特許第6335123号(P6335123)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 6335123-断熱デバイス及び断熱デバイスの動作方法 図000002
  • 6335123-断熱デバイス及び断熱デバイスの動作方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335123
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】断熱デバイス及び断熱デバイスの動作方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 24/00 20060101AFI20180521BHJP
   H01L 39/04 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G01N24/00 560G
   G01N24/00 Z
   H01L39/04
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-556048(P2014-556048)
(86)(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公表番号】特表2015-508162(P2015-508162A)
(43)【公表日】2015年3月16日
(86)【国際出願番号】EP2013052398
(87)【国際公開番号】WO2013117627
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2016年1月12日
(31)【優先権主張番号】1251115
(32)【優先日】2012年2月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510094104
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ エナジーズ アルタナティブス
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100162330
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 幹規
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ パエペ,ガエル
(72)【発明者】
【氏名】ボーロー,エリク
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−241493(JP,A)
【文献】 特開昭59−178347(JP,A)
【文献】 特開2008−075893(JP,A)
【文献】 特開2006−029965(JP,A)
【文献】 特開2007−017391(JP,A)
【文献】 特開昭47−004348(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0026302(US,A1)
【文献】 特開平04−262279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 24/00−24/14
G01R 33/20−33/64
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NMRプローブ(20)と断熱デバイス(100)とを備えるNMR解析システム(300)であって、
前記断熱デバイスが、
少なくとも第1の部材(21)を熱放射から隔離するスクリーン(101;102;103;104)と、
前記スクリーンと流体の流れとの間で熱を交換する第1の熱交換要素(110)と、
前記流れを用いて前記第1の部材を案内する案内要素(211)、及び/又は前記流れを用いて前記第1の部材を駆動する駆動要素(212)、及び/又は前記流れを用いる前記第1の部材の第2の熱交換要素(213)と、
を備え、
前記NMR解析システムが、プローブシステム(200)と、クライオスタット(10)と、前記NMRプローブを前記クライオスタットに対して接続する低温ライン(16)と、を備え、
前記低温ライン(16)が、真空障壁(17)を備え
前記第1の熱交換要素が、前記スクリーンに熱的に結合されること、又は、前記第1の熱交換要素が、前記スクリーンの二つの壁(111、112)の間に含まれることを特徴とするNMR解析システム。
【請求項2】
前記第1の熱交換要素が、螺旋状のストリップ(110)であることを特徴とする請求項1に記載のNMR解析システム。
【請求項3】
前記スクリーンが、前記第1の部材及び/若しくは前記第2の部材の重心から、又は前記第1の部材及び/若しくは前記第2の部材上の任意の点から見たとき、少なくともπステラジアン、又は少なくとも2πステラジアン、又は少なくとも3πステラジアン、又は実質的に4πステラジアンの立体角を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のNMR解析システム。
【請求項4】
前記流体の流れを案内する案内要素を備え、前記案内要素は、
前記第1の熱交換要素(110)と、
前記流れを用いて前記第1の部材を案内する前記案内要素(211)、及び/又は前記流れを用いて前記第1の部材を駆動する前記駆動要素(212)、及び/又は前記流れを用いる前記第1の部材の前記第2の熱交換要素(213)と
の間で前記流体の流れを案内することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のNMR解析システム。
【請求項5】
解析用のサンプル(22)を受け入れることが可能なサンプルホルダ(21)と、
前記流れを発生させるための高圧ガスの少なくとも一つの第1の供給源(1)と、
を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のNMR解析システム。
【請求項6】
前記流体の流れは、ガスの流れであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のNMR解析システム。
【請求項7】
前記第1の熱交換要素(110)は、前記スクリーンに固定されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のNMR解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱方法、又は断熱デバイスを動作させるための方法に関する。本発明はまた、断熱デバイス、とりわけ核磁気共鳴(NMR)システム、特に物質のサンプルを解析するのに適したシステムのすべて又は一部を断熱するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
NMRデバイスは、静磁場内で回転させ、且つ例えば無線周波数コイルによって生成される第1の磁場に垂直な第2の磁場に曝されるサンプルホルダを含むプローブを備え、無線周波数コイルは、サンプルホルダの中に入れられたサンプル、とりわけ固体サンプルに関する情報をそれから推定するために解析される信号を受け取る。従来技術の実施形態によれば、同一の供給源、すなわち昇圧ヘリウムシリンダなどの標準的な容器から得られる三つのガス流れが、サンプルホルダを備えるデバイスのプローブに向けて方向付けられる。第1の流れは、サンプルホルダを備えるロータ(又はスピナ)を駆動するタービンのブレード又は翼に作用することによって、このサンプルホルダを回転させる機能を有する。第2の流れは、サンプルをある特定の温度にする機能を有し、第3の流れは、固定子内のロータを支持する気体静力学的な支持体を生成する。
【0003】
そうしたデバイスでは、低温の動作の場合に大気ガスがプローブ上で凝縮する危険性をなくすこと、及びサンプルホルダにおいて特別な温度が得られることを保証するプローブの設計を決めることが重要である。
【0004】
これを実現するために満たす必要がある様々な条件が存在する、すなわち、
・ガスの凝縮及び対流からプローブを保護し、対流による外部からの熱の導入、及び結果としてのガス中での伝導をなくすために、プローブを周囲の大気から隔離する必要がある。
・プローブ、スピナ、及びそれに流体を供給するデバイスは、約300Kの温度において周囲の熱放射から保護される必要がある。
【0005】
プローブ、より広範にはNMRデバイスは、きわめて低い温度で動作するので、所望の温度を達成し、且つ/又はこれらを冷却するのに過剰な量のエネルギーを消費しないために、これらを被覆する必要がある。
【0006】
冷却されるデバイスを被覆又は断熱するための様々な技術が知られており、とりわけ、
−対流若しくは伝導による損失の回避を可能にする断熱材でデバイスを囲むこと、又は
−放射による損失の回避を可能にする放射阻害スクリーンを配置すること
がある。
【0007】
放射阻害スクリーンの温度は、スクリーンに面する「高温」の構成要素及び「低温」の構成要素による影響を受ける。この影響は、高温の構成要素と低温の構成要素の温度差の4乗で変化するが、特にきわめて低い温度で動作するとき、スクリーンの温度は、主に「高温」の構成要素による影響を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一目的は、上記において言及した問題の克服を可能にし、従来技術によって知られている方法を改善する断熱デバイスを動作させるための方法を提供することである。特に、本発明は、効果的な断熱を可能にする、且つ/又はエネルギーとしてほとんど消費しない、断熱デバイスを動作させるための方法を提示する。本発明はまた、そうした方法に従って動作する断熱デバイスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による方法は、第1の部材及び/又は第2の部材を熱放射から隔離するためのスクリーンを備える断熱デバイスの動作を制御する。前記方法は、
−流体、とりわけガスの流れと前記スクリーンとの間で熱を交換する熱交換ステップであって、とりわけ、熱を熱スクリーンから前記流れへ運ぶ、熱交換ステップと、
−前記流れを用いて、前記第1の部材を案内する、且つ/又は前記第1の部材の動きを駆動する、且つ/又は前記第1の部材と熱を交換する、とりわけ前記第1の部材を冷却する、使用ステップと、
を含む。
【0010】
前記使用ステップを最初に実施し、次いで熱交換ステップを実施することができる。
【0011】
前記第1の部材は、サンプルホルダを含むことができ、且つ/又は、
前記第2の部材は、NMRプローブ、及び/若しくは低温ライン(cryogenic line)、及び/若しくはクライオスタット(cryostat)、及び/若しくは電子回路を含むことができる。
【0012】
本発明によれば、断熱デバイスは、第1の部材及び/又は第2の部材を熱放射から隔離するスクリーンを備える。前記断熱デバイスは、
−熱スクリーンと流体の流れ、とりわけガスの流れとの間で熱を交換する第1の熱交換要素、並びに
前記−流れを用いて前記第1の部材を案内する案内要素、及び/又は、前記流れを用いて前記第1の部材を駆動する駆動要素、及び/又は、前記流れを用いる前記第1の部材の第2の熱交換要素、
を備える。
【0013】
前記第1の交換要素を、断熱スクリーンに熱的に結合すること、とりわけ断熱スクリーンに固定すること、又は前記第1の交換要素を、断熱スクリーンの二つの壁の間に含むことが可能である。
【0014】
前記第1の交換要素は、螺旋状のストリップとすることができる。
【0015】
熱スクリーンは、前記第1の部材及び/若しくは前記第2の部材の重心から、又は前記第1の部材及び/若しくは前記第2の部材上の任意の点から見たとき、少なくともπステラジアン、又は少なくとも2πステラジアン、又は少なくとも3πステラジアン、又は実質的に4πステラジアンの立体角を有することができる。
【0016】
断熱デバイスは、流体の流れを案内する案内要素を備えており、前記案内要素は、
−第1の熱交換要素と、
−前記流れを用いて前記第1の部材を案内する案内要素、及び/又は前記流れを用いて前記第1の部材を駆動する駆動要素、及び/又は前記流れを用いる前記第1の部材の第2の熱交換要素と
の間で前記流体の流れを案内できる。
【0017】
本発明によれば、NMR解析用のプローブシステムは、上記において定義した断熱デバイス、及びNMR解析用のプローブを備える。
【0018】
本発明によれば、NMR解析システムは、上記において定義した断熱デバイス、及び上記において定義したNMRプローブを備える。
【0019】
解析システムは、プローブシステム、クライオスタット、及び前記プローブを前記クライオスタットに対して接続する低温ライン(cryogenic line)を備えることができる。
【0020】
前記低温ラインは、真空障壁を備えることができる。
【0021】
解析システムは、解析用のサンプルを受け入れることが可能なサンプルホルダと、前記流れを発生させるための高圧ガスの少なくとも一つの第1の供給源とを備えることができる。
【0022】
本発明のこれらの目的、特徴及び利点について、添付図面を参照しながら、これに限定されない形で示される特定の一実施形態に関する以下の説明において詳しく述べる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態によるNMRシステムを概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態によるNMRプローブを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、図1及び図2を参照しながら、NMR解析システム300に適用された断熱デバイス100の一実施形態について説明する。しかしながら、断熱デバイスは、任意の他の用途に使用することが可能である。
【0025】
NMR解析システム300は、断熱デバイス100を備える。NMR解析システム300は、例えばサンプルをマジック角で回転させるマジック角回転NMR解析システムである。例えば解析システムは、三つの高圧のガス流れ2、3、4を発生させることが可能な少なくとも一つの第1の高圧の供給源1を備える。別法として、それぞれが1以上の流れに割り当てられた複数の供給源を使用することももちろん可能である。この供給源1は、例えば周囲温度で200バールに圧縮されたガスのシリンダから構成されてもよい。圧力は、調整弁に結合された流量計によって制御することができる。この第1の供給源1からの高圧ガスは、窒素又はヘリウムとすることができる。この第1の供給源1から得られる三つのガス流れは、クライオスタット10を通過するが、クライオスタット10において1以上の熱交換器12で冷却された後、サンプル22を受け入れるためのサンプルホルダ21を備えるNMRプローブ20に達する。サンプルホルダは、静磁場の平行な軸と垂直な軸との間に形成される調節可能な角度で傾斜するように位置決めされる。また、引き替えに解析用のサンプルからの信号を受け取るように設計された、エミッタ/レシーバを形成する無線周波数の構成要素は、冷却ガスの流れに曝され、サンプルホルダ21と同じ温度を受ける。きわめて低い温度に達することを可能にするために、熱交換器12は、第1の供給源1のガスの温度より低い低温において、高圧の第1の供給源1から離れた1以上の第2の供給源(単数又は複数)から得られる、冷却剤として働く低圧の低温流体の供給を受ける。この冷却剤も、窒素又はヘリウムとすることができる。
【0026】
熱交換器は、向流式の管状の流体/流体型のものとすることができる。それは、二つの流体間の熱の移動を可能にし、高圧のガス流れ2、3、4の冷却を生じさせる。この二つの流体間の熱交換は、ガス流れ2、3、4とそのそれぞれの高圧管の壁との間に対流を生じさせることによって、次いで、この壁を通した伝導の後、高圧管のこの壁の外面と冷却剤との間にさらに対流を生じさせることによって得られる。これらの管は、例えば低炭素ステンレス鋼と呼ばれるオーステナイトステンレス鋼のグレードなど、低温学に適した材料で製造することができる。
【0027】
クライオスタット10は、全体として、内部への進入を可能にする取り外し可能なプレートによって閉じられた真空チャンバの形をとる。クライオスタットは、有利には熱スクリーン104を備える。
【0028】
次に、クライオスタット10を出ると、有利にはすべて同じ温度まで冷却された三つのガス流れ2、3、4は、NMRプローブ20に達し、上記において言及した三つの機能を実施する、すなわち、第1の高圧流れ2がサンプルを回転させ、第2の高圧流れ3がサンプルを冷却し、第3の高圧流れ4がサンプルホルダを支持する。
【0029】
堅い低温ライン(cryogenic line)16が、冷却された高圧のガス流れ2、3、4を、クライオスタット10の出口からNMRプローブデバイス20まで運ぶ。このラインは短く、1メートル程度の長さのものであり、断熱され、高真空ポンプによって送り込まれ、熱スクリーン103を備える。NMRプローブ20は、NMR測定のための静磁場を確立する固定子(図示せず)内に位置決めされた、回転可能なサンプルホルダ21を備える。
【0030】
システムは、例えばプローブデバイス200の領域に、電子的な構成要素30、とりわけ無線周波数の構成要素を備える。接続部31によって、電気回路30をスピナに結合することが可能になる。
【0031】
断熱デバイス100は、第1の部材21及び/又は第2の部材20;30;16;10;40を熱放射から熱的に隔離するスクリーン101、102、103、104を備える。熱放射は、第1の部材又は第2の部材のすぐ周りの任意の要素、とりわけこうした周囲に位置する任意の物体によって引き起こされ得る。断熱デバイスは、
−熱スクリーンと流体の流れ、とりわけガスの流れとの間で熱を交換する第1の熱交換要素110
−前記流れを用いて第1の部材を案内する案内要素211、及び/又は前記流れを用いて第1の部材を駆動する駆動要素212、及び/又は前記流れを用いる第1の部材の第2の熱交換要素213
を備える。
【0032】
案内要素211はガス流れ4の供給を受け、駆動要素212はガス流れ2の供給を受け、第1の部材の熱交換要素213は、ガス流れ3の供給を受ける。案内要素は、軸受、とりわけ静圧気体軸受(aerodynamic bearing)又は動圧気体軸受(aerodynamic bearing)とすることができる。したがって、一つの流れを用いて、第1の部材を案内することができる。駆動要素はタービンとすることができる。したがって、一つの流れを用いて、第1の部材の動きを駆動することができる。
【0033】
第1の熱交換要素110は、1以上のスクリーンを冷却することができる。したがって、1以上のスクリーンの温度は、スクリーン外部の環境による影響をあまり受けない。1以上のスクリーンは、高い熱伝導度及び/又は低い熱放射吸収力を有するように、金属で製造されることが好ましい。
【0034】
好ましくは、第1の部材はサンプルホルダを含み、且つ/又は、第2の部材は、NMRプローブ20、及び/若しくは低温ライン16、及び/若しくはクライオスタット10、及び/若しくは電子回路30を含む。したがって、デバイスは、サンプルホルダ21及び物質のサンプル22、より一般的にはプローブ20、及び場合により電子回路を保護する第1の断熱スクリーン101、102を備えることができる。断熱デバイスは、低温ライン16を保護する第2の断熱スクリーン103を備えることもでき、且つ/又は断熱デバイスは、クライオスタット10を保護する第3の断熱スクリーン104を備えることができる。様々なスクリーンを、互いに熱的に結合することが可能である。
【0035】
第1の交換要素110は、断熱スクリーンの二つの壁111及び112の間に含まれる。それは、螺旋状のストリップ110からなることができる。
【0036】
流体の流れ2、3、4の一つ、二つ又は三つは、プローブ、とりわけサンプルホルダにおいてそれらの機能を果たした後、第1の交換要素の上を通る、又は第1の交換要素を通過する。それを実現するために、断熱デバイスは、流体の流れを案内する案内要素を備え、前記案内要素は、
−第1の熱交換要素110と、
−前記流れを用いて第1の部材を案内する案内要素211、及び/又は前記流れを用いて第1の部材を駆動する駆動要素212、及び/又は前記流れを用いる第1の部材の第2の熱交換要素213と
の間で前記流体の流れを案内する。
【0037】
サンプルホルダを回転させるのにどの程度の流れが必要であるかを考えると、使用される低温流体は、サンプルを特別な温度にするのに、その熱エネルギー(エンタルピー)の一部を費やすだけである。また、依然として利用可能な熱エネルギーを回収し、有利には使用することができるように、サンプルスピナの出力部で放出される流れが集められる。それを行うために、スピナの排出部で除かれた「駆動」及び「熱制御」用のガス流れが、スピナがその内部に取り付けられたチャンバの中で直接集められる。したがって、スピナは、それを外部の放射から効果的に保護する、ガスの低温雰囲気中に保たれる。チャンバ自体は出口を備え、このガスは、その出口を通して放出され、ライン5を経て、能動的な熱保護スクリーン又は断熱スクリーンと熱的に結合された交換器、とりわけ、プローブを保護するスクリーン102と熱的に結合された交換器、低温の供給ラインを保護する能動的な熱スクリーン103と熱的に結合された交換器、及び場合により、冷熱源であるクライオスタットを保護する能動的な熱スクリーン104と熱的に結合された交換器に至る。ガスは、電子回路30に熱的に結合された交換器を通過することもできる。その底部において環状であるチャンバ101の形状は、それが流体注入ラインに対して、きわめて低い温度の熱スクリーンとして働くようにする。放出されるガスに含まれるエネルギーから最大限の利益を得るために、このガスを、チャンバから放出する前に、これまでに理解されたような二重ジャケット内の螺旋状の経路に案内することができる。この配置によって、低温のガスとチャンバの壁との間の交換に対して、より大きい表面積がもたらされる。
【0038】
場合により低い温度まで下げられるプローブの構成要素は、断熱材で製造された構成要素によって機械的に支持又は懸架される。同じ趣旨で、流体供給ラインのそれぞれが、熱をスピナに伝えないように二つの区画として製造される。サンプルホルダを含むスピナの中に流体を導入する、又はスピナから流体を取り出すための、閉じ込め用のチャンバジャケットを通過する上流部分は、伝導性が低い導体である金属材料で製造される。この領域は、温度傾斜領域と呼ばれる。従来技術では、ステンレス鋼管が使用されるが、本発明の状況では、銅で製造された管を使用することが可能である。
【0039】
組立体は、「真空気密」式の貫通部を備えた真空チャンバの中に挿入され、プローブの動作において使用を補助するもの(流体、計測信号、動力、機械的な調節手段など)はそれら貫通部を通過する。
【0040】
第1の交換要素110は、断熱スクリーンに熱的に結合され、とりわけ断熱スクリーンに固定される。
【0041】
熱スクリーンは、第1の部材及び/若しくは第2の部材の重心から、又は第1の部材及び/若しくは第2の部材上の任意の点から見たとき、少なくともπステラジアン、又は少なくとも2πステラジアン、又は少なくとも3πステラジアン、又は実質的に4πステラジアンの立体角を有する。
【0042】
本発明はまた、NMR解析用のプローブシステム200に関し、当該システムは、断熱デバイス100及びNMR解析用のプローブ20を備える。
【0043】
クライオスタットからプローブへ提供される低温ラインは、きわめて低い消費量を有する。これまでに言及したように、低温ラインは、プローブから流出する流れに熱的に結合された能動的な熱スクリーン103を備える。1メートルの長さであり、多層の断熱材によってきわめて高度に断熱され、高真空ポンプによって送り込まれるこのラインにおける損失は、三つのプローブ供給ラインすべてに関して0.11W程度である。こうした損失は、NMRプローブの低温の供給に一般的に使用される柔軟なラインの10分の1である。具体的には、こうしたラインの消費量は30W/m、又は静的真空下で泡若しくは粉末によって断熱された最適なラインでは5W/mであり、動的真空下で高品質にきわめて高度に断熱されたラインでは、1W/mまで下がる。
【0044】
有利には、低温ライン16は、真空障壁17を備える。したがって、ラインは、クライオスタットのスイッチを切る必要なしにプローブをクライオスタットから切り離すことができるように、「真空障壁」によって、並びに「高圧」ライン及び「低圧」ラインに取り付けられた一組の弁180によって、二つの独立した領域に分割される。これらの弁を用いて適切な温度の流体を、プローブの温度を変化させるように、とりわけ、プローブの温度を上昇させるように循環させることができる。
【0045】
プローブシステム200は、プローブ20及び固定子を備える。プローブ及びその流体供給ラインは、真空チャンバ、放射阻害スクリーン及び断熱支持体の中に密閉するように封じ込められる。
【0046】
システムはまた、中央ユニット(図示せず)を備え、その中央ユニットは、断熱デバイスを動作させる方法を実施するための、より一般的には、解析システムを動作させる方法を実行するためのハードウェア及びソフトウェアを含む。
【0047】
以下では、第1の部材及び/又は第2の部材を熱放射から隔離する断熱スクリーンを備える、断熱デバイス100を動作させるための方法の一実施形態について説明する。当該方法は、
−流体、とりわけガスの流れとスクリーンとの間で熱を交換する熱交換ステップであって、とりわけ、熱を熱スクリーンから前記流れへ運ぶ、熱交換ステップステップ、及び
−前記流れを用いて、前記第1の部材を案内する、且つ/又は前記第1の部材の動きを駆動する、且つ/又は前記第1の部材と熱を交換する、とりわけ前記第1の部材を冷却する、使用ステップ
を含む。
【0048】
前記熱交換ステップでは、例えば前記流体の流れによってスクリーンを冷却することが可能である。
【0049】
前記流れを用いて前記第1の部材と熱を交換するステップでは、例えば前記流体の流れによって前記第1の部材を冷却することが可能である。
【0050】
好ましくは、前記使用ステップが最初に実施され、次いで前記熱交換ステップが実施される。
【0051】
好ましくは、前記第1の部材は、サンプルホルダを含み、且つ/又は、前記第2の部材は、NMRプローブ20、及び/若しくは低温ライン16、及び/若しくはクライオスタット10、及び/若しくは電子回路30を含む。
【0052】
そうした断熱デバイスによって、ガスをプローブで使用した後にガスを暖める必要性を限定することが可能になり、暖めることによって、人員の安全を保証し、人員がきわめて低温の構成要素と接触して火傷をした状態になるのを防止し、人員が溶けた凝縮物で滑ることによって落下する又は感電死するのを防止するようにする。暖めることによって、短絡回路又は金属性の構成要素の酸化によって引き起こされる設備劣化の危険性を低減することも可能になる。最後に、ヘリウムなど少なくとも最も高価な流体を、再使用のために回収デバイスによって回収することができる。閉ループのシステムを作り出すために、それらを、冷却機を介して向流式の交換器12に直接注入することも可能であり、次いで、クライオスタット外部の「高温」の圧縮器又はクライオスタット内部の「低温」の圧縮器によって、循環がもたらされる。
図1
図2