(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、
図9に示す油圧駆動システム100では、操縦者が旋回操作弁170の操作レバーを速く動かしたときに、作動油のエネルギーが消失することがあった。例えば、操作レバーを中立位置から特定位置まで倒したとき(旋回加速時)には、ポンプ110の斜板111は直ぐにその特定位置に対応した傾転角になるが、旋回モータの回転数は、旋回体の重量(慣性)が大きいために急激には増加しない。従って、ポンプ110から吐出された作動油を旋回モータ120へ導く供給側の給排ライン(131または132)からリリーフ弁(141または142)を介して多量の作動油が流出する。逆に、操作レバーを特定位置から中立位置へ戻したとき(旋回減速時)には、ポンプ110の斜板111は直ぐにセンターに復帰するが、旋回モータの回転数は、旋回体の慣性力が十分大きいので急激には低下しない。従って、旋回モータ120から排出された作動油をポンプ110へ導く排出側の給排ライン(132または131)からリリーフ弁(142または141)を介して多量の作動油が流出する。
【0008】
さらに、旋回加速時には、リリーフ弁(141または142)を介した作動油の流出を防止するように、ポンプ110への指令であるパイロット圧a1,b1を制御することも考えられる。しかしながら、この場合には、旋回加速時に供給側の給排ラインの圧力が低くなり過ぎ、加速度(加速トルク)が不足するという問題が生じる。同様に、旋回減速時には、リリーフ弁(141または142)を介した作動油の流出を防止するように、ポンプ110への指令であるパイロット圧a1,b1を制御することも考えられる。しかしながら、この場合には、旋回減速時に排出側の給排ラインの圧力が低くなり過ぎ、減速度(制動トルク)が不足するという問題が生じる。
【0009】
そこで、本発明は、旋回操作弁の操作レバーを速く動かしたときに十分な加速度または減速度を確保しつつ作動油のエネルギーが消失することを抑制できる建設機械の油圧駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の1つの側面からの建設機械の油圧駆動システムは、旋回モータと、一対の給排ラインにより閉ループを形成するように前記旋回モータと接続された可変容量型の両方向ポンプと、前記一対の給排ライン同士を接続する橋架路であって、互いに逆向きに一対のリリーフ弁が設けられた橋架路と、前記両方向ポンプの傾転角を変更するレギュレータと、旋回操作を受けて、前記旋回操作の量に応じた大きさの旋回信号を出力する旋回操作弁と、前記旋回操作弁から出力される旋回信号に基づいて前記レギュレータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記旋回信号が増大する旋回加速時に、前記旋回モータを通過するモータ流量と、前記旋回信号から決定される指示流量を算出し、前記指示流量が前記モータ流量に所定値を加えた基準流量よりも大きい場合には、前記両方向ポンプの傾転角が前記基準流量を実現する傾転角となるように前記レギュレータを制御し、前記指示流量が前記基準流量以下の場合には、前記両方向ポンプの傾転角が前記指示流量を実現する傾転角となるように前記レギュレータを制御する、ことを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、旋回信号が急激に増大しても、両方向ポンプの傾転角はモータ流量に連動して徐々にしか増加しない。従って、両方向ポンプから吐出された作動油を旋回モータへ導く供給側の給排ラインからリリーフ弁を介して流出する作動油の量を小さく抑えることができる。これにより、旋回加速時に作動油のエネルギーが消失することを抑制することができる。しかも、旋回モータに導かれる作動油の圧力はリリーフ弁の設定圧を下回ることがないので、十分な加速度を確保することができる。
【0012】
また、本発明の別の側面からの建設機械の油圧駆動システムは、旋回モータと、一対の給排ラインにより前記旋回モータと閉ループを形成するように接続された可変容量型の両方向ポンプと、前記両方向ポンプと連結された、前記旋回モータ以外のアクチュエータに作動油を供給する供給ポンプと、前記一対の給排ライン同士を接続する橋架路であって、互いに逆向きに一対のリリーフ弁が設けられた橋架路と、前記両方向ポンプの傾転角を変更するレギュレータと、旋回操作を受けて、前記旋回操作の量に応じた大きさの旋回信号を出力する旋回操作弁と、前記旋回操作弁から出力される旋回信号に基づいて前記レギュレータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記旋回信号が減少する旋回減速時に、前記旋回モータを通過するモータ流量と、前記旋回信号から決定される指示流量を算出し、前記指示流量が前記モータ流量から所定値を差し引いた基準流量よりも小さい場合には、前記両方向ポンプの傾転角が前記基準流量を実現する傾転角となるように前記レギュレータを制御し、前記指示流量が前記基準流量以上の場合には、前記両方向ポンプの傾転角が前記指示流量を実現する傾転角となるように前記レギュレータを制御する、ことを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、旋回信号が急激に減少しても、両方向ポンプの傾転角はモータ流量に連動して徐々にしか低下しない。従って、旋回モータから排出された作動油を両方向ポンプへ導く排出側の給排ラインからリリーフ弁を介して流出する作動油の量を小さく抑えることができる。これにより、旋回減速時に作動油のエネルギーが消失することを抑制することができる。しかも、傾転角が徐々にしか低下しない両方向ポンプはモータとして機能するようになり、旋回モータから排出される作動油からエネルギーを回生することができる。回生されたエネルギーは、供給ポンプの駆動力として利用される。しかも、旋回モータから排出される作動油の圧力はリリーフ弁の設定圧を下回ることがないので、十分な減速度を確保することができる。
【0014】
例えば、前記両方向ポンプは、斜板がセンターから両側に傾倒可能な斜板ポンプであり、前記レギュレータは、前記両方向ポンプの斜板と連結されたサーボピストン、前記サーボピストンの一方の端部に油圧を作用させるための第1チャンバー、および前記サーボピストンの他方の端部に油圧を作用させるための第2チャンバー、を含むサーボ機構と、第1ソレノイドおよび第2ソレノイドを有し、前記第1ソレノイドに電流が送給されたときに前記第1チャンバーに作動油を導き、前記第2ソレノイドに電流が送給されたときに前記第2チャンバーに作動油を導くように構成された切換弁と、を含み、前記制御装置は、前記旋回信号が増大する旋回加速時および前記旋回信号が減少する旋回減速時に、前記基準流量または前記指示流量に応じた電流を前記第1ソレノイドまたは前記第2ソレノイドに送給してもよい。
【0015】
上記の油圧駆動システムは、前記一対の給排ラインに作動油を補給するためのチャージポンプをさらに備え、前記切換弁は、前記第1ソレノイドまたは前記第2ソレノイドに電流が送給されたときに、前記チャージポンプから吐出された作動油を前記第1チャンバーまたは前記第2チャンバーに導いてもよい。この構成によれば、チャージポンプの吐出圧を合理的に利用して、サーボ機構を駆動することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、旋回操作弁の操作レバーを速く動かしたときに十分な加速度または減速度を確保しつつ作動油のエネルギーが消失することを抑制できる。しかも、旋回加速時または旋回減速時には、リリーフ弁を介した僅かな作動油の流出が維持されるために、ハンチングなどの振動の発生を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に、本発明の一実施形態に係る建設機械の油圧駆動システム1を示し、
図2に、その油圧駆動システム1が搭載された建設機械10を示す。
図2に示す建設機械10は油圧ショベルであるが、本発明は、油圧クレーンなどの他の建設機械にも適用可能である。
【0019】
油圧駆動システム1は、油圧アクチュエータとして、
図2に示すブームシリンダ13、アームシリンダ14およびバケットシリンダ15を含むとともに、
図1に示す旋回モータ17および図示しない左右一対の走行モータを含む。また、油圧駆動システム1は、旋回モータ17専用の両方向ポンプ16と、旋回モータ17以外のアクチュエータに作動油を供給する供給ポンプ12を含む。なお、
図1では、図面の簡略化のために、旋回モータ17およびブームシリンダ13以外のアクチュエータを省略している。
【0020】
本実施形態では、建設機械10が自走式の油圧ショベルであるが、建設機械10が船舶に搭載される油圧ショベルである場合には、運転室を含む旋回体が船体に旋回可能に支持される。
【0021】
両方向ポンプ16と供給ポンプ12は、互いに連結されている。また、両方向ポンプ16および供給ポンプ12は、エンジン11に連結されている。すなわち、両方向ポンプ16および供給ポンプ12は、同一のエンジン11により駆動される。そのため、エンジン11の回転数Neは、供給ポンプ12および両方向ポンプ16の回転数でもある。エンジン11の回転数Neは、第1回転数センサ91により計測される。
【0022】
供給ポンプ12は、傾転角が変更可能な可変容量型のポンプ(斜板ポンプまたは斜軸ポンプ)である。供給ポンプ12の傾転角は、図略のレギュレータにより変更される。本実施形態では、供給ポンプ12の吐出流量がネガティブコントロール方式で制御される。ただし、供給ポンプ12の吐出流量はポジティブコントロール方式で制御されてもよい。
【0023】
具体的に、供給ポンプ12からは、ブリードライン21がタンクまで延びている。ブリードライン21上には、ブーム制御弁22を含む複数の制御弁が配置されている。ブーム制御弁22は、ブームシリンダ13に対する作動油の供給および排出を制御し、その他の制御弁も個々のアクチュエータに対する作動油の供給および排出を制御する。ブリードライン21における複数の制御弁の最も下流側には絞り23が設けられているとともに、この絞り23をバイパスするライン上にリリーフ弁24が配置されている。供給ポンプ12の傾転角は、ブリードライン21における絞り23の上流側のネガティブコントロール圧に基づいて調整される。
【0024】
両方向ポンプ16は、一対の給排ライン31,32により、閉ループを形成するように旋回モータ17と接続されている。旋回モータ17の回転数Nmは、第2回転数センサ92により計測される。
【0025】
両方向ポンプ16は、傾転角が変更可能な可変容量型のポンプである。両方向ポンプ16の傾転角は、レギュレータ5により変更される。本実施形態では、両方向ポンプ16が、斜板16aがセンターから両側に傾倒可能な斜板ポンプである。すなわち、センターに対する斜板16aの角度が傾転角である。そして、斜板16aは、レギュレータ5によって動かされる。レギュレータ5については、後述にて詳細に説明する。ただし、両方向ポンプ16は、斜軸がセンターから両側に傾倒可能な斜軸ポンプであってもよい。
【0026】
本実施形態では、上述した閉ループに、左旋回時には
図1で時計回りに作動油が流れ、右旋回時には
図1で反時計回りに作動油が流れる。すなわち、左旋回時には、給排ライン31が両方向ポンプ16から吐出された作動油を旋回モータ17へ導く供給側であり、給排ライン32が旋回モータ17から排出された作動油を両方向ポンプ16へ導く排出側である。逆に、右旋回時には、給排ライン32が両方向ポンプ16から吐出された作動油を旋回モータ17へ導く供給側であり、給排ライン31が旋回モータ17から排出された作動油を両方向ポンプ16へ導く排出側である。
【0027】
一対の給排ライン31,32同士は、橋架路33によって接続されている。橋架路33には、互いに逆向きに一対のリリーフ弁34,35が設けられている。橋架路33におけるリリーフ弁34,35の間の部分は、逃しライン41によって、リリーフ弁42と接続されている。
【0028】
リリーフ弁42の設定圧は、橋架路33に設けられたリリーフ弁34,35の設定圧よりも十分に小さく設定されている。リリーフ弁42からは、タンクライン48がタンクまで延びている。本実施形態では、タンクライン48が両方向ポンプ16のドレンラインも兼ねている。
【0029】
給排ライン31,32は、それぞれバイパスライン36,38によって逃しライン41と接続されている。バイパスライン36,38は、それぞれリリーフ弁34,35をバイパスするように橋架路33に設けられていてもよい。バイパスライン36,38には、それぞれ逆止弁37,39が設けられている。
【0030】
さらに、逃しライン41は、補給ライン43によりチャージポンプ18と接続されている。チャージポンプ18は、逆止弁37,39を介して給排ライン31,32に作動油を補給するためのものである。チャージポンプ18は、双方向ポンプ16と連結されており、エンジン11により駆動される。ただし、チャージポンプ18は、直接的にエンジン11に連結されていてもよい。
【0031】
双方向ポンプ16の斜板16aを動かす上述したレギュレータ5は、制御装置8により制御される。建設機械10の運転室には、操縦者から旋回操作を受ける旋回操作弁19が設けられている。旋回制御弁19は、操作レバーを含み、当該旋回操作弁19が受けた旋回操作の量(すなわち、操作レバーの角度)に応じた大きさの旋回信号を出力する。制御装置8は、旋回操作弁19から出力される旋回信号に基づいてレギュレータ5を制御する。
【0032】
本実施形態では、旋回操作弁19が、操作レバーの角度に応じた大きさのパイロット圧(左旋回パイロット圧Paまたは右旋回パイロット圧Pb)を旋回信号として出力する。左旋回パイロット圧Paは第1圧力計81により計測され、右旋回パイロット圧Pbは第2圧力計82により計測される。計測された左旋回パイロット圧Paおよび右旋回パイロット圧Pbは制御措置8に送られる。ただし、旋回操作弁19は、操作レバーの角度に応じた大きさの電気信号を旋回信号として制御装置8に直接的に出力するものであってもよい。
【0033】
レギュレータ5は、具体的には、サーボ機構6と切換弁7を含む。サーボ機構6は、両方向ポンプ16の斜板16aと連結されたサーボピストン61と、サーボピストン61の一方(
図1では右側)の端部に油圧を作用させるための第1チャンバー62と、サーボピストン61の他方(
図1では左側)の端部に油圧を作用させるための第2チャンバー63を含む。第1チャンバー62および第2チャンバー63内には、サーボピストン61を互いに反対方向から付勢するスプリング64,65がそれぞれ配置されている。
【0034】
第1チャンバー62および第2チャンバー63の圧力が共にゼロのときには、スプリング64,65の付勢力によって、サーボピストン61が、斜板16aの角度(両方向ポンプ16の傾転角)がゼロとなる中立位置に維持される。第1チャンバー62内に作動油が圧送されると、サーボピストン61が左側のスプリング65の付勢力に抗して左方に移動し、両方向ポンプ16が給排ライン31に作動油を吐出する方向に斜板16aが動く。すなわち、第1チャンバー62は、左旋回用のチャンバーである。第2チャンバー63内に作動油が圧送されると、サーボピストン61が右側のスプリング65の付勢力に抗して右方に移動し、両方向ポンプ16が給排ライン32に作動油を吐出する方向に斜板16aが動く。すなわち、第2チャンバー63は、右旋回用のチャンバーである。
【0035】
切換弁7は、一対のサーボライン66,67によりサーボ機構6の第1チャンバー62および第2チャンバー63と接続されている。また、切換弁7は、圧力源ライン44および上述した補給ライン43により、チャージポンプ18と接続されている。さらに、切換弁7からはタンクライン47がタンクまで延びている。
【0036】
切換弁7は、サーボピストン61と連結されたスリーブ72と、スリーブ72内に配置されたスプール71を含む。スプール71は、中立位置に位置するときは、圧力源ライン44をブロックし、サーボライン66,67をタンクライン47と連通させる。スプール71が
図1において右方に移動すると、右側のサーボライン66が圧力源ライン44と連通するとともに、左側のサーボライン67がタンクライン47と連通する。これにより、チャージポンプ18から吐出された作動油が第1チャンバー62に導かれ、サーボピストン61が左方に移動する。一方、スプール71が
図1において左方に移動すると、左側のサーボライン67が圧力源ライン44と連通するとともに、右側のサーボライン66がタンクライン47と連通する。これにより、チャージポンプ18から吐出された作動油が第2チャンバー63に導かれ、サーボピストン61が右方に移動する。
【0037】
さらに、切換弁7は、左旋回時(すなわち、左旋回パイロット圧Pa>0)に制御装置8から電流が送給されてスプール71を
図1で右方に移動させる第1ソレノイド75と、右旋回時(すなわち、右旋回パイロット圧Pb>0)に制御装置8から電流が送給されてスプール71を
図1で左方に移動させる第2ソレノイド76を有する。また、切換弁7は、スプール71の移動をアシストするためのパイロットポート73,74を有し、これらのパイロットポート73,74は、それぞれパイロットライン45,46により圧力源ライン44と接続されている。
【0038】
制御装置8には、第1回転数センサ91で計測されたエンジン11の回転数Neと、第2回転数センサ92で計測された旋回モータ17の回転数Nmが送られる。本実施形態では、制御装置8が、パイロット圧が増大する旋回加速時にレギュレータ5を
図3に示すように制御する旋回加速制御と、パイロット圧が減少する旋回減速時にレギュレータ5を
図6に示すように制御する旋回減速制御の双方を実行する。ただし、制御装置8は、
図3に示すような旋回加速制御と
図6に示すような旋回減速制御の一方のみを実行してもよい。以下、左旋回時の旋回加速制御および旋回減速制御について詳細に説明するが、右旋回時の旋回加速制御および旋回減速制御が同様であることは言うまでもない。
【0039】
<左旋回加速制御>
図3は、左旋回加速制御のフローチャートである。制御装置8は、左旋回パイロット圧Paの時間変化率ΔPaがゼロよりも大きくなったときに(ステップS11でYES)、左旋回加速制御を開始する。
【0040】
まず、制御装置8は、旋回モータ17の回転数Nmに旋回モータ17のモータ容量Vmを積算することにより、旋回モータ17を通過するモータ流量Qmを算出する(ステップS12)。ついで、制御装置8は、左旋回パイロット圧Paから決定される指示流量Qopaを算出する(ステップS13)。
【0041】
指示流量Qopaの算出は、例えば次のように行われる。まず、制御装置8は、左旋回パイロット圧Paに対応するポンプ指示容量Vopaを決定する。例えば、左旋回パイロット圧Paとポンプ指示容量Vopaは比例関係にある。ついで、制御装置8は、ポンプ指示容量Vopaに両方向ポンプ16の回転数(本実施形態では、エンジン11の回転数Ne)を積算する。これにより、指示流量Qopaが算出される。
【0042】
その後、制御装置8は、モータ流量Qmに所定値αを加えた基準流量Qr(Qr=Qm+α)と指示流量Qopaを比較する(ステップS14)。ここで、所定値αは、リリーフ弁34を確実に開くために必要な流量である。本実施形態では、所定値αは一定値である。ただし、所定値αは、例えば作動油の温度に応じて変化する変数であってもよい。
【0043】
指示流量Qopaが基準流量Qrよりも大きい場合は(ステップS14でYES)、ポンプ目標流量Qdirを基準流量Qrとする(ステップS15)。一方、指示流量Qopaが基準流量Qr以下の場合は(ステップS14でNO)、ポンプ目標流量Qdirを指示流量Qopaとする(ステップS16)。
【0044】
ポンプ目標流量Qdirが決定された後は、制御装置8は、ポンプ目標流量Qdirに対応する電流Iaを決定し、その電流Iaを第1ソレノイド75に送給する(ステップS17)。
【0045】
より詳しくは、制御装置8は、ステップS15でポンプ目標流量Qdirを基準流量Qrとしたときは、基準流量Qrに応じた電流Iaを第1ソレノイド75に送給する。具体的に、制御装置8は、基準流量Qrを両方向ポンプ16の回転数(本実施形態では、エンジン11の回転数Ne)で割ってポンプ目標容量Vdirを算出し、両方向ポンプ16の傾転角がポンプ目標容量Vdirを達成する傾転角となる電流Iaを決定する。この電流Iaが第1ソレノイド75に送給されることにより、両方向ポンプ16の傾転角が基準流量Qrを実現する傾転角となる。
【0046】
一方、ステップS16でポンプ目標流量Qdirを指示流量Qopaとしたときは、制御装置8は、指示流量Qopaに応じた電流Iaを第1ソレノイド75に送給する。具体的に、制御装置8は、指示流量Qopaを両方向ポンプ16の回転数(本実施形態では、エンジン11の回転数Ne)で割ってポンプ目標容量Vdirを算出し、両方向ポンプ16の傾転角がポンプ目標容量Vdirを達成する傾転角となる電流Iaを決定する。この電流Iaが第1ソレノイド75に送給されることにより、両方向ポンプ16の傾転角が指示流量Qopaを実現する傾転角となる。
【0047】
その後、制御装置8は、モータ流量Qmを再度算出し(ステップS18)、モータ流量Qmがポンプ目標流量Qdirと等しくなるまで上昇したかを判定する(ステップS19)。ステップS19でYESであれば、制御装置8は左旋回加速制御を終了する。一方、ステップS19でNOであれば、左旋回パイロット圧Paの時間変化率ΔPaがゼロの場合(ステップS20でYES)はステップS14に戻り、ΔPaが0よりも大きい場合(ステップS20でNO、ステップS21でYES)にはステップS13に戻る。逆に、ΔPaが0よりも小さい場合(ステップS21でNO)には、後述する左旋回減速制御に移行する。
【0048】
上述したような左旋回加速制御であれば、左旋回パイロット圧Paが急激に増大しても、両方向ポンプ16の傾転角はモータ流量Qmに連動して徐々にしか増加しない。従って、供給側の給排ライン31からリリーフ弁34を介して流出する作動油の量を小さく抑えることができる。これにより、左旋回加速時に作動油のエネルギーが消失することを抑制することができる。
【0049】
例えば、
図4(a)に示すように旋回操作弁19の操作レバーを一瞬で中立位置から左旋回方向に動かしたときは、
図4(b)に示すように、指示流量Qopaは左旋回パイロット圧Paとほぼ同じように推移するが、両方向ポンプ16の傾転角を決定するためのポンプ目標流量Qdirはモータ流量Qmに連動して徐々にしか増加しない。従って、従来技術と同様に左旋回パイロット圧Paに連動して斜板16aを動かした場合には、
図5(a)に示すように大きな面積のエネルギーEpが消失する。これに対し、本実施形態では、
図5(b)に示すように、消失するエネルギーEcの面積が極めて小さくなる。
【0050】
しかも、左旋回加速時に旋回モータ17に導かれる作動油の圧力はリリーフ弁34の設定圧を下回ることがないので、十分な加速度を確保することができる。また、上述した左旋回加速制御であれば、リリーフ弁34を安定して作動させることができるので、従来通りの加速度と従来通りの作動安定性を確保できる。
【0051】
なお、右旋回時にも
図3と同様の制御によって、上記と同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0052】
<左旋回減速制御>
図6は、左旋回減速制御のフローチャートである。制御装置8は、左旋回パイロット圧Paの時間変化率ΔPaがゼロよりも小さくなったときに(ステップS31でYES)、左旋回減速制御を開始する。
【0053】
まず、制御装置8は、旋回モータ17の回転数Nmに旋回モータ17のモータ容量Vmを積算することにより、旋回モータ17を通過するモータ流量Qmを算出する(ステップS32)。ついで、制御装置8は、左旋回パイロット圧Paから決定される指示流量Qopaを算出する(ステップS33)。指示流量Qopaの算出は、左旋回加速制御と同様に行われる。
【0054】
その後、制御装置8は、モータ流量Qmから所定値βを差し引いた基準流量Qr(Qr=Qm−β)と指示流量Qopaを比較する(ステップS34)。ここで、所定値βは、リリーフ弁34を確実に開くために必要な流量である。本実施形態では、所定値βは一定値である。所定値βは、左旋回加速制御で用いた所定値αと同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし、所定値βは、例えば作動油の温度に応じて変化する変数であってもよい。
【0055】
指示流量Qopaが基準流量Qrよりも小さい場合は(ステップS34でYES)、ポンプ目標流量Qdirを基準流量Qrとする(ステップS35)。一方、指示流量Qopaが基準流量Qr以上の場合は(ステップS34でNO)、ポンプ目標流量Qdirを指示流量Qopaとする(ステップS36)。
【0056】
ポンプ目標流量Qdirが決定された後は、制御装置8は、ポンプ目標流量Qdirに対応する電流Iaを決定し、その電流Iaを第1ソレノイド75に送給する(ステップS37)。
【0057】
より詳しくは、制御装置8は、ステップS35でポンプ目標流量Qdirを基準流量Qrとしたときは、基準流量Qrに応じた電流Iaを第1ソレノイド75に送給する。具体的に、制御装置8は、基準流量Qrを両方向ポンプ16の回転数(本実施形態では、エンジン11の回転数Ne)で割ってポンプ目標容量Vdirを算出し、両方向ポンプ16の傾転角がポンプ目標容量Vdirを達成する傾転角となる電流Iaを決定する。この電流Iaが第1ソレノイド75に送給されることにより、両方向ポンプ16の傾転角が基準流量Qrを実現する傾転角となる。
【0058】
一方、ステップS36でポンプ目標流量Qdirを指示流量Qopaとしたときは、制御装置8は、指示流量Qopaに応じた電流Iaを第1ソレノイド75に送給する。具体的に、制御装置8は、指示流量Qopaを両方向ポンプ16の回転数(本実施形態では、エンジン11の回転数Ne)で割ってポンプ目標容量Vdirを算出し、両方向ポンプ16の傾転角がポンプ目標容量Vdirを達成する傾転角となる電流Iaを決定する。この電流Iaが第1ソレノイド75に送給されることにより、両方向ポンプ16の傾転角が指示流量Qopaを実現する傾転角となる。
【0059】
その後、制御装置8は、モータ流量Qmを再度算出し(ステップS38)、モータ流量Qmがポンプ目標流量Qdirと等しくなるまで低下したかを判定する(ステップS39)。ステップS39でYESであれば、制御装置8は左旋回減速制御を終了する。一方、ステップS39でNOであれば、左旋回パイロット圧Paの時間変化率ΔPaがゼロの場合(ステップS40でYES)はステップS34に戻り、ΔPaが0よりも小さい場合(ステップS40でNO、ステップS41でYES)にはステップS33に戻る。逆に、ΔPaが0よりも大きい場合(ステップS41でNO)には、上述した左旋回加速制御に移行する。
【0060】
上述したような左旋回減速制御であれば、左旋回パイロット圧Paが急激に減少しても、両方向ポンプ16の傾転角はモータ流量Qmに連動して徐々にしか低下しない。従って、排出側の給排ライン32からリリーフ弁35を介して流出する作動油の量を小さく抑えることができる。これにより、旋回減速時に作動油のエネルギーが消失することを抑制することができる。しかも、傾転角が徐々にしか低下しない両方向ポンプ16はモータとして機能するようになり、旋回モータ17から排出される作動油からエネルギーを回生することができる。回生されたエネルギーは、供給ポンプ12の駆動力として利用される。
【0061】
例えば、
図7(a)に示すように旋回操作弁19の操作レバーを一瞬で特定の左旋回位置から中立位置に動かしたときは、
図7(b)に示すように、指示流量Qopaは左旋回パイロット圧Paとほぼ同じように推移するが、両方向ポンプ16の傾転角を決定するためのポンプ目標流量Qdirはモータ流量Qmに連動して徐々にしか低下しない。従って、従来技術と同様に左旋回パイロット圧Paに連動して斜板16aを動かした場合には、
図8(a)に示すように大きな面積のエネルギーEpが消失する。これに対し、本実施形態では、
図8(b)に示すように、消失するエネルギーEcをエネルギーEpから差し引いた残りのエネルギーErを回生することができるので、消失するエネルギーEcの面積が極めて小さくなる。
【0062】
しかも、左旋回減速時に旋回モータ17から排出される作動油の圧力はリリーフ弁35の設定圧を下回ることがないので、十分な減速度を確保することができる。また、上述した左旋回減速制御であれば、リリーフ弁35を安定して作動させることができるので、従来通りの減速度と従来通りの作動安定性を確保できる。
【0063】
なお、右旋回時にも
図6と同様の制御によって、上記と同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0064】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。