(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335143
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ペット洗浄用化粧材の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9794 20170101AFI20180521BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20180521BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20180521BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20180521BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20180521BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
A61K8/9794
A61K8/9789
A61K8/99
A61K8/60
A61K8/19
A61Q5/02
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-130449(P2015-130449)
(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-14127(P2017-14127A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】515178269
【氏名又は名称】李 敏京
(74)【代理人】
【識別番号】100083183
【弁理士】
【氏名又は名称】西 良久
(72)【発明者】
【氏名】李 敏京
【審査官】
片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−238310(JP,A)
【文献】
特開2000−103719(JP,A)
【文献】
特開2005−206567(JP,A)
【文献】
特開2000−086495(JP,A)
【文献】
特開平04−338313(JP,A)
【文献】
特開2004−323468(JP,A)
【文献】
特開2013−139570(JP,A)
【文献】
特開2010−285566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99、36/00−9068
A61Q 1/00−90/00
A01K 13/00
C11D 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の植物オイルを混合した植物オイルと、精製水と、ハーブパウダーと、アロエハーブ酵素と、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムとからなるペット洗浄用化粧料の製造方法であって、
前記ハーブパウダーを、カシアの葉と、ニームの葉を原料として混合し粉砕することにより得て、
前記アロエハーブ酵素を、アロエベラの葉と同じ重量の砂糖を混合して常温で1ヶ月以上の期間醗酵させて得られた液体状の一次醗酵酵素200重量部に対して前記ハーブパウダー5〜7重量部を混合し、常温で1ヶ月以上の期間醗酵させることにより得ることを特徴とするペット洗浄用化粧料の製造方法。
【請求項2】
前記ハーブパウダーを、カシアの葉を60から85重量%と、ニームの葉を10重量%以上と、アロエベラの葉を原料として混合し微粉砕することにより得ることを特徴とする請求項1に記載のペット洗浄用化粧料の製造方法。
【請求項3】
前記ペット洗浄用化粧料が、固形石けんからなっており、
複数種類の植物オイルが、ココナッツオイル、パームオイルまたはレッドパームオイル、ヘンプシードオイル、シアバター、バージンオリーブオイルの群のいずれか複数の組み合わせからなっており、水酸化ナトリウムで鹸化されていることを特徴とする請求項1または2に記載のペット洗浄用化粧料の製造方法。
【請求項4】
前記ペット洗浄用化粧料が、リキッドシャンプーからなっており、
複数種類の植物オイルが、ココナッツオイル、グレープシードオイル、キャスターオイル、パームオイル、椿オイル、バージンオリーブオイルの群のいずれか複数の組み合わせからなっており、水酸化カリウムが用いられていることを特徴とする請求項1または2に記載のペット洗浄用化粧料の製造方法。
【請求項5】
前記植物オイルを700〜800重量部と、水酸化ナトリウムを95〜110重量部と、精製水を125〜150重量部と、ハーブパウダーを50〜80重量部と、アロエハーブ酵素を100重量部としたことを特徴とする請求項3に記載のペット洗浄用化粧料の製造方法。
【請求項6】
前記植物オイルを600〜800重量部と、水酸化カリウムを135〜190重量部と、精製水を380〜420重量部と、ハーブパウダーを25〜70重量部と、アロエハーブ酵素を100重量部としたことを特徴とする請求項4に記載のペット洗浄用化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーブを原料とした、洗浄性を損なうことなく刺激の低いペット動物用固形石けん・リキッドシャンプーなどのペット洗浄用化粧
料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機肥料で育成した数種のハーブを粉末にして混合したハーブパウダーを、犬や猫などのペット動物用の洗剤やリンスとして使用している。
即ち、ハーブとしては、ニーム、カシア、アロエベラなどが原料として使用されている。
ここで、ニームには、殺菌、消臭、虫除け機能があり、殺菌作用が高く細菌の過剰な繁殖を防ぐ。ニキビ、湿疹、フケに効果的である。
カシアには、ヘアケア、殺菌、ボリュームアップ機能があり、被毛をコーティングして、毛のもつれ、毛玉ができにくく、ボリューム、張りと艶を与える効果がある。
アロエベラには、保湿、炎症、皮脂コントロールする機能があり、皮脂をノーマルな状態にコントロールし、水分を保ち、痛みや熱を鎮める効果がある。
そこで、これらニームとカシア、またはニームとカシアとアロエベラを組み合わせてオーガニックなペット洗浄用パウダーとして用いることができる。
そこで、例えば、前記各機能を発揮させるために、カシアを50重量%から85重量%とし、残りをニームとしたり、またはニームとアロエベラを合計で30重量%とし、残りをカシアにするなど、肌(皮膚)タイプに合わせて適宜調整して生成することができる。
しかし、上記ハーブパウダーではphが低く酸性となるので、洗浄力はあっても傷ついているペット動物の肌に刺激を与えてしまい、傷に刺激を与えずに洗浄することで、使用しつづけることで結果的に傷を治すことはできなかった。
なお、アロエベラ醗酵エキスについては、従来、飲料としての用途しか知られていなかった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−38137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする問題点は、刺激が少なく、肌(皮膚)タイプの異なる犬や猫などのペット動物においても適用することができる固形石けんやリキッドシャンプーなどのペット洗浄用化粧
料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するために、
複数種類の植物オイルを混合した植物オイルと、精製水と、ハーブパウダーと、アロエハーブ酵素と、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムとからなるペット洗浄用化粧料
の製造方法であって、
前記ハーブパウダー
を、カシアの葉と、ニームの葉を原料として混合し粉砕
することにより得て、
前記アロエハーブ酵素
を、アロエベラの葉
と同じ重量の砂糖を混合して常温で1ヶ月以上の期間醗酵させて得られた
液体状の一次醗酵酵素200重量部に対して前記ハーブパウダー5〜7重量部を混合し、常温で1ヶ月以上の期間醗酵させることにより得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明は、アロエベラを2次醗酵させたアロエハーブ酵素を用いることで、固形石けんやリキッドシャンプーのph値を8〜9程度に上げて、ハーブ固有の有する洗浄性や保湿性、殺菌性を損なうことなく、ペットの毛や肌(皮膚)に刺激を与えずに洗浄することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、この発明の好適実施例について説明する。
【0008】
まず、アロエベラを2次醗酵させたアロエハーブ酵素を生成するために一次アロエ酵素を生成する。
【0009】
[1次アロエ酵素]
容器内に、適度な大きさに切断したアロエベラの葉と砂糖を重量比で1:1の割合で混入する。
本実施例ではアロエベラlkgに対し砂糖lkgを混合した。
砂糖は、グラニュー糖、三温糖、黒糖などを用いることができる。
そして、常温で1ヶ月以上自然醗酵させる。
(自然醗酵期間は、6ヶ月程度が好ましい。)
上記自然醗酵後に、生成された液体部分を1次アロエ酵素として使用する。
【0010】
[2次アロエ酵素]
容器内に、前記1次アロエ酵素と前記ハーブパウダーを混入する。
本実施例では、前記1次アロエ酵素2Lに対して ハーブパウダー50〜70gとしたが、同様の比率混合すればよい。
そして、常温で1ヶ月間自然醗酵させて、2次アロエ酵素を生成する。
この発明では、アロエハーブ酵素は、前記1次醗酵した1次アロエ酵素でも、2次醗酵した2次アロエ酵素でもよいが、以下の実施例では2次アロエ酵素を用いた例を示す。
【0011】
前記ハーブパウダーは、前述のように、カシアとニーム、またはカシアとニームとアロエベラの粉末からなっている。
ここで、カシアを50重量%から85重量%とし、残りをニームとしたり、またはニームとアロエベラを合計で30重量%とし、残りをカシアにするなど、肌タイプに合わせて適宜調整して生成される。
本実施例では、カシアとニームとアロエベラの混合粉末を用いた。
【0012】
[固形石けん・リキッドシャンプー]
固形石けん、リキッドシャンプー(原液)を作るときに2次醗酵させたアロエハーブ酵素を、[1]普通肌、[2]脂性肌、[3]乾燥肌の3夕イプ別に使う。
[1]普通肌、カット犬種専用
シャンプー後の仕上がりはカットしやすい。ふんわりする。カットが長持ちする。
[2]脂性肌犬種専用(臭い、フケ、痒み)
仕上がりは脂分が取れてカットしやすくなる
[3]乾燥肌犬種専用(保湿)
仕上がりはしっとりして静電気が立ちにくい。カットしやすい。
タイプ別にハーブパウダーをアロエ酵素に入れて作る。
【0013】
[固形石けんの作り方]
原料となるオイルを下記の通り調合して混合オイルとする。
上記混合オイルを50℃まで加熱する。
苛性ソーダを精製水に混合して溶かす。
上記苛性ソーダを均等に溶かした水を前記50℃の混合オイル中にゆっくり注入する。注入後に撹拌する。
【0014】
石けんのトレースが60%の時、前記アロエハーブ酵素を入れ、均一に撹拌する。
タイプ別に適宜ブレンドしたエッセンシャルオイルを3〜5ml入れて攪拌する。
その後、石けん用のモールドに入れ、保温庫で40〜45℃(季節によって増減)で24時間熟成させる。
次いで、前記モールドから型だしし、適宜形状にカットして仕上げる。
また、石けん、リキッドシャンプーに使うハーブパウダーは、前記混合オイルに約40℃〜45℃で1日間浸し油溶性(脂溶性)の有効成分を抽出して使用することが好ましい。
【0015】
[リキッドシャンプー原液の作り方]
原料となるすべてのオイルを下記の通り調合して混合オイルとする。
上記混合オイルを55℃まで加熱する。
苛性カリを精製水に混合して溶かす。
上記苛性カリを均等に溶かした水を前記55℃の混合オイル中にゆっくり注入し、撹拌する。
トレースが60%出たときにアロエハーブ酵素を入れて攪拌し、トレースが完全に出たらリキッドシャンプー原液の完成となる。
ここで、リキッドシャンプー原液と精製水とを1:1の割合で薄めると、リキッドシャンプーになる。
【0016】
タイプ別に適宜ブレンドしたエッセンシャルオイルを、前記リキッドシャンプー200mlに対して最大10滴まで入れて攪拌してもよい。
前記製法で作られた固形石けん、リキッドシャンプーは、約1ヶ月間常温で保管し熟成させてから使用に供する。
上記のように生成された石けんはph9、リキッドシャンプーはph8となり、他の原料のph値を下げて、よりマイルドな石けんやリキッドシャンプーとすることができる。
【実施例1】
【0017】
[普通肌用石けん]
普通肌、カット犬種専用の石けんの配合例は以下の通りである。
前記混合オイルの割合は、肌タイプ別に以下の通りに調合した。
ココナッツオイル 200g
パームオイル 200g
(レッドパームオイルでも可)
ヘンプシードオイル 100g
シアバター 100g
グレープシードオイル 150g
アボカドオイル 10g
(オイル合計 760g)
苛性ソーダ(NaOH) 107g
精製水 147g
アロエハーブ酵素 100g
ハーブパウダー 50〜70g
該ハーブパウダーは、カシア60%、ニーム10%以上が配合されていることが好ましい。
【実施例2】
【0018】
[脂性肌用石けん]
脂性肌犬種専用の石けんであり配合例は以下の通りである。
ココナッツオイル 200g
パームオイル 150g
椿オイル 100g
キャスターオイル 100g
バージンオリーブオイル 150g
(オイル合計 700g)
苛性ソーダ(NaOH) 101g
精製水 135g
アロエハーブ酵素 100g
ハーブパウダー 50〜80g
該ハーブパウダーは、カシア50%、ニーム30%以上が配合されていることが好ましい。
【実施例3】
【0019】
[乾燥肌用石けん]
乾燥肌犬種専用の石けんの配合例は以下の通りである。
ココナッツオイル 150g
パームオイル 200g
ヘンプシードオイル 100g
シアバター 50g
バージンオリーブオイル 200g
(オイル合計 700g)
苛性ソーダ(NaOH) 99g
精製水 129g
アロエハーブ酵素 100g
ハーブパウダー 50〜70g
該ハーブパウダーは、カシア50%、ニーム10%、アロエ10%以上が配合されていることが好ましい。
【実施例4】
【0020】
[リキッドシャンプー(原液)]
リキッドシャンプー(原液 夏用)の配合例は以下の通りである。
(1)バージンオリーブオイル 600g
ココナッツオイル 450g
グレープシードオイル 150g
キャスターオイル 400g
(オイル合計) 1600g
苛性カリ(KOH) 370g
精製水 829g
アロエハーブ酵素 200g
トレハロース 50g
ハーブパウダー 50〜100g
【0021】
(2)リキッドシャンプー(原液 冬用)の配合例は以下の通りである。
ココナッツオイル 150g
パームオイル 150g
椿オイル 100g
キャスターオイル 100g
バージンオリーブオイル 100g
(オイル合計) 600g
苛性カリ(KOH) 140g
精製水 390g
アロエハーブ酵素 100g
ハーブパウダー 50〜70g
【0022】
上記のようにして得られたリキッドシャンプー原液を精製水と1:1の割合で薄めて、それを元に、肌タイプ別のシャンプーを作る。
例えば、リキッドシャンプー原液100gと、精製水100gと、ハ−ブパウダー5〜10gとを混合して、205〜210gのシャンプーを生成する。
また、生成時期の季節によっては精製水量で濃度を微調整してもよい。
より効果高めるためには、エッセンシャルオイルを200gに対して5〜10滴程度混入する。
【0023】
上記エッセンシャルオイルは、例えば、キャロットシード、ラベンダー、イランイラン、グレープフルーツ、ベルガモット、シダーウッド、ローズ、ネロリ、ジャスミン、カモミールローマン、ジャーマン、ブルーロータス、ゼラニウム、ジュニパーベリ、クラリセージ、ローズウッド、オレンジ、マンダリン、サンダルウッド、マジョラム、レモン、ティートリーなどの一種または複数種を選択して用いる。
【0024】
[パウダーリンス]
パウダーリンスは、公知のリンスを使用することができる。
本実施例でパウダーリンスの原料比は以下の通りである。
重層5、クエン酸3、コーンスターチ2、ハーブパウダー0.5、シルクパウダー、トレハロース、パパイヤ酵素粉末、オリーブスクワラン、ベースオイル、エッセンシャルオイルを肌タイプ別に適宜ブレンドして使う(数値は重量部)。
【0025】
犬、猫などのペット動物を洗う場合には、まず固形石けんを用いて洗い、該石けんを洗い流してから、次に更にリキッドシャンプーを用いて洗い、該シャンプーを洗い流してから公知のパウダーリンスですすぐ順番で使用することで、犬、猫などのペット動物の被毛、皮膚のケアをすることができることが確認できた。
以下に、実際のモニター例を示す。
【0026】
モニター(1)
犬種:シーズー、アトピー症のケース
[2]の石けん、リキッドシャンプーを用い、1ヶ月間に3〜5使用することでアトピーが改善された。
モニター(2)
犬種:ダックスフント牝、リューマチを患い、薬の副作用で腹部の被毛が抜けていたケース
3ヶ月前からステロイドを1/3程度に減らし、[2]の石けん、リキッドシャンプーを使用することで、被毛が回復し改善が確認された。
【0027】
モニター(3)
犬種:マルチーズ、脚先をなめて赤くなって出血し、被毛が抜けていたケース
[3]の石けん、リキッドシャンプーを使用して、脚先をなめなくなり、被毛が回復し改善された。
モニター(4)
犬種:シーズー牝、かさぶたがあり、脂性のケース
[2]の石けん、リキッドシャンプー使用して改善された。
モニター(5)
犬種:アメリカンコッカースパニエル 脂性でフケ、足裏からの悪臭かつベタベタのケース
[2]の石けん、リキッドシャンプー、入浴剤を1ヶ月間で数回使用して改善された。
これらにより、本発明の固形石けん、リキッドシャンプーには所期の効果があることが確認された。
また、上記実施例において、アロエハーブ酵素は、二次発酵させたアロエハーブ酵素(2次アロエ酵素)を用いた
。