにより、n
−型層NEは、n型層NIの下面側と上面側とに分離され、基板SBとn型層NIとの間のn
−型層NEは、耐圧を保持するn
−型ドリフト層NEaを構成する。
【0050】
これにより、基板(ドレイン層)SBの主面上に、n
−型ドリフト層NEa、n型層NIおよびn
−型層NEが順次形成された積層構造が形成される。なお、上記積層構造は、例えば基板SBの主面上に、エピタキシャル成長法によって、n
−型ドリフト層NEa、n型層NIおよびn
−型層NEを順次成長させることによっても形成することができる。
【0051】
<p
−型ボディー層>
次に、
図4に示すように、n型層NIの上面側のn
−型層NEに、p型不純物、例えばアルミニウム(Al)をイオン注入法により導入して、p
−型ボディー層PBを形成する。p
−型ボディー層PBは、例えばn
−型層NEの上面(n型層NIと接する面と反対側の面)から深さ方向に0.3μm(0.3μmを含んでもよい)の位置から、n
−型層NEとn型層NIとの界面にわたって形成される。すなわち、n
−型層NEの上面から0.3μmまでの範囲内には、p
−型ボディー層PBは形成されず、また、n型層NIを超えて、n
−型ドリフト層NEaには、p
−型ボディー層PBは形成されない。
【0052】
ここで、p
−型ボディー層PBは、注入エネルギーが互いに異なるイオン注入を2回以上(例えば10回程度)行うことにより形成される。従って、p
−型ボディー層PBは、例えばn
−型層NEの上面から深さ方向に0.3μmの位置から、n
−型層NEとn型層NIとの界面にわたって形成された複数のp型の層によって構成される。このため、p
−型ボディー層PBを形成することにより、n
−型層NEをp型化することができるが、p
−型ボディー層PBには、深さ方向に不純物濃度の濃淡が生じる。イオン注入の注入エネルギーは、例えば200〜1,000keVの範囲内で選択される。また、p
−型ボディー層PBの不純物濃度は、例えば1×10
16cm
−3程度である。
【0053】
これにより、基板(ドレイン層)SBの主面上に、n
−型ドリフト層NEa、n型層NI、p
−型ボディー層PBおよびn
−型層NEが順次形成された積層構造が形成される。
【0054】
<n
+型ソース層>
次に、
図5に示すように、n
−型層NEに、n型不純物、例えば窒素(N)をイオン注入法により導入して、n
+型ソース層NSを形成する。n
+型ソース層NSは、例えばn
−型層NEの上面から、深さ方向に0.3μm(0.3μmを含んでもよい)の位置にわたって形成される。
【0055】
ここで、n
+型ソース層NSは、注入エネルギーが互いに異なるイオン注入を2回以上実施することにより形成される。従って、n
+型ソース層NSは、例えばn
−型層NEの上面から、深さ方向に0.3μmの位置にわたって形成された複数のn型の層によって構成される。イオン注入の注入エネルギーは、例えば50〜150keVの範囲内で選択される。また、n
+型ソース層NSの不純物濃度は、例えば1×10
19cm
−3以上である。
【0056】
これにより、基板(ドレイン層)SBの主面上に、n
−型ドリフト層NEa、n型層NI、p
−型ボディー層PBおよびn
+型ソース層NSが順次形成された積層構造が形成される。
【0057】
<p
+型コンタクト層>
次に、
図6に示すように、n
+型ソース層NSの上面(p
−型ボディー層PBと接する面と反対側の面)上に、リソグラフィ技術によりレジストパターンRP1を形成する。そして、レジストパターンRP1をマスクとしてn
+型ソース層NSに、p型不純物、例えばアルミニウム(Al)をイオン注入法により導入して、所望する領域に、p
−型ボディー層PBに達するp
+型コンタクト層PCを形成する。具体的には、p
+型コンタクト層PCは、例えばn
+型ソース層NSの上面から、深さ方向に0.5μm(0.5μmを含んでもよい)の位置にわたって形成される。p
+型コンタクト層PCの不純物濃度は、n
+型ソース層NSの不純物濃度よりも2桁程度高い、例えば1×10
21cm
−3以上である。
【0058】
次に、レジストパターンRP1を除去した後、n
+型ソース層NSおよびp
+型コンタクト層PCの上面上に、カーボン(C)層(図示は省略)を、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成する。カーボン(C)層の厚さは、例えば4nm程度である。続いて、活性化アニールをウエハに対して行い、上記工程によりイオン注入されたn型不純物およびp型不純物を活性化する。活性化アニールの雰囲気は、例えばアルゴン(Ar)などの不活性ガスであり、その温度は、例えば1,700℃程度である。その後、酸素(O
2)プラズマを用いてカーボン(C)層を除去する。n
+型ソース層NSおよびp
+型コンタクト層PCの上面をカーボン(C)層で覆わずに活性化アニールを行うと、n
+型ソース層NSおよびp
+型コンタクト層PCの上面(露出面)が荒れる。これを防ぐために、活性化アニールの際には、カーボン(C)層によってn
+型ソース層NSおよびp
+型コンタクト層PCの上面を覆うことが望ましい。
【0059】
<トレンチ>
次に、
図7に示すように、n
+型ソース層NSおよびp
+型コンタクト層PCの上面上に、酸化膜SOMを、例えばCVD法により形成する。酸化膜SOMは、例えばTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate;Si(OC
2H
5)
4)膜であり、その厚さは、例えば0.5〜1μm程度である。
【0060】
次に、酸化膜SOMの上面(n
+型ソース層NSおよびp
+型コンタクト層PCと接する面と反対側の面)上に、リソグラフィ技術によりレジストパターンRP2を形成する。そして、レジストパターンRP2をマスクとして酸化膜SOMをドライエッチング法により加工し、次工程でトレンチが形成される領域の酸化膜SOMを除去する。これにより、酸化膜SOMからなるハードマスクHMを形成する。
【0061】
次に、
図8に示すように、レジストパターンRP2を除去した後、ハードマスクHMをマスクとしてn
+型ソース層NS、p
−型ボディー層PBおよびn型層NIを反応性イオンエッチング法により加工して、所望する領域に、n
−型ドリフト層NEaに達するトレンチTRを形成する。トレンチTRの幅bは、例えば1μm程度であり、その深さcは、例えば1.2μm程度である。トレンチTRの底部および肩部は、ラウンド化した形状とする。
【0062】
ここで、トレンチTRの底面から基板SBとn
−型ドリフト層NEaとの界面までの距離L1が、例えば10〜12μm程度となるように、トレンチTRは形成されている。これにより、1,200V程度の耐圧が得られる。なお、上記距離L1は、炭化珪素半導体装置の耐圧に合わせて決定されるものである。従って、例えば600V程度の耐圧であれば、上記距離L1は、例えば5〜6μm程度となるように、トレンチTRは形成される。
【0063】
ところで、トレンチTRの側面には、p
−型ボディー層PBが露出する。前記
図4を用いて説明したように、p
−型ボディー層PBは、注入エネルギーが互いに異なるイオン注入を2回以上(例えば10回程度)行うことにより形成された複数のp型の層によって構成される。炭化珪素(SiC)中では不純物は拡散しないため、イオン注入法により炭化珪素(SiC)に導入された不純物は、飛程付近に不純物濃度のピークを持つ。従って、p
−型ボディー層PB内では、不純物濃度が高い領域と不純物濃度が低い領域とが深さ方向に交互に繰り返されているので、トレンチTRの側壁部のp
−型ボディー層PBの露出面には、トレンチTRの側面に沿って、不純物濃度の濃淡が深さ方向に交互に生じる。
【0064】
トレンチTRの側壁部のp
−型ボディー層PBの露出面は、炭化珪素半導体装置のチャネル表面となる。このため、この状態のままでは、炭化珪素半導体装置のチャネル表面の不純物濃度が不均一となる。そこで、次工程において、トレンチTRの側面に沿って深さ方向に均一な不純物濃度を有するp型チャネル層CHを形成する。
【0065】
<p型チャネル層>
次に、
図9に示すように、酸化膜SOMの開口部から、トレンチTRの側面に露出するp
−型ボディー層PBに対してp型不純物、例えばアルミニウム(Al)を斜めイオン注入することによりp型チャネル層CHを形成する。一般に、トレンチTRは平面視において矩形の形状であるので、ウエハを90℃ずつ回転させることにより、4回方向を変えて斜めイオン注入を行い、平面視において矩形形状の4辺のそれぞれに対してp型チャネル層CHを形成する。
【0066】
斜めイオン注入のイオン注入角θ(ウエハの法線方向に対する角度)は、酸化膜SOMの厚さdおよびトレンチTRの深さcの合計値aと、トレンチTRの幅bとに基づき、式(1)を用いて算出する。
【0067】
θ=tan
−1(b/2a) 式(1)
本実施の形態では、酸化膜SOMの厚さdは、例えば0.5〜1μm程度、トレンチTRの深さcは、例えば1.0〜1.2μm程度であることから、イオン注入角θは、3〜15°と決定することができる。
【0068】
p型チャネル層CHの不純物濃度は、p
−型ボディー層PBの不純物濃度(例えば1×10
16cm
−3程度)よりも10倍以上高い、例えば2×10
17cm
−3程度に設定され、トレンチTRの側面に沿った深さ方向のp型チャネル層CHの不純物濃度は均一となる。
【0069】
また、斜めイオン注入では、n型層NIにもp型不純物は導入される。しかし、n型層NIの不純物濃度は、例えば1×10
18cm
−3であり、p型チャネル層CHの不純物濃度(例えば2×10
17cm
−3)よりも10倍以上高いので、p型不純物が斜めイオン注入されても、n型層NIの不純物濃度には影響を与えない。すなわち、n型層NIを形成することにより、炭化珪素半導体装置のチャネル長を規定することができて、トレンチTRの側面に露出し、n
+型ソース層NSとn型層NIとに挟まれた領域が、炭化珪素半導体装置のチャネル表面となる。
【0070】
また、斜めイオン注入では、トレンチTRの底部にもp型不純物は導入されて、p型層PIが形成される。すなわち、トレンチTRの側壁部のp型チャネル層CHとトレンチTRの底部のp型層PIとは、同一工程において形成される。しかし、p型チャネル層CHとp型層PIとの間にはn型層NIが形成されているので、両者は電気的に分離されて、p型層PIが炭化珪素半導体装置のチャネル領域の一部を構成することはない。また、トレンチTRの底部にp型層PIが形成されることにより、炭化珪素半導体装置のオフ耐圧を向上させることができる。
【0071】
これまでにn
−型層NEに形成されたn
−型ドリフト層NEa、n型層NI、p
−型ボディー層PB、n
+型ソース層NSおよびp型チャネル層CHの不純物濃度の関係を以下にまとめる。
【0072】
n
+型ソース層NS(1×10
19cm
−3以上)>>n型層NI(1×10
18cm
−3)>p型チャネル層CH(2×10
17cm
−3)>p
−型ボディー層PB(1×10
16cm
−3)>n
−型ドリフト層NEa(8×10
15cm
−3)。
【0073】
<ゲート絶縁膜、ゲート電極>
次に、
図10に示すように、ハードマスクHMをウエットエッチング法により除去した後、熱酸化法およびCVD法によりトレンチTRの内壁(側面および底面)、並びにn
+型ソース層NSおよびp
+型コンタクト層PCの上面に酸化膜SOGを形成し、続いて、酸化膜SOG上にトレンチTRの内部を埋め込むように、例えばn型不純物を含む多結晶シリコン膜PSを堆積する。酸化膜SOGの厚さは、例えば30〜100nm程度であり、多結晶シリコン膜PSの不純物濃度は、例えば1×10
20cm
−3程度である。
【0074】
次に、多結晶シリコン膜PSの上面(酸化膜SOGと接する面と反対側の面)上に、リソグラフィ技術によりレジストパターンRP3を形成する。そして、レジストパターンRP3をマスクとして多結晶シリコン膜PSおよび酸化膜SOGをドライエッチング法により加工して、トレンチTRの内部に多結晶シリコン膜PSからなる第1ゲート電極GE1および酸化膜SOGからなるゲート絶縁膜GIを形成する。レジストパターンRP3の合わせずれおよびドライエッチングによる加工ばらつき等を考慮して、第1ゲート電極GE1およびゲート絶縁膜GIは、平面視においてトレンチTRの幅よりも大きく形成される。
【0075】
<電極>
次に、
図11に示すように、レジストパターンRP3を除去した後、第1ゲート電極GE1およびゲート絶縁膜GIを覆うように、第1ゲート電極GE1、n
+型ソース層NSおよびp
+型コンタクト層PCの上面にCVD法により層間絶縁膜ILを形成する。
【0076】
次に、図示はしないが、層間絶縁膜ILの上面(第1ゲート電極GE1、n
+型ソース層NSおよびp
+型コンタクト層PCと接する面と反対側の面)上に、リソグラフィ技術によりレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして層間絶縁膜ILをドライエッチング法により加工する。これにより、n
+型ソース層NSおよびp
+型コンタクト層PCの上面の一部を露出する接続孔CT1を形成する。続いて、接続孔CT1の底面に自己整合法によりニッケル(Ni)シリサイド層SLを形成する。
【0077】
次に、図示はしないが、層間絶縁膜ILの上面上に、リソグラフィ技術によりレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして層間絶縁膜ILをドライエッチング法により加工する。これにより、第1ゲート電極GE1の上面の一部を露出する接続孔CT2を形成する。
【0078】
次に、接続孔CT1,CT2の内部を含む層間絶縁膜IL上に、例えばチタン(Ti)膜、窒化チタン(TiN)膜およびアルミニウム(Al)膜をスパッタリング法により順次堆積する。チタン(Ti)膜の厚さは、例えば30nm程度、窒化チタン(TiN)膜の厚さは、例えば100nm程度、アルミニウム(Al)膜の厚さは、例えば5μm程度であり、チタン(Ti)膜および窒化チタン(TiN)膜は、アルミニウム(Al)の拡散を防止するバリア層として機能する。
【0079】
次に、図示はしないが、アルミニウム(Al)膜の上面(窒化チタン(TiN)と接する面と反対側の面)上に、リソグラフィ技術によりレジストパターンを形成した後、このレジストパターンをマスクとしてアルミニウム(Al)膜、窒化チタン(TiN)膜およびチタン(Ti)膜をドライエッチング法により加工する。これにより、アルミニウム(Al)膜を主導体層とするソース電極SEおよび第2ゲート電極GE2を形成する。ソース電極SEは、層間絶縁膜ILに形成された接続孔CT1を介して、n
+型ソース層NSおよびp
+型コンタクト層PCと電気的に接続する。また、第2ゲート電極GE2は、層間絶縁膜ILに形成された接続孔CT2を介して、第1ゲート電極GE1と電気的に接続する。
【0080】
次に、
図12に示すように、基板SBの主面と反対側の裏面上に、例えばニッケル(Ni)シリサイド層を形成した後、ニッケル(Ni)シリサイド層上に、チタン(Ti)膜、窒化チタン(TiN)膜および金(Au)膜をスパッタリング法により順次堆積する。これにより、ドレイン層として機能する基板SBの裏面に、ニッケル(Ni)シリサイド層、チタン(Ti)膜、窒化チタン(TiN)膜および金(Au)膜からなる積層構造のドレイン電極DEを形成する。チタン(Ti)膜の厚さは、例えば100nm程度、ニッケル(Ni)膜の厚さは、例えば200nm程度、金(Au)膜の厚さは、例えば100nm程度である。
【0081】
以上の製造工程を経て、
図1に示すトレンチ型MOSゲート構造を備える炭化珪素半導体装置が略完成する。
【0082】
このように、本実施の形態によるトレンチ型MOSゲート構造を備える炭化珪素半導体装置では、注入エネルギーが互いに異なるイオン注入を2回以上行ってチャネル領域となるp
−型ボディー層PBを形成しても、トレンチTRの側面には、深さ方向に均一な不純物濃度分布を有するp型チャネル層CHが形成されている。また、p
−型ボディー層PBとn
−型ドリフト層NEaとの間には、チャネル長を規定することのできるn型層NIが形成されている。これらにより、炭化珪素半導体装置の動作特性のばらつきを抑制することができる。
【0083】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。