(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から3のいずれかに記載の塗料組成物を、コテ又はローラーを用いて、硬化後の膜厚が300μm〜1,500μmとなるように、前記鉄筋コンクリート構造物の表面に塗装する塗装工程と、
前記鉄筋コンクリート構造物の表面に塗装された前記塗料組成物を硬化させて透明塗膜を形成させる硬化工程と、を有する塗膜形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<塗料組成物>
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
本実施形態に係る塗料組成物は、鉄筋コンクリート構造物の表面を被覆する透明塗膜を形成するために用いられる。本実施形態における鉄筋コンクリート構造物としては、橋梁、トンネル、高架道路、建築物等が挙げられる。
本実施形態に係る塗料組成物は、エポキシ樹脂(a)と、変性脂肪族アミン化合物(b)と、扁平状の無機粒子(c)と、を含む。
【0020】
本実施形態に係るエポキシ樹脂(a)は、芳香環を有さない。エポキシ樹脂(a)が芳香環を有さないことで、耐候性の高い透明塗膜を形成することができる。芳香環を有さないエポキシ樹脂(a)としては、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンジルグリコールジグリシジルエーテル、グレセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等を例示することができる。
水添ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂に水素原子を付加して得られる水添ビスフェノール型ジグリシジルエーテル(例えば水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂)が挙げられる。水添ビスフェノール型エポキシ樹脂として、具体的には、エポライト4000(共栄社化学株式会社)、EPICLON EXA−7015(DIC株式会社製)、ST−3000(新日鉄住金化学株式会社製)等を挙げることができる。
【0021】
エポキシ樹脂(a)としては、エポキシ基を一分子中に少なくとも2個有するものが、変性脂肪族アミン化合物(b)との反応性が高く、硬化物が3次元的網目を作りやすいことから好ましい。また、本実施形態に係る塗料組成物を硬化させた時の硬化物が透明であるためには、エポキシ樹脂(a)の他の成分との相溶性が高いことが好ましい。例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、他の成分との相溶性が高く、透明な硬化物を得やすい上に、得られる硬化塗膜が耐候性に優れることから好ましい。
【0022】
本実施形態に係る塗料組成物の固形分におけるエポキシ樹脂(a)の含有量は、25〜70質量%であることが好ましい。塗料組成物の固形分におけるエポキシ樹脂(a)の含有量が、25質量%未満の場合、形成される塗膜の強度や、鉄筋コンクリート構造物への接着性が低下する傾向にある。塗料組成物の固形分におけるエポキシ樹脂(a)の含有量が、70質量%よりも高い場合、形成される塗膜の耐候性が低下し、黄変しやすくなる傾向にある。
【0023】
本実施形態における変性脂肪族アミン化合物(b)は、エポキシ樹脂(a)と反応して耐候性の高い透明塗膜を形成する。変性脂肪族アミン化合物(b)は、エポキシ樹脂(a)との反応性が高く、後述の(メタ)アクリル樹脂(d)との相溶性も高い。
変性脂肪族アミン化合物(b)としては、脂肪族ポリアミンのエポキシ付加物、脂環族(脂環式)ポリアミン、ポリアミドアミン等が挙げられる。変性脂肪族アミン化合物(b)としては、例えば、トーマイド225X、フジキュアーFXU870、フジキュアー5420F(以上、株式会社T&K TOKA社製)や、アンカマイド500(エアプロダクツジャパン株式会社製)が挙げられる。
【0024】
本実施形態に係る塗料組成物の固形分における変性脂肪族アミン化合物(b)の固形分含有量は、2〜26質量%であることが好ましい。塗料組成物の固形分における変性脂肪族アミン化合物(b)の含有量が、2質量%未満の場合、形成される塗膜の強度や、鉄筋コンクリート構造物への接着性が低下する傾向にある。塗料組成物の固形分における変性脂肪族アミン化合物(b)の含有量が、26質量%よりも高い場合、形成される塗膜の耐候性が低下し、黄変しやすくなる傾向にある。
【0025】
本実施形態における無機粒子(c)は、扁平状である。また、無機粒子(c)は、マイカ及びガラスフレークの少なくとも一方であり、その平均アスペクト比は、20〜1,000である。無機粒子(c)として平均アスペクト比が上記範囲のマイカ及びガラスフレークを用いることで、形成される塗膜の酸素遮断性を向上させることができる。無機粒子(c)の平均アスペクト比が、20未満の場合には形成される塗膜の酸素遮断性が低下し、1,000を超える場合には塗料組成物の取り扱いが難しくなる。また、無機粒子(c)の平均アスペクト比は、20〜200であることがより好ましく、32〜150であることが更に好ましい。また、形成される塗膜の隠蔽率を低下させることで、塗膜の透明性を向上させる観点から、無機粒子(c)はガラスフレークであることが好ましい。
【0026】
なお、無機粒子(c)の平均アスペクト比は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(LMS−30;株式会社セイシン企業製)による50%平均粒子径(L)、及び透過型電子顕微鏡による面間隔の平均厚さ(a)から、平均アスペクト比=L/aとして算出することが出来る。
【0027】
無機粒子(c)の平均粒子径は、10〜1,000μmであることが好ましい。無機粒子(c)の平均粒子径が、10μm未満であると形成される塗膜の酸素遮断性が低下する傾向にあり、1,000μmを超えると形成される塗膜の透明性が低下する傾向にある。
無機粒子(c)の平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置(SALD−3100:株式会社島津製作所製)によって測定することが可能である。
【0028】
無機粒子(c)として用いられるマイカとしては、例えば、A−21S(平均アスペクト比70、平均粒子径23μm)、A−41S(平均アスペクト比80、平均粒子径47μm)、SYA−21RS(平均アスペクト比90、平均粒子径27μm)、B−82(平均アスペクト比100、平均粒子径180μm、以上全て株式会社ヤマグチマイカ製)が挙げられる。
また、無機粒子(c)として用いられるガラスフレークとしては、例えば、RCF−600(平均アスペクト比120、平均厚さ5μm、粒子径150〜1,700μmの成分が占める割合が80%以上)、RCF−2300(平均アスペクト比1150、平均厚さ2μm、粒子径150〜1,700μmの成分が占める割合が85%以下)、RCF−160(平均アスペクト比32、平均厚さ5μm、粒子径45〜300μmの成分が占める割合が65%以上)、(以上、全て日本板硝子株式会社製)等が挙げられる。
【0029】
本実施形態に係る塗料組成物の全固形分における無機粒子(c)の含有量は、6〜28質量%であることが好ましい。塗料組成物の全固形分における無機粒子(c)の含有量が、6質量%未満の場合、形成される塗膜の酸素遮断性が低下する。塗料組成物の全固形分における無機粒子(c)の含有量が、28質量%よりも高い場合、形成される塗膜の透明性が失われる。無機粒子(c)の含有量は、8〜22質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることが更に好ましい。
【0030】
更に、本実施形態に係る塗料組成物は、架橋性シリル基を少なくとも1個有する(メタ)アクリル樹脂(d)を含有することが好ましい。(メタ)アクリル樹脂(d)は、いわゆるアクリルシリコン樹脂である。
(メタ)アクリル樹脂(d)は、架橋性シリル基含有エチレン性不飽和モノマーと、他のエチレン性不飽和モノマーとを共重合させることにより得られるものであってもよく、すでに重合体として存在するアクリル樹脂を、架橋性シリル基を有するシリケートオリゴマーで変性して得られるものであってもよい。架橋性シリル基を有するシリケートオリゴマーとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン又はテトラフェノキシシランもしくはこれらの加水分解縮合物が用いられる。
【0031】
架橋性シリル基含有エチレン性不飽和モノマーの具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリブトキシシラン及びγ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
他のエチレン性不飽和モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0033】
架橋性シリル基を有するシリケートオリゴマーでアクリル樹脂を変性する方法は特に限定されないが、通常のラジカル重合法を挙げることができる。そのときに使用される有機溶剤としては、上記シリケートオリゴマーと(メタ)アクリル樹脂を溶解するものであれば適宜選択できる。その具体例としては、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0034】
(メタ)アクリル樹脂(d)の有する架橋性シリル基としては、式(1)で表される官能基があげられる。
[化1]
−[Si(R
1)
2−b(Y)
bO]
m−Si(R
2)
3−a(Y)
a (1)
{式中、R
1、R
2は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は(R’)
3SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R
1又はR
2が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,又は3を、また、bは0,1,又は2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。}
【0035】
加水分解性基としては、例えば、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等の官能基があげられる。これらのうちでも、アルコキシ基、アミド基、アミノオキシ基が好ましいが、温和な条件で加水分解されることから取り扱いやすいという点で、アルコキシ基がとくに好ましい。アルコキシ基の中では炭素数の少ないものほど反応性が高くなる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基の順に反応性が低くなるので、目的や用途に応じてこれらの官能基を選択できる。
【0036】
加水分解性基や水酸基は、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、(a+Σb)は1〜5個の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が架橋性シリル基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。架橋性シリル基を形成するケイ素原子は1個以上であるが、シロキサン結合等により連結されたケイ素原子の場合には、20個以下であることが好ましい。特に、一般式(2)で表される架橋性シリル基が、入手が容易である点で好ましい。
[化2]
−Si(R
2)
3−c(Y)
c (2)
(式中、R
2、Yは前記と同じ、cは1〜3の整数)
【0037】
(メタ)アクリル樹脂(d)は、架橋性シリル基のケイ素同士がシロキサン結合を形成することで縮合する。本実施形態に係る塗料組成物が(メタ)アクリル樹脂(d)を更に含有することで、より耐候性の高い硬化塗膜を形成することができる。
【0038】
本実施形態に係る塗料組成物の固形分における(メタ)アクリル樹脂(d)の含有量は、30〜70質量%であることが好ましく、50〜60質量%であることがより好ましい。塗料組成物の固形分における(メタ)アクリル樹脂(d)の含有量が、30質量%未満の場合、形成される塗膜の耐候性が低下し、黄変しやすくなる傾向にある。塗料組成物の固形分における(メタ)アクリル樹脂(d)の含有量が、70質量%よりも高い場合、相対的に架橋性シリル基の量が大きくなるので、得られる塗料組成物の貯蔵安定性が低下しやすくなる傾向にある。(メタ)アクリル樹脂(d)として、具体的には、TAポリマーSA120S、TAポリマーSA110S、TAポリマーSA100S(以上、株式会社カネカ製)、ARUFON US−66170、ARUFON US−6170(以上、東亞合成株式会社製)等を挙げることができる。
【0039】
更に、本実施形態に係る塗料組成物は、シランカップリング剤(e)を含有することが好ましい。シランカップリング剤(e)は、塗料組成物が塗膜を形成する際に、(メタ)アクリル樹脂(d)の重合体と、エポキシ樹脂(a)及び変性脂肪族アミン化合物(b)の反応物との相溶性を高め、形成される塗膜の強度を更に向上させる。
【0040】
シランカップリング剤(e)としては、アミノ基含有シランカップリング剤及びエポキシ基含有シランカップリング剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。アミノ基含有シランカップリング剤を用いた場合には、アミノ基含有シランカップリング剤のアミノ基がエポキシ樹脂(a)のエポキシ基と反応し、アミノ基含有シランカップリング剤に由来するシラノール基が(メタ)アクリル樹脂(d)の架橋性シリル基と反応する。エポキシ基含有シランカップリング剤を用いた場合には、エポキシ基含有シランカップリング剤のエポキシ基が変性脂肪族アミン化合物(b)のアミノ基と反応し、エポキシ基含有シランカップリング剤に由来するシラノール基が(メタ)アクリル樹脂(d)の架橋性シリル基と反応する。このような反応によって、(メタ)アクリル樹脂(d)の重合体と、エポキシ樹脂(a)及び変性脂肪族アミン化合物(b)の反応物とが架橋され、形成される塗膜の強度が更に向上する。
【0041】
アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
アミノ基含有シランカップリング剤の具体例としては、KBE−903(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、KBM−602(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン)及びKBM−603(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)(以上、全て信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0042】
エポキシ基含有シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
エポキシ基含有シランカップリング剤の具体例としては、KBM−403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、KBE−403(3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)、KBE−402(3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン)、KBM−303(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)、KBM−402(3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン)(以上、全て信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0043】
本実施形態に係る塗料組成物の固形分におけるシランカップリング剤(e)の含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましい。塗料組成物の固形分におけるシランカップリング剤(e)の含有量が、0.1質量%未満の場合、形成される塗膜の透明性が低下する傾向にある。塗料組成物の固形分におけるシランカップリング剤(e)の含有量が、20質量%を超える場合、塗料組成物の硬化性が低下する傾向にある。
【0044】
本実施形態に係る塗料組成物は、脂肪酸アミド化合物(f)を含有することが好ましい。脂肪酸アミド化合物(f)は粘性調整剤として、塗料組成物に構造粘性を付与する役割を果たす。
【0045】
脂肪酸アミド化合物(f)としては、具体的には例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸モノアミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等のメチロールアミド類、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド等のビスアミド類、エタノールアミンジステアレート等の脂肪酸エステルアミドが例示される。
【0046】
脂肪酸アミド化合物(e)としては、上記化合物を溶剤でペースト化したものも市販されている。具体的には例えば、A670−20M、A650−20X、A603−20X、603−10X、6850−20X、6840−10X、6820−20M、6810−20X、6900−10X、6900−20XN、6900−20X(以上、楠本化成株式会社製)等が挙げられる。
【0047】
実施形態に係る塗料組成物の固形分中における脂肪酸アミド化合物(f)の含有量は、0.3〜3.0質量%であることが好ましい。塗料組成物の固形分中における脂肪酸アミド化合物(f)の含有量が、0.3質量%未満の場合、塗料組成物のチクソトロピー性が低下し、塗膜形成した塗料組成物が流れやすくなる(塗料がタレやすくなる)傾向にある。塗料組成物の固形分中における脂肪酸アミド化合物(f)の含有量が3.0質量%よりも多い場合、形成される塗膜の透明性が低下する傾向にある。
【0048】
本実施形態に係る塗料組成物は、必要に応じて上記成分(a)〜(f)以外の添加剤を含有してもよい。塗料組成物の含有する添加剤としては、縮合触媒、紫外線吸収性化合物、酸化防止剤、硬化性調整剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、有色粒子、消泡剤、発泡剤、防蟻剤、防かび剤等があげられる。
【0049】
本実施形態に係る塗料組成物は、エポキシ樹脂(a)を含有する主剤と変性脂肪族アミン化合物(b)を含有する硬化剤とを含む二液混合型の塗料組成物である。二液混合型塗料組成物であることで、塗り替えを実施する現場での作業性が向上する。
なお、シランカップリング剤(e)は、シランカップリング剤の有する官能基の種類に応じて、主剤と硬化剤の一方に適宜配合される。具体的には、シランカップリング剤(e)としてエポキシ含有シランカップリング剤を用いる場合、変性脂肪族アミン化合物(b)とシランカップリング剤(e)とが硬化剤中で反応してしまうのを避けるために、シランカップリング剤(e)は主剤に配合される。一方、シランカップリング剤(e)としてアミノ基含有シランカップリング剤を用いる場合、エポキシ樹脂(a)とシランカップリング剤(e)とが主剤中で反応してしまうのを避けるため、シランカップリング剤(e)は硬化剤に配合される。
【0050】
エポキシ樹脂(a)、変性脂肪族アミン化合物(b)及びシランカップリング剤(e)以外の成分については、主剤及び硬化剤の一方又は両方に適宜配合することができる。
【0051】
上記主剤及び硬化剤の調製方法としては、特別の方法を必要とせず、当業者において通常用いられる方法を使用することができる。
例えば主剤の調製方法としては、樹脂ビヒクル成分、即ち、架橋性シリル基を少なくとも1個を有する(メタ)アクリル樹脂(d)とエポキシ樹脂(a)を予めワニスにしたものに、脂肪酸アミド化合物(f)や上記添加剤等のその他の成分を混入し、ディスパー、ボールミル、S.G.ミル、ロールミル等の分散機で分散することにより調製する方法を挙げることができる。
【0052】
また、例えば硬化剤の調製方法としては、変性脂肪族アミン化合物(b)と、シランカップリング剤(e)と、更に必要に応じて有機溶媒を混入し、ディスパー、ボールミル、S.G.ミル、ロールミル等の分散機で分散することにより調製する方法を挙げることができる。
【0053】
<塗膜形成方法>
本実施形態に係る塗膜形成方法は、混合工程と、塗装工程と、硬化工程と、を有する。
混合工程では、上記実施形態における主剤及び硬化剤を混合して混合塗料組成物(塗料組成物)を得る。
【0054】
混合工程における混合方法は特に限定されない。混合方法としては、主剤及び硬化剤を配合し、ハンドミキサーやスタティックミキサーで混合する方法が挙げられる。
【0055】
主剤及び硬化剤の配合比は、全固形分換算で70/30〜90/10とすることが好ましい。このような配合比とすることで、塗膜の形成が円滑に進行する。
なお、主剤及び硬化剤以外の第三成分を必要に応じて添加してもよい。
【0056】
混合塗料組成物の全固形分濃度は、80〜100質量%であることが好ましい。混合塗料組成物の全固形分濃度が、80質量%未満であると、混合塗料組成物の構造粘性が低下する傾向にある。また、塗料組成物が(メタ)アクリル樹脂(d)を含有する場合には、(メタ)アクリル樹脂(d)のシリル基と反応する官能基を有さない有機溶剤を、混合塗料組成物に添加して、適正な粘度に調整することも可能である。その具体例としては、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0057】
塗装工程では、混合塗料組成物(塗料組成物)を、コテ又はローラーを用いて、硬化後の膜厚(目標乾燥膜厚)が300μm〜1,500μmとなるように、鉄筋コンクリート構造物の表面に塗装する。塗装工程では、コテ又はローラーを用いて手塗りによって塗装するので、鉄筋コンクリート構造物の設置された現場においても簡便に作業を行うことができる。
【0058】
塗装工程において、混合塗料組成物を、硬化後の膜厚が300μm未満となるように塗装した場合、鉄筋コンクリート構造物の保護効果が低くなってしまう。一方、混合塗料組成物を、硬化後の膜厚が1,500μmを超えるように塗装した場合、塗膜の形成のために使用する塗料組成物の量が多くなるのでコストが高くなる上に、塗膜の透明性が低下する。
【0059】
硬化工程では、鉄筋コンクリート構造物の表面に塗装された混合塗料組成物を硬化させて透明塗膜を形成させる。硬化工程における、混合塗料組成物の硬化方法は特に限定されないが、通常鉄筋コンクリート構造物は屋外に設置されているので、自然条件で放置することにより塗膜を形成させる。
【0060】
本実施形態に係る塗膜形成方法は、予防保全をする目的で、建造直後の鉄筋コンクリート構造物に対して適用してもよいし、補修をする目的で、既に亀裂の入ってしまった鉄筋コンクリート構造物に対して適用してもよい。また、工場等で予め製造されたいわゆるプレキャスト鉄筋コンクリート製品に適用してもよい。
【0061】
<透明塗膜>
本実施形態に係る透明塗膜は、上記の塗料組成物を用いて鉄筋コンクリート構造物の表面に形成される。
【0062】
上記の塗料組成物を用いて形成され且つ硬化後の膜厚が1,000μmである塗膜の酸素透過度は、0.05mg/(cm
2・day)以下である。硬化後の膜厚が1000μmである塗膜の酸素透過度が0.05mg/(cm
2・day)を超える場合、無機粒子(c)の含有量が多くなるので形成される塗膜の透明性が損なわれる。
酸素透過度の測定は、製科研式フィルム酸素透過率計を用いて行うことができる。
【0063】
上記の塗料組成物を用いて形成され且つ硬化後の膜厚が300μmである塗膜の隠蔽率は、45%以下である。硬化後の膜厚が300μmである塗膜の隠蔽率が45%を超える場合には、塗膜の透明性が損なわれるので、鉄筋コンクリート構造物の表面の状態を観察するのが困難になる。なお、硬化後の膜厚が300μmである塗膜の隠蔽率は5〜45%であることが好ましい。硬化後の膜厚が300μmである塗膜の隠蔽率が5%未満である場合には、実質的に無機粒子(c)の配合量が少なくなるため、塗膜の酸素透過度が大きくなる傾向にある。
【0064】
塗膜の隠蔽率は以下のような方法で求めることができる。
まず、JIS K 5600−4−1 (b)に準拠した、塗料の一般的な試験方法に用いる隠蔽率試験紙(日本テストパネル株式会社製)に、塗料組成物を塗装する。次いで、23℃で7日間室温放置した試験体について、分光光度計(コニカミノルタ社製、CR―400)を用いて、白色部(Y
W)と黒色部(Y
B)における三刺激値Yを測定し、隠蔽率Y
B/Y
Wを百分率で算出する。
【0065】
なお、本実施形態における透明塗膜の「透明」とは、塗膜を介して一方の側から、他方側の状態や物体を認識できるものであればよく、他方側が鮮明に認識できることを必要とするものではない。透明塗膜は、それを介して一方側から他方側の物体の状態を視認できるものであれば、着色していてもよいし、濁っていてもよい。
より具体的には、透明塗膜とは、隠蔽率が45%以下の塗膜である。
【実施例】
【0066】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り「部」及び「%」は、質量基準である。
【0067】
[実施例1]
エポキシ樹脂(a)としてのエポライト4000(共栄社化学株式会社製)と、無機粒子(c)としてのRCF−600(ガラスフレーク、平均アスペクト比120、日本板硝子社製)とを、それぞれ表1に示した固形分含有量(単位:質量部)となるように配合した。更に、キシレンを添加して全体の固形分濃度が90質量%となるように調整して、卓上ディスパーで十分に攪拌することで主剤を得た。
変性脂肪族アミン化合物(b)としてのトーマイド225X(株式会社T&K TOKA製)に、キシレンを添加することで固形分濃度が90質量%となるように調整して、卓上ディスパーで十分に攪拌することで硬化剤を得た。
【0068】
上記主剤及び硬化剤を、各成分が表1に示した固形分含有量(単位:質量部)となるように混合し、十分に攪拌して得られた混合塗料組成物(固形分濃度90質量%)を得た。
【0069】
[実施例2〜21及び比較例1〜8]
主剤、硬化剤及び混合塗料組成物の調製において、実施例1と同様の方法によって、表1〜3に示した成分を表1〜3に示した固形分含有量(単位:質量部)となるように混合した。この際、主剤、硬化剤及び混合塗料組成物の固形分濃度は、全て90質量%となるようにした。
【0070】
なお、表1〜3に示した成分のうち、エポキシ樹脂(a)、芳香族部分を含むエポキシ樹脂、変性脂肪族アミン化合物(b)、無機粒子(c)、ガラスフレークD、合成マイカ、タルク、酸化チタン及び脂肪族アミド化合物は主剤に配合し、変性脂肪族アミン化合物(b)及び変性脂肪族アミン化合物以外のアミン化合物は硬化剤に配合した。また、シランカップリング剤(e)のうち、アミノ基含有シランカップリング剤は硬化剤に配合し、エポキシ基含有シランカップリング剤は主剤に配合した。
【0071】
実施例及び比較例においては、エポキシ樹脂(a)として、エポライト4000(共栄社化学株式会社製)、ST−3000(新日鉄住金化学株式会社製)を用いた。また、芳香族部分を含むエポキシ樹脂として、エピコート1001 X75(ジャパンエポキシレジン株式会社製)を用いた。また、(メタ)アクリル樹脂(d)として、TAポリマーSA120S(株式会社カネカ製)、ARUFON US−66170(東亞合成株式会社製)を用いた。また、変性脂肪族アミン化合物(b)として、フジキュアー5420F(株式会社T&K TOKA製)を用いた。また、変性芳香族アミン化合物として、JERキュアW(三菱化学株式会社社製)を用いた。また、無機粒子(C)として、ガラスフレークA(RCF−600、平均アスペクト比120、平均厚さ5μm、粒子径150〜1,700μmの成分が占める割合が80%以上)、ガラスフレークB(RCF−2300、平均アスペクト比150、平均厚さ2μm、粒子径150〜1,700μmの成分が占める割合が85%以下)、ガラスフレークC(RCF−160、平均アスペクト比32、平均厚さ5μm、粒子径45〜300μmの成分が占める割合が65%以上)、ガラスフレークD(RCF−015、平均アスペクト比3、平均厚さ5μm、粒子径45μm以下の成分が占める割合が88%以上)(以上、全て日本板硝子株式会社製)、合成マイカ(Na−Ts:テトラシリリックマイカ、平均アスペクト比1043、平均厚さ0.9557nm、平均粒子径977nm、トピー工業株式会社製)を用いた。また、扁平状ではない無機粒子として、タルク(タルクSSS、日本タルク株式会社製)を用いた。また、二酸化チタン(TI−PURE R−706、デュポン社製)を用いた。また、シランカップリング剤(e)として、KBM−602(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、KBM−603(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、KBM−402(3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン)を用いた。また、脂肪族アミド化合物(f)として、ステアリン酸アミド(東京化成株式会社製、融点100℃、固形分濃度100質量%)を用いた。
【0072】
続いて、実施例及び比較例で得られた混合塗料組成物(主剤及び硬化剤を混合した試験塗液)及びそれによって形成される塗膜について下記の評価を行った。
なお、合成マイカNa−Tsは主剤の調製時に卓上ディスパーにて分散を行うと破壊されてしまい、平均アスペクト比を1043に維持することが困難である。従って、比較例8では、合成マイカNa−Tsが分散できず、混合塗料組成物を得ることができなかったので、比較例8については下記の評価を実施していない。
【0073】
<酸素透過度>
テフロン(登録商標)板上に離型紙を敷き、実施例及び比較例で得られた混合塗料組成物を硬化後の膜厚(乾燥膜厚)が1000μmとなるよう塗装し、乾燥後、離型紙を剥がすことで遊離塗膜を得た。なお、実施例17、18、20及び21については、表2に記載された目標となる乾燥膜厚(硬化後の膜厚)となる量を塗装した。塗装後、28日間、温度23℃、相対湿度50%で養生した。酸素透過度の測定は、製科研式フィルム酸素透過率計を用いて、下記の手順で行なった。算出された酸素透過度を表1〜3に示す。
1.遊離塗膜の表面側に白金電極(陰極)を密着させた。
2.電極セル中に0.5N塩化カルシウム溶液を5mL入れた電極を、蒸留水を満たしたビーカーの中に入れた。
3.蒸留水を満たしたビーカーの中へ電極を入れた。
4.蒸留水中に窒素ガスを200mL/minの流速で吹き込み、酸素ガスを完全に追い出すことで記録計電流を安定させた後、記録計のゼロ点を合わせた。
5.蒸留水中に酸素ガスを200mL/minの流速で吹き込み、酸素の透過量が一定となった時の電流値を読み取り、酸素透過度(単位:mg/(cm
2・day))を算出した。
【0074】
<塗装時の隠蔽率(塗膜の透明性)>
JIS K 5600−4−1 (b)に準拠した、塗料の一般的な試験方法に用いる隠蔽率試験紙(日本テストパネル株式会社製)に、実施例及び比較例で得られた混合塗料組成物(試験塗液)を、コテにて塗装した。なお、塗装する混合塗料組成物の量は、目標となる乾燥膜厚(硬化後の膜厚)が300μmとなる量とした。なお、実施例17、18、19、20及び21については、表2に記載された目標となる乾燥膜厚(硬化後の膜厚)となる量を塗装した。
次いで、23℃で7日間室温放置することで膜厚300μmの塗膜を形成させた試験体について、分光光度計(コニカミノルタ社製、CR―400)を用いて、白色部(Y
W)と黒色部(Y
B)における三刺激値Yを測定し、隠蔽率Y
B/Y
Wを百分率で算出した。当該隠蔽率の結果を塗膜の透明性として評価した。結果を表1〜3に示す。
Y
B/Y
Wの値が小さいほど塗膜の透明性が高い。Y
B/Y
Wは、45以下が好ましく、35以下がより好ましい。一方、Y
B/Y
Wが45を超える塗膜は透明性が不良で、鉄筋コンクリート構造物の表面の状態の変化(亀裂の発生等)を目視で観察することが困難である。
【0075】
<ダレ性(塗装作業性)>
塗装試験板(材質:石綿スレート板、縦300mm×横200mm)の横方向の端部から5cmの領域(縦300mm×横50mm)を養生テープ(日東電工株式会社製、商品名:マスキングテープNo.720建築塗装用)で覆った。次に、当該塗装試験板を水平面に置き、実施例1〜21及び比較例1〜7で得られた混合塗料組成物(試験塗液)を、コテにて塗装した。なお、塗装する混合塗料組成物の量は、表1〜3に記載された目標となる乾燥膜厚(硬化後の膜厚)となる量とした。塗装後直ぐに塗装試験板から養生テープをはがし、次いで、養生テープにて覆われていた部分が下側になるように塗装試験板を垂直面に設置し10分間放置した後、タレの発生状態について目視にて確認をした。それぞれの混合塗料組成物について、養生テープにて覆われていた部分と覆われていなかった部分の境界を基準として、生じたタレの長さをノギスにて測定した。結果を表1〜3に示す。3cm以内が合格であり、1cm以内であることがより好ましい。
【0076】
<耐候性(色差)>
試験板(70mm×70mm×20mmのモルタル、水:セメント:砂=0.6:1:2)に、実施例1〜21及び比較例1〜7で得られた混合塗料組成物(試験塗液)を、コテにて塗装した。なお、塗装する混合塗料組成物の量は、表1〜3に記載された目標となる乾燥膜厚(硬化後の膜厚)となる量とした。続いて、試験板表面の塗膜にスーパーUV試験機(アイスーパーテスターSUV−W151、岩崎電気株式会社製)を用いて、波長295〜450nm、照度100mW/cm、ブラックパネル温度63±3℃の紫外線を、光源から240nmの距離で照射した。紫外線の照射4時間、結露(イオン交換水シャワーリング)4時間、休止0.1時間のサイクルを、紫外線の照射時間が合計100時間となるまで繰り返した。紫外線を100時間照射した後の、塗膜の黄変度を確認した。
黄変度は、JIS K 5600 4−1 B法に準拠した隠蔽率試験紙の白色部に塗膜をあわせ、b値をJIS K 7105(2004年度)にしたがって反射法で測定し、反射前のb値と反射後のb値との差(色差Δb)を求めた。結果を表1〜3に示す。Δbが20未満であることが好ましく、5未満であることがより好ましい。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
実施例1〜5と、比較例3との比較から、実施例1〜5の塗料組成物の方が、比較例3の塗料組成物よりも形成される塗膜の酸素遮断性が高いことが分かった。この結果から、特定のアスペクト比(20〜1,000)を有する無機粒子を塗料組成物に含有させることで、形成される塗膜の酸素遮断性が向上することが確認された。
【0081】
実施例6と、比較例5との比較から、実施例6の混合塗料組成物の方が、比較例5の塗料組成物よりも酸素遮断性が高いことが分かった。また、実施例7と、比較例6との比較から、実施例7の塗料組成物の方が、比較例6の塗料組成物よりも形成される塗膜の透明性が高いことが分かった。これらの結果から、塗料組成物に特定のアスペクト比を有する無機粒子を6〜28質量%含有させることで、形成される塗膜の透明性と高い酸素遮断性とを両立できることが確認された。
【0082】
実施例1と、比較例1との比較から、実施例1の塗料組成物の方が、比較例1の塗料組成物よりも形成される塗膜の耐候性が高いことが分かった。この結果から、エポキシ樹脂として芳香環を有さないエポキシ樹脂を塗料組成物に含有させることで、形成される塗膜の耐候性が向上することが確認された。
【0083】
実施例1と、比較例2との比較から、実施例1の塗料組成物の方が、比較例2の塗料組成物よりも形成される塗膜の耐候性が高いことが分かった。この結果から、アミン化合物として変性脂肪族アミン化合物を塗料組成物に含有させることで、形成される塗膜の耐候性が向上することが確認された。
【0084】
更に、膜厚の異なる塗膜を形成した実施例17と実施例20との比較から、実施例17の塗料組成物を用いて形成された膜厚が350μmの塗膜は、実施例20の塗料組成物を用いて形成された膜厚が200μmの塗膜よりも酸素遮断性が高いことが分かった。一方、膜厚の異なる塗膜を形成した実施例18と実施例21との比較から、実施例18の塗料組成物を用いて形成された膜厚が1,450μmの塗膜は、実施例21の塗料組成物を用いて形成された膜厚が1,600μmの塗膜よりも透明性が高いことが分かった。これらの結果から、鉄筋コンクリート構造物の表面に本実施形態に係る塗料組成物を塗布する場合には、硬化後の膜厚を300μm〜1,500μmにすることで、高い透明性、酸素遮断性及び耐候性を備えた塗膜を形成でき、基材である鉄筋コンクリート構造物の表面の状態の変化(亀裂の発生等)を目視で確認できることが確認された。