(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335109
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】側面衝突用補強部材を備えた乗用車シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/42 20060101AFI20180521BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/68
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-241202(P2014-241202)
(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2016-101846(P2016-101846A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】埜嵜 博之
(72)【発明者】
【氏名】本多 正明
【審査官】
渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−184657(JP,A)
【文献】
特開2010−274802(JP,A)
【文献】
特開2016−020165(JP,A)
【文献】
米国特許第04231607(US,A)
【文献】
米国特許第06761402(US,B1)
【文献】
特開2001−130446(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/152530(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/150449(WO,A1)
【文献】
特開平9−95196(JP,A)
【文献】
特開2010−221872(JP,A)
【文献】
特開平6−1174(JP,A)
【文献】
特開昭53−128817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
B60R21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面衝突時にドアに加わる衝撃力を隣接するシートを介して反対側のドアに伝達する補強部材を備えた乗用車のシートであって、前記補強部材は、
金属製のパイプと、
前記金属製のパイプの前記乗用車のドア側の端面に固定した平板と、
前記金属製のパイプの前記乗用車のドア側の端面とは反対側の隣接するシートに面した側の端部を覆って前記金属製のパイプに固定した側突ブラケットとを有し、
前記側突ブラケットは、
金属で形成されて前記金属製のパイプの端部を覆う側壁ブラケットと、
前記固定する金属製のパイプと平行な方向に形成された前記側壁ブラケットの凹部にはめ込まれて側面衝突時に前記側壁ブラケットの変形を防止する補強パイプと、
前記側壁ブラケットと前記補強パイプとを覆う蓋ブラケットと
を備えることを特徴とする側面衝突用補強部材を備えた乗用車シート。
【請求項2】
請求項1記載の側面衝突用補強部材を備えた乗用車シートであって、前記側突ブラケットは、前記金属製のパイプに端部で、前記隣接するシートの補強部材の金属製のパイプの端面に固定された平板と対向する位置に固定されていることを特徴とする側面衝突用補強部材を備えた乗用車シート。
【請求項3】
請求項1記載の側面衝突用補強部材を備えた乗用車シートであって、前記シートと、前記シートに隣接するシートとの前記乗用車におけるフレーム配置が異なることを特徴とする側面衝突用補強部材を備えた乗用車シート。
【請求項4】
請求項1記載の側面衝突用補強部材を備えた乗用車シートであって、前記シートの前記補強部材の前記金属製のパイプに中心と、前記シートに隣接するシートの前記補強部材の前記金属製のパイプの中心の高さが異なっていることを特徴とする側面衝突用補強部材を備えた乗用車シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車のシートに関するものであって、特に、運転席と助手席とでフレーム配置が異なる乗用車のシートにおいて、側面衝突時にドアに加わる衝撃力を隣接するシートを介して反対側のドアに伝達する側面衝突用補強部材を備えた乗用車のシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術では、一般に車両の側面衝突の際、ドア等の車体側壁側より衝撃力が車室内に侵入して車両用シートが横幅方向に潰れるように変形しても乗員空間を確保することができるものとして、例えば特開平6−1174号公報(特許文献1)に示すようなものがある。
【0003】
すなわち、特許文献1には、シートクッション後端側及び傾動調整可能なシートバックの基端側の少なくとも一方に、側面衝突の際に車体側壁側の座席の一方の側部から受けた衝撃荷重を反対側の車体側壁に伝達する高剛性の補強部材を車幅方向に延ばして内装し、座席側方に延出した補強部材の両端に平板を取り付けた構造の荷重入出力部を設ける構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−1174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような一方のドアが側面衝突により受けた荷重を反対側のドアに伝達する構成は、乗用車の運転席と助手席とが、横方向から見たときに同じ高さで、補強部材の配置が同じ場合には有効であった。しかし、乗用車の車種の多様化に伴って、運転席と助手席とでフレーム配置が異なり、横方向から見たときに運転席と助手席とが同じ高さではなく、運転席と助手席とで補強部材の配置が異なるような構造の車種も現れてきた。
【0006】
このように、運転席と助手席とでフレーム配置が異なり補強部材の設置位置(高さ方向及び前後方向)が異なるような構造の場合、特許文献1に記載されているような、座席側方に延出した補強部材の両端に平板を取り付けた構造の荷重入出力部を設けた構成では、両方の座席の補強部材の位置がずれているために、側面衝突の際に車体側壁側の座席の一側部から受けた衝撃荷重を反対側の車体側壁に確実に伝達することは難しい。
【0007】
本発明の目的は、運転席と助手席とでフレーム配置が異なり補強部材の設置位置が異なるような構造の場合であっても側面衝突の際に車体側壁側の座席の一方の側部から受けた衝撃荷重を反対側の車体側壁に確実に伝達することを可能にする側突ブラケットを備えた乗用車シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、側面衝突時にドアに加わる衝撃力を隣接するシートを介して反対側のドアに伝達する側面衝突用補強部材を備えた乗用車のシートにおいて、補強部材は、金属製のパイプと、金属製のパイプの乗用車のドア側の端面に固定した平板と、金属製のパイプの乗用車のドア側の端面とは反対側の隣接するシートに面した側の端部を覆って金属製のパイプに固定した側突ブラケットとを有し、側突ブラケットは、金属で形成されて金属製のパイプの端部を覆う側壁ブラケットと、固定する金属製のパイプと平行な方向に形成された側壁ブラケットの凹部にはめ込まれて側面衝突時に側壁ブラケットの変形を防止する補強パイプと、側壁ブラケットと補強パイプとを覆う蓋ブラケットとを備えて構成した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運転席と助手席とで側面衝突用補強部材の配置が異なるような構造の場合であっても、側面衝突の際に車体側壁側の座席の一方の側部から受けた衝撃荷重を反対側の車体側壁に確実に伝達することが可能になり、搭乗者の安全性をより高めることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る乗用車シートの外観を示す乗用車シートの斜視図である。
【
図2】従来の補強部材を備えた乗用車の隣接する一対のシートで、双方のシート補強部材の位置が同じ場合の一対のシートの斜視図である。
【
図3】従来の補強部材を備えた乗用車の隣接する一対のシートで、双方のシート補強部材の位置が異なる場合の一対のシートの斜視図である。
【
図4】本発明による補強部材を備えた乗用車の隣接する一対のシートで、双方のシート補強部材の位置が異なる場合の一対のシートの斜視図である。
【
図5】本発明による側突ブラケットを金属製のパイプに取り付けた状態を示す側突ブラケットの斜視図である。
【
図6】本発明による側突ブラケットを金属製のパイプに取り付けた状態を示す側突ブラケットの断面図である。
【
図7】本発明による側突ブラケットを金属製のパイプに取り付けた状態を示す側突ブラケットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、運転席と助手席とでフレーム配置が異なる乗用車の、側面衝突時に一方の側のドアに加わる衝撃力を隣接するシートを介して反対側のドアに伝達する側面衝突用補強部材を備えた乗用車のシートに関し、運転席と助手席との高さが違う構造の車種であっても、側突ブラケットを用いて側面衝突時に一方の側のドアに加わった衝撃力を確実に反対側のドアに伝達できるようにしたものである。
【0012】
以下に、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1に、本発明に係る乗用車シート1の外観の斜視図を示す。乗用車シート1は、シートクッション2、シートバック3、ヘッドレスト4、サイドサポート5を備えて構成されている。
【0014】
このような構成の乗用車シート1において、
図2に示すように、シートクッション2−1と2−2には(仮に、シートクッション2−1を運転者用シートのシートクッション、シートクッション2−2を助手席用シートのシートクッションとする)、従来は、側面衝突の際に車体側壁(ドア)側の座席の一方の側部から受けた衝撃荷重を反対側の車体側壁(ドア)に確実に伝達する補強部材21−1及び21−2として、金属製のパイプ22−1及び22−2の両端にそれぞれ平板23を取り付けた構成を用いていた。
【0015】
しかし、
図3に示すように、運転席と助手席とでフレーム配置が異なる場合には、補強部材の位置(高さ、及び前後方向)が異なり(
図3に示した例では、パイプ22−1と22−2との位置がHだけずれている場合を示す)、両方の座席の補強部材の位置がずれてしまう。このようの構成では、従来のように座席側方に延出した補強部材の両端に平板を取り付けた構造の荷重入出力部を設けただけの構成では、側面衝突の際に車体側壁側の座席の一方の側部から受けた衝撃荷重を反対側の車体側壁に確実に伝達することは難しい。
【0016】
そこで、本発明においては、
図3に示したように、パイプ22−1の中心とパイプ22−2の中心との位置(高さ及び前後方向)がHだけずれている場合であっても、
図4に示すように、一方のシートクッション2−1の補強部材21−1のパイプ22−1の端部に、シートクッション2−2の側の補強部材21−2のパイプ22−2との位置ずれに対応させるための側突ブラケット24を設けた。
【0017】
図5に、側突ブラケット24の外観を示す。側突ブラケット24を、パイプ22−1のうち、乗用車シート1のフレームのクッションアーム31から外側に突き出ている部分を覆うようにしてパイプ22−1の端部に取り付ける。
【0018】
図6に、側突ブラケット24をパイプ22−1の端部に取り付けた状態の正面の断面図を示す。側突ブラケット24は、側壁ブラケット241と、蓋ブラケット242及び補強パイプ243を備えて構成されている。側壁ブラケット241と蓋ブラケット242は金属(例えば、鉄)で形成されている。一方、補強パイプ243は、金属(例えば、ステンレス合金)で形成されており、側突時に受ける衝撃力による側壁ブラケット241の変形を防止する役割を持つ。
【0019】
パイプ22−1は、側壁ブラケット241の穴に固くはめ込まれており、パイプ22−1に対する側壁ブラケット241の取り付け角度が安定に維持されている。
【0020】
図7には、
図6に示した側突ブラケット24を、蓋ブラケット242を外した状態でB−B方向から見た図、即ち、パイプ22−1の端部に取り付けた状態の側壁ブラケット241の平面図である。側壁ブラケット241に形成された凹部に補強パイプ243が挿入されている。
【0021】
このような構成の側突ブラケット24を、
図4に示したように、パイプ22−1への取り付け角度を調整してシートクッション2−2の側の補強部材21−2のパイプ22−2の端面に取り付けた平板23と対向する位置に取り付けてパイプ22−1に固定する。
【0022】
このように構成することにより、
図4で、シートクッション2−1の側の補強部材21−1のパイプ22−1の端面に取り付けた平板23の側から側面衝突による衝撃力(圧縮力)が加えられた場合について説明する。平板23の側から衝撃力を受けたパイプ22−1は、端部に固定した側突ブラケット24を介して、シートクッション2−2の側の補強部材21−2のパイプ22−2の側突ブラケット24と対向する側の端面に取り付けた平板23に当たり、この平板23の側から受けた衝撃力をシートクッション2−2の側の補強部材21−2のパイプ22−2に伝達し、パイプ22−2の他方の端面の側に取り付けた平板23から乗用車の助手席側のドア(図示せず)に設けられた補強部材(図示せず)に当たって、衝撃力が吸収される。
【0023】
ここで、側突ブラケット24の側壁ブラケット241は金属で形成されており、更に金属製の補強パイプ243を補強部材として用いることにより、側突時に受ける衝撃力による側壁ブラケット241の変形を防止することができる。
【0024】
このような構成とすることにより、運転席と助手席とで補強部材のパイプの高さが違っているタイプの乗用車であっても、運転席側のドア(図示せず)に側面衝突された場合に、側面衝突による衝撃力を運転席側の補強部材21−1の側突ブラケット24を装着したパイプ22−1から助手席側の補強部材21−2のパイプ22−2を介して助手席側のドア(図示せず)に設けられた補強部材(図示せず)に確実に伝達されるので、運転席及び助手席がつぶれてしまう可能性が低くなり、乗用車の安全性を高めることができる。
【0025】
また、逆に助手席側のドア(図示せず)に側面衝突された場合であっても、助手席側の補強部材21−2のパイプ22−2から側突ブラケット24を装着した運転手側の補強部材21−1のパイプ22−1を介して運転席側のドア(図示せず)に設けられた補強部材(図示せず)に確実に伝達されるので、運転席及び助手席がつぶれてしまう可能性が低くなり、乗用車の安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0026】
1・・・乗用車シート 2,2−1,2−2・・・シートクッション 21−1,21−2・・・補強部材 22−1,22−2・・・パイプ 23・・・平板 24・・・側突ブラケット 241・・・側壁ブラケット 242・・・蓋ブラケット 243・・・補強パイプ